説明

ガスバリア性積層体

【課題】
酸素、炭酸ガス、水蒸気等のガスバリア性、特に高湿度下でのガスバリア性に優れたガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体を得ることを目的とする。
【解決手段】
基材層に不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)を少なくとも2層以上有することを特徴とするガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体。さらに、重合体(a)を含有する層(Y)の複数の層のうちの少なくとも1層以上が、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)及びビニルアルコール系重合体(b)からなることを特徴とするガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有し、酸素、水蒸気等のガスバリア性、特に高湿度下でのガスバリア性に優れたガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸素あるいは水蒸気等に対するバリア性材料として、フィルム基材に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等で形成してなる透明なガスバリアフィルムが注目されている。
そして、この透明なガスバリアフィルムは、一般には透明性、剛性に優れる二軸延伸ポリエステルフィルムからなる基材面に無機酸化物を蒸着したフィルムであるので、そのままでは蒸着層が使用時の摩擦等に弱く、包装用フィルムとして使用する場合、後加工の印刷やラミネート時、又内容物の充填時に、擦れや伸びにより無機酸化物にクラックが入りガスバリア性が低下することがある。
一方、ガスバリア性を有するポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体を二軸延伸フィルム基材に積層する方法(例えば、特許文献1)、あるいはポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物を二軸延伸フィルム基材に被覆する方法(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながら、ポリビニルアルコールを積層してなるガスバリアフィルムは、高湿度下での酸素バリア性が低下し、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物は、エステル化を十分に進行させて、フィルムのガスバリア性を高めるためには高温で長時間の加熱が必要であり生産性に問題があり、また、高湿度下でのガスバリア性は不十分であった。また、高温で長時間反応させることによりフィルムが着色し、外観を損ねるため食品包装用には改善が必要である。
他方、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物はエステル化に高温で長時間の反応が必要なことから、ポリアクリル酸にイソシアネート化合物等の架橋剤成分を添加する方法(例えば、特許文献3)、更には金属イオンと反応させる方法(例えば、特許文献4)等が提案されているが、かかる方法においても、ポリアクリル酸を架橋剤成分で架橋するには、実施例に記載されているように、180〜200℃で5分間と高温での処理を必要とする。
さらに、基材層(X)に、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度Aと1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)が0.25未満である不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)からなるガスバリアフィルムが知られているが、さらにガスバリア性の向上が求められている(特許文献5)。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−157830号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3203287号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2001−310425号公報(請求項1、実施例1)
【特許文献4】特開2003−171419号公報(請求項1、表1)
【特許文献5】WO2005/108440(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、透明性を有し、酸素、炭酸ガス、水蒸気等のガスバリア性、特に高湿度下でのガスバリア性に優れたガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材層(X)に不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)を少なくとも2層以上有することを特徴とするガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体に関する。さらに、本発明は重合体(a)を含有する層(Y)の複数の層のうちの少なくとも1層以上が、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)及びビニルアルコール系重合体(b)からなることを特徴とするガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体に関する。
また、本発明は、基材層(X)と重合体(a)を含有する層(Y)が積層されたガスバリア層の中間または層(Y)の外側に、更に無機蒸着層(Z)が積層されたガスバリア層であることを特徴とする記載のガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体に関する。
【0006】
さらに本発明は重合体(a)を含有する層(Y)の複数の層のうちの2層が互いに隣接して積層され、一方の層のビニルアルコール系重合体(b)の割合が他方の層のビニルアルコール系重合体の割合に比べ低い(実質的に含まない態様を含む)ことを特徴とするガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体に関する。
本発明はまた、これらのガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体の表面にさらに保護層(U)が積層されたガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体として不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含む層(Y)からなるガスバリア性の層を二層以上用いることにより、高湿度下でのガスバリア性が特に優れたフィルム等の積層体が得られるだけでなく、これらの層を不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)及びビニルアルコール系重合体(b)を含む層(Y)とすることにより、ガスバリア性のみならず、耐衝撃性に優れたガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体
