説明

ガスバリア性フイルムおよびその製造方法

【課題】高湿度下では吸湿により、酸素バリア性が極端に低下するというポリビニルアルコール系樹脂の特性を改良し、高湿度化でも優れたガスバリア性を有し、かつ透明性に優れたガスバリア性フイルムを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂フイルムと、下記(1)〜(3)のいずれか1種からなる高分子ガスバリア層との積層フイルムにおいて、該高分子ガスバリア層の温度23℃、湿度90%RH下で測定した酸素透過係数(μmml/m2dayatm)が200以下であるフイルム。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドの部分加水分解重縮合物との混合物(2)ポリビニルアルコール系樹脂と該部分加水分解重縮合物との反応生成物(3)ポリビニルアルコール系樹脂、該部分加水分解重縮合物および該反応生成物との混合物

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガスバリア性に優れた包装用フイルムで、特に高湿度下でも高いガスバリア性を保持することができ、透明性に優れたガスバリア性フイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、良好な加工適性、優れた機械強度、透明性、製袋性等の二次加工性等により、包装用フィルムとして汎用されている。
【0003】さらに、ガスバリア性(特に酸素バリア性)等の機能を付与させる目的で、上記した熱可塑性樹脂フィルムのフイルム表面に塩化ビニリデン系樹脂や、ポリビニルアルコール系樹脂等のガスバリア性を有する樹脂からなる層を積層することが行われている。
【0004】しかし、塩化ビニリデン系樹脂はガスバリア性には優れるものの、塩素系樹脂であるため焼却性や廃棄性に関してデメリットがある。また、ポリビニルアルコール系樹脂は、乾燥状態での酸素バリア性が、一般の合成樹脂中最も優れているものの、高湿度下での酸素バリア性が、吸湿により、極端に低下するという問題がある。
【0005】このため、架橋や変性処理をしたり、他化合物と複合したりする工夫がなされている。例えば、特開昭56−4563号公報には、熱可塑性樹脂フイルム上に、シリカ/ポリビニルアルコール系複合ポリマーからなる被覆層を設けたガスバリア性フィルムが開示されている。また、特開平9−39166号公報には、被膜の形成過程において、140℃以上、熱可塑性樹脂基材の融点以下の温度で乾燥または熱処理を行う、熱可塑性樹脂基材の少なくとも片面上に水溶性高分子および金属微粒子を含んでなる被膜を形成したフイルムが開示されている。
【0006】しかしながら、特開昭56−4563号公報に記載のフィルムは、実質的にシリカゾルとポリビニルアルコールなどの水溶性高分子との混合物からなる被膜で形成されているので、高湿度下、特に90%RHにおけるガスバリア性に関しては未だ改良の余地があり、さらに高湿度下でのガスバリア性を改良するためにシリカゾルの配合比を多くするとフイルムの透明性が悪化するという問題があった。また、特開平9−39166号公報に記載のフィルムも、実質的にシリカゾルとポリビニルアルコールなどの水溶性高分子との混合物からなる被膜で形成されているので前記と同様の問題があり、また140℃以上、熱可塑性樹脂基材の融点以下の温度で乾燥または熱処理する必要があることから、熱可塑性樹脂基材の種類によっては、基材の耐熱性不足により上記熱処理が行えないという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、高湿度下では吸湿により、酸素バリア性が極端に低下するというポリビニルアルコール系樹脂の特性を改良し、高湿度化でも優れたガスバリア性を有し、かつ透明性に優れたガスバリア性フイルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。
【0009】その結果、熱可塑性樹脂フイルムと、特定の高分子ガスバリア層との積層フイルムにおいて、該高分子ガスバリア層の酸素透過係数を特定の数値以下にすると、高湿度下でもガスバリア性に優れるフイルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】即ち、本発明は、熱可塑性樹脂フイルムと、(1)ポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドの部分加水分解重縮合物との混合物、(2)ポリビニルアルコール系樹脂と該部分加水分解重縮合物との反応生成物、または(3)ポリビニルアルコール系樹脂、該部分加水分解重縮合物および該反応生成物との混合物のいずれか1種からなる高分子ガスバリア層との積層フィルムにおいて、該高分子ガスバリア層の温度23℃、湿度90%RH下で測定した酸素透過係数(μmml/m2dayatm)が200以下であることを特徴とするガスバリア性フイルムである。
