説明

ガスバリア性フィルム及びその製造方法

【課題】ガスバリア性、特に酸素遮断性に優れ、かつ可撓性、透明性、耐湿性、耐薬品性、インキ接着性等に優れたガスバリア層を有する包装用材料を提供する。
【解決手段】フィルム片面に接着層を設け、アルコキシシラン及び/又はアルコキシシラン重縮合物の加水分解物と、ポリビニルアルコールとの混合物(アルコキシシラン及び/又はアルコキシシランの重縮合物の加水分解物から生成する珪素酸化物と、ポリビニルアルコールの混合量は、加水分解液中の珪素酸化物(SiO換算)100重量%に対してポリビニルアルコール25〜100重量%)に一般式(1)を満たす、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている中和度10〜30%の中和物を添加し、水性溶液をpH3.5以下に調整したガスバリア層を形成することで得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野等に用いられる、特に、透明性を有するガスバリア性積層体に関する
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野に用いられる包装材料は、内容物の変質、特に食品においては油脂の酸化や蛋白質の変質等を抑制して味や鮮度を保持するために、また医薬品においては有効成分の変質を抑制して効能を維持するために、さらに精密電子部品においては金属部分の腐食を抑制して絶縁不良等を防ぐために、包装材料を透過する酸素による影響を防止する必要があり、気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
【0003】
そのために、従来から塩化ビニリデン樹脂をコートしたポリプロピレン(KOP)やポリエチレンテレフタレート(KPET)或いはエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)など一般にガスバリア性が比較的高いと言われる高分子フィルムをガスバリア性フィルムとして用いた包装フィルム、あるいは酸化珪素(SiOx)などの珪素酸化物薄膜を透明高分子からなる基材上に真空蒸着などの手段によって設けた蒸着フィルムをガスバリア性フィルムとして用いた包装フィルムが一般的に使用されてきた。
【0004】
ところが、KOPやKPET等の塩化ビニリデン樹脂を用いた包装フィルムは、使用後の廃棄において焼却処理すると塩素ガスを発生するため、これが酸性雨の原因の一つになると言われ、最近では敬遠される傾向があった。さらに上述のEVOHを用いた包装フィルムは、温度や湿度の影響を受け易く、その変化によっては更にガスバリア性が低下することがあった。
また、珪素酸化物薄膜を透明高分子からなる基材上に真空蒸着などの手段によって設けた蒸着フィルムは、屈曲等によって蒸着膜にクラックが入りやすく、結果としてガスバリア性が低下することがある。
【0005】
そこでこれらの欠点を克服した包装フィルムとして、水溶性の無機物もしくはポリマーからなる液状組成物をフィルムにコートし、高いガスバリア性を発現させる方法として、ポリビニルアルコール(PVA)等の親水性高分子溶液と金属アルコキシドの加水分解溶液を混合し、フィルムにコート後乾燥、熱処理し親水性高分子と金属アルコキシド間で相互に作用させることによりガスバリア性の付与を行う方法が提案されている(特許文献1)。これらの方法は金属酸化物が有する優れたガスバリア性と高分子が有する柔軟性を兼ね備えており、高いガスバリア性と屈曲するような乱暴な取扱いにも耐えうる実用性を有している。
しかしながらこのようにして作られたコートフィルムのコート層は、インキとの接着性が低下し、フリーロールにインキがとられる等、耐スクラッチ性が劣るという問題がある
【0006】
今回発明したコート膜組成と類似の酸素バリアコート剤として、ポリビニルアルコール、ケイ素アルコキドの加水分解液、カルボン酸化合物を使用し、シール層の剥離強度に優れたガスバリア性フィルム作製方法が提案されている(特許文献2)が、本発明のコート剤組成の場合、カルボン酸を10%以上中和しないと、ガスバリア性が発現しない。また、使用されるカルボン酸化合物の一般式は本発明で使用している分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物(化1)とは異なる。

【化1】


(化1中のR1、R2、R3、R4はOH、COOH、CHCOOHのいずれかを示し、αは1以上の整数を示す。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−345841号公報、同6−192454号公報
【特許文献2】特開2004−243763
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記欠点を解決するものであり、インキ接着性の良好なガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ガスバリア層に分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の10〜30%中和物を添加することで課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面に接着層を設け、該接着層の上に下記ガスバリアコート剤を塗布することによってガスバリア層を形成するガスバリアフィルムであって、
前記ガスバリアコート剤が、アルコキシシラン及び/又はアルコキシシラン重縮合物の加水分解物(A)と、ポリビニルアルコール(アルコキシシラン及び/又はアルコキシシランの重縮合物の加水分解物から生成する珪素酸化物と、ポリビニルアルコールの重量比が50/50〜80/20)と下記一般式(1)を満たす、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている中和度10〜30%の中和物からなる、インキ接着性の良好なガスバリア性フィルム。

【化1】


(化1中のR1、R2、R3、R4はOH、COOH、CHCOOHのいずれかを示し、αは1以上の整数を示す。)
(2)前記ガスバリアフィルムの酸素透過度が10cc/m ・atm・24h以下である請求項1記載のガスバリア性フィルム
(3)ガスバリア層に存在する固形分100重量部に対して、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の部分中和物のカルボニル基が1.2〜11.5mol/100重量部の割合でガスバリア層に存在する上記(1)記載のフィルム積層体の製造方法、
