説明

ガスバリア性多層フィルム及びそれを利用した深絞り包装体用底材

【課題】熱水又は水蒸気による加熱殺菌後でも、酸素の透過量をほぼゼロに抑制し、また、包装材を高温、高湿度下に保存しても長期間に亘って高い酸素ガスバリア性を持続でき、かつ酸素吸収性樹脂が酸素を吸収した際に発生し得る臭気が内容物側へ移行することを抑えた透明性、成形性、耐ピンホール性、剛性に優れた包装材料を提供する。
【解決手段】少なくとも3層からなる多層フィルムであって、酸素吸収性樹脂層(a)、その内側に環状ポリオレフィン層(b)、最内層にヒートシール性樹脂(c)有することを特徴とするガスバリア性フィルムであり、23℃・50%RHで0.01fm/s・Pa(1ml/m2・day・MPa)以下の酸素透過率を少なくとも180日間持続するガスバリア性多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱殺菌される食品用容器に好適に使用できるガスバリアフィルムに係り、プラスチック材料が熱と水分の作用でガスバリア性が低下する加熱殺菌条件下でも、酸素透過量が著しく低いレベルに抑制でき、更に、加熱殺菌後の保存状態でも、長期間に亘って高い酸素ガスバリア性を持続できる透明性な包装材を提供するものであり、かつ酸素吸収樹脂の酸化反応によって発生し得る臭気が移行しないものであり、酸素による内容物の変質を嫌う食品、医療品、及び薬品等の包装用に適する酸素吸収機能を有するガスバリア性共押出複合フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱殺菌して長期保存する食品の容器としては、金属缶、ガラスビン、各種プラスチック容器が使用されているが、プラスチック容器の場合、プラスチック材料からの酸素透過量は、無視し得ないレベルであり、内容食品の保存性の点で問題となっていた。特に、ボイル殺菌等のように、熱水や蒸気等により加熱殺菌する場合は、プラスチック材料に高湿度下で100℃近い高温が作用するので、プラスチック容器のガスバリア性を保持させることは大きな問題であった。そのため、加熱殺菌される食品を長期保存させるためのガスバリア性包装材料は、従来、防湿性が高いポリプロピレン(PP)や高密度ポリエチレン(HDPE)を主成分とする複合フィルムが使用されてきた(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような複合フィルムに防湿性を付与しようとすると、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(HDPE)の層を厚くしなければならない。ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(HDPE)の層を厚くすると、深絞り成型した場合に複合フィルムの成型性(以下「深絞り成型性」ともいう。)が悪くなるため、包装速度が遅くなり、プラグ(深絞り成型性を補う設備)を使用した深絞り成型設備が必要であり、さらに透明性が悪くなるという問題があった。また、加熱殺菌条件下では、水蒸気透過係数の増大に伴い、ガスバリア性樹脂の酸素透過係数が増大し、加熱殺菌中に容器内に酸素が透過して内容食品を酸化劣化させてしまう欠点があった。
【0003】
また、ガスバリア性の面においては、透明かつ酸素バリア性の高い包装材としては2軸延伸ポリエステルフィルム(OPET)や2軸延伸ポリアミドフィルム(ONY)等に金属酸化物を蒸着した蒸着フィルムや、ガスバリア性樹脂EVOH、MXD-NYなどで多層化したフィルムが利用されている。しかしこの蒸着フィルムは、ヒートシール層をラミネートし、又は印刷する際に、あるいは使用中の屈曲等により蒸着膜に損傷を受けやすく、酸素バリア性が著しく損なわれるという欠点があった。また、従来のガスバリア性樹脂EVOH、MXD-Nyなどで多層化したフィルムは容器の外部に透過している酸素をバリアするという受動的(パッシブ)な方法であり、熱と水分が同時に作用する条件、即ち熱水又は蒸気等による加熱殺菌条件下では包装材の酸素透過係数は室温に比較して、非常に大きくなるので、この条件下では包材の酸素透過量を低レベルに抑制することは大きな課題となっていた。特に、菓子類、もち、米飯類、調味料、ドレッシング、マヨネーズ、醤油、生鮮食品など微量な酸素でも影響を受けやすい食品への適用は困難であった。
【0004】
そこで、現在では従来の蒸着フィルムやEVOH等を使用したガスバリア包装に対して、外部からの酸素の侵入を抑えるだけではなく、容器内の残存酸素をも吸収し、初期の酸素濃度以下に保持することが可能という積極的(アクティブ)な方法が注目されている。たとえば、酸素吸収剤等を包装材中に含ませ、透過してくる酸素を捕集して、見かけの酸素透過率を下げる方法も知られており、この方法は、鉄粉等の酸素吸収剤を所定の樹脂に配合し、包装材の器壁として用いられるものであり、酸素吸収性能が大きいというメリットがある。しかし、配合する樹脂を固有の色相に着色する必要があるため、透明性が要求される包装の分野には使用できないという制約があった。さらにこの包装材は、金属異物検知器に反応してしまうため、異物検知器が使用できないという問題や、電子レンジによる加熱で放電・発火する可能性があるなど実用上の問題があった。
【0005】
上記問題を解決するために、酸素吸収性樹脂からなる酸素吸収性樹脂層の外側にガスバリア性樹脂層を積層することにより、ガスバリア性樹脂層単独より低い酸素透過率を有するガスバリア性包装材が提案されている(特許文献2参照)。しかし、このガスバリア性包装材を用いた場合、酸素吸収性樹脂から発生した臭気が内容物へ移行してしまうという問題があった。そこで、臭気の内容物側への移行を防ぐために、酸素吸収性樹脂層とヒートシール樹脂層の間にガスバリア性樹脂を配する構成(特許文献3、4参照)や、酸素吸収性樹脂層の両側にガスバリア性樹脂層を積層することで、ボトル等の容器内で酸素吸収機能を3ヶ月持続できる酸素吸収性容器も提案されている(特許文献5参照)。しかし、文献3、5はボトル用途など厚みが大きい容器等に関するであり、酸素吸収性樹脂層とガスバリア性樹脂層とを最適に組み合わせて設計したガスバリア性フィルムに関するものではない。また文献4は、延伸基材をドライラミネートしたフィルムで主に袋(パウチ)等に関するものであり、これもまた酸素吸収性樹脂層とガスバリア性樹脂層とを最適に組み合わせて設計したガスバリア性フィルムに関するものではなく、軟包装分野、特に深絞り包装分野では、深絞り成形によりフィルム全体の厚みは成形前に比べ薄くなり、特にコーナー部の最薄部では酸素吸収できずに、酸素が透過してしまう現象が発生し、酸素吸収による不快な臭気が発生するため、実用上使用するにはまだ困難であった。また、ボイル殺菌等のように、熱水や蒸気等により加熱殺菌する場合は特に水蒸気透過係数の増大に伴い、酸素吸収樹脂の酸素透過係数が増大し、酸素吸収能力を超えてしまい、加熱殺菌中に容器内に酸素が透過して内容食品を酸化劣化させてしまう欠点があった。また、特許文献6にあるように、ガスバリア性樹脂の少なくとも片側に、脱酸素剤或いは脱酸素剤と吸湿剤を配合することが提案されているが、脱酸素剤や吸湿剤を添加する工程が必要で、効率が良くなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−305099号公報
【特許文献2】特表平3−503153号公報
【特許文献3】特開2004−25664号公報
【特許文献4】特開平06−115569号公報
【特許文献5】特開2002−240813号公報
【特許文献6】特開平8−118551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、加熱殺菌される食品用容器に好適に使用できるガスバリアフィルムに係り、プラスチック材料が熱と水分の作用でガスバリア性が低下する加熱殺菌条件下でも、酸素透過量がほぼゼロに抑制でき、又、高温、高湿度条件下で長期保存しても酸素吸収機能が低下せず、更に、加熱殺菌後の保存状態でも、長期間に亘って高い酸素ガスバリア性を持続でき酸素吸収性樹脂が酸素を吸収した際に発生し得る臭気が内容物側へ移行することを抑制した透明性な包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討したところ、所定量の酸素吸収能を有する酸素吸収性樹脂層、そしてその内側に、環状ポリオレフィン層を備えた多層フィルムが、長期に亘り酸素バリア性を持続でき、かつ熱と水分の作用でガスバリア性が低下する加熱殺菌条件下でも、高い酸素吸収性を維持でき、酸素吸収に伴う不快な臭気の発生を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明者は、上記課題を、少なくとも3層からなる多層フィルムであって、酸素吸収性樹脂層(a)、その内側に環状ポリオレフィン層(b)、最内層にヒートシール性樹脂(c)有することを特徴とするガスバリア性フィルムであり、23℃・50%RHで0.01fm/s・Pa(1ml/m2・day・MPa)以下の酸素透過率を少なくとも180日間持続するガスバリア性多層フィルムを提供することにより解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、所定の酸素吸収能を有する酸素吸収性樹脂層とその内側に所定の水蒸気バリア機能を有する環状ポリオレフィン性樹脂層を配しているため、熱水又は水蒸気による加熱殺菌後でも、酸素の透過量をほぼゼロに抑制し、また、包装材を高温、高湿度下に保存しても長期間に亘って高い酸素ガスバリア性を持続でき、かつ酸素吸収性樹脂が酸素を吸収した際に発生し得る臭気が内容物側へ移行することを抑えることができる。
【0011】
また本発明は、特に酸素吸収性樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物系樹脂やポリアミド樹脂を主成分とし、被酸化性樹脂と遷移金属系触媒とを含む組成物である場合には、初期の酸素吸収能力に優れ、特に加熱殺菌処後、優れたガスバリア性能を発揮することができる。
【0012】
本発明は、上記ガスバリア性フィルムを用いて包装材や包装体を作製した場合、優れた
酸素バリア性と優れた酸素吸収能を長期間安定して持続でき、特にガスバリア性の高い軟
包装材、深絞り包装材、及び軟包装体や深絞り包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】はガスバリア性多層フィルムの断面構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明のガスバリア性フィルム、並びに該フィルムを用いた包装材及び包装体について詳細に説明する。
なお、本明細書において「A層の内側にB層が積層される」とは、本発明のガスバリア性フィルムを用いて包装体を作製した場合に、A層より内容物に近い位置にB層が配されることを意味し、「A層の外側にB層が積層される」とは、A層より外気(空気中)に近い位置にB層が配されることを意味する。また本明細書において「A層にB層を積層する」とは、主としてA層上にB層を直接配する場合を意味するが、A層とB層との間にさらにC層を介在させることが可能であることを意味する。
【0015】
[ガスバリア性]
本発明のガスバリ性フィルムは、23℃・50%RHで0.01fm/s・Pa(1ml/m2・day・MPa)以下の酸素透過率を少なくとも180日間持続するガスバリア性を有することを特徴としている。
【0016】
[層構成]
次に、本発明のガスバリア性フィルムの層構成について、図面を参酌して説明する。
図1は、本発明の好適なガスバリア性フィルムの断面図(その1)である。外層として任意に設けられる熱可塑性樹脂層、その内側に酸素吸収性樹脂層(a)と環状ポリオレフィン樹脂層(b)を配し、最内層にヒートシール可能な熱可塑性樹脂層(c)を備えている。
【0017】
図1に示すように、本発明のガスバリア性フィルム1は、酸素吸収性樹脂層(a)、環状ポリオレフィン層(b)、ヒートシール層(c)の少なくとも3層からなる構成を有する。酸素吸収性樹脂層(a)の内側に環状ポリオレフィン性樹脂層(b)を配することにより、熱水や蒸気が作用する条件、すなわち加熱殺菌条件下で酸素バリア性が低下しても、包装体外側からの酸素を内側へ透過することがない。また、酸素吸収樹脂層(a)の内側に環状ポリオレフィン層(b)を配し、パック品内の水蒸気バリア性を格段に向上させることで、加熱殺菌中でも酸素吸収性樹脂の酸化反応が促進し、吸収機能を失わないよう負荷を低減させている。一般に酸素吸収樹脂中の被酸化成分の酸化反応は、水分が多いほど、また温度が高いほど、反応速度が促進される。
【0018】
また、加熱殺菌後も、酸素吸収樹脂層(a)の内側に配した環状ポリオレフィン層によって、パック品内側の透湿係数は低レベルに抑制できるので、酸素吸収機能の失活が直ぐに起こらないよう酸化吸収反応の速度を遅らせ、酸素バリアゼロ期間の延長が可能となる。また、環状ポリオレフィン樹脂はEVOHやMXD−Ny程の臭気バリア機能はないが、一般のポリオレフィン樹脂に比べ、ガラス点移転点が高いので、常温では非晶部の分子鎖が動かず、酸素吸収性樹脂層(a)から発生するおそれのある臭気(アルデヒドやケトンなど)を通しにくい。
