説明

ガスバリア性物質偏在ポリマー層を有するガスバリア部材

【課題】少ないガスバリア性物質含有量でガスバリア性を発揮するガスバリア部材を提供する。
【解決手段】ポリマー層12と、そのポリマーを構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層13との積層構造を有する部材1aであって、ポリマー層12が、モノマー吸収層13とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する形態でガスバリア性物質を含むガスバリア性物質偏在部11を有するポリマー層12であり、且つガスバリア性物質偏在部11は最外層であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性物質偏在ポリマー層を有するガスバリア部材、及び該ガスバリア部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性は、例えば包装材料において内容物の品質劣化を防ぐ機能として特に重要である。たとえば、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、加工性、機械的強度、透明性に優れ包装用フィルムとして一般的に用いられる。しかしながら、例えば食品包装用にこれらフィルムを用いる場合、酸素やその他のガスのガスバリア性が十分でないため、食品の変質要因となる場合があった。
【0003】
このため、フィルムのガスバリア性を高める方法として、フィルム中に層状ケイ酸塩などを分散させることでガスバリア性を高める方法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この方法では、層状物質が、フィルム厚さ方向に分散して存在するために、層状物質の添加量を多くする必要があり、溶融粘度の上昇や粒状欠陥の発生などというフィルムの製膜性を低下させる、あるいは、ガスバリア性だけでなくフィルムの機械的性質も大きく変化してしまう問題がある。
【0005】
このような問題に対して、膨潤性層状ケイ酸塩の分散液をフィルム表面に塗布することでガスバリア性を高める方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法によれば、フィルム表面へ膨潤性層状ケイ酸塩の分散液を塗布して薄膜を形成させるために水や有機溶剤といった溶媒を用いて分散液を作成しなくてはならない。溶媒を用いた場合には塗工後にはその溶媒の乾燥除去が必要となり、多大な熱エネルギーが必要になる。また、溶媒に有機溶剤を用いた場合は、有機溶剤は環境負荷物質であるため蒸発後に回収あるいは燃焼等の後処理が必要である。さらに溶媒に水を用いた場合は、フィルム表面に対して塗布液の塗布ムラ、ハジキ、ピンホールを発生しやすく、フィルム表面にコロナ処理や下塗り処理などによる親水化処理が必要となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−93133号公報
【特許文献2】特開2000−336303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、少ないガスバリア性物質含有量でガスバリア性を発揮するガスバリア部材を提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、作製の際に有機溶剤等の環境負荷のある揮発性成分を必要とすることはなく、ガスバリア物質偏在ポリマー層においてガスバリア性物質の分布を制御でき、さらにガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との密着性に優れている、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有するガスバリア部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収層の少なくとも一方の面に、重合性モノマー及びガスバリア性物質を少なくとも含有するガスバリア性物質含有重合性組成物からなるガスバリア性物質含有重合性組成物層を設ければ、ガスバリア性物質含有重合性組成物層内でガスバリア性物質が移動し、ガスバリア性物質偏在重合性組成物層が得られ、該ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を重合させることにより、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造が得られること、及び該ガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造におけるガスバリア性物質偏在ポリマー層がガスバリア特性を発揮することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明のガスバリア部材は、ポリマー層と、そのポリマーを構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層との積層構造を有する部材であって、ポリマー層が、モノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する形態でガスバリア性物質を含むガスバリア性物質偏在ポリマー層であり、且つ最外層であることを特徴とする。
【0010】
前記ガスバリア部材は、モノマー吸収層とは反対側の界面近傍が、モノマー吸収層とは反対側の界面から厚み方向の全厚みに対して50%以内の領域であることが好ましい。
【0011】
前記ガスバリア部材において、モノマー吸収層は、ポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層であることが好ましい。
【0012】
前記ガスバリア部材において、ガスバリア性物質は、無機物であることが好ましい。
【0013】
前記ガスバリア部材において、ガスバリア性物質偏在ポリマー層のポリマーは、アクリル系ポリマーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガスバリア部材によれば、前記構成を有しているので、少ないガスバリア性物質含有量でガスバリア性を発揮することができる。また、作製の際に有機溶剤等の環境負荷のある揮発性成分を必要とすることはない。さらに、ガスバリア性物質偏在ポリマー層においてガスバリア性物質の分布を制御でき、さらにまた、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との密着性に優れている、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有するガスバリア部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1(左図)及び比較例1(右図)を示す概略断面図である。
【図2】図2は、実施例1の部材の試料切片を部分的に示す走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のガスバリア部材は、ポリマー層と、そのポリマー層を構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層との積層構造を有する部材であり、ポリマー層が、ポリマーに対してガスバリア性物質をモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する形態で含有しているガスバリア性物質偏在ポリマー層であるガスバリア部材である。このようなガスバリア性物質が偏って分布する部分の形態は、通常層状の形態である。
【0017】
ガスバリア部材は、ガスバリア性物質偏在ポリマー層における、ガスバリア性物質のモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する部分(「ガスバリア性物質偏在部」や「ガスバリア性物質偏析層」と称する場合がある)で、特にガスバリア性を発現する。
【0018】
なお、界面は、2つの異なる物質同士が、境界面を介して接する場合の境界面のことであり、例えば、ガスバリア部材において、ガスバリア性物質偏在ポリマー層表面が大気中で存在する場合、当然に空気と接しているので、該ガスバリア性物質偏在ポリマー層表面は、界面である。また、部材のガスバリア性物質偏在ポリマー層において、モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍を、「層表面又は層表面近傍」や「表面又は表面近傍」と称する場合がある。ガスバリア性物質偏在ポリマー層が最外層となる場合、モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍は、ガスバリア部材の表面又は表面近傍となる。
【0019】
ゆえに、本発明のガスバリア部材は、ポリマーにガスバリア性物質が層表面又は層表面近傍に偏って分布しているガスバリア性物質偏在ポリマー層と、ガスバリア性物質偏在ポリマー層のポリマーを構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層との積層構造を有していてもよい。
