説明

ガスバリア性コーティング剤及びそれを用いたガスバリア性材料

【課題】
環境的にも優しく、基材への付着量が少なくとも高いバリア性を付与することができるガスバリア性コーティング材料および、それを用いて得られたガスバリア性材料を提供する。
【解決手段】
グルコース構造由来の水酸基と置換する官能基の置換度が0.8以下のセルロースエーテルを含有するガスバリア性コーティング剤であって、前記ガスバリア性コーティング剤に含まれる、長さ200μm以上且つ幅10μm以上の繊維状の前記セルロースエーテルが、乾燥固形分0.1gあたり400本以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素、水素、二酸化炭素、窒素等の各種ガスの透過を抑制できる層を得ることができるガスバリア性コーティング剤、及び前記コーティング剤を使用してガスバリア層を設けたガスバリア性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な包装材料に要求される特性の一つとして、ガスバリア性が挙げられる。例えば外気に含まれる酸素が製品容器内へ入り込み接触すると、内容物の貯蔵寿命が低減される。また匂いの強い食品や化成品であれば製品からの移り香が問題となる。
このため従来では高バリア性を持つ包材として、金属を用いた缶製品や、ガラスによるビン製品が用いられていた。しかし近年では環境意識の高まりから、これらの基材からの紙やプラスチック製品への置き換えや、減容器化が求められている。そこで薄くても高いガスバリア性能を有する層を、紙、段ボール原紙、厚紙、及びプラスチック上に設けることによる、ガスバリア特性を付与した包装材料の開発が進んでいる。
【0003】
従来、紙やプラスチック基材へのガスバリア性の付与には、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂をコーティングしたフィルム、更に酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルム等を、ガスバリア層として基材に押し出しラミネートする方法や、貼合する方法が用いられていた。
【0004】
また、紙やプラスチック基材の基材表面にガスバリア層をコーティングして形成する技術も多数提案されている。特許文献1には置換度0.1〜0.7のセルロースエーテルまたはセルロースエステルを含有することを特徴とするガスバリア性コーティング剤、及び、それを付与して得られるガスバリア性フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−095993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金属箔や金属蒸着フィルムを使用すると、ガスバリア性に優れるが、検査の際金属探知器が使用できない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない等の問題がある。さらに、ポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニトリル等は廃棄・焼却の際に有害物質の原料となりうる可能性があるなどの問題があるし、セラミック蒸着フィルム等は、蒸着層がセラミック故に可撓性に欠け加工適性に十分注意しなければならない、加工機が高価な為コストが高くなる等の問題がある。
また、特許文献1においても、ガスバリアコーティング層の塗布量が3g/m以下であると充分なガスバリア性を得ることができないという問題があった。
【0007】
従って本発明は、環境的にも優しく、付着量が少なくとも高いバリア性を付与することができるガスバリア性コーティング材料および、それを用いて得られたガスバリア性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の発明によって解決できる。すなわち、本発明は、グルコース構造由来の水酸基と置換する官能基の置換度が0.8以下のセルロースエーテルを含有するガスバリア性コーティング剤であって、前記ガスバリア性コーティング剤に含まれる、長さ200μm以上且つ幅10μm以上の繊維状の前記セルロースエーテルが、乾燥固形分0.1gあたり400本以下であることを特徴とするガスバリア性コーティング剤である。
前記セルロースエーテルがカルボキシメチルセルロースであることが好ましく、前記セルロースエーテルは分散・剪断処理が加えられていることが好ましい。