【0011】本発明によれば、高湿度下でも高いガスバリア性を保持することができ、かつ透明性に優れたガスバリア性フイルムを提供することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明のガスバリア性フイルムは、該ガスバリア性フイルム中の高分子ガスバリア層の温度23℃、湿度90%RH下で測定した酸素透過係数(μmml/m2dayatm)が200以下であることが必要であり、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下である。
【0013】逆に酸素透過係数が200より大きい場合、水分活性0.6〜0.9の中間水分活性食品や、水分活性0.9以上の高水分活性食品の包装内のような高湿度雰囲気下において、該ガスバリア性フイルム自体の酸素バリア性が不十分となり、内容物の保存性を損なう恐れがあるため好ましくない。
【0014】なお、本発明において、高分子ガスバリア層の温度23℃、湿度90%RH下における酸素透過係数は、JIS K7126に基づき下記式(1)により算出したものである。
【0015】
酸素透過係数=α×β (1)
α:高分子ガスバリア層の厚みβ:温度23℃、湿度90%RH下における高分子ガスバリア層の酸素透過度また、上記βは、下記式(2)より簡便に算出することができる。
【0016】
1/Q=1/β+Σ1/γn (2)
Q:ガスバリア性フイルム全体の酸素透過度β:ガスバリア性フイルム中の高分子ガスバリア層の酸素透過度γn:ガスバリア性フイルム中の各熱可塑性樹脂フイルム層の酸素透過度n:熱可塑性樹脂フイルム層の数
【0017】本発明において、熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定なく、たとえば、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとの1種または2種以上のランダムまたはブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらにこれら重合体の混合物などのポリオレフィン系樹脂;石油樹脂、テルペン樹脂などの炭化水素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXDなどポリアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン、アクリロニトリル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリケトン樹脂;ポリメチレンオキシド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらは一種または二種以上を混合して用いることができる。
【0018】なかでも透明性、機械的強度、包装適性などが優れるポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン、アクリロニトリル系樹脂、水素結合性樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましく、さらに好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂である。
【0019】本発明で用いられる熱可塑性樹脂フイルムの製造方法としては、公知の方法が制限なく使用できる。具体的には、溶液キャスト法,Tダイ法,チューブラー法、カレンダー法など公知の方法が採用される。また、機械物性等を勘案すると、上記熱可塑性樹脂フィルムは延伸処理を施すことが好ましい。延伸方法は、公知の方法が何ら制限なく採用でき、例えば、ロール一軸延伸、圧延、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、チューブラー延伸等が挙げられ、これらの延伸方法の中で、厚薄精度や機械物性等を勘案すると、逐次二軸延伸、同時二軸延伸が好ましい。
【0020】また、熱可塑性樹脂フイルムの厚みとしては、特に制限されず、用いる用途等を勘案して適宜選択すればよく、一般的には1〜500μmの範囲から適宜選択される。その中でも、延伸加工性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、製袋加工性等を勘案すると5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
【0021】本発明で用いられる熱可塑性樹脂フイルムには、必要に応じて帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、滑剤、紫外線吸収剤、滑り性付与およびアンチブロッキング性付与を目的とした界面活性剤等の公知の添加剤を、本発明の効果を阻害しない程度配合してもよい。
【0022】本発明で用いられる熱可塑性樹脂フイルムは、包装用途、特にガスバリアフィルムとして好適に使用されることを勘案すると、透明であることが好ましい。具体的には、ヘイズ値が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0023】前記したように、本発明のガスバリア性フイルムは、熱可塑性樹脂フイルム(A層)と、下記の特定の高分子ガスバリア層(B層)との積層フィルムであることが必要である。
