説明

ガスバリア性膜の製造方法

【課題】
そこで本発明は、透明性、ガスバリア性のみならず、防湿性にも優れた膜を提供するこ
とを目的とする。
【解決手段】
基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、さらに熱処理
することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。基材層に重合度が20未満の不飽和カ
ルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価
金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得ら
れる膜を、さらに熱処理することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有し、酸素、水蒸気等のガスバリア性、特に高湿度下でのガスバリ
ア性に優れた包装材料に好適なガスバリア性膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸素あるいは水蒸気等に対するバリア性材料として、フィルム基材に酸化ケイ素
、酸化アルミニウム等の無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーテ
ィング法、化学気相成長法等で形成してなる透明ガスバリア性フィルムが注目されている
。そして、かかる透明ガスバリア性フィルムは、一般には透明性、剛性に優れる二軸延伸
ポリエステルフィルムからなる基材面に無機酸化物を蒸着したフィルムであるので、その
ままでは蒸着層が使用時の摩擦等に弱く、包装用フィルムとして使用する場合、後加工の
印刷やラミネート時、又内容物の充填時に、擦れや伸びにより無機酸化物にクラックが入
りガスバリア性が低下することがある。
一方、ガスバリア性を有するポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重
合体を二軸延伸フィルム基材に積層する方法(例えば、特許文献1)、あるいはポリビニ
ルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物を二軸延伸フィルム基材に被覆する方
法(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながら、ポリビニルアルコールを積
層してなるガスバリア性フィルムは、高湿度下での酸素バリア性が低下し、ポリビニルア
ルコールとポリ(メタ)アクリル酸との組成物は、エステル化を十分に進行させて、フィ
ルムのガスバリア性を高めるためには高温で長時間の加熱が必要である。そして、これら
は酸素ガスバリア性は発現するものの防湿性については十分とはいえない状況である。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−157830号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3203287号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、透明性、ガスバリア性のみならず、防湿性にも優れた膜を提供するこ
とを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗
工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を熱処
理することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法に関する。
【0006】
また、本発明は、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合
物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和
カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を熱処理することを特徴
とするガスバリア性膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合して得られた膜に熱処理
をすることにより、透明性に優れ、且つガスバリア性に優れたガスバリア性膜を製造する
ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
不飽和カルボン酸化合物
本発明に係わる不飽和カルボン酸化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、
イタコン酸等のα,β−エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物であり、重合度が
20未満、好ましくは単量体若しくは10以下の重合体である。重合度が20を越える重
合体(高分子化合物)は、後述の多価金属化合物との塩を重合して得られる膜は、高湿度
下でのガスバリア性が改良されない虞がある。
これら不飽和カルボン酸化合物の中でも単量体が多価金属化合物で完全に中和された塩
が形成し易く、当該塩を重合して得られる膜のガスバリア性に優れるので好ましい。
【0009】
多価金属化合物
本発明に係わる多価金属化合物は、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(
Ca)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(
Ni)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、
水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しく
は亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には
酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水
酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。これら二価の金属化合物を
用いた場合は、前記不飽和カルボン酸との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバ
リア性が特に優れている。これらは、少なくとも1種が使用され、1種のみの使用であっ
ても、2種以上を併用してもよい。
【0010】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩
本発明に係わる不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩は、前記重合度が20未満の不飽
和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物との塩である。これら不飽和カルボン酸化合物
多価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。かかる不飽和カルボン酸化合物
多価金属塩の中でも、特に(メタ)アクリル酸亜鉛が得られるガスバリア性膜の耐熱水性
に優れるので好ましい。
【0011】
基材層
本発明に係わる基材層は、前記不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を塗工でき
るものであれば、とくに限定はされず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂あるいは紙等の有機
質材料、ガラス、陶、セラミック、セメントあるいはアルミニウム、鉄、銅、ステンレス
等の金属等の無機質材料、有機質材料同士あるいは有機質材料と無機質材料との組合せか
らなる多層構造の基材層を例示することができる。
また、基材層の形状も、とくに限定はされず、シートまたはフィルム状物、トレー、カ
ップ、中空体等の形状を有するものを例示することができる。
これら基材層の材料として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂あるいは紙等の有機質材料を
用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の重合体からなるガスバリア性膜を
備えた積層体として用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、種々公知の熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリ
エステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン
樹脂、ポリイミド等を例示することができる。熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑
性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1
−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレ
ンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロ
ン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・
酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル
、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物
等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。これら熱可塑
性樹脂からなる基材層はガスバリア性膜の用途に応じて、単層であっても、二種以上の熱
可塑性樹脂からなる積層体であってもよい。
また、基材層の表面に、アルミニウム、亜鉛若しくはシリカ等の無機化合物あるいはそ
の酸化物等が蒸着されていてもよいし、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エ
チレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等がコーティングされ
ていてもよい。
また、これら基材層は、ガスバリア性膜との接着性を改良するために、その表面を、例
えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処
理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。

