説明

ガスバリア性組成物

【課題】高湿度下においても優れた酸素バリア性を発現し、透明性に優れ、変形によるガスバリア性の低下が少ないガスバリア性組成物を提供すること。
【解決手段】ビニルアルコール系重合体(a)および層状チタン酸(b)からなるガスバリア性組成物であって、層状チタン酸(b)が下記一般式(2)で示されるものからなり、かつビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比(a/b)が99.5/0.5〜2/98であることを特徴とするガスバリア性組成物とする。
(y+z)Ti2−(y+z) (2)
(式中、Bは層間膨潤作用を有する塩基性化合物を示し、Cは水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンを示し、□はTiの欠陥部位を示す。m、n、yおよびzは、それぞれ0.1<m<0.7、0.3<n<0.9、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルアルコール系重合体および層状チタン酸からなるガスバリア性組成物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や様々な物品を包装するための包装材料には、ガスバリア性、特に酸素バリア性が要求されることが多い。これは、酸素等によって包装内容物が酸化劣化する等の影響を防ぐためである。特に食品の包装では、酸素が存在することによって微生物が繁殖し、内容物が腐敗するといった問題がある。このため、従来の包装材料では、酸素の透過を防ぐガスバリア層を設け、酸素等の透過を防止していた。
【0003】
従来の包装材料に一般的に設けられているガスバリア層としては、無機成分からなるガスバリア層、有機成分からなるガスバリア層を挙げることができる。無機成分からなるガスバリア層としては、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層などの金属層、または酸化ケイ素蒸着層や酸化アルミニウム蒸着層などの金属化合物層が使用されている。しかし、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層などの金属層は、包装内容物が見えないこと、廃棄性に劣ること等の欠点がある。また、酸化ケイ素蒸着層や酸化アルミニウム蒸着層などの金属化合物層は、印刷、ラミネート等の二次加工の際の変形、輸送時の振動や衝撃、包装材の変形や落下などで酸素バリア性が著しく低下するなどの欠点がある。
【0004】
また、有機成分からなる酸素バリア層として、ポリ塩化ビニリデン系重合体からなる層や、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系重合体からなる層が使用されている。ポリ塩化ビニリデン系重合体は、焼却廃棄する際に有害塩素化合物が発生する等のおそれがあり環境保護の観点から、ここ10年間でその使用量は大きく減少している。ビニルアルコール系重合体からなる層は透明であり、廃棄面での問題も少ないという利点があるため、用途範囲が広まりつつある。
【0005】
上記ビニルアルコール系重合体は、分子中の水酸基同士が水素結合することによって結晶化して酸素バリア性を発揮するとされている。このため、従来のビニルアルコール系重合体は、乾燥した状態では高い酸素バリア性を示すものの、水蒸気等の影響で吸湿した状態では、水素結合が弛み、酸素バリア性が低下する傾向があった。従って、ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体では、優れた酸素バリア性を高湿度下において発揮させることは難しいと考えられていた。
【0006】
特開平5−39392号公報(特許文献1)には、エチレン含量20〜60モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)および水膨潤性フィロケイ酸塩からなり、かつEVOH中に分散した水膨潤性フィロケイ酸塩の底面間隔が下記(I)式を満足する樹脂組成物について記載されている。
(x−y)≧2 (I)
ここでxはEVOH中に均一に分散した水膨潤性フィロケイ酸塩の底面間隔(オングストローム)、yは水膨潤性フィロケイ酸塩の乾燥粉末の底面間隔(オングストローム)である。特に、水膨潤性フィロケイ酸塩としてモンモリロナイトを用いた樹脂組成物からなる積層体は、透明性に優れ、かつガスバリア性が高いとされている。しかしながら、こうして得られた積層体の透明性およびガスバリア性は未だ不十分であった。
【0007】
【特許文献1】特開平5−39392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、廃棄面での問題が少なく、高湿度下においても優れた酸素バリア性を発現し、透明性に優れ、変形によるガスバリア性の低下が少ないガスバリア性組成物、および該ガスバリア性組成物からなるガスバリア性積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、ビニルアルコール系重合体(a)および層状チタン酸(b)からなるガスバリア性組成物であって、層状チタン酸(b)が下記一般式(2)で示されるものからなり、かつビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比(a/b)が99.5/0.5〜2/98であることを特徴とするガスバリア性組成物を提供することによって解決される。
(y+z)Ti2−(y+z) (2)
