説明

ガスバリア性組成物構造体および同構造体を備えたフィルム

【課題】高湿度下においても長期のガスバリア性や耐熱水性を達成でき、かつ製造後における初期の段階でのガスバリア性に優れた、ガスバリア性組成物構造体を得る。
【解決手段】有形化された組成物(X)が、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、多価カルボン酸(B)と、アルカリ化合物(C)とを含有する。多価カルボン酸(B)は、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)と、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)とから選ばれる少なくとも1種である。化合物(A)と多価カルボン酸(B)との質量比が(A)/(B)=95/5〜5/95の範囲である。化合物(A)および多価カルボン酸(B)における少なくとも一部が、架橋されている。有形化された組成物(X)に、ヨウ素化合物(Y)を用いた塗工処理または含浸処理が施されたうえで、金属化合物(Z)を用いた塗工処理または含浸処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリア性組成物構造体および同構造体を備えたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、強度、透明性、成形性に優れていることから、包装材料として幅広い用途に使用されている。しかしながら、これらの熱可塑性樹脂フィルムは、酸素等のガスの透過性が大きいため、一般食品、レトルト処理食品等の包装に使用した場合は、これらの食品を長期間保存するうちに、フィルムを透過した酸素等のガスにより食品の変質が生じることがある。こうした問題を解決するために、食品等の長期保存性を確保できるように、ガスバリア性に優れたフィルムが開発されている。
【0003】
特許文献1には、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物と、連続する3〜20の炭素のそれぞれにカルボキシル基を有する多価カルボン酸と、アルカリ化合物とを含有し、上記化合物と多価カルボン酸の質量比が(化合物)/(多価カルボン酸)=95/5〜5/95の範囲であり、かつ化合物と多価カルボン酸の一部が架橋されている組成物に対して、金属化合物を用いて塗工処理または含浸処理してなるガスバリア性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−146268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のガスバリア性組成物を用いると、長期のガスバリア性や耐熱水性に優れたフィルムを得ることができる。しかし、ガスバリア性が発現するまでに時間がかかる場合があり、このため製造後すぐにガスバリア性を向上させることが可能なフィルムが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するもので、高湿度下においても長期のガスバリア性や耐熱水性を達成できるのみならず、製造後における初期の段階でのガスバリア性も優れたガスバリア性組成物構造体およびこの構造体を備えたフィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の樹脂組成物を含有するコート剤をフィルムの表面に塗布し、この樹脂組成物をヨウ素化合物を用いて処理し、さらに金属化合物を用いて処理した層をフィルム表面に形成させることにより、上記の課題が解決できることを見出し本発明に到達した。すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
【0008】
(1)有形化された組成物(X)を有し、
前記組成物(X)は、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、多価カルボン酸(B)と、アルカリ化合物(C)とを含有し、前記多価カルボン酸(B)は、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)と、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)とから選ばれる少なくとも1種であり、化合物(A)と多価カルボン酸(B)との質量比が(A)/(B)=95/5〜5/95の範囲であり、化合物(A)および多価カルボン酸(B)における少なくとも一部が架橋されており、
前記有形化された組成物(X)に、ヨウ素化合物(Y)を用いた塗工処理または含浸処理が施されたうえで、金属化合物(Z)を用いた塗工処理または含浸処理が施されていることを特徴とするガスバリア性組成物構造体。
【0009】
(2)組成物(X)が無機層状化合物(D)を含むものであることを特徴とする(1)のガスバリア性組成物構造体。
【0010】
(3)分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、多価カルボン酸(B)と、アルカリ化合物(C)とを含有し、前記多価カルボン酸(B)は、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)と、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)とから選ばれる少なくとも1種であり、化合物(A)と多価カルボン酸(B)との質量比が(A)/(B)=95/5〜5/95の範囲であり、化合物(A)および多価カルボン酸(B)における少なくとも一部が架橋されている組成物(X)を有形化し、
この有形化した組成物(X)に、ヨウ素化合物(Y)を用いた塗工処理または含浸処理を施し、その後に金属化合物(Z)を用いた塗工処理または含浸処理を施すことを特徴とするガスバリア性組成物構造体の製造方法。
【0011】
(4)組成物(X)に無機層状化合物(D)を含有させることを特徴とする(3)のガスバリア性組成物構造体の製造方法。
【0012】
(5)熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、上記(1)または(2)のガスバリア性組成物構造体にて構成された層が設けられていることを特徴とするガスバリア性フィルム。
【0013】
(6)熱可塑性樹脂フィルムとガスバリア性組成物構造体にて構成された層との間、またはガスバリア性組成物構造体にて構成された層の表面側に、無機物層が設けられていることを特徴とする(5)のガスバリア性フィルム。
【0014】
(7)分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、多価カルボン酸(B)と、アルカリ化合物(C)とを含有し、前記多価カルボン酸(B)は、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)と、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)とから選ばれる少なくとも1種であり、化合物(A)と多価カルボン酸(B)の質量比が(A)/(B)=95/5〜5/95の範囲であり、化合物(A)および多価カルボン酸(B)における少なくとも一部が架橋されている組成物(X)の層を、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に形成し、
前記組成物(X)の層に、ヨウ素化合物(Y)を用いた塗工処理または含浸処理を施し、その後に金属化合物(Z)を用いた塗工処理または含浸処理を施すことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