本発明に用いられるガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体は、基材層(X)に不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)を少なくとも2層以上有することを特徴とするガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体に関する。
本発明のガスバリア性積層体のうち、ガスバリアフィルムの厚さは用途に応じて種々決定され得るが、通常は、基材層(X)の厚さが5〜500μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは9〜30μm、不飽和カルボン酸化合物多金属塩の共重合体(a)を含む層(Y)の厚さが0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜10μm、また、無機蒸着層(Z)が用いられる場合のその厚さが、0.001〜10μm、好ましくは0.005〜5μm、ガスバリアフィルムの全体の厚さが20〜750μm、より好ましくは25〜430μmの範囲にある。
【0009】
基材層(X)
本発明のガスバリア性積層体の中でもガスバリアフィルムは、それを構成する基材層(X)としては、熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、テープなど特に限定することなく用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましく、とくにポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステルがバリア性、耐熱性等に優れているので好ましい。
本発明の好適な態様の1つとして、基材層(X)が無機微粒子を含有する層であるガスバリアフィルムがある。
【0010】
無機微粒子を含有する基材層(X−1)
無機微粒子を含有する基材層(X−1)としては、無機微粒子を通常0.5〜10重量%配合されたプロピレン系重合体からなる層が好適である。プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体の他、プロピレンを主成分としエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のオレフィンとの二元ないし三元のランダム共重合体、ブロック共重合体等を用いることができる。無機微粒子としては、その平均粒子径が0.1〜10μm程度であれば、特に限定されることなく利用することができる。例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、シリカ、雲母、合成雲母、明礬、ゼオライトなどがある。これらは必要に応じて表面を種々のポリマーでコーティングしたものであってもよい。
これら無機微粒子の形状は、球状、板状、鱗片状、針状など種々のアスペクト比のものを利用することができる。
【0011】
これら基材層(X)は、無延伸、少なくとも一軸方向に延伸されたもの等のいずれも使用でき、延伸された基材層は、耐熱性、剛性、透明性及びガスバリア性に優れている。 また、これら基材層(X)は、層(Y)との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
重合体(a)を含有する層(Y)
基材層(X)の片面または両面に少なくとも2層以上設けられる層(Y)としては、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)が好適である。
【0012】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)は、不飽和カルボン酸多価金属塩を重合することによって得ることができる。
不飽和カルボン酸化合物
重合体(a)に用いられる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を形成する不飽和カルボン酸化合物は、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物であり、重合度が20未満、好ましくは単量体若しくは重合度10以下の重合体である。重合度が20を越える重合体(高分子化合物)を用いた場合は、後述の多価金属化合物との塩が完全には形成されない虞があり、その結果、当該金属塩を重合して得られる層は高湿度下でのガスバリア性が劣る虞がある。これら不飽和カルボン酸化合物は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
これら不飽和カルボン酸化合物の中でも単量体が多価金属化合物で完全に中和された塩を形成し易く、当該塩を重合して得られる重合体層を基材層の少なくとも片面に積層してなるガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体は、高湿度下でのガスバリア性に特に優れるので好ましい。
【0013】
多価金属化合物
本発明に係わる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を形成する成分である多価金属化合物は、周期表の2A〜7A族、1B〜3B族及び8族に属する金属及び金属化合物であり、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。これら二価の金属化合物を用いた場合は、前記不飽和カルボン酸化合物との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これら多価金属化合物は、少なくとも一種が使用され、一種のみの使用であっても、二種以上を併用してもよい。これら多価金属化合物の中でもMg、Ca、Zn、Ba及びAl、特にZnが好ましい。
【0014】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩
本発明に用いられる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を構成する成分である不飽和カルボン酸化合物多価金属塩は、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物との塩である。これら不飽和カルボン酸化合物多価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。かかる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の中でも、特に(メタ)アクリル酸亜鉛が得られる重合体層の耐熱水性に優れるので好ましい。
【0015】
本発明における重合体(a)を含有する層(Y)は、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水溶性重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン等の高分子量の化合物等、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤が含まれていてもよいし、後述の基材との濡れ性、密着性等を改良するために、各種界面活性剤等が含まれていてもよい。これらの他の成分の割合は、必要に応じて変えることができる。
【0016】
これらの中でも、ビニルアルコール系重合体(b)は、基材層(X)にコーティングしやすく、ガスバリア性にも優れているので、併用することが望ましい。
