説明

ガスバリア性積層体

【課題】ポリエチレンナフタレート層を有する基材の少なくとも一方の面に無機薄膜層が設けられたガスバリア性積層体において、高い水蒸気バリア性及び酸素バリア性を有し、かつ、該基材と無機薄膜層との間の接着性に優れたガスバリア性積層体を提供する。
【解決手段】ポリエチレンナフタレート層を有する基材、該基材の少なくとも一方の面に、アクリルポリオールとイソシアネ−ト系化合物とを含む組成物からなる層、及び無機薄膜層をこの順に有することを特徴とするガスバリア性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリア性積層体に関し、さらに詳しくは、基材フィルム上に無機薄膜層が設けられてなるガスバリア性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチックフィルムを基材とし、その表面に酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等からなる無機層を形成したガスバリア性積層体は、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装に広く利用されている。また、このガスバリア性積層体については、包装用途以外にも、近年、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルター等で使用する透明導電シート等の新しい用途にも注目されている。
このような無機薄膜層を形成してなるガスバリア性積層体に関しては、ガスバリア性の低下防止あるいは更にガスバリア性を高めることを目的として種々の改良が検討されており、例えば、特許文献1には、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」という場合もある)基材にプラズマ化学気相法で金属酸化物薄膜を設けたガスバリア性フィルムが記載されている。また、特許文献2には、PEN等のポリエステル系樹脂フィルムの表面に特定の成分を反応させて得られる樹脂をコーティングしたガスバリア性フィルムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−66619号公報
【特許文献2】特開2010−12745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの特許文献に記載のガスバリア性フィルムでは、十分なガスバリア性が得られず、近年のハイバリア性、特に高い水蒸気バリア性が求められる医薬、太陽電池、有機ELといった用途では未だ性能が不十分であった。また、前記特許文献記載の技術では基材と無機薄膜層との接着性も十分とは言えず、これらの層間での剥離が発生する可能性があった。
【0005】
本発明は、このような状況下で、PEN層を有する基材の少なくとも一方の面に無機薄膜層が設けられたガスバリア性積層体であって、高い水蒸気バリア性を有し、更に酸素バリア性にも優れ、該基材と無機薄膜層との間の接着性に優れたガスバリア性積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ガスバリア性積層体において、PEN層を有する基材に対する最適なアンカーコート剤を見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)ポリエチレンナフタレート層を有する基材、該基材の少なくとも一方の面に、アクリルポリオールと、イソシアネ−ト系化合物とを含む組成物からなる層、及び無機薄膜層をこの順に有することを特徴とするガスバリア性積層体、
(2)前記基材が、更にポリエチレンテレフタレート層を有する上記(1)に記載のガスバリア性積層体、
(3)前記基材が、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートの混合層を更に有する上記(2)に記載のガスバリア性積層体、
(4)[アクリルポリオール]/[イソシアネート系化合物]の質量比が、0.01〜0.5である上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体、
(5)医薬用包装材料に用いられる上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、PEN層を有する基材上に無機薄膜層が設けられたガスバリア積層体であって、高い水蒸気バリア性を有し、更に酸素バリア性にも優れ、該基材と無機薄膜層との間の接着性に優れたガスバリア性積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のガスバリア性積層体は、ポリエチレンナフタレート(PEN)層を有するポリエステル系基材、該基材の少なくとも一方の面に、アクリルポリオールと、イソシアネート系化合物とを含む組成物からなる層、及び無機薄膜層をこの順に有するものである。
【0009】
[PEN層を有する基材]
