ガスバリア性膜の製造方法およびそれにより得られる膜
【課題】
本発明は、透明性、ガスバリア性、及び防湿性に優れた膜であり、そのガスバリア性の改良された膜の製造方法を提供する。
【解決手段】
基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、60℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から60分間保持することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、60℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から60分間保持することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。
本発明は、透明性、ガスバリア性、及び防湿性に優れた膜であり、そのガスバリア性の改良された膜の製造方法を提供する。
【解決手段】
基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、60℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から60分間保持することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、60℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から60分間保持することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有し、酸素、水蒸気等のガスバリア性、特に高湿度下でのガスバリア性に優れた包装材料に好適なガスバリア性膜であって、そのガスバリア性の改良された膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスバリア性を有するポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体を二軸延伸フィルム基材に積層する方法(例えば、特許文献1)、あるいはポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物を二軸延伸フィルム基材に被覆する方法(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながら、ポリビニルアルコールを積層してなるガスバリア性フィルムは、高湿度下での酸素バリア性が低下し、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物は、エステル化を十分に進行させて、フィルムのガスバリア性を高めるためには高温で長時間の加熱が必要である。そして、これらは酸素ガスバリア性は発現するものの防湿性については十分とはいえない状況である。
また、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜や、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜は、ガスバリア性のみならず、防湿性にも優れた膜であり、これらの膜のガスバリア性の更なる改良が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−157830号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3203287号公報(請求項1)
【特許文献3】WO2005/108440 (請求項12、請求項13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、透明性、ガスバリア性、及び防湿性に優れた膜であり、そのガスバリア性の改良された膜の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、120℃から300℃の温度に、0.1秒から10分間保持させることを特徴とするガスバリア性膜の製造方法である。
【0006】
また、本発明は材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、120℃から300℃の温度に、0.1秒から10分間保持させることを特徴とするガスバリア性膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合して得られた膜を、特定の方法で熱処理することにより、その透明性を損なうことなく、ガスバリア性が改良された膜を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
不飽和カルボン酸化合物
本発明に用いられる不飽和カルボン酸化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα,β−エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物であり、重合度が20未満、好ましくは単量体若しくは10以下の重合体である。重合度が20を越える重合体(高分子化合物)は、後述の多価金属化合物との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が改良されないおそれがある。
これら不飽和カルボン酸化合物の中でも単量体が多価金属化合物で完全に中和された塩が形成し易く、当該塩を重合して得られる膜のガスバリア性に優れるので好ましい。
【0009】
多価金属化合物
本発明に用いられる多価金属化合物は、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。これら二価の金属化合物を用いた場合は、前記不飽和カルボン酸との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これらは、少なくとも1種が使用され、1種のみの使用であっても、2種以上を併用してもよい。
【0010】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩
本発明に用いられる不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩は、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物との塩である。これら不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。かかる不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の中でも、特に(メタ)アクリル酸亜鉛が得られるガスバリア性膜の耐熱水性に優れるので好ましい。
【0011】
基材層
本発明に用いられる基材層は、前記不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を塗工できるものであれば、とくに限定はされず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂あるいは紙等の有機質材料、ガラス、陶、セラミック、セメントあるいはアルミニウム、鉄、銅、ステンレス等の金属等の無機質材料、有機質材料同士あるいは有機質材料と無機質材料との組合せからなる多層構造の基材層を例示することができる。
また、基材層の形状も、とくに限定はされず、シート又はフィルム状物、トレー、カップ、中空体等の形状を有するものを例示することができる。
これら基材層の材料として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂あるいは紙等の有機質材料を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の重合体からなるガスバリア性膜を備えた積層体として用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、種々公知の熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等を例示することができる。
熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。これら熱可塑性樹脂からなる基材層はガスバリア性膜の用途に応じて、単層であっても、二種以上の熱可塑性樹脂からなる積層体であってもよい。
また、基材層の表面に、アルミニウム、亜鉛若しくはシリカ等の無機化合物あるいはその酸化物等が蒸着されていてもよいし、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等がコーティングされていてもよい。
また、これら基材層は、ガスバリア性膜との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0012】
膜の製造方法
本発明においては、予め基材層に成形された膜に、更に特定の熱処理をしてガスバリア性膜が製造される。この特定の熱処理がされる膜は、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる。
また、熱処理がされる膜は、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することによっても得られる。
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を調整する方法としては、予め前記不飽和カルボン酸と前記多価金属化合物とを反応させて、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩とした後、その不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を水等の溶媒に溶かして溶液としてもよいし、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物を溶かして多価金属塩の溶液としてもよい。
ガスバリア性膜の製造方法として、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物を溶かす場合、即ち、前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物とを含む溶液を用いる場合は、前記不飽和カルボン酸化合物に対して、0.3化学当量を越える量の前記多価金属化合物を添加することが好ましい。多価金属化合物の添加量が0.3化学当量以下の混合溶液を用いた場合は、遊離のカルボン酸基の含有量が多いガスバリア性膜となり、結果として、ガスバリア性が低い膜となる虞がある。
また、多価金属化合物の添加量の上限はとくに限定はされないが、多価金属化合物の添加量が1化学当量を越えると未反応の多価金属化合物が多くなるので、通常、5化学当量以下、好ましくは2化学当量以下で十分である。
また、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物との混合溶液を用いる場合は、通常、
不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶媒に溶かしている間に、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩が形成されるが、多価金属塩の形成を確実にするために、1分以上混合しておくことが好ましい。
