説明

ガスバリア性コートフィルム

【課題】高いガスバリア性と良好な塗膜外観を与えるコートフィルムを提供する。
【解決手段】基材、エポキシ樹脂硬化物層の少なくとも2層からなるガスバリアコートフィルムであって、該エポキシ樹脂硬化物層がエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及びアクリル系表面調整剤を含む樹脂組成物から形成され、該表面調整剤が該エポキシ樹脂硬化物中に0.1〜1.0重量%含有され、該エポキシ樹脂硬化物層が下記式(1)に示される骨格構造を30重量%以上含有するものであることを特徴とするガスバリア性コートフィルム。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリア性コートフィルムに関するものであり、防食、美粧を目的とする塗料やコート剤など、高いガスバリア性が要求される電子材料、医薬品の広い産業分野に利用される。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械特性など、優れた特性を有するため、防食、美粧を目的とする塗料や、土木、建築用接着剤など広い産業分野で利用されている。一般に塗料や接着剤分野で使用されるエポキシ樹脂組成物のガスバリア性は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂などと比較すれば良好であるが、ガスバリア材料に分類されるポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコールなどには及ばない。従って、エポキシ樹脂を利用する場合には、腐食因子の透過抑制のために、樹脂厚みを大きくする、他材料を重ねて被覆する、フィラーを併用するなど様々な工夫がなされている。
【0003】
一方、エポキシ樹脂に関して、組成物中のアミン窒素含有率を高くすることにより酸素や二酸化炭素などに対するガスバリア性を向上させる方法が提案されている(特許文献1〜2参照)。しかしながら、これらの樹脂組成物のガスバリア性は必ずしも十分ではなく、また高湿度条件下でガスバリア性が低下するという現象も認められることからさらなる改良が望まれている。
【0004】
また、ポリアミン中の活性アミン水素とポリエポキシド中のエポキシ基との比が少なくとも1.5:1であって、該ポリアミンが開始ポリアミンであって炭素原子の少なくとも50%が芳香族であるポリアミンの変性物である樹脂組成物を用いることにより、上記組成物よりさらにバリア性を向上させ、また高湿度条件下でのバリア性を向上させる方法が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、上記の樹脂組成物は塗布後の反応生成物中に未反応の活性アミン水素を有するアミン基が多量に残存するため、防錆、防食目的で金属やコンクリート等への塗布を考えた場合に、接着性、耐熱性、耐薬品性、および電気特性などのエポキシ樹脂が本来有する優れた性能が発現しないという問題がある。
【0005】
特定のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を使用したエポキシ樹脂組成物がエポキシ樹脂の優れた性能に加え、高湿度条件下でも高いガスバリア性を有する方法が提案されている(特許文献4〜6参照)。しかしながら、フィルムにエポキシ樹脂組成物を塗布した際、フィルムの濡れ性が低い場合は、エポキシ樹脂硬化塗膜の外観が不良となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−91367号公報
【特許文献2】特公平7−91368号公報
【特許文献3】特表平9−511537号公報
【特許文献4】特開平14−256208号公報
【特許文献5】特開平14−363316号公報
【特許文献6】特開平16−203035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、エポキシ樹脂が有する優れた性能に加え、高いガスバリア性と良好な塗膜外観を与えるコートフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および特定量のアクリル系表面調整剤を含む樹脂組成物がエポキシ樹脂の優れた性能に加え、高いガスバリア性を有し、塗膜外観が良好であり、密着性に優れたガスバリア性コートフィルムを与えることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、つぎの通りである。
1. 基材、エポキシ樹脂硬化物層の少なくとも2層からなるガスバリ性アコートフィルムであって、該エポキシ樹脂硬化物層がエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及びアクリル系表面調整剤を含む樹脂組成物から形成され、該表面調整剤が該エポキシ樹脂硬化物中に0.1〜1.0重量%含有され、該エポキシ樹脂硬化物層が下記式(1)に示される骨格構造を30重量%以上含有するものであることを特徴とするガスバリア性コートフィルム。
【化1】

2. 前記エポキシ樹脂硬化物層が酸素透過係数1.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下の酸素バリア性を有する第1項記載のガスバリア性コートフィルム。
3. 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つである第1項記載のガスバリア性コートフィルム。
4. 前記エポキシ樹脂硬化剤が、下記の(A)及び(B)の反応生成物、又は(A)、(B)及び(C)の反応生成物である第1項記載のガスバリア性コートフィルム。
(A)メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体
5. 前記アクリル系表面調整剤が、ビックケミー社製BYK−381である第1項記載のガスバリア性コートフィルム。
6. 前記エポキシ樹脂硬化物が溶剤で希釈した前記樹脂組成物を塗布後、100℃〜150℃で乾燥することにより形成されたものである第1項記載のガスバリア性コートフィルム。
7. 前記溶剤が、炭素数3以下のアルコールを含む溶剤である第6項記載のガスバリア性コートフィルム。
8. 前記溶剤が、炭素数3以下のアルコールにエステル基、ケトン基、アルコキシル基のいずれかの官能基を有する溶剤を1種以上混合した混合液である第6項記載のガスバリア性コートフィルム。
