説明

ガスバリア性成形体、塗液および塗液を用いたガスバリア性成形体の製造方法

【課題】基材とガスバリア層との剥離強度が高く、ガスバリア性に優れるガスバリア性成形体、およびレトルト処理を行わず、簡便な工程で行うことが可能なガスバリア性成形体の製造方法、並びに該製造方法に用いる塗液を提供すること。
【解決手段】基材(X)と、基材(X)上に形成されたガスバリア層(Y)とを有する成形体であり、該ガスバリア層(Y)が、多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とから形成された層であり、該基材(X)とガスバリア層(Y)との剥離強度が2[N/cm]以上であり、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した成形体の酸素透過度が、50×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下であるガスバリア性成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性成形体、塗液および塗液を用いたガスバリア性成形体の製造方法に関する。詳しくは基材とガスバリア層との剥離強度が高く、ガスバリア性にも優れるガスバリア性成形体、ガスバリア性成形体を製造する方法および該製造方法に用いる塗液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスバリア性重合体としてポリ(メタ)アクリル酸やポリビニルアルコールに代表される分子内に親水性の高い高水素結合性基を含有する重合体が用いられてきた。しかしながら、これら重合体からなるフィルムは、乾燥条件下においては、非常に優れた酸素等のガスバリア性を有する一方で、高湿度条件下においては、その親水性に起因して酸素等のガスバリア性が大きく低下するという問題やフィルムの湿度や熱水に対する耐性が劣るという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するために、例えば、支持体フィルム上にポリカルボン酸系重合体層と多価金属化合物含有層とを隣接させて積層し、層間反応により、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩とすることが開示されており(例えば、特許文献1参照)、このようにして得られるガスバリア性フィルムは、高湿度下でも高い酸素ガスバリア性を有することが開示されている。
【0004】
しかし、ガスバリア性を有する層が複数の層(ポリカルボン酸系重合体層および多価金属化合物含有層)によって形成されるため、製造工程が増加し、コスト高になる傾向が存在した。
【0005】
また、ガスバリア層中にカルボキシル基と、エステル結合と、イオン架橋とを有するガスバリア性フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、該ガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性を発現するためには、多価金属イオンが存在する熱水中に浸漬する工程(以下「レトルト処理」とも記す。)が必要であり、製造工程が増加し、コスト高になる傾向が存在した。
【0006】
また、このようなレトルト処理を行うと、ガスバリア性には優れる傾向があるが、基材とガスバリア層との剥離強度が低下するという課題が存在した。
ガスバリア層と基材とが剥離した場合には、ガスバリア性フィルムの美観を損ねるだけではなく、ガスバリア性も低下してしまうため、基材とガスバリア層との剥離強度が高いガスバリア性フィルムが求められていた。
【特許文献1】国際公開第03/091317号パンフレット
【特許文献2】特開平10−237180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、基材とガスバリア層との剥離強度が高く、ガスバリア性にも優れるガスバリア性成形体、およびレトルト処理を行わず、簡便な工程で行うことが可能なガスバリア性成形体の製造方法、並びに該製造方法に用いる塗液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ガスバリア性フィルムの製造の際にレトルト処理を行った場合には、製造工程が増加するだけでなく、得られるガスバリア性フィルムが、基材とガスバリア層との剥離強度に劣ることを見いだし本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明のガスバリア性成形体は、
基材(X)と、
基材(X)上に形成されたガスバリア層(Y)とを有する成形体であり、
該ガスバリア層(Y)が、
多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とから形成された層であり、
該基材(X)とガスバリア層(Y)との剥離強度が2[N/cm]以上であり、
温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した成形体の酸素透過度が、50×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下である。
【0010】
前記ポリカルボン酸系重合体(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸からなる群から選択される少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸(a)から誘導される構成単位を含む(共)重合体であることが好ましい。
【0011】
前記架橋剤(B)の有するカルボキシル基と反応する基が、メチロール基、エポキシ基、イソシアネート基、イミド基または水酸基であることが好ましい。
前記架橋剤(B)の有するカルボキシル基と反応する基が、水酸基であることがより好ましい。
【0012】
(B)の有するカルボキシル基と反応する基が、水酸基である場合には前記ガスバリア層(Y)の赤外線吸収スペクトルを測定した際の、
波数1560±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1560)と波数1700±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1700)とのピーク比(1)(A1560/A1700)が0.2以上であり、波数1150±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1150)と波数1220±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1220)とのピーク比(2)(A1150/A1220)が1.0以上であることが好ましい。
【0013】
前記多価金属イオン(C)がベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉄、およびジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属のイオンであることが好ましい。
【0014】
前記多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)が、多価金属イオン(C)および一価金属イオンによって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)であってもよい。
【0015】
前記ガスバリア層(Y)が、
多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)と、
ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)とから形成された層であってもよい。
【0016】
前記ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)が下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0017】
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R1
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。mはM1の原子価であり、sは0
または1であり、nは0〜mの整数であり、tは0〜mの整数である。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
前記ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)が下記一般式(2)および/または(3)で表される化合物であることがより好ましい。
【0018】
2(OR3e4g-e-f-12f2 ・・・(2)
(一般式(2)において、M2はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R3
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X2はハロゲン原子であり、Z2はカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。gはM2の原子価であり、eは0
〜(g−1)の整数であり、fは0〜(g−1)の整数である。また1≦e+f≦(g−1)である。
3、R4、X2が複数存在する場合には各R3、R4、X2は同一であっても異なっていてもよい。)
3(OR5h6j-h-i3i ・・・(3)
(一般式(3)において、M3はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R5
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R6は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X3はハロゲン原子である。jはM3の原子価であり、hは0〜jの整数であり、iは0〜jの整数である。また1≦h+i≦jである。
5、R6、X3が複数存在する場合には各R5、R6、X3は同一であっても異なっていてもよい。)
前記一般式(1)において、Z1(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有す
る有機基)中のカルボキシル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0019】
前記一般式(2)において、Z2(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有す
る有機基)中のカルボキシル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0020】
前記一般式(1)において、M1がSiであることが好ましい。
前記一般式(2)および(3)において、M2およびM3がSiであることが好ましい。
前記基材(X)が、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、チューブおよびタイヤからなる群から選択されるいずれかの形態が好ましい。
【0021】
前記基材(X)の形態が、フィルムまたはシートであることがより好ましい。
本発明の第1の塗液(塗液(D))は、
多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、ポリカルボン酸系重合体(A)を100重量部とする)とを含む。
【0022】
本発明の第2の塗液(塗液(E))は
多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、α,β−不飽和カルボン酸(a)を100重量部とする)とを含む。
【0023】
本発明の、第1のガスバリア性成形体の製造方法は、
多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、ポリカルボン酸系重合体(A)を100重量部とする)とを含む塗液(D)を、
基材(X)上に塗工する工程(工程1)と、
基材(X)上に塗工された塗液(D)に含まれている、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)の残存するカルボキシル基と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを反応させる熱処理工程(工程2)とを含む、
温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が、50×10-4cm3
STP)/(m2・s・MPa)以下であるガスバリア性成形体の製造方法である。
【0024】
前記工程2の熱処理温度が120〜300℃であり、熱処理時間が5秒〜24時間であることがこのましい。
前記ポリカルボン酸系重合体(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸からなる群から選択される少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸(a)から誘導される構成単位を含む(共)重合体であることが好ましい。
【0025】
前記塗液(D)に含まれる、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)が、
多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和され、一価金属イオンによってカルボキシル基の0.1〜30mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)であることが好ましい。
【0026】
前記塗液(D)が、さらにハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひとつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)を含んでいても良い。
【0027】
本発明の、第2のガスバリア性成形体の製造方法は、
多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、α,β−不飽和カルボン酸(a)を100重量部とする)とを含む塗液(E)を、
基材(X)上に塗工して、湿潤状態の塗膜(F)を形成する工程(工程I)と、
前記湿潤状態の塗膜(F)中に含まれる多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を重合することにより、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜85mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを含む塗膜(G)を基材(X)上に形成する工程(工程II)と、
基材(X)上に塗工された塗膜(G)中の、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜85mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)の残存するカルボキシル基と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを反応させる熱処理工程(工程III)とを含む、
温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が、50×10-4cm3
