説明

ガスバリアフィルム

【課題】
ガスバリア性に優れたガスバリアフィルムを提供すること。
【解決手段】
透明基材フィルム(A)表面上に不飽和カルボン酸またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)を積層し、更に該樹脂層上に、透明無機薄膜層(C)を積層してなるガスバリアフィルム。透明基材フィルム(A)と透明無機薄膜層(C)が、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)を介して/又は介することなく積層され、さらに透明無機薄膜層(C)の表面に、透明性樹脂層(D)が積層されていることを特徴とするガスバリアフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリアフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲食品、医薬品等の包装にはガスバリア性の高いプラスチックフィルムが求められている。プラスチックフィルムのガスバリア性を改良する方法が種々提案されているが、内容物が視認できる透明材料であって、かつガスバリア性の優れたフィルムの性能はまだ十分なものではなく、その改良が求められている。
【0003】
また、有機エレクトロルミネッセンス(EL)や液晶等を用いた表示デバイスについても、軽量化、薄膜化、またフレキシブル化の観点から基板としてプラスチックフィルムを用いる方法が提案されている。
【0004】
そして、これらプラスチックフィルムには、プラスチック基板に対しても、表示部の視認性を維持しつつ、かつ、基板上に形成された素子部の劣化を防止するため、透明、かつ、酸素および水蒸気の遮断性の非常に高いガスバリア性が求められている。さらにこれらの用途では、フィルムの表面の高い表面平滑性と、ピンホールの無いガスバリアフィルムが求められている。
【0005】
近年、窒化シリコン膜の形成については、例えば、1600〜1800℃程度に加熱したタングステン線からなる発熱体に、例えば、シラン(SiH)ガスおよびアンモニア(NH)ガスを原料ガスとして供給して分解活性化させることにより、基板上に窒化シリコン膜を堆積させる化学蒸着法(触媒CVD(Cat CVD)法、またはHot Wire (CVD法))が、透明、かつ、酸素および水蒸気の遮断性を有するガスバリア膜形成方法の一つとして提案されている。
【0006】
このような触媒化学的気相蒸着法(Cat−CVD)を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などのプラスチックフィルムの表面に窒化珪素などの無機薄膜を形成する場合に、そのガスバリア性をさらに向上させるために、膜厚の薄い部分がないように無機薄膜の膜厚を十分に厚くしても、無機薄膜の表面の平滑性が損なわれる。
【非特許文献1】石川県工業試験場研究報告 P.17−22,No.54(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、Cat−CVDなどを利用してプラスチックフィルムの表面に透明無機薄膜を形成させ、その透明性、ガスバリア性、表面平滑性、ピンホールの少ないフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)及び透明無機薄膜層(C)が、この順の積層されていること特徴とするガスバリアフィルムに関する。
また本発明は、透明基材フィルム(A)と透明無機薄膜層(C)が、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)を介して/又は介することなく積層され、さらに透明無機薄膜層(C)の表面に、透明性樹脂層(D)が積層されていることを特徴とするガスバリアフィルムに関する。
【0009】
これらのガスバリアフィルムにおいて、透明性樹脂層(D)が、シランカップリング剤からなる層、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む層、またはゾル−ゲル法によって形成される層であることが望ましい。
さらに、透明性樹脂層(D)は透明基材フィルム(A)にコートされた後に、熱処理されたものであることが望ましい。また、本発明の透明無機薄膜層(C)は珪素を含む薄膜層であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガスバリアフィルムは、優れたガスバリア性を有しており、有機EL等の保護フィルム、包装材のバリア材などに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のガスバリアフィルムは、透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、及び珪素を含む透明無機薄膜層(C)が、この順の積層されていること特徴とするガスバリアフィルムである。
【0012】
透明基材フィルム(A)
本発明に用いられる透明基材フィルム(A)には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエステル、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアセテート、ポリアミド系樹脂等の透明性を有する樹脂からなるフィルムを例示できる。
【0013】
本発明の透明基材フィルム(A)の厚さは通常10μm〜250μm程度であり、用いる用途により、フィルムの自立性、ハンドリング性、耐衝撃性等を考慮して決められる。
【0014】
透明樹脂層(B)