【0015】
(8)組成物(X)に無機層状化合物(D)を含有させることを特徴とする(7)のガスバリア性フィルムの製造方法。
【0016】
(9)熱可塑性樹脂フィルムと組成物(X)の層との間、または組成物(X)の層の表面側に、無機物層を設けることを特徴とする(7)または(8)のガスバリア性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高湿度下でも優れたガスバリア性能を長期に有し、熱水条件下でも優れたガスバリア性能を有し、しかも製造後における初期の段階でのガスバリア性も優れたガスバリア性組成物構造体およびこの構造体を備えたガスバリア性フィルムを得ることができる。このガスバリア性組成物構造体およびこの構造体を備えたガスバリア性フィルムは、生産性に優れた方法によって製造することができ、食品包装用フィルムなどに好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のガスバリア性組成物構造体は、後述の(A)〜(C)成分からなる組成物(X)を有形化したうえで、ヨウ素化合物(Y)で処理した後、金属化合物(Z)を用いた処理を施したものである。ここで、有形化することとは、たとえば組成物を基材に塗布して層状体化するなどの、本来は無形である組成物を有形のものにすることをいう。
【0019】
組成物(X)は、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)を含有する。この化合物(A)としては、高分子化合物、オリゴマー、低分子化合物のいずれでもよい。
高分子化合物としては、たとえばポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、多糖類(7個以上の単糖がポリグリコシル化している高分子化合物:澱粉、セルロース、ガラクトマンナン、カラギーナン、キチン、キトサンなど)、水酸基変成された各種高分子化合物などが挙げられる。
【0020】
オリゴマーとしては、たとえばオリゴ糖(3個から6個の単糖がグリコシル結合しているもの:ラフィノース、ゲンチアノースなど)や、上記高分子化合物における分子鎖の短いものが挙げられる。
【0021】
低分子化合物としては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、単糖類(二糖類、オリゴ糖、多糖類の構成成分であり、通常C(HO)で表されるもの:グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、エリトロース、アラビノースなど)、二糖類(2個の単糖がグリコシル結合しているもの:麦芽糖、乳糖、ショ糖、セロビオースなど)、糖アルコール(単糖類を還元して得られるポリヒドロキシアルカン:ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール、グリセロールなど)が挙げられる。さらには、芳香族化合物として、カテコール(1,2−ジヒドロキシベンゼン)、レゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)などが挙げられる。
【0022】
化合物(A)としては、これらの中でもポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、多糖類がガスバリア性の点で好ましく、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0023】
化合物(A)は、その水酸基の一部がエステル化、カルボキシメチル化、アセチル化、リン酸化、カルボキシル化、アミノ化、アリルエーテル化、メチルエーテル化、カルボキシメチルエーテル化、グラフト化等の置換や変性をされていてもよい。しかし、化合物(A)に含まれる水酸基の比率が低すぎると、詳細を後述する多価カルボン酸(B)とのエステル架橋密度が低下し、ガスバリア性が不十分になる恐れがある。このため、水酸基の置換率は0〜50%の範囲であることが好ましく、0〜30%の範囲であることがより好ましく、0〜20%の範囲であることがさらに好ましく、0〜10%の範囲であることが特に好ましい。
【0024】
化合物(A)として好ましく用いられるポリビニルアルコールは、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化するなどの公知の方法を用いて得ることができる。ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
【0025】
本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩;炭素数2〜30のα−オレフィン類;アルキルビニルエーテル類;ビニルピロリドン類などが挙げられる。しかし、疎水性の共重合成分を多量に含有させると水溶性が損なわれ、組成物(X)の生産の際に不都合が生じるため、ポリビニルアルコールにおけるビニルアルコール単位と他のビニル化合物単位のモル比は、10/90〜100/0の範囲であることが好ましい。
【0026】
ケン化方法としては公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を用いることができ、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。ケン化度は100%に近いほどガスバリア性の観点からは好ましい。ケン化度が低すぎるとバリア性能が低下してくる。このためケン化度は、通常約90%以上、好ましくは95%以上さらに好ましくは99%以上である。ビニルエステルの重合体の平均重合度は、重合の難易度や取り扱い性の観点から50〜3000であることが好ましく、80〜2500であることがより好ましく、100〜2000であることがいっそう好ましい。
【0027】
組成物(X)を構成する多価カルボン酸(B)としては、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)と、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。多価カルボン酸(B)としていずれを選択するかは、後述のように、金属化合物(Z)を用いて塗工・浸漬のいずれの処理を採るかと併せて、簡便さ、ガスバリア性、耐熱水性等のバランスの点から、最適な組み合わせとなるように適宜選択すればよい。
【0028】
多価カルボン酸(B)のうち、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)は、無水マレイン酸とエチレンを溶液ラジカル重合などの公知の方法で重合することにより得られるものである。得られた重合体は、マレイン酸単位を10モル%以上含有するものであることが好ましい。マレイン酸単位が10モル%より少ないと、化合物(A)の水酸基との反応による架橋構造の形成が不十分となってガスバリア性が低下する傾向にある。また、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のビニル化合物を少量共重合することもできる。そのようなビニル化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;ギ酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、p−スチレンスルホン酸、プロピレン、イソブチレンなどの炭素数3〜30のオレフィン類;PVAの水酸基などと反応する反応性基を有する化合物等を挙げることができる。なお、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)中のマレイン酸単位は、無水マレイン酸構造となっていてもよく、本明細書ではこれらを特に区別せずに記述する。