即ち、本発明の重合体(a)を含有する層(Y)は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)及びビニルアルコール系重合体(b)からなることが好適である。
【0017】
ビニルアルコール重合体(b)
このようなビニルアルコール系重合体としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、変性ビニルアルコール系重合体などがある。ポリビニルアルコールは混合可能であれば特に問題ないが、好ましくは重合度が100〜3000、更には200〜2500、最も好ましくは300〜2000の範囲にある。この範囲にあると、水溶液にして基材層にコーティングし易く延伸性、ガスバリア性も良い。鹸化度は90%以上、好ましくは95%以上であり、この範囲であればガスバリア性が良い。また、耐水性や延伸性からオレフィン含有ポリビニルアルコールを使用してもよい。オレフィン含有量が0〜25モル%、好ましくは1〜20モル%、更には2〜16モル%、オレフィンとしては、炭素数4以下のものが好ましく、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等が挙げられるが、耐水性の点でエチレンが最も好ましい。
また、ビニルアルコール系重合体の好適な例として、変性ビニルアルコール系重合体がある。
【0018】
変性ビニルアルコール系重合体(b1)
変性ビニルアルコール系重合体(b1)としては、ビニルアルコール系重合体(b)に、種々の公知の反応性を有する基(反応性基)を付加、置換、あるいはエステル化等により反応性基を結合して変性したもの、酢酸ビニル等のビニルエステルと反応性基を有する不飽和化合物とを共重合して得た共重合体を鹸化したもの等を挙げることができる。これら反応性重合基としては、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、チオール基、シリル基、アセトアセチル基、エポキシ基などが挙げられる。反応性基の量は、適宜決めることができるが、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の量が少なくなるとビニルアルコール系重合体が本来有するガスバリア性が損なわれる虞があるので、通常、反応性基の量は、0.001〜50モル%の範囲にある(反応性基とOH基の合計で100モル%とする)。
変性ビニルアルコール系重合体(b1)の製法としては、ビニルアルコール系重合体(b)に種々公知の反応性を有する基(反応性基)を付加、置換あるいはエステル化等により反応性基を結合して変性したもの、酢酸ビニル等のビニルエステルと反応性基を有する不飽和化合物とを共重合して得た共重合体を鹸化したもの等を挙げることができ、重合体として分子内に反応性基を有する限りとくに限定はされない。
変性ビニルアルコール系重合体(b1)は、通常、重合度が100〜3000、好ましくは300〜2000の範囲のものが使用し得る。また、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)と併用して得られる重合体のガスバリア性の観点から鹸化度が70〜99.9%の高いものが好ましく用いられ、とくに85〜99.9%のものが好ましい。
これら変性ビニルアルコール系重合体(b1)が有する反応性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、チオール基、シリル基、アセトアセチル基、エポキシ基などが挙げられる。変性ビニルアルコール系重合体に於ける反応性基の量は、適宜決め得るが、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の量が少なくなるとビニルアルコール系重合体が本来有するガスバリア性が損なわれる虞があるので、通常、反応性基の量は、0.001〜50モル%の範囲にある(反応性基とOH基の合計が100モル%)。また、変性ビニルアルコール系重合体(b1)は、好ましくは水、低級アルコール、有機溶媒等に溶解性があるものであり、とくに水あるいは水−低級アルコール系混合溶媒に溶けるものが好ましい。
これら反応性基で変性した変性ビニルアルコール系重合体(b1)を成分の一つに用いることにより、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)と混合して重合する際に、変性ビニルアルコール系重合体(b1)と不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)の少なくとも一部が何らかの結合をした重合体からなる低湿度下におけるガスバリア性が改良された層(Y)が得られる。
このような変性ビニルアルコール系重合体(b1)の具体例としては、例えば、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα、βエチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物あるいはその誘導体と反応させ(メタ)アクリレート基を導入してなる(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ);イソチウロニウム塩やチオール酸エステルを有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、チオール酸の存在下にビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にチオール基(−SH基)を有する、チオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ);ビニルアルコール系重合体あるいはカルボキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にオルガノハロゲンシラン、オルガノアセトキシシラン、オルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルとビニルシラン、(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化し、分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にトリメトキシラン基、トリエトキシシラン基等のトリアルコキシシラン基、トリカルボニルオキシシラン基等を有する、シリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ);ビニルアルコール系重合体を酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ビニルアルコール系重合体をジメチルホルムアミド、またはジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法、及びビニルアルコール系重合体にジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にアセトアセチル基を有する、アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ);その他反応性官能基を有するモノマーを酢酸ビニルと共重合した後鹸化することにより、側鎖に反応性官能基を導入する方法、高分子反応により、ポリビニルアルコールの側鎖に反応性官能基を導入する方法、連鎖移動反応を利用して反応性官能基を末端に導入する方法等、種々公知の方法により分子内に、(メタ)アクリルアミド基、アリル基、ビニル基、スチリル基、分子内二重結合、ビニルエーテル基等のその他のラジカル重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体、エポキシ基、グリシジルエーテル基等のカチオン重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体等を例示できる。
