説明

ガスバリア性フィルム及びその製造方法

【課題】本発明は、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性が向上されており、ガスバリア性及び可撓性に優れるガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】R−Si−(NH23[式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を表す。]で示されるシラン化合物によって表面処理されてなる合成樹脂フィルムの上記表面処理が行われた面に、金属酸化物、金属窒化物及び金属酸化窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種の無機化合物を含んでいるガスバリア層が積層一体化されてなることを特徴とするガスバリア性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性及び可撓性に優れるガスバリア性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリアフィルムは、内容物の品質を変化させる原因となる酸素や水蒸気などの影響を防止するために、食品や医薬品の包装袋に用いられている。また、ガスバリアフィルムは、太陽電池モジュール、液晶表示パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルなどに使用される素子が、酸素や水蒸気に触れて性能劣化するのを防止するために、製品構成体の一部として或いはそれら素子のパッケージ材料としても用いられている。
【0003】
このようなガスバリアフィルムとしては、ポリビニルアルコールフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムなどの合成樹脂フィルムが用いられているが、これらは水蒸気バリア性が不充分であり、高湿度条件下においては酸素バリア性が低下するといった問題点を有している。
【0004】
そこで、上記問題を解決するために、合成樹脂フィルム上に金属酸化物からなるガスバリア層を形成してなるガスバリア性フィルムが知られている。例えば、特許文献1には、耐加水分解性樹脂フィルムと、金属酸化物被着樹脂フィルムと、白色樹脂フィルムとの3層積層体からなるガスバリア性フィルムが提案されている。この金属酸化物被着樹脂フィルムでは、合成樹脂フィルムの一面に酸化アルミニウムなどの金属酸化物からなるガスバリア層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−100788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のガスバリア性フィルムでは、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性が低く、依然として酸素や水蒸気などに対するガスバリア性が不充分であるといった問題点を有している。
【0007】
特に、近年、太陽電池モジュール、液晶表示パネル、及び有機EL表示パネルには可撓性を有していることが望まれており、したがってガスバリア性フィルムにも可撓性を有していることが望まれている。しかしながら、従来のガスバリア性フィルムでは、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性が低いことから、ガスバリア性フィルムを曲げると合成樹脂フィルムとガスバリア層との間で剥離が発生してガスバリア性の低下を招く問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性が向上されており、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性及び可撓性に優れるガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガスバリア性フィルムは、下記一般式(1)で示されるシラン化合物によって表面処理されてなる合成樹脂フィルムの上記表面処理が行われた面に、金属酸化物、金属窒化物及び金属酸化窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種の無機化合物を含んでいるガスバリア層が積層一体化されてなることを特徴とする。
R−Si−(NH23 (1)
(式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を表す。)
【0010】
さらに、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、合成樹脂フィルムの少なくとも一面を下記一般式(1)で示されるシラン化合物によって表面処理した後、上記合成樹脂フィルムの上記表面処理が行われた面に金属酸化物、金属窒化物及び金属酸化窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種の無機化合物を含むガスバリア層を積層一体化することを特徴とする。
R−Si−(NH23 (1)