なお、基材層の表面に、アルミニウム、亜鉛若しくはシリカ等の無機化合物あるいはそ
の酸化物等が蒸着される等、その他の無機薄膜層を設ける場合、珪素、アルミニウム、チ
タン、ジルコニウム、錫、マグネシウム、インジウムなどの酸化物、窒化物、弗化物の単
体、或いはそれらの複合物等が用いられる。特に酸化アルミニウムは、無色透明であり、
ボイル・レトルト耐性等の特性にも優れており、広範囲の用途に用いることができる。
【0012】
無機薄膜層を形成する方法としては特に限定されず、公知の方法を利用することができ
る。例えば、スパッタやCVD法により成膜を行う方法がある。これらの無機薄膜層は、
透明樹脂層(B)上に形成することが望ましい。
また、表面平滑性に優れた形状の膜を得るためには、透明樹脂層(B)の表面と、透明
無機薄膜の形成における無機原子や化合物の結合反応が速やかに行われることが好ましい

これらの結合反応を迅速に行うには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種も
しくは原子種であることが望ましい。
【0013】
よって成膜法としては化学的気相蒸着法(CVD法)が望ましい。これにより、透明樹
脂層(B)の表面と、窒化珪素や酸化窒化珪素などの珪素を含有する化学的に活性な分子
種が速やかに反応することにより、無機薄膜層の表面の平滑性が改良され、孔を少なくす
ることができるものと予想される。
【0014】
膜の製造方法
本発明においては、予め基材層に成形された膜を熱処理してガスバリア性膜が製造され
る。熱処理に供される膜は、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価
金属塩溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得
られる。
また、熱処理に供される膜は、基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と
多価金属化合物とを含む溶液を塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させ
た後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することによっても得られる。
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液を調整する方法としては、予め前記不飽和カ
ルボン酸と前記多価金属化合物とを反応させて、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩と
した後、当該不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を水等の溶媒に溶かして溶液としてもよ
いし、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物を溶かして多価金属
塩の溶液としてもよい。
本発明のガスバリア性膜の製造方法として、直接溶媒に前記不飽和カルボン酸化合物と
前記多価金属化合物を溶かす場合、即ち、前記不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化
合物とを含む溶液を用いる場合は、前記不飽和カルボン酸化合物に対して、0.3化学当
量を越える量の前記多価金属化合物を添加することが好ましい。多価金属化合物の添加量
が0.3化学当量以下の混合溶液を用いた場合は、遊離のカルボン酸基の含有量が多いガ
スバリア性膜となり、結果として、ガスバリア性が低い膜となる虞がある。また、多価金
属化合物の添加量の上限はとくに限定はされないが、多価金属化合物の添加量が1化学当
量を越えると未反応の多価金属化合物が多くなるので、通常、5化学当量以下、好ましく
は2化学当量以下で十分である。
また、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物との混合溶液を用いる場合は、通常、
不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶媒に溶かしている間に、不飽和カルボン
酸化合物の多価金属塩が形成されるが、多価金属塩の形成を確実にするために、1分以上
混合しておくことが好ましい。
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を調整するために用いる溶媒は、水、メチ
ルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール若しくは
アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒が挙げられるが、
水が最も好ましい。
基材層に不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を塗工する方法としては、当該溶
液を基材層表面に塗布する方法、当該溶液に基材層を浸漬する方法、当該溶液を基材層表
面に噴霧する方法等種々公知の塗工方法を採り得る。
基材層に不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を塗布する方法としては、例えば
、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグ
ラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、ト
ップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィード
リバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、
バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等種々公知の塗工機を用いて、不飽
和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液中(固形分)の量で0.05〜10g/m、好ま
しくは0.1〜5g/mとなるよう塗布すればよい。
【0015】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を溶解する際若しくは不飽和カルボン酸化合物と
多価金属化合物とを溶解する際には、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリ
ル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、エチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート
、ジエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール・ジ(メタ
)アクリレート、PEG#200・ジ(メタ)アクリレート、PEG#400・ジ(メタ
)アクリレート、PEG#600・ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール・
ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール・ジ(メタ)アクリレートなどのグリ
コール類のアクリル酸二価エステル、その他の不飽和カルボン酸(ジ)エステル化合物、
酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物等の単量体あるいは低分子量の化合物、ポリビニ
ルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニ
ルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メ
チルセルロース等の水溶性重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸共
重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン
等の高分子量の化合物等を添加してもよい。
また、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を溶解する際若しくは不飽和カルボン酸化合
物と多価金属化合物とを溶解する際には、本発明の目的を損なわない範囲で、滑剤、スリ
ップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充
填剤等の各種添加剤を添加しておいてもよいし、基材層との濡れ性を改良するために、各
種界面活性剤等を添加しておいてもよい。
【0016】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液を重合するには、種々の公知の方法、具体的
には電離性放射線の照射または加熱などによる方法があげられる。
電離放射線を使用する場合は、波長領域が0.0001〜800nmの範囲のエネルギ
ー線であれば特に限定されないが、かかるエネルギー線としては、α線、β線、γ線、X
線、可視光線、紫外線、電子線等が上げられる。これらの電離放射線の中でも、波長領域
が400〜800nmの範囲の可視光線、50〜400nmの範囲の紫外線および0.0
1〜0.002nmの範囲の電子線が、取り扱いが容易で、装置も普及しているので好ま
しい。
電離放射線として可視光線および紫外線を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物多価
金属塩と多価金属塩の混合溶液に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始
剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−
1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;
ダロキュアー 1173)、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルケトン(チバ・
スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 184)、ビス(2,4,
6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ
・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー819)、1−[4−(2−ヒドロキシエト
キシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・ス
ペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)、α―ヒドロキシ
ケトン、アシルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン及び2,4,6−トリ
メチルベンゾフェノンの混合物(ランベルティ・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名
;エサキュアー KT046)、エサキュアー KT55(ランベルティー・ケミカル・
スペシャルティ)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイ
ド(ラムソン・ファイア・ケミカル社製 商品名;スピードキュアTPO)の商品名で製
造・販売されているラジカル重合開始剤を挙げることができる。さらに、重合度または重
合速度を向上させるため重合促進剤を添加することができ、例えば、N、N-ジメチルア
ミノ-エチル-(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-モルフォリン等が挙げら
れる。
【0017】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合させる際は、溶液が水等の溶媒を含んだ状態
で重合させてもよいし、一部乾燥させた後に重合させてもよいが、溶液を塗布後直ぐに重
合させた場合は、金属塩が重合する際に溶媒の蒸発が多いためか、得られる共重合体層が
白化する場合がある。一方、溶媒(水分)が少なくなるとともに、不飽和カルボン酸化合
物多価金属塩が結晶として析出する場合があり、かかる状態で重合を行うと得られる共重
合体層の形成が不十分になり、共重合体層が白化を起こしたりしてガスバリア性が安定し
ない虞がある。したがって、塗布した不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合させる際
には、適度な水分を含んだ状態で重合することが好ましい。
また、塗工液の乾燥は溶媒を完全に除去するのではなく、塗工液中に適度の溶媒(水溶
液を用いる場合は水分)、好ましくは20〜60重量%の範囲で溶媒を含む状態で電子線
を照射することが好ましい。塗工液に含まれる溶媒が20重量%未満の場合は得られる膜
の酸素バリア性が低下する虞があり、塗工液に含まれる溶媒が60重量%以上の場合は得
られる膜の酸素バリア性や外観、特に透明性が低下する虞がある。
また、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を溶媒の存在下で電離放射線を照射する際の
温度は、溶媒が沸騰する温度でない限りとくに限定はされないが、通常、60?以下、と
くに常温〜50?の範囲で行うことが好ましい。電離放射線を照射する際の温度を高くし
過ぎると、溶媒の蒸発が速くなり、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の結晶が析出し易
くなり、一方、温度が低すぎる場合は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合させた
後に溶媒を乾燥する時間が長くなり、膜の製造ライン等を長くする必要がある。
【0018】
ガスバリア性膜
上記の重合によって得られた膜を熱処理することによって本発明のガスバリア性膜が得
られる。
熱処理は、膜を通常60〜350?、好ましくは100〜300?、さらに好ましくは
150〜250?の温度範囲で行うことが望ましく、不活性ガス雰囲気下とすることが望
ましい。また、圧力は特に限定されず、加圧下、減圧下、常圧下のいずれでもよい。加熱
処理時間は、通常30秒から90分程度であり、中でも1分から70分が好適であり、特
に5分から60分が好適である。
熱処理に供される膜は、通常基材層に塗布されたまま熱処理されるが、必要に応じて基
材層から剥離して熱処理してもよい。
本発明においては、重合された膜を引き続き連続的に熱処理してもよく、また膜を一旦常
温にもどした後に、熱処理に供してもよい。通常は重合により膜を形成する工程と熱処理
の工程を連続させることが製造効率上望ましい。
熱処理に供される膜は、重合により膜の構造が確定しているものと推定される。これを
更に熱処理することにより、脱水および膜構造が部分的な再配置によってより安定化され
た膜となり、ガスバリア性がより安定するものと推定される。
本発明の製造方法で得られるガスバリア性膜は、通常、赤外線吸収スペクトルにおける