9.前記溶剤が、炭素数3以下のアルコールに酢酸エチル、メチルエチルケトン、および1-メトキシ-2-プロパノールのいずれか1種以上を混合した混合液である第6項記載のガスバリア性コートフィルム。
10. 前記溶剤中の、アルコール類の含有量が40〜70重量%である第8項記載のガスバリア性コートフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガスバリア性コートフィルムは、各種ガス透過性基材例えば、ポリオレフィンやポリエステル、ポリアミドなどのプラスチックフィルムにエポキシ樹脂硬化物を積層することで、外観良好かつガスバリア性を有するフィルムを得ることが出来る。したがって、従来のエポキシ樹脂塗料ではそのガスバリア性の低さから適用されていなかった食品や医薬品などの包装材料、電子部品の保護材などに適用可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のガスバリア性コートフィルムは少なくとも、基材とエポキシ樹脂硬化物層からなる。以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0012】
本発明における基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;シクロオレフィンポリマーフィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシレンアジパミド(N−MXD6)などのポリアミド系フィルム;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系フィルム;ポリビニルアルコール系フィルム;ポリ乳酸などの生分解性フィルム;カートンなどの紙類;アルミや銅などの金属箔が挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートやシクロオレフィンポリマーフィルムがより好ましい。また、これらの基材として用いられる各種材料にポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂やポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物系樹脂、アクリル系樹脂などの各種ポリマーによるコーティングを施したフィルム;シリカ、アルミナ、アルミなどの各種無機化合物あるいは金属を蒸着させたフィルム;無機フィラーなどを分散させたフィルム;酸素捕捉機能を付与したフィルムなどが使用できる。また、コーティングする各種ポリマーについても無機フィラーを分散させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどが挙げられるが、モンモリロナイトなどの層状珪酸塩が好ましく、またその分散方法としては例えば押出混錬法や樹脂溶液への混合分散法など従来公知の方法が使用できる。酸素捕捉機能を付与させる方法としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等を含む組成物を少なくとも一部に使用する方法等が挙げられる。これらのフィルム材料の厚さとしては10〜300μm程度、好ましくは10〜100μm程度が実用的であり、プラスチックフィルムの場合は一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよい。
【0013】
本発明のガスバリア性コートフィルムにおいて、エポキシ樹脂硬化物層はエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及びアクリル系表面調整剤を含むエポキシ樹脂組成物が硬化して得られるものであり、該エポキシ樹脂硬化物層中にアクリル系表面調整剤が0.1〜1.0重量%含有され、該エポキシ樹脂硬化物層中に上記式(1)の骨格構造が30重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有されることを特徴としている。エポキシ樹脂硬化物中に上記式(1)の骨格構造が高いレベルで含有されることにより、高いガスバリア性が発現する。本発明によれば、酸素透過係数1.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下の酸素バリア性を有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。以下に、エポキシ樹脂組成物の主成分であるエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤について説明する。
【0014】
本発明におけるエポキシ樹脂は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物又は複素環式化合物のいずれであってもよいが、高いガスバリア性の発現を考慮した場合には芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましく、上記式(1)の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂がより好ましい。具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0015】
更に、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
【0016】
また、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0017】
前記エポキシ樹脂は、アルコール類、フェノール類又はアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。メタキシリレンジアミンは4つのアミノ水素を有するので、モノ−、ジ−、トリ−及びテトラグリシジル化合物が生成する。グリシジル基の数はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0018】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましい。
【0019】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、又は複素環式化合物のいずれであってもよく、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物、又はカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、コートフィルムの使用用途及びその用途における要求性能に応じて選択することが可能である。
