説明

ガスバリアフィルム

【課題】
ガスバリア性及びヒートシール性が共に優れ、かつ簡便な工程で有機EL等のEL素子や太陽電池を封印することができるフィルムを提供する。
【解決手段】
透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、無機薄膜層(C)、透明性樹脂層(D)、ヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)等が、この順の積層されてなるガスバリアフィルムを用い、重ね合わされた2枚のガスバリアフィルム、または折りたたまれたガスバリアフィルムの間に有機EL等を収納し、ヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)の部分をヒートシールして密封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示素子、有機EL等の素子、面状発光体、光ディバイス、太陽電池等を収納し、ヒートシールにより封印することができるガスバリアフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELは、軽量、薄型で目に優しい面状発光体として、携帯電話、時計、液晶ディスプレイなどに利用されている。また、有機ELは外部からの吸湿により発光量が低下する。このため、長期間安定した発光量を維持するため、有機ELをガスバリア性膜で密封することも行われている。
また従来から、有機ELの封止にプラスチックフィルムが用いられ、ヒートシールすることにより封印することが知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
また、これらプラスチックフィルムは、表示部が視認できる透明性と表面平滑性が求められている。さらに、EL基板上に形成された素子部の劣化を防止するため、酸素および水蒸気の遮断性に優れたガスバリア性とピンホールのないフィルムが求められている。
【0004】
【特許文献1】特開5−36475 第37欄
【特許文献2】特開平8−167475 第19欄
【特許文献3】特開2001−237065 第23欄
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、ガスバリア性及びヒートシール性が共に優れ、かつ簡便な工程で有機EL等の素子や太陽電池等を封印することができるバリアフィルムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、この発明は内部に有機EL等の素子や太陽電池等を収納し、ヒートシールにより密封する用途に適したガスバリアフィルムであって、透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、無機薄膜層(C)を介して/又は介することなく、さらにヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)が、この順に積層されてなるガスバリアフィルムに関する。
【0007】
さらに、この発明は、内部に有機EL等の素子や太陽電池等を収納し、ヒートシールにより密封する用途に適したガスバリアフィルムであって、透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、無機薄膜層(C)、透明性樹脂層(D)、さらに、ヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)が積層されてなるガスバリアフィルムに関する。
【0008】
透明樹脂層(B)及び/または透明性樹脂層(D)は透明基材フィルム(A)に積層された後に、熱処理されたものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガスバリアフィルムは、優れたガスバリア性を有しており、また、ヒートシールという簡便な工程で有機EL等の素子や太陽電池等を封印することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられるガスバリアフィルムを構成する透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、及び無機薄膜層(C)、透明性樹脂層(D)、およびヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)について以下に説明する。
【0011】
透明基材フィルム(A)
本発明に用いられるガスバリアフィルムの透明基材フィルム(A)には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエステル、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアセテート、ポリアミド系樹脂等の透明性を有する樹脂からなるフィルムを例示できる。これらは、未延伸でも、一軸や二軸の延伸フィルムでもよい。
【0012】
本発明に用いられるガスバリアフィルムの透明基材フィルム(A)の厚さは通常10μm〜250μm程度であり、用いる用途により、フィルムの自立性、ハンドリング性、耐衝撃性等を考慮して決められる。
【0013】
透明樹脂層(B)
本発明に用いられる透明樹脂層(B)は、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む層である。不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体から重合により得られたポリマーを透明基材フィルム(A)にコートしてもよく、また、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体を、まず、透明基材フィルム(A)にコートした後に、そのコート層をパーオキサイド架橋、紫外線架橋などによりラジカル重合させてポリマーコート層とすることでもよい。
【0014】
用いられる不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体としては、重合度が20未満の不飽和カルボン酸及びそれらの多価金属塩などの誘導体、エポキシアクリレート化合物が例示される。
【0015】
重合度が20未満の不飽和カルボン酸とその多価金属塩などの誘導体を、透明基材フィルム(A)に予めコートするには、一般にこれら化合物を含む溶液状態でコートし、その後、コート液の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、配合されるラジカル開始剤、紫外線などにより重合させて透明樹脂層(B)とすることが望ましい。