(式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明のガスバリア性フィルムでは、上記シラン化合物によって合成樹脂フィルムが表面処理されていることによって、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性が向上されている。したがって、本発明のガスバリア性フィルムでは、合成樹脂フィルムとガスバリア層との剥離が高く低減されており、優れたガスバリア性を長期間に亘って維持することができる。また、ガスバリア性フィルムを曲げたりしても、合成樹脂フィルムとガスバリア層とが剥離することなく、優れたガスバリア性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のガスバリア性フィルムは、少なくとも一面がシラン化合物によって表面処理されてなる合成樹脂フィルムと、この合成樹脂フィルムの上記表面処理が行われた面に積層一体化されてなるガスバリア層とを有している。
【0013】
(合成樹脂フィルム)
本発明のガスバリア性フィルムに用いられる合成樹脂フィルムを構成する樹脂としては、透明な合成樹脂が好ましく用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物などのビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンなどのポリエーテル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリエーテルスルフォン;ポリスルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトンケトンなどが挙げられる。また、これらの合成樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上を併用することもできる。なかでも、優れたガスバリア性を有していることから、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンナフタレートがより好ましい。
【0014】
合成樹脂フィルムは、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの公知の添加剤を含んでいてもよい。合成樹脂フィルムの厚みは、3〜300μmが好ましく、12〜300μmがより好ましく、50〜200μmが特に好ましい。
【0015】
合成樹脂フィルムの全光線透過率は、80%以上が好ましく、85〜100%がより好ましい。80%以上の全光線透過率を有する合成樹脂フィルムは透明性に優れており、このような合成樹脂フィルムを有しているガスバリア性フィルムによれば、画像の視認性に優れる液晶表示パネル及び有機EL表示パネル、並びに発電効率が高い太陽電池モジュールを提供することができる。
【0016】
なお、合成樹脂フィルムの全光線透過率は、例えば、JIS K7105に準拠した方法により、例えば、ヘーズメータ(日本電色工業株式会社製 製品名NDH2000)を用いて測定することができる。
【0017】
本発明のガスバリア性フィルムでは、合成樹脂フィルムの少なくとも一面に、下記一般式(1)で示されるシラン化合物によって表面処理が施されている。
R−Si−(NH23 (1)
[式中、Rは、メチル基(CH3−)、エチル基(CH3CH2−)、プロピル基(CH3CH2CH2−)、ビニル基(CH2=CH−)、3−アクリロキシプロピル基(CH2=CHCOOCH2CH2CH2−)、3−メタクリロキシプロピル基(CH2=C(CH3)COOCH2CH2CH2−)、3−アミノプロピル基(NH2CH2CH2CH2−)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基(NH2CH2CH2NHCH2CH2CH2−)、3−メルカプトプロピル基(SHCH2CH2CH2−)、3−イソシアネートプロピル基(OCNCH2CH2CH2−)、3−グリシドキシプロピル基(下記式(2)で示される基)、又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基(下記式(3)で示される基)を表す。]
【0018】
【化1】

【0019】
シラン化合物として、具体的には、
CH3Si(NH23
CH3CH2Si(NH23
CH3CH2CH2Si(NH23
CH2=CHSi(NH23
CH2=CHCOOCH2CH2CH2Si(NH23
CH2=C(CH3)COOCH2CH2CH2Si(NH23
NH2CH2CH2CH2Si(NH23
NH2CH2CH2NHCH2CH2CH2Si(NH23
SHCH2CH2CH2Si(NH23
OCNH2CH2CH2Si(NH23
下記式(4)及び(5)で示される化合物、
などを挙げることができる。これらは一種のみが用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
【化2】

【0021】
なかでも、上記式(1)におけるRが、3−グリシドキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基であるシラン化合物が好ましい。このようなシラン化合物は、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性をより向上させてガスバリア性フィルムに優れたガスバリア性を付与できる。
【0022】