具体的には、ポリアミン類としてはエチレジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式アミン;ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミンが挙げられる。また、これらを原料とするエポキシ樹脂、ポリアミン類とモノグリシジル化合物との変性反応物、ポリアミン類とエピクロルヒドリンとの変性反応物、ポリアミン類と炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、ポリアミン類と少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応により得られたアミドオリゴマー、ポリアミン類、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物、及び一価のカルボン酸及び/又はその誘導体との反応により得られたアミドオリゴマーもエポキシ樹脂硬化剤として使用できる。
【0020】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多価フェノール、及びレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
また、酸無水物又はカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、及びこれらのカルボン酸などが使用できる。
【0021】
高いガスバリア性の発現を考慮した場合には、芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤が好ましく、上記式(1)の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤がより好ましい。
具体的にはメタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン、及びこれらを原料とするエポキシ樹脂又はモノグリシジル化合物との反応生成物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの反応生成物、エピクロロヒドリンとの反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、一価のカルボン酸及び/又はその誘導体との反応生成物などを使用することがより好ましい。
【0022】
高いガスバリア性及び良好な接着性を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)及び(B)の反応生成物、又は(A)、(B)及び(C)の反応生成物を用いることが特に好ましい。
(A)メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体
【0023】
前記(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸及びそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体が好ましい。
【0024】
また、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などの炭素数1〜8の一価のカルボン酸及びそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などを上記多官能性化合物と併用して開始ポリアミンと反応させてもよい。反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い酸素バリア性及び良好な接着強度が得られる。
【0025】
前記 (A)及び(B)、又は(A)、(B)及び(C)の反応モル比は、(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)に含有される反応性官能基の数の比、又は(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)及び(C)に含有される反応性官能基の合計数の比として、0.3〜0.97の範囲が好ましい。0.3より少ない比率では、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成せず、高いレベルのガスバリア性及び接着性が発現しない。また、エポキシ樹脂硬化剤中に残存する揮発性分子の割合が高くなり、得られる硬化物からの臭気発生の原因となる。また、エポキシ基とアミノ基の反応により生成する水酸基の硬化反応物中における割合が高くなるため、高湿度環境下での酸素バリア性が著しく低下する要因となる。一方、0.97より高い範囲ではエポキシ樹脂と反応するアミノ基の量が少なくなり優れた耐衝撃性や耐熱性などが発現せず、また各種有機溶剤あるいは水に対する溶解性も低下する。得られる硬化物の高いガスバリア性、高い接着性、臭気発生の抑制及び高湿度環境下での高い酸素バリア性を特に考慮する場合には、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比が0.6〜0.97の範囲がより好ましい。より高いレベルの接着性の発現を考慮した場合には、本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤中に、該硬化剤の全重量を基準として、少なくとも6重量%のアミド基が含有されることが好ましい。
【0026】
基材に対する高い密着性の発現を考慮した場合には、例えばエポキシ樹脂硬化剤であるメタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと、該ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物の反応比を、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比で0.6〜0.97、好ましくは0.8〜0.97、特に好ましくは0.85〜0.97の範囲とし、反応生成物であるオリゴマーの平均分子量を高くしたエポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。 より好ましいエポキシ樹脂硬化剤は、メタキシリレンジアミンと、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらの誘導体との反応生成物である。ここで、メタキシリレンジアミンに対するアクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらの誘導体の反応モル比は0.8〜0.97の範囲が好ましい。