1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度Aと1520cm−1
付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)が0.2
5未満、好ましくは0.20未満の範囲にある不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の重
合体からなる。
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の重合体からなるガスバリア性膜は、カルボン酸
基と多価金属がイオン架橋してなるカルボキシレートイオンと遊離のカルボン酸基が存在
し、夫々、赤外線スペクトルで、遊離のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸収が1700
cm−1付近にあり、カルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸収が1520cm
付近にある。
【0019】
したがって、本発明の製造方法で得られるガスバリア性膜において、(A/A)が0
.25未満であるということは、遊離のカルボン酸基が存在しないか、少ないことを示し
ており、0.25を越える膜は、遊離のカルボン酸基の含有量が多く、耐ガスバリア性が
改良されない虞がある。
本発明における1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度A
赤外線吸収スペクトルにおける1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=
Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)は、ガスバリア性膜(ガスバリア性積層体)から
1cm×3cmの測定用サンプルを切り出し、その表面(不飽和カルボン酸化合物多価金
属塩重合体層)の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)に得、以下の手
順で、先ず、吸光度A及び吸光度Aを求めた。
1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度A:赤外線吸収スペ
クトルの1660cm−1と1760cm−1の吸光度とを直線(N)で結び、1660
〜1760cm−1間の最大吸光度(1700cm−1付近)から垂直に直線(O)を下
ろし、当該直線(O)と直線(N)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長さ)を吸
光度Aとした。
1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度A:赤外線
吸収スペクトルの1480cm−1と1630cm−1の吸光度とを直線(L)で結び、
1480〜1630cm−1間の最大吸光度(1520cm−1付近)から垂直に直線(
M)を下ろし、当該直線(M)と直線(L)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長
さ)を吸光度Aとした。尚、最大吸光度(1520cm−1付近)は、対イオンの金属種
によりピーク位置が変化することがあり、例えば、カルシウムでは1520cm−1付近
、亜鉛では1520cm−1付近、マグネシウムでは1540cm−1付近及びナトリウ
ム(Na)では1540cm−1付近である。
次いで、上記方法で求めた吸光度A及び吸光度Aから比(A/A)を求めた。
なお、本発明のおける赤外線スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、日
本分光社製FT−IR350装置を用い、KRS−5(Thallium Bromid
e−Iodide)結晶を装着して、入射角45度、室温、分解能4cm-1、積算回数1
50回の条件で行った。
【0020】
本発明の製造方法により得られるガスバリア性膜は、基材層から剥離してガスバリア性
膜単層としても用い得るが、通常は、基材層にガスバリア性膜を積層した積層体として用
いる。かかるガスバリア性積層体は、基材層の形状により、また用途に応じ、積層フィル
ム、積層シート、トレー、カップ、中空体(ボトル)等の種々の形状を取り得る。
【0021】
本発明の製造方法により得られるガスバリア性積層体は、積層体が積層フィルムであれ
ば、その少なくとも片面に、熱融着層を積層することにより、ヒートシール可能な包装用
フィルムとして好適な積層フィルムが得られる。かかる熱融着層としては、通常熱融着層
として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン
−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチ
レン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低
結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1
ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独
若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メ
タ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から
得られる層である。
中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高
密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒ
ートシール強度に優れるので好ましい。
【実施例】
【0022】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り
これらの実施例に制約されるものではない。
【0023】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
【0024】
<評価方法>
(1) 水蒸気透過度[g/(m・day)]:
多層フィルムを折り返し、2方をヒートシールして(線状低密度ポリエチレンフィルム
面)袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより
、表面積が0.01mになるように袋を作成し、これを40?、90%R.H.の条件
で3日間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
尚、実施例8から25および参考例1から10においては、3日後と10日後の重量差
で水蒸気透過度を測定した。
【0025】
<溶液(X)の作製>
アクリル酸亜鉛(アクリル酸のZn塩)水溶液〔浅田化学社製、濃度30重量%(アク
リル酸成分:20重量%、Zn成分10重量%)〕と、メチルアルコールで25重量%に
希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒド
ロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製
商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲ
ン120)をモル分率でそれぞれ98.5%、1.2%、0.3%となるように混合し、
アクリル酸Zn塩溶液(X)からなる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩溶液を作製した