本発明において用いられるPEN層を有する基材としては、PEN層を少なくとも一層有するものであり、PEN層単層からなるものでもよいが、PEN層とポリエチレンテレフタレート(PET)等の他のポリエステルからなる層を有する多層から構成されるものも好ましく用いられる。多層からなる基材としては、例えば、PENが有する優れたバリア性と、PETが有する経済性を兼ね備えさせる観点から、PEN層/PET層等の2層からなる基材、PEN層/PET及びPENの混合層/PET層等の3層からなる基材が使用できる。
本発明において用いられるPEN層を有する基材としては、上記観点から、PEN層/PET及びPENの混合層/PET層の3層からなる基材が好ましい。
基材が、PEN層/PET層からなるような2層構造、あるいはPEN層/PET及びPENの混合層/PET層からなるような3層構造を有する場合、更にPET層側にPEN層を積層してもよい。
なお、本段落において、「/」は層の界面を示している。
【0010】
上記基材は、未延伸であってもよいし延伸したものであってもよいが、フィルム物性の点から、二軸延伸したものが好ましい。
かかる基材は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、樹脂等の原料を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより好ましくは同時押出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、多層ダイを用いることにより、1種の樹脂からなる単層フィルム、1種の樹脂からなる多層フィルム、多種の樹脂からなる多層フィルム等を製造することができる。次に、該未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向又はフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。延伸倍率は任意に設定できるが、この際、流れ方向の延伸倍率は、通常2〜6倍程度、好ましくは2.5〜5倍であり、横軸方向(幅方向)の延伸倍率は、通常2〜5倍程度、好ましくは2.5〜4倍である。
【0011】
なお、上記PEN層のPENの含有割合は50質量%以上100質量%以下であるのが好ましい。また、上記PEN及びPETの混合層のPENの含有割合は1質量%より多く50質量%未満であることが好ましく、PETの含有割合は50質量%より多く99質量%未満であるのが好ましい。また、PET層のPETの含有割合は50質量%以上100質量%以下であるのが好ましい。
【0012】
上記PEN層を構成するPENとしてはエチレン−2,6−ナフタレートの単独重合体だけでなく、エチレン−2,6−ナフタレートの他にエチレンテレフタレート構成単位を含む共重合体や、前記エチレン−2,6−ナフタレート構成単位と、エチレンテレフタレート構成単位と、脂環式ジオール及び/又は芳香族ジオールと、ジカルボン酸とから誘導される構成単位を含む共重合体、並びに前記単独重合体及び共重合体の混合物も包含される。
【0013】
上記の脂環式ジオールとしては、ヘテロ原子を有してもよい一つ以上の環を有する脂環式ジオールが好ましく、具体的には1,4−シクロヘキサンジオール等のシクロヘキサンジオールが好ましい。上記の芳香族ジオールの好ましい例として、HO−C64−X−C64−OHで示されるジオールが挙げられ(式中Xは−CH2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−O−、−S−、−SO2−を表す)、式:HO−C64−C64−OHで表されるビスフェノールも好ましい。
また、上記のジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸の好ましい例としては、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレン−1,4−又は−1,6−ジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−4,4'−ジカルボン酸などのビフェニル−X,X'−ジカルボン酸、ジフェニルアセチレン−4,4'−ジカルボン酸などのジフェニルアセチレン−X,X−ジカルボン酸、スチルベン−X,X−ジカルボン酸などが挙げられる。脂環式ジカルボン酸の好ましい例としては、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の好ましい例としては、C3−C19のアルカンジカルボン酸が挙げられ、当該アルカンは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0014】
上記基材は、必要に応じ、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0015】