これら変性ビニルアルコール系重合体(b1)の中でも、(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)を用いて得られる重合体からなる層は、高湿度下及び低湿度下でのガスバリア性(酸素バリア性)に優れ、熱水処理後のガスバリア性(耐熱水性)の低下もなく、柔軟性を有し、また、このような層が形成された積層体、中でもフィルムを包装材等に用いる場合、ヒートシール強度が改良されるという特徴を有する。
【0019】
(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)
前記(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)としては、好ましくは(メタ)アクリロイル基の量(−OH基との対比;エステル化率)が0.001〜50%、より好ましくは0.1〜40%の範囲にある。エステル化率が0.001%未満のものは得られる層(Y)の耐熱水性、柔軟性等が改良されない虞があり、一方、50%を超えるものは得られる層(Y)の耐熱水性、酸素バリア性等が改良されない虞がある。
本発明に係る(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)は、例えば、ビニルアルコール系共重合体と(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体とを、例えばブレンステッド酸、ブレンステッド塩基、ルイス酸、ルイス塩基、金属化合物などの触媒の存在下または非存在下に反応させることにより得られる。またビニルアルコール系共重合体と、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のビニルアルコール系共重合体のOH基と反応する官能基を分子内に有する(メタ)アクリル酸誘導体とを反応させ、(メタ)アクリレート基をビニルアルコール系共重合体に間接的に導入することもできる。
【0020】
チオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ)
前記チオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ)としては、イソチウロニウム塩やチオール酸エステルを有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ポリビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、−COSH基を有する有機チオール酸を包含する、チオール酢酸、チオールプロピオン酸、チオール酪酸等のチオールカルボン酸の存在下に、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサテイック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等、公知の方法により分子内にチオール基を付与させた重合体で、通常、チオール基変性率は0.1〜50モル%の範囲にある。
これらチオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ)として、例えば、(株)クラレからクラレMポリマーの商品名で、「M−115」及び「M−205」が製造・販売されている。
【0021】
シリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ)
前記シリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ)としては、ビニルアルコール系重合体あるいはカルボキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にトリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリクロルシラン、ジフェニルジクロルシラン等のオルガノハロゲンシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のオルガノアセトキシシランあるいはトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルと例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン等のビニルシラン、あるいは3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルエチルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルジメチルメトキシシラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−3−ハイドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−プロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化する方法等で得られる分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を有する重合体等を挙げることができる。かかるシリル基の変性量は、通常、0.1〜50モル%の範囲にある。
これらシリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ)として、例えば、(株)クラレからクラレRポリマーの商品名で、「R−1130」、「R−2105」及び「R−2130」が製造・販売されている。
【0022】
アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ)
前記アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ)としては、前記ビニルアルコール系重合体の溶液、分散液又は粉末に液状又はガス状のジケテンを添加反応させて得られるものであり、通常、アセトアセチル化度は1〜10モル%、好ましくは3〜5モル%の範囲にある。
これらアセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ)として、例えば、日本合成化学工業(株)から「ゴーセファイマーZ100」、同「Z200」、同「Z200H」及び同「Z210」の商品名で製造・販売されている。
また、これら変性ビニルアルコール系重合体は、好ましくは水、低級アルコール、有機溶媒に溶解性であるものであり、特に水−低級アルコール系混合溶媒に溶解するものが好ましい。
【0023】
これら変性ビニルアルコール系重合体を含めビニルアルコール系重合体の水溶液には、水以外の溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、或いはその他ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等を必要に応じて、1種または2種以上を組み合わせて加えることも可能である。又、ポリビニルアルコール系重合体には、本発明の特徴を阻害しない範囲で濡れ性向上剤、帯電防止剤、その他各種添加剤を加えることが可能である。