また、本発明は、前述したガスバリア性コーティング剤を紙基材又はプラスチック性基材に付与して、ガスバリア層を設けたガスバリア性材料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガスバリア性コーティング剤は、天然資源であるセルロースの誘導体を利用していることから、石油由来のプラスチックより燃焼熱が低く、焼却時に有毒ガス、有害物質を発生することがない。また、本発明のガスバリア性コーティング剤からなる乾燥塗膜は酸素通過度が低く、低付着量でも効果が発現する。さらに、本発明のガスバリア性コーティング剤を紙もしくはプラスチック基材上に付与してガスバリア層を形成してなるガスバリア材料は、加工適性や保存適性にも優れ、これによって得られる包装体は金属探知検査が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき詳細に説明する。本発明で使用されるセルロースエーテルとは、セルロースの1グルコース中に存在する3つの水酸基をメチルエーテル基などの置換基で置換したものであり、グルコース環とその置換基の間にエーテル結合が生じる。このようなセルロースエーテルとしては、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースや、これらの塩が挙げられる。この中でもカルボキシメチルセルロースは生産量が多く、入手しやすいため望ましい。
本発明においては、上記セルロースエーテルの、グルコース構造由来の水酸基と置換する官能基の置換度(エーテル化度、置換モル数、DSともいう)は0.8以下である。置換度が0.8を超えるとセルロースエーテルの水溶性は増すが、充分なガスバリア性を得ることができない。なお、置換度が小さくなるとセルロースエーテルが水に溶解しがたくなるため、製造のための操業性が悪化する傾向にある。このため、好ましい置換度は0.05以上であり、より好ましくは0.1以上である。
【0011】
本発明のセルロースエーテルの原料となる天然繊維としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、コットン、バクテリアセルロース等を用いることができる。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを例に説明すると、原料であるパルプを1.0〜50質量%の苛性ソーダ水溶液に浸せき後、圧搾することにより作製されたアルカリセルロースと、エーテル化剤としてのプロピレンオキサイドを20〜90℃にて約2〜8時間反応させるか、粉末状パルプをイソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、ヘキサン等の有機溶剤中で苛性ソーダ水溶液を添加してアルカリセルロースを作製し、プロピレンオキサイドを添加して反応させる等の公知の技術により、反応生成物を得ることができる。エーテル化剤としては、プロピレンオキサイド以外にも、メチルクロライド、エチレンオキサイド等が用いられる。
また、カルボキシメチルセルロース(又はその塩)を製造するにあたっては、公知のカルボキシメチルセルロース又はその塩の製法を適用することができる。即ち、原料セルロースをマーセル化剤(アルカリ)で処理してマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を調製した後に、エーテル化剤を添加してエーテル化反応させることでカルボキシメチルセルロース(又はその塩)を製造することができる。
【0012】
通常セルロースエーテルにおいては、エーテル基の置換量が低くなるに従って、水への溶解性が低くなり、繊維状形態が多くなる。本発明で使用する置換度が0.5以下のセルロースエーテルは水に溶けにくいため、セルロースエーテルを含む水溶液を高剪断で処理することで分散性を向上させ、良好なガスバリア膜を得ることができる。また高剪断で処理するほどガスバリア性コーティング剤やそれにより形成されるガスバリア層中における粗大な繊維状のセルロースエーテルの数を減少させることができる為、低付着量でも高いガスバリア性を実現することが出来る。また、溶解補助剤として水酸化ナトリウム等のアルカリを用いることも可能である。
【0013】
剪断処理方法は既知の機械的な処理方法のいずれを用いても構わない。例えば高速回転下でのホモミキサー処理、離解機、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波分散処理、家庭用ジューサーミキサー、ビーター処理、ディスク型レファイナー処理、コニカル型レファイナー処理、ダブルディスク型レファイナー処理、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、ビーズミル、短軸押出機、2軸押出機、処理のうち少なくとも一つを含めばよい。