(式中、Bは層間膨潤作用を有する塩基性化合物を示し、Cは水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンを示し、□はTiの欠陥部位を示す。m、n、yおよびzは、それぞれ0.1<m<0.7、0.3<n<0.9、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)
【0010】
また、上記課題は、ビニルアルコール系重合体(a)および層状チタン酸(b)からなるガスバリア性組成物であって、層状チタン酸(b)が、下記一般式(1)で示される層状チタン酸塩を酸または温水で処理してAイオンおよび/またはMイオンを水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンで置換する工程と、層間膨潤作用を有する塩基性化合物を作用させて層間を膨潤または剥離する工程により得られたものであり、かつビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比(a/b)が99.5/0.5〜2/98であることを特徴とするガスバリア性組成物を提供することによっても解決される。
Ti2−(y+z) (1)
(式中、AおよびMは互いに異なる1〜3価の金属を示し、□はTiの欠陥部位を示す。x、yおよびzは、それぞれ0<x<1.0、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)
【0011】
このとき、ビニルアルコール系重合体(a)がエチレン−ビニルアルコール系共重合体であり、かつエチレン含有量が3〜65モル%であることが好適である。また、このようなガスバリア性組成物からなる層が基材層の少なくとも一方の面に積層されてなるガスバリア性積層体であることも好適である。
【0012】
さらに、上記課題は、下記一般式(1)で示される層状チタン酸塩を酸または温水で処理し、Aイオンおよび/またはMイオンを水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンで置換する工程と、層間膨潤作用を有する塩基性化合物を作用させて層間を膨潤または剥離する工程により層状チタン酸(b)を得て、その後にビニルアルコール系重合体(a)と混合するガスバリア性組成物の製造方法であって、ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比(a/b)が99.5/0.5〜2/98であることを特徴とするガスバリア性組成物の製造方法を提供することによっても解決される。
Ti2−(y+z) (1)
(式中、AおよびMは互いに異なる1〜3価の金属を示し、□はTiの欠陥部位を示す。x、yおよびzは、それぞれ0<x<1.0、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高湿度下においても優れた酸素バリア性を発現し、かつ透明性に優れ、さらに印刷、ラミネート等の二次加工の際の変形、輸送時の振動や衝撃、および包装材の変形や落下等によるガスバリア性の低下が少ないガスバリア性組成物、および該ガスバリア性組成物からなるガスバリア性積層体が得られる。このガスバリア性組成物は、食品、医薬、医療器材、機械部品および衣料等の包装材料として好適に使用され、その中でも高湿度下でのガスバリア性が要求されるような食品包装用途に特に好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のガスバリア性組成物は、ビニルアルコール系重合体(a)および層状チタン酸(b)からなるものである。
【0015】
ビニルアルコール系重合体(a)は、ビニルアルコール単位(−CH−CH(OH)−)を主たる構成単位とする重合体である。ビニルアルコール系重合体(a)は、ビニルアルコール単位に加えて、酢酸ビニル単位、プロピオン酸ビニル単位、2−メチルプロピオン酸ビニル単位等のカルボン酸ビニル単位を有していてもよいが、ビニルアルコール単位とカルボン酸ビニル単位との合計に対するビニルアルコール単位の割合(鹸化度)は、通常、80モル%以上である。ビニルアルコール系重合体(a)の鹸化度が80モル%未満の場合には、本発明の組成物のガスバリア性が低くなる。ガスバリア性をより高度に発現するには、ビニルアルコール系重合体(a)の鹸化度は90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが特に好ましい。
【0016】
また、ビニルアルコール系重合体(a)は、ビニルアルコール単位およびカルボン酸ビニル単位とは異なる第三の構成単位(以下「第三の構成単位」と略記することがある)として、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル;アリルアルコール;ビニルトリメチルシランなどの付加重合性モノマーに由来する構成単位を含有していてもよい。全構成単位に対する第三の構成単位の割合は、構成単位の種類により好ましい範囲が異なるため、一概に特定するのは難しいが、全構成単位の65モル%以下であることが好ましく、より好ましくは50モル%以下である。
【0017】
ビニルアルコール系重合体(a)の好ましい第三の構成単位として、エチレンに由来する構成単位を挙げることができる。高湿度下における酸素バリア性が良好となるため、ビニルアルコール系重合体(a)はエチレン−ビニルアルコール系共重合体であることが好ましい。また、本発明の組成物を溶融成形により加工する場合、溶融成形時の熱安定性の観点からも、ビニルアルコール系重合体(a)はエチレン−ビニルアルコール系共重合体であることが好ましい。ビニルアルコール系重合体(a)の全構成単位に対するエチレンに由来する構成単位の好ましい割合は3〜65モル%の範囲であり、より好ましくは5〜50モル%の範囲であり、さらに好ましくは5〜35モル%の範囲である。
【0018】