【0019】
環状ポリオレフィン層は酸素吸収性樹脂の両側もしくは内側に配さなければならない。
酸素吸収樹脂の外側に環状ポリオレフィン層を配す構成は酸素吸収機能が比較的短時間で機能が発揮しなくなるので好ましくない。すなわち、加熱殺菌中や加熱殺菌後、環状ポリオレフィン層によって内容物の水分がパック品の外側へ透過していかない為、パック品内側の透湿係数の増大に伴い、酸素吸収樹脂の相対湿度が高くなってしまう。その為に、酸素吸収樹脂層内において酸化反応速度が促進されるので、酸素吸収機能が短時間で機能が発揮してしまう。
【0020】
また図1には示されていないが、層間接着強度を向上させる目的で、酸素吸収性樹脂層(a)と環状ポリオレフィン性樹脂層(b)との間に接着性樹脂層を介在させることもできる。但し、酸素吸収性樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物やポリアミド系樹脂を主成分とする樹脂で、酸素吸収性樹脂の両側にエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物やポリアミド系樹脂を配する場合は両樹脂層の接着性は比較的高いため、接着性樹脂層を介在させずに両層を積層させることができる。
【0021】
本発明のガスバリア性フィルムは上記の層構成を有するが、ガスバリア性フィルム全体の厚みは、60μm以上、好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、500μm以下、好ましくは400μm以下、さらに好ましくは300μm以下、特に軟包装材として用いる場合には250μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下であることが望ましい。酸素吸収性樹脂層(a)、環状ポリオレフィン樹脂層(b)ないしヒートシール性樹脂層(c)の厚みについては後述する。
【0022】
本発明のガスバリア性フィルムが採り得る層構成としては、以下の態様を挙げることができる。
【0023】
<深絞り成形用フィルムの層構成>
本発明のフィルムは、外層もしくは中間層に少なくとも酸素吸収性樹脂層(a)、酸素吸収樹脂層(a)の内側に環状ポリオレフィン樹脂層(b)を配すれば、層構成の順序に特に制限はないが、酸素吸収樹脂層をA層、環状ポリオレフィン樹脂層をB層、ポリアミド(以下、「PA」という場合がある。)層をC層、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という場合がある。)層をD層、ポリエチレン(以下、「PE」という場合がある。)層をE層ポリプロピレン(以下、「PP」という場合がある。)層をF層、接着樹脂層をG層、ヒートシール性樹脂層をH層として表した場合、以下の層構成(1)〜(14)を例示することができる。
(1) C/G/C/A/G/B
(2) C/G/C/A/G/B/H
(3) D/G/C/A/G/B
(4) D/G/C/A/G/B/H
(5) E/G/C/A/G/B
(6) E/G/C/A/G/B/H
(7) A/C/G/B
(8) A/C/G/B/H
(9) E/G/C/A/G/B
(10)E/G/C/A/G/B/H
(11)F/G/A/C/G/B
(12)F/G/A/C/G/B/H
(13)F/C/G/A/G/B
(14)F/C/G/A/G/B/H
中でも好ましい層構成は、(2),(4),(6),(8),(10),(14)である。
【0024】
[酸素吸収性樹脂層(a)]
本発明のガスバリア性フィルムにおいて、酸素吸収性樹脂層(a)で用いられる酸素吸収性樹脂は、ガスバリア性樹脂層と組み合わせて使用した場合に、23℃・50%RHで0.01fm/s・Pa(1ml/m2・day・MPa)以下の酸素透過率以下を少なくとも180日間持続可能なものであれば特に限定されないが、被酸化性樹脂(S)と遷移金属系触媒(M)とを含む樹脂組成物が好適に用いられる。酸素吸収容量や酸素吸収速度の面から、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を含む被酸化性樹脂(S)と遷移金属系触媒(M)を含む樹脂組成物が好ましい。
【0025】
被酸化性樹脂(S)は、遷移金属系触媒(M)の作用により、空気中の酸素で酸化される樹脂であり、具体的には(i)炭素側鎖を含む樹脂、(ii)キシリレン基含有ポリアミド樹脂、(iii)エチレン系不飽和基含有重合体、(iv)ポリエーテル含有重合体などが挙げられる。また、被酸化性樹脂(S)が、一般の熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン樹脂等、を主成分とする樹脂に(すなわち、ベース樹脂に)、遷移金属系触媒(M)とともに混合・分散されることで、酸素吸収性樹脂組成物として使用されることも好ましい。
【0026】
被酸化性樹脂(S)と遷移金属系触媒(M)とを含有する組成物における酸素吸収は、
被酸化性樹脂(S)の酸化を経由して行われる。この酸化は、遷移金属系触媒(M)によ
る活性炭素原子からの水素原子の引き抜きによるラジカルの発生、このラジカルへの酸素
分子の付加によるパーオキシラジカルの発生、パーオキシラジカルによる水素原子の引き
抜きの各反応を経て行われるとの説が有力である。上記(i)〜(iv)の樹脂又は重合体
は、このような活性炭素原子を有するため、被酸化性樹脂(S)として使用できる。
【0027】
炭素側鎖を有する樹脂(i)としては、(イ)変性又は未変性のオレフィン樹脂、(ロ
)分岐鎖を有する脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族オキシカルボン酸、又は
ラクトンから誘導された分岐鎖含有熱可塑性ポリエステル、特に脂肪族ポリエステル、(
ハ)分岐鎖を有する脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジアミン、脂肪族アミノカルボン酸、又
はラクタムから誘導された分岐鎖含有熱可塑性ポリアミド、特に脂肪族ポリアミド等が挙
げられる。
【0028】
キシリレン基含有ポリアミド樹脂(ii)としては、キシリレン基含有ポリアミド樹脂、
特にキシリレンジアミンを主体とするジアミン成分とジカルボン酸成分とから誘導された
ポリアミドが挙げられる。キシリレン基含有ポリアミド樹脂(ii)は、遷移金属触媒(M
)との組み合わせで酸化性を有することが知られている。すなわち、遷移金属系触媒(M
)によるキシリレン基含有ポリアミド樹脂のメチレン鎖(特にアリーレン基に隣接するメ
チレン鎖)からの水素原子の引き抜きによりラジカルが発生し、前述と同様の反応機構で
酸化が進行する。
【0029】
キシリレン基含有ポリアミド樹脂を例示すれば、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリ
メタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスベラミド、ポリパラキシリレンピメラ
ミド、ポリメタキシリレンアゼラミド等の単独重合体、及びメタキシリレン/パラキシリ
レンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキ
シリレン/パラキシリレンセバカミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラ
ミド共重合体等の共重合体、あるいはこれらの単独重合体又は共重合体成分とヘキサメチ
レンジアミンの如き脂肪族ジアミン、ピペラジンの如き脂環式ジアミン、パラ−ビス(2
アミノエチル)ベンゼンの如き芳香族ジアミン、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸
、ε−カプロラクタムの如きラクタム、7−アミノヘプタン酸の如きω−アミノカルボン
酸、パラ−アミノメチル安息香酸の如き芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体
が挙げられる。中でもm−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンを主成
分とするジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸とから得ら
れるポリアミドが好ましい。これらのキシリレン基含有ポリアミド樹脂では、ベンゼン環
の隣接メチレン鎖の部分にラジカルの生成と酸素の吸収(パーオキサイドの生成)が効率
よく起きるため、酸素吸収性の観点から好ましい。
【0030】
エチレン系不飽和基含有重合体(iii)としては、例えば、酸化性重合体としてポリエ
ンから誘導される重合体を用いることが好ましい。ポリエンとしては、炭素数4〜20の
不飽和炭化水素、鎖状又は環状の共役又は非共役ジエンから誘導された単位を含む樹脂が
好適に使用される。これらの単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジ
エン;1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4
−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキ
サジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒド
ロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5
−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロ
ロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共
役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソ
プロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリ
エン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0031】
上記ポリエンは、単独で又は2種以上を組み合わせて、あるいは他の単量体と組み合わ
せて単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体を形成し得る。ポリエンと組み合
わせで用いられる単量体としては、炭素数2〜20のα−オレフィン、例えばエチレン、
プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1
−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン
、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノ
ナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、1
2−エチル−1−テトラデセンが挙げられ、他にスチレン、ビニルトルエン、アクリロニ
トリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレート
などの単量体も使用可能である。
【0032】
ポリエン系重合体としては、具体的には、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(
IR)、ブチルゴム(IIB)、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR),スチ
レン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−
ジエンゴム(EPDM)等を挙げることができるが、これらの例に限定されない。
【0033】
ポリエン系重合体における炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子は活性を有し、水素
原子の引き抜きが容易である。
【0034】
ポリエーテル含有重合体(iv)としては、例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリブチ
レンオキシド(2,3又は1,2)及びポリスチレンオキシドなどが好適に用いられる。
【0035】