【0014】
また上記剪断工程の前もしくは後に、分級工程やスクリーニング工程を加えても良い。分級・スクリーニングの方法としてはスクリーン、メッシュを用いた篩い分け装置、遠心分離、フィルター処理などが挙げられるが、いずれの方法を用いてもよい。
【0015】
上述した機械的な剪断処理を加えること以外にも、セルラーゼ等による酵素反応処理により、セルロースエーテルを分散・溶解しやすくすることができる。
酵素処理とは、セルロースエーテルの水分散液中に酵素を添加して、一定時間保持する処理である。保持する処理とは、セルロースに酵素を吸着させ作用させることを意味する。このとき、必要に応じて攪拌することもでき、必要に応じて酵素処理後に加熱もしくはpH変化によって、酵素の失活処理をする。また使用する酵素は主にセルラーゼであり、単一成分であってもよく、混合物でもよい。
【0016】
本発明のガスバリア性コーティング剤は、上述したようにセルロースエーテルを処理することで、粗大な繊維状のセルロースエーテルの含有量が少なくなり、高いガスバリア性が発現する。粗大な繊維状のセルロースエーテルは、一般的な繊維物性の測定装置によって検出される繊維数を測定すればよく、例えばLorentzen & Wettre社製のFibertesterを用いることができる。本発明では繊維径200μm以上で且つ繊維幅が10μm以上の繊維状のセルロースエーテルが多く存在すると、ガスバリア性が著しく低下する。このため、本発明のガスバリア性コーティング剤は、長さ200μm以上且つ幅10μm以上の繊維状の前記セルロースエーテルが、乾燥固形分0.1gあたり400本以下で含まれることが必要である。なお、好ましくは200本以下である。
【0017】
本発明のガスバリア性コーティング剤は、必要に応じて水溶性ガスバリア性樹脂を含有することができる。また置換度0.8以下のセルロースエーテル以外のセルロース誘導体を混合して使用しても良い。このような水溶性のガスバリア性樹脂としては、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメタクリル酸、ポリアミン、ポリビニルピリジン、及びこれらの化合物の塩、ならびにこれらの材料のいずれかであることが好ましい。本発明の実施においては、エチレン-ビニルアルコール共重合体またはポリビニルアルコールを用いることにより、より高い酸素バリア性を有するバリア材料を得ることができる。なお、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)は、エチレンと酢酸ビニル共重合物の加水分解により得られる。ポリビニルアルコールのハイガスバリア性や耐油性、透明性を有するとともに、エチレン成分の耐湿性や溶融押出加工性等の特性を併せ持っている。
【0018】
本発明のガスバリアコーティング剤には、無機層状化合物を含有させても良い。無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物または粘土系鉱物等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。
グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有する化合物ないし物質である。ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。
【0019】
前記粘土系鉱物としては、カオリナイト族、アンチゴライト族等の2層構造タイプの粘土系鉱物またはスメクタイト族、バーミキュライト族またはマイカ族等の3層構造タイプの粘土系鉱物を挙げることができる。より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、マーガライト、タルク、バーミキュライト、ザンソフィライトまたは緑泥石等を挙げることができる。特に、モンモリロナイト、ハイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトまたはスチブンサイトなどのスメクタイト族の粘土系鉱物が好ましい。
本発明で使用できる無機層状化合物として、前記粘土系鉱物以外にも、例えば、前記粘土系鉱物をシランカップリング剤で表面処理した加工処理品または合成マイカ、合成スメクタイト等の様に、化学処理により得られる合成品を挙げることができ、本発明においては、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