【0016】
不飽和カルボン酸
用いられる不飽和カルボン酸には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα,β−エチレン性不飽和基を有するカルボン酸が好適であり、重合度が20未満、好ましくは単量体若しくは10以下であることが望ましい。これら不飽和カルボン酸の中でも単量体が多価金属化合物で完全に中和された塩が形成し易く、当該塩を重合して得られる膜のガスバリア性に優れるので好ましい。
【0017】
多価金属化合物
不飽和カルボン酸の多価金属塩の調製に用いられる多価金属化合物には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。これら二価の金属化合物を用いた場合は、前記不飽和カルボン酸との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これらは、少なくとも1種が使用され、1種のみの使用であっても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
不飽和カルボン酸の多価金属塩
不飽和カルボン酸の多価金属塩は、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸と前記多価金属化合物との塩である。これら不飽和カルボン酸多価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。かかる不飽和カルボン酸の多価金属塩の中でも、特に(メタ)アクリル酸亜鉛が得られるガスバリア性膜の耐熱水性に優れるので好ましい。
エポキシアクリレート化合物
エポキシアクリレート化合物には、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジプロピレンギルコールジグリシジルエーテルジアクリレート、フェノールノボラック型エポキシアクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート等がある。
【0019】
透明樹脂層(B)の製法
透明樹脂層(B)は、透明基材フィルム(A)に予めコートした不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を重合して製造することが望ましい。また重合により形成されたフィルムを熱処理することが望ましい。
透明基材フィルム(A)に不飽和カルボン酸および/またはその誘導体の溶液を塗布する方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーターなど従来公知の方法を採用することができる。
なお、不飽和カルボン酸の多価金属塩の溶液には、必要に応じてポリビニルアルコール等を配合することも行われる。
【0020】
透明樹脂層(B)の熱処理
上記の重合によって得られた透明樹脂層(B)は、熱処理することが望ましい。
熱処理は、透明樹脂層(B)を通常30〜350℃、好ましくは60〜300℃、さらに好ましくは150〜250℃の温度範囲で行うことが望ましく、不活性ガス雰囲気下とすることが望ましい。また、圧力は特に限定されず、加圧下、減圧下、常圧下のいずれでもよい。加熱処理時間は、通常30秒から90分程度であり、中でも1分から70分が好適であり、特に5分から60分が好適である。
熱処理に供されるフィルムは、通常透明基材フィルム(A)に塗布されたまま熱処理されるが、必要に応じて基材層から剥離して熱処理してもよい。
【0021】
重合により得られた透明樹脂層(B)を引き続き連続的に熱処理してもよく、またフィルムを一旦常温にもどした後に、熱処理に供してもよい。通常は重合によりフィルムを形成する工程と熱処理の工程を連続させることが製造効率上望ましい。
熱処理に供される透明樹脂層(B)は、重合によりフィルムの構造が確定しているものと推定される。これを更に熱処理することにより、脱水および膜構造が部分的な再配置によってより安定化されたフィルムとなり、ガスバリア性がより安定するものと推定される。
【0022】
透明樹脂層(B)の厚さは、各種用途により要求される製造コストや表面平滑性などに応じて、適宜決定されるので特に制限はないが、一般的には0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。
透明樹脂層(B)を設けることにより、透明基材フィルム(A)と無機薄膜層(C)の密着性を向上させることができ、ガスバリア性を改良することができる。
【0023】
無機薄膜層(C)
無機薄膜層(C)には、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、マグネシウム、インジウムなどの酸化物、窒化物、弗化物の単体、或いはそれらの複合物からなり、特に酸化アルミニウムは、無色透明であり、ボイル・レトルト耐性等の特性にも優れており、広範囲の用途に用いることができる。
【0024】
無機薄膜層(C)を形成する方法としては特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、スパッタやCVD法により成膜を行う方法がある。これらの無機薄膜層は、透明樹脂層(B)上に形成することが望ましい。
また、表面平滑性に優れた形状の膜を得るためには、透明樹脂層(B)の表面と、透明無機薄膜の形成における無機原子や化合物の結合反応が速やかに行われることが好ましい。これらの結合反応を迅速に行うには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが望ましい。
【0025】
よって成膜法としては化学的気相蒸着法(CVD法)が望ましい。これにより、透明樹脂層(B)の表面と、窒化珪素や酸化窒化珪素などの珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、無機薄膜層(C)の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。
【0026】
CVD法の中でも、ガス分子を発熱体により分解活性化させて基板に成膜を行う、所謂触媒CVD法(Cat−CVD)を用いると、緻密な透明無機薄膜が得られ、優れたガスバリア性が得られる。さらに、透明で、さらに応力の低い、すなわち柔軟性のある膜を形成することができるので、更に望ましい。
【0027】
本発明における無機薄膜層(C)の膜厚は、ガスバリア性能、およびガスバリア性能に対する耐屈曲性の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜200nmである。
【0028】
透明性樹脂層(D)