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を調整するために用いる溶媒は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール若しくはアセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒が挙げられるが、水が最も好ましい。
変性ビニルアルコール系重合体
また、本発明では不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液あるいは前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物だけではなく、これらと共に変性ビニルアルコール系重合体(B)を併用することも行われる。
変性ビニルアルコール系重合体(B)は、好ましくは水、低級アルコール、有機溶媒等に溶解性があるものであり、とくに水あるいは水一低級アルコール系混合溶媒に溶けるものが好ましい。このような反応性基で変性した変性ビニルアルコール系重合体(B)を成分の一つに用いることにより、不飽和カルポン酸化合物多価金属塩と混合して重合する際に、変性ビニルアルコール系重合体(B)と不飽和カルポン酸化合物多価金属塩の少なくとも一部が何らかの結合をした重合体(A)からなる低湿度下におけるガスバリア性が改良されたガスバリア性膜が得られる。
変性ビニルアルコール系重合体(B)の具体例としては、例えば、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和基を有するカルポン酸化合物あるいはその誘導体と反応させ(メタ)アグリレート基を導入してなる(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1);イソチウロニウム塩やチオール酸エステル有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を駿や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、チオール酸の存在下にビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にチオール基(−SH基)を有する、チオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2);ビニルアルコール系重合体あるいはカルポキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にオルガノハロゲンシラン、オルガノアセトキシシラン、オルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルとビニルシラン、(メタ)アクリルアミドーアルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化し、分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にトリメトシキシラン基、トリエトキシシラン基等のトリアルキコキシシラン基、トリカルポニルオキシシラン基等を有する、シリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3);ビニルアルコール系重合体を酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ビニルアルコール系重合体をジメチルホルムアミド、又はジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法およびビニルアルコール系重合体にジケテンガス又は液状ジケテンを直接接触させる方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の「部にアセトアセチル基を有する、アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4);その他反応性官能基を有するモノマーを酢酸ビニルと共重合した後鹸化することにより、側鎖に反応性官能基を導入する方法、高分子反応により、ポリビニルアルコールの側鎖に反応性官能基を導入する方法、連鎖移動反応を利用して反応性官能基を末端に導入する方法等、種々公知の方法により分子内に、(メタ)アクリルアミド基、アリル基、ビニル基、スチリル基、分子内二重結合、ビニルエーテル基等のその他のラジカル重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体、エポキシ基、グリシジルエーテル基等のカチオン重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体等を例示できる。
これら変性ビニルアルコール系重合体(B)の中でも、(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1)を用いて得られる重合体からなるガスバリア性膜は、高湿度下及び低湿度下でのガスバリア性(酸素バリア性)に優れ、熱水処理後のガスバリア性(耐熱水性)の低下もなく、柔軟性を有し、また、かかるガスバリア性膜が形成された積層体(積層フイルム)を包装材等に用いる場合、ヒートシール強度が改良されるという特徴を有する。
前記(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1)としては、好ましくは(メタ)アクリロイル基の量(−OH基との対比;エステル化率)が0.001〜50%、より好ましくは0.1〜40%の範囲にある。エステル化率が0.001%未満のものは得られるガスバリア性膜の耐熱水性、柔軟性等が改良されない虞があり、一方、50%を超えるものは得られるガスバリア性膜の耐熱水性、酸素バリア性等が改良されない虞がある。
(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1)
本発明に係る(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1)は、例えば、ビニルアルコール系共重合体と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体とを、例えばプレンステッド酸、プレンステッド塩基、ルイス酸、ルイス塩基、金属化合物などの触蝶の存在下又は非存在下に反応させることにより得られる。またビニルアルコール系共重合体と、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナ
トエチル(メタ)アクリレート等のビニルアルコール系共重合体のOH基と反応する官能基を分子内に有する(メタ)アクリル酸誘導体とを反応させ、(メタ)アクリレート基をビニルアルコール系共重合体に間接的に導入することもできる。
チオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2)
チオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2)としては、イソチウロニウム塩やチオール酸エステルを有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ポリビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、−COSH基を有する有機チオール酸を包含する、チオール酢酸、チオールプロピオン酸、チオール酪酸等のチオールカルポン酸の存在下に、ギ酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等、公知の方法により分子内にチオール基を付与させた重合体で、通常、チオール基変性率は0.1〜50mol%の範囲にある。
これらチオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2)として、例えば、(株)クラレからクラレMポリマーの商品名で、「M−115」及び「M−205」が製造・販売されている。
シリル基変性ビニルアルコ −ル系重合体(B3)
前記シリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3)としては、ビニルアルコール系重合体あるいはカルポキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にトリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリタロルシラン、ジフェニルジクロルシラン等のオルガノハロゲンシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のオルガノアセトキシシランあるいはトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のすルガノアルコキシシラン等を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルと例えば、ビニルトリメトキシシラン、シ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等のビニルシラン、あるいは3−(メタ)アクリルアミドープロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドープロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドープロピルトリ(β一メトキシュトキシ)シラン等の(メタ)アクリルアミドーアルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化する方法等で得られる分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を有する重合体等を挙げることができる。
これらシリル基の変性量は、通常、0.1〜50mol%の範囲にある。これらシリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3)として、例えば、(株)クラレからクラレRポリマーの商品名で、「R−1130」、「R−2105」及び「R−2130」.が製造・販売されている。
アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4)
前記アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4)としては、前記ビニルアルコール系重合体の溶液、分散液又は粉末に液状又はガス状のジケテンを添加反応させて得られるものであり、通常、アセトアセチル化度は1〜10mol%、好ましくは3〜5mol%の範囲にある。
これらアセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4)として、例えば、日本合成化学工業(株)から「ゴーセファイマーZ100」、同「Z200」、同「Z200H」及び同「Z210」の商品名で製造・販売されている。
ガスバリア性膜
本発明に用いられるガスバリア性膜は、アクリル酸亜鉛と共に変性ビニルアルコール系重合体(B)を、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40〜0.0001重量%、くに好ましくは30〜0.001重量%の範囲で含む不飽和カルポン酸化合物多価金属塩の重合体(A)からなることを特徴とするガスバリア性膜である。
基材層に不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)の溶液を塗工する方法としては、当該溶液を基材層表面に塗布する方法、当該溶液に基材層を浸漬する方法、当該溶液を基材層表面に噴霧する方法等種々公知の塗工方法を採り得る。