(4)分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物が、ポリマレイン酸、メチルビニルエーテル無水マレイン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸であるガスバリアフィルム、
(5)プラスチックフィルムが、延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムあるいは延伸ポリエステルフィルムであるガスバリア性フィルム、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、オーバーコート層を設けなくても高湿度下で長時間ガスバリア性を維持し、かつ一般的な包装材料として使用可能な衝撃強度を有し、インキ接着性が向上したガスバリア性フィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用されるアルコキシシランおよびその重縮合物は下記一般式(2)で表わされる。
【化2】


(式中のRは同一又は異なってもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは0〜10の整数を示す。)
【0012】
本発明のガスバリアコート剤は、アルコキシシランおよび/またはアルコキシシラン重縮合物の加水分解物と親水性ポリマーと一般式(1)を満たす、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の10〜30%中和物を添加した水性溶液をpH3.5以下に調整したものである。本発明で用いられるアルコキシシランおよび/またはアルコキシシラン重縮合物としては通常、上記一般式(2)で表される化合物が用いられる。
【0013】
親水性ポリマーとしては、バリア性や可撓性の面から、ポリビニルアルコール類が望ましい。ポリビニルアルコール類は、ポリビニルアルコール、もしくはエチレン含有率が3〜30%の変性ポリビニルアルコールを使用しても良いが、水溶液を調製するにあたってポリビニルアルコールが好ましい。けん化度は80%以上が好ましく、より好ましくは完全けん化物が用いられる。完全けん化物の方がアルコキシシランの加水分解物との相溶性が良く、より緻密なバリア層を形成する。ポリビニルアルコールの重合度は200から3,500が好ましい。
【0014】
アルコキシシランは、好ましくは加水分解率90%以上に加水分解された後、ポリビニルアルコール溶液と混合される。アルコキシシランの加水分解は、アルコキシシランを水、無機酸(もしくは、無機塩、有機酸)及び、有機溶媒を含む溶液中で加温することにより実施される。このときアルコキシシラン加水分解物の重縮合も同時に起こる。用いられる水の量は、アルコキシシランの珪素1原子に対し6〜10モルである。10モルより多いと加水分解したシリケートの重縮合が進行しすぎて溶液がゲル化する。ゲル化した液はポリビニルアルコール溶液と均一に混合することができない。また6モルより少ないとアルコキシシランの加水分解率90%以上を達成することが実質上困難である。
【0015】
添加される無機酸(もしくは、無機塩、有機酸)は、アルコキシシランの加水分解および重縮合の触媒として作用する。用いられる酸は、塩酸、硝酸等の鉱酸や乳酸等が用いられる。加水分解時のpHは、0.5〜3.5、好ましくは2.0〜3.0である。pHが3.5より大きいと加水分解が進行しない。pHが0.5より小さいと加水分解は十分に進行するものの同時に重縮合の進行も著しく、溶液がゲル化する。
【0016】
加水分解時の温度は、30〜60℃、好ましくは40〜55℃である。60℃より高いと重縮合が進行し溶液がゲル化する。また30℃より低いと加水分解が十分に進行せず、より長い時間を要し実用的でない。加水分解時間は溶液のpHおよび温度によって異なるが、概ね30〜400分である。
【0017】
用いられる有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどが挙げられるが、特にエチルアルコールおよびイソプロピルアルコールが好適に用いられる。有機溶媒の量は加水分解に使用する水の重量に対し10〜100重量%、より好ましくは30〜70重量%である。100重量%より多いと有機溶媒を回収するのに困難であり、10重量%より少ないとアルコキシシランの加水分解時に溶液がゲル化を起こす。以上の方法により、アルコキシシラン90%以上の加水分解率にも関わらず、ゲル化しない溶液を得ることができる。
【0018】
アルコキシシランの加水分解液とポリビニルアルコール溶液との混合は、アルコキシシラン及び/又はアルコキシシランの重縮合物の加水分解物から生成する珪素酸化物(SiO2換算)と、ポリビニルアルコールの重量比が50/50〜80/20、好ましくは50/50〜62.5/37.5である。
ポリビニルアルコールの重量比が20%より低い場合、バリア層の柔軟性が十分でなくクラックを生じやすいばかりでなく、ガスバリア性も低下する。50重量%より大きい場合もガスバリア性が低下し、好ましくない。該加水分解液とポリビニルアルコール水溶液とを混合したときのpHは1.5〜3.5が好ましく、2.0〜3.0がより好ましい。pHが1.5より低いと、基材のナイロンフィルムの耐衝撃性を著しく低下させてしまう。pHが3.5より高いとコート剤が高粘度となりゲル化しやすく、塗布の作業が困難となるし、十分なポットライフが得られない。このため、該加水分解液とポリビニルアルコールを混合したときpHが3.5より高ければポットライフ安定化のために塩酸や硝酸等の鉱酸やその他の酸を添加し、pHを調整してもよい。
【0019】
分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の部分中和物はガスバリア層に存在する固形分100重量部に対して、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の部分中和物のカルボニル基が1.2〜11.5mol/100重量部、好ましくは1.7〜10.3mol/100重量部が好ましい。1.2mol/100重量部未満だと十分なインキ接着性を得られず、11.5mol/100重量部以上だと充分なガスバリア性が発現しない。
【0020】
本発明における分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物としては、例えば、分子内に下記構造式で表される構造を含む化合物(1)が挙げられる。