ビニルアルコール系重合体(a)の分子量については必ずしも限定されるものではない。したがって、本発明には、目的に応じて、低分子量の場合から高分子量の場合に至るまで、広範囲の分子量が包含される。ただし、一般的には、その重合度は300〜3000の範囲内であり、より好適には500〜2000の範囲内である。
【0019】
本発明で用いられる層状チタン酸(b)は、下記一般式
Ti2−(y+z) (1)
(式中、AおよびMは互いに異なる1〜3価の金属を示し、□はTiの欠陥部位を示す。x、yおよびzは、それぞれ0<x<1.0、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)で示される層状チタン酸塩(以下、単に「層状チタン酸塩」ということがある)を酸または温水で処理してAイオンおよび/またはMイオンを水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンで置換する工程と、層間膨潤作用を有する塩基性化合物を作用させて層間を膨潤または剥離する工程により得られたものである。層間膨潤作用とは、層間にインターカレーションすることにより該層間を拡張する作用をいう。
【0020】
上記一般式(1)において、AおよびMは互いに異なる1〜3価の金属を示している。好ましいAとしては、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)あるいはセシウム(Cs)が挙げられる。Mは、Aとは異なる1〜3価の金属であり、好ましいMとしては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、マンガン(Mn)あるいはニッケル(Ni)が挙げられる。
【0021】
上記層状チタン酸塩の具体例としては、K0.8Li0.266Ti1.733、Rb0.75Ti1.75Li0.25、Cs0.7Ti1.77Li0.23、Ce0.7Ti1.8250.175、Ce0.7Ti1.65Mg0.35、K0.8Ti1.6Mg0.4、K0.8Ti1.6Ni0.4、K0.8Ti1.6Zn0.4、K0.8Ti1.6Cu0.4、K0.8Ti1.2Fe0.8、K0.8Ti1.2Mn0.8、K0.76Ti1.73Li0.22Mg0.05、K0.67Ti1.73Al0.07Li0.2等を挙げることができる。
【0022】
上記層状チタン酸塩を酸または温水で処理してAイオンおよび/またはMイオンを水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンで置換する工程は、公知の方法により行われる。層状チタン酸塩に酸または温水を処理することによりAイオンおよび/またはMイオンを水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンで置換することができる。
【0023】
本発明で用いられる層状チタン酸(b)は、上述の工程に加えてさらに層間膨潤作用を有する塩基性化合物を作用させて層間を膨潤または剥離する工程を行うことにより得られる。
【0024】
前記層間膨潤作用のある塩基性化合物としては、たとえば、1級〜3級アミンおよびそれらの塩、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミノ酸およびそれらの塩等が挙げられる。1級アミンとしては、たとえば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。2級アミンとしては、たとえば、ジエチルアミン、ジペンチルアミン、ジオクチルアミン、ジベンジルアミン等が挙げられる。3級アミンとしては、たとえば、トリエチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。2−エチルヘキシルアミン等のアルキルアミンあるいはこれらの塩;およびエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアルカノールアミンあるいはこれらの塩;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化4級アンモニウム塩;あるいはドデシルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム塩、ジメチルジステアリルアンモニウム塩、ジメチルジデシルアンモニウム塩、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ドデシルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩;12−アミノドデカン酸、アミノカプロン酸等のアミノ酸あるいはこれらの塩;3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ポリエチレンイミンあるいはこれらの塩;ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。さらに、テトラブチルホスホニウム塩、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム塩、ドデシルトリブチルホスホニウム塩、ドデシルトリフェニルホスホニウム塩等の有機ホスホニウム塩も使用可能である。そしてこれらの塩基性化合物類は、目的に応じて、1種類あるいは数種類を混合して用いても良い。
【0025】
上述の方法により得られた層状チタン酸(b)は、下記一般式で示されるものである。
(y+z)Ti2−(y+z) (2)