透明樹脂層(B)としては、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体からなるポリマーを含む層があり、またそれとは異なる層でもよい。このような透明樹脂層(B)の材料は、特に限定されない。例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル/スチレン共重合体、ポリ(−4−メチル−1−ペンテン)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、カルド樹脂等がある。また、これらをポリビニルブチラール、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、多官能性アクリレート化合物等で変性したものや、架橋ポリエチレン樹脂、架橋ポリエチレン/エポキシ樹脂、架橋ポリエチレン/シアナート樹脂、ポリフェニレンエーテル/エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル/シアナート樹脂等の熱可塑性樹脂で変性した熱硬化性樹脂等がある。
【0015】
さらに、透明性樹脂層(B)構成する材料として、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解させた樹脂組成物がある。また、これらの樹脂組成物の混合物を用いることも可能である。
これらの材料は熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性の材料を含み、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、いずれの材料においても、成膜性向上およびピンホール防止等を目的として、適切な樹脂や添加剤を併用してもよい。さらに、保護層を形成する際には、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な希釈溶剤に樹脂を溶解または分散させて薄膜を形成するが、使用する溶剤はいずれであってもよい。
これらの中でも、透明樹脂層(B)として好適には、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む層である。用いられる不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体としては、重合度が20未満の不飽和カルボン酸及びそれらの多価金属塩などの誘導体、エポキシアクリレート化合物などが例示される。
また、後記する透明性樹脂層(D)に用いられることのある重合度が20未満の不飽和カルボン酸とその多価金属塩などの誘導体から得られるポリマーも利用することができる。
この場合、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体から重合により得られたポリマーを透明基材フィルム(A)にコートしてもよく、また、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体を、透明基材フィルム(A)にコートした後に、そのコート層をパーオキサイド架橋、紫外線架橋などによりラジカル重合させてポリマーコート層としてもよい。
【0016】
透明無機薄膜層(C)
透明無機薄膜層(C)には、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、マグネシウムなどの酸化物、窒化物、弗化物の単体、或いはそれらの複合物からなり、特に窒化珪素からなる薄膜が好適である。
【0017】
透明無機薄膜層(C)を形成する方法としては特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、蒸着、イオンプレーティング、スパッタやCVD法により成膜を行う方法がある。これらの透明無機薄膜層(C)は、透明樹脂層(B)上に形成することが望ましい。また、表面平滑性に優れた形状の膜を得るためには、透明樹脂層(B)の表面と、透明無機薄膜の形成における無機原子や化合物の結合反応が速やかに行われることが好ましい。これらの結合反応を迅速に行うには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが望ましい。
【0018】
よって成膜法としては化学的気相蒸着法(CVD法)が望ましい。これにより、透明樹脂層(B)の表面と、窒化珪素や酸化窒化珪素などの珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、透明無機薄膜層(C)の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。
【0019】
CVD法の中でも、ガス分子を発熱体により分解活性化させて基板に成膜を行うCat−CVDを用いると、緻密な透明無機薄膜が得られ、優れたガスバリア性が得られる。さらに、透明で応力の低い、すなわち柔軟性のある膜を形成し得る。
【0020】
本発明における透明無機薄膜層(C)の膜厚は、ガスバリア性能、およびガスバリア性能に対する耐屈曲性の観点から、通常は5〜5000nm、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜200nmである。
【0021】
ガスバリアフィルム
本発明におけるガスバリアフィルムは、透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)および透明無機薄膜層(C)を、この順の積層させて得ることができる。本発明のガスバリアフィルムの製造方法としては、透明基材フィルム(A)上に透明樹脂層(B)を公知の方法で形成し、更に透明無機薄膜層(C)を上記の方法で形成する方法が挙げられる。
【0022】