【化1】


(化1中のR1、R2、R3、R4はOH、COOH、CHCOOHのいずれかを示し、αは1以上の整数を示す。)
【0021】
また、化合物(化1)は環状になっていてもよく、化合物(化1)の分子内の連続する2個の炭素原子が芳香環の一部を形成してもよい。また芳香環を有するものであってもよい。そのような場合には、構造式(化1)におけるRの数が少なくなることもある。また、化合物(化1)のカルボキシル基のうち、2つのカルボキシル基の間で無水物構造が少なくとも1つ作られている化合物も、本発明においては、上記構造式で表される化合物(化1)と同様の効果を発現する。
【0022】
この様な化合物としては、高分子、オリゴマー、低分子化合物の何れでもよい。高分子やオリゴマーとしては、ポリマレイン酸やポリマレイン酸無水物、メチルビニルエーテル無水マレイン酸、イソブチレン無水マレイン酸およびこれらの共重合体が挙げられる。なお、これらの化合物を後述のようにコーティング剤として使用する場合には、粘度が低い方が取り扱いやすいため、数平均分子量が10,000未満であるオリゴマーが好ましい。また、低分子化合物としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸、あるいはこれら化合物の無水物などが挙げられる。
【0023】
分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の部分中和物としては、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物のカルボキシル基をアルカリで部分的に中和することにより得ることができる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア(アンモニア水を含む)などが挙げられる。部分中和物は、通常、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の水溶液にアルカリを添加することにより得ることができる。分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物とアルカリの量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。
【0024】
分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の部分中和物の中和度は、得られるフィルムの酸素ガスバリア性とインキ接着性の程度を基準として選択することが好ましい。この中和度が低いほど、得られるフィルムのインキ接着性の程度は改善されるが、中和度がある程度以上高くないと酸素ガスバリア性が低下する傾向を示す。中和度としては5〜45%、好ましくは、10〜30%が好ましい。なお、中和度は、式:中和度(%)=(N/N0 )×100と定義し、求めることができる。ここで、Nは分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物1g中の中和されたカルボキシル基のモル数、N0 は部分中和する前の分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物1g中のカルボキシル基のモル数である。
【0025】
本発明の接着層を形成する接着剤としては、汎用のものであれば問題ないが、好適には主剤にポリオール、硬化剤にポリイソシアナートを用いる2液型ポリウレタン樹脂接着剤がよりよい。
【0026】
2液型ポリウレタン樹脂接着剤の主剤に用いられるポリオールは、その分子中にヒドロキシル基(OH)を2個以上有するポリオール化合物からなるものである。該ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、ポリカーボネートポリオール類が挙げられる。これらは混合して使用されてもよい。また、場合によってはシランカップリング剤等の添加剤を添加してもよい。
【0027】
2液型ポリウレタン樹脂接着剤の硬化剤に用いられるポリイソシアナートは、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO)を有する化合物からなるものである。例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタンイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどのモノマー類と、これらの重合体、誘導体などがある。
【0028】
本発明では、上記のようにして調製した接着剤、ガスバリアコート剤を、基材であるプラスチックフィルムの片面に順次塗布して乾燥し、接着層、ガスバリア層を形成する。
【0029】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンなどのポリエーテル系樹脂;ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリメタキシレンアジパミドなどのポリアミド系樹脂;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニルなどのビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルスルフォン;ポリスルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトンケトンなどの熱可塑性樹脂を主成分とする。これらの熱可塑性樹脂は単独重合体であっても共重合体であってもよい。なお、本発明に用いられるプラスチックフィルムは、上記熱可塑性樹脂に限定されることなく、セロファンに代表される非熱可塑性フィルムも用いることが出来る。本発明の基材とはこれらの樹脂をフィルム状に成型したものが用いられる。未延伸フィルムや一軸または二軸に延伸したものいずれも使用できるが、バリア層をコートするときのコートしやすさ、バリア材の強度の観点から延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、もしくは延伸ポリエステルフィルムが最も好ましい。
【0030】
接着剤やガスバリアコート剤の塗布には、通常のコーティング法を用いることができる。例えば、リバースロールコーティング法、ディップコーティング法、メイヤーバーコーティング法、ナイフコート法、ノズルコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、スクリーン印刷、グラビアコート、などの各種印刷法などが挙げられる。また、これらを組み合わせてもよい。
