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ガスバリア性積層体及びその製造方法
説明

ガスバリア性積層体及びその製造方法

【課題】
優れたガスバリア性、耐レトルト性、生産性等の特性に加えて、優れた可撓性を有することから、折り曲げても層間剥離を生じることがなく、各層間の密着性に優れたガスバリア性積層体を提供することである。
【解決手段】
プラスチック基材の少なくとも一方の表面に、主材樹脂、イソシアネート系硬化剤及び多価金属のアルカリ性化合物から成るアンダーコート層(A)と、カルボキシル基間に多価金属によるイオン架橋が形成されているポリカルボン酸系ポリマーから成るバリア層(B)を有するガスバリア性積層体において、前記アンダーコート層(A)のバリア層(B)側に、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(b)が形成されており、該領域(b)の窒素の含有量が領域(b)以外のアンダーコート層(A)の窒素の含有量よりも多いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層体及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、優れた酸素バリア性を有すると共に、可撓性及び層間接着性に優れたガスバリア性積層体及びこのガスバリア性積層体を効率よく製造可能な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスバリア材としては種々のものが提案されており、特にポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体等がガスバリア性樹脂として知られている。しかしながら、ポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニトリルは、環境の問題からその使用を控える傾向があり、エチレンビニルアルコール共重合体においては、ガスバリア性の湿度依存性が大きく、高湿度条件下ではガスバリア性が低下するという問題があった。
包装材料にガスバリア性を付与する方法としては、基材の表面に無機物を蒸着したフィルムも知られているが、これらのフィルムはコストが非常に高く、しかも蒸着フィルムの可撓性や基材又は他の樹脂層との接着性に劣るという問題を有している。
【0003】
このような問題を解決するために、ポリカルボン酸系ポリマーと、カルボキシル基と反応する官能基を2〜4個有する架橋剤及び2価以上の金属イオンとを反応させることによって、上記ポリカルボン酸系ポリマーに、架橋剤による架橋部位及び上記2価以上の金属イオンによる架橋部位を形成させ、上記のポリカルボン酸系ポリマーと架橋剤との重量比を99.9/0.1〜65/35としたガスバリア性樹脂組成物(特許文献1)や、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面にガスバリア性の被膜層を形成してなるフィルムであって、この被膜層が1分子当たり3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含む架橋剤によって架橋されたポリアクリル酸から形成され、上記ポリアクリル酸100質量部に対して上記架橋剤を1〜100質量部含有することを特徴とするガスバリア性フィルム(特許文献2)等が提案されている。
【0004】
上記特許文献1及び2に記載されたガスバリア材は、150℃以上の高温或いは長時間の加熱により高度に架橋させることが必要であるため、プラスチック基体への影響が大きいと共に、金属イオンとのイオン架橋に際して浸漬処理や噴霧処理が必要であることから、生産性に劣ると共に、多大なエネルギーや水を消費する等の点で問題があり、また可撓性及び耐レトルト性の点でも十分満足するものではない。
また、比較的低温での乾燥焼付けを可能にしたガスバリア性積層フィルムとして、ポリカルボン酸系重合体を含む塗液(A)から熱処理せずに形成される層(a)及び水溶性多価金属塩と水系樹脂を含む塗液(B)から形成される層(b)を備えており、塗液(A)から形成される層(a)と塗液(B)から形成される層(b)とが、互いに隣接した少なくとも一対の積層単位を形成することを特徴とする、ガスバリア性積層フィルムが提案されている(特許文献3)。
【0005】
上記特許文献3に記載されたガスバリア性積層フィルムは、比較的低温での乾燥焼付けが可能であり、基材に影響を与えることなく、ガスバリア性積層フィルムが得られるが、かかる積層フィルムでは、先に塗布されたポリカルボン酸系重合体が固定されてしまうため、多価金属塩の層(a)への移行が十分に進まず、多価金属によるイオン架橋が不十分であり、焼付け後の後処理として、従来の手法である浸漬処理や噴霧処理を加えてイオン架橋率を高めなければ、ガスバリア性の点で未だ十分満足するものではなかった。
また本発明者等により、ポリカルボン酸系ポリマーから成るバリア層を有するガスバリア材であって、該バリア層の表層にイソシアネート基由来の化学結合が形成され且つ該表層における炭素、酸素及び窒素の総量に対する窒素の含有量が少なくとも1atom%以上であることを特徴とするガスバリア材が提案されている(特許文献4)。
上記ガスバリア材は、予め形成されたイソシアネート化合物含有層の上に、高水素結合性ポリマーを含有するバリア層形成用塗料を塗布した後、該塗料中の溶媒を蒸発させることによって、イソシアネート化合物をバリア層表層に移行させ、イソシアネート基由来の化学結合が形成された表層をバリア層に形成させることができるものであり、優れたガスバリア性、耐レトルト性、生産性等の特性に加えて、イソシアネート化合物含有層をアンカー層として、さらに耐ブロッキング層も形成できるという優れた効果を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−171419号公報
【特許文献2】特開2002−240207号公報
【特許文献3】特開2007−313758号公報
【特許文献4】国際公開第2008/067298号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記ガスバリア材は、プラスチック基材/アンカーコート層/バリア層の各層間の密着性の点で未だ充分満足するものではなかった。すなわち、バリア層へ移行するイソシアネート化合物量が多くなると、バリア層/アンカーコート層、プラスチック基材/アンカーコート層の各界面付近でのイソシアネート化合物存在量が低下するために、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基やプラスチック基材に含まれる例えば水酸基のような官能基との界面反応に使われる、或いは界面での極性基間同士による電気的な凝集力に使われるイソシアネート化合物が減少し、層間密着性が低下するおそれがある。
従って本発明の目的は、プラスチック基材の少なくとも一方の表面に、主材樹脂、イソシアネート系硬化剤及び多価金属のアルカリ性化合物から成るアンダーコート層(A)と、カルボキシル基間に多価金属によるイオン架橋が形成されているポリカルボン酸系ポリマーから成るバリア層(B)を有するガスバリア性積層体において、優れたガスバリア性、耐レトルト性、生産性等の特性に加えて、優れた可撓性を有することから、折り曲げても層間剥離を生じることがなく、各層間の密着性に優れたガスバリア性積層体を提供することである。
本発明の他の目的は、基材、アンカーコート層、バリア層の各層間の密着性に優れ、ガスバリア性、耐レトルト性、可撓性を有するガスバリア性積層体を低温短時間の加熱のみで、簡略化された少ない工程数で、効率よく生産し得るガスバリア性積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、プラスチック基材の少なくとも一方の表面に、主材樹脂、イソシアネート系硬化剤及び多価金属のアルカリ性化合物から成るアンダーコート層(A)と、カルボキシル基間に多価金属によるイオン架橋が形成されているポリカルボン酸系ポリマーから成るバリア層(B)を有するガスバリア性積層体において、前記アンダーコート層(A)のバリア層側(B)に、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(b)が形成されており、該領域(b)の窒素の含有量が領域(b)以外のアンダーコート層(A)の窒素の含有量よりも多いことを特徴とするガスバリア性積層体が提供される。
【0009】
本発明のガスバリア性積層体においては、
1.アンダーコート層(A)のプラスチック基材側に、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(a)が形成されており、該領域(a)の窒素の含有量が領域(b)及び(a)以外のアンダーコート層(A)の窒素の含有量よりも多いこと、
2.アンダーコート層(A)の領域(a)及び(b)以外の部分における炭素、酸素、窒素の総量に対する窒素の含有量が2atom%以上であり、領域(a)及び(b)における炭素、酸素、窒素の総量に対する窒素の含有量が、領域(a)及び(b)以外のアンダーコート層(A)の窒素含有量よりも1atom%以上多く存在すること、
3.バリア層(B)のアンダーコート層(A)とは反対側の表面に、窒素が1乃至14atom%の量で存在すること、