ここで用いられる透明性樹脂層(D)は、上記した不飽和カルボン酸および/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)と同一の層であってもよく、またそれとは異なる層でもよい。このような透明樹脂層(D)の材料としては、特に限定されない。
例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル/スチレン共重合体、ポリ(−4−メチル−1−ペンテン)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、カルド樹脂等がある。また、これらをポリビニルブチラール、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、多官能性アクリレート化合物等で変性したものや、架橋ポリエチレン樹脂、架橋ポリエチレン/エポキシ樹脂、架橋ポリエチレン/シアナート樹脂、ポリフェニレンエーテル/エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル/シアナート樹脂等の熱可塑性樹脂で変性した熱硬化性樹脂等がある。
これらの熱硬化性材料、紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、いずれの材料においても、成膜性向上およびピンホール防止等を目的として、適切な樹脂や添加剤を併用してもよい。さらに、保護層を形成する際には、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な希釈溶剤に樹脂を溶解または分散させて薄膜を形成するが、使用する溶剤はいずれであってもよい。
なお、透明性樹脂層(D)がヒートシール性を有する場合は、この透明性樹脂層(D)が、透明性樹脂層(D)とヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)の両方の役割を果たす態様もある。この場合、透明性樹脂層(D)があるだけで、ヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)をさらに使用しない場合もある。
【0029】
本発明では、透明性樹脂層(D)として、シランカップリング剤からなる層、またはゾル−ゲル法によって形成される層、または不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む層であることが望ましい。
ゾル−ゲル法では、水溶性高分子と、(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤が利用される。ここでアルコキシドとは、金属等のアルコキシドである、テトラエトキシシラン〔Si(OC254 〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373 〕などの一般式、M(OR)n (M:Si Ti Ai Zr等の金属等, R:CH3 、C25 等のアルキル基)で表せるものである。なかでもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0030】
透明性樹脂層(D)としては、重合度が20未満の不飽和カルボン酸とその多価金属塩などの誘導体からなるポリマーを含む層が好適である。
重合度が20未満の不飽和カルボン酸とその多価金属塩などの誘導体は、一般にこれら化合物を含む溶液状態で透明基材フィルム(A)にコートし、その後、コート液の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を、配合されるラジカル開始剤、紫外線等により重合させて透明性樹脂層(D)とすることが望ましい。
【0031】
ヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)
本発明に用いられるヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)に用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、中でも低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数4ないし8のαオレフィンとのランダム共重合体であるLLDPE、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、1−オクテン共重合体などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体などのプロピレン系エラストマー、ブテン・エチレン共重合体などのブテン系エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体などのエチレンと極性モノマーとの共重合体が好適例として例示される。
これらは、さらに、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸やエポキシ基含有モノマーなどの極性基含有モノマーで変性されたものでもよい。
ヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)の厚さは、通常 0.5〜300ミクロン、通常は1〜100ミクロンである。
これらのヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)は、ラミネートにより積層される方法、コーティングによりコート層として形成される方法がある。
このような層の中でも、コート剤としては、エチレン−ビニル酢酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸ナトリウム塩共重合体などのアイオノマーが例示される。
【0032】
ガスバリアフィルム
本発明のガスバリアフィルムは、透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、無機薄膜層(C)を介して/又は介することなく、さらにヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)を、この順に積層させて得ることができる。
また、本発明のガスバリアフィルムは、透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、無機薄膜層(C)、透明性樹脂層(D)、さらに、ヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)を、この順に積層させて得ることができる。