【0031】
乾燥後の接着層の厚みは、0.01〜2.0g/m2、好ましくは0.1〜1g/m2が好ましい。乾燥後の厚みが0.01g/m2未満であると、基材とバリア層との間で充分な接着強度を示さない。一方、乾燥後の厚みが2.0g/m2を超えると、多くの接着剤を要すためコストが高く、工業的に好ましくない。
乾燥後のガスバリア層厚みは、0.1〜3.0g/m2、好ましくは0.5〜1.5g/m2がよい。乾燥後の厚さが0.1g/m2未満であると、充分なガスバリア性が発現しない。一方、乾燥後のコート層厚さが3.0g/m2を超えると、クラックの発生や不十分な密着強度によって、ガスバリア性が低下するし、コストアップともなるので好ましくない。
【0032】
塗布後、ガスバリア層の乾燥およびエージングを行い、高湿度下においても高いガスバリア性を有するガスバリア層を形成させる。乾燥は、ドライヤー内温度200℃以下、好ましくは100〜150℃で1〜30秒行う。200℃より高い温度で乾燥した場合、急激な溶媒の揮発によりバリア層に微細なボイドが形成され、ガスバリア性が低下する。乾燥時間が30秒より長い場合は、塗膜の体積収縮が著しくなりその結果塗膜にクラックが発生する。
【0033】
乾燥後、エージングは、雰囲気温度20〜80℃で8時間以上実施される。80℃よりも高いとプラスチックフィルムからなる基材の平面性が損なわれ、印刷適性等の加工適性が悪くなるので好ましくない。また20℃より低い場合、十分なエージング効果が得られない。
【0034】
上記の方法により得られたガスバリア性のフィルム積層体は、JIS P 8134で測定した衝撃強度が10.0kgf・cm以上となる。米袋のような重量物や水物袋など特に耐衝撃性を要する包装袋に用いるフィルムでは、その包装袋製造工程、輸送工程での破袋する確率を低減させるために10kgf・cm以上が必要であるとされている。
また、上記の方法により得られたガスバリア性のフィルム積層体は、23℃、90%RHの条件下でJIS K7126(等圧法)に基づき測定した酸素透過度が10cc/m2 ・atm・24h以下である。一般的に酸素バリア性が必要とされている食品包装では酸素透過度20cc/m2・atm・24h以下が必要とされている。
【実施例】
【0035】
実施例および比較例を用いて、本発明の有用性について具体的に説明する。なお、各物性の測定に用いた装置および条件は以下の通りである。
【0036】
<酸素透過度測定>
イリノイ社製酸素透過度測定装置model8000を用いた。測定に際しては、前処理として24時間水中で浸漬処理を行い水滴を拭き取った後、直ちに20℃―90%RHで酸素透過度の測定を行った。
<インキ接着性評価方法>
ザーンカップ#3で17.00〜17.50秒になるようにインキ(東洋インキ製造株式会社製、ファインスターR641AT白)を希釈剤(東洋インキ製造株式会社製、NT602−S02)で希釈し、乾燥後の塗布量がg/m2になるようにコートした。乾燥は乾燥機温度100℃で30秒行った。
乾燥後、75℃の水浴で蒸気にインキ面を30秒曝し、すぐにセロハンテープ(ニチバン株式会社製、15mm幅)を10cm貼り付け、空気が抜けるまで擦った。
その後、勢いよくセロハンテープを剥し、インキの剥離量が30%以上を×、未満を○として評価を行った。
インキの剥離量が30%未満のコートフィルムで印刷を行った場合、フリーロールにインキがとられる等の問題が起きることはない。
【0037】
<調液>
分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の調液は以下のように行った。
・ポリマレイン酸0%中和物
ノンポール(日油株式会社製、PMA−50W濃度50%)10重量部を61.43重量部の純水に溶解し、7重量%のポリマレイン酸0%中和物を得た
・ポリマレイン酸10%中和物
ノンポール(日油株式会社製、PMA−50W濃度50%)10重量部を57.98重量部の純水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10%)3.45重量部を添加して7重量%のポリマレイン酸10%中和物を得た。
・ポリマレイン酸30%中和物
ノンポール(日油株式会社製、PMA−50W濃度50%)10重量部を51.09重量部の純水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10%)10.34重量部を添加して7重量%のポリマレイン酸30%中和物を得た。
・ポリマレイン酸50%中和物
ノンポール(日油株式会社製、PMA−50W濃度50%)10重量部を44.20重量部の純水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10%)17.23重量部を添加して7重量%のポリマレイン酸50%中和物を得た。
・1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸0%中和物
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(和光純薬株式会社製、濃度98%)5重量部を65.0重量部の純水に溶解し、7重量%の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸0%中和物を得た
・1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸10%中和物
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(和光純薬株式会社製、濃度98%)5重量部を61.65重量部の純水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10%)3.35重量部を添加して7重量%の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸10%中和物を得た。
・1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸30%中和物
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(和光純薬株式会社製、濃度98%)5重量部を54.96重量部の純水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10%)10.04重量部を添加して7重量%の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸30%中和物を得た。