基材層に不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)の溶液を塗布する方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等種々公知の塗工機を用いて、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液中(固形分)の量で0.05〜10g/m2、好ましくは0.1〜5g/m2となるよう塗布すればよい。
【0013】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)を溶解する際若しくは不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶解する際には、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、エチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、PEG#200・ジ(メタ)アクリレート、PEG#400・ジ(メタ)アクリレート、PEG#600・ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール・ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール・ジ(メタ)アクリレートなどのグリコール類のアクリル酸二価エステル、その他の不飽和カルボン酸(ジ)エステル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物等の単量体あるいは低分子量の化合物、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水溶性重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン等の高分子量の化合物等を添加してもよい。
また、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を溶解する際若しくは不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)とを溶解する際には、本発明の目的を損なわない範囲で、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤を添加しておいてもよいし、基材層との濡れ性を改良するために、各種界面活性剤等を添加しておいてもよい。
【0014】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を重合するには、種々の公知の方法、具体的には電離性放射線の照射又は加熱などによる方法があげられる。
電離放射線を使用する場合は、波長領域が0.0001〜800nmの範囲のエネルギー線であれば特に限定されないが、かかるエネルギー線としては、α線、β線、γ線、X線、可視光線、紫外線、電子線等が上げられる。これらの電離放射線の中でも、波長領域が400〜800nmの範囲の可視光線、50〜400nmの範囲の紫外線および0.01〜0.002nmの範囲の電子線が、取り扱いが容易で、装置も普及しているので好ましい。
電離放射線として可視光線および紫外線を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩と多価金属塩の混合溶液に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;ダロキュアー 1173)、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)、α―ヒドロキシケトン、アシルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンの混合物(ランベルティ・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名;エサキュアー KT046)、エサキュアー KT55(ランベルティー・ケミカル・スペシャルティ)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ラムソン・ファイア・ケミカル社製 商品名;スピードキュアTPO)の商品名で製造・販売されているラジカル重合開始剤を挙げることができる。さらに、重合度又は重合速度を向上させるため重合促進剤を添加することができ、例えば、N、N-ジメチルアミノ-エチル-(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-モルフォリン等が挙げられる。
【0015】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合させる際は、溶液が水等の溶媒を含んだ状態で重合させてもよいし、一部乾燥させた後に重合させてもよい。
また、塗工液の乾燥は溶媒を完全に除去してもよく、また塗工液中に適度の溶媒、例えば水を、好ましくは20〜60重量%の範囲で含む状態で電子線を照射することが好ましい。塗工液に含まれる溶媒が20重量%未満の場合は得られる膜の酸素バリア性が低下するおそれがあり、塗工液に含まれる溶媒が60重量%以上の場合は得られる膜の酸素バリア性や外観、特に透明性が低下するおそれがある。
また、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を溶媒の存在下で電離放射線を照射する際の温度は、溶媒が沸騰する温度でない限りとくに限定はされないが、通常、60℃以下、とくに常温〜50℃の範囲で行うことが好ましい。電離放射線を照射する際の温度を高くし過ぎると、溶媒の蒸発が速くなり、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の結晶が析出し易くなり、一方、温度が低すぎる場合は、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合させた後に溶媒を乾燥する時間が長くなり、膜の製造ライン等を長くする必要がある。
【0016】
ガスバリア性膜の熱処理
上記の重合によって得られた膜を特定条件で熱処理することによって本発明のガスバリア性膜が得られる。
熱処理は膜を120℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から10分間保持することにより行われる。
また、熱処理は、膜を1秒以内に常温(25℃)以下から60℃から300℃の温度範囲に昇温させ、0.1秒から10分間保持した後、10秒以内に常温まで降温させることが望ましい。
熱処理の温度範囲は、60℃から300℃、好ましくは100℃から250℃である。また、常温以下からこの温度範囲に昇温するまでの所要時間は1秒以内とすることが望ましい。さらに、この温度範囲に保持する時間は0.1秒から60分、中でもは0.1秒から40分以内とすることが望ましい。膜はこの温度範囲に保持させた後、この温度範囲から常温(25℃)以下に10秒以内、中でも5秒以内で降温させることが望ましい。
この熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。また、圧力は特に限定されない。加圧下、減圧下、常圧下のいずれでもよい。
この特定の熱処理に供される膜は、通常基材層に塗布されたまま熱処理されるが、必要に応じて基材層から剥離して熱処理してもよい。
本発明においては、重合された膜の膜形成に引き続いて連続的に熱処理してもよく、また膜を一旦常温にもどした後に、熱処理に供してもよい。一般的には重合により膜を形成する工程と熱処理の工程を連続させることが製造効率上望ましい。
本発明では熱処理により、膜の構造が確定されているものと推定される。本発明の特定の熱処理により、脱水および膜構造が部分的に再配置され、より安定化された膜となり、ガスバリア性がより安定するものと推定される。
熱処理には、加熱ロールに直接膜あるは膜を有する基材を接触させたり、あるいは押し当てたりして行うことが望ましい。また膜に赤外線、ハロゲンヒーターを直接照射したり、さらにはマイクロ波、紫外線ランプ等を照射することが望ましい。
膜あるいは膜を有する基材は常温付近に保持された状態から、長手方向に連続して供給され、加熱ロールに接することで、接した部分が順次熱処理の温度範囲となり、加熱ロールから順次離れて、降温が始まり常温付近まで温度が下がるのが一般的な方法である。
また、赤外線を照射する場合は、長手方向に連続的に供給される膜あるいは膜を有する基材に幅方向に配置された赤外線ランプの光線を順次照射して膜を熱処理の温度範囲に昇温させ、膜あるいは膜を有する基材が赤外線ランプから離れることにより降温がはじまり常温付近まで温度が下がる。
なお、膜の形成の際に紫外線などの電離放射線を照射するので形成時の膜は、常温より高い温度となっていることが通常である。
従って、成形直後の膜を熱処理する場合は、膜の温度が常温(約25℃付近)まで低下しないまま、膜が熱処理の温度範囲に昇温することとなる。この場合であっても熱処理前の膜の温度は熱処理の温度範囲居の温度以下とすることが望ましい。
このことから、膜の成形工程と熱処理の工程の間には重合によって膜が成形される際の温度よりは、その温度が低下する工程を設けることが望ましい。この温度が低下する工程で膜の温度を常温付近まで低下させる必要はないが、膜の温度が50℃以下、中でも40℃以下まで低下させることが望ましい。
このようにして得られた不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の重合体或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)からなるガスバリア性膜は、カルボン酸基と多価金属がイオン架橋してなるカルボキシレートイオンと遊離のカルボン酸基が存在し、夫々、赤外線スペクトルで、遊離のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸収が1700cm−1付近にあり、カルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸収が1520cm−1付近にある。
【0017】
したがって、本発明の製造方法で得られるガスバリア性膜において、(A0/A)が0.25未満であるということは、遊離のカルボン酸基が存在しないか、少ないことを示しており、0.25を越える膜は、遊離のカルボン酸基の含有量が多く、耐ガスバリア性が改良されないおそれがある。
本発明において1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度A0と赤外線吸収スペクトルにおける1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A0/A)は、ガスバリア性膜(ガスバリア性積層体)から1cm×3cmの測定用サンプルを切り出し、その表面(不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩重合体層)の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)に得、以下の手順で、先ず、吸光度A0及び吸光度Aを求める。
1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度A0:赤外線吸収スペクトルの1660cm−1と1760cm−1の吸光度とを直線(N)で結び、1660〜1760cm−1間の最大吸光度(1700cm−1付近)から垂直に直線(O)を下ろし、当該直線(O)と直線(N)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長さ)を吸光度A0とした。