【0020】
ガスバリア部材の形状は、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有する限り特に制限されず必要に応じて適宜選択されるが、通常テープ状やシート状の形状を有する。なお、ガスバリア部材は、表面(ガスバリア性物質偏在ポリマー層やモノマー吸収層の表面)が粘着性を有する場合、ガスバリア性を発揮するガスバリア粘着テープ又はシートとして用いてもよい。また、ガスバリア部材に公知の粘着剤(感圧接着剤)(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤など)による粘着剤層(感圧接着剤層)を設けることにより、ガスバリア粘着テープ又はシートとしてもよい。
【0021】
また、ガスバリア部材の形状は、フィルム状であってもよい。すなわち、ガスバリア部材は、フィルム状の形状を有するガスバリアフィルムであってもよい。さらに、ガスバリア部材は、ロール状に巻回された形態を有していてもよく、また、シートが積層された形態を有していてもよい。
【0022】
ガスバリア部材において、ガスバリア性物質偏在ポリマー層やモノマー吸収層の表面は、カバーフィルムで保護されていてもよい。なお、カバーフィルムは、剥離性を有していてもよいし、あるいは剥離性を有さなくてもよい。
【0023】
ガスバリア部材を使用する際、カバーフィルムは、剥がされてもよいし、あるいは剥がされることなくそのままの状態を維持し、部材の一部を構成していてもよい。
【0024】
なお、モノマー吸収層として、モノマー吸収層を有するシートであるモノマー吸収性シートのモノマー吸収層を用いてもよい。また、ガスバリア部材は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0025】
[ガスバリア性物質含有重合性組成物層]
ガスバリア性物質含有重合性組成物層は、少なくとも、光や熱により重合可能な重合性モノマー、及びガスバリア性物質を含むガスバリア性物質含有重合性組成物により形成される層である。ガスバリア性物質含有重合性組成物層は、ガスバリア性物質として無機物である粒子を用いた粒子配合重合性組成物により形成される層である粒子配合重合性組成物層であってもよい。また、ガスバリア性物質含有重合性組成物層は、ガスバリア性物質として無機物である粒子を用い、さらに重合開始剤として光重合開始剤を用いた粒子配合光重合性組成物により形成される粒子配合光重合性組成物層であってもよい。なお、ガスバリア性物質含有重合性組成物は、取り扱い性、塗工性等の点から、一部分が重合した部分重合組成物であってもよい。
【0026】
ガスバリア性物質含有重合性組成物は、光や熱により重合可能な重合性モノマー、ガスバリア性物質を少なくとも含有する。また、必要に応じて、重合開始剤(例えば光重合開始剤や熱重合開始剤など)を含有していてもよい。特に、ガスバリア部材において、ガスバリア性物質として無機物としての粒子を用いたガスバリア性物質含有重合性組成物である粒子配合重合性組成物により形成されるガスバリア性物質偏在ポリマー層は、ガスバリア性物質含有重合性組成物による層(ガスバリア性物質含有重合性組成物層)としての粒子配合重合性組成物層を重合・硬化させた粒子配合重合硬化層であり、粒子を層中に偏在する形態で有する。
【0027】
(i)ガスバリア性物質含有重合性組成物層は、活性エネルギー線の照射や熱により重合が生じて、硬化し、ポリマー層(硬化層)を形成する。また、(ii)ガスバリア性物質含有重合性組成物層は、モノマー吸収層と接する形態で設けられると、ガスバリア性物質含有重合性組成物層の重合性モノマーがモノマー吸収層で吸収される。(iii)ガスバリア性物質がガスバリア性物質含有重合性組成物層中で移動して、ガスバリア性物質がモノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍(層表面又は層表面近傍)に偏って分布しているガスバリア性物質偏在重合性組成物層になる。これらのことより、ガスバリア性物質含有重合性組成物層からガスバリア性物質偏在ポリマー層が得られる。
【0028】
重合性モノマーは、ラジカル重合やカチオン重合などの反応機構を問わず、光エネルギーや熱エネルギーを利用して重合可能な化合物であることが重要である。このような重合性モノマーは、例えば、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー等のラジカル重合性モノマー;エポキシ系樹脂を形成するエポキシ系モノマー、オキセタン系樹脂を形成するオキセタン系モノマー、ビニルエーテル系樹脂を形成するビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合性モノマー;ウレタン系樹脂を形成するポリイソシアネートとポリオールとの組み合わせ;ポリエステル系樹脂を形成するポリカルボン酸、ポリオールとの組み合わせ等が挙げられる。中でも、アクリル系モノマーが好適に用いられる。また、重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、前記アクリル系ポリマー、エポキシ樹脂、オキセタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂は、それぞれアクリル系感圧接着剤(粘着剤)のベースポリマー、エポキシ系感圧接着剤のベースポリマー、オキセタン系感圧接着剤のベースポリマー、ビニルエーテル系感圧接着剤のベースポリマー、ウレタン系感圧接着剤のベースポリマー、ポリエステル系感圧接着剤のベースポリマー等として機能する。このため、ガスバリア性物質含有重合性組成物は、ガスバリア性物質を含有する粘着剤組成物(「ガスバリア性物質含有粘着剤組成物」と称する場合がある)であってもよい。従って、ガスバリア性物質含有重合性組成物が硬化することにより形成されるガスバリア性物質偏在ポリマー層は、ガスバリア性物質含有粘着剤組成物を重合させることにより形成されるガスバリア性物質偏在粘着剤層であってもよい。なお、本発明では重合性モノマーとしてアクリル系モノマーが好適に用いられるため、ガスバリア性物質含有粘着剤組成物としては、ガスバリア性物質含有アクリル系粘着剤組成物が好適に用いられる。本発明では、ポリマー部材を構成するガスバリア性物質偏在ポリマー層におけるポリマーは、アクリル系ポリマーであること好ましい。
【0030】
このようなアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルを好適に用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が組み合わされて用いられていてもよい。
【0031】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2-10アルキルエステル]などが挙げられる。
【0032】
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレートなどが挙げられる。
【0033】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
このような(メタ)アクリル酸エステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルがガスバリア性物質含有重合性組成物を構成するモノマー主成分として用いられている場合、(メタ)アクリル酸エステル[特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル]の割合は、例えば、ガスバリア性物質含有重合性組成物を構成するモノマー成分全量に対して60重量%以上(好ましくは80重量%以上)であることが重要である。
【0035】
また、ガスバリア性物質含有組成物には、モノマー成分として、共重合性モノマーが用いられていてもよい。例えば、(メタ)アクリル酸エステルがガスバリア性物質含有重合性組成物を構成するモノマー主成分として用いられているガスバリア性物質含有アクリル系重合性組成物では、極性基含有モノマーや多官能性モノマーなどの各種の共重合性モノマーが用いられていてもよい。モノマー成分として共重合性モノマーを用いることにより、例えば、得られるガスバリア部材の弾性率、伸び率、破断強度、耐薬品性、耐水性、耐溶剤性などのフィルム物性を調整することができる。なお、共重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有モノマー;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマーなどが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその無水物が好適である。
【0037】