(式中、Bは層間膨潤作用を有する塩基性化合物を示し、Cは水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンを示し、□はTiの欠陥部位を示す。m、n、yおよびzは、それぞれ0.1<m<0.7、0.3<n<0.9、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)
【0026】
上記一般式(2)において、Bは層間膨潤作用を有する塩基性化合物を示しており、具体的な塩基性化合物としては、上述のような塩基性化合物を用いることができる。また、上記一般式(2)において、m、n、yおよびzは、それぞれ0.1<m<0.7、0.3<n<0.9、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。ここで、mとnの和は上記一般式(1)におけるxに相当し、nは、より好ましくは0.5<n<0.8を満たす0または正の実数である。
【0027】
本発明に用いる層状チタン酸(b)の形状は、特に限定されないが、板状または薄片状(燐片状)であることが好ましい。層状チタン酸(b)の平均厚さは、10nm〜20μmの範囲にあることが好ましく、20nm〜10μmの範囲にあることがより好ましい。また、層状チタン酸(b)の平均直径は、0.1〜50μmの範囲にあることが好ましく、1〜40μmの範囲にあることがより好ましい。
【0028】
本発明のガスバリア性組成物は、ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)を混合することにより製造される。たとえば、ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)を単軸押出機、ニ軸押出機などの押出機で溶融混合する方法や、ビニルアルコール系重合体(a)の溶液あるいは分散液と、層状チタン酸(b)の分散液とを混合した後に溶媒を乾燥除去する方法を挙げることができる。前者の製造方法の場合、ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)を押出機で溶融混合し、一旦組成物を得た後に各種形状の成形品に加工しても良いし、ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)を成形機で溶融混合し、一旦取り出すことなくそのまま各種形状の成形品に加工しても良い。後者の製造方法の場合、ビニルアルコール系重合体(a)の溶液あるいは分散液と、層状チタン酸(b)の分散液とを混合した後に基材となる成形品の表面あるいは内面に塗布して乾燥することが好ましい。
【0029】
上記製造方法により得られる本発明のガスバリア性組成物は、ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)との重量比が99.5/0.5〜2/98の範囲にあるものである。該重量比がこの範囲にない場合、組成物のガスバリア性の性能が不十分であったり、脆くなり機械的強度が不十分であったりすることにより、実用に適さないおそれがある。ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)との重量比の好ましい範囲としては、98/2〜5/95であり、より好ましい範囲としては94/6〜8/92である。
【0030】
本発明のガスバリア性組成物は、フィルム、シート、ボトル、ホース、チューブ、(燃料)タンクなど種々の成形品に加工して使用される。前記成形品は本発明のガスバリア性組成物からなる単層で構成される場合と、他の層が積層された多層で構成される場合とがある。前記成形品に加工する方法として、本発明の組成物を押出成形、射出成形などの溶融成形により種々の形状に加工する方法や、本発明の組成物の分散液を基材となるフィルム、シート、ボトル、チューブ、その他成形品の表面、あるいは内面などに塗布・乾燥する方法を挙げることができる。成形品に加工する好ましい方法としては、得られる成形体のガスバリア性がより良好となる観点から、基材となる成形品の表面あるいは内面にビニルアルコール系重合体(a)の溶液あるいは分散液と、層状チタン酸(b)の分散液とを混合した後に塗布して乾燥する方法が挙げられる。
【0031】
本発明のガスバリア性組成物は、基材層の表面に塗布、乾燥されてガスバリア性積層体として好適に使用される。当該ガスバリア性積層体は、本発明のガスバリア性組成物からなる層(以下「ガスバリア層」という)が基材層の少なくとも一方の面に積層されてなることが好ましい。このガスバリア層は、基材層の一方の面にのみ形成されていてもよいし、両方の面に形成されてもよい。また、基材フィルム上にガスバリア層を形成する前に、基材フィルムの表面を公知のアンカーコーティング剤で処理するか、基材フィルムの表面に公知の接着剤を塗布してもよい。
【0032】
前記ガスバリア性積層体を構成する基材層としては、様々な材料からなる基材を用いることができる。たとえば、熱可塑性樹脂フィルムや熱硬化性樹脂フィルムといったフィルム;布帛や紙類等の繊維集合体;木材;金属酸化物や金属などからなる所定形状のフィルムを用いることができる。中でも熱可塑性樹脂フィルムは、食品包装材料に用いられるガスバリア性積層体の基材として特に有用である。なお、基材は複数の材料からなる多層構成のものであってもよい。
【0033】
上記基材層で用いられる熱可塑性樹脂フィルムとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体などのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアリレート、再生セルロース、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー樹脂等を成形加工したフィルムを挙げることができる。食品、医療用の包装袋に用いられる積層体の基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、またはナイロン66からなるフィルムが好ましい。