上記酸素吸収性樹脂組成物は、被酸化性樹脂(S)と遷移金属触媒(M)のみで構成することも可能であるが、他の熱可塑性樹脂を主成分として混合・分散して用いることが好ましい。混合・分散量を調整して用いることで、酸素吸収性樹脂(a)としての酸素吸収容量を調整でき、また酸素吸収後の物性低下の影響を少なくすることができる。他の熱可塑性樹脂に混合・分散して使用する場合、被酸化性樹脂(S)は、酸素吸収性樹脂全量に対して1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%の割合で存在するように調整するのが好ましい。その場合、被酸化性樹脂(S)を熱可塑性樹脂中に分散しやすくするために、エポキシ又は無水官能基等を被酸化性樹脂に導入することが好ましい。
【0036】
被酸化性樹脂(S)へのエポキシ又は無水官能基等の導入をポリエン系重合体の酸変性
を例として説明する。酸変性ポリエン系重合体は、炭素−炭素二重結合を有するポリエン
系重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーに不飽和カルボン酸又はその誘導体
を公知の手段でグラフト共重合させることにより製造されるが、前述したポリエンと不飽
和カルボン酸又はその誘導体をランダム共重合させることによって製造することもでき
る。
【0037】
本発明の目的に特に好適な酸変性ポリエン系重合体は、この重合体中に不飽和カルボン
酸又はその誘導体を0.01〜10モル%含有していることが好ましい。不飽和カルボン
酸又はその誘導体の含有量が上記の範囲にあると、酸変性ポリエン系重合体の他の樹脂(
マトリックス樹脂)への分散が良好となると共に、酸素の吸収も円滑に行われる。また、
末端に水酸基を有する水酸基変性ポリエン系重合体も良好に使用することができる。
【0038】
適切な酸素捕捉剤としての官能性被酸化性ポリジエンの具体例は、エポキシ官能化ポリ
ブタジエン(1,4及び/又は1,2)、無水マレイン酸グラフト化又は共重合体化ポリ
ブタジエン(1,4及び/又は1,2)、エポキシ官能化ポリイソプレン、及び無水マレ
イン酸グラフト化又は共重合体化ポリイソプレン、アミン、エポキシ又は無水官能性ポリ
プロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド(2,3又は1,2)及びポリスチレンオキ
シドなどである。
【0039】
酸素吸収性樹脂組成物において主成分となる他の熱可塑性樹脂とは、通常フィルム用途に用いられる一般的な熱可塑性樹脂が用いられる。特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)やポリアミド系樹脂がフィルムの強度を向上させやすく好適である。
【0040】
有用なエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物のエチレン含有率は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から27〜47モル%であることが好ましく、32〜44モル%であることがさらに好ましい。また、EVOHのケン化度は90%以上、好ましくは95モル%以上のものが望ましい。EVOHのエチレン含有量及びケン化度を上記範囲に保つことにより、本発明のフィルムの共押出性、フィルムの強度を良好なものとすることができる。
【0041】
有用な脂肪族ポリアミドホモポリマーとしては、ポリ(4−アミノ酪酸)(ナイロン4
)、ポリ(6−アミノヘキサン酸)(ナイロン6、ポリ(カプロラクタム)としても知ら
れる)、ポリ(7−アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8−アミノオクタン酸)
(ナイロン8)、ポリ(9−アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10−アミノデカ
ン酸)(ナイロン10)、ポリ(11−アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(
12−アミノドデカン酸)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイ
ロン6,6)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン6,10)、ポリ(ヘプタ
メチレンピメラミド)(ナイロン7,7)、ポリ(オクタメチレンスベラミド)(ナイロ
ン8,8)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン6,9)、ポリ(ノナメチレ
ンアゼラミド)(ナイロン9,9)、ポリ(デカメチレンアゼラミド)(ナイロン10,
9)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン4,6)、カプロラクタム/ヘキサ
メチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6,6/6)、ヘキサメチレンアジパミド/カ
プロラクタムコポリマー(ナイロン6/6,6)、トリメチレンアジパミド/ヘキサメチ
レンアゼライアミドコポリマー(ナイロントリメチル6,2/6,2)、ヘキサメチレン
アジパミド−ヘキサメチレン−アゼライアミドカプロラクタムコポリマー(ナイロン6,
6/6,9/6)、ポリ(テトラメチレンジアミン−コ−シュウ酸)(ナイロン4,2)
、n−ドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンのポリアミド(ナイロン6,12)、ドデ
カメチレンジアミンとn−ドデカン二酸のポリアミド(ナイロン12,12)、並びにそれらのブレンド及びコポリマー、及び本明細書中に特記されていない他のポリアミドなどである。
【0042】
上記のポリアミド系樹脂のうち、好適なポリアミドは、ポリカプロラクタム(一般にナ
イロン6とも呼ばれている)、及びポリヘキサメチレンアジパミド(一般にナイロン6,
6とも呼ばれている)、並びにこれらの混合物である。中でもポリカプロラクタムが最も
好適である。
【0043】
ポリアミド系樹脂は、酸素吸収性樹脂(a)のガスバリア性を向上させる目的でナノメータースケールの分散クレイをさらに含むことができる。好適なクレイは、天然又は合成層状ケイ酸塩、例えばモンモリロナイト、ヘクトライト、バーミキュライト、バイデル石、サポ
ナイト、ノントロナイト又は合成フルオロマイカなどで、適切な有機アンモニウム塩によって陽イオン交換されている。好適なクレイは、モンモリロナイト、ヘクトライトである。クレイは、1nm以上100nm以下の範囲の平均厚と、50nm以上500nm以下の範囲の平均長及び平均幅を有し、ポリアミド系樹脂中に10質量%以下、好ましくは2質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上6%質量以下の範囲の量で存在するのが好ましい。
【0044】
次に本発明のフィルムで使用する遷移金属系触媒(M)について説明する。遷移金属系
触媒(M)は、上記被酸化性樹脂(S)の酸化反応の触媒となるもので、遷移金属の有機
酸塩又は有機錯塩等が好適に使用される。用いる遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト
、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に銅、銀等の第I族金属:錫
、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン
等のVII族の金属成分を挙げることができる。これらの遷移金属系触媒の中でもコバルト
成分は、酸素吸収速度が大きく、特に好適なものである。
【0045】
遷移金属系触媒(M)は、上述した遷移金属の低価数の無機酸塩、有機酸塩、又は錯塩
の形で一般に使用される。無機酸塩としては、塩化物などのハライド、硫酸塩等のイオウ
のオキシ酸塩、硝酸塩などの窒素のオキシ酸塩、リン酸塩などのリンオキシ酸塩、ケイ酸
塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸
塩などが挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては
、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソ
ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサ
ン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデ
カン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラ
キン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、
アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられ
る。一方、遷移金属の錯体としては、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとの錯体が
使用され、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン
、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキ
サジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミト
イルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロ
ヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサン
ジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタ
ン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメ
タン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベン
ゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベ
ンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイル
アセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイル
アセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シ
クロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることができる。
【0046】
主成分として熱可塑性樹脂を含む場合の上記酸素吸収性樹脂組成物において、遷移金属系触媒(M)は、主成分として含まれる熱可塑性樹脂に対して、10ppm以上、好ましくは50ppm以上、200ppm以下、好ましくは100ppm以下の割合で含まれることが望ましい。熱可塑性樹に遷移金属触媒(M)を配合する方法としては、種々の手段を用いることができる。例えば、遷移金属触媒(M)を熱可塑性樹脂に単に乾式でブレンドすることもできるが、遷移金属触媒(M)が熱可塑性樹脂に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うために、遷移金属触媒(M)を有機溶媒に溶解し、この溶液と粉末或いは粒状の樹脂とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下に乾燥するのがよい。
【0047】
遷移金属系触媒(M)を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノー
ル等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル
、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘ
キサノン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒を用いる
ことができる。遷移金属系触媒(M)の濃度は溶媒に対して5〜90質量%となるような
濃度で用いるのがよい。
【0048】
被酸化性重合体成分及び遷移金属系触媒(M)の混合、並びにその後の保存は、酸素吸収性樹脂組成物の前段階での酸化が生じないように、非酸化性雰囲気中で行うのがよい。この目的に減圧下或いは窒素気流中での混合或いは乾燥が好ましい。この混合及び乾燥は、ベント式又は乾燥機付の押出機や射出機を用いて、成形工程の前段階で行うことができる。また、遷移金属系触媒を比較的高い濃度で含有する被酸化性重合体成分のマスターバッチを調製し、このマスターバッチを未配合の重合体と乾式ブレンドして、酸素吸収性樹脂組成物を調製することもできる。
【0049】
本発明で用いられる酸素吸収性樹脂は、場合により、一つ以上の従来の添加剤を含んで
いてもよく、その使用は当業者に周知である。そのような添加剤の使用は、組成物の処理