極性基含有モノマーの使用量としては、得られるガスバリア部材の目的、用途によって適宜調整することができる。例えばガスバリア部材をガスバリア性物質偏在ポリマー層での密着性(例えば、ガラスやプラスチック容器などへの密着性)が求められる用途で用いる場合、モノマー成分全量に対して30重量%以下(例えば、1〜30重量%)であり、好ましくは3〜20重量%である。極性基含有モノマーの使用量が、モノマー成分全量に対して30重量%を超えると、例えば、ガスバリア性物質偏在ポリマー層が硬くなりすぎ、密着性が低下するおそれがある。なお、極性基含有モノマーの使用量が少なすぎると(例えば、モノマー成分全量に対して1重量%未満であると)、例えば、ガスバリア性物質偏在ポリマー層の凝集力が低下して表面のベタツキが強くなりすぎてガスバリア部材として取り扱いづらくなるおそれがある。
【0038】
また、ガスバリア部材をガスバリア性物質偏在ポリマー層での硬い物性が求められる用途(例えば、ハードコート用途など)で用いる場合、極性基含有モノマーの使用量としては、モノマー成分全量に対して95重量%以下(例えば、0.01〜95重量%)であり、好ましくは1〜70重量%である。極性基含有モノマーの使用量が95重量%を超えると、例えば耐水性などが十分でなくなり、ガスバリア部材として使用環境(湿気、水分など)に対する品質変化が大きくなるおそれがある。また、極性基含有モノマーの使用量が少なすぎると(例えば0.01重量%以下)、硬い物性を得るためにガラス転移温度(Tg)の高い(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニルアクリレートなど)や多官能性モノマーの添加量が多くなり、得られたガスバリア部材が脆くなりすぎるおそれがある。
【0039】
前記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0040】
多官能性モノマーの使用量としては、得られるガスバリア部材の目的、用途によって適宜調整することができるが、例えばガスバリア部材をガスバリア性物質偏在ポリマー層での密着性(例えば、ガラスやプラスチック容器などへの密着性)が求められる用途で用いる場合、モノマー成分全量に対して10重量%以下(例えば、0.01〜10重量%)であり、好ましくは0.02〜5重量%である。多官能性モノマーの使用量が、モノマー成分全量に対して5重量%を超えると、例えば、ガスバリア性物質偏在ポリマー層が硬くなりすぎ、密着性が低下するおそれがある。なお、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えば、モノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると)、例えば、ガスバリア性物質偏在ポリマー層の凝集力が低下して表面のベタツキが強くなりすぎてガスバリア部材として取り扱いづらくなるおそれがある。
【0041】
また、ガスバリア部材をガスバリア性物質偏在ポリマー層での硬い物性が求められる用途(例えば、ハードコート用途など)で用いる場合、多官能性モノマーの使用量としては、モノマー成分全量に対して95重量%以下(例えば、0.01〜95重量%)であり、好ましくは、1〜70重量%である。多官能性モノマーの使用量がモノマー成分全量に対して95重量%を超えると、重合時の硬化収縮が大きくなり均一なフィルム状あるいはシート状のガスバリア部材を得られなくなるおそれや、得られたガスバリア部材が脆くなりすぎるおそれがある。また、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えば0.01重量%以下であると)、十分な耐溶媒性や耐熱性を有するガスバリア部材を得られなくなるおそれがある。
【0042】
また、極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
重合開始剤は、必要に応じて用いてもよく、例えば熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)のいずれを用いてもよい。本発明では、ガスバリア性物質偏在ポリマー層の形成に際して、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いた熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用することができる。このため、ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を、ガスバリア性物質が層中で偏在する構造を維持して硬化させることができ、ガスバリア性物質がモノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍(層表面又は層表面近傍)に偏って分布しているガスバリア性物質偏在ポリマー層を容易に形成することができる。
【0044】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えばベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。光重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
具体的には、ケタール系光重合開始剤には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など]等が含まれる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)などが使用できる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0046】
光重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、ガスバリア性物質含有重合性組成物の全モノマー成分100重量部に対して0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0047】
本発明では、ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を硬化させて、ガスバリア性物質偏在ポリマー層を形成する際(例えば粒子偏在重合性組成物層を硬化させて、粒子偏在光重合硬化層を形成する際など)に、活性エネルギー線による硬化反応を利用してもよい。このような活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。なお、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは、ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を硬化させて、ガスバリア性物質偏在ポリマー層を形成すること(例えば粒子偏在重合性組成物層を硬化させて、粒子偏在光重合硬化層を形成することなど)ができる限り、特に制限されることはない。
【0048】
なお、熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤(例えば有機過酸化物/バナジウム化合物;有機過酸化物/ジメチルアニリン;ナフテン酸金属塩/ブチルアルデヒド、アニリンあるいはアセチルブチロラクトン等の組み合わせなど)などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。なお、レドックス系重合開始剤を熱重合開始剤として用いれば、常温で重合させることが可能である。
【0049】
ガスバリア性物質含有重合性組成物には、必要に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)、粘度調整剤としての種々ポリマー(アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム)などが挙げられる。
【0050】
ガスバリア性物質としては、ガスバリア部材のガスバリア性物質偏在ポリマー層で偏って分布することにより、ガスバリア性物質偏在ポリマー層を透過しようとするガスが内部拡散しにくい構造を形成する限り特に制限されないが、通常無機物が使用される。なお、ガスバリア性物質は、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
ガスバリア性物質としての無機物としては、例えば、シリカ、シリコーン(シリコーンパウダー)、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、粘土鉱物、金属粉、ガラス、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン、チタン白、カーボンブラックなどの粒子(微粒子、微粒子粉末)が挙げられる。中でも、シリカ、酸化アルミニウム、粘土鉱物が好ましく、特に粘土鉱物が好ましい。なお、粒子は、中実体、中空体(バルーン)のいずれであってもよい。
【0052】
そして、ガスバリア性物質としての無機物としては、粘土鉱物の中でも特に層状粘土鉱物が好ましい。このような層状粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、スチーブンサイト等のスメクタイト;バーミキュライト;ベントナイト;カネマイト、ケニアナイト、マカナイト等の層状ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。このような層状粘土鉱物は、天然の鉱物として産するもの、あるいは化学合成法によって製造されたものも制限なく使用することができる。
