説明

ガスバリア性フィルム、ガスバリア層、装置、及びガスバリア性フィルムの製造方法

【課題】良好な透明性を示すガスバリア性フィルム、その製造方法及びガスバリア層、並びにガスバリア性フィルム又はガスバリア層を用いた装置を提供することを課題とする。
【解決手段】プラスチック基材1と、プラスチック基材1上に接して設けられた有機層2と、有機層2上に接して設けられた無機層3とを有し、無機層3の屈折率から有機層2の屈折率を差し引いた屈折率差を0.15以下であるガスバリア性フィルムとすることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性フィルム、ガスバリア層、装置、及びガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性フィルムは、有機EL素子、液晶表示素子、タッチパネル、電子ペーパー等の表示装置や太陽電池素子等の発電装置の各種装置に対し、それらの性能を劣化させる酸素又は水蒸気等の化学成分の透過を防ぐために好ましく適用されている。最近の各種装置の高性能化に伴い、特に表示装置の表示面側や発電装置の受光面側に用いられるガスバリア性フィルムに高い透明性が求められている。
【0003】
近年のガスバリア性フィルムには、プラスチック基材と、そのプラスチック基材上に設けられた有機層と、その有機層上に設けられた無機層とで構成されているものがある。有機層は、ガスバリア性の無機層の下地を平坦化するための層として設けられ、無機層に生じる欠陥を低減してガスバリア性を高めるという役割を担うとされている。
【0004】
例えば特許文献1では、基材に第1無機膜、有機膜、および第2無機膜を順に設けたガスバリア性フィルムが提案されている。同文献では、有機膜の好ましい構成材料として、ビスフェノール化合物から誘導されるフルオレン骨格を有する樹脂を含有するカルドポリマーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−96108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の実施例では、全光線透過率が92%のガスバリア性フィルムが得られている。しかし、最近の高性能化の要請により、ガスバリア性フィルムにはさらなる透明性が求められており、本発明者は、プラスチック基材上に接して無機層を設けた場合、透明性の向上が困難であるという問題に遭遇した。
【0007】
本発明は、上記問題を解決したものであって、その目的は、良好な透明性を示すガスバリア性フィルム及びガスバリア層を提供することにある。本発明の他の目的は、良好な透明性を示すガスバリア性フィルム又はガスバリア層を用いた装置を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、良好な透明性を示すガスバリア性フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記問題に対する研究過程で、透明性が向上しない理由を考察し、実証することによって本発明を完成させた。すなわち、ガスバリア性フィルムの透明性を阻害する要因として、光が屈折率の高い層から屈折率の低い層に向かって入光するときに、臨界角以上の入射角で入光した全ての光がこれらの層の界面で反射される、いわゆる全反射現象の影響が大きいのではないかと考察した。また、無機層の成膜には、高い成膜速度を得る観点からイオンプレーティング法や反応性スパッタリング法等の高速成膜手段を採用することが好ましいが、これらの成膜手段では、成膜時の減圧環境、熱環境又はプラズマ環境により、プラスチック基材にダメージを与えてプラスチック基材の透明性を低下させているのではないかと考察した。そして、これらの考察の下で、全反射現象の抑制及びプラスチック基材へのダメージの抑制を達成すべく鋭意検討した結果、良好な透明性を得ることができることを実証し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題を解決するための本発明は、下記の通りである。
【0009】
第1の発明に係るガスバリア性フィルムは、プラスチック基材と、前記プラスチック基材上に接して設けられた有機層と、前記有機層上に接して設けられた無機層とを有し、前記無機層の屈折率から前記有機層の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下であることを特徴とする。
【0010】
第1の発明によれば、無機層の屈折率から有機層の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下であり、かつ有機層とプラスチック基材とが接しているので、無機層側から入光したときに、無機層と有機層との界面及び有機層と基材との界面において、全反射現象が生じないか生じたとしても全光線透過率の低下に与える影響が少ない。さらに、無機層は有機層を介してプラスチック基材上に設けられるので、イオンプレーティング法や反応性スパッタ法等の高速成膜手段で無機層を成膜した場合であっても、プラスチック基材のダメージが抑制され、良好な透明性を示すガスバリア性フィルムとすることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記有機層が、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートが架橋されている層である。
【0012】
第2の発明によれば、他の成分を吸着しやすい水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートが架橋されている有機層を有するので、その有機層上に無機層を成膜した場合であっても、良好なガスバリア性を安定して実現できるガスバリア性フィルムとすることができる。なお、この理由としては、アルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートが架橋されている層は、成膜時の減圧環境、熱環境又はプラズマ環境に対する耐性が高いので、プラスチック基材のダメージを抑制して良好な透明性を得るのに好適であるところ、さらに、アルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートの構造内に他の成分を吸着しやすい水酸基を含まないことにより、水分等の低分子成分の吸着が抑制されるので、その低分子成分が無機層の成膜時に有機層内から抜け出して無機層の成膜を阻害することがなく、その結果、欠陥の少ない無機層を成膜できたためであろうと推察される。