【0029】
多価カルボン酸(B)のうち、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)のカルボキシル基は、部分的にエステル化もしくはアミド化されていてもよく、酸無水物構造となっていてもよい。
【0030】
組成物(X)において、化合物(A)と多価カルボン酸(B)との質量比(A)/(B)は、95/5〜5/95の範囲とすることが必要であり、好ましくは90/10〜10/90の範囲であり、より好ましくは80/20〜20/80の範囲であり、さらに好ましくは60/40〜20/80の範囲であり、特に好ましくは50/50〜20/80の範囲である。化合物(A)が質量比で95%より多いときや5%未満のときは、特に高湿度雰囲気下におけるフィルムのガスバリア性が不十分となる。
【0031】
組成物(X)は、アルカリ化合物(C)を含む。アルカリ化合物(C)は、触媒的作用によって化合物(A)と多価カルボン酸(B)とのエステル化を促進していると推察される。
【0032】
アルカリ化合物(C)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;水酸化アンモニウム、有機水酸化アンモニウム化合物等のアンモニウム化合物;炭酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、酢酸塩などの有機酸とアルカリ金属からなる塩などが挙げられる。中でも水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属の水酸化物や次亜リン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0033】
アルカリ化合物(C)がエステル化を効果的に促進するためには、多価カルボン酸(B)のカルボキシル基に対してモル比(C)/(B)が1/100〜50/100となる範囲で使用することが好ましい。より好ましくは2/100〜40/100の範囲であり、特に好ましくは2/100〜30/100の範囲である。アルカリ化合物(C)のモル比が多価カルボン酸(B)100に対して50を超えたり、1より低かったりすると、得られる組成物(X)のガスバリア性が不十分なものとなることがある。すなわち、アルカリ化合物(C)のモル比が低い場合はエステル化触媒効果が不十分であるため、また高い場合はカルボン酸塩が多くなりすぎて、エステル化に寄与できるカルボン酸が少なくなるため、いずれも得られる組成物(X)のガスバリア性が不十分なものとなることがある。
【0034】
組成物(X)においては、熱処理などによって、化合物(A)および多価カルボン酸(B)における少なくとも一部が架橋されていることが、バリア性の発現のために必要である。化合物(A)と多価カルボン酸(B)とは、例えば熱処理することで上記したエステル結合によって架橋する。
【0035】
エステル結合の存在は、基材に化合物(A)をコートしたうえで、ATR法によってコート層の赤外スペクトルを測定することで、分析することができる。化合物(A)と多価カルボン酸(B)とがエステル結合で架橋された場合、多価カルボン酸(B)中のカルボニル基の吸収ピークが高波数側にシフトする。したがって、化合物(A)から多価カルボン酸(B)の差スペクトルをとって、残る吸収ピークを、エステル結合に由来するピークとする。たとえば、1600〜1850cm−1の領域に限定してベースラインをとり、化合物(A)と多価カルボン酸(B)のカルボニル基のピークの吸光度を規格化し、ベースラインを下回らないように両者のピークの差スペクトルをとり、1695〜1800cm−1に残る吸収ピークをエステル結合由来のピークと判断することができる。たとえば、化合物(A)と多価カルボン酸(B)とがポリビニルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸とである場合は、上記の方法で差スペクトルをとり、残った1720cm−1付近のピークを、エステル結合のカルボニルに由来するピークであると判断することができる。
【0036】
化合物(A)と多価カルボン酸(B)とをエステル結合で架橋するために熱処理する方法としては、熱風乾燥機、真空乾燥機、赤外線ヒーターなどの非接触型の熱処理装置や、熱ロール、熱プレス機などの接触型の熱処理装置といった公知の装置を使用する方法を挙げることができ、これらの方法を組み合わせて使用することもできる。熱処理温度は、使用する装置の熱効率などによっても異なるが、エステル架橋を短時間で形成させるために130℃以上であることが好ましく、さらに熱処理時間を短くするために150℃以上であることが好ましい。熱処理時間は、通常1秒以上、好ましくは3秒以上である。熱処理温度が低すぎたり、熱処理時間が短かすぎたりすると、エステル架橋が不十分となり、ガスバリア性が不十分となる場合がある。
【0037】
本発明において、有形化された組成物(X)を処理するためのヨウ素化合物(Y)は、後述の金属化合物(Z)の浸透性を向上させる目的で、水溶液の態様で用いられる。ヨウ素化合物(Y)としては、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化アンモニウムなどが挙げられる。ヨウ素化合物(Y)は、水中でポリヨウ化物イオンとなっていることが好ましく、ポリヨウ化物イオンの例としては三ヨウ化物イオンが挙げられる。三ヨウ化物イオンは、ヨウ素デンプン反応により青紫色に呈色することで、その存在を確認することができる。三ヨウ化物イオンは、ヨウ化物イオンを生じる塩とヨウ素とを混合することにより得られる。ヨウ素化合物(Y)の濃度は、特に限定されないが、耐熱水性の改善効果の点から、ヨウ素原子が1×10−5mol/L以上であることが好ましい。一方、濃度が高すぎるとガスバリア性組成物の外観が悪化することがあることから、濃度の上限は1×10−3mol/Lとすることが好ましい。
【0038】
ヨウ素化合物(Y)は、上述の(A)〜(C)を含有する有形化された組成物(X)に塗工する(塗工処理)か、または有形化された組成物(X)をヨウ素化合物(Y)が含まれる溶媒中に浸漬する(浸漬処理)ことによって使用される。塗工処理と浸漬処理とは、ガスバリア特性やその他の目的に応じて選択することができる。以下、組成物(X)に対してヨウ素化合物(Y)を塗工処理または浸漬処理したものを、「組成物(X′)」と称する。塗工処理は、比較的簡便に行える点が有利であり、一方、浸漬処理は、後述の金属化合物(Z)の浸透性をよりいっそう高めることができるという特長を有する。
【0039】
ヨウ素化合物(Y)の塗工処理としては、噴霧する方法や公知のコーターを用いる方法などが挙げられる。コーターとしては、たとえば、エアーナイフコーター、キスロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、デイップコーター、ダイコーター等を使用することができる。
【0040】
塗工後に溶媒を除去するための乾燥方法は、特に限定されないが、熱風乾燥機、真空乾燥機、赤外線ヒーターなどの非接触型の熱処理装置や、熱ロール、熱プレス機などの接触型の熱処理装置を用いた公知の方法を使用することができる。これらを組み合わせて使用することもできる。熱処理温度は、使用する溶媒の沸点や装置の熱効率などによっても異なるが、乾燥効率を高めるために80℃以上とすることが好ましい。乾燥時間は、通常1秒以上、好ましくは3秒以上がよい。