【0026】
実施例1
上記アクリル酸Zn塩溶液(X)を厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(ユ
ニチカ社製 商品名;エンブレットPET12)からなる基材フィルムのコロナ処理面に
、メイヤーバーで塗布量が固形分で3.5g/mになるように塗布し、塗工面を上にし
てステンレス板に固定し、直ちに紫外線照射装置(アイグラフィック社製 EYE GR
ANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、照度:180mW/cm2、積算光量
:180mJ/cmの条件で紫外線を照射して重合し、ガスバリア性膜を積層したガス
バリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムをオーブン中で200
?、60分間熱処理した。
次に、厚さ50μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製 商品名:T.U
.X. FCS)の片面に、ウレタン系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカ
ル社製 商品名:タケラックA310):12重量部、イソシアネート系硬化剤(三井武
田ケミカル社製 商品名:タケネートA3):1重量部及び酢酸エチル(関東化学社製)
:7重量部)を塗布・乾燥後、得られたガスバリア性積層フィルムのアクリル酸多価金属
塩重合体層(不飽和カルボン酸化合物多価金属塩重合体層)面を貼り合わせ(ドライラミ
ネート)し、多層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表1に示す。
【0027】
実施例2
熱処理条件を150?、60分間とした以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性
積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表1に示す。
【0028】
実施例3
熱処理条件を100?、60分間とした以外は、実施例1と同様にして、多層フィルム
を得た。
得られた多層フィルムの防湿性を表1に示す。
【0029】
実施例4
熱処理条件を150?、30分間とした以外は、実施例1と同様にして、多層フィルム
を得た。
得られた多層フィルムの防湿性を表1に示す。
【0030】
実施例5
紫外線照射装置に(フージョン社製 型式:CV−110Q−G、種類 F600V−
10)を用いて、照度:1760mW/cm2及び光量:560mJ/cm2の紫外線を
照射して重合し、ガスバリア性膜を積層したガスバリア性積層フィルムを得た以外は、実
施例1と同様にして、多層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表1に示す。
【0031】
実施例6
熱処理条件を150?、60分間とした以外は、実施例5と同様にして、多層フィルム
を得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表1に示す。
【0032】
実施例7
熱処理条件を100?、60分間とした以外は、実施例5と同様にして、ガスバリア性
積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表1に示す。
【0033】
【表1】