【0033】
上記のガスバリアフィルムは、必要に応じて複数枚積層して利用することも可能である。
さらに、紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解させた樹脂組成物がある。また、これらの樹脂組成物の混合物を用いることも可能である。
【0034】
本発明で用いられるガスバリアフィルムは、その目的を損なわない範囲で他の層を含んでいても、他の層が形成されていても良い。例えば透明金属薄膜層や透明金属酸化物層等が挙げられる。更には、光拡散層、防汚層、ハードコート層、帯電防止層、紫外線吸収層等の機能性透明層が挙げられる。また、上記の透明基材フィルム(A)や透明樹脂層(B)は、コロナ処理やプラズマ処理を行っても良い。これらを好適に組み合わせることにより、反射防止性能や防眩性能を付与することも出来る。
【0035】
本発明で用いられるガスバリアフィルムの可視光線透過率は、70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。可視光線透過率の上限値は、100%であるが、実際には表面反射や、材料による吸収があるので95%以下である場合が多い。また、本発明のガスバリアフィルムの平均粗さRaは例えば1μm2エリアにおいて0〜1nmである事が好ましく、更には0〜0.5nmであることが好ましい。
【0036】
本発明のガスバリアフィルムがそのヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)を利用して他のバリア材にヒートシールされて形成された空間に、EL素子や太陽電池等を収納して密封することができる。
【0037】
また、本発明によれば、重ね合わされた2枚のガスバリアフィルム、または折りたたまれたガスバリアフィルムの間に有機ELを収納し、相対するヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)の部分をヒートシールして密封することができる。
ガスバリアフィルムは、それぞれ重ね合わされた2枚のガスバリアフィルム、またはガスバリアフィルムが折りたたまれて利用される。
【0038】
この場合、ガスバリアフィルムは、そのヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)が内側になるように、その2枚を重ね合せ、または折りたたんで使用される。
ヒートシールは、ヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)を構成する樹脂の融点以上の温度のヒートシールバーを押圧したり、誘導加熱などの他の加熱方法も利用することも行われる。
本発明によれば、透明性、表面平滑性に優れ、酸素や水蒸気の侵入を防止できる優れたガスバリア性のフィルムをヒートシールという簡便な工程によってEL素子や太陽電池などを密封することができる。
【実施例】
【0039】
〈評価方法〉
(1)水蒸気透過度[g/(m・day)]の測定:
実施例で得られたガスバリアフィルムのヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)を内面にして、表面積が0.01mになるように、製袋し、内容物として塩化カルシウムをいれ、温度40℃、湿度90%RHの条件で放置後、3日後と10日後の重量差で水蒸気透過度を測定した。
【0040】
(2)有機ELの封止性
ヒートシール層を内側にしてガスバリアフィルムを2つ折りにし、有機EL素子を収納し、ヒートシール層同士を重ね合わせ、130℃のヒートシールバーを押圧して、幅10ミリのヒートシール部を形成させて封止した。
密封することができた場合を ○ できない場合を × で評価した。
【0041】
〈塗工液の作製〉
溶液(イ)の作製
アクリル酸亜鉛(アクリル酸のZn塩)水溶液(浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、Zn成分10重量%)と、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をモル分率でそれぞれ98.5%、1.2%、0.3%となるように混合し、アクリル酸Zn塩溶液を作製した。
【0042】
溶液(ロ)の作製
溶液(イ)に、シリル変性PVA(クラレ社製 商品名:R1130)の10%水溶液を、アクリル酸亜鉛とシリル変性PVAの固形分比率が87.5%、12.5%になるように混合し、溶液(ロ)を作製した。
【0043】
溶液(ハ)の作製
テトラメトキシシラン〔Si(OCH)4〕3.8gに0.1N塩酸を43g加え60分間撹拌した。これに、ポリビニルアルコール(クラレ社製 商品名;PVA117、重合度;1700、鹸化度;98.5モル%)を水とイソプロピルアルコールの混合液(水:IPA=9:1)で加熱溶解した3%溶液を、重量比率で1:1になるように混合し、溶液(ハ)を作製した。
【0044】
実施例 1
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名;エンブレットS−50)からなる基材のコロナ処理面に、溶液(イ)をメイヤーバーを用いて固形分で3.5g/mになるようにコートした後、紫外線照射装置に(フージョン社製 型式:CV−110Q−G、種類 F600V−10)を用いて、照度:1760mW/cm及び光量:560mJ/cmの紫外線を照射して重合した。次に、このフィルムを200℃で1時間熱処理した。
さらに、その表面にLLDPEフィルム(東セロ社製 商品名TUX FCS 密度0.920g/cm、MFR:3.8g/10分、厚さ50μm)をドライラミネートすることによりヒートシール層が積層されたガスバリアフィルムを得た。
ガスバリアフィルムの水蒸気透過度は1.51 g/(m・day)であり、(2)有機ELの封止性の評価は○であった。
【0045】
実施例 2
厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名;エンブレットS−50)からなる基材のコロナ処理面に、エポキシアクリレート系UV硬化塗材(日本化工塗料社製 商品名;FA−18)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバーを用いて1.2g/m2(固形分)になるようにコートし、100℃、15秒間乾燥した。続いて、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm、積算光量:117mJ/cmの条件で紫外線を照射してコート膜の重合を行いコートフィルムを得た。
さらに、コートフィルムのコート面に、CatCVD法により厚さ50nm、のSiN膜を形成させたフィルムを得た。