【0041】
次に、ヨウ素化合物(Y)の浸漬処理について述べる。浸漬処理の効率を高めるためには、溶媒を加熱することが好ましい。この際、有形化された組成物(X)を溶媒に浸漬してから加熱してもよく、予め加熱しておいた溶媒に有形化された組成物(X)を浸漬してもよい。好ましい溶媒の温度は30〜100℃の範囲であり、さらに好ましくは処理効率の観点から60〜95℃の範囲である。温度が低すぎるとヨウ素化合物(Y)の浸透効果を得るのに長時間を要し、温度が高すぎると組成物(X)の分解などが起こることがある。浸漬処理時間は1秒〜1分であることが好ましい。浸漬処理時間が短すぎると、後述する金属化合物(Z)の浸透性の向上効果が不十分になり、浸漬処理時間が長すぎると、生産効率が悪くなる。また、浸漬処理後の乾燥については、前述した塗工処理の場合と同様の方法を適宜用いることができる。
【0042】
金属化合物(Z)は、耐熱水性および耐長期湿熱性を向上させる目的で、ヨウ素化合物(Y)による処理が施された組成物(X′)に対して塗工処理または浸漬処理される。塗工処理と浸漬処理とは、ガスバリア特性やその他の目的に応じていずれかを選択することができる。
【0043】
金属化合物(Z)としては、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属、Al、Zn、Snなどの両性金属、Ti、Zr、Fe、Co、Ni、Cu、Mnなどの遷移金属から選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物;水酸化物;塩化物;硝酸塩、珪酸塩、リン酸塩、次亜リン酸塩、炭酸塩、オキシ硫酸塩などの無機塩;酢酸塩、ステアリン酸塩、オキシ酢酸塩などの有機塩があげられる。これらの金属塩や金属酸化物は、二種以上の金属の固溶体となっていてもよく、層状化合物であってもよい。これらの金属うち、アルカリ土類金属、両性金属、長周期型周期表4A族から選ばれる少なくとも一つの金属の酸化物や金属塩が好ましく、Ca、Mg、Al、Ti、Zrから選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や金属塩がさらに好ましい。いっそう好ましい例として、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイトが挙げられる。中でも耐熱水性向上効果の高い酸化マグネシウムやハイドロタルサイトが特に好ましい。
【0044】
金属化合物(Z)を有形化された組成物(X′)に塗工する場合には、金属化合物(Z)の溶液または分散液を塗工する方法が好ましい。この場合、用いる溶媒は特に限定されず、有機溶媒や水などを用いることができるが、作業環境の点からアルコールまたは水が好ましく、特に水が好ましい。溶媒中の金属化合物(Z)の濃度は、特に限定されないが、耐熱水性の改善効果の点から、金属原子が1×10−5mol/L以上であることが好ましい。一方、濃度が高すぎて沈殿を生じた液を用いると、ガスバリア性組成物の外観が悪化するおそれがあることから、濃度の上限は用いる金属化合物(Z)の飽和溶解度とすることが好ましい。
【0045】
組成物(X′)に金属化合物(Z)を塗工した後、その塗工面を保護するために、保護層を積層することができる。保護層の種類は、ガスバリア性組成物の表面に要求される特性に合わせて適時選択すればよい。たとえば、ガスバリア性組成物層が最表面となる構成の場合には、耐磨耗性に優れたものが好ましく、ガスバリア性組成物層にさらに他の層積層する場合には、積層させる層との接着性に優れたものを選択することができる。このような保護層としては、たとえば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や;オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、水溶性樹脂も用いることができる。水溶性樹脂の例としては、ポリアクリル酸やメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体などのアニオン性親水基を有する樹脂;でんぷん、ポリビニルアルコールやポリオキシメチレンなどのノニオン性親水基を有する樹脂;キトサン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなどのカチオン性親水基を有する樹脂などが挙げられる。これらは二種以上を用いても良く、他の樹脂成分との共重合体となっていても良い。
【0046】
さらに、塗工処理と保護層形成処理とを同時に行う方法として、金属化合物(Z)の溶液または分散液に上記保護層に用いる樹脂をバインダーとしてともに含有させておき、これを組成物(X′)の表面に塗工する方法がある。この場合、金属化合物(Z)とバインダーの質量比率は1/1000〜1000/1であることが好ましく、1/100〜100/1であることがさらに好ましい。金属化合物(Z)の質量比率が1/1000未満では耐熱水性を改善する効果が不十分となることがあり、金属化合物(Z)の質量比率が1000/1を超えると塗布後の定着性が不十分となることがある。
【0047】
金属化合物(Z)または必要に応じて溶媒やバインダーを含む液の塗布量は、有形化された組成物(X′)の表面に対して0.001〜10g/mであることが好ましく、0.01〜1g/mであることがさらに好ましい。組成物(X′)の表面に塗工された層は、連続層であっても不連続層であってもよい。
【0048】
金属化合物(Z)を含有する液の塗工法としては、特に限定されないが、前述のヨウ素化合物(Y)と同じ塗工方法、乾燥方法を使用することができる。乾燥時の熱処理温度は、使用する溶媒の沸点や装置の熱効率などによっても異なるが、乾燥効率を高めるために80℃以上であることが好ましい。乾燥時間は、通常1秒以上、好ましくは3秒以上がよい。
【0049】
次に、有形化された組成物(X′)を金属化合物(Z)に浸漬させる浸漬処理について述べる。このときに金属化合物(Z)を溶解または分散させておく溶媒の種類や金属化合物の濃度に関しては、前述の塗工処理の場合と同様の条件を用いることができる。
【0050】
浸漬処理の効率を高めるためには、溶媒を加熱することが好ましい。この際、有形化された組成物(X′)を溶媒に浸漬してから加熱してもよく、予め加熱しておいた溶媒に有形化された組成物(X′)を浸漬してもよい。好ましい溶媒の温度は、30〜130℃の範囲であり、さらに好ましくは処理効率の観点から60〜120℃の範囲である。温度が低すぎると耐熱水性の効果を得るのに長時間を要し、温度が高すぎると組成物(X′)の分解などがおこることがある。また、浸漬処理時間は1秒〜1分であることが好ましい。浸漬処理時間が短すぎると、耐熱水性の改善効果が不十分になり、浸漬処理時間が長すぎると、生産効率が悪くなる。浸漬処理後の乾燥処理については、前述した塗工処理の場合と同様の方法を適宜用いることができる。
【0051】
(A)〜(C)を含有する組成物(X)には、ガスバリア性をさらに向上させる目的で、無機層状化合物(D)を添加してもよい。無機層状化合物(D)の添加量は、質量比で、(D)/[(A)+(B)]の値が0.001〜1.0となる範囲であることが好ましい。この値が0.005〜0.5であることがより好ましく、0.01〜0.3であることがさらに好ましく、0.01〜0.2であることが特に好ましい。無機層状化合物(D)の添加量が少なすぎる場合、すなわち上記の値が0.001未満の場合は、ガスバリア性を向上させる効果が認められず、1.0を超えた場合は、たとえば基材に組成物(X)を積層したフィルムの外観や積層時の成膜性が悪化することがある。