上記基材は、その厚みに特に制限はないが、ガスバリア性積層体のガスバリア性、及び基材としての機械強度、可撓性、透明性などの観点から、通常、総厚みが、5〜500μm程度、好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜50μmである。
基材が、PEN層/PET層からなるような2層構造の場合、全体の厚みに対するPEN層とPET層の厚みは比率として、それぞれ、好ましくは0.1〜99.9%、より好ましくは1〜99%、更に好ましくは5〜95%である。
基材が、PEN層/PET及びPENの混合層/PET層からなるような3層構造の場合、全体の厚みに対する、PEN層、PET層、PET及びPENの混合層の厚みは比率として、それぞれ、好ましくは0.1〜99.8%、より好ましくは1〜98%、更に好ましくは5〜90%である。
なお、本段落において、「/」は層の界面を示している。
【0016】
[アンカーコート層]
本発明のガスバリア性積層体においては、前記のPEN層を有する基材の少なくとも一方の面に、アクリルポリオールと、イソシアネ−ト系化合物とを含む組成物からなる層(以下、「アンカーコート層」ということがある)が設けられる。アンカーコート層を設けることにより、無機薄膜層中に発生する微細な隙間が生じにくくなり、得られる積層体の水蒸気バリア性及び酸素バリア性が向上し、かつ、基材と無機薄膜層との接着性に優れたガスバリア性積層体を得ることができると考えられる。
アンカーコート層は、基材と無機層との間に設けられる。また、アンカーコート層は、基材が多層構造の場合、アンカーコート層はPEN層側に設けることが好ましい。
【0017】
本発明におけるアンカーコート層を構成する組成物は前述したようにアクリルポリオールを含有する。本発明において、アクリルポリオールは、ガスバリア性向上に寄与する。アクリルポリオールとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマーを必須成分とし、当該必須成分と、(メタ)アクリル酸、アルキル基がメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基またはシクロヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレート系モノマー等とを主成分として重合して得られるポリマーがガスバリア性向上に特に効果がある点から、好ましく用いられる。さらに、前記水酸基含有モノマーと(メタ)アクリル酸モノマー及び/またはアルキル(メタ)アクリレート系モノマーと、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマーなどの他のモノマーを共重合させたものを用いることができる。
【0018】
さらには、上記ポリマーに対して、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、マレイン酸、アルキルマレイン酸モノエステル、フマル酸、アルキルフマル酸モノエステル、イタコン酸、アルキルイタコン酸モノエステル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーを共重合したものを用いることも可能である。
これらのアクリルポリオールは、単独で用いることもできるが、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0019】
本発明におけるアンカーコート層を構成する組成物中の上記アクリルポリオールの含有量は、ガスバリア性向上の観点から、該組成物中の全固形分量に対し、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
【0020】
また、本発明においては、上記本発明におけるアンカーコート層を構成する組成物はイソシアネ−ト系化合物を含有する。
本発明におけるアンカーコート層を構成する組成物中の上記イソシアネート系化合物の含有量は、ガスバリア性を向上させる観点から、該組成物中の全固形分量に対し、5〜99質量%であることが好ましく、50〜95質量%であることがより好ましい。
【0021】
イソシアネート系化合物としては、ジイソシアネートが好ましく、例えばキシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族系ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族系ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環系ジイソシアネート、さらには、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの混合物、トリフェニルメタントリイソシアネート、その他各種のイソシアネート系化合物がいずれも使用できる。本発明においては、上記のうち、ガスバリア性、接着性などの点から、前記芳香族系ジイソシアネート又は脂肪族系ジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0022】