STP)/(m2・s・MPa)以下であることを特徴とするガスバリア性成形体の製造
方法である。
【0028】
前記工程IIIの熱処理温度が120〜300℃であり、熱処理時間が5秒〜24時間であることが好ましい。
前記α,β−不飽和カルボン酸(a)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
前記塗液(E)に含まれる、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)が、
多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和され、一価金属イオンによって0.1〜30mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)(ただし、多価金属イオン(C)によって中和された量と、一価金属イオンによって中和された量との合計が100mol%未満である)であってもよい。
【0030】
前記工程IIにおいて、電離放射線の照射および/または加熱により多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を重合することが好ましい。
【0031】
前記電離放射線が、紫外線、電子線、γ線またはα線であることが好ましい。
前記工程Iと工程IIとの間に、湿潤状態の塗膜(F)の表面を別の基材(Z)で被覆する工程を含むことが好ましい。
【0032】
前記塗液(E)が、さらにハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひとつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)を含んでいても良い。
【0033】
本発明の、第1および第2のガスバリア性成形体の製造方法は、
前記ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひとつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)が下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0034】
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R1
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はカルボキシル
基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。mはM1の原子価であり、sは0
または1であり、nは0〜mの整数であり、tは0〜mの整数である。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
本発明の、第1および第2のガスバリア性成形体の製造方法は、前記ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひとつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)が下記一般式(2)および/または(3)で表される化合物であることがより好ましい。
【0035】
2(OR3e4g-e-f-12f2 ・・・(2)
(一般式(2)において、M2はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R3
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X2はハロゲン原子であり、Z2はカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。gはM2の原子価であり、eは0
〜(g−1)の整数であり、fは0〜(g−1)の整数である。また1≦e+f≦(g−1)である。
3、R4、X2が複数存在する場合には各R3、R4、X2は同一であっても異なっていてもよい。)
3(OR5h6j-h-i3i ・・・(3)
(一般式(3)において、M3はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R5
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R6は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X3はハロゲン原子である。jはM3の原子価であり、hは0〜jの整数であり、iは0〜jの整数である。また1≦h+i≦jである。
5、R6、X3が複数存在する場合には各R5、R6、X3は同一であっても異なっていてもよい。)
本発明の、第1および第2のガスバリア性成形体の製造方法は、前記一般式(1)において、Z1(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基)中のカルボキ
シル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0036】
本発明の、第1および第2のガスバリア性成形体の製造方法は、前記一般式(2)において、Z2(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基)中のカルボキ
シル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0037】
本発明の、第1および第2のガスバリア性成形体の製造方法は、前記一般式(1)において、M1がSiであることが好ましい。
本発明の、第1および第2のガスバリア性成形体の製造方法は、前記一般式(2)および(3)において、M2およびM3がSiであることが好ましい。
【0038】
本発明の、第1および第2のガスバリア性成形体の製造方法は、前記架橋剤(B)の有するカルボキシル基と反応する基が、メチロール基、エポキシ基、イソシアネート基、イミド基または水酸基であることが好ましい。
【0039】
本発明の、第1および第2のガスバリア性成形体の製造方法は、前記多価金属イオン(C)がベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉄、およびジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属の
イオンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明のガスバリア性成形体は、基材とガスバリア層との剥離強度が高く、ガスバリア性にも優れる。また本発明のガスバリア性成形体の製造方法はレトルト処理することなく、簡便な工程で優れたガスバリア性を有する成形体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次に本発明について具体的に説明する。
<ガスバリア性成形体>
本発明のガスバリア性成形体は、基材(X)と、基材(X)上に形成されたガスバリア層(Y)とを有する成形体であり、該ガスバリア層(Y)が、多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とから形成された層であり、該基材(X)とガスバリア層(Y)との剥離強度が2[N/cm]以上であり、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した成形体の酸素透過度が、50×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下であることを特徴とするものである。
【0042】
また、本発明のガスバリア性成形体を得るための代表的な方法としては、後述する、第1のガスバリア性成形体の製造方法や、第2のガスバリア性成形体の製造方法が挙げられる。
【0043】
〔基材(X)〕
本発明で用いる基材(X)は、後述するガスバリア層(Y)を積層するためのものである。
【0044】
このような基材(X)の形態としては特に限定されず、たとえば、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、チューブおよびタイヤ等の形態が挙げられ、フィルムやシートの形態が好ましい。
【0045】
基材(X)の厚さは、その用途などによっても異なるが、通常は、5μm〜5cmである。フィルムやシートの用途では、5〜800μmが好ましく、10〜500μmがさらに好ましい。また、ボトルやトレーの用途では、100〜1000μmが好ましく、150〜800μmがさらに好ましい。また、チューブの用途では20μm〜2cmであり、タイヤの用途では、通常用いられるものであれば限定されないが、1〜5cmが好ましい。
【0046】
基材(X)の厚みが上記範囲内であると、各用途での作業性および生産性に優れている。
また、このような基材(X)の材質としては、通常プラスチックス類(金属蒸着プラスチックスや、金属化合物蒸着プラスチックスを含む)、ゴムおよび紙が用いられる。
【0047】
これらの材質も中でも、基材(X)とガスバリア層との剥離強度の観点からプラスチックス類が好ましい。
プラスチックス類としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系重合体やそれらの共重合体、およびそれらの酸変性物;ポリ酢酸ビ
ニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール等の酢酸ビニル系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレン
テレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ
ブチレート、ポリヒドロキシバリレート等のポリエステル系重合体やそれらの共重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6,66共重合体、ナイロン6,12共重合体、メタキシレンアジパミド・ナイロン6共重合体等のポリアミド系重合体やそれらの共重合体;ポリエチレングリコール、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の塩素系およびフッ素系重合体やそれらの共重合体;ポリメチルアクリレート、ボリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系重合体やそれらの共重合体;ポリイミド系重合体やその共重合体;アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、塗料用に用いるエポキシ樹脂等の樹脂;セルロース、澱粉、プルラン、キチン、キトサン、グルコマンナン、アガロース、ゼラチン等の天然高分子化合物やこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
上記プラスチックス類としてはポリエステル系重合体やそれらの共重合体、ポリアミド系重合体やそれらの共重合体を用いることが耐熱性、寸法安定性の点で好ましい。
材質としてプラスチックス類を用いた基材(X)は、後述するガスバリア層(Y)との密着性がよく、剥離強度に優れる傾向があり好ましい。
【0049】
また、材質としてプラスチックス類を用いた(X)としては、ガスバリア層(Y)との剥離強度をより向上させるという観点から、基材(X)の表面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等で表面活性化処理を施したものを用いてもよい。
【0050】
さらに材質としてプラスチックス類を用いた基材(X)としては、ガスバリア層(Y)との剥離強度を向上させるために、表面にアンカーコート層が設けられた基材(X)を用いても良い。このようなアンカーコート層に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0051】
〔ガスバリア層(Y)〕
本発明のガスバリア性成形体は、前記基材(X)上に、ガスバリア層(Y)が形成されている。
【0052】
ガスバリア層(Y)は、多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とから形成された層である。
【0053】
<多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)>
ガスバリア層(Y)を形成する成分である、多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)とは、下記ポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシル基の一部が、後述する多価金属イオン(C)によって中和されたものである。
【0054】
多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)は、カルボキシル基と多価金属イオンとによってイオン架橋が形成されており、該イオン架橋によってガスバリア性成形体のガスバリア性や耐水性を向上することが出来る。
【0055】
カルボキシル基の中和される割合は、ガスバリア性成形体の製造方法に大きく依存し、後述する第1のガスバリア性成形体の製造方法で得られる、ガスバリア性成形体の場合には、カルボキシル基の1〜40mol%が中和され、第2のガスバリア性成形体の製造方
法で得られる、ガスバリア性成形体の場合には、カルボキシル基の1〜85mol%が中和される。
【0056】
(ポリカルボン酸系重合体(A))
ポリカルボン酸系重合体(A)は、ポリカルボン酸系の重合性単量体が重合したものであり、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体である。このようなポリカルボン酸系重合体(A)としては、たとえば、α,β−不飽和カルボン酸(a)の(共)重合体;α,β−不飽和カルボン酸(a)と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。これらのポリカルボン酸系重合体(A)は1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0057】
なお、後述する第2のガスバリア性成形体の製造方法においては、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)が工程IIで重合され、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたポリカルボン酸系重合体(A)に相当する重合体となる。
【0058】
また、このようなα,β−不飽和カルボン酸(a)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸等が挙げられる。さらに、これらのα,β−不飽和カルボン酸(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリルが挙げられる。
【0059】
ポリカルボン酸系重合体(A)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸からなる群から選択される少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸(a)から誘導される構成単位を含む(共)重合体であることが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および、イタコン酸からなる群から選択される少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸(a)から誘導される構成単位を含む(共)重合体であることが特に好ましく、アクリル酸から誘導される構成単位を含む(共)重合体であることが最も好ましい。