【0053】
また、無機物は、前記重合性モノマーに膨潤、分散しやすくする加工を施したものを用いてもよい。このような無機物としては、例えば、その陽イオン交換特性を利用して、有機カチオン性化合物とイオン交換し、層状ケイ酸塩の層間に有機カチオンを導入する事によって、アクリル系モノマーに膨潤、分散しやすくした層状粘土鉱物(例えば、商品名「ルーセンタイトSPN」コープケミカル株式会社製など)等が挙げられる。
【0054】
粒子の粒径(平均粒子径)としては、特に制限されないが、良好なガスバリア特性を得る観点から、ガスバリア部材のガスバリア性物質偏在ポリマー層におけるガスバリア性物質が分布する部分(ガスバリア性物質偏在部)では、なるべく粒子が緻密に詰まっている方が好ましく、例えば、一次粒子径としては、5nm〜5μm(好ましくは6nm〜1μm、さらに好ましくは7nm〜0.5μm)の範囲から選択することができる。なお、粒子は、粒径の異なる粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
粒子の形状は、真球状や楕円球状などの球状、不定形状、針状、棒状、平板状などのいずれの形状であってもよい。また、粒子は、その表面に、孔や突起などを有していてもよい。粒子の形状としては、ガスバリア性物質偏在ポリマーにおいて密な構造を有するガスバリア性物質偏在部を得る観点からは球状以外の形状が好ましく、中でも、平板状が好ましい。
【0056】
なお、粒子は、1種の形状のみを選択して用いてもよいし、形状の異なる粒子を2種以上組み合わせて使用してもよい。例えば、平板状の形状を有する粒子と球状の形状を有する粒子とを組み合わせて使用してもよい。
【0057】
粒子の表面には、各種表面処理(例えば、シリコーン系化合物やフッ素系化合物等による低表面張力化処理など)が施されていてもよい。
【0058】
ガスバリア性物質偏在ポリマー層におけるガスバリア性物質の使用量としては、特に制限されず、例えばガスバリア性物質偏在ポリマー層を形成するガスバリア性物質含有重合性組成物のモノマー成分100重量部に対して、0.001〜100重量部、好ましくは0.01〜70重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部となるような範囲から選択することができる。100重量部を超えるような使用量であると、ガスバリア部材の作製が困難となる場合や作製後のガスバリア部材で強度の問題が生じることがある。なお、0.001重量部未満であると、ガスバリア性物質偏在ポリマー層の表面又は表面近傍(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍)に平均的に分散してガスバリア性物質を分布させることが困難となる場合がある。
【0059】
ガスバリア性物質含有重合性組成物は、上記各成分均一に混合・分散させることにより調製することができる。このガスバリア性物質含有重合性組成物は、通常、基材上に塗布するなどしてシート状に成形するので、塗布作業に適した適度な粘度を持たせておくのがよい。ガスバリア性物質含有重合性組成物の粘度は、例えば、アクリルゴム、ポリウレタン、増粘性添加剤などの各種ポリマーを配合することや、ガスバリア性物質含有重合性組成物中の重合性モノマーを光の照射や加熱などにより一部重合させることにより調整することができる。なお、望ましい粘度は、BH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数10rpm、測定温度:30℃の条件で設定された粘度として、5〜50Pa・s、より好ましくは10〜40Pa・sである。粘度が5Pa・s未満であると、基材上に塗布したときに液が流れてしまい、50Pa・sを超えていると、粘度が高すぎて塗布が困難となる。
【0060】
なお、 ガスバリア性物質含有重合性組成物の塗布に際しては、例えば、慣用のコーター(例えば、コンマロールコーター、ダイロールコーター、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0061】
ガスバリア性物質含有重合性組成物層は、例えば、モノマー吸収層により提供される面、モノマー吸収性シートのモノマー吸収面、カバーフィルムの離型処理された面などの適宜な支持体の所定の面上に、上記慣用のコーターで塗布することにより形成される。
【0062】
[モノマー吸収性シート]
本発明のガスバリア部材は、モノマー吸収層の片面又は両面に、ガスバリア性物質含有重合性組成物によるガスバリア性物質含有重合性組成物層を形成し、該ガスバリア性物質含有重合性組成物層内でガスバリア性物質を移動させ、ガスバリア性物質がモノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に存在するガスバリア性物質偏在重合性組成物層を得てから、該ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を重合させ、ガスバリア性物質偏在ポリマー層を形成し、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を得ることにより作製する。
【0063】
従って、モノマー吸収性シートは、ガスバリア性物質含有重合性組成物中の少なくとも一つのモノマー成分を吸収することできるモノマー吸収面を提供するモノマー吸収層を少なくとも有する限り、その形態等は特に制限されない。
【0064】
モノマー吸収性シートとしては、例えば、モノマー吸収層のみで構成されたモノマー吸収性シート(「基材レスモノマー吸収性シート」と称する場合がある)、基材上にモノマー吸収層を設けたモノマー吸収性シート(「基材付きモノマー吸収性シート」と称する場合がある)が挙げられる。なお、モノマー吸収性シートが基材レスモノマー吸収性シートの場合、モノマー吸収面としてはどちらの面を用いてもよく、一方、基材付きモノマー吸収性シートの場合、モノマー吸収層表面がモノマー吸収面となる。
【0065】
(モノマー吸収層)
モノマー吸収層は、モノマー吸収性シートにおいてモノマー吸収面を提供する層であり、モノマー吸収面上に設けられたガスバリア性物質含有重合性組成物層から少なくとも重合性モノマーを吸収することができればよい。このようなモノマー吸収層を形成するものとしては、例えば紙製シート(例えば、クラフト紙やクレープ紙、和紙など);繊維系シート(例えば、布、不織布、ネットなど);多孔質フィルム;ポリマー(アクリル系ポリマー、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂);天然ゴム;合成ゴムなどが挙げられる。なお、モノマー吸収層は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
本発明では、モノマー吸収層を形成するものとしてはポリマーを好適に用いることができる。つまり、モノマー吸収層は、ポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層を好適に用いることができ、また、モノマー吸収性シートとしては、ポリマー層を有するシートを好適に用いることができる。このようなポリマーとしては、特に制限されないが、モノマー成分としてガスバリア性物質含有重合性組成物中の重合性モノマーを少なくとも1種有するポリマーが好ましい。例えば、ガスバリア性物質含有重合性組成物としてガスバリア性物質含有アクリル系重合性組成物が用いられている場合、モノマー吸収層を形成するポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましい。ガスバリア性物質含有アクリル系重合性組成物の重合性モノマーであるアクリル系モノマーとモノマー吸収層を形成するアクリル系ポリマーの構成単位が共通するため、重合性モノマーであるアクリル系モノマーが移行しやすくなるためである。
【0067】
また、モノマー吸収層は、ガスバリア性物質含有重合性組成物からガスバリア性物質を除いた以外は同様の組成を有する重合性組成物を重合して得られるポリマー層で構成されていてもよい。例えば、モノマー吸収層は、粒子配合光重合性組成物から粒子を除いた以外は同様の組成を有する光重合性組成物を硬化して得られる光重合硬化層で構成されていてもよい。
【0068】
さらに、モノマー吸収層は、アクリル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、オキセタン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などの粘着剤(感圧接着剤)からなる粘着剤層(感圧接着剤層)であってもよい。例えば、重合性モノマーとしてアクリル系モノマーが用いられている場合、より重合性モノマーをモノマー吸収層に吸収させる観点から、構成単位が共通するアクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0069】