【0027】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化物の主成分であるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂硬化物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比が0.5〜5.0の範囲である。0.5より少ない範囲では残存する未反応のエポキシ基が、得られる硬化物のガスバリア性を低下させる原因となり、また5.0より多い範囲では残存する未反応のアミノ基が、得られる硬化物の耐湿熱性を低下させる原因となる。得られる硬化物のガスバリア性及び耐湿熱性を特に考慮する場合には、0.8〜3.0の範囲がより好ましく、0.8〜2.0の範囲が特に好ましい。また、得られる硬化物の高湿度環境下での高い酸素バリア性の発現を考慮した場合には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比が0.8〜1.4の範囲が好ましい。
【0028】
本発明に用いる表面調整剤はアクリル系樹脂である。該表面調整剤を使用することで、エポキシ樹脂硬化物層の各種材料に対する接着性が向上するだけではなく、レベリング性を向上させ、外観良好なエポキシ樹脂硬化物を得ることが出来る。また、添加することでポットライフが短くなることなく、加えない場合と同等の作業性となる。また、本発明に用いる表面調整剤はエポキシ樹脂硬化物の示す酸素バリア性の低下も少ないコートフィルムを得ることが可能となる。
【0029】
アクリル系表面調整剤としては、BYK−352、BYK−354、BYK−361N、BYK−380N、BYK−381(以上ビックケミー社製)、DISPARLON OX−880EF、DISPARLON 1970、DISPARLON 230(以上楠本化学(株)製)などが挙げられるが、これらの中でもビックケミー社から入手しうるBYK−381が好ましい。
【0030】
本発明において、エポキシ樹脂組成物中の表面調整剤量は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の総量100重量部に対する表面調整剤の量として0.1〜1.0重量部であり、好ましくは0.3〜0.7重量部である。表面調整剤が0.1重量部未満では、表面張力低減効果が不足し、塗膜外観が不良となる。また1.0重量部より大きいと、被着体への密着性の低下が生じる。
【0031】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化物をプラスチックなど一般的な基材に塗布する場合においては、撹拌混合や塗布時に発生する泡の消失を助けるため、あるいは各種基材の表面の湿潤を助けるために、本発明におけるガスバリア性樹脂組成物の中に、シリコン系あるいはアクリル系化合物からなる消泡剤や湿潤剤を添加しても良い。適切な消泡剤としては、ビックケミー社から入手しうるBYK019、BYK052、BYK065、BYK066N、BYK067N、BYK070、BYK080、などがあげられるが、特にBYK065が好ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物中の全重量を基準として0.01重量%〜2.0重量%の範囲が好ましい。
【0032】
本発明における、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤およびアクリル系表面調整剤を含むエポキシ樹脂硬化物の硬化反応は、その硬化反応物を得るのに十分な組成物の濃度および温度で実施されるが、これは開始材料の選択により変化し得る。すなわち、該組成物を塗料あるいは接着剤用途に用いる場合、組成物の濃度は選択した材料の種類およびモル比などにより、ある種の適切な有機溶剤を用いて約5〜40重量%程度の組成物濃度にする場合までの様々な状態をとり得る。同様に、硬化反応温度は室温から約140℃までの範囲で選択できる。
【0033】
本発明に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなどのアルコール類が挙げられるが、炭素数3以下のアルコールが好ましい。また、本発明に用いる溶剤は、炭素数3以下のアルコールにエステル基、ケトン基、アルコキシ基のいずれかの官能基を有する溶剤を1種以上混合した混合液であることがより好ましい。エステル基を有する溶剤としては、酢酸エチル、酢酸メチルなどのカルボン酸エステル類、ケトン基を有する溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどケトン類、アルコキシ基を有する溶剤としては、2‐メトキシエタノール、2‐エトキシエタノール、2‐プロキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1-メトキシ‐2‐プロパノールなどのグリコールエーテル類、などが挙げられる。この場合、溶剤中におけるアルコール類の含有量は、40〜70重量%であることが好ましい。
【0034】
また、溶剤を使用した場合には、エポキシ樹脂組成物を塗布後の溶剤乾燥温度は20℃から約230℃までの様々なものであってよいが、溶剤の沸点に近く、被塗物への影響が及ばない温度が望ましい。乾燥温度が20℃未満ではフィルム中に溶剤が残存し、接着不良や臭気の原因となる。また、塗布後の外観が良好なものを得るためには、100℃〜230℃が望ましく、更に望ましくは100〜150℃である。
【0035】
また、本発明におけるエポキシ樹脂硬化物層のガスバリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤を添加しても良い。
フィルムの透明性を考慮した場合には、このような無機フィラーが平板状であることが好ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0036】