1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度A:赤外線吸収スペクトルの1480cm−1と1630cm−1の吸光度とを直線(L)で結び、1480〜1630cm−1間の最大吸光度(1520cm−1付近)から垂直に直線(M)を下ろし、当該直線(M)と直線(L)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長さ)を吸光度Aとした。尚、最大吸光度(1520cm−1付近)は、対イオンの金属種によりピーク位置が変化することがあり、例えば、カルシウムでは1520cm−1付近、亜鉛では1520cm−1付近、マグネシウムでは1540cm−1付近及びナトリウム(Na)では1540cm−1付近である。
次いで、上記方法で求めた吸光度A0及び吸光度Aから比(A0/A)を求めた。
なお、本発明のおける赤外線スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、日本分光社製FT−IR350装置を用い、KRS−5(Thallium Bromide−Iodide)結晶を装着して、入射角45度、室温、分解能4cm-1、積算回数150回の条件で行った。
【0018】
本発明により得られるガスバリア性膜は、基材層から剥離してガスバリア性膜単層としても用い得るが、通常は、基材層にガスバリア性膜を積層した積層体として用いる。かかるガスバリア性積層体は、基材層の形状により、また用途に応じて積層フィルム、積層シート、トレー、カップ、中空体(ボトル)等の種々の形状を取り得る。
【0019】
本発明により得られるガスバリア性積層体は、積層体が積層フィルムであれば、その少なくとも片面に、熱融着層を積層することにより、ヒートシール可能な包装用フィルムとして好適な積層フィルムが得られる。かかる熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。
中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
【実施例】
【0020】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0021】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
【0022】
<評価方法>
(1)水蒸気透過度[g/(m2・day)]:多層フィルムを折り返し、2方をヒートシールして(線状低密度ポリエチレンフィルム面)袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01m2になるように袋を作成し、これを40℃、90%R.H.の条件で3日間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
(2)黄変
ガスバリア性積層フィルムを熱処理して得られたフィルムを、白い紙の上に置き、目視で観察測定した。
○・・黄変なし
△・・少し黄変あり
×・・黄変あり
【0023】
<アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの溶液の作製>
アクリル酸亜鉛水溶液〔浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、亜鉛成分10重量%)〕を固形分比率で98.0重量%、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名:イルガキュアー 2959)〕を固形分比率で1.3重量%、及び界面活性剤(花王社製 商品名:エマルゲン120)を固形分比率で0.7重量%となるように混合し、アクリル酸亜鉛溶液(s1)を作製した。
次に、アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの混合水溶液 濃度14重量%(アクリル酸亜鉛成分:12重量%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分2重量%)〕に上記アクリル酸亜鉛の溶液(s1)を混合させて、アクリル酸亜鉛成分を固形分比率で88.5重量%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分を固形分比率で9.7重量%、光重合開始剤を固形分比率で1.2重量%、界面活性剤を固形分比率で0.6重量%となるように混合し、アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールからなる溶液(s2)を作製した。
【0024】
実施例1 および 比較例1
上記のアクリル酸亜鉛塩とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの溶液(s2)を厚さ12μmの透明蒸着PET(東セロ社製 商品名;TL−PET H)からなる基材フィルムの蒸着面に、メイヤーバーで塗布量が固形分で3.5g/m2になるように塗布し、塗工面を上にしてステンレス板に固定し、直ちに紫外線照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、照度:180mW/cm2、積算光量:180mJ/cm2の条件で紫外線を照射して重合し、ガスバリア性膜を積層したガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルム(室温)を連続的に送り出し表1に示した温度の加熱ロール(金属製 温度200℃)の表面にガスバリア性膜を接触させ順次引き取り室温まで降温させた。ガスバリア性膜が加熱ロールに接触して温度がロール温度の200℃まで昇温するまでには0.1秒要した。また、ガスバリア性膜が加熱ロールに接していた時間は、8秒である。
次に熱処理されたガスバリア性積層フィルムの防湿性を以下の方法で測定した。
すなわち、厚さ50μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製 商品名:T.U.X. FCS)の片面に、ウレタン系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名:タケラックA310):12重量部、イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル社製 商品名:タケネートA3):1重量部及び酢酸エチル(関東化学社製):7重量部)を塗布・乾燥後、得られたガスバリア性積層フィルムのアクリル酸多価金属塩重合体層(不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩重合体層)面を貼り合わせ(ドライラミネート)し、多層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表1に示す。
同様に熱処理をしないガスバリア性積層フィルムの防湿性を表1に示す(比較例1)
【0025】
実施例2ないし6
表1に示す条件で実施例1と同様に行った。
実施例7ないし9
実施例1における加熱ロールの替わりに、ハロゲンヒーター(岩崎電気社製 型式QIR200V2000W/624 3灯)を用いて、表2の処理条件で熱処理をした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表2に示す。
【0026】
実施例10
マイクロ波(松下電器社製 型式NE−C3)を用いて、表3の処理条件で熱処理をした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性多層フィルムを得た。
得られた多層フィルムの防湿性を表3に示す。
【0027】
実施例11ないし13
紫外線照射装置(フージョン社製 型式:CV−110Q−G、種類 F600V−10)を用いて、表4の処理条件で熱処理をした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性多層フィルムを得た。
得られた多層フィルムの防湿性を表4に示す。
【0028】
比較例2
オーブン中で、表5の処理条件で熱処理をした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性多層フィルムを得た。
得られた多層フィルムの防湿性を表5に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
表1から分かるように、基材層に塗工した不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を重合して得られる膜を熱処理したガスバリア性積層フィルム(実施例1〜4)は、水蒸気バリア性に優れていることが分かる。また、熱処理後も優れた透明性を維持しており、色相の変化もない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の重合体からなるガスバリア性膜及びかかるガスバリア性を形成してなるガスバリア性積層体は、耐酸素透過性(ガスバリア性)に優れており、包装材料、特に高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材料を始め、医療用途、工業用途等さまざまな包装材料としても好適に使用し得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有し、酸素、水蒸気等のガスバリア性、特に高湿度下でのガスバリア性に優れた包装材料に好適なガスバリア性膜であって、そのガスバリア性の改良された膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスバリア性を有するポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体を二軸延伸フィルム基材に積層する方法(例えば、特許文献1)、あるいはポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物を二軸延伸フィルム基材に被覆する方法(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながら、ポリビニルアルコールを積層してなるガスバリア性フィルムは、高湿度下での酸素バリア性が低下し、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物は、エステル化を十分に進行させて、フィルムのガスバリア性を高めるためには高温で長時間の加熱が必要である。そして、これらは酸素ガスバリア性は発現するものの防湿性については十分とはいえない状況である。
また、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜や、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜は、ガスバリア性のみならず、防湿性にも優れた膜であり、これらの膜のガスバリア性の更なる改良が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−157830号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3203287号公報(請求項1)