向上、並びに該組成物から形成される生成物や製品の改良のために望ましいであろう。そのような添加剤の例は、酸化及び熱安定剤、滑剤、離型剤、難燃剤、酸化抑制剤、染料、
顔料及び他の着色剤、紫外線安定剤、粒子及び繊維充填剤を含む有機又は無機充填剤、補
強剤、成核剤、可塑剤、並びに当該技術分野で公知のその他の従来の添加剤などである。
そのような添加剤は酸素吸収性樹脂全量の10質量%まで使用できる。
【0050】
酸素吸収性樹脂層(a)の厚みは、所望の酸素吸収能が得られるように適宜決定することができるが、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上、60μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。酸素吸収性樹脂層の厚みが10μm以上であれば、深絞り成形後も長期間の高酸素ガスバリア性の維持が可能であり、また40μm以下であれば十分な酸素吸収性を維持でき、かつ経済的にも好ましい。
【0051】
[環状ポリオレフィン樹脂層(b)]
本発明の複合フィルムには、複合フィルムの防湿性を向上する目的で環状ポリオレフィン層(b)を配する。環状ポリオレフィンとは、分子内に脂環式炭化水素基を有するポリマーである。環状ポリオレフィン層に使用する環状ポリオレフィンは、ガラス転移温度(以後Tgともいう)の下限が60℃以上、好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、上限は140℃以下、好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。
T g が6 0 ℃ 未満のC O P では、スクリューへの巻き付きやペレット同士の粘着等、押出加工性に問題が出てくる可能性が高く、常温でも気温が高い時には軟化してしまうため包装容器としての形状を保持できなくなり、また剛性のあるしっかりした包装体が得られなくなる。逆に8 0 ℃ を越えると押出温度を高くする必要があり、同時に共押出する耐熱性に劣る酸素吸収EV O H の熱劣化を引き起こすという問題があるとともに、深絞り成形等の後加工がし難くなるという問題がある。特にE V O H は高温押出すると分子間の架橋が進み、粘度が高くなることによるブツ等の問題が発生するため、押出温度、口金温度を2 4 0 ℃ 以下に抑えることが求められ、T g が8 0 ℃ 以下のC O P の使用は有効である。環状ポリオレフィンのTgを60℃以上とすることにより、フィルムの保管時に気温が高い場合でもフィルムの軟化がなく、高温でのフィルムの軟化によるフィルムを紙管に巻いた状態でもフィルムの軟化がなく、高温でのフィルムの軟化によるフィルムを紙管に巻いた状態での巻き絞まりを防止でき、また高温でのフィルムの軟化による包装体が軟化して包装体の形状が保てなくなることもない。また、環状ポリオレフィンのTgを140℃以下とす
ることにより、良好な深絞り成型性を付与することができ、フィルム製膜時に押出温度を
高く設定する必要がないため、共押出する他樹脂に不必要に熱を加えることがないため、熱劣化によるブツ、ゲル等を抑制することができる。
【0052】
環状ポリオレフィン層(b)の厚みは、下限は40μm以上であり、50μm以上が好ましく、60μm以上がさらに好ましい。また、上限は500μm以下であり、400μm以下が好ましく、350μm以下がさらに好ましい。環状ポリオレフィン層の厚みの下限を40μm以上とすることにより、十分な防湿性および成型性を得ることができ、また環状ポリオレフィン層の厚みの上限を500μm以下とすることにより深絞り成型が可能な複合フィルムとすることができる。
【0053】
前記環状ポリオレフィンとしては、シクロオレフィンコポリマー(COC)およびシクロオレフィンポリマー(COP)を使用することができる。ここで、シクロオレフィンコポリマー(COC)とは、ジシクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンの誘導体とα−オレフィンとを付加重合することによって得られる環状ポリオレフィンをいう。また、シクロオレフィンポリマー(COP)とは、環状オレフィンを開環重合することに得られる環状ポリオレフィンをいう。環状オレフィン単量体の含有率を調整することによりCOCのTgを制御できるという観点からはシクロオレフィンコポリマーを使用することが望ましいが、特に限定を加える主旨ではない。
【0054】
前記環状ポリオレフィンには、低密度ポリエチレン(LDPE)および/または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有させることでフィルムを適度に軟化させることが可能である。配合量が多すぎると、水蒸気バリア性が悪くなるため、配合量は多くて20%以下が好ましく、10%以下が更に好ましく、ブレンドせずに単体で使用することが最も好ましい。
【0055】
環状ポリオレフィン樹脂は、高温高湿度下での水蒸気バリア性に関して、高密度ポリエチレン(HD)やポリプロピレン(PP)等に比べても高い特徴を持っている。従って、熱水での高温殺菌処理を行っても、環状ポリオレフィン層があると、内容物に含まれる水分が酸素吸収性樹脂層まで到達するのを防止するため、酸素吸収性樹脂の酸化反応を遅らせ、吸収機能を失わないよう負荷を低減させている。また、高温殺菌処理後も、酸素吸収の持続期間を延長することが可能となる。
【0056】
環状ポリオレフィン樹脂は酸素吸収性樹脂層の内側もしくは両側に配す必要があり、コスト面から酸素吸収性樹脂層の内側のみに配すことが好ましい。
【0057】
にも記載したが、酸素吸収樹脂の外側に環状ポリオレフィン層を配す構成は加熱殺菌中や加熱殺菌後、環状ポリオレフィン層によって内容物の水分がパック品の外側へ透過していかない為、パック品内側の透湿係数の増大に伴い、酸素吸収樹脂の相対湿度が高くなってしまい、酸素吸収機能が比較的短時間で発揮しなくなるからである。
【0058】
[ヒートシール性樹脂層(c)]
本発明において、環状ポリオレフィン樹脂層(b)の内側にはヒートシール性樹脂層(c)が積層する。ヒートシール性樹脂層で用いられる樹脂は、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂であればいずれでもよく、被着体の材質を考慮して適宜決定される。ヒートシール可能な熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、エステル系樹脂との接着性を有するエチレン系樹脂、スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂との接着性を有するエチレン系樹脂などが挙げられ、シール強度、取り扱い易い等の観点からオレフィン系樹脂が好適に使用される。
【0059】
オレフィン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレ
ン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE)
、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共
重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン
−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(E
MA)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)
、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMA
A)等のエチレン系共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体の金属中和物、エチレン−
メタクリル酸共重合体の金属中和物(例えば、そのカルボキシル基のうちの少なくとも1
0モル%、好ましくは10〜60モル%がナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで中和され
ているもの);アイオノマー、ホモポリプロピレン、ブロック共重合又はランダム共重合
タイプのポリプロピレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチ
レン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−
ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、
エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体などが挙
げられる。
【0060】
また、スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレンの他、スチレンモノマーに対し
て少量のゴム分や他のビニル系単量体が共重合されているスチレン系共重合体等が挙げら
れる。他のビニル系単量体としては、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン
等のスチレン系モノマーや、アクリルニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル
、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。また、ゴム分の使用割合
は通常0.1〜20質量%、他のビニル系単量体の使用割合は通常0.1〜30質量%で
ある。スチレン系樹脂として好ましいものとしては、ポリスチレンや、ジエン系ゴムとス
チレンの共重合体であるハイインパクトポリスチレン(HIPS)が挙げられる。
【0061】
これらの樹脂は、単独で又は混合して使用することができる。また、ヒートシール性樹
脂層(c)は、必要に応じて異なる樹脂からなる2層以上で構成されていてもよい。
【0062】
中でも、本発明複合フィルムのシール層には、直鎖低密度ポリエチレン樹脂(LL)を用い、それに隣接して上記COPを配する構成とすることが好ましく、これはCOPはLLに比べるとシール性( ホットタック性: シール直後の熱い状態でのシール強度の出易さ、夾雑物シール性: 油等のシール材表面に異物が介在した状態でのシール性) が劣るためである。COPとの層間接着性が良好なLLをシール層とし、そこに隣接してCOPを配することに
よりシール性およびシール強度の良好な包装品を得ることができる。この時、シール層にL DPEを使用すると、COPとの層間強度が不十分となり破袋の可能性が出てくるため、好ましくない。逆に更に層間強度をアップしたい場合にはシール層にメタロセンPEを使用し、それに隣接してCOPを配することが有効である。
【0063】
ヒートシール性樹脂層の厚みは、10μm以上、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、100μm以下、好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。ヒートシール性樹脂層(c)の厚みが10μm以上であれば、シール強度の低下を抑えられ、内容物が洩れたり、フレーバー保持性が低下したりすることを防止することができ、また100μm以下であれば、剥離時に毛羽立ちや膜残りが発生し難くすることができ、良好な剥離外観が得られるとともに、経済的にも好ましい。また、ガスバリア性多層フィルム全体の厚みが200μm以下であれば、フィルム全体が硬くなりすぎてピンホールが発生したり、取り扱いが困難になったりすることもなく好ましい。
【0064】
シール層側にはポリエチレン系樹脂がくるがこれはシール性およびCOPとの層間接性を考慮したためである。ポリエチレン系樹脂の厚さは特に限定されないが、シール性を考慮し5μm以上と設定することが好ましい。また特に厚めに配する必要はないので、上限は50μm、より好ましくは30μm以下とすることが好適と考える。シール強度を考慮すると、ポリエチレン系樹脂/COP/ADと隣接する樹脂は酸素吸収EVOHよりもNy の方が好ましい。これは接着性樹脂はEVOH よりもNyの方が強固につきやすいためで、Nyを用いた方が層間強度は強くなりシール強度もアップすることになる。またここで用いるNyは特に限定されないが、6Nyの使用も可能ではあるが、6Nyの融点は224℃と高温なため、EVOHの架橋を防止すべく押出温度、口金温度を下げるため融点の低い6−66Ny がより好適に使用できる。
【0065】
またヒートシール性樹脂層(c)は、凝集破壊性を有するイージーピール層を含み、あ
るいはイージーピール層で構成されてもよい。ここで、凝集破壊性を有するとは、例えば
、本発明のガスバリア性多層フィルムを用いて深絞り包装体を作製し、該包装体を開封する際に、イージーピール層自身が破壊されて剥離し、破壊後のイージーピール層がイージーピ