本発明のガスバリア性材料は、紙基材やプラスチック性基材の表面に上述したガスバリア性コーティング剤を付与して、ガスバリア層を設けて得られる。紙基材とは、セルロースを主たる構成成分とするパルプ繊維が絡み合った集合体であり、包装用紙、板紙、段ボール原紙なども含まれる。また、ガスバリア性材料に高いバリア性を持たせるために、紙基材とガスバリア層の間に目止め層を設けることも有効である。目止め層としてはクレー等の顔料とバインダー樹脂とを含有する塗工層や皮膜性を有する樹脂からなる塗工層を例示することができる。また、液体や水蒸気に対するバリア性を付与する防湿層を紙基材とガスバリア層の間、又はガスバリア層の表面、またはその両方に設けることは、高湿度下でのガスバリア性の低下抑制に有効である。さらに、ガスバリア層の表面には、ヒートシール可能な材料の層を施用してもよい。
【0021】
プラスチック基材の原料としては、用途に応じて各種ポリマーを適宜選択することができるが、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、66、6/10、6/12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等のポリエステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、セルロース等のセロハン、酢酸セルロース等から選ばれるポリマーを単独又は2以上のポリマーを混合して用いることができる。
【0022】
ガスバリア性コーティング剤を基材表面に付与する方法としては、例えば、公知の塗布装置、噴霧装置、浸漬装置を用いて塗布・噴霧・浸漬する方法が挙げられ、これらの装置としては、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等を用いることができる。また、必要に応じて公知の乾燥機を用いて乾燥することができる。
【0023】
なお、基材がプラスチックボトル容器又は紙製の箱容器のような立体容器であってもよいし、また、基材がシート状であってもよい。基材がシート状である場合は、予め作製したセルロースエーテルからなるガスバリア層を設けたフィルム又はシートを基材と貼り合わせて積層する方法を適用することもできる。貼り合わせる方法としては、接着剤を使用する方法、熱融着法等の公知の方法を適用できる。
【0024】
本発明においては、ガスバリア層中に必要に応じてサイズ剤、耐水化剤、撥水剤、染料等の薬品を、本発明の効果を損なわない程度に混合して使用することができるが、より高いガスバリア性を求める場合は、上記助剤は配合されないことが好ましい。
【0025】
本発明においてガス(酸素)バリア性を有することの指標として、酸素透過度を用いる。このとき標準温度及び標準圧力(STP)で0%の相対湿度(%RH)にて測定したときの酸素移動速度(OTR)が、1ml/m/日未満であるときにバリア性が高いと定義する。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例において%、部とあるものはそれぞれ質量%、質量部を示す。また、塗工量を示す値は断りのない限り乾燥後の固形分質量を示す。
[実施例1]
カルボキシメチル基の置換度が0.25であるカルボキシメチルセルロースの粉末(商品名:SLD-F1、粒径50〜60μm、日本製紙ケミカル(株)社製)を高圧ホモジナイザーにて30Mpaで10回処理を行い、ガスバリア性コーティング剤を得た。
この処理液を濃度1%に調整し、スラリー90部に対しイソプロピルアルコールを10部の割合で混合して塗工液を調整した。この塗工液をポリエチレンラミネート紙(片面のラミネート厚さ:20μm)に固形分で3.0g/m2となるようにマイヤーバーを用いて塗工し、送風乾燥機により温度80℃で乾燥し、ガスバリア性材料を得た。
[実施例2]
実施例1の塗工液を用いて、塗工紙(商品名オーロラコート、157g/m、日本製紙(株)社製)に固形分で3.0g/mとなるようにマイヤーバーで塗工し、送風乾燥機により温度105℃で乾燥した後、ガスバリア性材料を得た。
[実施例3]
カルボキシメチル基の置換度が0.25であるカルボキシメチルセルロースの粉末(商品名:SLD-F1、粒径50〜60μm、日本製紙ケミカル(株)社製)を50g量り取り、目開き25μmのメッシュ(ステンレス金網製)上に載せ、電磁式篩振とう機(型式:MVS-200、シー・エム・ティー社製)によって20分間振とうさせた。その後、メッシュを通過した粉末2部に対して、水98部で60度程度の温水で撹拌して分散させ、ガスバリア性コーティング剤を得た。このコーティング剤を用いた以外は実施例1と同様にガスバリア性材料を得た。
[実施例4]