【特許文献3】WO2005/108440 (請求項12、請求項13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、透明性、ガスバリア性、及び防湿性に優れた膜であり、そのガスバリア性の改良された膜の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、120℃から300℃の温度に、0.1秒から10分間保持させることを特徴とするガスバリア性膜の製造方法である。
【0006】
また、本発明は材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、120℃から300℃の温度に、0.1秒から10分間保持させることを特徴とするガスバリア性膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合して得られた膜を、特定の方法で熱処理することにより、その透明性を損なうことなく、ガスバリア性が改良された膜を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
不飽和カルボン酸化合物
本発明に用いられる不飽和カルボン酸化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα,β−エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物であり、重合度が20未満、好ましくは単量体若しくは10以下の重合体である。重合度が20を越える重合体(高分子化合物)は、後述の多価金属化合物との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が改良されないおそれがある。
これら不飽和カルボン酸化合物の中でも単量体が多価金属化合物で完全に中和された塩が形成し易く、当該塩を重合して得られる膜のガスバリア性に優れるので好ましい。
【0009】
多価金属化合物
本発明に用いられる多価金属化合物は、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。これら二価の金属化合物を用いた場合は、前記不飽和カルボン酸との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これらは、少なくとも1種が使用され、1種のみの使用であっても、2種以上を併用してもよい。
【0010】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩
本発明に用いられる不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩は、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物との塩である。これら不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。かかる不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の中でも、特に(メタ)アクリル酸亜鉛が得られるガスバリア性膜の耐熱水性に優れるので好ましい。
【0011】
基材層
本発明に用いられる基材層は、前記不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を塗工できるものであれば、とくに限定はされず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂あるいは紙等の有機質材料、ガラス、陶、セラミック、セメントあるいはアルミニウム、鉄、銅、ステンレス等の金属等の無機質材料、有機質材料同士あるいは有機質材料と無機質材料との組合せからなる多層構造の基材層を例示することができる。
また、基材層の形状も、とくに限定はされず、シート又はフィルム状物、トレー、カップ、中空体等の形状を有するものを例示することができる。
これら基材層の材料として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂あるいは紙等の有機質材料を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の重合体からなるガスバリア性膜を備えた積層体として用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、種々公知の熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等を例示することができる。
熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。これら熱可塑性樹脂からなる基材層はガスバリア性膜の用途に応じて、単層であっても、二種以上の熱可塑性樹脂からなる積層体であってもよい。
また、基材層の表面に、アルミニウム、亜鉛若しくはシリカ等の無機化合物あるいはその酸化物等が蒸着されていてもよいし、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等がコーティングされていてもよい。
また、これら基材層は、ガスバリア性膜との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0012】
膜の製造方法
本発明においては、予め基材層に成形された膜に、更に特定の熱処理をしてガスバリア性膜が製造される。この特定の熱処理がされる膜は、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる。
また、熱処理がされる膜は、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することによっても得られる。
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を調整する方法としては、予め前記不飽和カルボン酸と前記多価金属化合物とを反応させて、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩とした後、その不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を水等の溶媒に溶かして溶液としてもよいし、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物を溶かして多価金属塩の溶液としてもよい。
ガスバリア性膜の製造方法として、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物を溶かす場合、即ち、前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物とを含む溶液を用いる場合は、前記不飽和カルボン酸化合物に対して、0.3化学当量を越える量の前記多価金属化合物を添加することが好ましい。多価金属化合物の添加量が0.3化学当量以下の混合溶液を用いた場合は、遊離のカルボン酸基の含有量が多いガスバリア性膜となり、結果として、ガスバリア性が低い膜となる虞がある。
また、多価金属化合物の添加量の上限はとくに限定はされないが、多価金属化合物の添加量が1化学当量を越えると未反応の多価金属化合物が多くなるので、通常、5化学当量以下、好ましくは2化学当量以下で十分である。
また、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物との混合溶液を用いる場合は、通常、
不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶媒に溶かしている間に、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩が形成されるが、多価金属塩の形成を確実にするために、1分以上混合しておくことが好ましい。
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を調整するために用いる溶媒は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール若しくはアセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒が挙げられるが、水が最も好ましい。
変性ビニルアルコール系重合体
また、本発明では不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液あるいは前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物だけではなく、これらと共に変性ビニルアルコール系重合体(B)を併用することも行われる。
変性ビニルアルコール系重合体(B)は、好ましくは水、低級アルコール、有機溶媒等に溶解性があるものであり、とくに水あるいは水一低級アルコール系混合溶媒に溶けるものが好ましい。このような反応性基で変性した変性ビニルアルコール系重合体(B)を成分の一つに用いることにより、不飽和カルポン酸化合物多価金属塩と混合して重合する際に、変性ビニルアルコール系重合体(B)と不飽和カルポン酸化合物多価金属塩の少なくとも一部が何らかの結合をした重合体(A)からなる低湿度下におけるガスバリア性が改良されたガスバリア性膜が得られる。
変性ビニルアルコール系重合体(B)の具体例としては、例えば、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和基を有するカルポン酸化合物あるいはその誘導体と反応させ(メタ)アグリレート基を導入してなる(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1);イソチウロニウム塩やチオール酸エステル有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を駿や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、チオール酸の存在下にビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にチオール基(−SH基)を有する、チオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2);ビニルアルコール系重合体あるいはカルポキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にオルガノハロゲンシラン、オルガノアセトキシシラン、オルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルとビニルシラン、(メタ)アクリルアミドーアルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化し、分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にトリメトシキシラン基、トリエトキシシラン基等のトリアルキコキシシラン基、トリカルポニルオキシシラン基等を有する、シリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3);ビニルアルコール系重合体を酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ビニルアルコール系重合体をジメチルホルムアミド、又はジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法およびビニルアルコール系重合体にジケテンガス又は液状ジケテンを直接接触させる方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の「部にアセトアセチル基を有する、アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4);その他反応性官能基を有するモノマーを酢酸ビニルと共重合した後鹸化することにより、側鎖に反応性官能基を導入する方法、高分子反応により、ポリビニルアルコールの側鎖に反応性官能基を導入する方法、連鎖移動反応を利用して反応性官能基を末端に導入する方法等、種々公知の方法により分子内に、(メタ)アクリルアミド基、アリル基、ビニル基、スチリル基、分子内二重結合、ビニルエーテル基等のその他のラジカル重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体、エポキシ基、グリシジルエーテル基等のカチオン重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体等を例示できる。