【0060】
前記(共)重合体において、前記不飽和カルボン酸から誘導される構成単位が80〜100mol%であることが好ましい(ただし全構成単位を100mol%とする)。また、不飽和カルボン酸から誘導される構成単位以外の構成単位が含まれる場合には、その他の構成単位としては、例えば前述のエチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
【0061】
本発明に用いるポリカルボン酸系重合体(A)は、通常は数平均分子量が2,000〜10,000,000の範囲である。数平均分子量が2,000未満では、得られるガスバリア性成形体は充分な耐水性を達成できず、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化の発生が起こる場合がある。他方、数平均分子量が10,000,000を超えると塗工性や製造コストの点で好ましくない。
【0062】
さらに、得られるガスバリア性成形体の耐水性の観点から、このようなポリカルボン酸系重合体(A)の数平均分子量は好ましくは2,000〜2,000,000、さらに好ましくは5,000〜1,000,000の範囲である。
【0063】
(多価金属イオン(C))
多価金属イオン(C)は、通常は多価金属化合物に由来するイオンである。
多価金属イオン(C)とは価数が2以上の金属イオンであり、多価金属化合物とは、価数が2以上の金属の化合物である。
【0064】
多価金属化合物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの遷移金属;アルミニウム等の多価金属の化合物が挙げられる。
【0065】
中でも多価金属化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉄、およびジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属の化合物が好ましく、マグネシウム、カルシウムおよび亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の多価金属の化合物がより好ましい。
【0066】
すなわち、多価金属イオン(C)が、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉄、およびジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属のイオンであることが好ましく、マグネシウム、カルシウムおよび亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の多価金属のイオンであることがより好ましい。
【0067】
このような多価金属イオン(C)は得られるガスバリア性成形体のガスバリア性、透明性の観点から好ましい。
また多価金属化合物としては、例えば前記多価金属を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、または無機酸塩や、前記多価金属のアンモニウム錯体または2〜4級アミン錯体、あるいはそれらの炭酸塩または有機酸塩が挙げられる。
【0068】
これらの多価金属化合物の中でも、ガスバリア性、高温水蒸気や、熱水に対する耐性、および製造性の観点から、2価の金属化合物を用いることが好ましく、中でもマグネシウム、カルシウム、亜鉛を用いることが好ましい。またガスバリア層中に多価金属化合物由来の酸成分が残存することはガスバリア性や高温水蒸気、熱水に対する耐性の観点で好ましくなく、前記多価金属の酸化物、水酸化物、アンモニウム錯体を用いることが好ましく、製造性の観点から酸化物、水酸化物を用いることが特に好ましい。
【0069】
このような多価金属化合物を用いることにより、ガスバリア層(Y)を形成する、多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)を得るための多価金属イオン(C)を好適に供給することができる。
【0070】
ガスバリア層(Y)を形成する多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)は、上述したポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシル基を多価金属イオン(C)によって部分中和することによって得られる。詳しくは後述する塗液およびガスバリア性成形体の製造方法で記載するが、多価金属イオン(C)の量は、ガスバリア性成形体の製造方法によって異なる。
【0071】
ガスバリア層(Y)を形成する多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)は、多価金属イオン(C)および一価金属イオンによって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)であってもよい。
【0072】
一価金属イオンとしては、以下に記載のものが挙げられる。
(一価金属イオン)
一価金属イオンは、通常は一価金属化合物に由来するイオンである。
【0073】
一価金属イオンとは価数が1の金属イオンであり、一価金属化合物とは、価数が1の金属の化合物である。
一価金属化合物を構成する一価金属としては、ナトリウム、カリウムおよびリチウムが挙げられる。
【0074】
一価金属化合物としては、例えば前記一価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、または無機酸塩が挙げられる。
ガスバリア層中に一価金属化合物由来の酸成分が残存すると、得られるガスバリア性成形体のガスバリア性や高温水蒸気、熱水に対する耐性の観点で好ましくないため、上記一価金属化合物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることが好ましい。
【0075】
ガスバリア層(Y)を形成する成分として、一価金属イオンが用いられる場合には、通常、一価金属イオンで、ポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシル基の0.1〜30mol%を部分中和する。
【0076】
上記範囲内で部分中和を行うとガスバリア性に優れるため好ましい。
<カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)>
ガスバリア層(Y)を形成する成分である、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)としては通常、後述する第1のガスバリア性成形体の製造方法によって製造する場合には、少なくとも2個のカルボキシル基と反応する基を有する化合物が用いられる。
【0077】
また後述する第2のガスバリア性成形体の製造方法によって製造する場合には、少なくとも2個のカルボキシル基と反応する基を有する化合物、少なくとも1個のカルボキシル基と反応する基と少なくとも1つの重合性炭素−炭素二重結合とを有する化合物およびこれらの混合物を用いることができる。
【0078】
また、架橋剤(B)のカルボキシル基と反応する基としては、メチロール基、エポキシ基、イソシアネート基、イミド基または水酸基が好ましく、イソシアネート基または水酸基がより好ましく、水酸基が最も好ましい。
【0079】
メチロール基を有する架橋剤としては、例えばN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのN−メチロール化アクリルアミド誘導体;トリメチロールプロパンなどが挙げられる。N−メチロール(メタ)アクリルアミドは1つのメチロール基と1つの重合性炭素−炭素二重結合とを有する架橋剤である。これらの中でも、N−メチロールアクリルアミドは架橋性が高いため好ましい。
【0080】
エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成製、商品名「4HBAGE」)などのエポキシ基を有するアクリル酸エステル誘導体;1,2−エポキシ−4−ビニルシクロへキサン(慣用名:ビニルシクロヘキセンモノオキサイド;ダイセル化学製、商品名「セロキサイド2000Z」)、4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキシドなどのビニル基を有する脂環式エポキシ化合物;3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、商品名「セロキサイド2021P」)、1,2:8,9−ジエポキシリモネン(ダイセル化学工業製、商品名「セロキサイド3000」)、カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロへキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、商品名「セロキサイド2081」)等の2つ以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物;等が挙げられる。
【0081】
イソシアネート基を有する架橋剤としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、
メチレンビス(4,1−シクロへキシレン)ジイソシアネート、メチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート類;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類;等が挙げられる。
【0082】
イミド基を有する架橋剤としては、例えば1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(すなわち、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド・塩酸塩等のカルボジイミド誘導体が挙げられる。
【0083】
水酸基を有する架橋剤としては、例えばグリセリン、エチレングリコールペンタエリスリトール、ペンタグリセロール、ポリビニルアルコール(以下、PVAとも記す)などの脂肪族アルコール類;フロログルシトール、クエルシトール、イノシトールなどの脂環式アルコール類;トリス(ヒドロキシ)ベンゼンなどの芳香族アルコール類;でんぷん、D−エリトロース、L−アラビノース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ラムノース、サッカロース、マルトース、ラクトースなどの糖類;エリトリット、L−アラビット、アドニット、キシリットなどの糖アルコール類;などの2官能以上、好ましくは3官能以上の多価アルコールが挙げられる。
【0084】
また後述する第2のガスバリア性成形体の製造方法によって製造する場合には、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートのような少なくとも1個のカルボキシル基と反応する基と少なくとも1つの重合性炭素−炭素二重結合とを有する化合物を用いても良い。
【0085】
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)としては、PVA、グリセリン、でんぷん、N−メチロールアクリルアミド、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0086】
ガスバリア層(Y)を形成する成分である、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)の量としては、ガスバリア性成形体の製造方法によってもことなり、後述するガスバリア性成形体の製造方法で説明する。
【0087】
(ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G))
本発明のガスバリア性成形体のガスバリア層(Y)を形成する成分として、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)を用いても良い。
【0088】
ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)としては、下記一般式(1)で表される化合物
であることが好ましく、下記一般式(2)および/または(3)で表される化合物であることがより好ましい。
【0089】
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R1
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。mはM1の原子価であり、sは0
または1であり、nは0〜mの整数であり、tは0〜mの整数である。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
2(OR3e4g-e-f-12f2 ・・・(2)
(一般式(2)において、M2はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R3
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X2はハロゲン原子であり、Z2はカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。gはM2の原子価であり、eは0
〜(g−1)の整数であり、fは0〜(g−1)の整数である。また1≦e+f≦(g−1)である。
3、R4、X2が複数存在する場合には各R3、R4、X2は同一であっても異なっていてもよい。)
3(OR5h6j-h-i3i ・・・(3)
(一般式(3)において、M3はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R5
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R6は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X3はハロゲン原子である。jはM3の原子価であり、hは0〜jの整数であり、iは0〜jの整数である。また1≦h+i≦jである。
5、R6、X3が複数存在する場合には各R5、R6、X3は同一であっても異なっていてもよい。)
前記一般式(1)において、Z1(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有す
る有機基)中のカルボキシル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0090】
また前記一般式(2)において、Z2(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含
有する有機基)中のカルボキシル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0091】
前記一般式(1)において、M1がSiであることが好ましい。
また前記一般式(2)および(3)において、M2およびM3がSiであることが好ましい。
【0092】
一般式(1)で表される化合物としては、一般式(2)および/または(3)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリ
メトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0093】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
ガスバリア層(Y)を形成する成分として、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)を用いる場合には、上記一般式(1)で表される化合物の加水分解縮合物、好ましくは上記一般式(2)および/または(3)で表される化合物の加水分解縮合物を用いることが好ましい。これらの化合物の加水分解縮合物は、該化合物のアルコキシ基(OR1、OR3、OR5)およびハロゲン原子(X1、X2、X3)の少なくとも一部が水酸基に置換され加水分解物となり、さらに該加水分解物が縮合することによって、金属原子(M1、M2、M3)が酸素を介して結合した化合物が形成される。この縮合が繰り
返されることにより、加水分解縮合物が得られる。
【0094】
この加水分解やそれに続く縮合が起こるためには、金属原子(M1、M2、M3)にアル
コキシ基(OR1、OR3、OR5)やハロゲン原子(X1、X2、X3)が結合していることが必要である。
【0095】
ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)は、上記一般式(1)で表される化合物、好ましくは上記一般式(2)および/または(3)で表される化合物の一部が加水分解、縮合したものでもよく、完全に加水分解、縮合したものでもよく、あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0096】
加水分解縮合物(G)を製造する方法としては特に限定は無いが、通常は上記一般式(1)で表される化合物、好ましくは上記一般式(2)および/または(3)で表される化合物をゾルゲル法を用いて加水分解、縮合することにより得ることができる。
【0097】
また、本発明に用いる加水分解縮合物(G)は、上記一般式(1)で表される化合物、好ましくは上記一般式(2)および/または(3)で表される化合物を複数回に分けて加水分解、縮合することによって製造してもよい。つまり、上記一般式(1)で表される化合物、好ましくは上記一般式(2)および/または(3)で表される化合物を2〜10量体程度の縮合物とした後に、該2〜10量体程度の縮合物をさらに加水分解、縮合することにより加水分解縮合物(G)として製造してもよい。
【0098】
加水分解縮合物(G)をゾルゲル法を用いて製造する際の一般的な方法としては、上記一般式(1)で表される化合物、好ましくは上記一般式(2)および/または(3)で表される化合物に水を加えることによって加水分解および縮合を行う方法が挙げられ、該方法においては酸を添加することによって加水分解反応を促進させて調節することができる。またアルコールを添加することは加水分解縮合物(G)の塗液(D)および塗液(E)への溶解性の点で好ましい。
【0099】
ガスバリア層(Y)を形成する成分として、加水分解縮合物(G)を用いる場合には、加水分解縮合物(G)の量としては、ガスバリア性成形体の製造方法によってもことなり、後述するガスバリア性成形体の製造方法で説明する。
【0100】
加水分解縮合物(G)を用いると、ガスバリア性成形体の耐熱水性やガスバリア性の観点では好ましいが、加水分解縮合物(G)を用いると、生産性や塗液安定性の観点から好
ましくない。
【0101】
(その他の成分)
ガスバリア層(Y)を形成する成分として他の成分が存在しても良い。
他の成分としては樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、アンチブロッキング剤、膜形成剤、粘着剤、無機層状化合物、エステル化反応触媒(次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等)等の各種添加剤が挙げられる。
【0102】
ガスバリア層(Y)を形成する成分として、添加剤が用いられる場合には、通常多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と添加剤との重量比(多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A):添加剤)は70:30〜99:1であることが好ましく、80:20〜98:2であることがより好ましい。
【0103】
〔ガスバリア性成形体の物性〕
本発明のガスバリア性成形体のガスバリア層(Y)の厚みは好ましくは0.01〜200μmの範囲であり、より好ましくは0.02〜50μmの範囲であり、特に好ましくは0.04〜5μmの範囲である。上記範囲内ではガスバリア性や熱処理効率の点で好ましい。
【0104】
前記架橋剤(B)において、カルボキシル基と反応する基が、水酸基である場合には、本発明のガスバリア性成形体は、通常は、該ガスバリア性成形体のガスバリア層(Y)の赤外線吸収スペクトルを測定した際の、波数1560±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1560)と波数1700±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1700)とのピーク比(1)(A1560/A1700)が0.2以上であり、かつ波数1150±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1150)と波数1220±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1220)とのピーク比(2)(A1150/A1220)が1.0以上である。
【0105】
これはガスバリア層(Y)が以下のような構造を有するためである。
ガスバリア層(Y)は上述のように多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とから形成された層である。
【0106】
ガスバリア層(Y)には、多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシル基が、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)と反応することにより形成される架橋構造と、ポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシル基が多価金属イオン(C)によって部分中和されることにより形成されるイオン架橋構造とが存在する。
【0107】
このような構造を有するガスバリア層(Y)において波数1560±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1560)は主にイオン架橋構造に由来するイオン化されたカルボキシル基(−COO-)の吸収を示し、波数1700±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1700)はカルボニル基の吸収であり、ピーク比(1)(A1560/A1700)は、イオン化され
たカルボキシル基(−COO-)の吸収/(イオン化されていないカルボキシル基に由来
するカルボニル基の吸収+エステル化したカルボキシル基に由来するカルボニル基の吸収)に相当し、ポリカルボン酸系重合体のイオン化の度合いの指標となる。イオン化の度合いは高いほどガスバリア性の点で好ましく、ピーク比(1)(A1560/A1700)が0.2を下回るような低いイオン化の度合いにおいてはガスバリア性が充分でない傾向がある。
【0108】
イオン化の度合いは高いほうが好ましいが、後述する第1のガスバリア性成形体の製造
方法においては多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の40mol%を超えて部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)を含む塗液を用いる場合には、塗液が透明な液として得られず、ガスバリア性が悪化する傾向があり好ましくない。また後述する第2のガスバリア性成形体の製造方法においては、多価金属イオン(C)によって85mol%を超えてカルボキシル基が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を含む塗液を用いる場合には塗液が均一な塗液とならず、工程IIにおいて重合する際に白化がおきる場合があり好ましくない。
【0109】
ガスバリア層(Y)において波数1150±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1150)はエステルに由来するC−O伸縮振動ピークである。また、波数1220±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1220)は、エステルやイオン架橋構造の生成による変化が少ないピークである。
【0110】
このためピーク比(2)(A1150/A1220)はエステルの生成した度合いを示す指標となる。ガスバリア性成形体において、ピーク比(2)(A1150/A1220)が1.0以上であるとエステルが充分生成していることを示し、湿度雰囲気下でのガスバリア性に優れ、耐水性に優れる。
【0111】
なお、本発明のガスバリア性成形体において、ガスバリア層(Y)の赤外線吸収スペクトルの測定は以下のような方法で行うことができる。
本発明のフィルムのガスバリア層(Y)の赤外線吸収スペクトルは、基材(X)等のガスバリア層(Y)に貼り合わされた基材を剥がし、ガスバリア層(Y)を取り出すことにより、透過法、ATR法(減衰全反射法)、またはKBr法で測定することができる。
【0112】
基材(X)から剥がすことが困難である場合には、差スペクトル法を用いてガスバリア層(Y)のスペクトルを求めることができる。
差スペクトル法とは以下のようにして行うことができる。
【0113】
まず、ガスバリア性成形体(層構成:基材(X)/ガスバリア層(Y))の赤外線吸収スペクトルを測定する。
透過法、KBr法の場合には得られる赤外線吸収スペクトルは、基材(X)とガスバリア層(Y)とが重なったスペクトルとなる。ATR法の場合、ガスバリア層の厚みが薄い(0.02〜20μm程度)場合には赤外線吸収スペクトルが基材(X)とガスバリア層(Y)とが重なったスペクトルとなり、ガスバリア層の厚みが充分厚い(20μmを超えて、5cm以下程度)場合にはガスバリア層(Y)の赤外線吸収スペクトルが得られる。
【0114】
差スペクトル法では、基材(X)とガスバリア層(Y)とが重なったスペクトルから、基材(X)のスペクトルを差し引くことによって、ガスバリア層(Y)に由来の赤外線吸収スペクトルを求める方法である。
【0115】
実際には指し引く基材(X)の吸収スペクトルに係数を乗じて、ガスバリア性成形体の赤外線吸収スペクトルに含まれるガスバリア層(Y)に由来のスペクトルが残るように差スペクトルを求める。乗じる係数はガスバリア層(Y)には含まれず、基材(X)にのみ含まれるピークが消失するように係数を求める。基材(X)がPETフィルムである場合には1240cm-1付近のピークが消失するように係数を求める方法が挙げられる。
【0116】
本発明のガスバリア性成形体は、基材(X)とガスバリア層(Y)との剥離強度が2[N/cm]以上であり、好ましくは2.5[N/cm]以上であり、より好ましくは3[N/cm]以上である。剥離強度は高いほど好ましく、剥離強度の上限としては特に限定はないが、基材強度の観点から通常は6[N/cm]以下である。
【0117】
ガスバリア性成形体の基材(X)とガスバリア層(Y)との剥離強度は以下のようにして測定される。
引張圧縮試験機(エー・アンド・ディ製テンシロン、RTC‐1210A)を用いて引張速度200m/minで剥離強度を測定した。
【0118】
基材(X)とガスバリア層(Y)との間の剥離強度は、ガスバリア層(Y)が薄い場合には試験機の引っ張りで破断する恐れがある。その場合はガスバリア層(Y)上に接着剤を介してその他の基材を張り合わせることによって測定することができる。
【0119】
すなわち、通常接着剤を介して張り合わせたその他の基材とガスバリア層(Y)との剥離強度は充分に強く、基材(X)とガスバリア層(Y)との剥離強度がそれ以下である場合には基材(X)とガスバリア層(Y)との間で剥離する。また、剥離した界面を観察することにより、基材(X)とガスバリア層(Y)との間で剥離したか否かを知ることができる。
【0120】
上記剥離強度を有するガスバリア性成形体は、後述する第1のガスバリア性成形体の製造方法や、第2のガスバリア性成形体の製造方法によってガスバリア性成形体を製造することにより達成する事ができる。
【0121】
本発明のガスバリア性成形体は他の方法によって製造しても良いが、特開平10−237180号公報等に記載されているレトルト処理を行った場合には、剥離強度に優れるガスバリア性成形体を得ることができない。
【0122】
レトルト処理を行うことにより得られたガスバリア性成形体が、基材とガスバリア層との剥離強度に優れない理由は明らかではないが、本発明者らは以下のように推定した。すなわち、レトルト処理を行う際に、基材とガスバリア層との間に微量の水が浸入し、この進入した水が、基材とガスバリア層との剥離強度に優れない原因であると推定した。
【0123】
また、本発明のガスバリア性成形体は、通常は温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が、50×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下であり、45×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下であることが好ましく、40×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下であることがより好ましい。
【0124】
酸素透過度は低いほど好ましく、その下限としては特に限定はないが通常は0.1×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以上である。
本発明のガスバリア性成形体は、さらにガスバリア層上に他の基材(Z)が積層されていても良い。すなわち層構成としては〔基材(X)/ガスバリア層/基材(Z)〕となるように積層されたガスバリア性成形体であっても良い。
【0125】
基材(Z)としては前述の基材(X)と同様なものでもよく、異なっていてもよい。
積層する基材(Z)としては、強度付与、シール性やシール時の易開封性付与、意匠性付与、光遮断性付与、防湿性付与等の目的に併せて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、前述した基材(X)と同様の材質のものを挙げることができる。
【0126】
層構成を〔基材(X)/ガスバリア層/基材(Z)〕ととしたガスバリア性成形体は、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が、50×10-4cm3(S
TP)/(m2・s・MPa)以下であり、45×10-4cm3(STP)/(m2・s・
MPa)以下であることが好ましく、40×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下であることがより好ましい。
【0127】
酸素透過度は低いほど好ましく、その下限としては特に限定はないが通常は0.1×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以上である。