シラン化合物による表面処理は、合成樹脂フィルムのガスバリア層が成形される面に行われればよい。したがって、シラン化合物による表面処理は、合成樹脂フィルムの少なくとも一面に行われればよい。
【0023】
合成樹脂フィルムをシラン化合物によって表面処理する方法としては、シラン化合物を含む溶液を合成樹脂フィルムの少なくとも一面に塗布する方法が好ましく挙げられる。
【0024】
シラン化合物を含む溶液は、シラン化合物を溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。
【0025】
シラン化合物を含む溶液に用いられる溶剤としては、シラン化合物を溶剤に溶解又は分散させることができるものであればよい。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、及びプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤;並びにトルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、及びシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらは一種のみが用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、アルコール系溶剤が好ましく、メチルアルコールがより好ましい。
【0026】
シラン化合物を含む溶液中におけるシラン化合物の含有量は、溶剤100重量部に対して、0.001〜2重量部が好ましく、0.003〜1重量部がより好ましく、0.1〜1重量部が特に好ましい。シラン化合物を含む溶液中におけるシラン化合物の含有量が低過ぎると、合成樹脂フィルムをシラン化合物によって充分に表面処理することができない虞れがある。また、シラン化合物を含む溶液中におけるシラン化合物の含有量が高過ぎると、シラン化合物を含む溶液を塗布することによって合成樹脂フィルムの表面に厚みが不均一な皮膜が形成され、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性を充分に向上できない虞れがある。
【0027】
合成樹脂フィルムの少なくとも一面にシラン化合物を含む溶液を塗布する方法としては、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、及びグラビアオフセット法などの塗布方法や、スプレーコーティングなどの噴霧方法が挙げられる。
【0028】
シラン化合物を含む溶液の塗布量は、上記溶液の乾燥後の重量として、0.05〜0.6mg/m2が好ましく、0.1〜0.5mg/m2がより好ましい。シラン化合物を含む溶液の塗布量が少な過ぎると、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性を充分に向上できない虞れがある。また、シラン化合物を含む溶液の塗布量が多過ぎると、シラン化合物を含む溶液を塗布することによって合成樹脂フィルムの表面に厚みが不均一な皮膜が形成され、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性を充分に向上できない虞れがある。
【0029】
合成樹脂フィルムの少なくとも一面にシラン化合物を含む溶液を塗布した後、塗布した溶液に含まれている溶剤を除去することにより上記溶液を乾燥させる。塗布した溶液の乾燥は、シラン化合物を含む溶液が塗布された合成樹脂フィルムを加熱することにより行うことが好ましい。加熱温度は、60〜150℃が好ましいが、100〜145℃がより好ましい。
【0030】
合成樹脂フィルムを上述したシラン化合物によって表面処理する方法としては、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を用いることもできる。CVD法としては、プラズマCVD法が好ましく挙げられる。
【0031】
プラズマCVD法を用いてシラン化合物によって合成樹脂フィルムを表面処理する方法としては、先ず、プラズマCVD装置の真空チャンバー内に合成樹脂フィルムを設置する。次に、真空チャンバー内に用意された二対の電極の一方に高周波(RF)電源などのプラズマ発生用電源を接続し、他方はアースとする。その後、真空チャンバー内を真空ポンプを用いて減圧し、プラズマCVD装置のガス導入口からシラン化合物及び酸素原子含有ガスを含む原料ガスを真空チャンバー内に導入する。そして、電源により電極に電力を印加することにより合成樹脂フィルム表面にプラズマを発生させることによって、合成樹脂フィルムの少なくとも一面をシラン化合物によって表面処理することができる。
【0032】
酸素原子含有ガスとしては、酸素ガス、一酸化炭素ガス、及び二酸化炭素ガスなどを用いることができる。なかでも、酸素ガスが好ましい。また、真空ポンプにより真空チャンバー内を減圧する際、真空チャンバー内を10-4〜10Paまで減圧することが好ましい。
【0033】
プラズマを発生させるための方法としては、特に限定されず市販のプラズマ発生用電源が用いられる。具体的には、400KHz〜100MHzの高周波電源、915MHz〜2.45GHzのマイクロ波電源、パルス幅変調型の高周波・マイクロ波電源等が挙げられる。これらのうちで、プラズマの制御が容易であり、低温にてプラズマを発生できるため、パルス幅変調電源がより好ましい。