また、本発明におけるエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0037】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化物は好適な基材への密着性能に加え、高いガスバリア性を有する事を特徴としており、低湿度条件から高湿度条件に至る広い範囲において高いガスバリア性を示す。このことから、本発明におけるエポキシ樹脂硬化物を使用したガスバリアフィルムは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用することなく非常に高いレベルのガスバリア性が発現する。また、無機蒸着フィルムに顕在化する不意の折り曲げによるガスバリア性の著しい劣化に関し、エポキシ樹脂硬化物をコートすることにより、そのガスバリア性の劣化度合いを著しく向上させることもできる。
【0038】
エポキシ樹脂組成物を塗布する際の塗装形式としては、一般的なロール塗布やスプレー塗布、エアナイフ塗布、浸漬、はけ塗り、ダイコーティングなどの塗装形式のいずれも使用され得る。
【0039】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物を各種材料等に塗布、乾燥した後のエポキシ樹脂硬化物層の厚さは0.05〜30μm、好ましくは0.1〜5μmが実用的である。0.05μm未満では十分なガスバリア性及び接着性が発揮し難く、一方50μmを超えると乾燥性が不良となるばかりでなく、均一な厚みのエポキシ樹脂硬化物層を形成することが困難になる。
【実施例】
【0040】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0041】
尚、実施例に記載したエポキシ樹脂硬化剤は以下の方法で調製した。
<エポキシ樹脂硬化剤a>
反応容器に1モルのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93モルのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で160℃まで昇温した。100℃まで冷却し、固形分濃度が65重量%になるように所定量のメタノールを加え、エポキシ樹脂硬化剤aを得た。
<エポキシ樹脂硬化剤b>
反応容器に1モルのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93モルのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で160℃まで昇温した。100℃まで冷却し、固形分濃度が65重量%になるように所定量のエタノールを加え、エポキシ樹脂硬化剤bを得た。
【0042】
また、コートフィルムの評価方法は以下の通りである。
<酸素透過率 (ml/m・day・MPa)>
酸素透過率測定装置(モコン社製、OX−TRAN2/21)を使用して、積層フィルムの酸素透過率を23℃、相対湿度60%の条件下で測定した。
<コートフィルム外観>
コート後のラミネートフィルム外観を目視にて観察した。
◎:良好、○:やや良好、△:一部不良、×:不良
<ポットライフ (hr)>
エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、表面調整剤、溶剤を混合した溶液を25℃に保持した。ザーンカップNo.3にて粘度を30分毎に測定し、保持時間とザーンカップ粘度(秒)との関係を調べた。塗料溶液を調製してからザーンカップ粘度20秒に到達するまでの時間をポットライフとした。
【0043】
<実施例1>
エポキシ樹脂硬化剤aを160重量部、及びメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製:TETRAD−X)を50重量部配合し、これにエタノール126重量部、メチルエチルケトン180重量部加え、固形分濃度30wt%となるように溶解させた。そこに表面調整剤(ビック・ケミー社製:BYK381)を0.5重量部、消泡剤(ビック・ケミー社製:BYK065)を0.05重量部加え、よく攪拌して塗布液を得た。この塗布液を厚み12μmの延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製:エステルフィルムE5100)にバーコーターNo.8を使用して塗布し(塗布量:固形分4g/m)、120℃で5分乾燥させてコートフィルムを得た。得られたコートフィルムの塗布層表面の外観とガスバリア性を評価した。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の式(1)に示される骨格構造の含有量は62.0重量%である。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例2>
メチルエチルケトン180重量部の代わりに1-メトキシ-2-プロパノール180重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
<実施例3>
メチルエチルケトン180重量部の代わりに酢酸エチル180重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
<実施例4>
エタノール126重量部、メチルエチルケトン180重量部の代わりにエタノール198重量部、メチルエチルケトン108重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
<実施例5>
エタノール126重量部、メチルエチルケトン180重量部の代わりにメタノール126重量部、酢酸エチル180重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
<実施例6>
基材を厚み12μmの延伸ポリエステルフィルムの代わりに厚み50μmシクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン(株)ZeonorFilm ZF14)を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
<実施例7>
基材を厚み12μmの延伸ポリエステルフィルムの代わりに厚み50μmシクロオレフィンポリマーフィルムを用い、エタノール126重量部、メチルエチルケトン180重量部の代わりにメタノール126重量部、酢酸エチル180重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
<実施例8>
エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
<実施例9>
エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用い、メチルエチルケトン180重量部の代わりに1-メトキシ-2-プロパノール180重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
