説明

ガスバリア積層フィルム

【課題】1g/m/day以下の高い水蒸気透過度を有する透明なガスバリア積層フィルムを提供する
【解決手段】樹脂基材11とプライマー層12と蒸着膜層13とからなり、樹脂基材11の片面にプライマー層12と蒸着膜層13とがこの順に積層されたガスバリア積層フィルム10であり、プライマー層12が脂環構造を有するモノマーを10モル%以上80モル%以下の割合で重合させて得られたアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物によって形成されたものであり、蒸着膜層13が金属珪素と二酸化珪素とを含有した蒸着材料を蒸着させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物をガスから守るガスバリア積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガスバリアフィルムは、空気中の湿気、酸素、炭酸ガスなどのガスから対象物を守り、品質・性能の劣化を抑制する役割を有しており、食品・医薬品などの包装材料をはじめ、太陽電池バックシートや電子ペーパー、有機ELなどのエレクトロニクス分野でのガラスやアルミ箔などの代替としての採用も検討されている。
【0003】
現在、バリアフィルムの主な種類は、エチレンビニルアルコール共重合樹脂などの単体フィルム、共押出多層ナイロン(Ny)フィルム、塩化ビニリデン(PVDC)コートやポリビニルアルコール(PVA)コートのウェットコートフィルムなどがある。しかしながら、これらの種類のフィルムは、ガスバリア性が高いものでも水蒸気透過度3g/m/day程度であり、より高度なガスバリア性を要求される包装材や電子部材としての利用は難しい。従って、より高度なバリア性を要求される場合は、アルミニウムなどの金属箔を積層せざるを得なかった。
【0004】
しかしながら、金属箔を積層したフィルムを用いた包装材では、内容物が見えない、内容物検査に金属探知機を使用できない、などの問題があった。
【0005】
これらの問題を克服するために、例えば、特許文献1では、高分子樹脂基材上に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素などの無機化合物を蒸着した透明なガスバリア性フィルムについて提案がなされている。
【0006】
さらに、蒸着層の樹脂基材への密着性を向上させるために、樹脂基材と蒸着層の間に、プライマー層を設けた構造のものが多く提案されている。これらのプライマー層の材料には、アクリル系の樹脂を用いることが多く、特に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応複合物あるいはそれにシランカップリング剤が添加されたものをプライマー層として用いることによりボイル殺菌やレトルト殺菌後も物性の劣化がなく、デラミネーション等の発生がない高い耐ボイル性、耐レトルト性を有するガスバリア性フィルムを実現している(例えば、特許文献2〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−28017号公報
【特許文献2】特開2004−106443号公報
【特許文献3】特開2007−69456号公報
【特許文献4】特開2002−36419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらのガスバリア性フィルムの水蒸気透過度は、樹脂基材/プライマー層/蒸着層の3層構成で1〜2g/m/dayに留まることが分かっており、1g/m/day以下の高い水蒸気バリア性が要求される電子部品の包装材や太陽電池のバックシートなどへの利用は難しい。
【0009】
そこで、本発明は、1g/m/day以下の高い水蒸気透過度を有する透明なガスバリア積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、請求項1に記載の発明は、樹脂基材とプライマー層と蒸着膜層とからなり、前記樹脂基材の少なくとも片面に前記プライマー層と前記蒸着膜層とがこの順に積層されたガスバリア積層フィルムであって、前記プライマー層が、脂環構造を有するモノマーを10モル%以上80モル%以下の割合で重合させて得られたアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物によって形成されたものであり、前記蒸着膜層が、金属珪素と二酸化珪素とを含有した蒸着材料を蒸着させたものであることを特徴とするガスバリア積層フィルムとしたものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記蒸着膜層が、さらに金属錫または酸化錫を含有したものであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルムとしたものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記脂環構造を有するモノマーの一部または全部が、シクロヘキシル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア積層フィルムとしたものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記蒸着膜層の表面に、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物とを含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリア性被覆層が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガスバリア積層フィルムとしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、脂環構造を有するモノマーを10モル%以上80モル%以下の割合で重合させて得られたアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物によって形成されたプライマー層と、金属珪素と二酸化珪素とを含有した蒸着材料を反応蒸着によって蒸着した蒸着膜層とを組み合わせることにより、樹脂基材/プライマー層/蒸着層の3層構成で、1g/m/day以下の高い水蒸気バリア性を有する透明なガスバリア積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のガスバリア積層フィルムの一実施形態における断面図である。
【図2】本発明のガスバリア積層フィルムの一実施形態における断面図である。
【図3】本発明のガスバリア積層フィルムの一実施形態における両面ラミネート構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のガスバリア積層フィルムの実施形態を図面に沿って説明する。図1に示すように、本発明のガスバリア積層フィルム10は、樹脂基材11とプライマー層12と蒸着膜層13とからなり、樹脂基材11の片面に、プライマー層12と蒸着膜層13とを順次積層した構成となっている。本発明のガスバリア積層フィルムは、より高い水蒸気バリア性を達成するために、樹脂基材11の両面にプライマー層12と蒸着膜層13とを順次積層した構成であってもよい。
【0017】
樹脂基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルムなどがある。樹脂基材11の厚みは、特に制限を設けないが、実用上6μm以上200μm以下程度がよく、好ましくは12μm以上125μm以下、さらに好ましくは12μm以上25μm以下がよい。
【0018】
また、樹脂基材11の他の層を積層する側の表面には、密着性を高めるため、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理的処理や、酸やアルカリによる薬液処理などの化学的処理を施してもよい。
【0019】
プライマー層12は、樹脂基材11上に設けられ、樹脂基材11と蒸着膜層13との密着性を高め、ボイル殺菌やレトルト殺菌などの各種殺菌処理や、長期屋外設置による蒸着層の剥離発生を防止するために設けられる。
【0020】
プライマー層12は、アクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物を用いて形成されることにより、樹脂基材11と蒸着膜層13との密着性を高めることができる。
【0021】
アクリルポリオールとは、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、又は(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物などのうち、末端にヒドロキシル基を有するもので、イソシアネート系化合物のイソシアネート基と反応するものである。
【0022】
末端にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどがある。
【0023】
末端にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどの末端にアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、(メタ)アクリル酸などの末端にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの末端に芳香環や環状構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーがある。(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外では、スチレンモノマー、シクロヘキシルマレイミドモノマー、フェニルマレイミドモノマーなどがある。上記のその他のモノマーは、それ自身が末端にヒドロキシル基を有していてもよい。
【0024】
アクリルポリオールは、特に、脂環構造を有するモノマーを10モル%以上80モル%以下の割合で重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。脂環構造を有するモノマーを10モル%以上80モル%以下の割合で重合させて得られるアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物を用いてプライマー層12を形成することにより、より高い水蒸気バリア性を有するガスバリア積層フィルムを得ることができる。
【0025】
脂環構造を有するモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルマレイミドモノマーなどがある。
【0026】
脂環構造を有するアクリルポリオールは、イソシアネート系化合物と反応硬化後に、脂環構造同士の相互作用により規則的な構造を構築し、硬いプライマー層12を形成することから、蒸着膜層13がきれいに積層され、これにより得られたガスバリア積層フィルムは、より高いバリア性を発現する。