【0052】
無機層状化合物(D)とは、単位結晶層が重なって層状構造を形成する無機化合物のことをいう。特に、溶媒中で膨潤、劈開するものが好ましい。たとえば、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト、緑泥石、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、テトラシリリックマイカ、タルク、パイロフィライト、ナクライト、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、ナトリウムテニオライト、ザンソフィライト、アンチゴライト、ディッカイト、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。中でも、ガスバリア性向上の観点から膨潤性フッ素雲母やモンモリロナイトが特に好ましい。これらの無機層状化合物(D)は、天然に産するものであっても、人工的に合成あるいは変性されたものでもよく、またそれらをオニウム塩などの有機物で処理したものや焼成処理をしたものであってもよい。
【0053】
組成物(X)には、エステル化反応を促進する目的で公知の触媒を加えることができる。この目的のために使用される触媒としては、たとえば、マンガン、カルシウム、コバルト、マグネシウム、亜鉛、鉛、アンチモンなどの酸化物や酢酸塩や炭酸塩;チタン、スズ、鉛などの有機金属化合物;塩化ハフニウム(IV)・テトラヒドロフランやハフニウムtert−ブトキシドなどのハフニウム塩;ジフェニルアンモニウムトリフラートなどが挙げられる。
【0054】
組成物(X)には、その特性を大きく損わない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、粘着付与剤などが添加されていてもよい。熱安定剤、酸化防止剤および劣化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、これらの混合物が挙げられる。粘着付与剤としては、C、C系石油油樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、アルキルフェノール樹脂などの合成樹脂系のものや、ロジン、テルペンなどの天然樹脂系のものなどが挙げられる。これらは、水素化、不均化、二量化、エステル化などが施された変性物でもよい。水系で用いる際には混合性の点からエマルションの形態で使用することが好ましい。
【0055】
本発明のガスバリア性フィルムは、(A)〜(C)成分および溶媒を主な成分とするコート剤を基材フィルムに塗工してから熱処理を行うことで、組成物(X)を形成するとともにこの組成物(X)を有形化し、さらにヨウ素化合物(Y)で処理して組成物(X′)とした後、これを金属化合物(Z)で処理することによって、好適に得ることができる。以下、(A)〜(C)成分および溶媒を主な成分とするコート剤のことを単に「コート剤」と呼ぶ。
【0056】
コート剤に使用する溶媒としては、フィルム生産時の環境の点から、水が好ましい。溶解性の向上、乾燥工程の短縮、溶液の安定性の改善といった目的により、アルコールなどの有機溶媒を少量添加することもできる。
【0057】
コート剤の調製は、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて公知の方法で行えばよい。撹拌機としては、ホモジナイザー、ボールミル、高圧分散装置などの公知の装置を用いることができる。
【0058】
コート剤をフィルムにコートする際の溶液濃度は、液の粘度や反応性、用いる装置の仕様などによって適宜変更されるものである。しかし、あまりに希薄な溶液ではガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層をコートすることが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。一方、溶液の濃度が高すぎると、混合操作や保存性などに問題を生じることがある。このような観点から、コート剤の固形分濃度は5〜60質量%の範囲であることが好ましく、10〜50質量%の範囲であることがより好ましい。
【0059】
コート剤を基材フィルムに塗布する方法は特に限定されないが、前述したヨウ素化合物(Y)や金属化合物(Z)の塗工法と同じ方法を使用することができる。
【0060】
基材として上述のように基材フィルムを用いることができるほかに、紙などのシート物を基材として用いることも可能である。
【0061】
上述のようにして基材にコート剤を塗工し、さらにヨウ素化合物(Y)による処理と金属化合物(Z)による処理とを経ることで、本発明のガスバリア性組成物構造体は、種々のフィルムや紙などの基材上に積層されて効果的に使用することができる。特に、熱可塑性樹脂フィルム上に形成することによって本発明のガスバリア性フィルムとすることができる。
【0062】
このための熱可塑性樹脂フィルムとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂;液晶ポリエステル樹脂;ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、トリアセチルセルロース、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、直鎖状ポリイミドなどの樹脂;それらの混合物よりなるフィルムが挙げられる。それらのフィルムの積層体も挙げられる。これらのフィルムに用いられる樹脂のうち、特に耐熱性と透明性の点からはポリカーボネートやポリアリレートが好ましく、耐熱性と経済性の点からはポリエチレンテレフタレートが好ましい。フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよい。
【0063】
フィルムを製造するに際しては、たとえば、熱可塑性樹脂を押出機で加熱・溶融してTダイより押し出し、冷却ロールなどにより冷却固化させて未延伸フィルムを得るか、もしくは円形ダイより押し出して水冷あるいは空冷により固化させて未延伸フィルムを得る。延伸フィルムを製造する場合は、未延伸フィルムを一旦巻き取った後、または未延伸フィルムの製造後に連続して、同時2軸延伸法または逐次2軸延伸法により延伸する方法を用いることが好ましい。フィルムの機械的特性やその厚みの均一性の面から、Tダイによるフラット式製膜法とテンター延伸法を組み合わせる方法が好ましい。
【0064】
コート剤をフィルムにコートしてガスバリア組成物の層を形成するに際しては、未延伸フィルムにコーティングして乾燥を行った後に、テンター式延伸機に供給してフィルムを走行方向と幅方向に同時に延伸(同時2軸延伸)し、熱処理することができる。あるいは、多段熱ロール等を用いてフィルムの走行方向に延伸を行った後にコーティングし、乾燥を行った後に、テンター式延伸機によって幅方向に延伸(逐次2軸延伸)してもよい。また、走行方向の延伸とその後のテンターでの同時2軸延伸とを組み合わせることも可能である。
【0065】
フィルムと組成物(X)の層との接着性を向上するために、フィルム表面にコロナ放電やアンカーコートなどの処理を施してもよい。
【0066】
ガスバリア性組成物層を形成した熱可塑性樹脂フィルムには、さらなるガスバリア性向上、電極の形成、導電性の付与、反射防止性の付与、熱線・UV遮蔽せいの付与等の目的で、無機物からなる層を形成してもよい。この場合、無機物層は、熱可塑性樹脂フィルムとガスバリア性組成物層との間に形成されていてもよいし、ガスバリア性組成物層の上面(熱可塑性樹脂フィルムとは逆側)に形成されていてもよい。このとき、無機物層とガスバリア性組成物層とのいずれかの層または両層が、2層以上形成されていてもよく、たとえば、これらの層を交互に設けて複層化することもできる。