4.主材樹脂が金属元素を樹脂骨格中に含むポリエステルポリオールであり、前記イソシアネート系硬化剤が直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせであること、
5.直鎖状脂肪族イソシアネート化合物と前記脂環式イソシアネート化合物が、60:40乃至15:85(重量比)であること、
6.直鎖状脂肪族イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有すること、
7.ポリカルボン酸系ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸又はその部分中和物であること、
8.多価金属のアルカリ性化合物が、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩、水酸化物の少なくとも1種からなること、
が好適である。
【0010】
本発明によればまた、上記ガスバリア性積層体から成り、該ガスバリア性積層体のバリア層のアンダーコート層と反対側にプラスチック基材が設けられていることを特徴とする包装材が提供される。
本発明によれば更にまた、主材樹脂、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物及び骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物から成るイソシアネート系硬化剤、及び多価金属のアルカリ性化合物から成る塗料組成物を、プラスチック基材に塗布し、熱処理により溶媒を揮発させた後、ポリカルボン酸系ポリマーを有する塗料を塗布することを特徴とするガスバリア性積層体の製造方法が提供される。
本発明のガスバリア性積層体の製造方法においては、脂肪族イソシアネート化合物が、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下、数平均分子量(Mn)が1200以下であり、前記脂環式イソシアネート化合物が、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、数平均分子量(Mn)が400以上であることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、アンダーコート層のバリア層側に多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(b)が形成され、該領域(b)の窒素の含有量が領域(b)以外のアンダーコート層の窒素の含有量よりも多いことにより、優れた可撓性を有し、層間密着性に顕著に優れたガスバリア性積層体を提供することが可能である。
また本発明のガスバリア性積層体は、優れたガスバリア性、耐水性を有すると共に、レトルト殺菌のような高温湿熱条件におかれた後も優れたガスバリア性を達成でき、耐レトルト性をも付与することが可能となる。
更に本発明のガスバリア性積層体の製造方法においては、従来ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間を、多価金属イオンで架橋させるのに必須であった、浸漬処理や噴霧処理を行う必要がなく、工程数が簡略化されている。しかも浸漬処理や噴霧処理を行ったと同様にポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間を架橋することができ、低温短時間での加熱のみで容易に架橋構造を形成することができ、プラスチック基材に悪影響を与えることなく且つ製造時間及びエネルギーを低減することが可能になり、生産性よくガスバリア性積層体を提供することができる。
更にまた、イソシアネート系硬化剤として、主材樹脂に対して相溶性の異なる直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせを用いることによって、アンダーコート層内におけるイソシアネート化合物のブリードアウト(表層移行)の挙動を制御することができ、上記領域(b)を容易に形成できる。
主材樹脂に対して相溶性の高い直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物はアンダーコート層内に均一に拡散し、その一部はバリア層(B)に移行してバリア層表面にブリードアウトする。これに対して、主材樹脂に対して相溶性の低い骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物は、アンダーコート層のバリア層側及び基材側にブリードアウトし、特にバリア層側に濃化する。その一部は相溶性の高い直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と同様にバリア層(B)に移行してバリア層表面にブリードアウトするが、この相溶性の低い脂環式イソシアネート化合物がバリア層側に濃化するために、上記領域(b)を容易に形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のガスバリア性積層体の断面構造の一例を示す図である。
【図2】本発明のガスバリア性積層体の断面構造の他の一例を示す図である。
【図3】本発明のガスバリア性積層体の断面構造の他の一例を示す図である。
【図4】本発明の包装材一例を示す図である。
【図5】本発明のガスバリア性積層体の実施形態の一例を示す図である。
【図6】本発明のガスバリア性積層体の実施形態の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ガスバリア性積層体)
図1にその断面構造を示す、本発明のガスバリア性積層体は、プラスチック基材(P)の少なくとも一方の表面に、主材樹脂、イソシアネート系硬化剤及び多価金属のアルカリ性化合物から成るアンダーコート層(A)と、カルボキシル基間に多価金属によるイオン架橋が形成されているポリカルボン酸系ポリマーから成るバリア層(B)を有するガスバリア性積層体において、前記アンダーコート層(A)のバリア層(B)側に、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(b)が形成されており、該領域(b)の窒素の含有量が領域(b)以外のアンダーコート層(A)の窒素の含有量よりも多いことが重要な特徴である。
アンダーコート層(A)が形成される際に、主材樹脂と相溶性の低い脂環式イソシアネート化合物は、アンダーコート層(A)の基材側及びバリア層(B)側にブリードアウトする。このとき、塗料中の溶剤揮発による流れにより、特にバリア層(B)側に濃化しやすい。
本発明においては、このようなイソシアネート化合物の化学構造由来のコート層形成時の挙動を利用し、これを制御することにより、アンダーコート層(A)に窒素含有量が多い領域(b)を形成することにより、アンダーコート層(A)とバリア層(B)の層間密着性を顕著に向上させることが可能になったのである。
【0014】
アンダーコート層(A)上にポリカルボン酸系ポリマーが塗布されると、アンダーコート層(A)中の多価金属のアルカリ性化合物は、ポリカルボン酸系ポリマーから成る層に移行して速やかに溶解されて多価金属イオンを放出し、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間に金属イオン架橋構造を形成しバリア層(B)となることから、ガスバリア性積層体のアンダーコート層(A)のバリア層(B)側の領域(b)に存在していた多価金属のアルカリ性化合物は、すでに多価金属イオンのバリア層(B)への移行に消費されており、領域(b)にはアルカリ性化合物が存在しない。
これにより、多価金属のアルカリ性化合物を含まず、窒素の含有量が領域(b)以外の層(A)の窒素の含有量よりも多い領域(b)が形成される。この領域(b)の厚みは、直鎖状脂肪族イソシアネート化合物と脂環式イソシアネート化合物の配合比や、主材樹脂と硬化剤の配合比、多価金属のアルカリ性化合物の仕込み量、アンダーコート層の厚みによって決定され、一概に規定することができないが、十分な層間密着性を発現するためには少なくとも0.05μm以上あることが好ましい。
また、本発明のガスバリア性積層体においては、図2に示すように、アンダーコート層(A)のプラスチック基材(P)側にも、多価金属のアルカリ性化合物を含まず、且つ窒素の含有量が領域(b)及び(a)以外のアンダーコート層(A)の窒素の含有量よりも多い領域(a)が、上述した領域(b)と共に形成されていることが好ましく、これにより上述した領域(b)の存在と同様に、アンダーコート層(A)とプラスチック基材(P)との間の層間密着性が向上される。この領域(a)の厚みは、領域(b)と同様に、直鎖状脂肪族イソシアネート化合物と脂環式イソシアネート化合物の配合比や、主材樹脂と硬化剤の配合比、多価金属のアルカリ性化合物の仕込み量、アンダーコート層の厚みによって決定され、一概に規定することができないが、十分な層間密着性を発現するためには、少なくとも0.01μm以上あることが好ましい。
【0015】
本発明のガスバリア性積層体においては、アンダーコート層(A)の領域(a)及び(b)以外の部分における炭素、酸素、窒素の総量に対する窒素の含有量が2atom%以上であり、領域(a)及び(b)における炭素、酸素、窒素の総量に対する窒素の含有量が、領域(a)及び(b)以外のアンダーコート層(A)の窒素含有量よりも1atom%以上多く存在することが好ましい。