【0024】本発明において上記高分子ガスバリア層(B層)は、(1)ポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドの部分加水分解重縮合物との混合物(2)ポリビニルアルコール系樹脂と該部分加水分解重縮合物との反応生成物(3)ポリビニルアルコール系樹脂、該部分加水分解重縮合物および該反応生成物との混合物のいずれか1種からなる高分子ガスバリア層が挙げられる。
【0025】上記条件を満足していれば層構成は特に制限されず、たとえばA層/B層の2層構成、A層/B層/A層の3層構成等が挙げられ、さらには上記構成の外層に別の層を設けてもよいし、A層/B層間に別の層を設けてもよい。
【0026】本発明のガスバリア性フイルムにおいて、B層の厚みは特に制限されないが、ガスバリア性を勘案すると、0.1μm以上が好適であり、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。また、高分子ガスバリア層の耐久性、経済性、二次加工性等を勘案すると、B層の厚みは10μm以下が好適であり、6μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。B層の厚みを上記範囲とすることにより、良好なガスバリア性を有したフィルムを得ることができる。
【0027】該高分子ガスバリア層の形成に使用されるポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルアルコール系重合体およびその誘導体が採用できる。例えば、けん化度75モル%以上のポリビニルアルコール、全水酸基の40モル%以下がアセタール化されているポリビニルアルコール、アルコール可溶変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール単位が60モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール共重合体等の共重合ポリビニルアルコール等が好ましく用いられる。その中でも、けん化度75モル%以上のポリビニルアルコール、全水酸基の40モル%以下がアセタール化されているポリビニルアルコール、アルコール可溶変性ポリビニルアルコールが、得られるフイルムの透明性や高湿度下でのガスバリア性が良好なことからより好ましく用いられる。また、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、ガスバリア性や加工性を勘案すると、100〜5000であることが好ましく、300〜3000であることがより好ましい。
【0028】一方、高分子ガスバリア層の形成に使用されるケイ素アルコキシドは、加水分解により重縮合物が形成可能であれば特に制約されない。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン等の加水分解重縮合物が形成可能なケイ素アルコキシドが挙げられる。
【0029】本発明において、ケイ素アルコキシドの加水分解重縮合物を形成する方法は、特に限定されず公知の方法を採用すればよい。
【0030】たとえば、上記ケイ素アルコキシドを適当な溶媒に溶解または分散させ、必要に応じて酸等の触媒を加えて、乾燥することにより加水分解重縮合物を形成する方法が挙げられる。
【0031】本発明においては、良好なガスバリア性を発揮させることを勘案すると、ポリビニルアルコール系樹脂とともにケイ素アルコキシドを適当な溶媒に溶解または分散させてから、加水分解重縮合物を形成することが好ましい。
【0032】本発明のガスバリア性フイルムを製造する方法は、前記した熱可塑性樹脂フイルムに、本発明で規定する高分子ガスバリア層を積層できれば、特に限定なく、公知の方法を採用することができる。
【0033】その中でも、本発明で規定する範囲を良好に満足することを勘案すると、上記したポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドとを溶媒に溶解または分散させた液(以下、塗工液ともいう)を前記熱可塑性フィルム上に塗工し、乾燥により、加水分解重縮合物を形成すると同時に高分子ガスバリア層を形成させる方法が特に好ましい。
【0034】上記塗工液の成分は、前記ポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドとを含んでいれば特に制限されないが、本発明で規定する範囲を良好に満足することを勘案すると、さらに水、低級アルコール等の溶媒と、酸とを含んだ構成であることが好ましい。
【0035】例えば、ポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドとを水と低級アルコールの混合溶媒中に均一に溶解または分散させ、これに酸を配合し、均一に溶解させた組成が好適であるが、ケイ素アルコキシドに水と酸を添加し、重縮合物であるケイ素アルコキシドの加水分解重縮合物をあらかじめ調整した後、ポリビニルアルコール系樹脂とともに溶媒に均一に溶解または分散せしめた組成でもかまない。
【0036】本発明において、高分子ガスバリア層を形成する際の、上記ポリビニルアルコール系樹脂と上記ケイ素アルコキシドとの混合割合は、本発明で規定する範囲を良好に満足することを勘案すると、塗工液中におけるポリビニルアルコール系樹脂/ケイ素アルコキシドの重量部比が、100/300〜100/600であることが好ましく、100/400〜100/550であることが、高湿度下でも極めて良好な高いガスバリア性を発揮させることを勘案すると特に好ましい。