・1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸50%中和物
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(和光純薬株式会社製、濃度98%)5重量部を48.26重量部の純水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10%)16.74重量部を添加して7重量%の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸50%中和物を得た。
・メチルビニルエーテル無水マレイン酸10%中和物
GANTREZ AN−119(アイエスピー・ジャパン株式会社製、濃度98%以上)5重量部を61.65重量部の純水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10%)3.35重量部を添加して7重量%のメチルビニルエーテル無水マレイン酸10%中和物を得た。
・ポリアクリル酸0%中和物
AC−10S(日本純薬株式会社製、濃度40.2%)10重量部を47.43重量部の純水に溶解し、7重量%のポリアクリル酸0%中和物を得た。
・ポリアクリル酸10%中和物
AC−10S(日本純薬株式会社製、濃度40.2%)10重量部を45.2重量部の純水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10%)2.23重量部を添加して7重量%のポリアクリル酸10%中和物を得た。
【0038】
<実施例1>
エチルシリケート40(コルコート社製 SiO2 分40%)に対して100重量部の純水および50重量部のイソプロパノールを加え、0.83重量部の6M塩酸を混合した後、撹拌しながら53℃で200分間加水分解を行った。この溶液を冷却後、該加水分解液と同重量の純水を添加し、珪素酸化物が8重量%の透明な溶液を得た。一方、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA−117、ケン化度98−99%、平均重合度1700)14重量部を286重量部の純水に溶解し、7重量%の水溶液を得た。珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分の重量とポリマレイン酸10%中和物の固形分が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液89.67重量部とポリマレイン酸10%中和物1.96重量部と純水4.04重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.9であった。
【0039】
2液型ポリウレタン樹脂接着剤の主剤としてポリエステルポリオール(東洋モートン社製、AD−503)100重量部に対して、硬化剤としてポリイソシアネート(東洋モートン社製、CAT−60)46.7重量部、溶剤として酢酸エチル627重量部、トルエン627重量部を室温で撹拌しながら混合し、均一な溶液として接着剤を得た。この接着剤は、固形分濃度5重量%であった。
【0040】
調製した接着剤を延伸ナイロンフィルム(興人製二軸延伸ポリアミドフィルム「ボニール」、厚み15μm)上にメイヤーバーで塗布し、2秒後に100℃の熱風乾燥機中で15秒乾燥した。このときの接着層の塗布量は約0.2g/m2 であった。
さらにその上から同様の塗布方法で、調製したガスバリアコート剤を塗布し、100℃、15秒乾燥した。このときのガスバリア層の塗布量は約1g/m2 であった。
【0041】
得られたフィルム積層体を一旦室温に戻した後、55℃で96時間エージングし、ガスバリア性フィルムを得た。酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0042】
<実施例2>
ポリマレイン酸10%中和物の添加量を6%に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリマレイン酸10%中和物の固形分比率が55.5:38.5:6.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部とポリマレイン酸10%中和物12.36重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.7であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0043】
<実施例3>
ポリマレイン酸10%中和物をポリマレイン酸30%中和物に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリマレイン酸30%中和物の固形分比率が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液89.67重量部とポリマレイン酸30%中和物1.96重量部と純水4.04重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.9であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0044】
<実施例4>
ポリマレイン酸10%中和物を1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸10%中和物に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸10%中和物の固形分比率が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸10%中和物1.96重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.8であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0045】
<実施例5>