<第1のガスバリア性成形体の製造方法>
本発明の第1のガスバリア性成形体の製造方法は、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、ポリカルボン酸系重合体(A)を100重量部とする)とを含む塗液(D)を、基材(X)上に塗工する工程(工程1)と、基材(X)上に塗工された塗液(D)に含まれている、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)の残存するカルボキシル基と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを反応させる熱処理工程(工程2)とを含む製造方法である。該製造方法によって得られるガスバリア性成形体の温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が、50×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下である。
【0128】
なお、第1のガスバリア性成形体の製造方法によって得られるガスバリア性成形体は、前述のガスバリア性成形体である。
第1のガスバリア性成形体の製造方法の特徴の一つは塗液(D)を用いることである。
【0129】
塗液(D)は、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%、好ましくは10〜38mol%、より好ましくは15〜35mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部、好ましくは7〜40重量部(ただし、ポリカルボン酸系重合体(A)を100重量部とする)とを含む塗液である。カルボキシル基を部分中和する多価金属イオン(C)は前述のとおり多価金属化合物に由来するイオンであることが好ましい。
【0130】
多価金属イオン(C)の量が上記範囲内で増加すると、ガスバリア性が向上するため、好ましいが、上記範囲を超えて多価金属イオン(C)を含む場合には得られる塗液(D)に白化や沈殿が生じ塗工性の点で好ましくない。更に得られるガスバリア性成形体の透明性が悪化(白化)する傾向があり好ましくない。また、ガスバリア性成形体が白化する程の量の多価金属イオン(C)によってポリカルボン酸系重合体(A)を中和した場合には、逆にガスバリア性に劣る傾向があり、好ましくない。
【0131】
ポリカルボン酸系重合体(A)としては、上述したものを用いることができ、ポリカルボン酸系重合体(A)が、ポリカルボン酸系重合体(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸からなる群から選択される少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸(a)から誘導される構成単位を含む(共)重合体であることが好ましい。
【0132】
また、塗液(D)に含まれる、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)が、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%、好ましくは10〜38mol%、より好ましくは15〜35mol%が部分中和され、一価金属イオンによってカルボキシル基の0.1〜30mol%、好ましくは0.5〜20mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)であっても良い。なお、一価金属イオンは、通常は一価金属化合物に由来するイオンである。
【0133】
上記範囲内で一価金属イオンによって部分中和されているとガスバリア性の観点から好ましい。
また、塗液(D)には、上述のハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひとつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)が含まれていても良い。加水分解縮合物(G)を用いる際には、ポリカルボン酸系重合体(A)100重量部に対して、通常は1〜150重量部の量で用いられる。
【0134】
さらに、塗液(D)には、前述した添加剤等のその他の成分が含まれていても良い。
塗液(D)に添加剤が含まれる場合には、通常ポリカルボン酸系重合体と添加剤との重量比(ポリカルボン酸系重合体:添加剤)は80:20〜99:1であることが好ましい。
【0135】
塗液(D)の調製法としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒等を溶媒として用い、ポリカルボン酸系重合体(A)、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)、多価金属イオン(C)を供給するための多価金属化合物を、順次加えて調製してもよい。なお、加える際の順番は特に規定はない。
【0136】
上記溶媒としては、塗工性、成膜性の点でアルコール類の有機溶媒を添加することが好ましい。
有機溶媒を用いると、基材(X)への塗工性の点で好ましいが、金属イオンの溶解性が水と比べ悪化する傾向がある。このため水や、水と有機溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。
【0137】
別の調製法としては、ポリカルボン酸系重合体(A)およびカルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)を含む液と、多価金属化合物を含む液を別に用意し、両者を混合しても良い。
【0138】
また、別の調製法としては、ポリカルボン酸系重合体(A)および多価金属化合物を含む液と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)を含む液を別に用意し、両者を混合しても良く、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)および多価金属化合物を含む液と、ポリカルボン酸系重合体(A)を含む液を別に用意し、両者を混合してもよい。
【0139】
さらには、ポリカルボン酸系重合体(A)を含む液、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)を含む液、および多価金属化合物を含む液を別に用意し、両者を混合しても良い。
【0140】
また、α,β−不飽和カルボン酸(a)と多価金属化合物とを溶解した液を重合したものと、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)を含む液とを混合しても良く、α,β−不飽和カルボン酸(a)と多価金属化合物と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを混合した液を重合して塗液(D)を調製しても良い。
【0141】
以下、工程1、2をそれぞれ説明する。
(工程1)
工程1とは、前述の塗液(D)を、基材(X)上に塗工する工程である。
【0142】
塗液(D)を基材(X)上に塗工する方法としては、特に限定されないが、ディッピング法やスプレー塗布およびコーター、印刷機を用いて塗工する方法が挙げられる。コーター、印刷機の種類、塗工方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、マイクログラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター及びノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター;リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーターを用いて塗工する方法が挙げられる。
【0143】
工程1においては、前記塗液(D)を基材(X)上に塗工した直後の状態における塗工厚み、すなわち乾燥していない塗膜の厚みは、通常は0.1〜2000μmであり、好ましくは0.2〜600μmであり、さら好ましくは0.4〜50μmである。
【0144】
(工程2)
工程2とは、基材(X)上に塗工された塗液(D)に含まれている、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)の残存するカルボキシル基と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを反応させる熱処理工程である。
【0145】
熱処理工程とは、通常は熱処理温度120〜300℃、好ましくは140〜280℃、より好ましくは160〜250℃で、通常熱処理時間5秒〜24時間、好ましくは10秒〜12時間、より好ましくは15秒〜3時間保持する工程である。
【0146】
熱処理工程における熱処理の方法としては特に限定は無く、例えば熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の方法が挙げられ、該方法は単独または組合わせて行ってもよい。熱処理の際の圧力は通常常圧で行うことが好ましく、加圧することで反応を促進することができる。
【0147】
前記の温度、時間条件で保持することにより、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)の残存するカルボキシル基と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とが反応し、架橋構造が形成される。該架橋構造は、例えばカルボキシル基と反応する基が水酸基である場合にはエステル結合である。
【0148】
第1のガスバリア性成形体の製造方法においては、工程1と工程2との間に乾燥工程を設けても良い。
乾燥工程における乾燥の方法としては特に限定は無く、例えば熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の方法が挙げられ、該方法は単独または組合わせて行ってもよい。乾燥温度としては特に限定は無いが、溶媒として上述した水や、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合には通常は50〜160℃が好ましい。また乾燥の際の圧力は通常は常圧または減圧下で行うことが好ましく、設備の簡便性の観点から常圧で行うことが好ましい。
【0149】
<第2のガスバリア性成形体の製造方法>
本発明の、第2のガスバリア性成形体の製造方法は、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、α,β−不飽和カルボン酸(a)を100重量部とする)とを含む塗液(E)を、基材(X)上に塗工して、湿潤状態の塗膜(F)を形成する工程(工程I)と、前記湿潤状態の塗膜(F)中に含まれる多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を重合することにより、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜85mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを含む塗膜(G)を基材(X)上に形成する工程(工程II)と、基材(X)上に塗工された塗膜(G)中の、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜85mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを反応させる熱処理工程(工程III)とを含む製造方法である。該製造方法によって得られるガスバリア性成形体の、温度30℃、相対湿
度80%の条件下で測定した酸素透過度が、50×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下である。
【0150】
なお、第2のガスバリア性成形体の製造方法によって得られるガスバリア性成形体は、前述のガスバリア性成形体である。
第2のガスバリア性成形体の製造方法の特徴の一つは塗液(E)を用いることである。
【0151】
塗液(E)は、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%、好ましくは10〜80mol%、より好ましくは15〜75mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部(ただし、α,β−不飽和カルボン酸(a)を100重量部とする)とを含む塗液である。
【0152】
多価金属イオン(C)の量が上記範囲内で増加すると、ガスバリア性が向上するため、好ましいが、上記範囲を超えて多価金属イオン(C)を含む場合には、得られるガスバリア性成形体の透明性が悪化(白化)する傾向があり好ましくない。また、ガスバリア性成形体が白化する程の量の多価金属イオン(C)によってα,β−不飽和カルボン酸(a)を中和した場合には、逆にガスバリア性に劣る傾向があり、好ましくない。
【0153】
α,β−不飽和カルボン酸を中和する多価金属イオン(C)は前述のとおり多価金属化合物に由来するイオンであることが好ましい。
またα,β−不飽和カルボン酸(a)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0154】
また、塗液(E)に含まれる多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)が、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和され、一価金属イオンによって0.1〜30mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)(ただし、多価金属イオン(C)によって中和された量と、一価金属イオンによって中和された量との合計が100mol%未満である)であっても良い。なお、一価金属イオンは、通常は一価金属化合物に由来するイオンである。
【0155】
なお、多価金属イオン(C)によって中和された量と、一価金属イオンによって中和された量との合計が100mol%の場合には、後述する工程IIIにおいて、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)と、反応するためのカルボキシル基が存在せず、架橋剤(B)との架橋構造が形成されないため不適である。
【0156】
上記範囲内で一価金属イオンによってα,β−不飽和カルボン酸(a)が中和されるとガスバリア性の観点で好ましい。
また、塗液(E)には、上述のハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひとつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)が含まれていても良い。加水分解縮合物(G)を用いる際には、α,β−不飽和カルボン酸(a)100重量部に対して、通常は1〜150重量部の量で用いられる。
【0157】
さらに、塗液(E)には、前述した添加剤等のその他の成分が含まれていても良い。
塗液(E)に添加剤が含まれる場合には、通常ポリカルボン酸系重合体と添加剤との重量比(ポリカルボン酸系重合体:添加剤)は80:20〜99:1であることが好ましい。
【0158】
塗液(E)の調製法としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒等を溶媒として用い、α,β−不飽和カルボン酸(a)、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)、多価金属イオン(C)を供給するための多価金属化合物を、順次加えて調製してもよい。なお、加える際の順番は特に規定はない。