【0034】
本発明のガスバリア性組成物を基材層に塗布する方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。このとき、基材層に対し、ガスバリア性組成物を分散液として塗布することが好ましい。塗布する好ましい方法としては、たとえば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法などが挙げられる。
【0035】
本発明のガスバリア性組成物の分散液を基材フィルムに塗布した後、分散液に含まれる溶媒を除去する必要があるが、溶媒を除去する方法は特に限定されず、公知の方法を適用できる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などの方法を単独で、または組み合わせて適用できる。乾燥温度は、基材の流動開始温度よりも15〜20℃以上低く、かつビニルアルコール系重合体(a)の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低い温度であれば特に制限されない。具体的には、乾燥温度は、40℃〜200℃の範囲が好ましく、40〜180℃の範囲がより好ましく、40〜170℃の範囲がさらに好ましい。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。
【0036】
また、本発明のガスバリア性組成物の分散液を基材フィルムに塗布、乾燥した後、熱処理を施してもよい。熱処理を施すことでガスバリア性が良好となることがある。熱処理の温度は、好ましくは50℃〜250℃の範囲であり、より好ましくは60〜230℃の範囲であり、さらに好ましくは80℃〜210℃の範囲である。熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、またはアルゴン雰囲気下などで実施することができる。
【0037】
上記ガスバリア層の厚さは特に限定されず、0.1〜100μmの範囲にあることが好ましい。厚さが0.1μm未満の場合には、ガスバリア性積層体のガスバリア性が不十分となるおそれがあり、より好適には0.2μm以上であり、さらに好適には0.5μm以上である。一方、厚さが100μmを超える場合には、ガスバリア性積層体の加工時、運搬時および使用時にガスバリア層にクラックが入り易くなるおそれがあり、より好適には50μm以下であり、さらに好適には20μm以下である。
【0038】
ガスバリア性積層体は、熱可塑性樹脂フィルム、紙などの他の層をラミネートすることで、ガスバリア性積層体にヒートシール性を付与したり、ガスバリア性積層体の力学的物性を向上させたりすることができる。ガスバリア性積層体に、熱可塑性樹脂フィルム、紙をラミネートしたラミネート体の具体例を以下に示す。以下の具体例では、記載を簡略化するために「フィルム」の表記を省略して材料のみを記載した。
【0039】
本発明のガスバリア性積層体を含むラミネート体の構成は、たとえば、ガスバリア層/ポリエステル(基材)/ポリアミド/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリエステル(基材)/ガスバリア層/ポリアミド/ポリオレフィン、ポリエステル(基材)/ガスバリア層/ポリアミド/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリアミド(基材)/ポリエステル/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリアミド(基材)/ガスバリア層/ポリエステル/ポリオレフィン、ポリアミド(基材)/ガスバリア層/ポリエステル/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリオレフィン(基材)/ポリアミド/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリオレフィン(基材)/ガスバリア層/ポリアミド/ポリオレフィン、ポリオレフィン(基材)/ガスバリア層/ポリアミド/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリオレフィン(基材)/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリオレフィン(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリエステル(基材)/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリエステル(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリエステル(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリアミド(基材)/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリアミド(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリアミド(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン/ガスバリア層/ポリエステル(基材)/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン/ガスバリア層/ポリエステル(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン/ポリエステル(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン/ガスバリア層/ポリアミド(基材)/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン/ガスバリア層/ポリアミド(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン/ポリアミド(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン/ポリアミド(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ガスバリア層/ポリエステル(基材)/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ガスバリア層/ポリエステル(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリエステル(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ガスバリア層/ポリアミド(基材)/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ガスバリア層/ポリアミド(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリアミド(基材)/ガスバリア層/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリエステル(基材)/紙/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリエステル(基材)/ガスバリア層/紙/ポリオレフィン、ポリエステル(基材)/ガスバリア層/紙/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリアミド(基材)/紙/ポリオレフィン、ガスバリア層/ポリアミド(基材)/ガスバリア層/紙/ポリオレフィン、ポリアミド(基材)/ガスバリア層/紙/ポリオレフィン、などである。ガスバリア性積層体を含むラミネート体のヒートシール性や力学的特性などの観点からは、ポリオレフィンとしてはポリプロピレンまたはポリエチレンが好ましく、ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく、ポリアミドとしてはナイロン6が好ましい。なお、必要に応じて、各層の間に、アンカーコート層や接着剤層といった他の層を設けてもよい。
【0040】
本発明のガスバリア性組成物は、高湿度下での酸素バリア性に優れ、さらに印刷、ラミネート等の二次加工の際の変形、輸送時の振動や衝撃、包装材の変形や落下などでの酸素バリア性の低下が極めて少ないという優れた特性を有している。また、本発明のガスバリア性組成物は透明であり、焼却時に有害なガスを発生することがない環境適合性を有する。そのため様々な用途に適用でき、食品、医療品などの包装袋として好ましく使用される。たとえば、本発明のガスバリア性積層体は、惣菜用パウチ、液体用のスタンディングパウチ、流動食用パウチ、練りわさびなどのラミネートチューブ、スィートコーンなどの真空包装袋、米飯用などの容器の蓋材などの食品用包装材料、ペット用食品包装材料として特に有用である。また、本発明のガスバリア性積層体は、輸液などの医薬品、農薬、精密材料などの産業資材、および衣料などを包装するための包装材料として用いることもできる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0042】
以下の実施例における測定および評価は、次に示す方法(1)〜(3)によって実施した。測定結果および評価結果については、実施例および比較例の説明のあとに掲載する表1に記載する。
【0043】
(1)酸素バリア性
ガスバリア層/アンカーコート層(アンカーコート層がない場合もある)/2軸延伸ポリエチレンテレフタレート層(以降OPET層と略記することがある)の構造を有する積層体について、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN10/50」)を用いて酸素透過度を測定した。具体的には、酸素供給側にガスバリア層が向き、キャリアガス側にOPET層が向くように積層体をセットし、温度20℃、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で、酸素透過度(単位:cc/m・day・atm)を測定した。このとき、湿度は、65%RH、85%RHの2条件を採用し、酸素供給側とキャリアガス側とを同一の湿度とした。
【0044】
(2)屈曲試験後の酸素バリア性
印刷、ラミネート等の二次加工の際の変形、包装材の変形として、ゲルボフレックステスター(理学工業株式会社製)による屈曲を用いた。実施例で得られた積層体をA4大にカットし、ゲルボフレックステスターで50サイクルの屈曲を施した。屈曲後、酸素透過度測定用のサンプルを切り取り、前記した方法で温度20℃、酸素供給側の湿度85%RH、キャリアガス側の湿度85%RH、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で酸素透過度(単位:cc/m・day・atm)を測定した。
【0045】
(3)透明性