【0016】
前述したように、アンダーコート層(A)中のイソシアネート化合物は、ポリカルボン酸系ポリマー含有塗料の溶媒との親和性を制御することにより、該ポリカルボン酸系ポリマー含有塗料にマイグレーションし、バリア層表面へブリードアウト(表層移行)して、更に下記化学式に表わされるように、バリア層(B)を形成するためのポリカルボン酸系ポリマー含有塗料(B’)中のアルコールや水、ポリカルボン酸系ポリマーと反応し、或いはイソシアネート誘導体同士が反応して、バリア層(B)のアンダーコート層(A)とは反対側の表面に、バリア層(B)と相互作用を有するイソシアネート基由来の化学結合を有するイソシアネート化合物含有層(C)が形成される。このイソシアネート化合物含有層は、窒素が1乃至14atom%の量で存在することが好適である(図3参照)。上記範囲より多い場合は、層間密着性が低下し、一方上記範囲より少ない場合には所望の耐ブロッキング効果は得られない。尚、十分な耐ブロッキング性を発現するには、層(C)は0.01μm以上の厚みで存在していれば十分である。
尚、本発明における領域(a)及び(b)に多価金属のアルカリ性化合物を含まないことの確認および厚みの見積もりは、傾斜切削により作製した断面のTEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)観察により、領域(a)及び(b)、層(A)及び(C)における炭素、酸素及び窒素の原子の含有量は、XPS(X‐ray Photo-electronic Spectroscopy:X線光電子分光法)による表面分析によって測定することができる。
【0017】
【化1】

【0018】
(アンダーコート層)
本発明のガスバリア性積層体において、アンダーコート層は、後述する、主材樹脂、イソシアネート系硬化剤及び多価金属のアルカリ性化合物から成るものであるが、主材樹脂が金属元素を樹脂骨格中に含むポリエステルポリオールであり、イソシアネート系硬化剤が直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせであることが特に好適である。
すなわち、主材樹脂として金属元素を樹脂骨格中に含むポリエステルポリオールは、それ自体アンカーコート剤としてアンダーコート層(A)をプラスチック基材に密着性よく積層することができると共に、金属元素を有することにより水含有溶剤に対して膨潤しやすいことから、ポリカルボン酸系ポリマーを有する塗料を塗布することにより膨潤して、アンダーコート層(A)中に存在する多価金属イオンを効果的にバリア層中に移行させることが可能になる。
【0019】
またイソシアネート系硬化剤として、主材樹脂に対して相溶性の異なる直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせを用いることによって、イソシアネート化合物のマイグレーションアンダーコート層内におけるブリードアウトの挙動を制御することが可能になる。
すなわち、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物は主材樹脂に対して相溶性が高いことから、アンダーコート層内に均一に拡散する。これに対して骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物は主材樹脂に対する相溶性が劣るため、アンダーコート層のバリア層側及び基材側にブリードアウトし、特にバリア層側に濃化することから、領域(b)の窒素含有量が、アンダーコート層(A)の領域(b)、好適には(b)及び(a)以外の部分の窒素含有量よりも多くなっている。
【0020】
[主材樹脂]
本発明のアンダーコート層に用いる主材樹脂としては、金属元素が樹脂骨格中に含まれる非水系樹脂を用いることが好適であり、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系等を樹脂分とするものであることが好ましく、これらのポリマーを構成するモノマーに金属塩基を導入させておくことによって、形成される樹脂骨格中に金属元素を含ませることができる。尚、「非水系樹脂」とは、水分を含む溶媒に分散させたエマルジョンやラテックス、或いは水溶性の樹脂を除く概念であり、これにより、水含有溶剤との接触時に生じる過度な膨潤によるアンダーコート層(A)の機械的強度の低下が有効に防止されている。
樹脂のモノマーに導入させておくのに好適な金属塩基としては、多価金属の分散性を向上させるため極性を有する官能基を有していることが望ましく、スルホン酸金属塩基、リン酸金属塩基等を挙げることができる。また金属元素としては、リチウムLi,カリウムK,ナトリウムNa,マグネシウムMg,カルシウムCa,銅Cu,鉄Fe等を挙げることができるが、1価の金属元素であることが特に好適であり、本発明においては、特にスルホン酸ナトリウムが導入されていることが好適である。
【0021】
本発明においては、基材との優れた密着性を得るため、また多価金属のアルカリ性化合物の分散性を高めるために、イソシアネート系硬化剤を用いることから、イソシアネート系硬化剤に対する主材樹脂として、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール、或いはこれらのウレタン変性物等のポリオール成分を用いることが好ましく、これにより層(A)中にウレタン結合が形成され、基材との優れた密着性及び多価金属のアルカリ性化合物の分散性を高めることができる。尚、ポリオール成分中の水酸基分を反応させるのに必要なイソシアネート系硬化剤の重量を1当量としたとき、イソシアネート系硬化剤が少なくとも4当量以上となるように存在していることが好ましい。
【0022】
ウレタン系ポリマー形成に使用されるポリオール成分としては、ポリエステルポリオール又はそのウレタン変性物が好ましい。これらのポリエステルポリオール成分としては、多価カルボン酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、グリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
前記ポリエステルポリオールのガラス転移温度は、−50℃乃至100℃が好ましく、−20℃乃至80℃がより好ましい。また、これらのポリエステルポリオールの数平均分子量は1000乃至10万が好ましく、3000乃至8万がより好ましい。
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0023】
本発明においては、上記ポリオール成分或いは多価カルボン酸成分に、金属塩基が導入された成分を共重合させることにより、樹脂骨格中に金属元素を有する非水系樹脂とすることができる。
このような金属塩基が導入された多価カルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸等の金属塩を挙げることができる。また金属塩基が導入されたポリオールとしては2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオール等の金属塩が挙げられる。特に好ましいものは5−ナトリウムスルホイソフタル酸である。
金属塩基が導入された成分は、0.01乃至10モル%の量で共重合されていることが望ましい。上記範囲よりも少ない場合には、多価金属イオンの移行を十分促進することができず、一方上記範囲よりも多い場合には、耐水性に劣るようになる。
尚、金属元素が非水系樹脂の樹脂骨格中に含まれるか否かは、例えば、原料樹脂の蛍光X線による分析により検出することができる。
(蛍光X線分析装置の測定条件)
使用機器:理学電機製 ZSX100e
測定条件:測定対象 Na−Kα線
測定径 30mm
X線出力 50kV-70mA
測定時間 40s
【0024】
[イソシアネート系硬化剤]
本発明に用いられるイソシアネート系硬化剤としては、前述した通り、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物を組み合わせで用いることが特に好ましい。
また直鎖状脂肪族イソシアネート化合物と前記脂環式イソシアネート化合物は重量比で、60:40乃至15:85、特に55:45乃至30:70の割合で配合されることが望ましい。上記範囲よりも直鎖状脂肪族イソシアネート化合物が少ない場合には、十分な接着性を得ることができず、また上記範囲よりも脂環式イソシアネート化合物が少ない場合には、領域(b)を形成することが困難になるおそれがある。
【0025】
直鎖状の脂肪族イソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができ、中でもイソシアヌレート構造を有するものであることが好適であり、具体的には、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを構造単位とするイソシアヌレート体を好適に使用することができる。
また、骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物としては、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができ、中でもイソホロンジイソシアネート及びその誘導体を好適に使用することができる。