ール層の上層側(底材側)及び下層側(蓋材側)の双方に残ることをいう。イージーピー
ル層を構成する樹脂は、被着体の外層を構成する樹脂層とヒートシール可能であり、かつ
イージーピール強度が1.96N/15mm幅以上11.8N/15mm幅であり、かつ
ガスバリア性フィルムの他層の層間剥離強度より小さい値をとるものであれば特に限定さ
れない。尚、イージーピール強度の測定方法は、シール基材と当該ガスバリア層フィルムのシール層が重なり合うようにして、140℃、3秒、3.1kg/cm2でヒートシールを行い、シール部が十分に冷えてから、15mm幅の試験片を切り取る。ヒートシール部を中央にして180度に開き、引張試験機に試験片の両端を保持し、引張速度200mm/minの一定速度で荷重をかけ、その剥離強度を測定する。
【0066】
イージーピール層は、例えば、種類の異なる次の樹脂A及び樹脂Bより構成することが
できる。すなわち、樹脂Aとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレ
ン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレ
ン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)
、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル共
重合体(EMA)及びこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を用
いることができる。特に樹脂Aとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を好
適に用いることができる。一方、樹脂Bとしては、ポリプロピレン(PP)又はポリブチ
レン(PB)を用いることができる。樹脂BのPPは、ランダムコポリマー、ホモポリマー、ブロックコポリマー等のいずれも使用でき、中でもランダムコポリマーを好適に用い
ることができる。
【0067】
樹脂Aと樹脂Bの含有率は、シール性及び開封性の観点から、イージーピール層全体の
質量に対して樹脂Aを40質量%以上、好ましくは50質量%以上とすることが望ましく
樹脂Aの上限を80質量%以下、好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは60質量
%以下とすることが望ましい。一方、樹脂Bはイージーピール層全体の質量に対して20
質量%以上、好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上とし、上限を
60質量%以下、好ましくは50質量%以下とすることが望ましい。樹脂Aの含有率を4
0質量%以上(すなわち、樹脂Bの含有率を60質量%以下)とすることにより、良好な
ヒートシール性を維持することができる。一方、樹脂Aの含有率を80質量%以下(すな
わち、樹脂Bの含有率を20質量%以上)とすることにより、適度なイージーピール強度
が得られ、良好な開封性が得られる。
【0068】
イージーピール層のイージーピール強度は、上述のように1.96N/15mm幅(2
00gf/15mm幅)以上11.8N/15mm幅(1200gf/15mm幅)以下
の範囲であり、かつガスアリア性フィルムの他層の層間剥離強度より小さい数値である。
好ましくは下限が2.94N/15mm幅以上、より好ましくは3.92N/15mm幅
以上、さらに好ましくは4N/15mm幅以上である。一方、イージーピール強度の上限
は、好ましくは9.8N/15mm幅以下、さらに好ましくは7.84N/15mm幅以
下である。イージーピール強度が1.96N/15mm幅(200gf/15mm幅)以
上あれば、使用時に破袋してしまう危険性もなく、また11.8N/15mm幅(120
0gf/15mm幅)以下であれば、包装体の良好な開封性を維持できる。
【0069】
イージーピール層を含む場合、イージーピール層の厚みは、製膜性及び剥離時の外観性
の点から3μm以上、好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、上限
は15μm以下、好ましくは12μm以下、さらに好ましくは10μm以下とすることが
望ましい。イージーピール層の厚みを3μm以上とすることにより、安定した製膜性が得
られる。一方、イージーピール層の厚みを15μm以下とすることにより、包装体の開封
時に毛羽立ちや膜残りの発生を抑えることができ、かつ良好な剥離外観が得られる。
【0070】
[外層又は中間層]
本発明にかかるガスバリア性多層フィルムの最外層には、熱可塑性樹脂を配する(熱可塑性樹脂を有してなる熱可塑性樹脂層を配する)ことが好ましい。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、従来の低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)又はLDPEとHDPEをブレンドしたものを使用することができる。ブレンド比率は所望の柔軟性を付与する目的で適宜決定することができ、例えば、LDPEとHDPEの配合比を質量比で40〜80:60〜20、好ましくは50〜80:50〜20、さらに好ましくは60〜80:40〜20とすることができる。高密度になるほど、剛性、引張強度、耐熱性が向上するが、衝撃強度、耐ストレスクラック性、引張強度、耐寒性、透明性が低下する。
そのほかにも、エチレン− α − オレフィン共重合体( 例、L L D P E 、V L D P E ) 、エチレン・プロピレン共重合体、アイオノマー樹脂、E VA 、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体( E M A A ) 樹脂、変性ポリオレフィン( 例えば、オレフィン類の単独重合体または共重合体と、マレイン酸やフマル酸等の不飽和カルボン酸、それらの酸無水物または金属塩などとの反応物) 、ポリプロピレン( P P ) 樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。PP樹脂を用いることで、パック品のフランジ部( 面でシールされた部分)のカールを抑制することができる。
【0071】
「非晶性ポリエステル樹脂」としては例えば、多価アルコール成分100モル%中に1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が5モル%以上含まれるポリエステル樹脂をいう。非晶化度を高める観点からは、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を10モル%以上、好ましくは12モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上含むことが望ましい。一方、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が多すぎると、フィルムの衝撃強度が低下してしまうため、上限は50モル%とすることが好ましく、47モル%以下とすることがより好ましく、45モル%以下とすることがさらに好ましい。
【0072】
本発明のフィルムでは、耐破れ性、衝撃強度、耐熱性などを考慮すれば、非晶性ポリエステル樹脂を構成するユニット100モル%中にエチレンテレフタレートユニットが50モル%以上、好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上となるように選択することが好ましい。したがって、多価カルボン酸成分100モル%中にテレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルから形成される成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中にエチレングリコール成分を50〜95モル%、好ましくは55〜90モル%、さらに好ましくは60〜88モル%含有させることが望ましい。
【0073】
上記多価アルコール成分を形成するための多価アルコール類としては、上述した1,4−シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールの他に、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物なども併用できる。
【0074】
また、多価カルボン酸成分を形成するための多価カルボン酸類としては、上述のテレフタル酸およびそのエステルの他に、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸などが利用可能である。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やテレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステルなどの誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸などや、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価カルボン酸を必要に応じて併用してもよい。
【0075】
この他、多価アルコール類、多価カルボン酸類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してもよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットが、カルボン酸成分であり、かつ、アルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量や、他の多価アルコール成分の量は、フィルムの全多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、各多価カルボン酸成分の量を計算する際も、フィルムの全多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%とする。
【0076】
例えば、ジオール成分が1,4−シクロヘキサンジメチルアルコール及びエチレングリコールからなり、ジカルボン酸の酸成分がテレフタル酸からなるポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)は、本発明の非晶性ポリエステル樹脂として好適に使用できる。
【0077】
非晶性ポリエステル樹脂層の厚みは特に限定されるものではないが、10〜50μmの範囲であることが好ましく、15〜40μmであることがより好ましく、20〜35μmであることがさらに好ましい。厚みが10μm未満であると、包装体のフランジ部にカールが発生するため見栄えが悪くなり、50μmを超えるとフィルムが硬くなり、深絞り成型性が悪くなる問題がある。
【0078】
また、本発明にかかるガスバリア性多層フィルムにおいては、水耐ピンホール性の点で、最外層および/または中間層が少なくとも1層のポリアミド樹脂層を有していることが好ましい。ポリアミド樹脂層を構成するポリアミド樹脂は、特に限定されないが、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、ジアミンとジカルボン酸を主成分(50モル%以上)とするものを用いることが好ましい。ポリアミド樹脂は、ポリアミド成分とその他の成分(例えば、ω−アミノ酸、ジアミンとジカルボン酸を主成分(50モル%以上)とするもの)との共重合体であってもよく、その場合、ポリアミド成分は80モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。また、ポリアミド樹脂はポリマーブレンドであってもよく、その場合、ポリアミド成分はポリマーブレンド全体の質量を基準(100質量%)として、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0079】
3員環以上のラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム
、ω−ラウロラクタム、α−ピロリドン等を挙げることができる。重合可能なω−アミノ
酸としては、例えば、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノヘプタン酸、ω−アミノノナン
酸、ω−アミノウンドデカン酸、ω−アミノドデカン酸等が挙げられる。ジアミンとして
は、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミ
ン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカ
メチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トチメチルヘキサメチレンジ