*注1 紫外線照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式EC
S 301G1)を用いて、紫外線を照射して重合した。
*注2 紫外線照射装置に(フージョン社製 型式:CV−110Q−G、種類 F60
0V−10)を用いて、紫外線を照射して重合した。
【0034】
表1から分かるように、基材層に塗工した不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を
重合して得られる膜を熱処理したガスバリア性積層フィルム(実施例1〜7)は、酸素バ
リア性に優れていることが分かる。

実施例 8〜25および参考例1〜5
〈基材の調製〉
基材1 厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材のコロナ処理面に蒸着装置により、酸化ケイ素を蒸着し、反応ガスとして酸素を導入し、20ナノメートルの薄膜を積層(SiO膜)した基材

基材2 厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材のコロナ処理面に蒸着装置により、アルミを蒸着し、反応ガスとして酸素を導入し、10ナノメートルの薄膜を積層(AlO膜)した基材

基材3 厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名
;エンブレットS−50)からなる基材のコロナ処理面にRFマグネトロンスパッタリング装置により、Siターゲットを使用し、反応ガスとして窒素を導入し、30ナノメートルの薄膜を積層(SiN膜)した基材

基材4 基材3の調製において、導入する窒素ガスを酸素ガスとして、SiO膜とする以外は同様にして調製した。

基材5 厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名
;エンブレットS−50)からなる基材のコロナ処理面にDCマグネトロンスパッタリング装置により、ITOターゲットを使用し、反応ガスとして酸素を導入し、30ナノメートルの薄膜を積層(ITO膜)した基材

基材6 厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名
;エンブレットS−50)からなる基材のコロナ処理面に、エポキシアクリレート系UV
硬化塗材(日本化工塗料社製 商品名;FA−18)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバ
ーを用いて1.2g/m2(固形分)になるようにコートし、100℃、15秒間乾燥し
た。続いて、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAG
E 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm、積算光量:1
17mJ/cmの条件で紫外線を照射してコート膜の重合を行いコートフィルムを得た

さらに、コートフィルムのコート面に、DCマグネトロンスパッタリング装置により、
ITOターゲットを使用し、反応ガスとして酸素を導入し、30ナノメートルの薄膜を積
層(ITO膜)した基材

基材7 ポリエチレンナフタレートのフィルム(厚さ100ミクロン、帝人社製 Q6
5)からなる基材の平滑面に、DCマグネトロンスパッタリング装置により、ITOターゲットを使用し、反応ガスとして酸素を導入し、30ナノメートルの薄膜を積層(ITO膜)した基材

基材8 ポリエチレンナフタレートのフィルム(厚さ100ミクロン、帝人社製 Q6
5)からなる平滑面に、RFマグネトロンスパッタリング装置により、Siターゲットを使用し、反応ガスとして窒素を導入し、30ナノメートルの薄膜を積層(SiN膜)した基材

基材9 ポリエチレンナフタレートのフィルム(厚さ100ミクロン、帝人社製 Q6
5)からなる平滑面に、CatCVD法により厚さ50nmのSiN膜を形成させた基材。

〈塗工液の作製〉
溶液(イ)の作製
アクリル酸亜鉛(アクリル酸のZn塩)水溶液(浅田化学社製、濃度30重量%(アク
リル酸成分:20重量%、Zn成分10重量%)と、メチルアルコールで25重量%に希
釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロ
キシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製
商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン
120)をモル分率でそれぞれ98.5%、1.2%、0.3%となるように混合し、ア
クリル酸Zn塩溶液を作製した。