【0013】
第3の発明は、第1〜第2の発明のいずれか1つの発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記プラスチック基材の他方の面にも、前記有機層と前記無機層とがその順で接して設けられている。
【0014】
第3の発明によれば、有機層と無機層とをプラスチック基材の反対面にも接して設けたので、いずれの面側から入光したときであっても、入光面側の無機層と有機層との界面及び有機層と基材との界面において、全反射現象が生じないか生じたとしても全光線透過率の低下に与える影響が少ない。また、有機層と無機層とを基材の反対面に接して設けることで、全光線透過率を向上させることができる。その理由としては、出光面側の有機層と無機層との界面および無機層と空気との界面で起こる全反射現象は、前記有機層と前記無機層とを基材の反対面に設けなかった場合に基材と空気との界面で起こる全反射現象よりも全光線透過率の低下に与える影響が少ないためであろうと推察される。
【0015】
第4の発明に係るガスバリア層は、有機層と、前記有機層上に接して設けられた無機層とを有し、前記無機層の屈折率から前記有機層の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下であることを特徴とする。
【0016】
第4の発明によれば、無機層の屈折率から有機層の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下であるので、無機層側から入光したときに、無機層と有機層との界面において、全反射現象が生じないか生じたとしても全光線透過率の低下に与える影響が少ないので、良好な透明性を示すガスバリア層とすることができる。
【0017】
第5の発明に係る装置は、第1〜第3の発明のいずれか1つの発明に係るガスバリア性フィルム又は第4の発明に係るガスバリア層を用いた表示装置又は発電装置であることを特徴とする。
【0018】
第5の発明によれば、良好な透明性を示すガスバリア性フィルム又はガスバリア層を用いたので、高性能が要求される表示装置又は発電装置を提供できる。
【0019】
第6の発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、プラスチック基材上に接して有機層を形成する工程と、前記有機層上に接して無機層を形成する工程とを有するガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記無機層の屈折率から前記有機層の屈折率を差し引いた屈折率差を0.15以下にすることを特徴とする。
【0020】
第6の発明によれば、無機層の屈折率から有機層の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下であり、有機層とプラスチック基材とが接しているので、無機層側から入光したときに、無機層と有機層との界面及び有機層と基材との界面において、全反射現象が生じないか生じたとしても全光線透過率の低下に与える影響が少ない。さらに、無機層は有機層を介してプラスチック基材上に設けられるので、イオンプレーティング法や反応性スパッタ法等の高速成膜手段で無機層を成膜した場合であっても、良好な透明性を示すガスバリア性フィルムを製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、良好な透明性を示すガスバリア性フィルム及びガスバリア層を提供することができる。また、良好な透明性を示すガスバリア性フィルム又はガスバリア層を用いた装置を提供することができる。また、良好な透明性を示すガスバリア性フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るガスバリア性フィルムの一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明に係るガスバリア性フィルムの他の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
下記に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0024】
[ガスバリア性フィルム及びガスバリア層]
本発明に係るガスバリア性フィルム10は、図1及び図2に示すように、プラスチック基材1と、プラスチック基材1上に接して設けられた有機層2と、有機層2上に接して設けられた無機層3とを有する。そして、無機層3の屈折率から有機層2の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係るガスバリア層4は、図1及び図2に示すように、有機層2と、有機層2上に接して設けられた無機層3とを有し、無機層3の屈折率から有機層2の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下であることを特徴とする。
【0026】
なお、有機層2と無機層3と(これら2層で「ガスバリア層4」ともいう。)は、図1に示すようにプラスチック基材1の少なくとも一方の面S1にその順で接して設けられるが、図2に示すように他方の面S2にも有機層2’と無機層3’と(これら2層で「ガスバリア層4’」ともいう。)をその順で接して設けてもよい。また、他方の面S2には、図1に示すように有機層2’も無機層3’も設けなくてよく、また、有機層2’を設けずに無機層3’を設けてもよい。
【0027】
他方の面S2にも有機層2’と無機層3’とをその順で接して設けることで、いずれの面側から入光したときであっても、入光面側の無機層と有機層との界面及び有機層と基材との界面において、全反射現象が生じないか生じたとしても全光線透過率の低下に与える影響が少ない。また、他方の面S2に有機層2’と無機層3’を設けることで、全光線透過率を向上させることができる。その理由としては、出光面側の有機層と無機層との界面および無機層と空気との界面で起こる全反射現象は、前記有機層と前記無機層とを基材の反対面に設けなかった場合に基材と空気との界面で起こる全反射現象よりも全光線透過率の低下に与える影響が少ないためであろうと推察される。
【0028】
下記に、ガスバリア性フィルム及びガスバリア層の構成要素を詳しく説明する。
【0029】
(プラスチック基材)