アミン、2,4,4−トチメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン、1,3/1
,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、ビス(
4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス−(4’−アミノシクロヘキシル)プ
ロパン等の脂環族ジアミン、およびメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等
の芳香族ジアミンが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン
酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ノナンジオン酸、デカンジオ
ン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテ
レフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタ
ル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,2−体、1,3−体、1,4−体、1,5−体、1
,6−体、1,7−体、1,8−体、2,3−体、2,6−体、2,7−体)、金属−イ
ソフタルスルホン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0080】
ポリアミド樹脂層では、上記3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、ジアミ
ンとジカルボン酸から誘導されるポリアミドのホモポリマーまたはコポリマーを各々単独
で若しくは混合物として用いることができる。具体的に例示すると、例えば、4ナイロン
、6ナイロン、7ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、46ナイロン、66ナイロン
、69ナイロン、610ナイロン、611ナイロン、6Tナイロン、6Iナイロン、MX
D6ナイロン、6−66ナイロン、6−610ナイロン、6−611ナイロン、6−12
ナイロン、6−612ナイロン、6−6Tナイロン、6−6Iナイロン、6−66−61
0ナイロン、6−66−12ナイロン、6−66−612ナイロン、66−6Tナイロン
、66−6Iナイロン、6T−6Iナイロン、66−6T−6Iナイロン等が挙げられる。これらのポリアミドは、ホモポリマーであっても、コポリマーであってもよく、これらの
樹脂の混合物であってもよい。
【0081】
ポリアミド樹脂層は、水分保持および耐ピンホール性の観点からナイロン系樹脂を用いることが好ましく、中でも6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが特に好ましい。また、ポリアミド層は2層以上設けることもでき、耐ピンホール性が1層のみの場合より向上する。その場合、各層が異なる種類のナイロン系樹脂で形成されていてもよい。
【0082】
ポリアミド樹脂層の厚みは、下限10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。また、上限は200μm以下が好ましく、170μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。ポリアミド樹脂層の厚みの下限を10μm以上とすることにより吸湿による良好な水分保持および良好な耐ピンホール性が得られ、また上限を200μm以下とすることにより深絞り成形性を良好に維持することができる。
【0083】
上記最外層にポリオレフィン樹脂が配される場合、当該ポリオレフィン樹脂としては、例えば、従来の低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)又はLDPEとHDPEをブレンドしたものを使用することができる。ブレンド比率は所望の柔軟性を付与する目的で適宜決定することができ、例えば、LDPEとHDPEの配合比を質量比で40〜80:60〜20、好ましくは50〜80:50〜20、さらに好ましくは60〜80:40〜20とすることができる。高密度になるほど、剛性、引張強度、耐熱性が向上するが、衝撃強度、耐ストレスクラック性、引張強度、耐寒性、透明性が低下する。
そのほかにも、エチレン− α − オレフィン共重合体( 例、L L D P E 、V L D P E ) 、エチレン・プロピレン共重合体、アイオノマー樹脂、E VA 、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体( E M A A ) 樹脂、変性ポリオレフィン( 例えば、オレフィン類の単独重合体または共重合体と、マレイン酸やフマル酸等の不飽和カルボン酸、それらの酸無水物または金属塩などとの反応物) 、ポリプロピレン( P P ) 樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。PP樹脂を用いることで、パック品のフランジ部(面でシールされた部分)のカールを抑制することができる。
【0084】
ポリオレフィン樹脂を配して層とした場合の当該ポリオレフィン樹脂層の厚みは特に限定されるものではないが、10〜150μmの範囲であることが好ましく20〜100μmであることがより好ましく、30〜70μmであることがさらに好ましい。厚みが10μm未満であると、PP樹脂の場合、カール性が低下する虞があり、PE樹脂の場合耐寒性が劣る虞があり、150μmを超えると、深絞り成形性が悪くなる虞がある。
【0085】
上記最外層に熱可塑性ポリエステル樹脂が配される場合、当該熱可塑性ポリエステル樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。「非晶性ポリエステル樹脂」としてたとえば、多価アルコール成分100モル%中に1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が5モル%以上含まれるポリエステル樹脂をいう。非晶化度を高める観点からは、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を10モル%以上、好ましくは12モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上含むことが望ましい。一方、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が多すぎると、フィルムの衝撃強度が低下してしまうため、上限は50モル%とすることが好ましく、47モル%以下とすることがより好ましく、45モル%以下とすることがさらに好ましい。
【0086】
本発明のガスバリア性多層フィルムでは、耐破れ性、衝撃強度、耐熱性などを考慮すれば、非晶性ポリエステル樹脂を構成するユニット100モル%中にエチレンテレフタレートユニットが50モル%以上、好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上となるように選択することが好ましい。したがって、多価カルボン酸成分100モル%中にテレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルから形成される成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中にエチレングリコール成分を50〜95モル%、好ましくは55〜90モル%、さらに好ましくは60〜88モル%含有させることが望ましい。
【0087】
上記多価アルコール成分を形成するための多価アルコール類としては、上述した1,4−シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールの他に、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物なども併用できる。
【0088】
また、多価カルボン酸成分を形成するための多価カルボン酸類としては、上述のテレフタル酸およびそのエステルの他に、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸などが利用可能である。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やテレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステルなどの誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸などや、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価カルボン酸を必要に応じて併用してもよい。
【0089】
この他、多価アルコール類、多価カルボン酸類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してもよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットが、カルボン酸成分であり、かつ、アルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量や、他の多価アルコール成分の量は、フィルムの全多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、各多価カルボン酸成分の量を計算する際も、フィルムの全多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%とする。
【0090】
例えば、ジオール成分が1,4−シクロヘキサンジメチルアルコール及びエチレングリコールからなり、ジカルボン酸の酸成分がテレフタル酸からなるポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)は、本発明の非晶性ポリエステル樹脂として好適に使用できる。
【0091】
非晶性ポリエステル樹脂層の厚みは特に限定されるものではないが、10〜50μmの範囲であることが好ましく、15〜40μmであることがより好ましく、20〜35μmであることがさらに好ましい。厚みが10μm未満であると、包装体のフランジ部にカールが発生するため見栄えが悪くなり、50μmを超えるとフィルムが硬くなり、深絞り成型性が悪くなる問題がある。
【0092】
上記最外層にエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物が配される場合、20℃・100%RHで平衡吸水率3%以上の吸湿性を有していれば、当該エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物の詳細については、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物のエチレン含有率が、製膜安定性の観点から32モル%以上、好ましくは38モル%以上であり、47モル%以下、好ましくは44モル%以下であるのものを用いることができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物層を配した場合の、当該けん化物層の厚みについては、特に限定されるものではなく、例えば5〜30μmとすることができる。5μm以上であれば、酸素バリア性の向上が期待でき、30μm以上になると成形性が低下するため、好ましくない。また、EVOH はコロナ処理をしなくてもドライラミネート適性が良好なため、他基材との強固な接着を可能にする。
【0093】
耐熱性を要求される場合には、最外層として、ポリプロピレン(PP)樹脂、共重合ポリエステル(Co−PET) 樹脂、脂肪族ナイロン、芳香族ナイロン等を使用することが好ましい。好ましいCo−PETの例としては、イソフタル酸またはシクロヘキサンジメタノールをコモノマーとして含有し、IV 値が0 .7〜 0 . 8程度のものが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
最外層として、LLDPE、VLDPE、及びCo−PETを用いると、製膜性、透明性、耐ボイル性、突き刺し強度などに優れた熱収縮性多層フィルムを得ることができるので好ましい。また、拘束幾何触媒を用いて得られたエチレン− 1 − オクテン共重合体、好ましくはエチレン− 1 − オクテン共重合体を最外層及び/ または最内層、特に最内層に配置すると、滑り性が良好であり、スリップ剤(滑剤) を添加しなくてもよいか、あるいは添加量を少なくすることができる。その結果、透明性の低下を抑制することができる。
【0095】
[接着性樹脂層]