【0034】
合成樹脂フィルムの表面には、通常、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)などの極性官能基を有している。このような合成樹脂フィルムの一面を上述した通りにしてシラン化合物によって表面処理すると、合成樹脂フィルムが有している極性官能基とシラン化合物が有しているアミノ基(−NH3)とが反応して化学結合を形成し、合成樹脂フィルムの一面にはシラン化合物に由来するR基が導入される。
【0035】
また、合成樹脂フィルムの一面には、シラン化合物による表面処理を施す前に、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、及び火炎処理などの表面酸化処理が行われているのが好ましい。これらの表面酸化処理によって、合成樹脂フィルムの表面にカルボキシル基やヒドロキシル基などの極性官能基を導入することができる。したがって、このような表面酸化処理が行われた合成樹脂フィルムにシラン化合物による表面処理を施すことによって、合成樹脂フィルムが有している極性官能基とシラン化合物が有しているアミノ基との化学結合がより多く形成され、合成樹脂フィルムの一面にはシラン化合物に由来するR基がより多く導入されることによって、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性をさらに向上させることができる。
【0036】
表面酸化処理が行われた合成樹脂フィルムの一面の表面張力は、36〜50mN/mが好ましく、38〜45mN/mがより好ましい。このような表面張力を有する合成樹脂フィルムは、ガスバリア層に対して優れた密着性を有している。なお、合成樹脂フィルムの表面張力の測定は、23℃の温度環境下で、JIS K6768する方法により行うことができる。
【0037】
(ガスバリア層)
本発明のガスバリア性フィルムでは、合成樹脂フィルムの上述したシラン化合物による表面処理が行われた面にガスバリア層が形成されている。ガスバリア層は、金属酸化物、金属窒化物及び金属酸化窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種の無機化合物を含んでいる。
【0038】
無機化合物として、具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンなどの金属酸化物;窒化ケイ素、及び窒化チタンなどの金属窒化物;並びに、亜鉛及び錫の酸化窒化物などの金属酸化窒化物が挙がられる。
【0039】
なかでも、無機化合物としては、亜鉛及び錫の酸化窒化物が好ましく挙げられる。亜鉛及び錫の酸化窒化物を含むガスバリア層は、上述したシラン化合物を用いた表面処理が施された合成樹脂フィルムに対して優れた密着性を発揮し、ガスバリア性フィルムに優れたガスバリア性を付与することができる。さらに、亜鉛及び錫の酸化窒化物は適度な可撓性を有しており、このような亜鉛及び錫の酸化窒化物を含むガスバリア層を用いてなるガスバリア性フィルムを撓ませたり丸めたりしたとしても、ガスバリア層にひび割れが発生することが高く低減されており優れたガスバリア性を維持することができる。
【0040】
亜鉛及び錫の酸化窒化物は、好ましくは、一般式(I):ZnSnabc(式中、aは0.1〜2であり、bは0.3〜4であり、cは0.1〜1.6である)で示される。一般式(I)で示される亜鉛及び錫の酸化窒化物によれば、ガスバリア性及び可撓性により優れたガスバリア層を提供することができる。
【0041】
上記一般式(I)におけるaは、亜鉛原子数に対する錫原子数の比(原子比)を示し、0.1〜2が好ましく、0.2〜1.5がより好ましく、0.2〜1がさらに好ましい。上記一般式(I)において錫原子の原子比aが多過ぎるとガスバリア層の可撓性が低下する虞れがある。また、上記一般式(I)において錫原子の原子比aが少な過ぎるとガスバリア層のガスバリア性が低下する虞れがある。
【0042】
上記一般式(I)におけるbは、亜鉛原子数に対する酸素原子数の比(原子比)を示し、0.3〜4が好ましく、0.4〜3がより好ましい。上記一般式(I)において酸素原子の原子比bが多過ぎるとガスバリア層のガスバリア性が低下する虞れがある。また、上記一般式(I)において酸素原子の原子比bが少な過ぎるとガスバリア層の透明性が低下する虞れがある。
【0043】
上記一般式(I)におけるcは、亜鉛原子数に対する窒素原子数の比(原子比)を示し、0.1〜1.6が好ましく、0.4〜1がより好ましい。上記一般式(I)において窒素原子の原子比cが多過ぎるとガスバリア層の透明性が低下する虞れがある。また、上記一般式(I)において窒素原子の原子比cが少な過ぎるとガスバリア層のガスバリア性が低下する虞れがある。
【0044】
ガスバリア層は、亜鉛及び錫の酸化窒化物の他に、例えば、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、チタン、ジルコニウム、イットリウムなどの他の金属原子や、炭素、ホウ素、窒素、フッ素などの非金属原子を含んでいてもよいが、亜鉛及び錫の酸化窒化物のみからなるのが好ましい。
【0045】