プラスチック基材1の材質は、特に制限はなく、光透過率や屈折率などの光学特性、熱変形温度やガラス転移温度などの熱的特性、ヤング率や剛性率などの力学的特性、コスト等を考慮してガスバリア性フィルムの用途に適した各種の樹脂が任意に選定される。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)及びシクロオレフィンコポリマー(COC)等のシクロオレフィン系樹脂、ポリアクリル酸メチル(PMA)及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂(PVA)、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、並びにポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂等が挙げられる。プラスチック基材1の材質は、1種の樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上の樹脂を共重合体、混合体、積層体として併用してもよい。
【0030】
プラスチック基材1の厚さは特に限定されないが、10μm以上500μm以下程度であることが好ましい。
【0031】
プラスチック基材1の表面は、必要に応じて、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、易接着処理等の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。また、有機層2を直接形成しない側の面には、他の機能層を設けてもよい。機能層の例としては、マット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0032】
(有機層)
有機層2は、プラスチック基材1上に接して設けられて、後述する無機層3とともにガスバリア層4を構成する。本発明においては、有機層2は、樹脂(「樹脂」とは「有機高分子化合物」を意味する。)を主成分として形成されている層である。本発明においては、有機層2の屈折率は、それを無機層3の屈折率から差し引いた屈折率差が0.15以下である。すなわち、有機層2の屈折率は、無機層3の屈折率よりも高いか、無機層3の屈折率と同じか、あるいは無機層3の屈折率よりも0.15以内の範囲で低いかのいずれかである。これによって、入光面側の無機層3と有機層2との界面において、全反射現象が生じないか生じたとしても全光線透過率の低下に与える影響を少なくすることができる。有機層3の屈折率は、用いる樹脂の種類を適宜選択したり、体質顔料や中空粒子などの公知の屈折率調整剤を添加することで、調節することができる。なお、プラスチック基材1と有機層2とはいずれも樹脂を主成分に用いているので、通常、これらの屈折率差は小さく、これらの間の界面が全光線透過率の低下に与える影響は少ないと考えられるが、プラスチック基材1と有機層2の屈折率との関係を考慮する場合は、有機層2の屈折率からプラスチック基材1の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下になるようにすることで、入光面側の有機層2と基材1との界面において、全反射現象が生じないか生じたとしても全光線透過率の低下に与える影響が少なくすることができる。
【0033】
有機層2を形成するための樹脂としては、特に限定されず、例えば上記「プラスチック基材」で説明した各種の樹脂が挙げられる。
【0034】
有機層2の樹脂は、硬化性化合物が架橋されている樹脂であることが好ましい。硬化性化合物が架橋されている樹脂は、三次元網目構造を有するので、その有機層2の上に無機層3を成膜する時の減圧環境、熱環境又はプラズマ環境に対する耐性が高いからである。硬化性化合物が架橋されている樹脂は、例えば、電離放射線硬化性化合物を含有させた有機層用組成物に電離放射線を照射して硬化性化合物を架橋させることにより得ることができる。なお、電離放射線とは、紫外線又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線等の荷電粒子線を挙げることができる。あるいは、硬化性化合物が架橋されている樹脂は、例えば、イソシアネート系、アミン系、シランカップリング系等の架橋剤とこれらに対する反応性基を有する熱硬化性化合物とを含有させた有機層用組成物に熱を加えて硬化性化合物を架橋させることにより得ることができる。電離放射線を照射して硬化性化合物を架橋させる方が、短時間で硬化させることが可能なので、熱を加えて硬化性化合物を架橋させるよりも好ましい。
【0035】
有機層2は、アクリレートが架橋されている層を好ましく用いることができる。アクリレートの具体例としては、アルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレート、アルキレンオキサイド変性アクリレート、フェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、2−エチルヘキシルEO変性アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロハントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。また、これらアクリレートは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。これらアクリレートの市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロニックスシリーズを使用することができる。
【0036】
有機層2は、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートが架橋されている層を特に好ましく用いることができる。アルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートは、ビスフェノール化合物から誘導されるフルオレン骨格を有するものであり、カルドポリマーと総称される群に含まれることもあるが、特に好ましく用いられるアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートは他の成分を吸着しやすい水酸基を含まないものであり、その化合物で形成した有機層2上にイオンプレーティング法や反応性スパッタ法等の高速成膜手段で無機層3を成膜した場合であっても、良好なガスバリア性を安定して実現できるガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4とすることができる。水酸基がないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを採用することにより、水分等の低分子成分の吸着が抑制されたため、その低分子成分が無機層3の成膜時の熱やプラズマにより有機層2内からガスとして抜け出して無機層3の成膜を阻害することがなく、その結果、欠陥の少ない無機層3を成膜できたためであろうと推察される。