これらビニルアルコール系重合体(b)を併用する場合、本発明の重合体(a)を含有する層(Y)は、一般に、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)が1〜99重量%、ビニルアルコール系重合体(b)が1〜99重量%から構成されることが通常である。
中でも不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)60〜98重量%、ビニルアルコール系重合体(b)が2〜40重量%、特に(a)70〜95重量%、(b)5〜30重量%((a)及び(b)の合計を100重量%とする)が好適である。
【0024】
ガスバリアフィルムの製造方法(1)
本発明のガスバリア性積層体のうち、ガスバリアフィルムを製造する方法としては、未延伸または延伸された基材層(X)に、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を含有する溶液(s)を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合し、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)を形成させる方法がある。
【0025】
重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を含有する溶液(s)を作成する方法としては、予め前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物とを反応させて、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩とした後、溶液としてもよいし、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物を溶かして多価金属塩の溶液としてもよい。
【0026】
本発明のガスバリアフィルムの製造方法として、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物を溶かす場合、即ち、前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物とを含有する溶液を用いる場合は、前記不飽和カルボン酸化合物に対して、0.3化学当量比を越える量の前記多価金属化合物を添加することが好ましい。多価金属化合物の添加量が0.3化学当量比以下の混合溶液を用いた場合は、遊離のカルボン酸基の含有量が多い重合体層となり、結果として、ガスバリア性が低い延伸フィルムとなる虞がある。また、多価金属化合物の添加量の上限はとくに限定はされないが、多価金属化合物の添加量が1化学当量比を越えると未反応の多価金属化合物が多くなるので、通常、5化学当量比以下、好ましくは2化学当量比以下で十分である。
【0027】
なお、本発明における化学当量比は、不飽和カルボン酸化合物に対する多価金属化合物の化学当量比を示し、以下の式により算出される値である。
化学当量比=(多価金属化合物のモル数)×(多価金属化合物の価数)/不飽和カルボン酸化合物に含まれるカルボキシル基のモル数
例えば、多価金属化合物として水酸化カルシウム(分子量74g/モル)を37g、不飽和カルボン酸化合物としてアクリル酸単量体(分子量72g/モル)72gを混合した場合の化学当量比は1となる。
【0028】
また、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物との混合溶液を用いる場合は、通常、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶媒に溶かしている間に、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩が形成されるが、多価金属塩の形成を確実にするために、1分以上混合しておくことが好ましい。
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液に用いる溶媒は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール若しくはアセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒が挙げられるが、水が最も好ましい。
【0029】
基材層(X)の表面に不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液(s)を塗工する方法としては、種々公知の方法、例えば、当該溶液を基材層表面に塗布する方法、当該溶液に基材層を浸漬する方法、当該溶液を基材層表面に噴霧する方法、刷毛等により塗布する方法等を採り得る。
フィルム状の基材層(X)に不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を含有する溶液(s)を塗布する方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバース及びジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター及びノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等種々公知の塗工機を用いて、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液(s)中(固形分)の量で0.05〜10g/m、好ましくは0.1〜5g/mとなるよう塗布すればよい。
【0030】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を溶解させる際には、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどのその他の不飽和カルボン酸(ジ)エステル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物等の単量体あるいは低分子量の化合物、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤を添加しておいてもよいし、基材層との濡れ性を改良するために、各種界面活性剤等を添加しておいてもよい。
【0031】
基材層(X)に形成した(塗工した)不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液(塗工層)を重合させるには、種々公知の方法、具体的には例えば、電離放射線の照射また加熱等による方法が挙げられる。
電離放射線を使用する場合は、波長領域が0.0001〜800nmの範囲のエネルギー線であれば特に限定されないが、かかるエネルギー線としては、α線、β線、γ線、X線、可視光線、紫外線、電子線等が上げられる。これらの電離放射線の中でも、波長領域が400〜800nmの範囲の可視光線、50〜400nmの範囲の紫外線及び0.01〜0.002nmの範囲の電子線が、取り扱いが容易で、装置も普及しているので好ましい。
【0032】