ガスバリア層に含まれている亜鉛及び錫の酸化窒化物における亜鉛原子、錫原子、酸素原子及び窒素原子の比は、例えば、VGサイエンティフィックス社製 製品名ESCALAB−200RなどのXPS(X線光電子分光)表面分析装置を用いて測定することができる。
【0046】
具体的には、XPS表面分析装置のX線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。エネルギー分解能は、清浄なAg35/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5eV〜1.7eVとなるように設定する。
【0047】
XPS表面分析装置による測定としては、先ず、結合エネルギー0eV〜1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求る。次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定する。得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピュータの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理を行い、各分析ターゲットの元素(窒素、酸素、亜鉛、錫等)の含有率の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求める。
【0048】
定量処理をおこなう前に、各元素についてCoun Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行う。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。また、Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
【0049】
ガスバリア層の厚みは、20〜600nmが好ましく、150〜400nmがより好ましい。ガスバリア層の厚みが薄過ぎると十分なガスバリア性をガスバリア性フィルムに付与できない虞れがある。また、ガスバリア層の厚みが厚過ぎると、ガスバリア層の可撓性が低下して、ガスバリア性フィルムを撓ませたり丸めたりしたりするとガスバリア層にひび割れが発生してガスバリア性フィルムのガスバリア性を低下させる虞れがある。
【0050】
なお、本発明において、ガスバリア層の厚みは、ガスバリア層の断面を走査電子顕微鏡を用いて10,000倍以上の倍率で撮影し、得られた撮影像からガスバリア層においてそれぞれ任意の5箇所以上の厚みを測定し、その相加平均値として求めることができる。
【0051】
シラン化合物によって表面処理されてなる合成樹脂フィルムの一面にガスバリア層を作製するには、物理気相成長法を用いて行うのが好ましい。物理気相成長法によれば、得られるガスバリア層に含まれる金属原子、酸素原子及び窒素原子の原子比を容易に調整することができる。このような物理気相成長法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、及びスパッタリング法が挙げられ、なかでもスパッタリング法が好ましく挙げられ、DCマグネトロンスパッタリング法がより好ましく挙げられる。
【0052】
DCマグネトロンスパッタリング法により亜鉛及び錫の酸化窒化物を含むガスバリア層を作製するには、例えば、ターゲットとして亜鉛及び錫の合金を用い、分解ガスとして酸素ガス及び窒素ガスを用い、DCマグネトロンスパッタリング法により、合成樹脂フィルムの一面に亜鉛及び錫の酸化窒化物を堆積して成膜することによりガスバリア層を形成することができる。
【0053】
亜鉛及び錫の合金における亜鉛原子及び錫原子の原子比や、酸素ガス及び窒素ガスの導入量を調整することにより、得られる酸化窒化物の亜鉛原子、錫原子、酸素ガス及び窒素ガスの原子比を所望の範囲に調整することができる。
【0054】
DCマグネトロンスパッタリング法によって亜鉛及び錫の酸化窒化物を成膜する際に、DCマグネトロンスパッタリング装置の成膜室内を1.33×10-2Pa(1.0×10-4Torr)以下、特に0.27×10-4Pa(2.0×10-5Torr)以下に減圧した後に、上記成膜室内の圧力が6.67×10-2Pa(5.0×10-4Torr)〜1.33Pa(1.0×10-2Torr)となるまで、アルゴンガスなどの不活性ガス、並びに酸素ガス及び窒素ガスを含む分解ガスを導入し、DCマグネトロンスパッタリング法によって亜鉛及び錫の酸化窒化物の成膜を開始するのが好ましい。
【0055】
ガスバリア層は、単一層であっても、ガスバリア性を向上させるために複数層を積層一体化させたものであってもよい。ガスバリア層が複数層を積層一体化させてなるものである場合、各層を構成している材料は、同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
本発明のガスバリア性フィルムが用いられる用途としては、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装などの用途が挙げられる。また、このような包装用用途の他にも、本発明のガスバリア性フィルムは、太陽電池モジュール、液晶表示パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルなどに使用される素子が、酸素や水蒸気に触れて性能劣化するのを防止するために、製品構成体の一部として或いはそれら素子のパッケージ材料として用いることができる。