【0037】
水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレート(以下、単に「変性フルオレンアクリレート」ともいう。)としては、一般式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。この一般式(1)において、n1+n2は1〜20の整数であり、R1,R2は水素原子又はメチル基であり、R3,R4は水素原子、メチル基又はエチル基であり、R5,R6は水素原子、メチル基又はエチル基である。特に、R1,R2,R3,R4,R5,R6は水素原子又はメチル基であることが好ましく、R1,R2,R3,R4,R5,R6が同一で且つ水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0038】
【化1】

【0039】
1+n2が1〜20の変性フルオレンアクリレートが架橋されている有機層2は、好ましいガスバリア性を有したガスバリア層4を形成するために有効である。n1+n2が1未満(すなわち0)の変性フルオレンアクリレートで有機層2を形成した場合は、結晶性が高くなるために溶解し難く、インキ化が困難になったり塗工が困難となってしまうことがある。一方、n1+n2が20を超える変性フルオレンアクリレートで有機層2を形成した場合は、有機層中に直鎖状のアルキレン変性箇所が増大するため、その分子鎖中に低分子成分を取り込んでしまうおそれがある。
【0040】
なお、n1+n2が大きくなると、形成した有機層2のガラス転移温度(Tg)が低くなり、その有機層2上に無機層3を成膜する際の熱やプラズマの影響によって有機層2の結晶化が進み、有機層2が白化するおそれがある。有機層2が白化した場合は、有機層2の表面が荒れるため、その有機層2上に形成する無機層3にクラックが生じやすくなり、ガスバリア性が低下することがある。また、ガスバリア性が低下しなくとも有機層2の曇度が低下するので、好ましくない。こうした問題に対しては、n1+n2が1〜6の変性フルオレンアクリレートで有機層2を形成することが好ましく、有機層2のガラス転移温度Tgを高くすることができる。その結果、有機層2の白化を防いで、透明でガスバリア性のよいガスバリア層4を形成することができる。
【0041】
1とn2の数は同じであっても同じでなくてもよく、合計が上記の範囲内であればよい。
【0042】
一般式(1)で表される化合物は公知の方法で合成することができる。例えば、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸クロリドを用いて、フルオレン環を有するアルコール又はフルオレン環置換−OH基を含有する化合物を(メタ)アクリルエステル化することによって得られる。ここで使用する、フルオレン環を有するアルコール又はフルオレン環置換−OH基を含有する化合物としては、例えば、9−フルオレンメタノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3、3’−ジメチル−4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、等を挙げることができる。
【0043】
一般式(1)で表される化合物の市販品として、例えば、新中村化学工業株式会社製のNKエステルシリーズや大阪ガスケミカル株式会社製のオグソールEAシリーズを使用することができる。
【0044】
水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを用いる場合、有機層用組成物は、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートのみを硬化性化合物として含むものであってもよいが、その他の硬化性化合物を併せて含むものであってもよい。水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートと併せて用いることができるその他の硬化性化合物としては、水酸基を構造内に含まないアクリレートを好ましく用いることができるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、水酸基を構造内に含むアクリレートであってもよい。ただし、その場合の有機層用組成物の配合割合としては、水酸基を構造内に含まないものと含むものとの質量比が、100:0〜50:50程度、好ましくは100:0〜75:25である。この範囲内であれば、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを用いる趣旨を逸脱しない範囲で、所期の目的を達成して、ガスバリア性のよいガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4を得ることができる。
【0045】
紫外線硬化型の有機層用組成物には、通常、重合開始剤が含まれる。重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等を用いることができる。重合開始剤の配合量は特に限定されないが、良好な架橋が行われるという観点から、硬化性化合物100質量部に対して0.1〜5質量部程度添加することが好ましい。
【0046】
溶剤は、塗布液の粘度調整の見地から、有機層用組成物に応じて任意に混合することができる。溶剤としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0047】
有機層用組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて適宜添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、光増感剤、熱安定剤、ラジカル捕捉剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色素(着色染料、着色顔料)、体質顔料、中空粒子、光拡散剤等が挙げられる。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0048】
有機層2は、プラスチック基材1上に有機層用組成物を塗布し、必要に応じて塗布後の塗膜に電離放射線を照射したり熱を加えたりして塗膜を架橋等させて、形成することができる。塗布方法は、後述の「製造方法」欄で説明する塗布方法から選択して適用できる。