上記直鎖状脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式イソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を用いることもできる。
【0026】
本発明においては、直鎖状脂肪族イソシアネート化合物は、溶剤揮散と共に拡散する際にアンダーコート層内に均一に拡散しやすいという点から、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下、数平均分子量(Mn)が1200以下、特にガラス転移温度(Tg)が−40℃以下、数平均分子量(Mn)が1100以下であることが好ましい。また、脂環式イソシアネート化合物は、アンダーコート層(A)のバリア層側、或いはプラスチック基材側に留まって、領域(b)及び(a)を形成することが容易になるという点から、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、数平均分子量(Mn)が400以上、特にガラス転移温度(Tg)が60℃以上、数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましい。
【0027】
[多価金属のアルカリ性化合物]
本発明に用いる多価金属のアルカリ性化合物は、ポリカルボン酸系ポリマーを含有する塗料に移行した多価金属のアルカリ性化合物が速やかに溶解するという点で、多価金属のアルカリ性化合物の粒子の表面には化学処理が施されていないことが好ましい。
本発明においてはまた、ガスバリア性積層体のアンダーコート層(A)中の領域(a)及び(b)以外の部分に多価金属のアルカリ性化合物の粒子が残存することがあり、粒子の残存量にもよるが、粒子の1次粒径が0.5μmを超えるとガスバリア性積層体の透明性がわずかながら低下することがある。よって、多価金属のアルカリ性金属粒子の1次粒径は0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることが特に好ましい。多価金属のアルカリ性化合物粒子の1次粒径は、走査型電子顕微鏡の2次電子像での観察により求めることができる。
【0028】
多価金属イオンとしては、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基を架橋可能である限り特に制限されず、アルカリ土類金属(マグネシウムMg,カルシウムCa、ストロンチウムSr,バリウムBa等)、周期表8族金属(鉄Fe,ルテニウムRu等)、周期表11族金属(銅Cu等)、周期表12族金属(亜鉛Zn等)、周期表13族金属(アルミニウムAl等)等の金属イオンが例示できるが、特に2〜3価であることが好ましく、好適にはカルシウム、マグネシウムイオン、亜鉛等の2価の金属イオンを使用できる。また、上記金属イオンは1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
多価金属のアルカリ性化合物としては、上記金属の、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、有機酸塩、例えば、カルボン酸塩(例えば、酢酸亜鉛、酢酸カルシウム等の酢酸塩、或いは乳酸亜鉛、乳酸カルシウム等の乳酸塩等)等を例示できるが、食品の包装材として使用する場合の安全性の観点や金属イオン架橋が形成される際の副生成物が層(B)中に留まらない点で、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩、水酸化物の少なくとも1種類を使用することが特に好ましい。
【0029】
本発明においては、アンダーコート層(A)を形成する塗料組成物(A’)において、多価金属のアルカリ性化合物の含有量は、多価金属イオン1個に対してカルボキシル基2個が反応するとして、金属原子換算で、後述する溶液(B’)中に存在するポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基に対して、0.4当量以上となるように含有することが好ましく、特にレトルト殺菌に付する用途に用いる場合には、0.6当量以上となるように含有することがレトルト殺菌後のガスバリア性を維持する上で好ましい。上記範囲よりも多価金属のアルカリ性化合物の含有量が少ないと、ポリカルボン酸系ポリマーの架橋を充分に行うことができず、ガスバリア性を確保することが困難になる。
また塗料組成物(A’)中の樹脂分の含有量は、15乃至80重量%、特に20乃至60重量%となるように調製することが好ましい。
また塗料組成物(A’)において樹脂分は非水系であることが望ましく、トルエン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、ソルベッソ、イソホロン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶剤で調製することができるが、特に低温での層形成を可能にするために低沸点溶媒を用いることが好ましい。これらの溶剤は単独或いは混合液に溶解させてもよいし、或いは各成分の溶液を混合することによっても調製できる。
また上記成分の他に、公知である硬化促進触媒,充填剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂、繊維類、顔料等の着色剤、可使用時間延長剤等を使用することもできる。
【0030】
(バリア層)
上述した塗料組成物(A’)により形成されるアンダーコート層(A)上に塗布され、バリア層(B)を形成する溶液(B’)は、少なくとも水を含有する溶媒中にポリカルボン酸系ポリマーを溶解することにより、ポリカルボン酸系ポリマーが解離している溶液である。
溶液(B’)に含有されるポリカルボン酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー等のカルボキシル基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体を挙げることができ、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸が好ましい。また、溶液中でのポリカルボン酸系ポリマーの解離状態を促進するために、これらの部分中和物を用いてもよい。
上記ポリカルボン酸系ポリマーは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化金属塩、アンモニア等により部分中和することができる。
上記部分中和物の中和度は、特に限定されないが、カルボキシル基に対するモル比で60%以下、特に40%以下であることが好ましい。上記範囲よりも多いと、多価金属のアルカリ性化合物による十分なイオン架橋が得られない。
【0031】
ポリカルボン酸系ポリマーの「重量平均分子量」は、特に限定されないが、2000乃至5,000,000、特に10,000乃至1,000,000の範囲にあることが好ましい。
上記「重量平均分子量」の測定は、分離カラムとして「TSK G4000PWXL」、「TSK G3000PWXL」(東ソー株式会社製)の2本を用いて、溶離液として50mmolリン酸水溶液を用い40℃及び流速1.0ml/分において、クロマトグラムと標準ポリカルボン酸系ポリマーの検量線から求めた。
【0032】
溶液(B’)に使用する溶媒としては、水だけでもよいが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2−ブタノン、アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族系溶剤と水との混合溶媒であってもよく、特に水よりも低沸点の溶剤を水と組み合わせて用いることができる。
好適には、多価金属のアルカリ性化合物を含有するアンダーコート層(A)と良親和の溶剤を用いることがアンダーコート層(A)との親和性を向上させ、多価金属のアルカリ性化合物の溶液(B’)への移行を促進させる上で望ましい。アンダーコート層(A)と良親和の溶剤としては、塗料組成物(A’)で用いた樹脂分によって異なるが、例えばウレタン系ポリマーを用いた場合には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2−ブタノン、アセトン等のケトン等を好適に用いることができる。
溶媒として水と他の溶剤との混合溶媒を用いる場合には、水100重量部に対して1900重量部以下、特に105乃至900重量部の量で他の溶剤を配合することが望ましい。
【0033】
溶液(B’)には、ポリカルボン酸系ポリマーの未反応のカルボキシル基と反応し、共有結合による架橋構造を形成可能な架橋剤を配合してもよい。すなわちアンダーコート層(A)中から移行した多価金属イオンがポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基とイオン架橋による架橋構造を形成するが、かかる架橋に使用されなかったカルボキシル基を架橋剤で架橋し、架橋部に共有結合による架橋構造を形成することにより、形成させるバリア層の耐熱水性を向上させることも可能である。過酷な熱水処理に対して耐性向上が必要な場合は、このような架橋構造を用いて対処することができる。このような架橋剤として特に好適なものは、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造、すなわち−N=C−O−基、或いは=C−O−部分を環内に持つオキソイミノ基を有する環構造を2個含有する化合物、或いは分子内に脂環族基を有し且つ脂環族基の隣接炭素原子がオキシラン環を形成しているエポキシ化合物成分を含有する脂環式エポキシ化合物を挙げることができ、これらの架橋剤を用いることにより、架橋部にエステル結合又はアミドエステル結合を少なくとも2つ形成させることができる。