電離放射線として可視光線及び紫外線を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、2−ヒドロキシ−2メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;ダロキュアー 1173)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)、α―ヒドロキシケトン、アシルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンの混合物(ランベルティ・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名;エサキュアー KT046)、エサキュアー KT55(ランベルティー・ケミカル・スペシャルティ)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ラムソン・ファイア・ケミカル社製 商品名;スピードキュアTPO)の商品名で製造・販売されているラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0033】
さらに、重合度または重合速度を向上させるため重合促進剤を添加することができ、例えば、N、N-ジメチルアミノ-エチル-(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-モルフォリン等が挙げられる。
【0034】
本重合を電離放射線を照射して行う場合は、通常、電離放射線の照射量を1〜1000mJ/cm、好ましくは5〜300mJ/cm、とくに10〜200mJ/cmの範囲にすることが好ましい。照射量をかかる範囲にすることにより、重合率が80%以上、好ましくは90%以上のガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体が安定して得られる。
【0035】
本発明のガスバリア性積層体の中でもガスバリアフィルムは、基材層(X)を(X)と、重合体(a)を含有する層(Y)を(Y)、(Y)、(Y)、(Y)とすると、
(X)/(Y)/(Y
(X)/(Y)/(Y)/(Y
(X)/(Y)/(Y)/(Y)/(Y
等と表記される積層構造を例示するとこができる。
なお、(Y)、(Y)、(Y)、(Y)のそれぞれに含まれる重合体(a)の含有量は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。また、それぞれの層に含まれる重合体(b)の含有量も互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
【0036】
本発明のガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体には、基材層(X)と重合体(a)を含有する層(Y)との間または、重合体(a)を含有する層(Y)の外側に無機蒸着層(Z)を設けることも行われる。
これらのガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体は、基材層(X)に1層目の層(Y)を形成した後、さらに2層目の層(Y)を形成することで製造することができる。
層(Y)を2層以上設ける場合は、それぞれの層(Y)の構成を同じとしてもよく、それぞれの構成、例えば、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)の組成割合、その種類を変えることも可能である。
例えば、複数の層(Y)におけるビニルアルコール系重合体(b)の割合を順次減少させ、後記する無機蒸着層(Z)に接する層(Y)を、ビニルアルコール系重合体(b)を実質含まない層とする態様も例示することができる。
【0037】
無機蒸着層(Z)
無機蒸着層(Z)は、従来からフィルム等の蒸着層として知られているものを、特に限定されず利用することができる。なかでも、その表面が平滑である蒸着膜であることが望ましい。例えば、アルミニウム、亜鉛、インジウム、珪素及びスズなどの元素及び必要に応じてこれら金属と酸素とを含む膜である。これらにおいて、酸素は膜の透明性を上げることができる。このような無機蒸着膜は、CVD法、PVD法、スパッタリング法、プラズマCVD法、CAT−CVD法など乾式製膜法を用いて形成することができる。無機蒸着膜の厚み(1層あたりの厚み)は、0.1〜1000nm、中でも5〜500nm、さらに好ましくは30〜200nmの範囲で適宜選ぶことができる。無機蒸着膜の厚みが薄い場合は、ガスバリアフィルムの酸素ガスのバリア性が不十分となり、厚い場合は、蒸着層にクラックが入り易くなる。
【0038】
無機蒸着層(Z)が積層されるバリアフィルムの態様は、基材層(X)を(X)と、重合体(a)を含有する層(Y)を(Y)、(Y)、(Y)と、無機蒸着層(Z)を(Z)とそれぞれ略記すると、
(X)/(Y)/(Z)/(Y
(X)/(Z)/(Y)/(Y
(X)/(Y)/(Y)/(Z)
(X)/(Z)/(Y)/(Y)/(Y
等と表記される積層構造を例示するとこができる。
なお、(Y)、(Y)、(Y)のそれぞれに含まれる重合体(a)の含有量は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。また、それぞれの層に含まれる重合体(b)の含有量も互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
これらのガスバリアフィルムは、基材層(X)に予め無機蒸着層(Z)を設けた後、1層目の層(Y)を形成し、さらに2層目の層(Y)を形成することで製造することができる。あるいは、基材層(X)に、1層目の層(Y)を形成し、その後無機蒸着層(Z)を設け、さらに2層目の層(Y)を形成することで製造することができる。
【0039】
本発明の他の態様においては、重合体(a)を含有する層(Y)の複数の層のうちの2層を互いに隣接して積層することが行われる。この場合、一方の層のビニルアルコール系重合体(b)の割合を他方の層のビニルアルコール系重合体の割合に比べ低く、中でも実質的に含まない態様とし、当該ビニルアルコール系重合体の割合を低く、あるいは実質的に含まない場合の層(Y)を無機蒸着層(Z)に隣接させることが望ましい。
これらビニルアルコール系重合体(b)を含有する層(Y)を併用する場合、一方の層(Y)の構成は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)が1〜99重量%、ビニルアルコール系重合体(b)が1〜99重量%から構成されることが通常であり、中でも(a)が60〜98重量%、(b)が2〜40重量%、特に(a)が70〜95重量%、(b)が5〜30重量%((a)及び(b)の合計を100重量%とする)が好適である。
そして、例えば、一方の層(Y)と他方の層(Y’)のそれぞれの層中のビニルアルコール系重合体(b)の濃度比率は、一方の層(Y)の濃度比率が、他方の層(Y’)の濃度比率の1/2以下、中でも1/3以下、特に好ましくは実質的に含めない層から構成されることが望ましい。
【0040】
保護層
本発明のガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体には層(Y)側の最外層には、層(Y)を保護し得る保護層(U)を設けることが望ましい。
保護層(U)としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等の熱可塑性樹脂等からなる層が挙げられる。これらの保護層(U)は、層(Y)に直接積層してもよく、またアンカーコート等の接着剤などを介して積層されていてもよい。
【0041】
保護層(U)の他の好適な例として、前記した無機微粒子を含有する基材層(X−1)がある。
前記した無機微粒子を含有する基材層(X−1)を保護層として用いることにより、隠蔽性に優れたガスバリアフィルム等の積層体とすることができる。