【0067】
このような無機物層を構成する無機物は、無機物であれば特に制限されない。たとえば、アルミニウムなどの金属;酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO、FTOなどの金属酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物;ダイヤモンドライクカーボン;銀;酸化鉄;これらの混合物などが挙げられる。中でも酸化珪素が好ましい。
【0068】
無機物層の形成方法は、特に限定されず、ゾル−ゲル法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理気相成長法(PVD);プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法などの化学気相成長法(CVD);めっき法などの、公知の方法が挙げられる。無機物層の厚みに関しても、特に限定されないが、通常0.5nm〜1000nmが好ましく、1nm〜100nmがより好ましく、5nm〜50nmが特に好ましい。無機物層の膜厚が1000nm以上になると、曲げなどによってクラックが発生しやすくなり、界面での剥離が起こりやすくなったりする。膜厚が0.5nm以下では、ガスバリア性を向上させる効果が認められなくなる。
【0069】
本発明のガスバリア性フィルムにおけるガスバリア性組成物層の厚みは、フィルムのガスバリア性を十分高めるためには0.03μm以上であることが望ましい。その上限は特にないが、あまり厚すぎるとベースフィルムの特性が活かせなくなる。このため、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下であることが望ましい。
【0070】
本発明のガスバリア性組成物構造体は、20℃、90%RHにおける酸素透過係数が20ml・μm/m・day・MPa以下であることが好ましく、10ml・μm/m・day・MPa以下であることがいっそう好ましく、5ml・μm/m・day・MPa以下であることが特に好ましい。
【0071】
本発明のガスバリア性フィルムには、印刷やラミネート加工を行っても良い。
【0072】
本発明のガスバリア性フィルムは、食品包装、有機EL、フィルム型太陽電池、トイレタリー用品包装、医薬品包装などの種々の用途に使用することができる。
【実施例】
【0073】
次に、本発明を実施例・比較例により具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例・比較例において、ガスバリア性は、製造直後のフィルムサンプルと、30℃×90%RH×3ヶ月の湿熱処理後のフィルムサンプルとの、20℃、相対湿度90%の雰囲気における酸素透過率を、モコン社製の酸素透過度測定器(OX−TRAN 2/20)で測定することにより評価した。
【0074】
ガスバリア層の酸素透過係数Pは、下記式を用いて算出した。
1/Q=1/Q+L/P
ただし、Q: ガスバリア性フィルムの酸素透過度(ml/m・day・MPa)
: 熱可塑性樹脂フィルムの酸素透過度(ml/m・day・MPa)
: ガスバリア層の酸素透過係数(ml・μm/m・day・MPa)
L : ガスバリア層の厚み(μm)
である。なお、厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの酸素透過度は900ml/m・day・MPaであり、厚み15μmのナイロン6フィルムの酸素透過度は400ml/m・day・MPaであり、厚み100μmのポリカーボネートフィルム(PC)の酸素透過度は9500ml/m・day・MPaであった。
【0075】
耐熱水性の評価は、製造から3日後のサンプルを90℃の熱水(イオン交換水)中に30分間浸漬した後、水分を拭き取り、20℃、相対湿度90%の雰囲気における酸素透過率をモコン製社製の酸素透過度測定器(OX−TRAN 2/20)で測定することにより評価した。
【0076】
[各溶液の調製]
(a)ポリビニルアルコール水溶液(I)の調製
水27.00gにポリビニルアルコール(ユニチカケミカル社製 UF100、重合度1000、ケン化度99.4)3.00gを添加・溶解し、10質量%水溶液(I)とした。
【0077】
(b)中和度10%(アルカリ化合物:水酸化ナトリウム)のエチレン−マレイン酸共重合体水溶液(II)の調製
水93.1gに水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製、試薬特級)0.54gとエチレン−マレイン酸共重合体(Aldrich社製)9.8gとを添加し、これを加熱溶解して、10質量%水溶液(II)とした。
【0078】
(c)中和度15%(アルカリ化合物:水酸化ナトリウム)の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸水溶液(III)の調製
水97.2gに水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製、試薬特級)1.0gと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(和光純薬工業社製、試薬一級)9.8gとを添加し、溶解して、10質量%水溶液(III)とした。
【0079】
(d)ヨウ素化合物溶液(IV)の調製
ヨウ化カリウムの0.066質量%水溶液100部に対してヨウ素0.25部を添加し、撹拌してヨウ素化合物溶液(IV)とした。
【0080】
実施例1
上記の水溶液(I)3.0gと溶液(II)7.4gとを混合、撹拌して、ポリビニルアルコールとエチレン−マレイン酸共重合体の質量比が30/70、固形分濃度が10質量%であるコート剤を調製した。
【0081】
このコート剤を基材としてのナイロン6フィルム(ユニチカ社製 エンブレムON15、厚み15μm)のコロナ面処理上に、乾燥後の塗膜厚みが約1μmになるよう、にメイヤーバーでコートし、100℃で2分間乾燥した後、200℃で30秒間熱処理して有形化した。次に、これにより形成されたガスバリアコート面にヨウ素化合物としての40℃のヨウ素化合物溶液(IV)をダイレクトグラビア法で塗工し、その後、100℃で2分間乾燥した。さらに、ガスバリアコート面に金属化合物としての酸化マグネシウム(協和化学工業社製 ミクロマグ3−150)の水溶液を0.9g/mになるようにメイヤーバーでコートして、100℃で2分間乾燥した。
【0082】
これにより得られた製造直後のコートフィルムの20℃、90%RHにおける酸素透過度は3ml/m・day・MPa、コート層の酸素透過係数は3ml・μm/m・day・MPaであった。このコートフィルムを30℃×90%RHで3ヶ月保存した後のコート層の酸素透過係数は3ml・μm/m・day・MPaであった。また、フィルムに90℃、30分の熱水処理を行った後の20℃、90%RHにおけるコート層の酸素透過係数は3ml・μm/m2・day・MPaであり、優れたガスバリア性を示した。
【0083】
実施例1のコートフィルムの詳細を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例2