本発明のガスバリアフィルムは、上記の3種3層に限られることなく、透明基材フィルム(A)/透明樹脂層(B)/透明無機薄膜層(C)の順となる組合せが1つ以上あれば、必要に応じて複数層を形成しても良い。但し、品質管理や製造コストの観点から各層の上限は10層程度である。また、透明無機薄膜層(C)は、透明樹脂層(B)上に形成されていることが好ましい。
また、本発明の他の態様には、透明基体フィルム(A)と透明無機薄膜層(C)が、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)を介して/又は介することなく積層され、さらに透明無機薄膜層(C)の表面に、透明性樹脂層(D)が積層されていることを特徴とするガスバリアフィルムがある。
【0023】
透明性樹脂層(D)としては、シランカップリング剤からなる層、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む層、またはゾル−ゲル法によって形成される層であることが望ましい。
透明性樹脂層(D)を、ゾル−ゲル法によって形成される層とする場合は、その層は1層に限られず、2層以上のフィルムでもよい。
ゾル−ゲル法では、水溶性高分子と、(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤が利用される。ここでアルコキシドとは、金属等のアルコキシドである、テトラエトキシシラン〔Si(OC254 〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373 〕などの一般式、M(OR)n (M:Si Ti Ai Zr等の金属等, R:CH3 、C25 等のアルキル基)で表せるものである。なかでもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
透明性樹脂層(D)としては、重合度が20未満の不飽和カルボン酸とその多価金属塩などの誘導体からなるポリマーを含む層が好適である。
重合度が20未満の不飽和カルボン酸とその多価金属塩などの誘導体は、一般にこれら化合物を含む溶液状態で透明基材フィルム(A)にコートし、その後、コート液の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を、配合されるラジカル開始剤、紫外線等により重合させて透明性樹脂層(D)とすることが望ましい。
【0024】
不飽和カルボン酸
用いられる不飽和カルボン酸には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα,β−エチレン性不飽和基を有するカルボン酸が好適であり、重合度が20未満、好ましくは単量体若しくは10以下であることが望ましい。これら不飽和カルボン酸の中でも単量体が多価金属化合物で完全に中和された塩が形成し易く、当該塩を重合して得られる膜のガスバリア性に優れるので好ましい。
【0025】
多価金属化合物
不飽和カルボン酸の多価金属塩の調製に用いられる多価金属化合物には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。これら二価の金属化合物を用いた場合は、前記不飽和カルボン酸との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これらは、少なくとも1種が使用され、1種のみの使用であっても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
不飽和カルボン酸の多価金属塩
不飽和カルボン酸の多価金属塩は、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸と前記多価金属化合物との塩である。これら不飽和カルボン酸多価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。かかる不飽和カルボン酸の多価金属塩の中でも、特に(メタ)アクリル酸亜鉛が得られるガスバリア性膜の耐熱水性に優れるので好ましい。
【0027】
透明性樹脂層(D)の製法
透明性樹脂層(D)は、透明基材フィルム(A)に予めコートした不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を重合して製造することが望ましい。
透明基材フィルム(A)に不飽和カルボン酸および/またはその誘導体の溶液を塗布する方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーターなど従来公知の方法を採用することができる。
なお、不飽和カルボン酸の多価金属塩の溶液には、シリル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールを配合することも行われる。
【0028】
透明性樹脂層(D)の厚さは、各種用途により要求される製造コストや表面平滑性などに応じて、適宜決定されるので特に制限はないが、一般的には0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。
透明性樹脂層(D)を設けることにより、透明基材フィルム(A)と透明無機薄膜層(C)の密着性を向上させることができ、ガスバリア性を改良することができる。
また、透明性樹脂層(D)が、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体からなるポリマーを含む層である場合は、熱処理することが望ましい。
熱処理は、透明性樹脂層(D)を通常60〜350℃、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは150〜250℃の温度範囲で行うことが望ましく、不活性ガス雰囲気下とすることが望ましい。また、圧力は特に限定されず、加圧下、減圧下、常圧下のいずれでもよい。加熱処理時間は、通常30秒から90分程度であり、中でも1分から70分が好適であり、特に5分から60分が好適である。