【0057】
本発明のガスバリア性フィルムは、上述した通り、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性が向上されており、優れたガスバリア性及び可撓性を有していると共に、合成樹脂フィルムとガスバリア層との剥離によるガスバリア性フィルムの外観特性の低下も高く低減されている。したがって、本発明のガスバリア性フィルムは、太陽電池モジュール、液晶表示パネル、及び有機EL表示パネルに特に好適に用いられる。
【0058】
例えば、太陽電池モジュールにおいて、裏面側保護シート及び受光面側保護シートが、発電素子とエチレン−酢酸ビニル共重合体などの封止樹脂とを保護するために用いられる。このような裏面側保護シート及び受光面側保護シートとして、本発明のガスバリア性フィルムを用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0060】
(実施例1)
1.表面処理
ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム:厚さ75μm、全光線透過率88%)の一面に、コロナ放電処理装置(春日電機社製 装置名「AGI−023」)を用いてコロナ放電処理を行った。PENフィルムのコロナ放電処理を行った面の表面張力は40mN/mであった。
【0061】
次に、PENフィルムのコロナ放電処理を行った面に、CH3Si(NH23からなるシラン化合物1重量部と、エチルアルコール200重量部とを含む溶液を、グラビアコート法により、上記溶液の乾燥後の重量が0.3mg/m2となるようにして塗布した後、上記溶液が塗布されたPENフィルムを125℃の雰囲気中で5分間加熱することによって、PENフィルムの一面をシラン化合物によって表面処理した。
【0062】
2.ガスバリア層の作製
DCマグネトロンスパッタリング装置(積水化学社製 製品名MPC−1)の成膜室内に設置されているカソードに、54重量%の亜鉛と46重量%の錫との合金(亜鉛原子:錫原子(原子比)=2:1)からなるターゲットを装着し、成膜室内を3×10-4Torr以下にまで減圧し、アルゴンガス、酸素ガス、及び窒素ガスの混合ガス(アルゴンガス:酸素ガス:窒素ガス(分子比)=50:45:5)を成膜室内の圧力が4.67×10-1Pa(3.5×10-3Torr)となるまで導入した後、1.9kWの電力をカソードに印加し、上述した表面処理が行われたPENフィルムを表面処理された面がスパッタリング面となるようにして0.5m/分の速度で搬送させ、PENフィルムを成膜室内に4回通過させることにより、PENフィルムの表面処理された面にZnSn0.531からなるガスバリア層(厚み350nm)を作製した。これにより、PENフィルムのシラン化合物により表面処理が行われた面にガスバリア層が積層一体化されてなるガスバリア性フィルムを得た。
【0063】
(実施例2〜14)
PENフィルムの表面処理に用いたシラン化合物、及びガスバリア層を構成している亜鉛及び錫の酸化窒化物における各原子比を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。なお、実施例6では下記式(4)で示されるシラン化合物を使用し、実施例7では下記式(5)で示されるシラン化合物を使用した。
【0064】
【化3】

【0065】
(実施例15)
1.表面処理
実施例1と同様にして、PENフィルムの一面にシラン化合物による表面処理を行った。
2.ガスバリア層の作製
DCマグネトロンスパッタリング装置(積水化学社製 製品名MPC−1)の成膜室内に設置されているカソードに、50重量%の亜鉛と50重量%の錫との合金(亜鉛原子:錫原子(原子比)=1:0.55)からなるターゲットを装着し、成膜室内を4×10-4Torr)以下にまで減圧し、アルゴンガス、及び酸素ガスの混合ガス(アルゴンガス:酸素ガス(分子比)=50:50)を成膜室内の圧力が5.33×10-1Pa(4.0×10-3Torr)となるまで導入した後、1.9kWの電力をカソードに印加し、上述した表面処理が行われたPENフィルムを表面処理された面がスパッタリング面となるようにして0.5m/分の速度で搬送させ、PENフィルムを成膜室内に4回通過させることにより、PENフィルムの表面処理された面にZnSn0.53からなるガスバリア層(厚み350nm)を作製した。これにより、PENフィルムのシラン化合物により表面処理が行われた面にガスバリア層が積層一体化されてなるガスバリア性フィルムを得た。
【0066】
(実施例16)
1.表面処理
ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム:厚さ75μm、全光線透過率88%)を用意し、このPENフィルムを平行平板型のパルスプラズマCVD装置の真空チャンバー内に設置した。次に、真空チャンバー内に用意された二対の電極の一方に直流単パルス電源を接続し、他方はアースとした。その後、真空チャンバー内を真空ポンプにより0.01Paまで減圧した後、パルスプラズマCVD装置のガス導入口から上記式(5)で示されるシラン化合物と酸素ガスとを1:0.3の分子比で含む原料ガスを真空チャンバー内に導入して、真空チャンバー内の圧力を5Paとした。そして、パルス幅が4μsecに設定された直流単パルス電源により電極に電力を印加してプラズマを発生させることにより、PENフィルムの一面をプラズマCVD法を用いてシラン化合物によって表面処理した。