溶液(ロ)の作製
溶液(イ)に、シリル変性PVA(クラレ社製 商品名:R1130)の10%水溶液
を、アクリル酸亜鉛とシリル変性PVAの固形分比率が87.5%、12.5%になるよ
うに混合し、溶液(ロ)を作製した。

〈実施例8のガスバリア性積層フィルムの調製〉
上記の基材の無機膜形成面に、溶液(イ)をメイヤーバーで塗布量が固形分で2.5g
/mになるように塗布し、塗工面を上にしてステンレス板に固定し、直ちに紫外線照射
装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を
用いて、照度:180mW/cm2、積算光量:180mJ/cmの条件で紫外線を照射
して重合し、ガスバリア性膜を積層したガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガス
バリア性積層フィルムをオーブン中で200℃、60分間熱処理した。
次に、厚さ50μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製 商品名:T.U
.X. FCS)の片面に、ウレタン系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカ
ル社製 商品名:タケラックA310):12重量部、イソシアネート系硬化剤(三井武
田ケミカル社製 商品名:タケネートA3):1重量部及び酢酸エチル(関東化学社製)
:7重量部)を塗布・乾燥後、得られたガスバリア性積層フィルムのアクリル酸多価金属
塩重合体層(不飽和カルボン酸化合物多価金属塩重合体層)面を貼り合わせ(ドライラミ
ネート)、多層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの防湿性を表2に示す。

〈実施例 9ないし25、参考例1ないし5のガスバリア性積層フィルムの調製〉
実施例8において、基材、塗工液、塗布量、熱処理の条件を表2に示す条件とする以外
は同様に基材を調製した。
評価結果を表2に示す。なお、表2中の表示は以下による。

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のバリアフィルムを利用することにより、液晶表示素子、有機EL等の素子、面
状発光体、光ディバイス、太陽電池等を収納し、ヒートシールにより封印することができ
る。
すなわち、ガスバリアフィルムがヒートシール性熱可塑性樹脂層を利用して他のバリア
材にヒートシールされて形成された空間に、EL等の素子や太陽電池を収納して密封する
ことができる。
他のバリア材は、本発明のヒートシール性熱可塑性樹脂層と熱融着可能な従来公知の材
料がその表面を構成するものであれば、特に限定されない。
また、重ね合わされた2枚のガスバリアフィルム、または折りたたまれたガスバリアフィ
ルムの間に有機EL等の素子や太陽電池等を収納し、相対するヒートシール性熱可塑性樹
脂層の部分をヒートシールして密封することができる。
【0036】
本発明の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体からなるガスバリア性膜及びかか
るガスバリア性を形成してなるガスバリア性積層体は、耐酸素透過性(ガスバリア性)に
優れているので、かかる特徴を活かして、包装材料、特に高いガスバリア性が要求される
内容物の食品包装材料を始め、医療用途、工業用途等さまざまな包装材料としても好適に
使用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗工した後、
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、さらに熱処理
することを特徴とするガスバリア性膜の製造方法。
【請求項2】
基材層に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を
塗工し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物
の多価金属塩を重合することにより得られる膜を、さらに熱処理することを特徴とするガ
スバリア性膜の製造方法。
【請求項3】
不飽和カルボン酸化合物が、不飽和カルボン酸の単量体若しくは重合度が10以下の重
合体である請求項1または2項記載のガスバリア性膜の製造方法。
【請求項4】
多価金属化合物が、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物に対し0.3化学当量
を越えて含んでなる請求項2記載のガスバリア性膜の製造方法。
【請求項5】
不飽和カルボン酸化合物が、(メタ)アクリル酸である請求項1〜4の何れかに記載の
ガスバリア性膜の製造方法。
【請求項6】
溶液が水溶液である請求項1または2記載のガスバリア性膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の製造方法により得られ得るガスバリア性膜。
【請求項8】
ガスバリア性膜が、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸
基のνC=Oに基づく吸光度Aと1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのν
C=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)が0.25未満である請求項7記載のガスバ
リア性膜。
【請求項9】
無機薄膜の層を有する基材からなることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性膜。


【公開番号】特開2007−152337(P2007−152337A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166721(P2006−166721)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】