【0042】
これら無機微粒子を含有する保護層(U)は、無延伸、少なくとも一軸方向に延伸されたもの等のいずれも使用できる。延伸された保護層(U)は、耐熱性、剛性、透明性及びガスバリア性に優れている。
また、これら保護層(U)は、ガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0043】
本発明のガスバリアフィルム等のガスバリア性積層体の例を下記する。但し保護層(U)を(U)と略記すると、
(X)/(Y)/(Y)/(U)
(X)/(Y)/(Y)/(Y)/(U)
(X)/(Y)/(Z)/(Y)/(U)
(X)/(Z)/(Y)/(Y)/(U)
(X)/(Y)/(Y)/(Z)/(U)
等と表記される積層構造を例示するとこができる。
なお、(Y)、(Y)、(Y)のそれぞれに含まれる重合体(a)の含有量は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。また、それぞれの層に含まれる重合体(b)の含有量も互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
【0044】
また、本発明のガスバリア性積層体のうち、ガスバリアフィルムには、基材層(X)の面に熱融着層を積層することにより、ヒートシール可能な包装用フィルムとして好適なガスバリアフィルムが得られる。かかる熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。
【0045】
中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
また、このような熱融着層は、必要に応じて本発明のガスバリアフィルムに設けられた層(Y)側の最外層に保護層(U)として設けることも行われる。
これらの熱融着層は、接着剤等を介して積層されていてもよく、直接積層されていてもよい。
【実施例】
【0046】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0047】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
<評価方法>
(1)多層フィルムの作成:厚さ50μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製 商品名:T.U.X FCS)の片面に、ウレタン系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三化学ポリウレタン社製 商品名:タケラックA310):12重量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA3):1重量部及び酢酸エチル:7重量部)を塗布・乾燥後、実施例、比較例で得られたガスバリア性積層フィルムのアクリル酸亜鉛重合体層面を貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルムを得た。
また、厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製 商品名:RXC−21)の片面に、エステル系接着剤(ポリエステル系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケラックA525):9重量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA52):1重量部及び酢酸エチル:7.5重量部)を塗布・乾燥後、実施例、比較例で得られたガスバリア性積層フィルムのアクリル酸亜鉛重合体層面を貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルムを得た。
(2)レトルト処理:上記方法で得た無延伸ポリプロピレンフィルムと貼り合わせた多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるよう折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を40cc入れ、もう1方をヒートシールにより袋(三方シール袋)を作成し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で121℃、30分間の条件でレトルト処理を行った。レトルト処理後、内容物の水を抜き、レトルト処理後の多層フィルムを得た。
(3)酸素透過度[ml/(m・day・MPa)]:上記方法で得られた多層フィルムを、モコン社製OX−TRAN2/21 MLを用いて、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度90%R.H.の条件で測定する。
(4)水蒸気透過度[g/(m・day)]:多層フィルムを線状低密度ポリエチレンフィルム面が内側になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01mになるように袋(三方シール袋)を作成し、これを40℃、90%R.H.の条件で3日間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
【0048】
<溶液(s1)の作製>
アクリル酸亜鉛水溶液〔浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、亜鉛成分10重量%)〕を固形分比率で98.0重量%、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名:イルガキュアー 2959)〕を固形分比率で1.3重量%、及び界面活性剤(花王社製 商品名:エマルゲン120)を固形分比率で0.7重量%となるように混合し、アクリル酸亜鉛溶液(s1)を作製した。
【0049】
<溶液(s2)の作製>
アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの混合水溶液 濃度14重量%(アクリル酸亜鉛成分:12重量%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分2重量%)〕に上記アクリル酸亜鉛の溶液(s1)を混合させて、アクリル酸亜鉛成分を固形分比率で88.5重量%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分を固形分比率で9.7重量%、光重合開始剤を固形分比率で1.2重量%、界面活性剤を固形分比率で0.6重量%となるように混合し、アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールからなる溶液(s2)を作製した。
【0050】
実施例1
厚さ12μmの酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム(東セロ社製 商品名;TL−PET H)の蒸着面に、上記のアクリル酸亜鉛溶液(s1)をバーコート法を用いて塗布量が固形分で1.2g/mになるよう塗布し、塗工面を直ちに紫外線照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、照度:180mW/cm2、積算光量:180mJ/cmの条件で紫外線を照射して重合して層を形成した。さらに、この層の上に上記アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの混合溶液(s2)を塗布量1.2g/mになるよう塗布し、アクリル酸亜鉛溶液(s1)塗工時と同様の条件でUVを照射して重合させ、変性ポリビニルアルコールを含む層を設けた。これによりアクリレート基変性ポリビニルアルコールを含まない層と含む層の2層を積層したガスバリア性積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを上記記載の方法で評価した結果を表1に示す。