【0067】
2.ガスバリア層の作製
PENフィルムのシラン化合物により表面処理が行われた面に、実施例1と同様にして、ZnSn0.531からなるガスバリア層(厚み350nm)が積層一体化されてなるガスバリア性フィルムを得た。
【0068】
(実施例17)
1.表面処理
ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム:厚さ75μm、全光線透過率88%)を用意し、このPENフィルムを平行平板型のパルスプラズマCVD装置の真空チャンバー内に設置した。次に、真空チャンバー内に用意された二対の電極の一方に直流単パルス電源を接続し、他方はアースとした。その後、真空チャンバー内を真空ポンプにより0.01Paまで減圧した後、パルスプラズマCVD装置のガス導入口から上記式(4)で示されるシラン化合物と酸素ガスとを1:0.25の分子比で含む原料ガスを真空チャンバー内に導入して、真空チャンバー内の圧力を5Paとした。そして、パルス幅が4μsecに設定された直流単パルス電源により電極に電力を印加してプラズマを発生させることにより、PENフィルムの一面をプラズマCVD法を用いてシラン化合物によって表面処理した。
【0069】
2.ガスバリア層の作製
PENフィルムのシラン化合物により表面処理が行われた面に、実施例1と同様にして、ZnSn0.531からなるガスバリア層(厚み350nm)が積層一体化されてなるガスバリア性フィルムを得た。
【0070】
(実施例18)
1.表面処理
ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム:厚さ75μm、全光線透過率88%)を用意し、このPENフィルムを平行平板型のパルスプラズマCVD装置の真空チャンバー内に設置した。次に、真空チャンバー内に用意された二対の電極の一方に直流単パルス電源を接続し、他方はアースとした。その後、真空チャンバー内を真空ポンプにより0.01Paまで減圧した後、パルスプラズマCVD装置のガス導入口からCH3Si(NH23からなるシラン化合物と酸素ガスとを1:0.25の分子比で含む原料ガスを真空チャンバー内に導入して、真空チャンバー内の圧力を5Paとした。そして、パルス幅が4μsecに設定された直流単パルス電源により電極に電力を印加してプラズマを発生させることにより、PENフィルムの一面をプラズマCVD法を用いてシラン化合物によって表面処理した。
【0071】
2.ガスバリア層の作製
PENフィルムのシラン化合物により表面処理が行われた面に、実施例1と同様にして、ZnSn0.531からなるガスバリア層(厚み350nm)が積層一体化されてなるガスバリア性フィルムを得た。
【0072】
(比較例1)
1.ガスバリア層の作製
DCマグネトロンスパッタリング装置(積水化学社製 製品名MPC−1)の成膜室内に設置されているカソードに、錫のみからなるターゲットを装着し、成膜室内を7×10-4Torr以下にまで減圧し、アルゴンガス、酸素ガス、及び窒素ガスの混合ガス(アルゴンガス:酸素ガス:窒素ガス(分子比)=50:45:5)を成膜室内の圧力が4.67×10-1Pa(3.5×10-3Torr)となるまで導入した後、1.9kWの電力をカソードに印加し、ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム:厚さ75μm、全光線透過率88%)を0.5m/分の速度で搬送させ、PENフィルムを成膜室内に4回通過させることにより、PENフィルムの一面にSnO1.80.5からなるガスバリア層(厚み350nm)を作製した。これにより、PENフィルムの一面にガスバリア層が積層一体化されてなるガスバリア性フィルムを得た。
【0073】
(比較例2)
ポリエチレンナフタレートフィルムにコロナ放電処理及びシラン化合物による表面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。
【0074】
(比較例3)
ポリエチレンナフタレートフィルムにコロナ放電処理及びシラン化合物による表面処理を行わなかった以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。
【0075】
(比較例4)
ポリエチレンナフタレートフィルムにコロナ放電処理及びシラン化合物による表面処理を行わなかった以外は、実施例3と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。
【0076】
(評価)
ガスバリア性フィルムにおけるPENフィルムとガスバリア層との密着性、ガスバリア性フィルムの可撓性及び水蒸気透過率を下記手順に従って評価した。結果を表1に示す。
【0077】
(密着性)