これら変性ビニルアルコール系重合体(B)の中でも、(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1)を用いて得られる重合体からなるガスバリア性膜は、高湿度下及び低湿度下でのガスバリア性(酸素バリア性)に優れ、熱水処理後のガスバリア性(耐熱水性)の低下もなく、柔軟性を有し、また、かかるガスバリア性膜が形成された積層体(積層フイルム)を包装材等に用いる場合、ヒートシール強度が改良されるという特徴を有する。
前記(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1)としては、好ましくは(メタ)アクリロイル基の量(−OH基との対比;エステル化率)が0.001〜50%、より好ましくは0.1〜40%の範囲にある。エステル化率が0.001%未満のものは得られるガスバリア性膜の耐熱水性、柔軟性等が改良されない虞があり、一方、50%を超えるものは得られるガスバリア性膜の耐熱水性、酸素バリア性等が改良されない虞がある。
(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1)
本発明に係る(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1)は、例えば、ビニルアルコール系共重合体と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体とを、例えばプレンステッド酸、プレンステッド塩基、ルイス酸、ルイス塩基、金属化合物などの触蝶の存在下又は非存在下に反応させることにより得られる。またビニルアルコール系共重合体と、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナ
トエチル(メタ)アクリレート等のビニルアルコール系共重合体のOH基と反応する官能基を分子内に有する(メタ)アクリル酸誘導体とを反応させ、(メタ)アクリレート基をビニルアルコール系共重合体に間接的に導入することもできる。
チオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2)
チオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2)としては、イソチウロニウム塩やチオール酸エステルを有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ポリビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、−COSH基を有する有機チオール酸を包含する、チオール酢酸、チオールプロピオン酸、チオール酪酸等のチオールカルポン酸の存在下に、ギ酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等、公知の方法により分子内にチオール基を付与させた重合体で、通常、チオール基変性率は0.1〜50mol%の範囲にある。
これらチオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2)として、例えば、(株)クラレからクラレMポリマーの商品名で、「M−115」及び「M−205」が製造・販売されている。
シリル基変性ビニルアルコ −ル系重合体(B3)
前記シリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3)としては、ビニルアルコール系重合体あるいはカルポキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にトリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリタロルシラン、ジフェニルジクロルシラン等のオルガノハロゲンシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のオルガノアセトキシシランあるいはトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のすルガノアルコキシシラン等を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルと例えば、ビニルトリメトキシシラン、シ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等のビニルシラン、あるいは3−(メタ)アクリルアミドープロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドープロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドープロピルトリ(β一メトキシュトキシ)シラン等の(メタ)アクリルアミドーアルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化する方法等で得られる分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を有する重合体等を挙げることができる。
これらシリル基の変性量は、通常、0.1〜50mol%の範囲にある。これらシリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3)として、例えば、(株)クラレからクラレRポリマーの商品名で、「R−1130」、「R−2105」及び「R−2130」.が製造・販売されている。
アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4)
前記アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4)としては、前記ビニルアルコール系重合体の溶液、分散液又は粉末に液状又はガス状のジケテンを添加反応させて得られるものであり、通常、アセトアセチル化度は1〜10mol%、好ましくは3〜5mol%の範囲にある。
これらアセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4)として、例えば、日本合成化学工業(株)から「ゴーセファイマーZ100」、同「Z200」、同「Z200H」及び同「Z210」の商品名で製造・販売されている。
ガスバリア性膜
本発明に用いられるガスバリア性膜は、アクリル酸亜鉛と共に変性ビニルアルコール系重合体(B)を、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40〜0.0001重量%、くに好ましくは30〜0.001重量%の範囲で含む不飽和カルポン酸化合物多価金属塩の重合体(A)からなることを特徴とするガスバリア性膜である。
基材層に不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)の溶液を塗工する方法としては、当該溶液を基材層表面に塗布する方法、当該溶液に基材層を浸漬する方法、当該溶液を基材層表面に噴霧する方法等種々公知の塗工方法を採り得る。
基材層に不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)の溶液を塗布する方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等種々公知の塗工機を用いて、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液中(固形分)の量で0.05〜10g/m2、好ましくは0.1〜5g/m2となるよう塗布すればよい。
【0013】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)を溶解する際若しくは不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶解する際には、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、エチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、PEG#200・ジ(メタ)アクリレート、PEG#400・ジ(メタ)アクリレート、PEG#600・ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール・ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール・ジ(メタ)アクリレートなどのグリコール類のアクリル酸二価エステル、その他の不飽和カルボン酸(ジ)エステル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物等の単量体あるいは低分子量の化合物、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水溶性重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン等の高分子量の化合物等を添加してもよい。
また、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を溶解する際若しくは不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)とを溶解する際には、本発明の目的を損なわない範囲で、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤を添加しておいてもよいし、基材層との濡れ性を改良するために、各種界面活性剤等を添加しておいてもよい。
【0014】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を重合するには、種々の公知の方法、具体的には電離性放射線の照射又は加熱などによる方法があげられる。
電離放射線を使用する場合は、波長領域が0.0001〜800nmの範囲のエネルギー線であれば特に限定されないが、かかるエネルギー線としては、α線、β線、γ線、X線、可視光線、紫外線、電子線等が上げられる。これらの電離放射線の中でも、波長領域が400〜800nmの範囲の可視光線、50〜400nmの範囲の紫外線および0.01〜0.002nmの範囲の電子線が、取り扱いが容易で、装置も普及しているので好ましい。