ポリマレイン酸10%中和物を1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸10%中和物に変更し、添加量を6%に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸10%中和物の固形分比率が55.5:38.5:6.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸10%中和物12.36重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.8であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0046】
<実施例6>
ポリマレイン酸10%中和物を1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸30%中和物に変更し、添加量を6%に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸30%中和物の固形分比率が55.5:38.5:6.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸30%中和物12.36重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.9であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0047】
<実施例7>
ポリマレイン酸10%中和物をメチルビニルエーテル無水マレイン酸10%中和物に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とメチルビニルエーテル無水マレイン酸10%中和物の固形分比率が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部とメチルビニルエーテル無水マレイン酸10%中和物1.96重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.7であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0048】
<比較例1>
ポリマレイン酸10%中和物を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分比率が59:41となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.4重量部と純水14.3重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.9であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0049】
<比較例2>
ポリマレイン酸10%中和物をポリマレイン酸0%中和物に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリマレイン酸0%中和物の固形分比率が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液89.67重量部とポリマレイン酸0%中和物1.96重量部と純水4.04重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.9であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0050】
<比較例3>
ポリマレイン酸10%中和物の添加量を7%に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリマレイン酸10%中和物の固形分比率が54.9:38.1:7.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部とポリマレイン酸10%中和物14.58重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.9であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0051】
<比較例4>
ポリマレイン酸10%中和物をポリマレイン酸50%中和物に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリマレイン酸50%中和物の固形分比率が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液89.67重量部とポリマレイン酸50%中和物1.96重量部と純水4.04重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.7であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0052】
<比較例5>
ポリマレイン酸10%中和物を1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸0%中和物に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸0%中和物の固形分比率が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸0%中和物1.96重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.8であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0053】
<比較例6>
ポリマレイン酸10%中和物を1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸50%中和物に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸50%中和物の固形分比率が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部と1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸50%中和物1.96重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.8であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0054】
<比較例7>