【0037】塗工液中のポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドとの配合割合において、ケイ素アルコキシド重量部比が300重量部より少ない場合、高分子ガスバリア層の厚みが厚くなっても、高湿度下でのガスバリア性が不十分で、本発明で規定するガスバリア性フイルムを得ることができない。また、ケイ素アルコキシド重量部比が600重量部より多い場合、高分子ガスバリア層自体が脆くなるため、フイルム屈曲によりクラックが発生しやすくなる。
【0038】上記酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、有機リン酸、蟻酸、酢酸、無水酢酸、クロロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、桂皮酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸クエン酸、粘液酸、グルコン酸、尿酸、バルビツル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
【0039】その中でも、コーティング加工時の機器への腐蝕の問題や高分子ガスバリア層自体の透明性・無着色性の点から有機酸が好ましく採用され、特に、沸点が基材である熱可塑性樹脂フイルムの(融点−10℃)以下である有機酸が良好なガスバリア性を発現させ得ることから好ましく採用される。例えば、熱可塑性樹脂フイルムとして融点160℃の二軸延伸ポリプロピレンフイルムを用いた場合、有機酸としては例えば、沸点150℃以下の有機酸である蟻酸、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、乳酸等を用いればよい。
【0040】上記溶媒としては、前述したように、水または水/低級アルコール混合溶媒が好適である。そのうち、接着性および生産性を勘案すると、水/低級アルコール混合溶媒を用いることがより好ましい。
【0041】上記低級アルコールとしては、炭素数が1〜3のアルコール、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、またはイソプロピルアルコールが好ましい。水/アルコールの混合比率は、重量比で99/1〜20/80の範囲から適宜選択される。
【0042】また上記塗工液には、本発明の効果を阻害しないかぎり、上記以外の成分を配合してもよい。
【0043】たとえば、熱可塑性樹脂フイルムへのコート適性を高めるため、塗工液の安定性が阻害されない範囲で、他の水溶性有機化合物を添加してもよい。具体的には、溶媒として使用される上記低級アルコール以外に、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン、ワックス類等の多価アルコール類;ジオキサン、トリオキサン等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン等のケトン類;水溶性イソシアネート、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂等の水溶性アンカーコート剤が挙げられる。
【0044】また、塗工液の安定性が阻害されない範囲で、無機微粒子、無機系層状化合物等の無機化合物や架橋剤を添加してもよい。無機化合物を具体的に例示すると、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子、モンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ディッカイト、ナクライト、アンチゴライト、バイロフィライト、ヘクトライト、バイデライト、マーガライト、タルク、テトラシリリックマイカ、白雲母、金雲母、緑泥石等の無機層状化合物が挙げられる。無機層状化合物の多くは天然の鉱物として産するが、化学合成法に依って製造されたものも制限なく使用出来る。また、架橋剤を具体的に例示すると、ウレタン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。
【0045】上記塗工液は、上記成分がそれぞれお互いに分散・混合された状態であっても、さらに一部架橋された状態であってもよい。
【0046】本発明のガスバリア性フイルムの製造方法において、上記塗工液の塗工方法としては、高速での薄膜塗工可能な、溶液または溶媒分散コーティング法が本発明の実施において好ましく、好適に採用される。これらコーティング法を具体的に例示すると、コート液を、グラビアコート、リバースコート、スプレーコート、キッスコート、ダイコート、メタリングバーコート、チャンバードクター併用グラビアコート、カーテンコート等により熱可塑性樹脂フイルム表面にコートする方法が好適である。