(組成物)
本発明におけるアンカーコート層を構成する組成物は、前記アクリルポリオールとイソシアネート系化合物を含有するが、アクリルポリオールとイソシアネート系化合物の配合比は、ガスバリア性向上の観点から、[アクリルポリオール]/[イソシアネート系化合物]の質量比が0.01〜0.5であることが好ましく、0.05〜0.3であることがより好ましく、0.05〜0.15であることがさらに好ましい。なお、質量比とは固形分の質量比を意味する。
上記組成物中には、更に必要に応じ、他のポリオール、各種の安定剤ないし架橋剤、充填剤、その他等の添加剤を任意に含有することもできる。
【0023】
上記組成物を用いてアンカーコート層を形成するためコーティング液を用いる場合、必要に応じ、前記各成分を溶解するための溶媒を用いることができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールおよび水等を例示することができる。本発明においては、上記溶媒として、コーディングの均一性の点から、メチルエチルケトンが好ましく用いられる。該コーティング液の性状としてはエマルジョン型および溶解型のいずれでも良い。
【0024】
(アンカーコート層)
アンカーコート層は、前述したようにアクリルポリオールとイソシアネ−ト系化合物を含有する組成物からなり、この組成物の塗布によるアンカーコート層の形成には、公知のコーティング方法が適宣採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコ−ター、またはスプレイを用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、基材を該組成物からなる樹脂液に浸漬して行ってもよい。塗布後は、40〜180℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥などの加熱乾燥や、赤外線乾燥などの公知の方法により乾燥処理する。また、耐水性、耐久性を高めるために、電子線照射による架橋処理を行うこともできる。また、アンカーコート層の形成は、基材の製造ラインの途中で行う方法(インライン)でも、基材製造後に行う方法(オフライン)でも良い。
当該アンカーコート層の厚みは、基材とアンカーコート層との間の密着性を最適にする観点から、好ましくは0.001〜1μm、より好ましくは0.005〜0.5μm、更に好ましくは0.01〜0.1μmである。
【0025】
[無機薄膜層]
本発明のガスバリア性積層体は、前記のようにして基材上に設けられたアンカーコート層表面に、無機薄膜層を有する。基材が多層構造の場合、無機層はPEN層側に設けることが好ましい。
当該無機薄膜層を構成する無機物質としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物またはそれらの混合物が挙げられるが、好ましくは酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化炭化珪素、酸化アルミニウム、ダイアモンドライクカーボンである。特に、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化炭化珪素、酸化アルミニウムは、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。
【0026】
無機薄膜層の形成方法としては、蒸着法、コーティング法などの方法がいずれも使用できるが、ガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどのPVD(物理的気相蒸着)、あるいはプラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等のCVD(化学的気相蒸着)等の方法が含まれる。
無機薄膜層の厚みは、一般に0.1〜500nm程度であるが、好ましくは1〜100nmである。上記範囲内であれば、十分なガスバリア性が得られ、また、無機薄膜層に亀裂や剥離を発生させることなく、透明性にも優れている。
無機薄膜層は単層からなるもの、2層以上からなるもののいずれであってもよい。また、無機薄膜層が2層以上からなる場合は、同一の層でも異なる層でもよい。
【0027】
[ガスバリア性積層体]
本発明のガスバリア性積層体は、前記PEN層を有する基材、該基材の少なくとも一方の面に、前記アクリルポリオールとイソシアネ−ト系化合物とを含む組成物からなる層、及び前記無機薄膜層をこの順に有するものである。各層をこのように有することで、得られる積層体は優れたガスバリア性、特に優れた水蒸気バリア性を有し、更に前記基材と無機薄膜層との優れた接着性を示す。
【0028】
本発明のガスバリア性積層体においては、このようにして形成された積層体の無機薄膜層の表面に、必要に応じ保護樹脂層を有することができる。
この保護樹脂層は、無機薄膜層にバリア安定性や接着性、耐水性、耐水接着性や耐擦傷性などを付与させるために形成される。