酸素バリア性の評価用に作製した積層体について、ヘイズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製「HR−100」)を用いてJIS K 7105の方法に基づいてヘイズ値を測定した。ヘイズ値[(拡散光線透過率/全光線透過率)×100]は、材料の透明性を評価する代表的な指標として用いられている。通常、ヘイズ値が小さいほど材料の透明性が高いといえる。ヘイズ値がどの程度であれば透明性が高いといえるかは、用途によって判断基準が異なるため一概には決められないが、ヘイズ値が3%以下であれば、かなり高い透明性が必要とされる用途にも好適に適用できる。
【0046】
合成例1(層状チタン酸(b)の合成)
0.8Li0.266Ti1.733の組成式で表される層状チタン酸塩を、0.5規定の塩酸で分散撹拌し、その後濾過した。この操作をさらに2回繰返した後、脱イオン水で十分洗浄してKイオンとLiイオンを水素イオンまたはヒドロニウムイオンに交換した。脱イオン水を加え、80℃で加熱撹拌しながらn−プロピルアミン水溶液を添加し、層状チタン酸(b)の分散液を得た。
【0047】
実施例1
ビニルアルコール系重合体(a)(酢酸ビニル重合体の鹸化体、鹸化度99.8モル%、重合度1700)に水を加え80℃で加熱撹拌し、濃度5重量%のビニルアルコール系重合体(a)水溶液を得た。ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比が95/5となるように、ビニルアルコール系重合体(a)水溶液と層状チタン酸(b)の分散液を、ガラス棒で5分間撹拌し、ガスバリア性組成物を含むコート液−1を得た。
【0048】
2液型のアンカーコート剤(AC;三井武田ケミカル株式会社製「タケラック3210」および「タケネートA3072」)を、延伸PETフィルム(OPET;東レ株式会社製「ルミラー」)上にコートし、乾燥させることによってアンカーコート層を有する基材(AC/OPET)を作製した。この基材のアンカーコート層上に、乾燥後の厚さが1μmになるようにバーコーターによってコート液−1をコートしたのち、50℃で10分間乾燥した。無色透明なガスバリア層を有する積層体(ガスバリア層(1μm)/AC/OPET(12μm))を得た。透明性の指標であるヘイズ値は2.5%と良好な値であった。該積層体を用い、酸素透過度を測定した。酸素透過度は、20℃、65%RHの測定条件で2.2cc/m・day・atmであり、20℃、85%RHの測定条件で4.2cc/m・day・atmであり非常に良好な値であった。屈曲試験後の酸素透過度は、20℃、85%RHの測定条件で4.5cc/m・day・atmであり、屈曲前後での酸素透過度の低下はほとんどなく、耐屈曲性に優れることがわかる。
【0049】
実施例2
ビニルアルコール系重合体(a)(エチレン−酢酸ビニル重合体の鹸化体、エチレン含有率8モル%、鹸化度99.7モル%、重合度1700)に水を加え80℃で加熱撹拌し、濃度5重量%のビニルアルコール系重合体(a)水溶液を得た。ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比が95/5となるように、ビニルアルコール系重合体(a)水溶液と層状チタン酸(b)の分散液を、ガラス棒で5分間撹拌し、ガスバリア性組成物を含むコート液−2を得た。
【0050】
2液型のアンカーコート剤(AC;三井武田ケミカル株式会社製「タケラック3210」および「タケネートA3072」)を、延伸PETフィルム(OPET;東レ株式会社製「ルミラー」)上にコートし、乾燥させることによってアンカーコート層を有する基材(AC/OPET)を作製した。この基材のアンカーコート層上に、乾燥後の厚さが1μmになるようにバーコーターによってコート液−2をコートしたのち、50℃で10分間乾燥した。無色透明なガスバリア層を有する積層体(ガスバリア層(1μm)/AC/OPET(12μm))を得た。透明性の指標であるヘイズ値は2.3%と良好な値であった。該積層体を用い、酸素透過度を測定した。酸素透過度は、20℃、65%RHの測定条件で2.5cc/m・day・atmであり、20℃、85%RHの測定条件で3.0cc/m・day・atmであった。屈曲試験後の酸素透過度は、20℃、85%RHの測定条件で3.1cc/m・day・atmであり、屈曲前後での酸素透過度の低下はほとんどなく、耐屈曲性に優れることがわかる。
【0051】
実施例3
ビニルアルコール系重合体(a)(酢酸ビニル重合体の鹸化物、鹸化度99.8モル%、重合度1700)に水を加え80℃で加熱撹拌し、濃度5重量%のビニルアルコール系重合体(a)水溶液を得た。ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比が10/90となるように、ビニルアルコール系重合体(a)水溶液と層状チタン酸(b)の分散液を、ガラス棒で5分間撹拌し、ガスバリア性組成物を含むコート液−3を得た。
【0052】
延伸PETフィルム(OPET;東レ株式会社製「ルミラー」)上に、乾燥後の厚さが1μmになるようにバーコーターによってコート液−3をコートしたのち、50℃で10分間乾燥した。無色透明なガスバリア層を有する積層体(ガスバリア層(1μm)/OPET(12μm))を得た。透明性の指標であるヘイズ値は2.8%と良好な値であった。該積層体を用い、酸素透過度を測定した。酸素透過度は、20℃、65%RHの測定条件で1.2cc/m・day・atmであり、20℃、85%RHの測定条件で1.4cc/m・day・atmであった。屈曲試験後の酸素透過度は、20℃、85%RHの測定条件で2.8cc/m・day・atmであり、屈曲後の酸素透過度が若干低下したが、実用的には十分な耐屈曲性を有していると考えられる。
【0053】
比較例1
ビニルアルコール系重合体(a)(酢酸ビニル重合体の鹸化物、鹸化度99.8モル%、重合度1700)に水を加え80℃で加熱撹拌し、濃度5重量%のビニルアルコール系重合体(a)水溶液を得た。ビニルアルコール系重合体(a)とモンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製「クニピア−F」)の重量比が95/5となるように、ビニルアルコール系重合体(a)水溶液とモンモリロナイトの分散液を、ガラス棒で5分間撹拌し、ガスバリア性組成物を含むコート液−4を得た。