【0047】本発明のガスバリア性フイルムの製造方法において、熱可塑性樹脂フイルム上の塗工液を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法が特に制限なく使用できる。具体的には、熱ロール接触法、熱媒(空気、オイル等)接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の1種または2種以上が挙げられる。これらの中で、フイルム外観等の仕上がりや乾燥効率等を勘案すると、加熱空気接触法や赤外線加熱法が好ましい。
【0048】前記塗工液の乾燥条件は特に制限されないが、ガスバリア性の発現や乾燥効率等を勘案すると、特に、熱可塑性樹脂フイルムの融点未満の温度範囲において、100℃以上の温度を採用することが好ましい。また、上記乾燥温度としては、110℃以上がより好ましく、特に120℃以上がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂フイルムの融点より10℃低い温度以下がより好ましく、特に15℃低い温度以下がさらに好ましい。
【0049】上記乾燥時間は、バリア性や乾燥効率等を勘案すると、5秒〜10分であることが好ましく、10秒〜5分であることがより好ましい。
【0050】また、上記乾燥の前後に、必要に応じて、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射を施してもよい。
【0051】本発明において、高分子ガスバリア層と熱可塑性樹脂フイルムとの接着性をより向上せしめ、得られるガスバリア性フイルムのガスバリア性、耐久性をより向上させるために、高分子ガスバリア層を積層する熱可塑性樹脂フイルムの表面に表面処理を施すことが好適である。
【0052】表面処理としては、公知の表面処理方法が何ら制限なく採用できる。例えば、大気中コロナ放電処理、窒素ガス中コロナ放電処理、炭酸ガス中コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、紫外線処理、オゾン処理、電子線処理、励起不活性ガスによるプラズマ処理等の表面処理方法を挙げることができる。また、これらの表面処理の併用処理をしても良い。
【0053】本発明のガスバリア性フイルムにおいて、高分子ガスバリア層と熱可塑性フイルム間の接着強度を一層向上させるため、高分子ガスバリア層と熱可塑性フイルムとの間にアンカーコート層を介してもよい。
【0054】上記アンカーコート層の形成に使用されるアンカーコート剤としては、公知のものが特に制限されず使用できる。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のアンカーコート剤が挙げられる。
【0055】本発明のガスバリア性フイルムには、さらに、印刷層および/またはヒートシール性等を付与する目的で、市販のポリオレフィン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のシーラント層等を積層してもよい。
【0056】本発明のガスバリア性フイルムの用途は、特に制限されないが、乾燥食品包装用やカステラ、生菓子等の高水分活性食品包装用として幅広い水分活性の食品包装用フイルムとして好適である。
【0057】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例におけるフィルム物性については下記の方法により行った。
【0058】(1)透明性(ヘイズ)
JIS K6714に準拠して測定した。
【0059】(2)酸素バリア性(酸素透過係数)
JIS K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)を用いて測定した。測定条件は、温度23℃、湿度90%RHで行った。
【0060】(3)接着性バーコーターにて基材フィルム表面に、コート液をコート層厚み1μm(乾燥時)となるようにコートし、135℃で2分間乾燥させた。室温で1日以上放置後、得られたコートフイルムのコート面の中央部分を、Xカットテープ法(JIS K5400)に準じ、剥離の程度によって下記の基準に従い評価した。
5:Xカット部の剥離無し4:Xカット部の1割未満が剥離3:Xカット部の1割以上、3割未満が剥離2:Xカット部の3割以上、5割未満が剥離1:Xカット部の5割以上、10割未満が剥離0:Xカット部の10割が剥離
【0061】(4)耐クラック性ゲルボフレックステスターを用い、サンプルを23℃で50回の繰り返し屈曲を行い、JIS K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)で酸素透過度を測定し、耐クラック性を評価した。酸素透過度の測定条件は、温度23℃、湿度90%RHで行った。
【0062】実施例1水70重量部:エタノール30重量部の混合溶液に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールNL−05)を濃度が5%となるように溶解させ、ポリビニルアルコールの5%溶液を得た。該ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン26重量部と酢酸1.2重量部を加え、室温下6時間攪拌し、均一な塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100/520であった。得られた塗工液を、厚み20μmの窒素中コロナ放電処理した二軸延伸ポリプロピレンフイルムの処理面に乾燥後のコーティング薄膜厚みが1.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにて塗布し、135℃で2分間、熱風乾燥し、本発明のガスバリア性フイルムを得た。得られたフイルムの透明性、ガスバリア性能としての酸素透過係数、そしてコーティング薄膜の接着性を測定評価し、表1にその結果を示した。なお、二軸延伸ポリプロピレンフイルムの基材単独での酸素透過度は、1800(ml/m2dayatm)(90%RH)である。