モノマー吸収層の体積は、重合性モノマーの吸収前と後とで比較して、一定であってもよいし、変化していてもよい。例えば、モノマー吸収層が高分子物質[例えば、上記のポリマー(アクリル系ポリマー、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂)やガスバリア性物質含有重合性組成物からガスバリア性物質を除いた以外は同様の組成を有する重合性組成物を重合することにより形成されるポリマーなど]により形成される層である場合、モノマー吸収層である高分子物質の層の体積は、ガスバリア性物質含有重合性組成物層から重合性モノマーを吸収することで、通常増加する。つまり、モノマー吸収層を形成する前記高分子物質は、重合性モノマーを吸収することにより膨潤する。従って、モノマー吸収層は、重合性モノマーを吸収することで体積が増加するモノマー膨潤層であってもよい。
【0070】
モノマー吸収層が例えば前記高分子物質の層である場合、モノマー吸収層は、例えば下記の基材やカバーフィルムの離型処理された面などの適宜な支持体の所定の面上に、上記慣用のコーターで前記高分子物質を塗布することにより形成される。また、支持体上に設けられたモノマー吸収層としての前記高分子物質の層は、必要に応じて乾燥及び/又は硬化(例えば、光による硬化)されていてもよい。なお、前記高分子物質は、適宜な支持体の所定の面上に塗布される際、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマーを配合することや、重合性モノマーを加熱や光照射などにより一部重合させることにより塗布に適した粘度に調整されていてもよい。
【0071】
重合性モノマーを吸収する前のモノマー吸収層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、1〜2000μm(好ましくは2〜1000μm、さらに好ましくは5〜500μm)の範囲から選択することができる。また、モノマー吸収層は、単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0072】
(基材)
モノマー吸収性シートが基材付きモノマー吸収性シートである場合に用いられる基材としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体[例えば、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など]等の適宜な薄葉体を用いることができる。基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
なお、基材として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。また、基材としては、モノマー吸収層が活性エネルギー線による硬化により形成される場合は、活性エネルギー線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
【0074】
基材の表面は、モノマー吸収層との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤(例えば、シリコン系剥離剤)等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0075】
基材の表面が剥離剤で剥離処理(離型処理)されている場合、ガスバリア部材を使用する際、モノマー吸収層から容易に基材を剥がして、モノマー吸収層表面を露出させることができる。このように、ガスバリア部材は、モノマー吸収層表面が露出する状態で使用されてもよい。
【0076】
基材の厚みは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0077】
[カバーフィルム]
本発明では、モノマー吸収層の少なくとも一方の面に、ガスバリア性物質含有重合性組成物を用いてガスバリア性物質含有重合性組成物層を設け、ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を得てから、該ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を重合させ、ガスバリア性物質偏在ポリマー層を形成するが、ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を重合する際、空気中の酸素等により反応が阻害されるため、カバーフィルムでガスバリア性物質偏在重合性組成物層表面を覆うことが好ましい。また、ガスバリア部材を利用する際には、カバーフィルムを剥がして用いてもよいし、カバーフィルムを剥がさずに用いてもよい。なお、ガスバリア部材を利用する際にカバーフィルムを剥がさずに用いる場合、カバーフィルムは、ガスバリア部材の一部として用いられる。
【0078】
カバーフィルムとしては、酸素を透過し難い薄葉体であれば特に制限されないが、光重合反応を用いる場合は透明なものが好ましい。このようなカバーフィルムとしては、例えば慣用の剥離紙などを使用することができる。具体的には、カバーフィルムとしては、例えば離型処理剤(剥離処理剤)による離型処理層(剥離処理層)を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。なお、低接着性基材では、両面が離型面と利用することができ、一方、離型処理層を有する基材では、離型処理層表面を離型面(離型処理面)として利用することができる。
【0079】
カバーフィルムとしては、例えば、カバーフィルム用基材の少なくとも一方の面に離型処理層が形成されているカバーフィルム(離型処理層を有する基材)を用いてもよいし、カバーフィルム用基材をそのまま用いてもよい。
【0080】
このようなカバーフィルム用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。カバーフィルム用基材としては、透明性の高いプラスチック系基材フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム)が用いられたカバーフィルム用基材を好適に用いることができる。
【0081】
離型処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキル系離型処理剤などを用いることができる。離型処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。なお、離型処理剤により離型処理が施されたカバーフィルムは、例えば、公知の形成方法により、形成される。
【0082】
カバーフィルムの厚みは、特に制限されないが、取り扱い易さと経済性の点から、例えば、12〜250μm(好ましくは、20〜200μm)の範囲から選択することができる。なお、カバーフィルムは単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0083】
[ガスバリア部材]
本発明のガスバリア部材は、少なくともポリマー層と、該ポリマー層を構成するモノマー成分のうち、少なくともひとつのモノマーを吸収できるモノマー吸収層との積層構造を有する部材であって、該ポリマー層がガスバリア性物質をモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏在する形態(偏析する形態)で含有するガスバリア性物質含有偏在ポリマー層(ガスバリア性物質含有偏析ポリマー層)である部材である。
【0084】
ガスバリア部材は、ガスバリア性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏在する形態で分布しているガスバリア性物質含有偏在ポリマー層、すなわちガスバリア性物質が層状分布しているガスバリア性物質含有偏在ポリマー層を有していることにより、部材内部を拡散して透過しようとするガスがガスバリア性物質の層状分布構造により内部に拡散しにくくなり透過が阻害されるので、良好なガスバリア特性を発揮する。
【0085】
このことにより、厚さ、ガスバリア性物質の種類及び使用量、モノマー成分が共通する、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とガスバリア性物質分散ポリマー層(ガスバリア性物質が厚み方向に分散して存在するポリマー層)とを比較すると、ガスバリア性物質偏在ポリマー層は、ガスバリア性物質分散ポリマー層に比べて良好なガスバリア特性を発揮する。さらに、厚さ、ガスバリア性物質の種類、モノマー成分が共通する、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とガスバリア性物質分散ポリマー層とを比較すると、ガスバリア性物質偏在ポリマー層は、ガスバリア性物質分散ポリマー層ではガス透過を阻害する特性が生じない少ない量のガスバリア性物質の含有量でガスバリア特性を発揮する。
【0086】
ガスバリア性物質偏在ポリマー層において、ガスバリア性物質偏在部(ガスバリア性物質が分布する部分、前記層状分布部分)の厚み(モノマー吸収層とは反対側の界面からの厚み方向の高さ)は、ガスバリア性物質の使用量を調整することにより制御することができる。従って、ガスバリア性物質の使用量を調整することにより、ガスバリア部材のガス透過性を制御することができる。