【0049】
有機層2は、一回の成膜回数で形成してなる単層でも、2回以上の成膜回数で形成してなる2層以上の層であってもよい。2層以上の場合、各層は同じ有機層用組成物を用いてもよいし、異なる有機層用組成物を用いてもよい。有機層2の厚さは、単層又は2層以上に関わらず、基板のたわみの観点から0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、さらに表面性や生産性の観点を加えると0.5μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0050】
(無機層)
無機層3は、水蒸気等のガスを遮断する機能層として有機層2上に接して設けられ、有機層2と併せてガスバリア層4を構成する。無機層3は、ガスバリア性の無機化合物を主成分として形成されている層である。本発明においては、有機層3の屈折率は、それから有機層2の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下である。すなわち、無機層3の屈折率は、有機層2の屈折率よりも低いか、有機層2の屈折率と同じか、あるいは有機層2の屈折率よりも0.15以内の範囲で高いかのいずれかである。これによって、入光面側の無機層3と有機層2との界面において、全反射現象が生じないか生じたとしても全光線透過率の低下に与える影響を少なくすることができる。無機層3の屈折率は、無機化合物の種類を適宜選択したり、必要なガスバリア性を確保できる範囲で体質顔料や中空粒子などの公知の屈折率調整剤を添加することで、調節することができる。
【0051】
無機層3を形成するためのガスバリア性の無機化合物としては、特に限定されず、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、チタン、スズ、ジルコニウム及びインジウムから選ばれる1種又は2種以上の元素を含有する無機化合物が挙げられる。透明性の観点より、ケイ素を含有する無機化合物が好ましい。これらの元素は、単体で用いてもよいし、他の元素と複合させた複合無機化合物として用いてもよい。複合酸化物としては、例えば、無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸化窒化物等が挙げられる。もっとも、窒素を主成分として含有する複合無機化合物は、着色して無機層3の透明性を損なうおそれがあるので、好ましくはない。そこで、透明性の観点からは、無機酸化物が好ましく、具体的には、酸化珪素、酸化珪素アルミニウム、及び酸化珪素亜鉛から選ばれる1又は2以上の無機化合物が最も好ましい。無機層3は、1種の無機化合物を単独で用いてもよいし、2種以上の無機化合物を併用してもよいし、本発明の要旨の範囲内で無機化合物と有機化合物を併用してもよい。
【0052】
無機層3の厚さは、使用する無機化合物によっても異なるが、ガスバリア性確保の見地から、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、クラック等の発生を抑制する見地から、通常5000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。また、無機層3は1層であってもよいし、合計厚さが上記範囲内となる2層以上の無機層3であってもよい。2層以上の無機層3の場合には、同じ材料同士を組み合わせてもよいし、異なる材料同士を組み合わせてもよい。
【0053】
<その他の構成>
ガスバリア性フィルム10は、上述のとおり、プラスチック基材1、有機層2、及び無機層3で構成されているが、例えば、これら以外の層を、プラスチック基材1の有機層2が形成されていない側の面S2に積層したり、無機層3上又は無機層3’上に積層したりしてもよい。任意の層としては、本発明の特徴を阻害しない範囲で、例えば、従来公知のプライマー層、マット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0054】
[製造方法]
本発明に係るガスバリア性フィルム10の製造方法は、プラスチック基材1上に接して有機層2を形成する工程と、その有機層2上に接して無機層3を形成する工程とを有し、無機層の屈折率から有機層の屈折率を差し引いた屈折率差を0.15以下にすることを特徴とする。なお、無機層の屈折率から有機層の屈折率を差し引いた屈折率差を0.15以下にすることについては、上記「有機層」「無機層」の説明欄で説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
下記に、各工程について説明する。
【0055】
(有機層形成工程)
有機層形成工程は、プラスチック基材1上に、有機層用組成物で有機層2を形成する工程である。通常、プラスチック基材1上に有機層用組成物を塗布し、その塗膜に電離放射線を照射したり熱を加えたりして、有機層用組成物に含まれる硬化性化合物を硬化させて有機層2を形成する。なお、有機層用組成物については、上記「有機層」の説明欄で説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
【0056】
有機層用組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスロールコート法、リバースロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、及びダイコート法等を挙げることができる。
【0057】
有機層用組成物を塗布した後は、必要に応じて乾燥をおこなう。乾燥温度は、常温であってもよいが、有機層用組成物が溶剤を含有する場合には、溶剤を除去するための乾燥を、溶剤の蒸発が促進される温度以上の温度でおこなうことが好ましい。有機層用組成物に照射する電離放射線としては既述したとおりであるが、電離放射線として紫外線を適用する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が用いられる。
【0058】
(無機層形成工程)
無機層形成工程は、有機層2上に無機層用材料を堆積して無機層3を形成する工程である。無機層用材料は、上記「無機層」の説明欄で説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
【0059】
無機層3の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法又はプラズマ化学気相成長法等を好ましく挙げることができる。こうした各種の形成方法での成膜条件は、得ようとする無機層3の物性及び厚さ等を考慮し、従来公知の成膜条件を適宜調整して行えばよい。
【0060】
より具体的には、(1)原料を基材上に加熱蒸着させる真空蒸着法、(2)原料に酸素ガスを導入して酸化させ、基材に蒸着させる酸化反応蒸着法、(3)ターゲット原料にアルゴンガス、酸素ガスを導入してスパッタリングすることにより、基材に堆積させるスパッタリング法、(4)原料をプラズマガンで発生させたプラズマビームで加熱させ、基材に堆積させるイオンプレーティング法、(5)有機珪素化合物等を原料とし、酸化珪素膜等を基材に堆積させるプラズマ化学気相成長法、等を利用することができる。
【0061】
本発明では、無機層3は有機層2を介してプラスチック基材1上に設けられるので、無機層の成膜時に加わる熱やプラズマによるプラスチック基材1のダメージを抑制することができる。また、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートで有機層2を形成した場合は、有機層中に含まれる低分子成分が少なく、無機層の成膜時に加わる熱やプラズマによっても、有機層中の低分子成分がガスとなって排出して無機層3の形成を阻害することがない。
【0062】
なお、ガスバリア性フィルム10が、上述した他の機能層を有する場合には、それらの層の形成工程が任意に含まれる。
【0063】
[装置]
本発明に係る装置は、上記本発明のガスバリア性フィルム10又は上記本発明のガスバリア層4を用いた表示装置又は発電装置である。上記したガスバリア性フィルム10及びガスバリア層4はいずれも良好な透明性を示すものであるので、そのガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4を用いれば、表示装置及び発電装置の高機能化に貢献できる。
【0064】
表示装置としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、タッチパネル、電子ペーパー等を挙げることができる。また、これらの表示装置をアクティブマトリックス駆動する薄膜トランジスタも、この表示装置に含まれる。なお、これら各表示装置の構成は特に限定されず、それぞれ従来公知の構成を適宜採用することができ、且つそうした各表示装置に適用するガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4による封止手段も特に限定されず、従来公知の手段とすることができる。
【0065】
具体的には、例えば、有機EL素子としては、本発明に係るガスバリア性フィルム10上に陰極と陽極を有し、両電極の間に、有機発光層(単に「発光層」ともいう。)を含む有機層を有するものを挙げることができる。発光層を含む有機層の積層態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。また、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間に電子注入層を有してもよい。また、発光層は一層だけでもよく、また、第一発光層、第二発光層及び第三発光層等のように発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。なお、有機EL素子は発光素子であることから、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
【0066】
発電装置としては、例えば、太陽電池素子(太陽電池モジュール)を挙げることができる。発電装置の構成は特に限定されず、従来公知の構成を適宜採用することができる。さらに、そうした発電装置に適用するガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4による封止手段も特に限定されず、従来公知の手段とすることができる。
【0067】
具体的には、例えば、例えば、本発明に係るガスバリア性フィルム10を太陽電池素子の前面シート又は裏面シートの部材として使用した例を挙げることができる。こうした太陽電池素子は、太陽光側から厚さ方向に順に、前面シート、充填材、太陽電池素子、リード線、端子、端子ボックス、裏面シートの構成で、それらがシール材を介して両端の外装材に固定されている。その前面シートとしては、外層側に配置される透明性フィルムと本発明に係るガスバリア性シート10とを張り合わせて構成される例を挙げることができる。外層側に配置されるフィルムとしては、耐候性、耐加水分解性フィルム等が使用される。その裏面シートとしては、裏面封止用フィルムと、外層側に配置されるフィルムとの間に、本発明に係るガスバリア性シート10を挟んで構成される例を挙げることができる。裏面封止用フィルムとしては、太陽電池モジュール側で太陽光を反射して電換効率を高めるべく、高度な反射率を有する例えば白色のポリエステルフィルム等が使用される。また、外層側に配置されるフィルムとしては、耐候性、耐加水分解性フィルム等が使用される。
【実施例】
【0068】
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
プラスチック基材1として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、コスモシャイン(登録商標)A−4300、屈折率1.58)の片面に、下記の組成に調整した紫外線硬化型の有機層用組成物(紫外線硬化型有機層用インキA)をダイコートにて塗布し、120℃で2分間乾燥させた後、波長260nm〜400nmの範囲における積算光量300mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、厚さ5μmの有機層2を形成した。
【0070】
(紫外線硬化型有機層用インキAの組成)
・上記一般式(1)の化合物:R1〜R4=水素原子、n1+n2=2(硬化性化合物、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF):19質量部
・ポリエステルアクリレート(硬化性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):19質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0071】