【0051】
実施例2
アクリレート基変性ポリビニルアルコールを含まない層のアクリル酸亜鉛溶液(s1)を固形分で0.7g/mになるように塗布する以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを上記記載の方法で評価した結果を表1に示す。
【0052】
実施例3
アクリレート基変性ポリビニルアルコールを含まない層のアクリル酸亜鉛溶液(s1)を固形分で0.4g/mになるように塗布する以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを上記記載の方法で評価した結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
ポリエステルフィルム(ユニチカ社製 商品名;エンブレットPET12)のコロナ処理面に塗布する以外は実施例3と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを上記記載の方法で評価した結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
アクリル酸亜鉛溶液(s1)を塗布し、アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの混合溶液(s2)を塗布せず、アクリル酸亜鉛の重合体の層のみを形成させた以外は実施例3と同様にして、積層フィルムを得た。これを上記記載の方法で評価した結果を表1に示す。
【0055】
比較例2
アクリル酸亜鉛溶液(s1)を塗布せず、アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの混合溶液(s2)を塗布し、アクリレート基変性ポリビニルアルコールを含む層のみを形成させた以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。これを上記記載の方法で評価した結果を表1に示す。
【0056】
比較例3
ポリエステルフィルム(ユニチカ社製 商品名;エンブレットPET12)のコロナ処理面に塗布する以外は比較例2と同様にして、積層フィルムを得た。これを上記記載の方法で評価した結果を表1に示す。
【0057】
比較例4
厚さ12μmの酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム(東セロ社製 商品名:TL−PET H)を上記記載の方法で評価した結果を表1に示す。
【0058】
【表1】




【0059】
表1から明らかなように、アクリル酸亜鉛の重合体の層とアクリル酸亜鉛の重合体とアクリレート基変性ポリビニルアルコールを含む層を隣接して積層したバリアフィルム(実施例1〜3)は、基材として用いた酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム(比較例4)と比べ、酸素透過度及び水蒸気透過度に優れた値を示した。アクリル酸亜鉛の重合体の層のみの場合(比較例1)と比べると、酸素透過度、水蒸気透過度が優れている。アクリル酸亜鉛の重合体とアクリレート基変性ポリビニルアルコールを含む層のみ(比較例2)の場合と比べると、レトルト処理後のバリア性が非常に優れていることがわかる。また、基材をポリエステルフィルムにした場合も、アクリレート基変性ポリビニルアルコールを含む層と含まない層を隣接して積層したバリアフィルム(実施例4)は、アクリル酸亜鉛の重合体とアクリレート基変性ポリビニルアルコールを含む層のみの場合(比較例3)と比べ、レトルト処理後の酸素透過度が優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のガスバリアフィルムは、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)を複数用いることにより高湿度下でのガスバリア性に特に優れており、かかる特徴を活かして、種々の用途に用いることができる。
また保護層に無機微粒子を含有する白色フィルムを用いた場合、隠蔽性の良好なガスバリアフィルムとなる。
このような特徴を活かして、本発明のガスバリアフィルムは、乾燥食品、水物、ボイル・レトルト食品、サプリメント食品等の包装材料、なかでも特に高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材をはじめ、シャンプー、洗剤、入浴剤、芳香剤等のトイレタリー製品の包装材料、粉体、顆粒状、錠剤等の医薬品、輸液バッグをはじめとする液状の医薬品、医療用具の包装袋及び包装容器部材等の医療用途、ハードディスク、配線基盤、プリント基盤等の電子部品包材、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機・有機ELディスプレイ、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ用バリア材、太陽電池用のバックシート等のバリア材、その他の電子材料用のバリア材、真空断熱材用バリア材、インクカートリッジ等の工業製品の包装材等、さまざまな製品の包装材料、あるいは電子材料、精密部品、医薬品をはじめ、酸素ガスの透過及び湿気を嫌う材料の保護材としても好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層に不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)を含有する層(Y)を少なくとも2層以上有することを特徴とするガスバリア性積層体。
【請求項2】
重合体(a)を含有する層(Y)の複数の層のうちの少なくとも1層以上が、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)及びビニルアルコール系重合体(b)からなることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層体。
【請求項3】
基材層(X)と重合体(a)を含有する層(Y)が積層されたガスバリア性層の中間または層(Y)の外側に、更に無機蒸着層(Z)が積層されたガスバリア性層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
重合体(a)を含有する層(Y)の複数の層のうちの2層が互いに隣接しており、一方の層のビニルアルコール系重合体(b)の割合が他方の層のビニルアルコール系重合体の割合に比べ低いことを特徴とする請求項2又は3に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性層の表面にさらに保護層(U)が積層されてなることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2008−213200(P2008−213200A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51015(P2007−51015)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】