本発明のガスバリア性フィルムは、共押出法で積層フィルムを製膜する場合、各樹脂層間に必要により接着性樹脂層を介在させることもできる。このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル(−CO−)基を主鎖又は側鎖に、1〜700meq/100g樹脂、特に10〜500meq/100g樹脂の濃度で含有する熱可塑性樹脂が挙げられる。接着性樹脂の適当な例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフォン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフイン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等の1種又は2種以上の組み合わせた樹脂が挙げられる。
【0096】
接着性樹脂層を設ける場合、接着性樹脂層の厚みは、作業性、経済性、取り扱い性の観点から5μm以上、好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、また上限は特に制限はないが、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。接着層の厚みが5μm以上であれば、層間剥離強度の向上させることができる。また接着層が厚すぎると、底材の総厚みが厚くなってしまうほか、製造コストも嵩むため上限は25μm以下であることが望ましい。
【0097】
本発明のガスバリア性フィルムは、必要に応じて印刷層を設けることができる。印刷層の厚みは特に限定はなく、0.5μm以上10μm以下、好ましくは1μm以上5μm以下の範囲で形成することができる。印刷層は、絵柄、文字等を表す層には限定されず、メジウム又は樹脂のみ(ビヒクル)よりなる無色透明の層であってもよい。また、メジウム又は樹脂のみ(ビヒクル)よりなる無色透明の層と、絵柄、文字等を表す層の二層よりなる層とすることもでき、必要に応じて帯電防止や紫外線吸収、紫外線遮蔽などの機能を有する層を有していてもよい。
【0098】
印刷層の形成は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等、公知の方法で行うことができるが、速乾性のある揮発乾燥型のインキを使用でき、巻取式輪転印刷機で高速印刷ができるなどの観点から、グラビア印刷により形成するのが好ましい。好ましい印刷法を例示すると、底材及び蓋材の内層及び中間層を共押出法でそれぞれ作製した後に、予め作製しておいた外層上にグラビア印刷により印刷し、次いでドライラミネート法により印刷層と中間層とが対向するようにラミネートすることにより(裏印刷)、印刷層を有する積層フィルムを作製することができ、外観に優れた底材又は蓋材が得られる。ガスパック用蓋材として用いる場合、共押出フィルム単体では一般に耐熱性の点でシールすることが難しく、また剥離を安定させるために二軸延伸フィルムと貼り合わせる必要がある。二軸延伸フィルムとしては延伸ナイロンフィルム( 以下、「ONy 」という。) 、延伸ポリプロピレンフィルム( 以下、「OPP」という。) 、ポリエチレンテレフタレートフィルム( 以下、「PET 」という。) が挙げられるが特に耐熱性、印刷ピッチ安定性の点からPETフィルム及びONyフィルムを貼り合わせたものが好ましい。特に印刷ピッチ精度を重視する場合にはPET を、パック品のボイル後の蓋材の張りを重視する場合にはON y を選択することが好ましい。また、ガスパック深絞り用底材としてはP P 、無定型PE T 、ポリカーボネート( 以下、「PC 」という。) 、ポリスチレン( 以下、「PS 」という。) 、高耐衝撃性ポリスチレン( 以下、「H I P S 」という。) 等を貼り合わせて用いることも可能である。
【0099】
本発明のガスバリア性多層フィルムは、必要に応じて酸素吸収性樹脂層の外側に耐ピンホール性樹脂層を設けることができる。これらの厚みは特に限定はなく、5μm以上40μm以下、好ましくは10μm以上30μm以下の範囲で形成することができる。耐湿性樹脂層としては特に二軸延伸ポリプロピレンフィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられ、耐ピンホール性樹脂層としては特に二軸延伸ポリカプロアミド(NY6)フィルムが好ましく用いられる。これらの樹脂層は、通常ドライラミや押出ラミで積層することができる。また、PETやPP、NYを共押し法で積層することもできる。
【0100】
<ガスバリア性多層フィルムの製造方法>
本発明のガスバリア性多層フィルムは、酸素吸収性樹脂層(a)、環状ポリオレフィン樹脂層(b)は別々に製膜し、その後、ドライラミネート法や押出ラミネート法などを使って貼り合わせることができる。フィルム製膜中の酸素吸収性樹脂の無駄な酸化を防止でき、かつフィルム製膜コストを低減する観点からは、共押出法で作製することが好ましい。接着性樹脂層や他の樹脂層を設ける場合も同様に、共押出法で作製することが好ましい。
【0101】
多層フィルムを共押出法で作製する場合、例えば樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いる以外は上記と同様にして押し出し成形を行えばよい。更に、多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができ、また、予め形成されたフィルムのドライラミネーションによって多層フィルムあるいはシートを製造することもできる。
【0102】
[包装体]
[深絞り包装用底材及び深絞り包装体]
本発明のガスバリア性多層フィルムは、深絞り包装機を用いて内容物に対応した大きさ及び形状を有する深絞り包装体に成形することができる。特に本発明のフィルムを包装用の底材として用いると、光沢・透明性・耐ピンホール性に優れた深絞り包装体を得ることができる。また、本発明の深絞り包装体は、この底材と蓋材とをヒートシール等の接着手段により接着させることによって作製することができる。
【0103】
具体的には、例えば、本発明のフィルムを深絞り成形型で所望の形状及び大きさに成形して底材とした後(フィルム供給工程及びフィルム成形工程)、その中にスライスハム等、内容物を充填し(内容物充填工程)、さらにその上から蓋材フィルムでシールして(蓋材フィルム供給工程及びシール工程)、真空包装し(真空包装工程)、冷却し(冷却工程)、カットすることにより(切断工程)、深絞り包装体を作製することができる。いられる。
なお、本発明の深絞り包装体は、底材あるいは蓋材の一方を本発明にかかるガスバリア性多層フィルムで形成し、他方を本発明以外のフィルムで形成して、構成してもよい。例えば、蓋材を構成する本発明以外のフィルムとしては、延伸ポリプロピレン樹脂層と透明蒸着ポリエチレンテレフタレート系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)層をラミネートしたものや、延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂と共押出フィルム(EVOHとNyを含み、LLDPEをシール層としたフィルム)とをラミネートしたものを挙げることができる。
【0104】
また、本発明の複合フィルムの外層側にさらにPETフィルムをラミネートして蓋材とすることもできる。この場合、印刷が必要なときに、印刷ピッチが安定する(熱固定されたPETフィルムは伸びない)、裏印刷ができることで食品等に印刷面が接触しない、包装機のシール熱板への耐熱性が付与できる、等の利点がある。
【0105】
本発明のガスバリア性包装体は、前述したガスバリア性多層フィルムを用いる点を除けば、それ自体公知の方法で製造が可能である。例えば、フィルム、シート或いはチューブの成形は、各層を構成する樹脂を押出機で溶融混練した後、T−ダイ、サーキュラーダイ(リングダイ)等を通して所定の形状に押出すことにより行われる。
【0106】
フィルム等の包装材は、種々の形態の包装袋として用いることができ、その製袋は、それ自体公知の製袋法で行うことができ、三方或いは四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋などの軟包装用途が挙げられるが、この例に限定されない。
【0107】
本発明の包装体は、酸素による内容物の香味低下を防止しうる包装体として有用である。充填できる内容物としては、飲料ではワイン、フルーツジュース等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品等、その他では医薬品、化粧品、ガソリン等、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品などが挙げられるが、これらの例に限定されない。
【0108】
<酸素吸収性樹脂>
32mol%のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物ペレットとステアリン酸コバルトの95:5混合物を窒素雰囲気下で二軸押出機で押出した。押出されたストランドを水浴で急冷し、次いでペレット化・乾燥し、コバルトマスターバッチとした。32mol%のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物ペレットを窒素雰囲気下二軸押出機で押し出しながら、ポリブタジエン(エポキシ官能化ポリブタジエン−Elf −Atochem Poly BD 600/Poly BD 605E)を重量比5%となるように加えた。押出されたストランドを水浴で急冷し、次いでペレット化・乾燥し、酸素吸収性樹脂ペレットとした。
【0109】
<複合フィルムの作製>
実施例1〜8及び比較例1〜7として、以下の構成及び厚みを有する深絞り包装用フィルムを共押出法により作製した。
なお、実施例及び比較例で各層として使用されている樹脂は以下の通りである。
【0110】
外層(熱可塑性樹脂層)
ポリアミド系樹脂=三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバミッド(6− NY)
ポリエステル系樹脂=イーストマンケミカル社製 PETG6763
ポリエチレン系樹脂=日本ポリエチレン社製ノバテック(LDPE、LLDPE、HD PE、EVA)、
ポリプロピレン系樹脂=日本ポリポロピレン社製ノバテックPP、
【0111】
中間層
接着樹脂層=「アドマー(登録商標)NF556」(三井化学社製)、
ポリアミド樹脂層 =「NOVAMID(登録商標)」(6−66共重合ナイロン(66ナイロン含有率15%))(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
【0112】
酸素吸収樹脂層
前記酸素吸収性樹脂ペレットにコバルトマスターバッチをコバルトとして100ppm含有するように混合した混合樹脂
【0113】
環状ポリオレフィン樹脂層
COC層「 TOPAS 8007(登録商標)」( ポリプラスチックス社製)
【0114】
ヒートシール性樹脂層
ヒートシール性樹脂層A:EVA+PB−1ブレンド品 三菱化学社製 ノバテック
(登録商標)EVA+サンアロマー社製 バセルポリブテン(PB−1)を60:40で
ブレンド
【実施例】
【0115】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものでない。
【0116】
(実施例1)各層の構成
ポリアミド樹脂層(40μm)/酸素吸収性樹脂層(30μm)/接着性樹脂層(20μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(103μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0117】
(実施例2)各層の構成
ポリアミド樹脂層(40μm)/酸素吸収性樹脂層(20μm)/接着性樹脂層(20μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(113μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0118】
(実施例3)各層の構成
ポリアミド樹脂層(40μm)/酸素吸収性樹脂層(20μm)/接着性樹脂層(20μm)/環状ポリオレフィン樹脂とLLDPEを80:20でブレンドした層(113μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0119】
(実施例4)各層の構成
ポリアミド樹脂層(40μm)/酸素吸収性樹脂層(30μm)/接着性樹脂層(70μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(53μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0120】
(実施例5)各層の構成