これらの架橋剤は単独或いは組み合わせで使用することができる。
【0034】
架橋剤は、環構造が1個では架橋することができず、3個以上では架橋点の構造が3次元的に広がり、ガスバリア性に優れた緻密な架橋構造が形成できないため好ましくない。これらのことより、窒素と炭素が二重結合を形成していること、炭素がエーテル結合を形成していること、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成されていること、それらの条件が単独で存在するだけではなく、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造を2個含有することが重要である。
また上記環構造を有する架橋剤は、同一の環構造が2個のものでもよいし、異なる環構造の組み合わせであってもよいが、少なくとも1個がオキサゾリン基又はその誘導体であることが好適である。
具体的には、機械的特性及び着色等の点から、ポリカルボン酸系ポリマーと環構造を2個有する化合物により形成される架橋部分が、脂肪族鎖により形成されていることが好適であることから、上記化合物の中でも芳香環を有しないものを好適に使用することができ、中でも2,2’−ビス(2−オキサゾリン)を特に好適に用いることができる。
【0035】
また脂環式エポキシ化合物としては、分子内に脂環族基を有し且つ脂環族基の隣接炭素原子がオキシラン環を形成しているエポキシ化合物成分を含有するものであり、例えば分子内に少なくとも1個のエポキシシクロアルキル基、例えばエポキシシクロヘキシル基、エポキシシクロペンチル基等を有するエポキシ化合物等を単独或いは組み合わせで使用することができる。
脂環式エポキシ化合物としては、後述する1分子中に2個のエポキシシクロヘキシル基を有する脂環式エポキシ化合物の他、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等を例示できる。
【0036】
本発明に用いる脂環式エポキシ化合物においては、1分子中に2個のエポキシ基を有する2官能のものであることが好適である。
すなわち、2官能の脂環式エポキシ化合物を用いた場合には、3官能以上の多官能の脂環式エポキシ化合物を用いた場合に比して、架橋構造が3次元的に広がり難く、ガスバリア性に優れた緻密な架橋構造を形成することができる。また多官能の脂環式エポキシ化合物を用いた場合のように、形成される膜が硬く脆くないため、レトルト殺菌後の可撓性に優れ、満足する耐レトルト性を得ることができる。
2官能の脂環式エポキシ化合物としては、好適には脂環式エポキシ基、より好適には脂環族基を有し且つ脂環基の隣接炭素原子がオキシラン環を形成しているエポキシシクロアルキル基、特にエポキシシクロヘキシル基を1分子中に少なくとも1個、更に好適にはエポキシシクロヘキシル基を2個有する脂環式エポキシ化合物を好適に使用することができる。
【0037】
溶液(B’)中に含有されるポリカルボン酸系ポリマーは、2乃至60重量%、特に4乃至40重量%の量で含有されていることが好ましく、これにより優れたガスバリア性を得ることが可能となる。
また溶液(B’)中に、必要により含有される架橋剤は、ポリカルボン酸系ポリマー100重量部に対して0.1乃至20重量部の量で配合されていることが好ましい。上記範囲よりも少ない場合には、耐熱水性を各段向上させるには至らず、一方上記範囲よりも多いと経済性に劣ると共に、多価金属イオンがカルボキシル基と充分な架橋構造を形成することができず、ガスバリア性を向上させることができない。
【0038】
溶液(B’)の調製は、少なくとも水を含有する溶媒で、ポリカルボン酸系ポリマーの溶液を調製し、その溶媒組成で上述した架橋剤も可溶であればそのまま加えても良いし、架橋剤が可溶で、ポリカルボン酸系ポリマーの溶液に添加後、溶液状態が保持できる溶媒組成で別に溶かしてから、ポリカルボン酸系ポリマーの溶液に加えても良い。
またポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基と、架橋剤との反応を促進するために酸性又は塩基性触媒を加えてもよい。
酸触媒としては、酢酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、安息香酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等の一価の酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ポリカルボン酸等の二価以上の酸を挙げることができる。
塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミントリエチルアミンなどが挙げられる。
【0039】
また溶液(B’)には、上記成分以外にも、無機分散体を含有することもできる。このような無機分散体は、外部からの水分をブロックし、ガスバリア材を保護する機能を有し、ガスバリア性や耐水性を更に向上させることができる。
かかる無機分散体は、球状、針状、層状等、形状は問わないが、ポリカルボン酸ポリマー及び必要により配合される架橋剤に対して濡れ性を有し、溶液(b)中において、良好に分散するものが使用される。特に水分をブロックし得るという見地から、層状結晶構造を有するケイ酸塩化合物、例えば、水膨潤性雲母、クレイ等が好適に使用される。これらの無機分散体は、アスペクト比が30以上5000以下であることが層状に分散させ、水分をブロックするという点で好適である。
無機分散体の含有量はポリカルボン酸ポリマー及び架橋剤の合計100重量部に対し、5乃至100重量部の量で含有していることが好ましい。
【0040】
(プラスチック基材)
本発明において、アンダーコート層(A)を形成するプラスチック基材としては、熱成形可能な熱可塑性樹脂から、押出成形、射出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形或いはプレス成形等の手段で製造された、フィルム、シート、或いはボトル状、カップ状、トレイ状、缶形状等の任意の包装材を挙げることができる
【0041】
プラスチック基材を構成する樹脂の適当な例は、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−共重合体、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等のアクリル系共重合体;ポリカーボネート等である。
【0042】
これらの熱可塑性樹脂は単独で使用しても或いは2種以上のブレンド物の形で存在していてもよい、またプラスチック基体は、単層の構成でも、或いは例えば同時溶融押出しや、その他のラミネーションによる2層以上の積層構成であってもよい。
勿論、前記の溶融成形可能な熱可塑性樹脂には、所望に応じて顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤の1種或いは2種類以上を樹脂100重量部当りに合計量として0.001部乃至5.0部の範囲内で添加することもできる。
また、例えば、この容器を補強するために、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材、或いはカーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材、或いはガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材の1種類或いは2種類以上を、前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として2乃至150重量部の量で配合でき、更に増量の目的で、重質乃至軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の1種類或いは2種類以上を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
さらに、ガスバリア性の向上を目指して、鱗片状の無機微粉末、例えば水膨潤性雲母、クレイ等を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
同様に、ガスバリア性の向上を目指して、プラスチック基材上に物理的或いは化学的に気相蒸着法を用いて、例えば酸化ケイ素や酸化アルミニウムのような無機物系の薄膜層を設けても何ら差し支えない。
【0043】
またプラスチック基材は、最終フィルム、シート、或いは容器等の成形品であっても良いし、容器に成形するための予備成形物にこの被覆を予め設けることもできる。このような予備成形体としては、二軸延伸ブロー成形のための有底又は無底の筒状パリソン、プラスチック罐成形のためのパイプ、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形のためのシート、或いはヒートシール蓋、製袋のためのフィルム等を挙げることができる。