<実施例10>
エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用い、メチルエチルケトン180重量部の代わりに酢酸エチル180重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
<実施例11>
エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用い、エタノール126重量部、メチルエチルケトン180重量部の代わりにエタノール198重量部、メチルエチルケトン108重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
<実施例12>
エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用い、エタノール126重量部、メチルエチルケトン180重量部の代わりにメタノール126重量部、酢酸エチル180重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
<実施例13>
基材を厚み12μmの延伸ポリエステルフィルムの代わりに厚み50μmシクロオレフィンポリマーフィルムを用い、エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
<実施例14>
基材を厚み12μmの延伸ポリエステルフィルムの代わりに厚み50μmシクロオレフィンポリマーフィルムを用い、エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用い、エタノール126重量部、メチルエチルケトン180重量部の代わりにメタノール126重量部、酢酸エチル180重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
<比較例1>
表面調整剤を加えない以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0058】
<比較例2>
表面調整剤の添加量を0.5重量部から0.03重量部にした以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0059】
<比較例3>
基材を厚み12μmの延伸ポリエステルフィルムの代わりに厚み50μmシクロオレフィンポリマーフィルムを用い、表面調整剤を加えない以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0060】
<比較例4>
エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用い、表面調整剤を加えない以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0061】
<比較例5>
エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用い、表面調整剤の添加量を0.5重量部から0.03重量部にした以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
<比較例6>
基材を厚み12μmの延伸ポリエステルフィルムの代わりに厚み50μmシクロオレフィンポリマーフィルムを用い、エポキシ樹脂硬化剤aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤bを用い、表面調整剤を加えない以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、エポキシ樹脂硬化物層の少なくとも2層からなるガスバリア性コートフィルムであって、該エポキシ樹脂硬化物層がエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及びアクリル系表面調整剤を含む樹脂組成物から形成され、該表面調整剤が該エポキシ樹脂硬化物中に0.1〜1.0重量%含有され、該エポキシ樹脂硬化物層が下記式(1)に示される骨格構造を30重量%以上含有するものであることを特徴とするガスバリア性コートフィルム。
【化1】

【請求項2】
前記エポキシ樹脂硬化物層が酸素透過係数1.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下の酸素バリア性を有する第1項記載のガスバリア性コートフィルム。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1記載のガスバリア性コートフィルム。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂硬化剤が、下記の(A)及び(B)の反応生成物、又は(A)、(B)及び(C)の反応生成物である請求項1記載のガスバリア性コートフィルム。
(A)メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体
【請求項5】
前記アクリル系表面調整剤が、ビックケミー社製BYK−381である請求項1記載のガスバリア性コートフィルム。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂硬化物が、溶剤で希釈した前記樹脂組成物を塗布後、100℃〜150℃で乾燥することにより形成されたものである請求項1記載のガスバリア性コートフィルム。
【請求項7】
前記溶剤が、炭素数3以下のアルコールを含む溶剤である請求項6記載のガスバリア性コートフィルム。
【請求項8】
前記溶剤が、炭素数3以下のアルコールにエステル基、ケトン基、アルコキシル基のいずれかの官能基を有する溶剤を1種以上混合した混合液である請求項6記載のガスバリア性コートフィルム。
【請求項9】
前記溶剤が、炭素数3以下のアルコールに酢酸エチル、メチルエチルケトン、および1-メトキシ-2-プロパノールのいずれか1種以上を混合した混合液である請求項6記載のガスバリア性コートフィルム。
【請求項10】
前記溶剤中の、アルコール類の含有量が40〜70重量%である請求項8記載のガスバリア性コートフィルム。

【公開番号】特開2011−68835(P2011−68835A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223163(P2009−223163)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】