ポリマレイン酸10%中和物をポリアクリル酸0%中和物に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリアクリル酸0%中和物の固形分比率が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部とポリアクリル酸0%中和物1.96重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.9であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0055】
<比較例8>
ポリマレイン酸10%中和物をポリアクリル酸0%中和物に変更し、添加量を6%に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリアクリル酸0%中和物の固形分比率が55.5:38.5:6.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部とポリアクリル酸0%中和物12.36重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.8であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0056】
<比較例9>
ポリマレイン酸10%中和物をポリアクリル酸10%中和物に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリアクリル酸10%中和物の固形分比率が58.4:40.6:1.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部とポリアクリル酸10%中和物1.96重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.8であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0057】
<比較例10>
ポリマレイン酸10%中和物をポリアクリル酸10%中和物に変更し、添加量を6%に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリアクリル酸10%中和物の固形分比率が55.5:38.5:6.0となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部とポリアクリル酸10%中和物12.36重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.9であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0058】
<比較例11>
ポリマレイン酸10%中和物をポリアクリル酸10%中和物に変更し、添加量を7.4%に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリアコート剤を得た。得られたガスバリアコート剤の珪素酸化物の固形分と、ポリビニルアルコールの固形分とポリアクリル酸10%中和物の固形分比率が55.8:36.8:7.4となるように、加水分解液100重量部に対して、ポリビニルアルコール水溶液79.42重量部とポリアクリル酸10%中和物12.36重量部と純水14.29重量部を室温で撹拌しながら混合して均一な溶液とし、固形分濃度7重量%のガスバリアコート剤を得た。このときのコート剤pHは約2.9であった。得られたガスバリアコート剤を使用し実施例1同様にガスバリア性フィルムを作製し酸素透過度、インキ接着性の評価を行った結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は以上の様に構成されており、ガスバリア性、特に酸素遮断性に優れ、かつ可撓性、透明性、耐湿性、耐薬品性、インキ接着性等に優れたガスバリア層を有する包装用材料を提供することができた。本発明の包装用材料は、あらゆる分野の包装用材料として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面に接着層を設け、該接着層の上に下記ガスバリアコート剤を塗布することによってガスバリア層を形成するガスバリアフィルムであって、
前記ガスバリアコート剤が、アルコキシシラン及び/又はアルコキシシラン重縮合物の加水分解物(A)と、ポリビニルアルコール(アルコキシシラン及び/又はアルコキシシランの重縮合物の加水分解物から生成する珪素酸化物と、ポリビニルアルコールの重量比が50/50〜80/20)と下記一般式(1)を満たす、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている中和度10〜30%の中和物からなる、インキ接着性の良好なガスバリア性フィルム。
【化1】

(化1中のR1、R2、R3、R4はOH、COOH、CHCOOHのいずれかを示し、αは1以上の整数を示す。)
【請求項2】
前記ガスバリアフィルムの酸素透過度が10cc/m ・atm・24h以下である請求項1記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
ガスバリア層に存在する固形分100重量部に対して、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物の部分中和物のカルボニル基が1.2〜11.5mol/100重量部の割合でガスバリア層に存在する請求項1記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
該分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物が、ポリマレイン酸、メチルビニルエーテル無水マレイン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸である請求項1記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
プラスチックフィルムが、延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムあるいは延伸ポリエステルフィルムである、請求項1、2、3記載のガスバリア性フィルム。

【公開番号】特開2012−210785(P2012−210785A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78506(P2011−78506)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】