無機層3は、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に有機層2を形成したフィルムを有機層側に成膜する向きにして、ホローカソード型イオンプレーティング装置にセットした。そして、蒸発源材料である酸化珪素(高純度化学研究所製)を、ホローカソード型イオンプレーティング装置内の坩堝に投入した後、真空引きを行った。真空度が5×10-4Paまで到達した後、プラズマガンにアルゴンガスを15sccm導入し、電流110A、電圧90Vのプラズマを発電させた。チャンバー内を1×10-1Paに維持することと磁力によりプラズマを所定方向に曲げ、蒸発源材料に照射させた。坩堝内の蒸発源材料は溶融状態を経て昇華することが確認された。イオンプレーティングを15秒間行って基板に堆積させることにより、膜厚100nmの酸化珪素層を形成した。
【0072】
以上のようにして得た実施例1のガスバリア性フィルム10の層構成は、プラスチック基材/有機層/無機層である。
【0073】
[実施例2]
下記の組成に調整した紫外線硬化型の有機層用組成物(紫外線硬化型有機層用インキB)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のガスバリア性フィルム10を製造した。
【0074】
(紫外線硬化型有機層用インキBの組成)
・エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(硬化性化合物、新中村化学工業株式会社製、ABE−300):19質量部
・ポリエステルアクリレート(硬化性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):19質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0075】
[実施例3]
下記の組成に調整した紫外線硬化型の有機層用組成物(紫外線硬化型有機層用インキC)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3のガスバリア性フィルム10を製造した。
【0076】
(紫外線硬化型有機層用インキCの組成)
・ポリエチレングリコール#200ジアクリレート(硬化性化合物、新中村化学工業株式会社製、A−200A):19質量部
・ポリエステルアクリレート(硬化性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):19質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0077】
[実施例4]
下記の組成に調整した紫外線硬化型の有機層用組成物(紫外線硬化型有機層用インキD)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4のガスバリア性フィルム10を製造した。
【0078】
(紫外線硬化型有機層用インキDの組成)
・一般式(1)の化合物:R1〜R4=水素原子、n1+n2=2(重合性化合物、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF):38質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0079】
[実施例5]
下記の組成に調整した紫外線硬化型の有機層用組成物(紫外線硬化型有機層用インキE)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例5のガスバリア性フィルム10を製造した。
【0080】
(紫外線硬化型有機層用インキEの組成)
・一般式(1)の化合物:R1〜R4=水素原子、n1+n2=2(重合性化合物、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF):35質量部
・下記一般式(2)の化合物(重合性化合物、R1〜R3=水素原子):3質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0081】
【化2】

【0082】
なお、上記した一般式(2)のフルオレンアクリレートは以下のように合成した。先ず、500mL四つ口フラスコ中にビスフェノールフルオレン型エポキシポリマー231g(エポキシ当量231)と、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド450mgと、2,6−ジ−イソブチルフェノール100mgと、アクリル酸72.0gとを仕込んで混合し、空気を毎分25mLの速度で吹き込みながら90〜100℃で加熱して溶解させた。この溶液は白濁していたがそのまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全に溶解させた。溶液は次第に透明粘稠になったがそのまま攪拌し続け、この間に酸価を測定して酸価が2.0mgKOH/g未満になるまでこの加熱攪拌を継続した。酸価が目標(酸価0.8)に達した8時間を経過後、室温まで冷却し、無色透明な固体である、一般式(2)のフルオレンアクリレートを得た。
【0083】
[実施例6]
下記の組成に調整した紫外線硬化型の有機層用組成物(紫外線硬化型有機層用インキF)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例6のガスバリア性フィルムを製造した。
【0084】
(紫外線硬化型有機層用インキFの組成)
・上記一般式(2)の化合物:(重合性化合物、R1〜R3=水素原子):38質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0085】
[実施例7]
無機層3の蒸着原材料として酸化珪素(株式会社高純度化学研究所製)100質量部と酸化亜鉛(キヤノンオプトロン株式会社製)30質量部とを混合したものを用いて、酸化珪素亜鉛層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例7のガスバリア性フィルムを製造した。
【0086】
[実施例8]
無機層3の蒸着原材料として酸化珪素(株式会社高純度化学研究所製)50質量部と酸化アルミニウム(キヤノンオプトロン株式会社製)50質量部とを混合したものを用いて、酸化珪素アルミニウム層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例8のガスバリア性フィルムを製造した。
【0087】
[実施例9]
無機層3の蒸着原材料として酸化ジルコニウム−酸化アルミニウム(キヤノンオプトロン株式会社製、OM−4)を用いて、酸化アルミニウムジルコニウム層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例9のガスバリア性フィルムを製造した。
【0088】
[比較例1]