【0044】
(ガスバリア性積層体の製造)
本発明のガスバリア性積層体の製造方法においては、上述したプラスチック基材(P)の少なくとも一方の表面に、まず前述した塗料組成物(A’)を塗布する。
塗料組成物(A’)の塗工量は、塗料組成物(A’)中の樹脂分及び多価金属のアルカリ性化合物の仕込み量によって決定され、一概に規定することができないが、形成される層(A)中に樹脂分が0.02乃至5.0g/m、特に0.1乃至2.5g/mの範囲となり、且つ次いで塗布する溶液(B’)中のポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基に対して、多価金属イオンが、前述したように、0.4当量以上になるように塗布することが好ましい。上記範囲よりも樹脂分が少ないと、アンダーコート層(A)をプラスチック基材(P)に固着させることが困難となり、一方上記範囲よりも樹脂分が多くても経済性に劣るだけで格別なメリットがない。
またプラスチック基体(P)上に塗布された塗料組成物(A’)は、用いる塗料の種類及び塗工量にもよるが、50乃至200℃の温度で0.5秒乃至5分間、特に、60乃至140℃の温度で1秒乃至2分間、乾燥させることによって、アンダーコート層(A)を形成することが可能であり、これによりプラスチック基材に影響を与えることなく、経済的にアンダーコート層(A)を形成できる。
【0045】
次いで形成されたアンダーコート層(A)の上に、溶液(B’)を塗布する。溶液(B’)中の樹脂組成物に含まれるポリカルボン酸系ポリマー量、即ち遊離カルボキシル基量は、酸価で少なくとも150KOHmg/g以上、特に250乃至970KOHmg/gの範囲であることが好ましい。ここで酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性遊離官能基を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を、アルカリ中和滴定に基づく常法により求めたものである。溶液(B’)の塗工量は、バリア層(B)中にイオン架橋が形成される前の樹脂分のみの乾燥状態で、0.3乃至4.5g/m、特に0.5乃至3.0g/mの範囲となるように塗布することが好ましい。上記範囲よりも塗工量が少ないと、十分なバリア性が得られない。一方上記範囲よりも樹脂分が多くても経済性に劣るだけで格別なメリットがない。
次いで、塗布された溶液(B’)の加熱処理を行うが、本発明においてはこの加熱処理の際にアンダーコート層(A)中の多価金属イオンが溶液(B’)中に移行して、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間に架橋構造を形成する。また溶液(B’)中に架橋剤が含有されている場合には、同時に架橋剤によりポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間に共有結合による架橋構造が形成される。
この溶液(B’)の加熱条件は、30乃至140℃、特に40乃至120℃の温度で、0.1秒乃至1分の範囲にあることが好ましく、1秒乃至30秒の範囲にあることがより好ましい。
【0046】
上述した塗料組成物(A’)及び溶液(B’)の塗布、及び乾燥或いは加熱処理は、従来公知の方法により行うことができる。
塗布方法としては、これに限定されないが、例えばスプレー塗装、浸漬、或いはバーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等により塗布することが可能である。
また乾燥或いは加熱処理は、オーブン乾燥(加熱)、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。
【0047】
(ガスバリア性積層体)
本発明の製造方法により製造されるガスバリア性積層体は、プラスチック基材(P)上の少なくとも一方の表面に2層構成で形成されて成り、プラスチック基材上に形成されるアンダーコート層(A)はプラスチック基材との密着性に優れた塗膜であり、この塗膜の上にポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間が、多価金属イオンにより20%以上、特に30%以上の割合でイオン架橋されているバリア層(B)が形成されている。
またこのバリア層(B)においては、前述した架橋剤が配合されている場合には、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間に共有結合による架橋構造、特にエステル結合又はアミドエステル結合が形成されており、これにより、耐熱水性が顕著に優れたバリア層とすることができる。
本発明の製造方法により製造されるガスバリア性積層体は、バリア層自体が充分なガスバリア性能を有しており、レトルト前の酸素透過量(JIS K−7126に準拠)が0.3cm/m・day・atm(25℃−80%RHの環境下)以下、レトルト後においても酸素透過量が0.7cm/m・day・atm(25℃−80%RHの環境下)以下という優れたガスバリア性及び耐レトルト性を有している。また、実施例に示す方法で、レトルト処理後にゲルボフレックステスターによる200回クラッシュ処理をした後の酸素透過量で可撓性を評価した場合、酸素透過量が10cm/m・day・atm(25℃−80%RHの環境下)以下という優れた可撓性を有し、その結果、層間剥離を生じることもなく、優れた層間密着性をも有している。
【0048】
(包装材)
本発明の包装材は、前述した種々の形態のプラスチック基材(P)の少なくとも一方の表面上にアンダーコート層(A)及びバリア層(B)を形成した本発明のガスバリア性積層体をそのまま包装材として使用することができるが、好適には、図4に示すように、プラスチック基材(P1)上にアンダーコート層(A)及びバリア層(B)が形成された本発明のガスバリア性積層体のバリア層(B)側に、更にプラスチック基材(P2)が形成され、アンダーコート層(A)及びバリア層(B)を中間層とすることが望ましい。
【実施例】
【0049】
本発明を次の実施例によりさらに説明するが、本発明は次の例により何らかの制限を受けるものではない。
【0050】
(酸素透過量)
得られたプラスチックフィルムのラミネート積層体の酸素透過量を、酸素透過量測定装置(Modern Control社製、OX―TRAN2/20)を用いて測定した。また、121℃―30分のレトルト処理を行った後の酸素透過量も測定した。測定条件は環境温度25℃、相対湿度80%である。
【0051】
(窒素存在量)
以下の方法を用いて、各領域における酸素及び窒素の総量に対する窒素存在量を測定した。
領域(b):得られたプラスチックフィルムをアルカリ性水溶液に浸漬して層(B)を溶解後、露出した表面をXPSにて組成分析。
層(A):得られたプラスチックフィルムを傾斜切削し、該当する領域をXPSにて組成分析。
領域(a):得られたプラスチックフィルムのラミネート積層体において、基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムPとアンダーコート層Aの界面で機械的に剥離し、露出したアンダーコート層Aの表面をXPSにて組成分析。
層(C):得られたプラスチックフィルムの表面をXPSにて表面分析。
【0052】
(イオン架橋率)
イオン架橋率は、イオン架橋形成後のガスバリア性積層体を用い、フーリエ変換赤外分光光度計で測定して算出する。イオン架橋の形成により、カルボン酸はカルボン酸塩へと転換する。一般に、カルボン酸の特性吸収帯は、920〜970cm−1付近、1700〜1710cm−1付近、2500〜3200cm−1付近の波長に、更に酸無水物では1770〜1800cm−1付近の波長にあることが知られている。また、カルボン酸塩の特性吸収帯は、1480〜1630cm−1付近の波長にあることが知られている。イオン架橋率の算出には、1600〜1800cm−1のカルボン酸および酸無水物の波長領域に頂点を有するピークの高さと、1480〜1630cm−1のカルボン酸塩の波長領域に頂点を有するピークの高さを用いる。より好ましくは、1695〜1715cm−1(i)と1540〜1610cm−1(ii)の波長領域に頂点を有するピークの高さを用いる。各試料の赤外吸収スペクトルを検出し、(i)および(ii)の波長での吸光度を測定しピーク高さを得る。カルボン酸とカルボン酸塩の吸光度係数を同じと見なし、カルボキシル基の塩転換率(カルボン酸からカルボン酸塩へ変換した割合)、即ちイオン架橋率Xを下記式(1)により算出する。
X=(ii)のピーク高さ/[(i)のピーク高さ+(ii)のピーク高さ] …(1)
尚、(i)及び(ii)のピーク高さは、当ピークのすそ部分がベースラインに重なる点とピーク頂点の吸光度差をいう。
【0053】
(フーリエ変換赤外分光光度計の測定条件)
使用機器:Digilab社製 FTS7000series
測定方法:ゲルマニウムプリズムを用いた一回反射法
測定波長領域:4000〜700cm−1
【0054】
(層間密着性の評価)