【0054】
2液型のアンカーコート剤(AC;三井武田ケミカル株式会社製「タケラック3210」および「タケネートA3072」)を、延伸PETフィルム(OPET;東レ株式会社製「ルミラー」)上にコートし、乾燥させることによってアンカーコート層を有する基材(AC/OPET)を作製した。この基材のアンカーコート層上に、乾燥後の厚さが1μmになるようにバーコーターによってコート液−4をコートしたのち、50℃で10分間乾燥した。曇りのあるガスバリア層を有する積層体(ガスバリア層(1μm)/AC/OPET(12μm))を得た。透明性の指標であるヘイズ値は12%と高い値であった。該積層体を用い、酸素透過度を測定した。酸素透過度は、20℃、65%RHの測定条件で12cc/m・day・atmであり、20℃、85%RHの測定条件で23cc/m・day・atmであった。屈曲試験後の酸素透過度は、20℃、85%RHの測定条件で32cc/m・day・atmであり、屈曲後の酸素透過度はさらに低下した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1からわかるように、層状チタン酸(b)を用いた実施例1〜3では、モンモリロナイトを用いた比較例1と比べて、透明性が良好であり、酸素透過度の値が低くガスバリア性が優れていた。
【0057】
ビニルアルコール系重合体(a)のエチレン含有率が8モル%である実施例2では、エチレンを含有していない実施例1と比べて、高湿度下での酸素バリア性が良好であった。これに対し、エチレンを含有せず、ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)との重量比が10/90である実施例3では、実施例1および2と比べて透明性および耐屈曲性は若干劣っていたが、酸素バリア性は優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアルコール系重合体(a)および層状チタン酸(b)からなるガスバリア性組成物であって、層状チタン酸(b)が下記一般式(2)で示されるものからなり、かつビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比(a/b)が99.5/0.5〜2/98であることを特徴とするガスバリア性組成物。
(y+z)Ti2−(y+z) (2)
(式中、Bは層間膨潤作用を有する塩基性化合物を示し、Cは水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンを示し、□はTiの欠陥部位を示す。m、n、yおよびzは、それぞれ0.1<m<0.7、0.3<n<0.9、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)
【請求項2】
ビニルアルコール系重合体(a)および層状チタン酸(b)からなるガスバリア性組成物であって、層状チタン酸(b)が、下記一般式(1)で示される層状チタン酸塩を酸または温水で処理してAイオンおよび/またはMイオンを水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンで置換する工程と、層間膨潤作用を有する塩基性化合物を作用させて層間を膨潤または剥離する工程により得られたものであり、かつビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比(a/b)が99.5/0.5〜2/98であることを特徴とするガスバリア性組成物。
Ti2−(y+z) (1)
(式中、AおよびMは互いに異なる1〜3価の金属を示し、□はTiの欠陥部位を示す。x、yおよびzは、それぞれ0<x<1.0、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)
【請求項3】
前記ビニルアルコール系重合体(a)がエチレン−ビニルアルコール系共重合体であり、かつエチレン含有量が3〜65モル%である請求項1または2記載のガスバリア性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載のガスバリア性組成物からなる層が基材層の少なくとも一方の面に積層されてなるガスバリア性積層体。
【請求項5】
下記一般式(1)で示される層状チタン酸塩を酸または温水で処理し、Aイオンおよび/またはMイオンを水素イオンおよび/またはヒドロニウムイオンで置換する工程と、層間膨潤作用を有する塩基性化合物を作用させて層間を膨潤または剥離する工程により層状チタン酸(b)を得て、その後にビニルアルコール系重合体(a)と混合するガスバリア性組成物の製造方法であって、ビニルアルコール系重合体(a)と層状チタン酸(b)の重量比(a/b)が99.5/0.5〜2/98であることを特徴とするガスバリア性組成物の製造方法。
Ti2−(y+z) (1)
(式中、AおよびMは互いに異なる1〜3価の金属を示し、□はTiの欠陥部位を示す。x、yおよびzは、それぞれ0<x<1.0、0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)

【公開番号】特開2008−74888(P2008−74888A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252351(P2006−252351)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】