【0087】
本発明のガスバリア部材が良好なガスバリア特性を発揮するガスとしては、特に制限されないが、例えば、水蒸気ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、空気、香気ガスなどが挙げられる。本発明のガスバリア部材は、中でも、水蒸気ガス、酸素ガスなどに対して有用である。
【0088】
このようなガスバリア部材は、モノマー吸収層の少なくとも一方の面に、少なくとも重合性モノマー及びガスバリア性物質を含有するガスバリア性物質含有重合性組成物を用いて、ガスバリア性物質含有重合性組成物層を設けることにより、ガスバリア性物質含有重合性組成物層内でガスバリア性物質を移動させて、モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍(層表面又は層表面近傍)に偏って分布する形態でガスバリア性物質を含有するガスバリア性物質偏在重合性組成物層を得てから、該ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を重合させ、ガスバリア性物質偏在ポリマー層を形成し、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を得ることにより作製することができる。
【0089】
また、ガスバリア部材は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面(モノマー吸収性シートのモノマー吸収層表面)に、少なくとも重合性モノマー及びガスバリア性物質を含有するガスバリア性物質含有重合性組成物からなるガスバリア性物質含有重合性組成物層が積層され、さらにガスバリア性物質含有重合性組成物層上にカバーフィルムが積層された構成を有している積層体を作製し、ガスバリア性物質含有重合性組成物層内でガスバリア性物質を移動させて、カバーフィルム側の層表面又は層表面近傍(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍)に偏って分布する形態でガスバリア性物質を含有するガスバリア性物質偏在重合性組成物層を得た後、光照射や加熱等することにより、ガスバリア性物質偏在重合性組成物層を重合させ、カバーフィルム側の層表面又は層表面近傍(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍)に偏って分布する形態でガスバリア性物質を含有するガスバリア性物質偏在ポリマー層を形成し、ガスバリア性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有する部材を得ることにより作製する方法を用いても作製することができる。
【0090】
従って、ガスバリア部材は、例えば、(i)特定の積層体を作製し、(ii)その後、該特定の積層体を光照射することにより製造されてもよい。
【0091】
前記特定の積層体は、例えば、少なくとも一方の面が離型処理されたカバーフィルムの離型処理された面上に、ガスバリア性物質を含有する光重合性の重合性組成物(「ガスバリア性物質含有光重合性組成物」と称する場合がある)を塗布することによりガスバリア性物質含有光重合性組成物層を形成させたものを、モノマー吸収層を有するモノマー吸収性シートに、ガスバリア性物質含有光重合組成物層とモノマー吸収層が接触する形態で、貼り合わせることにより作製してもよい。
【0092】
ガスバリア性物質偏在重合性組成物層の重合は、ガスバリア性物質偏在重合性組成物層が重合・硬化され、ガスバリア性物質偏在ポリマー層が得られる限り、光源や熱源、照射エネルギーや熱エネルギー、照射方法や加熱方法、照射時間や加熱時間、照射や加熱の開始時期、照射や加熱の終了時期等について、特に制限されることはない。
【0093】
光照射としては、例えばブラックライトランプ、ケミカルランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどによる紫外線の照射が挙げられる。また、加熱としては、例えば公知の加熱方法(例えば、電熱ヒーターを用いた加熱方法、赤外線等の電磁波を用いた加熱方法など)が挙げられる。
【0094】
例えば、本発明のガスバリア部材は、重合性モノマーを用いた前記特定の積層体(剥離性を有するカバーフィルム、ガスバリア性物質含有光重合性組成物層、モノマー吸収性シートから構成され、且つモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に設けられたガスバリア性物質含有光重合性組成物層の表面が剥離性を有するカバーフィルムにより保護された形態を有する特定の積層体)に紫外線などの活性エネルギー線を用いて光照射を行うことにより製造されてもよい。
【0095】
なお、モノマー吸収層における重合性モノマーの吸収は、モノマー吸収面にガスバリア性物質含有重合性組成物層が形成された時点で生じる。また、ガスバリア性物質含有重合性組成物層を形成後重合するまでの間(例えば特定の積層体を作製してから光照射するまでの間)に生じていてもよいし、ガスバリア性物質含有光重合組成物層が重合している間(例えば光照射によりガスバリア性物質含有光重合性組成物層が硬化している間)に生じていてもよい。
【0096】
従って、ガスバリア性物質含有重合性組成物層がモノマー吸収層と接触してから重合を終えるまでの時間は長いほど好ましい。特に光照射にて重合開始が容易にコントロールできる場合は、接触後1秒以上、好ましくは5秒以上、さらに好ましくは10秒以上(通常24時間以内)経過後に光照射することが好ましい。
【0097】
ガスバリア部材におけるガスバリア性物質偏在ポリマー層において、ガスバリア性物質は、表面又は表面近傍(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍)に分布する。つまり、ガスバリア性物質は、表面(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面)又は層表面(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面)から厚み方向の全厚みに対して50%以内の領域(好ましくは20%以内の領域、より好ましくは5%以内の領域)に分布する。つまり、ガスバリア部材におけるモノマー吸収層及びガスバリア性物質偏在ポリマー層からなる積層構造(全体の厚さ)に占めるガスバリア性物質偏在部の割合(「占有率」と称する場合がある)は、50%以下(好ましくは20%、より好ましくは5%以下)である。これは、ガスバリア性物質偏在ポリマー層を形成するガスバリア性物質含有重合性組成物層をモノマー吸収層と接する形態で設けると、ガスバリア性物質含有重合性組成物層中の少なくとも1つのモノマー成分がモノマー吸収層に吸収され、ガスバリア性物質がガスバリア性物質含有光重合性組成物層中を移動することによると推測される。
【0098】
なお、占有率が50%を超えると、ガスバリア部材において、強度や取扱性(特にテープ状又はシート状の形態を有する場合の取扱性)の点で問題を生じる場合がある。
【0099】
また、ガスバリア性物質偏在ポリマー層におけるガスバリア性物質が分布する部分(ガスバリア性物質偏在部、ガスバリア性物質偏析部)の厚み(層表面から厚み方向の全厚みに対する、ガスバリア性物質が分布する内部領域の層表面からの厚み方向への高さ;モノマー吸収層とは反対側の界面から厚み方向の全厚みに対する、ガスバリア性物質が分布する内部領域のモノマー吸収層とは反対側の界面からの厚み方向への高さ)は、ガスバリア性物質偏在ポリマー層に含ませるガスバリア性物質の量を調整することにより制御することができる。従って、ガスバリア性物質の使用量を調整することにより、ガスバリア部材のガス透過性を制御することができる。
【0100】
ガスバリア部材の厚さとしては、特に制限されないが、取扱性、コスト面などの観点から、通常10〜2000μm(好ましくは20〜1000μm、より好ましくは30〜500μm)である。
【0101】
また、ガスバリア部材において、モノマー吸収層とガスバリア性物質偏在ポリマー層とを合わせた厚さ(モノマー吸収層及びガスバリア性物質偏在ポリマー層からなる積層構造の厚さ、「全体の厚さ」と称する場合がある)は、特に制限されないが、通常10〜2000μm(好ましくは20〜1000μm、より好ましくは30〜500μm)である。該全体の厚さが、10μm未満であると、ガスバリア部材において、膜厚制御が困難となるおそれや、部材(特にテープ又はシート状の部材)の取り扱いが困難となるおそれがある。
【0102】
ガスバリア部材のガスバリア性物質偏在ポリマー層において、ガスバリア性物質偏在ポリマー層のガスバリア性物質が分布する部分であるガスバリア性物質偏在部では、ガスバリア性物質とガスバリア性物質偏在ポリマー層のポリマー成分とが混在している。また、ガスバリア部材のガスバリア性物質偏在ポリマー層において、ガスバリア性物質が分布する部分(ガスバリア性物質偏在部)とガスバリア性物質が分布しない部分(「ガスバリア性物質非存在部」と称する場合がある)とは、ガスバリア性物質偏在部が層状の形態を有するので区別できる(図1、図2)。