【0159】
別の調製法としては、α,β−不飽和カルボン酸(a)およびカルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)を含む液と、多価金属化合物を含む液を別に用意し、両者を混合しても良い。
【0160】
また、別の調製法としては、α,β−不飽和カルボン酸(a)および多価金属化合物を含む液と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)を含む液を別に用意し、両者を混合しても良く、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)および多価金属化合物を含む液と、ポリカルボン酸系重合体(A)を含む液を別に用意し、両者を混合してもよい。
【0161】
さらには、α,β−不飽和カルボン酸(a)を含む液、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)を含む液、および多価金属化合物を含む液を別に用意し、それぞれを混合しても良い。
【0162】
以下、工程I、IIおよびIIIをそれぞれ説明する。
(工程I)
工程Iとは、前述の塗液(E)を、基材(X)上に塗工して、湿潤状態の塗膜(F)を形成する工程である。
【0163】
塗液(E)を基材(X)上に塗工する方法としては、特に限定されないが、ディッピング法やスプレー塗布およびコーター、印刷機を用いて塗工する方法が挙げられる。コーター、印刷機の種類、塗工方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、マイクログラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター及びノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター;リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーターを用いて塗工する方法が挙げられる。
【0164】
工程1においては、前記塗液(E)を基材(X)上に塗工することにより形成した湿潤状態の塗膜(F)の厚みは、通常は0.1〜2000μmであり、好ましくは0.2〜600μmであり、さら好ましくは0.4〜50μmである。
【0165】
(工程II)
工程IIとは、前記湿潤状態の塗膜(F)中に含まれる多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を重合することにより、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜85mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを含む塗膜(G)を基材(X)上に形成する工程である。
【0166】
多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を重合する方法としては、電離放射線の照射および/または加熱により重合することが好ましい。
【0167】
電離放射線としては紫外線、電子線、γ線またはα線を用いることが好ましい。
紫外線を照射するには、殺菌灯、紫外用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、無電極ラン
プなどのUV照射装置を用いて、波長200〜400nmを含む光を照射する。UV照射装置のランプ出力は、発光長1cm当たりの入力ワット数(W/cm)で表示する。単位長当たりのワット数が大きくなれば発生する紫外線強度が大きくなる。ランプ出力は、通常30〜300(W/cm)の範囲から選択される。塗膜に照射される紫外線照射条件はランプ高さ、搬送速度、ランプ出力を選択することで、紫外線強度、紫外線光量が決められる。ランプ高さ、搬送速度、ランプ出力には特に制限はないが、紫外線光量が100(mJ/cm2)以上が好ましい。
【0168】
電離放射線として電子線を照射するには、通常20〜2000kVの電子線加速器から取り出される加速電子線を利用する。加速電子線の照射線量は、通常1〜300kGy、好ましくは5〜200kGyである。電子線は加速電圧によって被照射体に対する浸透深さが変化する。加速電圧が高いほど電子線は深く浸透する。電子線を用いると、プラスチックフィルム等の基材に対するα,β−不飽和カルボン酸(a)のグラフト反応が一部おこり、該グラフト反応により基材(X)とガスバリア層(Y)との密着性をさらに改善することができる。
【0169】
湿潤状態の塗膜を加熱して多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を重合する方法としては、湿潤状態の塗膜(F)を通常50〜250℃、好ましくは60〜220℃、より好ましくは70〜200℃の温度に加熱する。加熱時間は通常1〜120分間、好ましくは3〜60分間、より好ましくは5〜30分間である。加熱温度が低いほど加熱時間を長くし、加熱温度が高いほど加熱時間を短くすることができる。
【0170】
湿潤状態の塗膜(F)に電子線および/または紫外線の照射を行うことにより、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を重合して、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたポリカルボン酸系重合体(A)を得ることが好ましい。
【0171】
電子線の照射を行うことが、残留モノマー低減の点で最も好ましい。
このように重合を行うことにより、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)と、多価金属イオン(C)とを含む塗膜(G)を形成することができる。
【0172】
(工程III)
工程IIIとは基材(X)上に塗工された塗膜(G)中の、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜85mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを反応させる熱処理工程である。
【0173】
熱処理工程とは、通常は熱処理温度120〜300℃、好ましくは140〜280℃、より好ましくは160〜250℃で、通常は熱処理時間5秒〜24時間、好ましくは10秒〜12時間、より好ましくは15秒〜3時間保持する工程である。
【0174】
熱処理工程における熱処理の方法としては特に限定は無く、例えば熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の方法が挙げられ、該方法は単独または組合わせて行ってもよい。熱処理の際の圧力は通常常圧で行うことが好ましく、加圧することで反応を促進することができる。
【0175】
前記の温度、時間条件で保持することにより、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたポリカルボン酸系重合体(A)が有するカルボキシル基と、カルボ
キシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とが反応し、架橋構造が形成される。該架橋構造は、例えばカルボキシル基と反応する基が水酸基である場合にはエステル結合である。
【0176】
第2のガスバリア性成形体の製造方法においては、工程Iと工程IIとの間に湿潤状態の塗膜(F)の表面を別の基材(Z)で被覆する工程が含まれていても良い。
基材(Z)としては、例えば前述の基材(X)と同様なものを用いることができる。
【0177】
基材(Z)で湿潤状態の塗膜(F)の表面を被覆することにより酸素による重合禁止効果を除去することができる。また上記工程が含まれている場合には基材(X)/ガスバリア層(Y)/基材(Z)の層構成を有するガスバリア性成形体が得られる。また、基材(Z)として剥離が容易な基材を用いた場合には、重合後基材(Z)を剥離して、基材(X)/ガスバリア層(Y)の層構成を有するガスバリア性成形体を得ることもできる。
【0178】
また電離放射線の照射に紫外線を用いる場合には、基材には紫外線を透過するフィルム等を用いることが好ましい。
第2のガスバリア性成形体の製造方法においては、工程IIと工程IIIとの間に乾燥工程を設けても良い。
【0179】
乾燥工程における乾燥の方法としては特に限定は無く、例えば熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の方法が挙げられ、該方法は単独または組合わせて行ってもよい。乾燥温度としては特に限定は無いが、溶媒として上述した水や、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合には通常は50〜160℃が好ましい。また乾燥の際の圧力は通常は常圧または減圧下で行うことが好ましく、設備の簡便性の観点から常圧で行うことが好ましい。
【0180】
〔実施例〕
次の本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0181】
なお、実施例において各成分としては、アクリル酸(和光純薬製)、PVA(和光純薬製:製品名 ポリビニルアルコール500完全ケン化型)、酸化マグネシウム(和光純薬製)、メタクリル酸(和光純薬製)、マレイン酸(和光純薬製)、イタコン酸(和光純薬製)、グリセリン(和光純薬製)、でんぷん(和光純薬製:製品名 でんぷん(溶性))、N−MAN(N−メチロールアクリルアミド 綜研化学製)、A−TMM−3(ペンタエリスリトールトリアクリレート 新中村化学製)、701A(2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート 新中村化学製)、酸化カルシウム(和光純薬製)、水酸化ナトリウム(和光純薬製)、酸化亜鉛(和光純薬製)、酸化銅(II)(和光純薬製)、ポリアクリル酸(和光純薬製:ポリアクリル酸 平均分子量250,000)、次亜リン酸(和光純薬製)、IPA(2−プロパノール 和光純薬製)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET:東レ製、ルミラーP60、厚さ12μm)、2軸延伸6ナイロンフィルム(ONy:ユニチカ製、エンブレム ONBC、厚さ15μm、内面コロナ処理)、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP:東レ製、トレファンBO、片面コロナ処理、厚さ20μm)、接着剤(東洋モートン製、TM−250HV/CAT−RT86L−60)、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP:東レ合成製、トレファンNO、ZK93K、厚さ60μm、内面コロナ処理)、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS:信越シリコーン製)、テトラメトキシシラン(TMOS:アルドリッチ製)、ポリアクリル酸水溶液(東亞合成製:25wt%ポリアクリル酸水溶液、ポリアクリル酸 数平均分子量200,000)、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS:アルドリッチ製)を用いた。
【0182】
[実施例1〜9]
表1に示すα,β−不飽和カルボン酸、架橋剤、金属化合物を蒸留水に溶解し、塗液(E)No.1〜9を得た。
【0183】
各成分の種類と量を表1に示す。
[比較例1〜3]
表1に示す成分を蒸留水に溶解し、塗液No.50〜52を得た。
【0184】
各成分の種類と量を表1に示す。
【0185】
【表1】

[実施例10〜16]
表2に示すポリカルボン酸系重合体、架橋剤、金属化合物等を蒸留水で溶解し、塗液(D)No.10〜16を得た。
【0186】
各成分の種類と量を表2に示す。
[比較例4〜6]
表2に示すポリカルボン酸系重合体、架橋剤、金属化合物等を蒸留水で溶解し、塗液No.53〜55を得た。
【0187】
各成分の種類と量を表2に示す。
【0188】
【表2】

[実施例17]
塗液No.1と同様の組成を有する塗液を、卓上コーター(RK Print−Coat Instruments社製、K303PROOFER)を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材(X))上に、湿潤状態での塗工量(wetg/m2)が2
4g/m2のバーで塗工し、湿潤状態の塗膜(F)を形成した。
【0189】
塗工後、速やかに湿潤状態の塗膜(F)の表面を2軸延伸6ナイロンフィルム(基材(Z))で被覆し、「基材(X)(PET)/湿潤状態の塗膜(F)/基材(Z)(ONy)」の層構成を有する積層体を得た。
【0190】
次いで、基材(Z)(ONy)の上から、UV照射装置(COMPACT UV CONVEYOR CSOT−40 GSYUASA製)を用いて、ランプ出力120W/cm2、搬送速度5m/min、ランプ高さ24cmの条件で紫外線(UV光)を照射し、
アクリル酸を重合した。
【0191】
照射後、ギアオーブンで190℃、15分間の条件で熱処理を行い、架橋剤とカルボキシル基とを反応させエステル結合を形成し、エステル結合とイオン架橋とを有するガスバリア層を有するフィルム状のガスバリア性成形体を得た。
【0192】
ガスバリア性成形体の酸素透過度を温度30℃、相対湿度80%の条件で測定した。
ポリエチレンテレフタレートフィルムに換えてアルミ箔(厚さ50μm)を用いたことと、被覆した2軸延伸6ナイロンフィルムを熱処理前に剥離したこととを除いて、前記と同様な方法でフィルム状のガスバリア性成形体を得て、ATR法でフィルムのIRスペクトルを測定した。
【0193】
ガスバリア性成形体の層構成、IRスペクトルのピーク比、製造条件および酸素透過度を表3に示す。
[実施例18〜23]
表3に示す塗液、基材、UV照射条件、熱処理条件で、ガスバリア層を有するフィルム状のガスバリア性成形体を得た。
【0194】
基材(Z)の記載がないものは、「基材(X)(PET)/湿潤状態の塗膜(F)」の層構成を有する積層体に紫外線(UV光)照射を行った。
実施例17と同様に、アルミ箔(50μm)を用いて、ガスバリア性成形体を得て、実施例17と同様にIRスペクトルを測定した。
【0195】
ガスバリア性成形体の層構成、IRスペクトルのピーク比、製造条件および酸素透過度を表3に示す。
[比較例7]
塗液No.50と同様の組成を有する塗液を用いたことを除いて実施例17と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。架橋剤(B)を含有しない塗液を用いたため、エステル結合が生成せず、酸素バリア性は劣悪であった。
【0196】
[比較例8]
塗液No.51と同様の組成を有する塗液を用いたことを除いて実施例17と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。α,β−不飽和カルボン酸、金属イオンを含有しない塗液を用いたため、イオン架橋、エステル結合が生成せず、酸素バリア性は劣悪であった。
【0197】
[比較例9]
塗液No.52と同様の組成を有する塗液を用いたことを除いて実施例17と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。金属イオンを含有しない塗液を用いたため、イオン架橋を生成せず、酸素バリア性は比較的劣っていた。
【0198】
【表3】

[実施例24]