実施例1で用いたコート剤にモンモリロナイトの3%水分散液(クニミネ工業社製 クニピアF)を添加して、ポリビニルアルコールとエチレン−マレイン酸共重合体とモンモリロナイトとの質量比が30/70/5であり、固形分が9質量%であるコート剤を作製した。それ以外は実施例1と同様とした。それによって実施例2のコートフィルムを得た。得られたフィルムは、ガスバリア性、耐熱水性に優れていた。表1にこのコートフィルムの詳細を示す。
【0086】
実施例3
実施例1に比べて、基材をポリカーボネート(日本イージープラスチック社製 LEXAN、厚み100μm)に変えるとともに、金属化合物を水酸化カルシウム(和光純薬工業社、試薬特級)に変えた。それ以外は実施例1と同様にして、コートフィルムを得た。表1にこのコートフィルムの詳細を示す。
【0087】
実施例4
実施例1で用いたコート剤を、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製 エンブレットPET12、厚み12μm)のコロナ面処理上に、乾燥後の塗膜厚みが約1μmになるようにメイヤーバーでコートし、100℃で2分間乾燥した後、220℃で30秒間熱処理した。その後、ヨウ素化合物溶液(IV)に30秒浸漬させた後、100℃で2分間乾燥し、さらに金属化合物としての50℃の炭酸カルシウムの0.1%水分散液中に30秒浸漬させた後、100℃で2分間乾燥した。得られたコートフィルムの詳細を表1に示す。
【0088】
実施例5
実施例1で用いたコート剤を、ナイロン6フィルム(ユニチカ社製 エンブレムON15、厚み15μm)のコロナ面処理上に、乾燥後の塗膜厚みが約1μmになるようにメイヤーバーでコートし、100℃で2分間乾燥した後、200℃で30秒間熱処理した。続いて、ヨウ素化合物溶液(IV)に30秒間浸漬させた後、100℃で2分間乾燥し、さらにガスバリアコート面に金属化合物としての水酸化マグネシウム(石津製薬社製、試薬一級)の水分散液を0.7g/mになるようにメイヤーバーでコートして、100℃で2分間乾燥した。得られたコートフィルムの詳細を表1に示す。
【0089】
実施例6
実施例1の酸化マグネシウムの水分散液の代わりに、下記の金属化合物(ハイドロタルサイト)とバインダーとを90/10の固形分質量比で含む水分散液(全固形分濃度10質量%)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、コート剤およびコートフィルムを得た。得られたフィルムはガスバリア性、耐熱水性に優れていた。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0090】
金属化合物:MgAl(OH)16CO・4HO(協和化学工業社製 キョーワード、KW−500)
バインダー:ウレタンエマルション(三井武田ケミカル社製 W6010)
【0091】
実施例7
上述のポリビニルアルコール水溶液(I)に代えて、エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製 エクセバールAQ−4105)を用いて溶液を調製した。それ以外は実施例1と同様にして、コート剤およびコートフィルムを得た。得られたフィルムは透明であり、ガスバリア性、耐熱水性に優れていた。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0092】
実施例8
上記のポリビニルアルコール水溶液(I)4.2gと、エチレン−マレイン酸共重合体水溶液(III)10.8gとを混合し、撹拌して、ポリビニルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との質量比が30/70、固形分濃度が10質量%のコート剤を調製した。
【0093】
このコート剤を2軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製 エンブレットPET12、厚み12μm)のコロナ面処理上に、乾燥後の塗膜厚みが約1μmになるようにメイヤーバーでコートし、100℃で2分間乾燥した後、220℃で30秒間熱処理して有形化した。その後、これをヨウ素化合物溶液(IV)に10秒間浸漬させた後、100℃で2分間乾燥し、さらにガスバリアコート面に金属化合物としての酸化マグネシウム(協和化学工業社製、ミクロマグ3−150)の水溶液を0.9g/mになるようにメイヤーバーでコートして、100℃で2分間乾燥した。
【0094】
これにより得られたコートフィルムは、ガスバリア性、耐熱水性に優れていた。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0095】
実施例9
実施例8に比べ、基材フィルムをSiO蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製 MOS−TH、厚み12μm)に変更した。それ以外は実施例8と同様にして、コートフィルムを得た。コート剤は蒸着面に塗布した。得られたフィルムは、ガスバリア性、耐熱水性に優れていた。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0096】
実施例10
実施例8に比べて、コート剤を、ポリカーボネートフィルム(日本ジーイープラスチック社製 LEXAN、厚み100μm)のコロナ面処理上に、乾燥後の塗膜厚みが約1μmになるようにメイヤーバーでコートし、100℃で2分間乾燥した後、220℃で30秒間熱処理した。その後、ヨウ素化合物溶液(IV)をダイレクトグラビア法で塗工して、100℃で2分間乾燥し、さらに50℃のハイドロタルサイト(協和化学工業社製 キョーワード、KW−2200)の水分散液に30秒間浸漬した後、100℃で2分間乾燥した。それ以外は実施例8と同じとした。
【0097】
得られたフィルムは、ガスバリア性、耐熱水性に優れていた。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0098】
実施例11
実施例1と比べて、ポリビニルアルコールとエチレン−マレイン酸共重合体の質量比が20/80となるように組成比を変えた。そして、それ以外は実施例1と同様の手順で、コート剤、コートフィルムを得た。得られたフィルムはガスバリア性、耐熱水性に優れていた。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0099】
実施例12
実施例1と比べて、ポリビニルアルコールとエチレン−マレイン酸共重合体の質量比が40/60となるように組成比を変えた。そして、それ以外は実施例1と同様の手順で、コート剤、コートフィルムを得た。得られたフィルムはガスバリア性、耐熱水性に優れていた。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0100】
比較例1
ヨウ素化合物を塗布しなかった。それ以外は実施例1と同様として、コートフィルムを得た。得られたフィルムは、製造直後のガスバリア性に劣るものであった。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0101】
比較例2
金属化合物を塗工しなかった。それ以外は実施例1と同様として、コートフィルムを得た。得られたフィルムは、耐湿熱性、耐熱水性に劣るものであった。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0102】
比較例3
ヨウ素化合物および金属化合物による処理をともに行わなかった。それ以外は実施例8と同様にして、コートフィルムを得た。得られたフィルムは耐熱水性に劣るものであった。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0103】
比較例4