【0029】
重合により得られた透明性樹脂層(D)を引き続き連続的に熱処理してもよく、またフィルムを一旦常温にもどした後に、熱処理に供してもよい。通常は重合によりフィルムを形成する工程と熱処理の工程を連続させることが製造効率上望ましい。
熱処理に供される透明性樹脂層(D)は、重合によりフィルムの構造が確定しているものと推定される。これを更に熱処理することにより、脱水および膜構造が部分的な再配置によってより安定化されたフィルムとなり、ガスバリア性がより安定するものと推定される。
【0030】
本発明のガスバリアフィルムは、その目的を損なわない範囲で他の層を含んでいても、他の層が形成されていても良い。例えば透明金属薄膜層や透明金属酸化物層等が挙げられる。更には、光拡散層、防汚層、ハードコート層、帯電防止層、紫外線吸収層等の機能性透明層が挙げられる。また、上記の透明基材フィルム(A)や透明樹脂層(B)は、コロナ処理やプラズマ処理を行っても良い。これらを好適に組み合わせることにより、反射防止性能や防眩性能を付与することも出来る。
【0031】
本発明のガスバリアフィルムの可視光線透過率は、70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。可視光線透過率の上限値は、100%であるが、実際には表面反射や、材料による吸収があるので95%以下である場合が多い。また、本発明のガスバリアフィルムの平均粗さRaは例えば1μm2エリアにおいて0〜1nmである事が好ましく、更には0〜0.5nmであることが好ましい。
【0032】
本発明のガスバリアフィルムは、特に液晶や有機EL等の表示デバイスに用いることが出来る。具体的には上記デバイスの表示部の素子基板として有用であり、表示基体部を構成するとともに、表示素子部への酸素や水蒸気等の進入による、素子劣化に対する保護を行うことができる。
【実施例】
【0033】
〈評価方法〉
(1)水蒸気透過度[g/(m・day)]の測定:
透明無機薄膜層(C)または、透明性樹脂層(D)の表面に、LLDPEフィルム(東セロ社製 商品名TUX FCS 密度0.920g/cm、MFR:3.8g/10分、厚さ50μm)をドライラミネートすることによりヒートシール層を積層して、水蒸気透過度の測定用の積層フィルムを準備した。次いで、当該積層フィルムのLLDPEフィルムを内面にして、表面積が0.01mになるように、製袋し、内容物として塩化カルシウムをいれ、温度40℃、湿度90%RHの条件で7日間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
なお、袋にする前に積層フィルムは40℃、90%RHの環境下で3日間調湿した。
【0034】
)塗工膜中の含水率の測定:不飽和カルボン酸の多価金属塩の溶液をコートした積層フィルムあるいは重合後の積層フィルムから120×297mmの測定用サンプルを切り出しその重量(Wg)を測定した後、温度;130℃の熱風乾燥器で10分間乾燥してその重量(Wg)を測定する。それとは別に基材フィルム(不飽和カルボン酸の多価金属塩の溶液をコートするフィルム)から120×297mmの測定用サンプルを切り出しその重量(W基材g)を測定する。そして、前記各フィルムの重量を用いて、以下の式で塗工膜中の含水率を求めた。
含水率(重量%)=〔(W−W基材)−(W−W基材)〕/(W−W基材
【0035】
〈塗工液の作製〉
溶液(イ)の作製
エバール樹脂(クラレ社製 商品名;エバールL101B、エチレン共重合比率;27mol%)を、水とイソプロピルアルコール混合液(水:IPA=4:1)中で加熱溶解し、濃度8%の溶液(イ)を作製した。

溶液(ロ)の作製
アクリル酸亜鉛(アクリル酸のZn塩)水溶液(浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、Zn成分10重量%)と、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をモル分率でそれぞれ98.5%、1.2%、0.3%となるように混合し、アクリル酸Zn塩溶液を作製した。これに、シリル基変性PVA(クラレ社製 商品名:R1130)の10%水溶液を、アクリル酸亜鉛とシリル基変性PVAの固形分比が87.5%、12.5%になるように混合し、溶液(ロ)を作製した。

溶液(ハ)の作製
テトラメトキシシラン〔Si(OCH3)4〕3.8gに0.1N塩酸を43g加え60分間撹拌した。この溶液をポリビニルアルコール(クラレ社製 商品名;PVA117、重合度;1700、鹸化度;98.5モル%)を水とイソプロピルアルコールの混合液(水:IPA=9:1)で加熱溶解した3%溶液とを、重量比率で1:1になるように混合し、溶液(ハ)を作製した。
【0036】
実施例1〜5
厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名;エンブレットS−50)からなる基材のコロナ処理面に、エポキシアクリレート系UV硬化塗材(日本化工塗料社製 商品名;FA−18)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバーを用いて1.2g/m(固形分)になるようにコートし、熱風乾燥機を使用して温度100℃、時間15秒の条件で乾燥した。続いて、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm、積算光量:117mJ/cmの条件で紫外線を照射してコート膜の重合を行いコートフィルムを得た。
さらに、コートフィルムのコート面上に、CatCVD法により厚さ150nm、75nm、50nm、30nm、10nmのSiN膜をそれぞれ形成させガスバリア性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0037】