カルボキシメチル基の置換度が0.59であるカルボキシメチルセルロースの粉末(商品名:MAC01、日本製紙ケミカル(株)社製)を2部に対して水98部で60度程度の温水で撹拌して分散させ、ガスバリア性コーティング剤を得た。
その後、イソプロピルアルコールを10部の割合で混合して塗工液を調整した。この塗工液をポリエチレンラミネート紙(片面のラミネート厚さ:20μm)に固形分で3.0g/mとなるようにマイヤーバーで塗工し、送風乾燥機を用いて乾燥温度80℃で乾燥し、ガスバリア性材料を得た。
[実施例5]
カルボキシメチル基の置換度が0.75であるカルボキシメチルセルロースの粉末(商品名:F01MC、日本製紙ケミカル(株)社製)を2部に対して水98部で60度程度の温水で撹拌して分散させ、ガスバリア性コーティング剤を得た。
このコーティング剤を用いた以外は実施例4と同様にガスバリア性材料を得た。
[比較例1]
カルボキシメチル基の置換度が0.25であるカルボキシメチルセルロースの粉末(商品名:SLD-F1、粒径50〜60μm、日本製紙ケミカル(株)社製)を2部に対して水98部で60度程度の温水で撹拌して分散させ、ガスバリア性コーティング剤を得た。
その後、イソプロピルアルコールを10部の割合で混合して塗工液を調整した。この塗工液をポリエチレンラミネート紙(片面のラミネート厚さ:20μm)に固形分で3.0g/mとなるようにマイヤーバーで塗工し、送風乾燥機を用いて乾燥温度80℃で乾燥し、ガスバリア性材料を得た。
[比較例2]
カルボキシメチル基の置換度が0.25であるカルボキシメチルセルロースの微粉末(商品名:SLD-FM、粒径15〜25μm、日本製紙ケミカル(株)社製)を用いた以外は、比較例1と同様にガスバリア性コーティング剤とガスバリア性材料を得た。
[比較例3]
カルボキシメチル基の置換度が0.9であるカルボキシメチルセルロースの粉末(商品名:FT3、日本製紙ケミカル(株)社製)を用いた以外は、比較例1と同様にガスバリア性コーティング剤とガスバリア材料を得た。
[比較例4]
ヒドロキシエチルセルロースの粉末(商品名:HECダイセルSP600、ダイセル化学工業(株))を用いた以外は、比較例1と同様にガスバリア性コーティング剤とガスバリア性材料を得た。
【0027】
実施例、比較例でそれぞれ作成したガスバリア性コーティング剤を用いて繊維数測定を行い、バリア材料を用いて酸素透過度測定を行った。これらの結果を表1に示した。試験方法を下記に示す。
<繊維数測定>
Lorentzen & Wettre社製のFibertesterを使用して、繊維径200μm以上で且つ繊維幅が10μm以上の繊維を粗大な繊維物と定義し、塗工液固形分0.1g中に含まれる粗大な繊維状のセルロースエーテル誘導体の数を測定した。
<酸素透過度測定方法>
ツクバリカセイキ社製気体透過率測定装置(K-315N-03)を使用して、差圧法により測定した。(標準温度及び標準圧力(STP)で0%の相対湿度(%RH)にて測定した)
【0028】
【表1】

【0029】
本発明に相当する実施例1〜5のガスバリア性材料は酸素透過度がいずれも1ml/m・day以下であり、高いガスバリア性を有していた。一方、繊維数が400本を超える比較例1、2については、ガスバリア性が劣っていた。また、セルロースエーテルの置換度が0.9を超える比較例3、4においては、粗大な繊維状のものは無かったが、ガスバリア性が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース構造由来の水酸基と置換する官能基の置換度が0.8以下のセルロースエーテルを含有するガスバリア性コーティング剤であって、前記ガスバリア性コーティング剤に含まれる、長さ200μm以上且つ幅10μm以上の繊維状の前記セルロースエーテルが、乾燥固形分0.1gあたり400本以下であることを特徴とするガスバリア性コーティング剤。
【請求項2】
前記セルロースエーテルがカルボキシメチルセルロースである、請求項1に記載されたガスバリア性コーティング剤。
【請求項3】
前記セルロースエーテルは分散・剪断処理が加えられていることを特徴とする、ガスバリア性コーティング剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されたガスバリア性コーティング剤を紙基材又はプラスチック性基材に積層して、ガスバリア層を設けてなるガスバリア性材料。

【公開番号】特開2011−241303(P2011−241303A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114869(P2010−114869)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】