ポリエステル系樹脂層(PETG層)(30μm)/接着性樹脂層(5μm)/ポリアミド樹脂層(30μm)/酸素吸収性樹脂層(30μm)/接着性樹脂層(5μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(93μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0121】
(実施例6)各層の構成
ポリエチレン系樹脂層(PE層)(50μm)/接着性樹脂層(10μm)/ポリアミド樹脂層(30μm)/酸素吸収性樹脂層(30μm)/接着性樹脂層(10μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(63μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0122】
(実施例7)各層の構成
酸素吸収性樹脂層(30μm)/ポリアミド樹脂層(10μm)/接着性樹脂層(5μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(50μm)/ヒートシール性樹脂層(5μm)[総厚み100μm]
【0123】
(実施例8)各層の構成
ポリプロピレン系樹脂層(50μm)/接着性樹脂層(10μm)/ポリアミド樹脂層(30μm)/酸素吸収性樹脂層(30μm)/接着性樹脂層(10μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(63μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0124】
(実施例9)各層の構成
酸素吸収性樹脂層(30μm)/接着性樹脂層(20μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(103μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み160μm]
【0125】
(実施例10)各層の構成
酸素吸収性樹脂として、「クインティアEVシリーズ(登録商標)EV3210」=(エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、エチレン含量32モル%タイプ)(日本ゼオン(株)社製)を使用した以外は実施例1と同構成。
【0126】
(比較例1)各層の構成
ポリアミド樹脂層(40μm)/酸素吸収性樹脂層(10μm)/接着性樹脂層(20μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(133μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0127】
(比較例2)各層の構成
ポリアミド樹脂層(40μm)/酸素吸収性樹脂層(30μm)/接着性樹脂層(70μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(33μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0128】
(比較例3)各層の構成
ポリアミド樹脂層(60μm)/酸素吸収性樹脂層(30μm)/EVOH樹脂層(10μm)/接着性樹脂層(20μm)/直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂層(73μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0129】
(比較例4)各層の構成
ポリアミド樹脂層(40μm)/酸素吸収性樹脂層(30μm)/接着性樹脂層(20μm)/高密度ポリエチレン樹脂層(103μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0130】
(比較例5)各層の構成
ポリアミド樹脂層(40μm)/酸素吸収性樹脂層(30μm)/接着性樹脂層(20μm)/ポリプロピレン樹脂層(103μm)/ヒートシール性樹脂層(7μm)[総厚み200μm]
【0131】
(参考例1)各層の構成
実施例1で、深絞り量を40mmとする。
【0132】
[評価方法]
<酸素バリア性試験>
(試験1.ロイコメチレンブルー試験)
上記実施例1〜9、比較例1および2、参考例1のフィルムを、深絞り包装機(FV−6300、大森機械工業(株)製)を使用し、成形加熱温度90℃で直径95mm、絞り深さを10mm、30mmの2種類の成形品(容器)にした(成形加熱時間は3秒間、成形時間1.8秒間、真空時間2秒間)。得られた成形品(容器)に酸素が進入すると内容物が白色から青色へと変色する特殊溶液(ロイコメチレンブルー溶液)を充填し、蓋にアルミフィルム(アルミニウム箔30μm/PE50μm)を用いて真空包装機にて容器内を真空にして完全密封シールし、評価サンプルを作成した。評価サンプルへのロイコメチレンブルー溶液の充填量は、絞り深さ10mmで70cc、30mmで210ccである。
その後30℃、80%RHの条件下に保存し、4週間後に前記ロイコメチレンブルー溶液の変色程度を観察した(未高温殺菌処理)。また、特殊溶液(ロイコメチレンブルー溶液)を充填後、95℃30分の高温殺菌処理を行い、30℃、80%RHの条件下に保存し、4週間後に前記ロイコメチレンブルー溶液の変色程度を観察した(高温殺菌処理済み)。評価方法は以下の通り、(1)目視で判断する共に(2)透過率のピークから評価した。
【0133】
尚、前記試験は180日間で行う試験を、4週間で行うことを想定した促進試験である。
つまり、温度についてはアレニウスの式

K;反応速度 A;反応定数 e ;自然対数の底
E;見かけの活性化エネルギ R;ガス定数 T;絶対温度
を適用した。
また、湿度については、絶対湿度に比例して劣化が促進すると考え、
23℃50%RH 20g×0.5=10g
30℃80%RH 30.4g×0.8=24.32g
24.32g÷10=2.432倍
温度と湿度の両方の促進性を考えると、温度は2倍、湿度は2.432倍となり
これを掛け合わせると 2 × 2.432 =4.864倍
すなわち、30℃80%RHで4週間試験したものは、常温(20度60%)の21週間に相当するものと考えられるが、実際に促進試験と常温での放置試験の両方を行ってその相関性と促進性を把握し、常温で25週以上(180日間)に相当することを確認した。

(1) 目視評価
○:メチレンブルー溶液がわずかに青色に変化又は変色なし、
△:メチレンブルー溶液が若干青色に変化
×:メチレンブルー溶液が青色に変化
(2) 透過率のピークでの評価
SHIMAZU UV−2450分光光度計を用いて吸収スペクトルを測定し、ロイコメチレンブルーの固有波長である665nmにおける透過率のピークから評価した。尚、ロコメチレンブルーの固有波長での透過率は、白色(酸素の容器への進入が少ないか又は無い状態を示す)である場合には値が高く、青色(酸素の容器への進入がある状態)である場合には値は低く評価される。

(分光光度測定結果−高温殺菌処理済み)

【0134】
(試験2.酸素透過率測定)
上記フィルム(深絞り成形前)のヒートシール層を内側として周囲をヒートシールして内側に窒素を約300ml入れた縦30cm、横20cmの袋を5個作った。この袋を23℃50%RHの環境下で保存した。180日目に5つの袋を開封して、フィルムの酸素透過率をモダンコントロール社製のOXY−TRAN100型酸素透過率測定装置を使用して23℃50%RHの条件下で測定し、5つの平均を求めて180日後の酸素透過率とした。なお、ガスバリア性樹脂(エチレン含有量38モル%タイプ)10μmの厚みの酸素透過率は23℃50%RH条件下で0.16fm/s・Paであり、180日間の空気中標準状態(23℃50%RH)での酸素透過量は0.61fm/s・Paであった。
【0135】
<臭気評価>
(試験3.官能試験)
上記フィルムを深絞り包装機(FV−6300、大森機械工業(株)製)を使用し、成形加熱温度90℃で口径95mmφ、絞り深さ10、30mmの2種類を成形した(成形加熱時間は3秒間、成形時間1.8秒間、真空時間2秒間)。得られた成形品に5ccの水を含ませた脱紙綿をいれ、蓋材にアルミフィルムで完全に密封シールした。その後23℃、50%RHの条件下で14日間放置した。その後、パネリスト5人がパック品のヘッドスペースガスの臭気を官能評価した。
○:ほとんど不快な臭気がない
△:少し不快な臭気がする
×:激しく不快な臭気がする
【0136】
評価結果を表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
表1より、本発明の範囲のガスバリア性多層フィルムは、深絞り成形後も高い酸素ガスバリア性を長期間、安定して持続でき、また包装体を作製した場合には良好なガスバリア性能を長期間持続でき、かつ良好な成形性、耐ピンホール性を保持したフィルムを得られた(実施例1〜9)。これに対し、環状ポリオレフィン樹脂層が薄い場合(比較例2)は、深絞り成形後不快な臭気が発生してしまい、加熱殺菌後の安定したバリア性が得られなかった。また、酸素吸収樹脂層が薄い場合(比較例1)は、加熱殺菌前の時点で良好な酸素バリア性が得られなかった。酸素吸収樹脂層の内側にガスバリア性の高いEVOH樹脂を配した場合(比較例3)は、加熱殺菌中にEVOH樹脂のガスバリア性が低下してしまうため、加熱殺菌後は青く変色し、安定したバリア性が得られなかった。環状ポリオレフィン樹脂の代わりに高密度ポリエチレンやポリプロピレン樹脂を配した場合(比較例4、5)は、加熱殺菌処理時の水蒸気バリア性に欠けており、加熱殺菌後の安定したバリア性が得られなかった。
【0139】
深絞り量40mmの場合(参考例1)、成形後の最薄コーナー部からの酸素透過が見られ酸素バリア性に欠けた。これより、本発明によれば熱水又は水蒸気による加熱殺菌後でも、酸素の透過量をほぼゼロに抑制し、また、包装材を高温、高湿度下に保存しても長期間に亘って高い酸素ガスバリア性を持続でき、かつ酸素吸収性樹脂が酸素を吸収した際に発生し得る臭気が内容物側へ移行することを抑制した透明性、成形性、耐ピンホール性、成形性、剛性に優れたガスバリア性多層フィルム及び包装体を提供できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層からなる多層フィルムであって、酸素吸収性樹脂層(a)、その内側に環状ポリオレフィン層(b)、最内層にヒートシール性樹脂(c)有することを特徴とするガスバリア性フィルムであり、23℃・50%RHで0.01fm/s・Pa(1ml/m2・day・MPa)以下の酸素透過率を少なくとも180日間持続するガスバリア性多層フィルム。
【請求項2】
酸素吸収性樹脂(a)がエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物又はポリアミド系樹脂を主成分として含み、さらに被酸化性樹脂と遷移金属系触媒を含む組成物である請求項1に記載のガスバリア性多層フィルム。
【請求項3】
前記環状ポリオレフィン層(b)のガラス転移温度( T g ) が6 0 ℃ 〜 14 0 ℃ 以下であり、その厚みが3 0 μ m 以上である請求項1または2のいずれかに記載のガスバリア性多層フィルム。
【請求項4】
前記多層フィルムに、さらに少なくとも1層のポリアミド層を有する請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性多層フィルム。
【請求項5】
前記多層フィルムに、さらに少なくとも1層の接着樹脂層を有する請求項1〜4のいずれか に記載のガスバリア性多層フィルム。
【請求項6】
前記多層フィルムに、さらに少なくとも1層のポリオレフィン層を有する請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性多層フィルム。
【請求項7】
前記ヒートシール樹脂層が、イージーピール強度が25℃で0.8N/15mm幅以上11.8N/15mm幅以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリア性多層フィルム。
【請求項8】
酸素吸収性樹脂層(a)の厚みが15μm以上50μm以下であり、かつ環状ポリオレフィン樹脂層(b)の厚みが40μm以上100μm以下である請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性多層フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性多層フィルムにより形成された深絞り包装体用底材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−869(P2011−869A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148105(P2009−148105)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】