参考例1〜5
厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名;エンブレットS−50)からなる基材のコロナ処理面に、CatCVD法により厚さ150nm、75nm、50nm、30nm、10nmのSiN膜をそれぞれ形成させガスバリア性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0038】
実施例6
参考例3で得たガスバリア性フィルムの無機膜面上に、溶液(イ)をメイヤーバーを用いて固形分で0.3g/mになるように塗布し、熱風乾燥機を使用して温度110℃、時間30秒の条件で乾燥した。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。
実施例7
実施例3で得たガスバリア性フィルムの無機膜面上に、溶液(イ)をメイヤーバーを用いて固形分で0.3g/mになるようにコートし、熱風乾燥機を使用して温度110℃、時間30秒の条件で乾燥した。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。
実施例8
参考例3で得たガスバリア性フィルムの無機膜面上に、溶液(ロ)をメイヤーバーを用いて固形分で2.3g/mになるようにコートし、熱風乾燥機を使用して温度40℃、時間30秒の条件で乾燥した。後、速やかにコート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いてUV強度:180mW/cm、積算光量:180mJ/cmの条件で紫外線を照射して重合を行った。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。なお、実施例8について、上記記載の方法で塗工膜の含水率を測定したところ38%であった。
実施例9
実施例3で得たガスバリア性フィルムの無機膜面上に、溶液(ロ)をメイヤーバーを用いて固形分で2.3g/mになるようにコートし、熱風乾燥機を使用して温度40℃、時間30秒の条件で乾燥した。後、速やかに塗布面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いてUV強度:180mW/cm、積算光量:180mJ/cmの条件で紫外線を照射して重合を行った。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。なお、実施例9について、上記記載の方法で塗工膜の含水率を測定したところ39%であった。
【0039】
実施例10
参考例3で得たガスバリア性フィルムの無機膜面上に、溶液(ハ)をメイヤーバーを用いて固形分で0.5g/mになるようにコートし、熱風乾燥機を使用して温度110℃、時間30秒の条件で乾燥した。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。
実施例11
実施例3で得たガスバリア性フィルムの無機膜面上に、溶液(ハ)をメイヤーバーを用いて固形分で0.5g/mになるようにコートし、熱風乾燥機を使用して温度110℃、時間30秒の条件で乾燥した。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。
実施例12
実施例11で得たガスバリア性積層フィルムを、厚紙に固定し、200℃に調整したオーブン中で60分間熱処理を行った。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。
【0040】





【0041】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、及び透明無機薄膜層(C)が、この順の積層されていること特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項2】
透明基材フィルム(A)と透明無機薄膜層(C)が、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)を介して/又は介することなく積層され、さらに透明無機薄膜層(C)の表面に、透明性樹脂層(D)が積層されていることを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項3】
透明性樹脂層(D)が、シランカップリング剤からなる層、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む層、またはゾル−ゲル法によって形成される層であることを特徴とする請求項2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
透明性樹脂層(D)が熱処理されてなることを特徴とする請求項2または3に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
透明無機薄膜層(C)が窒化を含む薄膜層であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
透明無機薄膜層(C)が触媒化学的気相蒸着法(Cat−CVD)により形成される膜であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。

【公開番号】特開2007−245433(P2007−245433A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70057(P2006−70057)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】