【0103】
なお、ガスバリア部材において、使用するモノマー吸収層と重合性モノマーとの組み合わせによっては、ガスバリア性物質がガスバリア性物質非存在部に微量分散する場合がある。しかし、このようなガスバリア性物質非存在部に微量分散しているガスバリア性物質は、ガスバリア部材のガスバリア特性に影響を与えることはない。本発明のガスバリア部材は、ガスバリア部材がガスバリア性物質偏在ポリマー層のガスバリア性物質偏在部に緻密に存在することによって、ガスバリア特性を発揮するためである。
【0104】
また、ガスバリア部材のガスバリア性物質偏在ポリマー層のガスバリア性物質非存在部の割合(「偏析率」と称する場合がある)は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。偏析率が80%未満であると、ガスバリア性物質によるガス透過を阻害する層状分布構造において、緻密さを維持するのが困難となり、ガスバリア特性が悪化する場合があるためである。
【0105】
なお、ガスバリア部材におけるガスバリア性物質偏在ポリマー層のガスバリア性物質偏在部の見かけ上の厚さは、特に制限されないが、ガスバリア部材において上記の占有率を有するような厚さが好ましい。具体的な厚さとしては、例えば、0.1〜200μm(好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜50μm)である。
【0106】
本発明のガスバリア部材のガス透過性は、透過を抑制しようとするガスに応じて、ガスバリア性物質の種類、形状、大きさ、含有量等、モノマー吸収層の組成、ガスバリア性物質偏在ポリマー層のポリマー成分の組成等、ガスバリア部材におけるガスバリア性物質偏在ポリマー層及びモノマー吸収層の厚さ(全体の厚さ)などを制御することにより、所望のガス透過性に制御することができる。
【0107】
本発明のガスバリア部材は、例えば、様々な分野の包装材や保管用の袋等に用いることができる。例えば、食品、化粧品、医薬品、衛生関連、精密部品、電子部品などの分野が挙げられる。
【0108】
なお、ガスバリア性物質偏在ポリマー層のガスバリア性物質偏在部ではガスバリア性物質とガスバリア性物質偏在ポリマー層のポリマー成分とが混在しているため、ガスバリア性物質が分布するガスバリア性物質偏在ポリマー層のモノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍(表面又は表面近傍)では、ガスバリア性物質偏在ポリマー層のポリマー成分に基づく特性、ガスバリア性物質が元来有する特性、ガスバリア性物質がガスバリア性物質偏在ポリマー層内で偏在することに基づく特性を発揮することができる。
【0109】
ガスバリア性物質偏在ポリマー層のポリマー成分に基づく特性としては、例えばポリマー成分として粘着剤成分を用いた際の粘着性(感圧接着性)などが挙げられる。ガスバリア性物質が元来有する特性としては、ガスバリア性のほか、例えば、親水性、耐熱性が挙げられる。ガスバリア性物質がガスバリア性物質偏在ポリマー層内で偏在することに基づく特性とは、例えばポリマー成分として粘着剤成分を用いた際のガスバリア性物質の含有量を調整することによる粘着性(感圧接着性)の制御、着色などの意匠性、ガスバリア性物質として粒子を用いた際の表面凹凸の付与や該表面凹凸に基づく特性(例えば、再剥離性、アンチブロッキング性、アンチグレア特性、意匠性、光散乱性など)などが挙げられる。
【0110】
従って、本発明によれば、ガスバリア部材を製造する際、ガスバリア性物質含有重合性組成物を用いても、ガスバリア性物質含有重合性組成物に含まれる揮発性成分(例えば、溶剤や有機化合物など)の蒸発除去をせずに、ガスバリア性物質偏在ポリマー層を有するガスバリア部材を製造することができる。
【0111】
また、本発明では、モノマー吸収層としてはガスバリア性物質含有重合性組成物で用いられている重合性モノマーのうち少なくとも一つを吸収することができる限り特に制限されないため、モノマー吸収層の弾性率は特に制限されない。つまり、ガスバリア性物質含有重合性組成物で用いられている重合性モノマーのうち少なくとも一つを吸収することができる限り、粘着剤層、ポリマー層などの弾性率の低いものや、プラスチックシート、ハードコート層、着色塗膜層などの弾性率の高いもののいずれも用いることができる。このため、シートの弾性率に制限されることなく、ガスバリア部材を製造することができる。
【0112】
さらに、本発明では、モノマー吸収層としてポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層を用いる場合、ガスバリア性物質含有重合性組成物で用いられている重合性モノマーのうち少なくとも一つを吸収することができる限り、そのゲル分率は特に制限されない。このため、モノマー吸収ポリマー層において、ゲル分率を98%程度まで架橋していても、あるいは、ほとんど架橋していなくても(ゲル分率:10%以下)、ガスバリア部材を得ることができる。
【0113】
さらにまた、本発明では、モノマー吸収層が、硬い層であれ、軟らかい層であれ、ガスバリア部材を得ることができる。
【実施例】
【0114】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0115】
(光重合性シロップの調製例1)
モノマー成分として、シクロヘキシルアクリレート:100重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した組成物(シロップ)(「光重合性シロップ(A)」と称する場合がある)を調製した。
【0116】
(光重合性シロップの調製例2)
モノマー成分として、ブチルアクリレート:100重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した組成物(シロップ)(「光重合性シロップ(B)」と称する場合がある)を調製した。
【0117】
(ガスバリア性物質含有重合性組成物の調製例1)
ブチルアクリレート:90重量部、アクリル酸:10重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.4重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.4重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.4重量部からなるモノマー混合物に、層状粘土鉱物(商品名「ルーセンタイトSPN」コープケミカル社製、形状:平板状):10重量部を加え、室温(25℃)で24時間静置することによって、層状粘土鉱物を加えたモノマー混合物(白濁)を得た。
その後、該層状粘土鉱物を加えたモノマー混合物に、超音波分散機(日本精機社製)により、500mWの照射強度で超音波を3分間照射した。
なお、該超音波処理により、該層状粘土鉱物を加えたモノマー混合物は透明になった。
超音波処理後の層状粘土鉱物を加えたモノマー混合物に、光重合性シロップ(B)を70重量部加えて、小型ディスパー(商品名「T.K.ロボミックス」プライミックス社製)にて1000rpmで5分間攪拌して、ガスバリア性物質含有重合性組成物を得た(「ガスバリア性物質含有重合性組成物(A)」と称する場合がある)。
【0118】
(カバーフィルム)
カバーフィルムは、片面がシリコーン系離型処理された、厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRN38」三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製)を用いた。
【0119】
(基材フィルム)
基材フィルムは、片面がシリコーン系離型処理された、厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRF38」三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製)を用いた。
【0120】
(基材付きモノマー吸収性シートの作製例1)
光重合性シロップ(A):100重量部に1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を均一に混合した光重合性シロップ組成物(「光重合性シロップ組成物(A)」と称する場合がある)を、前記基材フィルムの剥離処理された面に、硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、光重合性シロップ組成物層を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態で上記カバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を両面から同時に5分間照射し、該層を硬化させてモノマー吸収層を形成させることにより、モノマー吸収層表面が上記カバーフィルムで保護されている基材付きモノマー吸収性シート(「基材付きモノマー吸収性シート(A)」と称する場合がある)を作製した。