電離放射線として可視光線および紫外線を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩と多価金属塩の混合溶液に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;ダロキュアー 1173)、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)、α―ヒドロキシケトン、アシルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンの混合物(ランベルティ・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名;エサキュアー KT046)、エサキュアー KT55(ランベルティー・ケミカル・スペシャルティ)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ラムソン・ファイア・ケミカル社製 商品名;スピードキュアTPO)の商品名で製造・販売されているラジカル重合開始剤を挙げることができる。さらに、重合度又は重合速度を向上させるため重合促進剤を添加することができ、例えば、N、N-ジメチルアミノ-エチル-(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-モルフォリン等が挙げられる。
【0015】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合させる際は、溶液が水等の溶媒を含んだ状態で重合させてもよいし、一部乾燥させた後に重合させてもよい。
また、塗工液の乾燥は溶媒を完全に除去してもよく、また塗工液中に適度の溶媒、例えば水を、好ましくは20〜60重量%の範囲で含む状態で電子線を照射することが好ましい。塗工液に含まれる溶媒が20重量%未満の場合は得られる膜の酸素バリア性が低下するおそれがあり、塗工液に含まれる溶媒が60重量%以上の場合は得られる膜の酸素バリア性や外観、特に透明性が低下するおそれがある。
また、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を溶媒の存在下で電離放射線を照射する際の温度は、溶媒が沸騰する温度でない限りとくに限定はされないが、通常、60℃以下、とくに常温〜50℃の範囲で行うことが好ましい。電離放射線を照射する際の温度を高くし過ぎると、溶媒の蒸発が速くなり、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の結晶が析出し易くなり、一方、温度が低すぎる場合は、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合させた後に溶媒を乾燥する時間が長くなり、膜の製造ライン等を長くする必要がある。
【0016】
ガスバリア性膜の熱処理
上記の重合によって得られた膜を特定条件で熱処理することによって本発明のガスバリア性膜が得られる。
熱処理は膜を120℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から10分間保持することにより行われる。
また、熱処理は、膜を1秒以内に常温(25℃)以下から60℃から300℃の温度範囲に昇温させ、0.1秒から10分間保持した後、10秒以内に常温まで降温させることが望ましい。
熱処理の温度範囲は、60℃から300℃、好ましくは100℃から250℃である。また、常温以下からこの温度範囲に昇温するまでの所要時間は1秒以内とすることが望ましい。さらに、この温度範囲に保持する時間は0.1秒から60分、中でもは0.1秒から40分以内とすることが望ましい。膜はこの温度範囲に保持させた後、この温度範囲から常温(25℃)以下に10秒以内、中でも5秒以内で降温させることが望ましい。
この熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。また、圧力は特に限定されない。加圧下、減圧下、常圧下のいずれでもよい。
この特定の熱処理に供される膜は、通常基材層に塗布されたまま熱処理されるが、必要に応じて基材層から剥離して熱処理してもよい。
本発明においては、重合された膜の膜形成に引き続いて連続的に熱処理してもよく、また膜を一旦常温にもどした後に、熱処理に供してもよい。一般的には重合により膜を形成する工程と熱処理の工程を連続させることが製造効率上望ましい。
本発明では熱処理により、膜の構造が確定されているものと推定される。本発明の特定の熱処理により、脱水および膜構造が部分的に再配置され、より安定化された膜となり、ガスバリア性がより安定するものと推定される。
熱処理には、加熱ロールに直接膜あるは膜を有する基材を接触させたり、あるいは押し当てたりして行うことが望ましい。また膜に赤外線、ハロゲンヒーターを直接照射したり、さらにはマイクロ波、紫外線ランプ等を照射することが望ましい。
膜あるいは膜を有する基材は常温付近に保持された状態から、長手方向に連続して供給され、加熱ロールに接することで、接した部分が順次熱処理の温度範囲となり、加熱ロールから順次離れて、降温が始まり常温付近まで温度が下がるのが一般的な方法である。
また、赤外線を照射する場合は、長手方向に連続的に供給される膜あるいは膜を有する基材に幅方向に配置された赤外線ランプの光線を順次照射して膜を熱処理の温度範囲に昇温させ、膜あるいは膜を有する基材が赤外線ランプから離れることにより降温がはじまり常温付近まで温度が下がる。
なお、膜の形成の際に紫外線などの電離放射線を照射するので形成時の膜は、常温より高い温度となっていることが通常である。
従って、成形直後の膜を熱処理する場合は、膜の温度が常温(約25℃付近)まで低下しないまま、膜が熱処理の温度範囲に昇温することとなる。この場合であっても熱処理前の膜の温度は熱処理の温度範囲居の温度以下とすることが望ましい。
このことから、膜の成形工程と熱処理の工程の間には重合によって膜が成形される際の温度よりは、その温度が低下する工程を設けることが望ましい。この温度が低下する工程で膜の温度を常温付近まで低下させる必要はないが、膜の温度が50℃以下、中でも40℃以下まで低下させることが望ましい。
このようにして得られた不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の重合体或いはさらに変性ポリビニルアルコール系重合体(B)からなるガスバリア性膜は、カルボン酸基と多価金属がイオン架橋してなるカルボキシレートイオンと遊離のカルボン酸基が存在し、夫々、赤外線スペクトルで、遊離のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸収が1700cm−1付近にあり、カルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸収が1520cm−1付近にある。
【0017】
したがって、本発明の製造方法で得られるガスバリア性膜において、(A0/A)が0.25未満であるということは、遊離のカルボン酸基が存在しないか、少ないことを示しており、0.25を越える膜は、遊離のカルボン酸基の含有量が多く、耐ガスバリア性が改良されないおそれがある。
本発明において1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度A0と赤外線吸収スペクトルにおける1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A0/A)は、ガスバリア性膜(ガスバリア性積層体)から1cm×3cmの測定用サンプルを切り出し、その表面(不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩重合体層)の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)に得、以下の手順で、先ず、吸光度A0及び吸光度Aを求める。
1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度A0:赤外線吸収スペクトルの1660cm−1と1760cm−1の吸光度とを直線(N)で結び、1660〜1760cm−1間の最大吸光度(1700cm−1付近)から垂直に直線(O)を下ろし、当該直線(O)と直線(N)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長さ)を吸光度A0とした。
1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度A:赤外線吸収スペクトルの1480cm−1と1630cm−1の吸光度とを直線(L)で結び、1480〜1630cm−1間の最大吸光度(1520cm−1付近)から垂直に直線(M)を下ろし、当該直線(M)と直線(L)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長さ)を吸光度Aとした。尚、最大吸光度(1520cm−1付近)は、対イオンの金属種によりピーク位置が変化することがあり、例えば、カルシウムでは1520cm−1付近、亜鉛では1520cm−1付近、マグネシウムでは1540cm−1付近及びナトリウム(Na)では1540cm−1付近である。
次いで、上記方法で求めた吸光度A0及び吸光度Aから比(A0/A)を求めた。
なお、本発明のおける赤外線スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、日本分光社製FT−IR350装置を用い、KRS−5(Thallium Bromide−Iodide)結晶を装着して、入射角45度、室温、分解能4cm-1、積算回数150回の条件で行った。
【0018】
本発明により得られるガスバリア性膜は、基材層から剥離してガスバリア性膜単層としても用い得るが、通常は、基材層にガスバリア性膜を積層した積層体として用いる。かかるガスバリア性積層体は、基材層の形状により、また用途に応じて積層フィルム、積層シート、トレー、カップ、中空体(ボトル)等の種々の形状を取り得る。
【0019】
本発明により得られるガスバリア性積層体は、積層体が積層フィルムであれば、その少なくとも片面に、熱融着層を積層することにより、ヒートシール可能な包装用フィルムとして好適な積層フィルムが得られる。かかる熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。
中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
【実施例】
【0020】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0021】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
【0022】
<評価方法>
(1)水蒸気透過度[g/(m2・day)]:多層フィルムを折り返し、2方をヒートシールして(線状低密度ポリエチレンフィルム面)袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01m2になるように袋を作成し、これを40℃、90%R.H.の条件で3日間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
(2)黄変
ガスバリア性積層フィルムを熱処理して得られたフィルムを、白い紙の上に置き、目視で観察測定した。
○・・黄変なし
△・・少し黄変あり
×・・黄変あり
【0023】
<アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの溶液の作製>
アクリル酸亜鉛水溶液〔浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、亜鉛成分10重量%)〕を固形分比率で98.0重量%、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名:イルガキュアー 2959)〕を固形分比率で1.3重量%、及び界面活性剤(花王社製 商品名:エマルゲン120)を固形分比率で0.7重量%となるように混合し、アクリル酸亜鉛溶液(s1)を作製した。