得られたプラスチックフィルムのラミネート積層体を折り曲げて固定し、20〜25℃の水に浸漬した状態で保管した。その後、水から取り出した際に、折り曲げた部位のガスバリア積層体中に剥離箇所の有無を確認した。3日間保管後で剥離箇所が1箇所以上あった場合は、層間密着性は×、3日間保管後では剥離が無く、1週間保管後に剥離箇所が1箇所以上あった場合の層間密着性は○、1週間保管後に剥離箇所が全くなかった場合の層間密着性は◎、とした。
【0055】
(可撓性の評価)
得られたプラスチックフィルムのラミネート積層体を、121℃−30分のレトルト殺菌処理を行った後に、130mm×100mmの大きさに切り出し、30mmφで長さ130mmの円筒状にしてゲルボフレックステスターに取り付けた。温度23℃、相対湿度50%RHの環境下でゲルボフレックステスターによりクラッシュ処理を200回行った。1回のクラッシュ処理は、ねじり運動(ねじれ角180℃、運動長60mm)と水平運動(運動長20mm)から成る。その後、上述の通り酸素透過量を測定した。
【0056】
(実施例1)
重量比50/50の2種のポリエステルポリオール、バイロン
V200(東洋紡績製、樹脂骨格中に金属元素を含有していない非水系樹脂:蛍光X線にて確認)及びバイロンGK570(東洋紡績製、樹脂骨格中に金属元素を含有する非水系樹脂:蛍光X線にて確認)を、酢酸エチル/MEK混合溶媒(重量比で65/35)で溶解した液に対して、炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ製、CS3N−A、一次粒径:0.3μm)を400重量%になるよう配合して全固形分を35%とした後、ガラスビーズ(東新理興製、BZ-04)によりミル分散してペーストを得た。このペーストに、直鎖状脂肪族ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、スミジュールN3300、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートベースのイソシアヌレート型、固形分100%、Tg=−60℃、Mn=680)をポリエステルポリオールに対して20重量%加え、脂環式ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、デスモジュールZ4470、イソホロンジイソシアネートベースのイソシアヌレート型、酢酸ブチル溶解品、固形分70%、Tg=70℃、Mn=1200)を、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量%となるよう加え、全固形分が25重量%になるよう前記混合溶媒にて調製し、多価金属のアルカリ性化合物を含有する塗料組成物(A’)から成るコーティング液(A”)とした。
前記コーティング液(A”)をバーコーターにより、厚み12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムPに塗布した後、ボックス型の電気オーブンにより、設定温度70℃、処理時間2分の条件で熱処理し、塗工量1.4g/mの層(A)に該当する層Aを有するポリエチレンテレフタレートフィルムとした。
【0057】
ポリカルボン酸系ポリマーとしてポリアクリル酸(東亞合成製、AC-10LP、Mn=2.5万)を用い、水/アセトン混合溶媒(重量比で50/50)に、固形分が10重量%になるように溶解して、溶液(B’)を得た。
前記溶液(B’)をバーコーターにより、層Aを有する上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの層A上に、塗工量が1.5g/mになるよう塗布して前駆体層(B0)とした。ここで前駆体層(B0)の塗工量とは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに直接溶液(B’)を塗布して乾燥した、即ちイオン架橋を形成させずに溶液(B’)中のポリアクリル酸だけを乾燥して求めた塗工量のことである。塗布後の上記フィルムをコンベア型の電気オーブンにより、設定温度60℃、パスタイム5秒の条件で熱処理することで、前駆体層(B0)中にイオン架橋を形成させた層Bを、層A上に有するポリエチレンテレフタレートフィルム、即ちガスバリア性積層体を得た。
前記ガスバリア性積層体のコーティング層を下層にして、厚み2μmのウレタン系接着剤の層D、厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルムE,厚み2μmのウレタン系接着剤の層F及び厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムP2を順次ラミネートし、図5に示すような層構成のラミネート積層体1を得た。
【0058】
(実施例2)
実施例1において、コーティング液(A”)中の、直鎖状脂肪族ポリイソシアネートをポリエステルポリオールに対して30重量%、脂環式ポリイソシアネートを、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して30重量%とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0059】
(実施例3)
実施例1において、コーティング液(A”)中の、直鎖状脂肪族ポリイソシアネートをポリエステルポリオールに対して12重量%、脂環式ポリイソシアネートを、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して12重量%とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0060】
(実施例4)
実施例1において、コーティング液(A”)中の、直鎖状脂肪族ポリイソシアネートをポリエステルポリオールに対して10重量%、脂環式ポリイソシアネートを、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して50重量%とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0061】
(実施例5)
実施例1において、コーティング液(A”)中の、直鎖状脂肪族ポリイソシアネートをポリエステルポリオールに対して30重量%、脂環式ポリイソシアネートを、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量%とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0062】
(実施例6)
実施例1において、コーティング液(A”)中のバイロンGK570の替わりに、バイロン550(東洋紡績製、樹脂骨格中に金属元素を含有していない非水系樹脂:蛍光X線にて確認)を用い、溶液(B’)中の水/アセトン混合溶媒の組成を重量比で80/20とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0063】
(実施例7)
実施例1において、溶液(B’)中のポリアクリル酸10―LPを、20重量%分を10―LHP(東亜合成製、Mn=25万)に置き換える以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0064】
(実施例8)
実施例1において、溶液(B’)中のポリアクリル酸のカルボキシル基の10mol%を水酸化ナトリウムにより部分中和する以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0065】
(実施例9)
実施例1において、溶液(B’)中の水/アセトン混合溶媒の組成を重量比で20/80とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0066】
(実施例10)
実施例1において、溶液(B’)中の水/アセトン混合溶媒の組成を重量比で80/20とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0067】
(実施例11)
実施例1において、ガスバリア積層体のコーティング層を下層にする替わりに、コーティング層が外使いとなるようにして、厚み2μmのウレタン系接着剤の層D、厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルムE、厚み2μmのウレタン系接着剤の層F及び厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムP2を順次ラミネートし、図6に示すような層構成のラミネート積層体2を得た。
【0068】
(実施例12)
実施例1において、コーティング液(A”)中の炭酸カルシウムの替わりに水酸化カルシウム(和光純薬製)とし、層(A)の塗工量を1.1g/mとする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0069】
(実施例13)
実施例1において、コーティング液(A”)中の炭酸カルシウムの替わりに炭酸マグネシウム(和光純薬製)とし、層(A)の塗工量を1.2g/mとする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0070】
(実施例14)