ガスバリア性フィルムを切断することにより平面長方形状(縦50mm×横100mm)の試験片を用意した。この試験片の長さが103%(103mm)となるまで試験片の長手方向に10mm/分の速度にて一定の引っ張り応力を加えた。その後、JIS K5400に準拠して碁盤目試験を行った。この碁盤目試験では、ガスバリア層表面に、片刃のカミソリを用いて、ガスバリア層表面に対して90度で1mm間隔で縦横に11本ずつの切り込みを入れ、1mm角の碁盤目を100個作成した。この上に市販のセロファンテープを貼り付け、その一端を手でもって垂直にはがし、切り込み線からの貼られたテープ面積[A(mm2)]及びガスバリア層の剥がされた面積[B(mm2)]を測定し、切り込み線からの貼られたテープ面積に対するガスバリア層の剥がされた面積の割合[(%)=(100×B)/A]を測定し、下記の基準に従って密着性の評価を行った。
A:全く剥離が認められない。
B:剥離された面積割合が0.01%以上、0.5%未満であった。
C:剥離された面積割合が0.5%以上、10%未満であった。
D:剥離された面積割合が10%以上であった。
【0078】
(可撓性)
150mmφのABSロッドに、ガスバリア性フィルムをガスバリア層形成面が外側になるように巻き付け、15分後、展開することによりガスバリア性フィルムを開放し、この巻き付けと開放とを50回繰り返した。その後、JIS K5400に準拠して碁盤目試験を行った。この碁盤目試験では、ガスバリア層表面に、片刃のカミソリを用いて、ガスバリア層表面に対して90度で1mm間隔で縦横に11本ずつの切り込みを入れ、1mm角の碁盤目を100個作成した。この上に市販のセロファンテープを貼り付け、その一端を手でもって垂直にはがし、切り込み線からの貼られたテープ面積[A(mm2)]及びガスバリア層の剥がされた面積[B(mm2)]を測定し、切り込み線からの貼られたテープ面積に対するガスバリア層の剥がされた面積の割合[(%)=(100×B)/A]を測定し、下記の基準に従って可撓性の評価を行った。
A:全く剥離が認められない。
B:剥離された面積割合が0.01%以上、0.5%未満であった。
C:剥離された面積割合が0.5%以上、10%未満であった。
D:剥離された面積割合が10%以上であった。
【0079】
(水蒸気透過率)
ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率(%)を、JIS K7129Bに準拠した方法によって、ガス・蒸気透過率測定装置(GTRテック社製 装置名GTR−2100)を用いて、温度40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。
【0080】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のガスバリア性フィルムは、シラン化合物によって合成樹脂フィルムが表面処理されていることによって、合成樹脂フィルムとガスバリア層との密着性が向上されており、酸素や水蒸気に対するガスバリア性及び可撓性に優れる。したがって、このようなガスバリア性フィルムによれば、撓ませたり丸めたりすることが可能であり、曲面に沿った状態に設置することが可能な太陽電池モジュール、液晶表示パネル、有機EL表示パネルなどを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるシラン化合物によって表面処理されてなる合成樹脂フィルムの上記表面処理が行われた面に、金属酸化物、金属窒化物及び金属酸化窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種の無機化合物を含んでいるガスバリア層が積層一体化されてなることを特徴とするガスバリア性フィルム。
R−Si−(NH23 (1)
(式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を表す。)
【請求項2】
表面処理が、合成樹脂フィルムの少なくとも一面にシラン化合物を含む溶液を塗布することによって行われていることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
ガスバリア層が、ZnSnabc(式中、aは0.1〜2であり、bは0.3〜4であり、cは0.1〜1.6である)で示される亜鉛及び錫の酸化窒化物を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
合成樹脂フィルムの少なくとも一面を下記一般式(1)で示されるシラン化合物によって表面処理した後、上記合成樹脂フィルムの上記表面処理が行われた面に金属酸化物、金属窒化物及び金属酸化窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種の無機化合物を含むガスバリア層を積層一体化することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
R−Si−(NH23 (1)
(式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を表す。)
【請求項5】
表面処理を、合成樹脂フィルムの少なくとも一面にシラン化合物を含む溶液を塗布することによって行うことを特徴とする請求項4に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2013−67015(P2013−67015A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205083(P2011−205083)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】