塗液No.2と同様の組成を有する塗液を、卓上コーター(RK Print−Coat Instruments社製、K303PROOFER)を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材(X))上に、湿潤状態での塗工量(wetg/m2)が1
2g/m2のバーで塗工し、湿潤状態の塗膜(F)を形成した。
【0199】
塗工後、速やかに湿潤状態の塗膜(F)の表面をポリエチレンテレフタレートフィルム(基材(Z))で被覆し、「基材(X)(PET)/湿潤状態の塗膜(F)/基材(Z)
(PET)」の層構成を有する積層体を得た。
【0200】
次いで、基材(Z)(PET)の上から、トレー搬送コンベア方式のEB照射装置(CB250/15/180L 岩崎電気製 EB装置)を用いて、加速電圧120kV、搬送速度10m/min、照射線量50kGyの条件で電子線(EB)を照射した。
【0201】
照射後、ギアオーブンで210℃、15分間の条件で熱処理を行い、架橋剤とカルボキシル基とを反応させエステル結合を形成し、エステル結合とイオン架橋とを有するガスバリア層を有するフィルム状のガスバリア性成形体を得た。
【0202】
ガスバリア性成形体の酸素透過度を温度30℃、相対湿度80%の条件で測定した。
ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材(X))に換えてアルミ箔(厚さ50μm)を用いたことと、被覆したポリエチレンテレフタレートフィルム(基材(Z))を熱処理前に剥離したこととを除いて、前記と同様な方法でフィルム状のガスバリア性成形体を得て、ATR法でフィルムのIRスペクトルを測定した。
【0203】
ガスバリア性成形体の層構成、IRスペクトルのピーク比、製造条件および酸素透過度を表4に示す。
[実施例25〜27]
表4に示す塗液、基材、EB照射条件、熱処理条件で、ガスバリア層を有するフィルム状のガスバリア性成形体を得た。
【0204】
基材(Z)の記載がないものは、「基材(X)(PET)/湿潤状態の塗膜(F)」の層構成を有する積層体に電子線(EB)照射を行った。
実施例24と同様に、アルミ箔(50μm)を用いて、ガスバリア性成形体を得て、実施例24と同様にIRスペクトルを測定した。
【0205】
ガスバリア性成形体の層構成、IRスペクトルのピーク比、製造条件および酸素透過度を表4に示す。
[比較例10]
塗液No.50と同様の組成を有する塗液を用いたことを除いて実施例24と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。架橋剤(B)を含有しない塗液を用いたため、エステル結合が生成せず、酸素バリア性は劣悪であった。
【0206】
[比較例11]
塗液No.51と同様の組成を有する塗液を用いたことを除いて実施例24と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。α,β−不飽和カルボン酸、金属イオンを含有しない塗液を用いたため、イオン架橋、エステル結合が生成せず、酸素バリア性は劣悪であった。
【0207】
[比較例12]
塗液No.52と同様の組成を有する塗液を用いたことを除いて実施例24と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。金属イオンを含有しない塗液を用いたため、イオン架橋を生成せず、酸素バリア性は比較的劣っていた。
【0208】
[比較例13]
熱処理を行わなかったことを除いて、実施例24と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。熱処理を行わなかった場合には、エステル結合が生成せず酸素バリア性は劣悪であった。
【0209】
【表4】

[実施例28]
塗液No.10と同様の組成を有する塗液を、卓上コーター(RK Print−Coat Instruments社製、K303PROOFER)を用いて、ポリエチレン
テレフタレートフィルム(基材(X))上に、湿潤状態での塗工量(wetg/m2)が
24g/m2のバーで塗工し、湿潤状態の塗膜を形成した。
【0210】
塗工後、ギアオーブンで210℃、15分間の条件で熱処理を行い、架橋剤とカルボキシル基とを反応させエステル結合を形成し、エステル結合とイオン架橋とを有するガスバリア層を有するフィルム状のガスバリア性成形体を得た。
【0211】
ガスバリア性成形体の酸素透過度を温度30℃相対湿度80%の条件で測定した。
ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材(X))に換えてアルミ箔(厚さ50μm)を用いたことを除いて、前記と同様な方法でフィルム状のガスバリア性成形体を得て、ATR法でフィルムのIRスペクトルを測定した。
【0212】
ガスバリア性成形体の層構成、IRスペクトルのピーク比、製造条件および酸素透過度を表5に示す。
[実施例29〜34]
表5に示す塗液、基材、熱処理条件で、ガスバリア層を有するフィルム状のガスバリア性成形体を得た。
【0213】
実施例28と同様に、アルミ箔(50μm)を用いて、ガスバリア性成形体を得て、実施例28と同様にIRスペクトルを測定した。
ガスバリア性成形体の層構成、IRスペクトルのピーク比、製造条件および酸素透過度を表5に示す。
【0214】
[比較例14]
塗液No.53と同様の組成を有する塗液を用いたことを除いて実施例28と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。架橋剤(B)を含有しない塗液を用いたため、エステル結合が生成せず、酸素バリア性は劣悪であった。
【0215】
[比較例15]
塗液No.54と同様の組成を有する塗液を用いたことを除いて実施例28と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。ポリカルボン酸系重合体、金属イオンを含有しない塗液を用いたため、イオン架橋、エステル結合が生成せず、酸素バリア性は劣悪であった。
【0216】
[比較例16]
塗液No.55と同様の組成を有する塗液を用いたことを除いて実施例28と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。金属イオンを含有しない塗液を用いたため、イオン架橋を生成せず、酸素バリア性は比較的劣っていた。
【0217】
[比較例17]
熱処理を行わなかったことを除いて、実施例32と同様に行い、ガスバリア性成形体を得た。熱処理を行わなかった場合には、エステル結合が生成せず酸素バリア性は劣悪であった。
【0218】
【表5】

[実施例35]
γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2.4gおよびテトラメトキシシラン6.1gを混合したものに、0.1N塩酸を1.3g加えて30分間攪拌し、加水分解および重縮合を行い、加水分解縮合物(G−1)を得た。さらに酸化亜鉛0.86g、ポリアクリル酸水溶液24.4g、グリセリン1.5gを蒸留水90.7gで溶解した液を加えて、塗液(D)No.17を得た。
【0219】
塗液(D)No.17と同様の組成を有する塗液を、卓上コーター(RK Print−Coat Instruments社製、K303PROOFER)を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材(X))上に、湿潤状態での塗工量(wetg/m
2)が24g/m2のバーで塗工し、速やかにドライヤーで乾燥した。
【0220】
乾燥後、ギアオーブンで200℃、30分間の条件で熱処理を行い、架橋剤とカルボキシル基とを反応させエステル結合を形成すると共に、GPTMSとTMOSとの加水分解縮合物(G−1)の重縮合反応をより進行させ、エステル結合とイオン架橋とを有し、加水分解縮合物が分散したガスバリア層を有するフィルム状のガスバリア性成形体を得た。
【0221】
ガスバリア性成形体の酸素透過度を温度30℃相対湿度80%の条件で測定した。
ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材(X))に換えてアルミ箔(厚さ50μm)を用いたことを除いて、前記と同様な方法でフィルム状のガスバリア性成形体を得て、ATR法でフィルムのIRスペクトルを測定した。
【0222】
塗液(D)No.17の組成、ガスバリア性成形体の層構成、IRスペクトルのピーク比、製造条件および酸素透過度を表6、7に示す。
【0223】
【表6】

【0224】
【表7】

[実施例36]
アミノプロピルトリメトキシシラン2gに0.1N塩酸6gを加え0℃で30分間攪拌し加水分解および重縮合を行い、加水分解縮合物(G−2)を得た。さらに酸化亜鉛0.6g、蒸留水5.8g、アクリル酸5g、グリセリン0.5gを予め混合し溶解した液を加えて、塗液(E)No.18を得た。
【0225】
塗液(E)No.18と同様の組成を有する塗液を用いたこと以外は実施例24と同様にしておこないガスバリア性成形体を得た。酸素透過度、IRスペクトルを実施例24と同様に測定した。
【0226】
塗液(E)No.18の組成、ガスバリア性成形体の層構成、IRスペクトルのピーク比、製造条件および酸素透過度を表8、9に示す。
【0227】
【表8】

【0228】
【表9】

<剥離強度試験>
実施例17〜36、比較例7〜17の各ガスバリア性成形体と同様のサンプルの剥離強度を、テンシロン万能試験基(RTC1225)を用いて試験速度200m/minで測定した。
【0229】
なお、実施例19、20、21、26、27、28〜35、および比較例14〜17の各ガスバリア性成形体と同様のサンプルは、ガスバリア層に接着剤を介して、未延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートして、剥離強度を測定した。
【0230】
剥離強度の測定結果を表10に示す。
【0231】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(X)と、
基材(X)上に形成されたガスバリア層(Y)とを有する成形体であり、
該ガスバリア層(Y)が、
多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とから形成された層であり、
該基材(X)とガスバリア層(Y)との剥離強度が2[N/cm]以上であり、
温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した成形体の酸素透過度が、50×10-4cm3(STP)/(m2・s・MPa)以下であるガスバリア性成形体。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸系重合体(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸からなる群から選択される少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸(a)から誘導される構成単位を含む(共)重合体であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性成形体。
【請求項3】
前記架橋剤(B)の有するカルボキシル基と反応する基が、メチロール基、エポキシ基、イソシアネート基、イミド基または水酸基であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性成形体。
【請求項4】
前記架橋剤(B)の有するカルボキシル基と反応する基が、水酸基であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性成形体。
【請求項5】
前記ガスバリア層(Y)の赤外線吸収スペクトルを測定した際の、
波数1560±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1560)と波数1700±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1700)とのピーク比(1)(A1560/A1700)が0.2以上であり、
波数1150±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1150)と波数1220±20cm-1の範囲内の最大ピーク(A1220)とのピーク比(2)(A1150/A1220)が1.0以上であることを特徴とする請求項4に記載のガスバリア性成形体。
【請求項6】
前記多価金属イオン(C)がベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉄、およびジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属のイオンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性成形体。
【請求項7】
前記多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)が、多価金属イオン(C)および一価金属イオンによって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性成形体。
【請求項8】
前記ガスバリア層(Y)が、
多価金属イオン(C)によって部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)と、
ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)とから形成された層であること特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性成形体。
【請求項9】
前記ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項8に記載のガスバリア性成形体。
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R1
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。mはM1の原子価であり、sは0
または1であり、nは0〜mの整数であり、tは0〜mの整数である。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項10】
前記ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)が下記一般式(2)および/または(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項8に記載のガスバリア性成形体。
2(OR3e4g-e-f-12f2 ・・・(2)
(一般式(2)において、M2はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R3
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X2はハロゲン原子であり、Z2はカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。gはM2の原子価であり、eは0
〜(g−1)の整数であり、fは0〜(g−1)の整数である。また1≦e+f≦(g−1)である。
3、R4、X2が複数存在する場合には各R3、R4、X2は同一であっても異なっていてもよい。)
3(OR5h6j-h-i3i ・・・(3)
(一般式(3)において、M3はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R5