次に、その表面にLLDPEフィルム(東セロ社製 商品名TUX FCS 密度0.920g/cm、MFR:3.8g/10分、厚さ50μm)をドライラミネートすることによりヒートシール層を積層して、ガスバリアフィルムを得た。
ガスバリアフィルムの水蒸気透過度は0.08 g/(m・day)であり、(2)有機ELの封止性の評価は○であった。
【0046】
実施例 3
厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名;エンブレットS−50)からなる基材のコロナ処理面に、エポキシアクリレート系UV硬化塗材(日本化工塗料社製 商品名;FA−18)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバーを用いて1.2g/m(固形分)になるようにコートし、100℃、15秒間乾燥した。続いて、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm、積算光量:117mJ/cmの条件で紫外線を照射してコート膜の重合を行いコートフィルムを得た。
さらに、コートフィルムのコート面に、スパッタリング法により厚さ30nm、のITO膜を形成させたフィルムを得た。
【0047】
次に、溶液(ロ)をメイヤーバーを用いて固形分で2.3g/mになるようにコートし、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、紫外線を照射して重合した。次に、このフィルムを200℃で1時間熱処理した。
さらに、その表面にLLDPEフィルム(東セロ社製 商品名TUX FCS 密度0.920g/cm、MFR:3.8g/10分、厚さ50μm)をドライラミネートすることによりヒートシール層が積層されたガスバリアフィルムを得た。
ガスバリアフィルムの水蒸気透過度は0.01 g/(m・day)未満であり、(2)有機ELの封止性の評価は○であった。
【0048】
実施例 4
厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名;エンブレットS−50)からなる基材のコロナ処理面に、エポキシアクリレート系UV硬化塗材(日本化工塗料社製 商品名;FA−18)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバーを用いて1.2g/m(固形分)になるようにコートし、100℃で15秒間乾燥した。続いて、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm、積算光量:117mJ/cmの条件で紫外線を照射してコート膜の重合を行いコートフィルムを得た。
さらに、コートフィルムのコート面に、スパッタリング法により厚さ30nm、のITO膜を形成させたフィルムを得た。
【0049】
次に、溶液(ハ)をメイヤーバーを用いて固形分で0.5g/mになるようにコートし、温度110℃、30秒間乾燥した。次に、このフィルムを200℃で1時間熱処理した。
さらに、その表面にLLDPEフィルム(東セロ社製 商品名TUX FCS 密度0.920g/cm、MFR:3.8g/10分、厚さ50μm)をドライラミネートすることによりヒートシール層が積層されたガスバリアフィルムを得た。
ガスバリアフィルムの水蒸気透過度は0.01 g/(m・day)未満であり、(3)有機ELの封止性は○であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のバリアフィルムを利用することにより、液晶表示素子、有機EL等の素子、面状発光体、光ディバイス、太陽電池等を収納し、ヒートシールにより封印することができる。
すなわち、ガスバリアフィルムがヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)を利用して他のバリア材にヒートシールされて形成された空間に、EL等の素子や太陽電池を収納して密封することができる。
他のバリア材は、本発明のヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)と熱融着可能な従来公知の材料がその表面を構成するものであれば、特に限定されない。
また、重ね合わされた2枚のガスバリアフィルム、または折りたたまれたガスバリアフィルムの間に有機EL等の素子や太陽電池等を収納し、相対するヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)の部分をヒートシールして密封することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、無機薄膜層(C)を介して/又は介することなく、さらにヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)が、この順に積層されてなるガスバリアフィルム。
【請求項2】
透明基材フィルム(A)、不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体からなるポリマーを含む透明樹脂層(B)、無機薄膜層(C)、透明性樹脂層(D)、さらに、ヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)が積層されてなるガスバリアフィルム。
【請求項3】
透明樹脂層(B)及び/または透明性樹脂層(D)が熱処理されてなるガスバリアフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
ガスバリアフィルムがヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)を利用して他のバリア材にヒートシールされて形成された空間に、素子または太陽電池が収納されて密封された請求項1ないし3のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
重ね合わされた2枚のガスバリアフィルム、または折りたたまれたガスバリアフィルムの間に素子または太陽電池を収納し、相対するヒートシール性熱可塑性樹脂層(E)の部分をヒートシールして密封された請求項1ないし3のいずれかに記載のガスバリアフィルム。


【公開番号】特開2007−283612(P2007−283612A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112802(P2006−112802)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】