多価カルボン酸としてのエチレン−マレイン酸共重合体の代わりに、アクリル酸−マレイン酸共重合体(Aldrich社製)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、コートフィルムを得た。得られたフィルムはガスバリア性に劣るものだった。表1にこのフィルムの詳細を示す。
【0104】
実施例1〜12のフィルムは、いずれも、高湿度下でも優れたガスバリア性能を長期に有し、熱水条件下でも優れたガスバリア性能を有し、しかも製造後における初期の段階でのガスバリア性にも優れていた。
【0105】
特に、実施例2のフィルムは、コート層に層状化合物を加えたものであったため、それによるガスバリア性の向上効果が得られた。
実施例1、3、4、5、8〜12のように、基材の種類、金属化合物の種類、ヨウ素化合物や金属化合物による処理方法を変えても、熱水処理前後で優れたガスバリア性を示すフィルムが得られた。
【0106】
実施例6は、金属化合物に保護層の成分を加えたものであったため、その分だけガスバリア性に優れたものであった。
【0107】
実施例1、7、8の対比から明らかなように、コート層を構成する化合物(A)と多価カルボン酸(B)との組み合わせを変えても、優れたガスバリア性を示していた。
【0108】
実施例8、9、10のようにコート層の多価カルボン酸(B)の種類をエチレン−マレイン酸共重合体(b1)から1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)に変えても、ガスバリア性、耐熱水性に優れたものであった。しかし、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)を用いた方がより好ましい結果が得られた。
【0109】
これに対し比較例1は、ヨウ素化合物(Y)による塗工または浸漬処理を行わなかったところ、金属化合物の浸透が遅いので、製造直後のガスバリア性が不十分であった。
【0110】
比較例2は、金属化合物(Z)による塗工または浸漬処理を行っておらず、このためイオン架橋ができなかったので、ガスバリア性は不十分であった。
【0111】
比較例3は、多価カルボン酸(B)のうちの反応の速い1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)を用いていたため、製造直後のガスバリア性は良好であった。しかし、ヨウ素化合物(Y)と金属化合物(Z)による塗工または浸漬処理を行っていないので、湿熱処理後および熱水処理前後のガスバリア性は不十分であった。
【0112】
比較例4は、本発明の範囲に相当しない多価カルボン酸を用いていたので、ヨウ素化合物(Y)や金属化合物(Z)による塗工処理を行っても、製造直後のガスバリア性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有形化された組成物(X)を有し、
前記組成物(X)は、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、多価カルボン酸(B)と、アルカリ化合物(C)とを含有し、前記多価カルボン酸(B)は、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)と、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)とから選ばれる少なくとも1種であり、化合物(A)と多価カルボン酸(B)との質量比が(A)/(B)=95/5〜5/95の範囲であり、化合物(A)および多価カルボン酸(B)における少なくとも一部が架橋されており、
前記有形化された組成物(X)に、ヨウ素化合物(Y)を用いた塗工処理または含浸処理が施されたうえで、金属化合物(Z)を用いた塗工処理または含浸処理が施されていることを特徴とするガスバリア性組成物構造体。
【請求項2】
組成物(X)が無機層状化合物(D)を含むものであることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性組成物構造体。
【請求項3】
分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、多価カルボン酸(B)と、アルカリ化合物(C)とを含有し、前記多価カルボン酸(B)は、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)と、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)とから選ばれる少なくとも1種であり、化合物(A)と多価カルボン酸(B)との質量比が(A)/(B)=95/5〜5/95の範囲であり、化合物(A)および多価カルボン酸(B)における少なくとも一部が架橋されている組成物(X)を有形化し、
この有形化した組成物(X)に、ヨウ素化合物(Y)を用いた塗工処理または含浸処理を施し、その後に金属化合物(Z)を用いた塗工処理または含浸処理を施すことを特徴とするガスバリア性組成物構造体の製造方法。
【請求項4】
組成物(X)に無機層状化合物(D)を含有させることを特徴とする請求項3記載のガスバリア性組成物構造体の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、請求項1または2に記載のガスバリア性組成物構造体にて構成された層が設けられていることを特徴とするガスバリア性フィルム。
【請求項6】
熱可塑性樹脂フィルムとガスバリア性組成物構造体にて構成された層との間、またはガスバリア性組成物構造体にて構成された層の表面側に、無機物層が設けられていることを特徴とする請求項5記載のガスバリア性フィルム。
【請求項7】
分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、多価カルボン酸(B)と、アルカリ化合物(C)とを含有し、前記多価カルボン酸(B)は、エチレン−マレイン酸共重合体(b1)と、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(b2)とから選ばれる少なくとも1種であり、化合物(A)と多価カルボン酸(B)の質量比が(A)/(B)=95/5〜5/95の範囲であり、化合物(A)および多価カルボン酸(B)における少なくとも一部が架橋されている組成物(X)の層を、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に形成し、
前記組成物(X)の層に、ヨウ素化合物(Y)を用いた塗工処理または含浸処理を施し、その後に金属化合物(Z)を用いた塗工処理または含浸処理を施すことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項8】
組成物(X)に無機層状化合物(D)を含有させることを特徴とする請求項7記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項9】
熱可塑性樹脂フィルムと組成物(X)の層との間、または組成物(X)の層の表面側に、無機物層を設けることを特徴とする請求項7または8記載のガスバリア性フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−20315(P2011−20315A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166206(P2009−166206)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】