【0063】実施例2ポリビニルアルコールの5%溶液100重量部にテトラエトキシシラン22重量部と酢酸1.2重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100/440であった。実施例1と同様にして本発明のガスバリア性フイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0064】実施例3ポリビニルアルコールの5%溶液100重量部にテトラエトキシシラン20重量部と酢酸1.2重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100/400であった。実施例1と同様にして本発明のガスバリア性フイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0065】実施例4ポリビニルアルコールの5%溶液100重量部にテトラエトキシシラン17.4重量部と酢酸1.2重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100/350であった。実施例1と同様にして本発明のガスバリア性フイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0066】実施例5ポリビニルアルコールの5%溶液100重量部にテトラエトキシシラン15重量部と酢酸1.2重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100/300であった。実施例1と同様にして本発明のガスバリア性フイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0067】実施例6実施例5と同様にして塗工液を得、該塗工液の乾燥後のコーティング薄膜厚みが3.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにて塗布し、135℃で2分間、熱風乾燥したこと以外は、実施例5と同様にして本発明のガスバリア性フイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0068】実施例7水70重量部:エタノール30重量部の混合溶液に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールNL−05)を濃度5%となるように溶解させ、ポリビニルアルコールの5%溶液を得た。ヘクトライト(コープケミカル製、ルーセンタイトSWN)を水に1.3%となるように溶解させ、ヘクトライトの1.3%水溶液を得た。該ポリビニルアルコールの5%溶液100重量部に該ヘクトライトの1.3%水溶液66.5重量部とエタノール33.5重量部とテトラエトキシシラン13重量部を混合し、該混合液に酢酸2.4重量部を加え、室温下6時間攪拌し、均一な塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100/520であった。得られた塗工液を、実施例1と同様にして本発明のガスバリア性フイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0069】実施例8塗工液の乾燥条件を120℃で2分間とした以外は実施例1と同様にして本発明のガスバリア性フイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0070】実施例9実施例1で得られた塗工液を、厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルムのコロナ放電処理面に乾燥後のコーティング薄膜厚みが1.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにて塗布し、135℃で2分間、熱風乾燥し、本発明のガスバリア性フイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。なお、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルムの基材単独での酸素透過度は、90(ml/m2dayatm)(90%RH)である。