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R6は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X3はハロゲン原子である。jはM3の原子価であり、hは0〜jの整数であり、iは0〜jの整数である。また1≦h+i≦jである。
5、R6、X3が複数存在する場合には各R5、R6、X3は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項11】
前記一般式(1)において、Z1(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有す
る有機基)中のカルボキシル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項9に記載のガスバリア性成形体。
【請求項12】
前記一般式(2)において、Z2(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有す
る有機基)中のカルボキシル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項10に記載のガスバリア性成形体。
【請求項13】
前記一般式(1)において、M1がSiであることを特徴とする請求項9または11に
記載のガスバリア性成形体。
【請求項14】
前記一般式(2)および(3)において、M2およびM3がSiであることを特徴とする
請求項10または12に記載のガスバリア性成形体。
【請求項15】
前記基材(X)が、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、チューブおよびタイヤからなる群から選択されるいずれかの形態にあることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のガスバリア性成形体。
【請求項16】
前記基材(X)の形態が、フィルムまたはシートであることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のガスバリア性成形体。
【請求項17】
多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、ポリカルボン酸系重合体(A)を100重量部とする)とを含む塗液(D)。
【請求項18】
多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、α,β−不飽和カルボン酸(a)を100重量部とする)とを含む塗液(E)。
【請求項19】
多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、ポリカルボン酸系重合体(A)を100重量部とする)とを含む塗液(D)を、
基材(X)上に塗工する工程(工程1)と、
基材(X)上に塗工された塗液(D)に含まれている、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)の残存するカルボキシル基と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを反応させる熱処理工程(工程2)とを含む、
温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が、50×10-4cm3
STP)/(m2・s・MPa)以下であるガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項20】
前記工程2の熱処理温度が120〜300℃であり、熱処理時間が5秒〜24時間であることを特徴とする請求項19に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項21】
前記ポリカルボン酸系重合体(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸からなる群から選択される少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸(a)から誘導される構成単位を含む(共)重合体であることを特徴とする請求項19または20に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項22】
前記塗液(D)に含まれる、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)が、
多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜40mol%が部分中和され、一価金属イオンによってカルボキシル基の0.1〜30mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)であることを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項23】
前記塗液(D)が、さらにハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひとつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物
(G)を含むことを特徴とする請求項19〜22のいずれかに記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項24】
多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)と、
カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)5〜100重量部(ただし、α,β−不飽和カルボン酸(a)を100重量部とする)とを含む塗液(E)を、
基材(X)上に塗工して、湿潤状態の塗膜(F)を形成する工程(工程I)と、
前記湿潤状態の塗膜(F)中に含まれる多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を重合することにより、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜85mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを含む塗膜(G)を基材(X)上に形成する工程(工程II)と、
基材(X)上に塗工された塗膜(G)中の、多価金属イオン(C)によってカルボキシル基の1〜85mol%が部分中和されたポリカルボン酸系重合体(A)の残存するカルボキシル基と、カルボキシル基と反応する基を有する架橋剤(B)とを反応させる熱処理工程(工程III)とを含む、
温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が、50×10-4cm3
STP)/(m2・s・MPa)以下であることを特徴とするガスバリア性成形体の製造
方法。
【請求項25】
前記工程IIIの熱処理温度が120〜300℃であり、熱処理時間が5秒〜24時間であることを特徴とする請求項24に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項26】
前記α,β−不飽和カルボン酸(a)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項24または25に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項27】
前記塗液(E)に含まれる、多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)が、
多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和され、一価金属イオンによって0.1〜30mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)(ただし、多価金属イオン(C)によって中和された量と、一価金属イオンによって中和された量との合計が100mol%未満である)であることを特徴とする請求項24〜26のいずれかに記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項28】
前記工程IIにおいて、電離放射線の照射および/または加熱により多価金属イオン(C)によって1〜85mol%が中和されたα,β−不飽和カルボン酸(a)を重合することを特徴とする請求項24〜27のいずれかに記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項29】
前記電離放射線が、紫外線、電子線、γ線またはα線であることを特徴とする請求項28に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項30】
前記工程Iと工程IIとの間に、湿潤状態の塗膜(F)の表面を別の基材(Z)で被覆する工程を含むことを特徴とする請求項24〜29のいずれかに記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項31】
前記塗液(E)が、さらにハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひ
とつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)の加水分解縮合物(G)を含むことを特徴とする請求項24〜30のいずれかに記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項32】
前記ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひとつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項23または31に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
1(OR1n2m-n-t-s1t1s ・・・(1)
(一般式(1)において、M1はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R1
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X1はハロゲン原子であり、Z1はカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。mはM1の原子価であり、sは0
または1であり、nは0〜mの整数であり、tは0〜mの整数である。またn+t≠0であり、1≦n+t+s≦mである。
1、R2、X1が複数存在する場合には各R1、R2、X1は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項33】
前記ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくともひとつの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(H)が下記一般式(2)および/または(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項23または31に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
2(OR3e4g-e-f-12f2 ・・・(2)
(一般式(2)において、M2はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R3
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X2はハロゲン原子であり、Z2はカルボキシル基との反応性を有する官能基を含有する有機基である。gはM2の原子価であり、eは0
〜(g−1)の整数であり、fは0〜(g−1)の整数である。また1≦e+f≦(g−1)である。
3、R4、X2が複数存在する場合には各R3、R4、X2は同一であっても異なっていてもよい。)
3(OR5h6j-h-i3i ・・・(3)
(一般式(3)において、M3はSi、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Z
n、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNbであり、R5
は炭素数1〜6のアルキル基であり、R6は炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基
、アリール基またはアルケニル基であり、X3はハロゲン原子である。jはM3の原子価であり、hは0〜jの整数であり、iは0〜jの整数である。また1≦h+i≦jである。
5、R6、X3が複数存在する場合には各R5、R6、X3は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項34】
前記一般式(1)において、Z1(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有す
る有機基)中のカルボキシル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項32に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項35】
前記一般式(2)において、Z2(カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有す
る有機基)中のカルボキシル基との反応性を有する官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項33に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項36】
前記一般式(1)において、M1がSiであることを特徴とする請求項32または34
に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項37】
前記一般式(2)および(3)において、M2およびM3がSiであることを特徴とする請求項33または35に記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項38】
前記架橋剤(B)の有するカルボキシル基と反応する基が、メチロール基、エポキシ基、イソシアネート基、イミド基または水酸基であることを特徴とする請求項19〜37のいずれかに記載のガスバリア性成形体の製造方法。
【請求項39】
前記多価金属イオン(C)がベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉄、およびジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属のイオンであることを特徴とする請求項19〜38のいずれかに記載のガスバリア性成形体の製造方法。

【公開番号】特開2008−238475(P2008−238475A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79593(P2007−79593)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】