当該保護樹脂層は、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、イソシアネート系樹脂、オキサゾリン系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アルコール性水酸基含有樹脂及びアイオノマー樹脂の中から選ばれる少なくとも1種を含む塗工液を、前記無機薄膜層表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0029】
この塗工液の塗布は、公知のコーティング方法が適宜採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、またはスプレイを用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。
当該保護樹脂層の厚みは、前記の機能を効果的に発揮させると共に、ブロッキングなどを抑制する観点から、通常0.05〜10μm程度、好ましくは0.1〜1μmである。
【0030】
本発明のガスバリア性積層体においては、ガスバリア性の観点から、無機薄膜層を形成した後に、また、無機薄膜層上に保護樹脂層を形成する場合には、この保護樹脂層を形成した後に、加熱処理することが好ましい。加熱処理の温度としては、好ましくは60℃以上かつ基材の融点未満の温度、より好ましくは70℃以上かつ基材の融点未満の温度、さらに好ましくは70〜160℃である。
【0031】
本発明のガスバリア性積層体においては、ガスバリア性積層体の外表面に直接又は接着剤層等の樹脂層を介してヒートシール樹脂層を積層することが好ましい。ヒートシール樹脂層は、ヒートシール性の良好な樹脂、例えば低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、アクリル系樹脂、生分解性樹脂などを用い、押出しラミネート法により形成してよく、また前記の各樹脂のフィルムを、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤またはポリエステル系接着剤などを用いるドライラミネート法により積層してもよい。
当該ヒートシール樹脂層の厚みに特に制限はないが、通常5〜400μm程度、好ましくは20〜100μmである。
【0032】
本発明のガスバリア性積層体の全体の厚みは、用途に応じて適宣選定されるが、ガスバリア性、強度、柔軟性、透明性、経済性、などの観点から、通常10〜1000μm程度、好ましくは30〜500μmである。また、幅や長さに特に制限はなく、用途に応じて適宜選定される。
【0033】
水蒸気バリア性及び酸素バリア性
本発明のガスバリア性積層体の水蒸気バリア性は、内容物の劣化防止の点から、水蒸気透過率が好ましくは0.2[g/(m2・24hr)]以下であり、より好ましくは0.1[g/(m2・24hr)]以下である。水蒸気透過率は、後述のように、JIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じて、実施例に記載した手法で測定することができる。
さらに本発明のガスバリア性積層体は、内容物の酸化防止の点から、温度25℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過率が、好ましくは0.4[cc/(m2・24hr・atm)]以下であり、より好ましくは0.3[cc/(m2・24hr・atm)]以下であり、更に好ましくは0.2[cc/(m2・24hr・atm)]以下である。酸素透過率も後述のように、JIS K 7126 B法に準じて、実施例に記載した手法で測定することができる。
【0034】
ポリエステル系基材と無機薄膜層との接着性
本発明のガスバリア性積層体における基材と無機薄膜層の接着性(層間強度)は、200g/15mm以上となることが好ましく、300g/15mm以上であることがより好ましい。
層間強度は、後述のように、JIS Z1707に準じ、ガスバリア性積層フィルムを、所定の短冊状に切り出し、引っ張り試験機を用いて測定することができる。
【0035】
本発明のガスバリア性積層体は、優れたガスバリア性、及び基材と無機薄膜層間の優れた接着性を有し、例えば、医薬品、食品、工業用品などの変質を防止するための包装用として、あるいは液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルター等で使用する透明導電シート、封止シートなどとして好適に用いられるが、特に、本発明のガスバリア性積層体は紫外線を遮断する性質を有し、内容物の劣化を防止する効果が高い点から、医薬品の包装用として用いることが好ましく、とりわけ紫外線遮断材料として用いることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、以下の実施例におけるフィルムの評価方法は、次の通りである。
【0037】
<水蒸気透過率>
JIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、次の手法で評価した。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の各ガスバリア性積層フィルムを2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、48時間以上間隔で重量増加がほぼ一定になる目安として14日間まで、重量測定(0.1mg単位)し、水蒸気透過率を下記式から算出した。
水蒸気透過率(g/m2・24hr)=(m/s)/t
m; 試験期間最後2回の秤量間隔の増加質量(g)
s; 透湿面積(m2
t; 試験期間最後2回の秤量間隔の時間(hr)/24(hr)
【0038】
<酸素透過率>
JIS K 7126 B法に準じ、酸素透過率測定装置(MOCON社製「OX−TRAN 2/21型酸素透過率測定装置」)により、各ガスバリア性積層フィルムについて、温度25℃、相対湿度80%の条件下で酸素透過率(cc/(m2・24hr・atm))を測定した。
【0039】
<ラミネート(層間)強度(g/15mm)>
JIS Z1707に準じ、ガスバリア性積層フィルムを幅15mmの短冊状に切り出し、端部を一部剥離させ、剥離試験機(島津製作所製、製品名EZ−TEST)により100mm/分の速度でT型剥離を行い、ラミネート強度(g/15mm)を測定した。
なお、ラミネート強度測定時の剥離面は、基材とアンカーコート層との界面近傍、若しくはアンカーコート層と無機薄膜層との界面近傍である。
【0040】
<色彩測定>
蒸着プラスチックフィルムについて、スペクトロフォトメーター(日本電色工業(株)製「SD−6000」)を用いて、D65、視野角2°と設定し、b*を測定した。
*値が大きいほど、フィルムの黄味が強い。
【0041】
<紫外線遮断性>
JIS K 0115に準じ、分光光度計 U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、ガスバリア性積層フィルムの波長200nmから800nmの範囲の光線吸収率を測定した(表1には波長350nmの光線の吸収率を示した)。
【0042】
<使用材料>
(ポリエステル系基材)
A−1:二軸延伸PENフィルム(厚み12μm、帝人デュポンフィルム社製)
A−2:共押出二軸延伸3層フィルム(PEN層/PET及びPENの混合層/PET層)(総厚み12μm(PEN層1μm/混合層10μm/PET層1μm)、ミツビシポリエステルフィルムジーエムビーエイチ社製)
A−3:二軸延伸PETフィルム(厚み12μm、三菱樹脂社製)
【0043】
(アンカーコート剤)
・B−1(実施例1、2、比較例3)
アクリルポリオールを8質量%含有する溶液とイソシアネート系化合物を質量比1:1で混合し、更にメチルエチルケトンを主成分とする溶剤を加え、[アクリルポリオール(固形分)]/[イソシアネート系化合物(固形分)]の質量比が0.08のアンカーコート剤を調整した。
・B−2(比較例1、2、4)
ポリエステルポリオールを12質量%含有する溶液とイソシアネート系化合物を75質量%含有する溶液を質量比1:1で混合し、更にメチルエチルケトンを主成分とする溶剤を加え、[ポリエステルポリオール(固形分)]/[イソシアネート系化合物(固形分)]の質量比が0.16のアンカーコート剤を調整した。
・B−3(実施例3)
アクリルポリオールを8質量%含有する溶液とイソシアネート系化合物を質量比2:1で混合し、更にメチルエチルケトンを主成分とする溶剤を加え、[アクリルポリオール(固形分)]/[イソシアネート系化合物(固形分)]の質量比が0.16のアンカーコート剤を調整した。
【0044】
実施例1
厚み12μmの二軸延伸PENフィルム(A−1)の片面に、アンカーコート剤(B−1)を、グラビアコート法により塗布し、厚み約0.02μmのアンカーコート層を形成した。
次に、該アンカーコート層上に、SiOを用い真空蒸着装置を使用して0.0013Pa(1×10-5Torr)の真空下で珪素酸化物(SiOx)を蒸着させ、蒸着層SiOxの厚みが約30nmの蒸着プラスチックフィルムを得て、さらにその蒸着面側に厚み60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを接着剤を用いてドライラミネートし、厚み約72μmのガスバリア性積層フィルムを得た。得られた蒸着プラスチックフィルム及びガスバリア性積層フィルムを前述の方法で評価した結果を表1に示す。
【0045】
実施例2
基材を厚み12μmの共押出二軸延伸3層フィルム(A−2)とし、そのPEN側の面にアンカーコート剤(B−1)をグラビアコート法により塗布してアンカーコート層を形成し、さらにその上に珪素酸化物(SiOx)を蒸着したこと以外は実施例1と同様にして、厚み約72μmのガスバリア性積層フィルムを得た。得られた蒸着プラスチックフィルム及びガスバリア性積層フィルムを前述の方法で評価した結果を表1に示す。
【0046】
実施例3