実施例1において、コーティング液(A”)中の直鎖状脂肪族ポリイソシアネートとして、スミジュールN3300の替わりに、スミジュールN3790(住化バイエルウレタン製、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートベースのイソシアヌレート型、固形分90%、Tg=−55℃、Mn=970)を用いて、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量%とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0071】
(実施例15)
実施例1において、コーティング液(A”)中の直鎖状脂肪族ポリイソシアネートとして、スミジュールN3300の替わりにスミジュールHT(住化バイエルウレタン製、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートベースのアダクト型、固形分75%、Tg=−50℃、Mn=950)を用いて、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量%とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0072】
(実施例16)
実施例1において、コーティング液(A”)中のデスモジュールZ4470の替わりに、タケネートD110N(三井化学製、キシリレンジイソシアネートベースのアダクト型、固形分75%)を用いて、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量%とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0073】
(実施例17)
実施例1において、コーティング液(A”)を塗布する厚み12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの替わりに、テックバリアTX(三菱樹脂製、シリカ蒸着系バリアフィルム)を用いて、バリアコーティング面にコーティング液(A”)を塗布する以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0074】
(比較例1)
実施例1において、コーティング液(A”)中の、脂環式ポリイソシアネートは加えず、直鎖状脂肪族ポリイソシアネートをポリエステルポリオールに対して60重量%とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0075】
(比較例2)
実施例1において、コーティング液(A”)中の、直鎖状脂肪族ポリイソシアネートをポリエステルポリオールに対して20重量%、脂環式ポリイソシアネートを、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して5重量%とする以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
【0076】
【表1】

【0077】
上記実施例及び比較例で得られたガスバリア性積層体のイオン架橋率と、領域(b)、層(A)、領域(a)及び層(C)におけるXPSによる組成分析から求めた炭素、酸素及び窒素の総量に対する窒素の含有量と、得られたラミネート積層体の層間密着性、レトルト処理前後の酸素透過量、可撓性の評価であるレトルト処理後にゲルボフレックステスターによる200回クラッシュ処理をした後の酸素透過量の測定結果を表2に示す。
バリア性は何れも良好な結果を示したが、可撓性および層間密着性は、実施例においてのみ良好な結果を示した。
【0078】
【表2】

(注1)酸素透過量:レトルト前で0.3cm/m・day・atm以下、レトルト後で0.7cm/m・day・atm以下、レトルト処理後にゲルボフレックステスターによる200回クラッシュ処理後で10cm/m・day・atm以下、が良好である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のガスバリア性積層体においては、優れたガスバリア性、耐水性、レトルト殺菌のような高温湿熱条件下におかれた後にも優れたバリア性を達成できる耐レトルト性を有すると共に、特に優れた可撓性を有し、層間密着性に優れていることから、フィルム、シート、パウチ等の可撓性が要求される包装材に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0080】
1、2:ラミネート積層体、P:プラスチック基材、A:アンダーコート層、B:バリア層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材の少なくとも一方の表面に、主材樹脂、イソシアネート系硬化剤及び多価金属のアルカリ性化合物から成るアンダーコート層(A)と、カルボキシル基間に多価金属によるイオン架橋が形成されているポリカルボン酸系ポリマーから成るバリア層(B)を有するガスバリア性積層体において、
前記アンダーコート層(A)のバリア層(B)側に、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(b)が形成されており、該領域(b)の窒素の含有量が領域(b)以外のアンダーコート層(A)の窒素の含有量よりも多いことを特徴とするガスバリア性積層体。
【請求項2】
前記アンダーコート層(A)のプラスチック基材側に、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(a)が形成されており、該領域(a)の窒素の含有量が領域(b)及び(a)以外のアンダーコート層(A)の窒素の含有量よりも多い請求項1記載のガスバリア性積層体。
【請求項3】
前記アンダーコート層(A)の領域(a)及び(b)以外の部分における炭素、酸素、窒素の総量に対する窒素の含有量が2atom%以上であり、領域(a)及び(b)における炭素、酸素、窒素の総量に対する窒素の含有量が、領域(a)及び(b)以外のアンダーコート層(A)の窒素含有量よりも1atom%以上多く存在する請求項2記載のガスバリア性積層体。
【請求項4】
前記バリア層(B)のアンダーコート層(A)とは反対側の表面に、窒素が1乃至14atom%の量で存在する請求項1乃至3の何れかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項5】
前記主材樹脂が金属元素を樹脂骨格中に含むポリエステルポリオールであり、前記イソシアネート系硬化剤が直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせである請求項1乃至4の何れかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項6】
前記脂肪族イソシアネート化合物と前記脂環式イソシアネート化合物が、60:40乃至15:85(重量比)である請求項5記載のガスバリア性積層体。
【請求項7】
前記脂肪族イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する請求項5又は6記載のガスバリア性積層体。
【請求項8】
前記ポリカルボン酸系ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸又はその部分中和物である請求項1乃至7の何れかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項9】
前記多価金属のアルカリ性化合物が、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩、水酸化物の少なくとも1種からなる請求項1乃至8の何れかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載のガスバリア性積層体から成り、該ガスバリア性積層体のバリア層のアンダーコート層と反対側にプラスチック基材が設けられていることを特徴とする包装材。
【請求項11】
主材樹脂、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物及び骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物から成るイソシアネート系硬化剤、及び多価金属のアルカリ性化合物から成る塗料組成物を、プラスチック基材に塗布し、熱処理により溶媒を揮発させた後、ポリカルボン酸系ポリマーを有する塗料を塗布することを特徴とするガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項12】
前記脂肪族イソシアネート化合物が、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下、数平均分子量(Mn)が1200以下であり、前記脂環式イソシアネート化合物が、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、数平均分子量(Mn)が400以上である請求項11記載のガスバリア性積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136236(P2012−136236A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288712(P2010−288712)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】