【0071】実施例10実施例1で得られた本発明のガスバリア性フイルムの塗工面に、ドライラミネート用接着剤(東洋モートン社製、TM329/CAT−8B 100重量部/100重量部を、酢酸エチル溶剤にて、不揮発分が10%となるよう調整)をバーコーターにより乾燥重量が2g/m2となるようにコートし、90℃で2分間乾燥させた後、該ドライラミネート用接着剤面に、40μmの無延伸ポリエチレンフイルムをドライラミネートし、無延伸ポリエチレンフイルムを積層したフイルムを得た。得られたフイルムのフイルム物性を表1に示した。なお、無延伸ポリエチレンフイルム単独での酸素透過度は、3200(ml/m2dayatm)(90%RH)である。
【0072】実施例11を水70重量部、エタノール30重量部の混合溶液に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールNL−05)を濃度5%となるように溶解させ、ポリビニルアルコールの5%溶液を得た。該ポリビニルアルコール溶液100重量部にテトラエトキシシラン26重量部と2N−塩酸1.0重量部を加え、室温下1時間攪拌し、均一な塗工液を調整した他は、実施例1と同様にしてフイルムを得た。得られたフイルムのコーティング薄膜層は黄色に着色していた。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0073】比較例1ポリビニルアルコールの5%溶液100重量部にテトラエトキシシラン33重量部と酢酸1.2重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100/660であった。実施例1と同様にしてフイルムを得た。コーティング薄膜層にはクラックが発生し、脆く割れ易かった。フイルムの物性を表1に示した。
【0074】比較例2ポリビニルアルコールの5%溶液100重量部にテトラエトキシシラン13重量部と酢酸1.2重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして塗工液を調整した。なお、本塗工液中のポリビニルアルコール/テトラエトキシシランの重量部比は、100/260であった。実施例1と同様にしてフイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0075】比較例3比較例2と同様にして塗工液を得、該塗工液の乾燥後のコーティング薄膜厚みが4.0μmになるようにベーカー式アプリケーターにて塗布し、135℃で2分間、熱風乾燥したこと以外は、比較例2と同様にしてフイルムを得た。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0076】比較例4ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールNL−05)を水70重量部、エタノール30重量部の混合溶液に5%となるように溶解させ、ポリビニルアルコールの5%溶液を得た。該ポリビニルアルコール溶液100重量部にシリカゾル20%分散溶液(日産化学製、スノーテックス20)38重量部を加え、室温下攪拌し、均一な塗工液を調整した他は、実施例1と同様にしてフイルムを得た。得られたフイルムのコーティング薄膜層は白色不透明であった。得られたフイルムの物性を表1に示した。
【0077】
【表1】


【0078】
【発明の効果】本発明のガスバリア性フイルムは、熱可塑性樹脂フィルムと、特定の高分子ガスバリア層との積層フイルムにおいて、該高分子ガスバリア層の温度23℃、湿度90%RH下で測定した酸素透過係数を200以下とすることにより、高湿度下でも優れたガスバリア性を有するガスバリア性フイルムとすることができる。したがって、本発明のガスバリア性フイルムは、幅広い水分活性の食品包装用フイルムとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】熱可塑性樹脂フィルムと、下記(1)〜(3)のいずれか1種からなる高分子ガスバリア層との積層フイルムにおいて、該高分子ガスバリア層の温度23℃、湿度90%RH下で測定した酸素透過係数(μmml/m2dayatm)が200以下であることを特徴とするガスバリア性フイルム。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂とケイ素アルコキシドの部分加水分解重縮合物との混合物(2)ポリビニルアルコール系樹脂と該部分加水分解重縮合物との反応生成物(3)ポリビニルアルコール系樹脂、該部分加水分解重縮合物および該反応生成物との混合物
【請求項2】ポリビニルアルコール系樹脂、ケイ素アルコキシド、低級アルコール、水、酸よりなり、かつポリビニルアルコール系樹脂/ケイ素アルコキシドの重量部比が100/300〜100/600である塗工液を、熱可塑性樹脂フイルムの少なくとも片面上に塗工し、乾燥することにより高分子ガスバリア層を形成する請求項1記載のガスバリア性フイルムの製造方法。

【公開番号】特開2001−277443(P2001−277443A)
【公開日】平成13年10月9日(2001.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−101654(P2000−101654)
【出願日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(596104050)サン・トックス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】