基材を厚み12μmの共押出二軸延伸3層フィルム(A−2)とし、そのPEN側の面に、アンカーコート剤(B−3)をグラビアコート法により塗布してアンカーコート層を形成し、さらにその上に珪素酸化物(SiOx)を蒸着したこと以外は実施例1と同様にして、厚み約72μmのガスバリア性積層フィルムを得た。得られた蒸着プラスチックフィルム及びガスバリア性積層フィルムを前述の方法で評価した結果を表1に示す。
【0047】
比較例1
厚み12μmの二軸延伸PENフィルム(A−1)の片面に、アンカーコート剤(B−2)をグラビアコート法により塗布してアンカーコート層を形成し、さらにその上に珪素酸化物(SiOx)を蒸着したこと以外は実施例1と同様にして、厚み約72μmのガスバリア性積層フィルムを得た。得られた蒸着プラスチックフィルム及びガスバリア性積層フィルムを前述の方法で評価した結果を表1に示す。
【0048】
比較例2
基材を厚み12μmの共押出二軸延伸3層フィルム(A−2)とし、そのPEN側の面にアンカーコート剤(B−2)をグラビアコート法により塗布してアンカーコート層を形成し、さらにその上に珪素酸化物(SiOx)を蒸着したこと以外は実施例1と同様にして、厚み約72μmのガスバリア性積層フィルムを得た。得られた蒸着プラスチックフィルム及びガスバリア性積層フィルムを前述の方法で評価した結果を表1に示す。
【0049】
比較例3
基材を厚み12μmの二軸延伸PETフィルム(A−3)としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み約72μmのガスバリア性積層フィルムを得た。得られた蒸着プラスチックフィルム及びガスバリア性積層フィルムを前述の方法で評価した結果を表1に示す。
【0050】
比較例4
基材を厚み12μmの二軸延伸PETフィルム(A−3)としたこと以外は比較例1と同様にして、厚み約72μmのガスバリア性積層フィルムを得た。得られた蒸着プラスチックフィルム及びガスバリア性積層フィルムを前述の方法で評価した結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1より、基材がPEN層を有し、アンカーコート成分としてアクリルポリオールを用いた実施例1〜3は、ポリエステルポリオールを用いた比較例1と2と比べて優れた水蒸気バリア性が得られることがわかった。特に、実施例1,2は、水蒸気バリア性に極めて優れるとともに、酸素バリア性も優れるものであった。
また、ラミネート強度においても、実施例1は比較例1と比べて高い強度を得られることがわかった。同様に、実施例2は比較例2と比べて高いラミネート強度を得られることがわかった。
【0053】
その一方で表1より、PETのみから成る基材を用いた比較例3と4では、ラミネート強度はあるものの、アンカーコート成分としてアクリルポリオールを用いても、水蒸気透過率と酸素透過率の改善は見られなかった。
【0054】
以上の結果から、基材がPEN層を有する場合において、アンカーコート成分としてアクリルポリオールを用いると、特に優れた水蒸気バリア性が得られ、更に酸素バリア性も優れ、ラミネート強度も向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のガスバリア性積層体は、優れたガスバリア性能及び基材と無機薄膜層との間の高い接着性を示すことから、医薬品、食品、工業用品などの変質を防止するための包装用として、あるいは液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルター等で使用する透明導電シート、封止シート用などとして好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンナフタレート層を有する基材、該基材の少なくとも一方の面に、アクリルポリオールとイソシアネ−ト系化合物とを含む組成物からなる層、及び無機薄膜層をこの順に有することを特徴とするガスバリア性積層体。
【請求項2】
前記基材が、更にポリエチレンテレフタレート層を有する請求項1に記載のガスバリア性積層体。
【請求項3】
前記基材が、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートの混合層を更に有する請求項2に記載のガスバリア性積層体。
【請求項4】
[アクリルポリオール]/[イソシアネート系化合物]の質量比が、0.01〜0.5である請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項5】
医薬用包装材料に用いられる請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体。

【公開番号】特開2013−49266(P2013−49266A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167519(P2012−167519)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】