無機層3の蒸着原材料として酸化アルミニウム(キヤノンオプトロン株式会社製)を用いて、酸化アルミニウム層を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例例1のガスバリア性フィルムを製造した。
【0089】
[比較例2]
無機層3の蒸着原材料として酸化亜鉛(キヤノンオプトロン株式会社製)を用いて、酸化亜鉛層を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例2のガスバリア性フィルムを製造した。
【0090】
[実施例10]
プラスチック基材1として、厚さ100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製、テオネックス(登録商標)Q65F、屈折率1.64)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例10のガスバリア性フィルムを製造した。
【0091】
[実施例11]
プラスチック基材1として、厚さ100μmのポリカーボネートフィルム(帝人化成株式会社製、ピュアエース(登録商標)C110、屈折率1.59)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例11のガスバリア性フィルムを製造した。
【0092】
[実施例12]
プラスチック基材1として、厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)ZD−12、屈折率1.53)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例12のガスバリア性フィルムを製造した。
【0093】
[実施例13]
片側に有機層2及び無機層3を形成した実施例1のガスバリア性フィルム10のポリエチレンテレフタレートフィルムのもう片側に、実施例1と同様にして有機層2’及び無機層3’を形成して、実施例13のガスバリア性フィルムを製造した。実施例13のガスバリア性フィルム10の層構成は、無機層/有機層/プラスチック基材/有機層/無機層である。
【0094】
[実施例14]
片側に有機層2及び無機層3を形成した実施例11のガスバリア性フィルム10のポリカーボネートフィルムのもう片側に、実施例10と同様にして有機層2’及び無機層3’を形成して、実施例14のガスバリア性フィルムを製造した。実施例13のガスバリア性フィルム10の層構成は、無機層/有機層/プラスチック基材/有機層/無機層である。
【0095】
[評価と結果]
(屈折率、透明性及びガスバリア性の測定方法)
実施例1〜14及び比較例1〜2のガスバリア性フィルムについて、各層の屈折率、全光線透過率、及び水蒸気透過率の測定をおこなった。各層の屈折率の測定は、分光エリプソメーター(JOBIN YVON社製、UVISEL)を用いておこない、589nmの値を採用した。全光線透過率の測定は、JIS K7361−1(1997年)に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000、D65光源)を用いて無機層面側から入光させておこなった。水蒸気透過率の測定は、温度37.8℃、湿度100%RHの条件下で、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W3/31)を用いておこなった。これらの結果を表1に示す。
【0096】
(結果)
表1に示すように、無機層の屈折率から有機層の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下である実施例1〜14は、全光線透過率が90%以上であり、良好な透明性を示したが、屈折率差が0.15を超えている比較例1〜2は、透明性が劣った。また、実施例1、11と実施例13,14を対比することで、有機層と無機層とを基材の両面に設けることで、全光線透過率が向上することがわかる。また、有機層が水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートが架橋されている層である実施例1、4、5、7〜14は、水蒸気透過率が0.1g/m2/day未満であり、良好なガスバリア性を示した。
【0097】
【表1】

【符号の説明】
【0098】
1 プラスチック基材
2,2’ 有機層
3,3’ 無機層
4,4’ ガスバリア層
10,10A,10B ガスバリア性フィルム
S1 プラスチック基材の片面
S2 プラスチック基材の他の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材と、前記プラスチック基材上に接して設けられた有機層と、前記有機層上に接して設けられた無機層とを有し、前記無機層の屈折率から前記有機層の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記有機層が、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートが架橋されている層である、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記プラスチック基材の他方の面にも、前記有機層と前記無機層とがその順で接して設けられている、請求項1〜2のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
有機層と、前記有機層上に接して設けられた無機層とを有し、前記無機層の屈折率から前記有機層の屈折率を差し引いた屈折率差が0.15以下であることを特徴とするガスバリア層。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム又は請求項4に記載のガスバリア層を用いた表示装置又は発電装置であることを特徴とする装置。
【請求項6】
プラスチック基材上に接して有機層を形成する工程と、前記有機層上に接して無機層を形成する工程とを有するガスバリア性フィルムの製造方法であって、
前記無機層の屈折率から前記有機層の屈折率を差し引いた屈折率差を0.15以下にすることを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−67109(P2013−67109A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208158(P2011−208158)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】