【0121】
(実施例1)
上記カバーフィルムの離型処理された面に、モノマー吸収層及びガスバリア性物質含有光重合硬化層の合わせた厚さが140μmとなるようにガスバリア性物質含有重合性組成物(A)を塗布し、カバーフィルム上にガスバリア性物質含有重合性組成物層を有するシートを作製した。
該カバーフィルム上にガスバリア性物質含有重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルムを剥がしてモノマー吸収層を露出させた基材付きモノマー吸収性シート(A)に、モノマー吸収層とガスバリア性物質含有重合性組成物層とが接する形態で、貼り合わせて、積層体を形成した。
該積層体形成から1分後に、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)を両面から同時に5分間照射し、ガスバリア性物質含有重合性組成物層を光硬化させて、ガスバリア性物質含有光重合硬化層(ガスバリア性物質配合光重合硬化層、ガスバリア性物質常温重合硬化層)を形成させることにより、部材を形成した。
なお、該部材において、モノマー吸収層及びガスバリア性物質含有光重合硬化層の合わせた厚さは141μmであり、見かけ上は43μmの厚さでガスバリア性物質含有光重合硬化層が形成されていた。
【0122】
(比較例1)
基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに、前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、部材を形成した。
なお、該部材において、基材フィルム及びガスバリア性物質含有光重合硬化層を合わせた厚さは140μmであった。
【0123】
(評価1)
実施例、及び比較例について、下記の(水蒸気透過度測定方法)により、水蒸気透過度を測定した。この結果を、表1の水蒸気透過度の欄に示した。
【0124】
(水蒸気透過度測定方法)
カバーフィルム及び基材フィルムを剥がしてガスバリア性物質含有光重合硬化層表面及びモノマー吸収層を露出させた部材について、水蒸気透過率測定装置(モコン社製)により、40℃、80%RHの条件で、水蒸気透過率を測定した。
なお、該水蒸気透過度測定方法は、JIS K 7129またはモコン法に準拠する。
【0125】
(評価2)
走査型電子顕微鏡(SEM)で実施例及び比較例の部材の断面を観察した。部材の断面の観察は、部材を−100℃で凍結切断してから、2%ルテニウム酸水溶液で3分間染色処理したものについて、加速電圧:100Vの測定条件により行った。なお、走査型電子顕微鏡として、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「S3400−N」を使用した。
【0126】
走査型電子顕微鏡による実施例及び比較例の部材の断面の観察結果を、図1(実施例1及び比較例1の概略断面図)に示した。1aは実施例1の部材の断面を示し、1bは比較例1の部材の断面を示す。走査型電子顕微鏡による実施例及び比較例の部材の断面の観察から、実施例では、ガスバリア性物質含有光重合硬化層においてガスバリア性物質が、層表面やその近傍に偏って分布していることが確認できた。一方、比較例では、ガスバリア性物質含有光重合硬化層においてガスバリア性物質が、層表面やその近傍に偏って分布することはなく、層中に分散して分布することが確認できた。
【0127】
また、実施例1の部材を−100℃で凍結切削し、厚さ80nmの切片に加工した試料切片の2%ルテニウム酸水溶液で3分間染色処理したものを、加速電圧:100Vの測定条件で、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
なお、実施例1の部材の試料切片の一部分の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)を図2に示した。該走査型電子顕微鏡写真は、ガスバリア性物質含有光重合硬化層12におけるガスバリア性物質11が偏在している部分と、ガスバリア性物質含有光重合硬化層12におけるガスバリア性物質11が偏在してない部分との界面の様子も示している。この走査型電子顕微鏡写真の倍率は、50000倍である。
【0128】
(評価3)
前記の走査型電子顕微鏡(SEM)で部材の断面を観察することや、基材付きモノマー吸収性シート及び部材の厚さについての1/1000ダイヤルゲージを用いた測定により、ガスバリア性物質含有光重合硬化層の厚さ(厚さ:A)、モノマー吸収層の厚さ(厚さ:B)、ガスバリア性物質含有光重合硬化層におけるガスバリア性物質が偏在している部分(ガスバリア性物質偏在部、ガスバリア性物質偏析部)の厚さ(厚さ:C)を求めた。これらの厚さについては、表1のそれぞれの厚さの欄に示した。また、下記の(偏析率の算出方法)により偏析率を求め、さらに下記の(占有率の算出方法)により占有率を求め、これらの値を表1のそれぞれの偏析率あるいは占有率の欄に示した。
【0129】
モノマー吸収層の厚さ(厚さ:B)については、基材付きモノマー吸収性シートの厚さ(基材フィルム、モノマー吸収層及びカバーフィルムの厚さ)を測定し、該基材付きモノマー吸収性シートの厚さから、基材フィルムの厚さ及びカバーフィルムの厚さを除くことにより求めた。
【0130】
モノマー吸収層とガスバリア性物質含有光重合硬化層との積層構造の厚さ(厚さ:A+B、全体の厚さ)については、部材の厚さを測定し、該部材の厚さ(基材付きモノマー吸収性シート、ガスバリア性物質含有光重合硬化層及びカバーフィルムの厚さ)から、基材付きモノマー吸収性シートの基材フィルムの厚さ及びカバーフィルムの厚さを除くことにより求めた。
【0131】
ガスバリア性物質含有光重合硬化層の厚さ(厚さ:A)は、前記全体の厚さ(厚さ:A+B)から前記モノマー吸収層の厚さ(厚さ:B)を除くことにより求めた。
なお、ガスバリア性物質含有光重合硬化層の厚さ(厚さ:A)は、測定値ではなく、理論値である。
【0132】
ガスバリア性物質含有光重合硬化層中のガスバリア性物質が分布する部分(ガスバリア性物質偏在部、ガスバリア性物質偏析部)のガスバリア性物質含有光重合硬化層表面からの厚み方向への高さ(厚さ)(厚さ:C)は、走査型電子顕微鏡による部材断面の観察から求めた。
なお、ガスバリア性物質含有光重合硬化層中のガスバリア性物質偏在部の厚さは、走査型電子顕微鏡による部材断面の観察から測定した平均の値である。
【0133】
(偏析率の算出方法)
ガスバリア性物質含有光重合硬化層の偏析率は、下記式より算出した。
偏析率(%)=(1−C/A)×100
【0134】
(占有率の算出方法)
ガスバリア性物質偏在部がモノマー吸収層とガスバリア性物質含有光重合硬化層との積層構造の厚さ(厚さ:A+B、全体の厚さ)におけるガスバリア性物質含有光重合硬化層表面から深さ方向(厚さ方向)に占める割合(占有率)は、下記式より算出した。
占有率(%)=C/(A+B)×100
【0135】
【表1】

【符号の説明】
【0136】
1a 実施例1の部材の断面
1b 比較例1の部材の断面
11 ガスバリア性物質偏在部
12 ガスバリア性物質含有光重合硬化層
13 モノマー吸収層
14 基材フィルム
15 基材付きモノマー吸収性シート
16 ガスバリア性物質非存在部
17 ガスバリア性物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー層と、そのポリマーを構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層との積層構造を有する部材であって、ポリマー層が、モノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する形態でガスバリア性物質を含むガスバリア性物質偏在ポリマー層であり、且つ最外層であることを特徴とするガスバリア部材。
【請求項2】
モノマー吸収層とは反対側の界面近傍が、モノマー吸収層とは反対側の界面から厚み方向の全厚みに対して50%以内の領域である請求項1記載のガスバリア部材。
【請求項3】
モノマー吸収層が、ポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層である請求項1又は2記載のガスバリア部材。
【請求項4】
ガスバリア性物質が、無機物である請求項1〜3の何れかの項に記載のガスバリア部材。
【請求項5】
ガスバリア性物質偏在ポリマー層のポリマーが、アクリル系ポリマーである請求項1〜4の何れかの項に記載のガスバリア部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−235648(P2011−235648A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152596(P2011−152596)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【分割の表示】特願2007−309900(P2007−309900)の分割
【原出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】