次に、アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの混合水溶液 濃度14重量%(アクリル酸亜鉛成分:12重量%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分2重量%)〕に上記アクリル酸亜鉛の溶液(s1)を混合させて、アクリル酸亜鉛成分を固形分比率で88.5重量%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分を固形分比率で9.7重量%、光重合開始剤を固形分比率で1.2重量%、界面活性剤を固形分比率で0.6重量%となるように混合し、アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールからなる溶液(s2)を作製した。
【0024】
実施例1 および 比較例1
上記のアクリル酸亜鉛塩とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの溶液(s2)を厚さ12μmの透明蒸着PET(東セロ社製 商品名;TL−PET H)からなる基材フィルムの蒸着面に、メイヤーバーで塗布量が固形分で3.5g/m2になるように塗布し、塗工面を上にしてステンレス板に固定し、直ちに紫外線照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、照度:180mW/cm2、積算光量:180mJ/cm2の条件で紫外線を照射して重合し、ガスバリア性膜を積層したガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルム(室温)を連続的に送り出し表1に示した温度の加熱ロール(金属製 温度200℃)の表面にガスバリア性膜を接触させ順次引き取り室温まで降温させた。ガスバリア性膜が加熱ロールに接触して温度がロール温度の200℃まで昇温するまでには0.1秒要した。また、ガスバリア性膜が加熱ロールに接していた時間は、8秒である。
次に熱処理されたガスバリア性積層フィルムの防湿性を以下の方法で測定した。
すなわち、厚さ50μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製 商品名:T.U.X. FCS)の片面に、ウレタン系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名:タケラックA310):12重量部、イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル社製 商品名:タケネートA3):1重量部及び酢酸エチル(関東化学社製):7重量部)を塗布・乾燥後、得られたガスバリア性積層フィルムのアクリル酸多価金属塩重合体層(不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩重合体層)面を貼り合わせ(ドライラミネート)し、多層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表1に示す。
同様に熱処理をしないガスバリア性積層フィルムの防湿性を表1に示す(比較例1)
【0025】
実施例2ないし6
表1に示す条件で実施例1と同様に行った。
実施例7ないし9
実施例1における加熱ロールの替わりに、ハロゲンヒーター(岩崎電気社製 型式QIR200V2000W/624 3灯)を用いて、表2の処理条件で熱処理をした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表2に示す。
【0026】
実施例10
マイクロ波(松下電器社製 型式NE−C3)を用いて、表3の処理条件で熱処理をした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性多層フィルムを得た。
得られた多層フィルムの防湿性を表3に示す。
【0027】
実施例11ないし13
紫外線照射装置(フージョン社製 型式:CV−110Q−G、種類 F600V−10)を用いて、表4の処理条件で熱処理をした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性多層フィルムを得た。
得られた多層フィルムの防湿性を表4に示す。
【0028】
比較例2
オーブン中で、表5の処理条件で熱処理をした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性多層フィルムを得た。
得られた多層フィルムの防湿性を表5に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
表1から分かるように、基材層に塗工した不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を重合して得られる膜を熱処理したガスバリア性積層フィルム(実施例1〜4)は、水蒸気バリア性に優れていることが分かる。また、熱処理後も優れた透明性を維持しており、色相の変化もない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の重合体からなるガスバリア性膜及びかかるガスバリア性を形成してなるガスバリア性積層体は、耐酸素透過性(ガスバリア性)に優れており、包装材料、特に高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材料を始め、医療用途、工業用途等さまざまな包装材料としても好適に使用し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、60℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から60分間保持することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。
【請求項2】
基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、60℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から60分間保持することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。
【請求項3】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液、又は不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物と共に変性ポリビニルアルコール系化合物を併用することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
膜或いは膜を有する基材層を連続的に温度60℃から300℃の温度のロール表面に接触させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
膜に赤外線を照射することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の製造方法。
【請求項6】
不飽和カルボン酸化合物が、不飽和カルボン酸の単量体若しくは重合度が10以下の重合体である請求項1又は2項記載の製造方法。
【請求項7】
多価金属化合物を、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物に対し0.3化学当量を越えて含むことを特徴とする請求項2記載の製造方法。
【請求項8】
不飽和カルボン酸化合物が、(メタ)アクリル酸である請求項1、2又は4の何れかに記載の製造方法。
【請求項9】
溶液が水溶液である請求項1ないし3の何れかに記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れかに記載の製造方法により得られ得るガスバリア性膜。
【請求項11】
ガスバリア性膜が、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸
基のνC=Oに基づく吸光度A0と1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのν
C=Oに基づく吸光度Aとの比(A0/A)が0.25未満である請求項10記載のガスバリア性膜。
【請求項1】
基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、60℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から60分間保持することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。
【請求項2】
基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、60℃から300℃の温度範囲に、0.1秒から60分間保持することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。
【請求項3】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液、又は不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物と共に変性ポリビニルアルコール系化合物を併用することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
膜或いは膜を有する基材層を連続的に温度60℃から300℃の温度のロール表面に接触させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
膜に赤外線を照射することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の製造方法。
【請求項6】
不飽和カルボン酸化合物が、不飽和カルボン酸の単量体若しくは重合度が10以下の重合体である請求項1又は2項記載の製造方法。
【請求項7】
多価金属化合物を、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物に対し0.3化学当量を越えて含むことを特徴とする請求項2記載の製造方法。
【請求項8】
不飽和カルボン酸化合物が、(メタ)アクリル酸である請求項1、2又は4の何れかに記載の製造方法。
【請求項9】
溶液が水溶液である請求項1ないし3の何れかに記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れかに記載の製造方法により得られ得るガスバリア性膜。
【請求項11】
ガスバリア性膜が、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸
基のνC=Oに基づく吸光度A0と1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのν
C=Oに基づく吸光度Aとの比(A0/A)が0.25未満である請求項10記載のガスバリア性膜。
【公開番号】特開2009−155563(P2009−155563A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337986(P2007−337986)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】
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