【0027】
特に、脂環構造を有するモノマーの一部または全部がシクロヘキシル(メタ)アクリレートであることにより、安定した規則構造を有するプライマー層12を形成することが可能となり、これにより得られたガスバリア積層フィルムは、さらに高いバリア性を発現する。なお、脂環構造を有するモノマーの一部にでもシクロヘキシル(メタ)アクリレートを用いれば、上記の効果を発現する。
【0028】
高いバリア性を発現するためには、脂環構造を有するモノマーが10モル%以上80モル%以下の割合で重合させて得られたアクリルポリオールを用いる必要がある。重合割合が10モル%よりも小さいと、プライマー層12の硬さが不十分となり、蒸着膜層13がきれいに積層されず、水蒸気バリア性の発現も不十分となる。一方、重合割合が80モル%よりも大きいと、プライマー層12が硬くなり過ぎてしまうために、蒸着膜層13の樹脂基材11への密着が悪くなってしまう。
【0029】
脂環構造を有するモノマーと共重合させるモノマーとしては、上記の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーやその他のモノマーから1種類あるいは2種類以上任意に選択してよいが、水酸基価が20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下になるように調整することが望ましい。水酸基価が20mgKOH/gよりも小さいと、イソシアネート系硬化剤との反応量が少なく、蒸着膜層13の樹脂基材11への密着力が十分発現しない。一方、水酸基価が300mgKOH/gよりも大きいと、イソシアネート系化合物との反応量が多くなり過ぎてプライマー層12の膜収縮が大きくなり、蒸着層13がきれいに積層されず、十分なバリア性を示さない。
【0030】
脂環構造を有するモノマーは、イソシアネート系化合物のイソシアネート基と反応させるために、それ自身が末端にヒドロキシル基を有していてもよい。
【0031】
水酸基価(mgKOH/g)とは、アクリルポリオール中の水酸基量の指標であり、アクリルポリオール1g中の水酸基をアセチル化するために必要な水酸化カリウムのmg数を示す。
【0032】
アクリルポリオールの分子量は特に規定しないが、具体的には、3000以上200000以下、好ましくは5000以上100000以下、さらに好ましくは5000以上40000以下である。
【0033】
イソシアネート系化合物とは、その分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものである。例えば、モノマー系イソシアネートとして、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂肪族系イソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香脂肪族系イソシアネートなどがある。また、これらのモノマー系イソシアネートの重合体あるいは誘導体も使用可能である。例えば、3量体のヌレート型、1,1,1−トリメチロールプロパンなどと反応させたアダクト型、ビウレットと反応させたビウレット型などがある。
【0034】
イソシアネート系化合物は、上記のイソシアネート系化合物あるいはその重合体、誘導体から任意に選択してよく、1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
プライマー層12は、上記のアクリルポリオールと上記のイソシアネート系化合物との複合物と溶媒とからなる溶液を樹脂基材11上に塗工し、反応硬化させることにより形成される。用いられる溶媒としては、上記アクリルポリオール及びイソシアネート系化合物を溶解する溶媒であればよく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、アセトンなどが挙げられ、これらの溶媒を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
プライマー層12の形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
プライマー層12の膜厚は、0.1μm以上0.5μm以下が望ましく、好ましくは0.1μm以上0.3μm以下である。これよりも厚みが薄いと、樹脂基材11と蒸着膜層13との密着性が不十分となり、0.5μmよりも厚いと内部応力の影響が大きくなり、蒸着膜層13がきれいに積層されず、バリア性の発現が不十分となる問題がある。
【0038】
蒸着膜層13は、プライマー層12上に設けられ、フィルム全体にガスバリア性を付与するために設けられる。
【0039】
蒸着膜層13の材料には、金属珪素と二酸化珪素とを含有した蒸着材料を用いる。また、蒸着膜層13の材料には、さらに金属錫または酸化錫を含有した蒸着材料を用いることが好ましい。
【0040】
金属珪素と二酸化珪素とを含有した蒸着材料を蒸着させることで、フィルム全体に高いガスバリア性を付与することができる。さらに、金属珪素と二酸化珪素に金属錫または酸化錫を混合した蒸着材料を蒸着させることで、膜密度の高い蒸着膜層13が形成され、高い水蒸気バリア性を発現するとともに、脂環構造を有するモノマーを10モル%以上80モル%以下の割合で重合させて得られたアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物によって形成されたプライマー層13との相乗効果により、フィルム全体のガスバリア性をより高めることが可能となる。
【0041】
金属珪素と二酸化珪素は、元素比O/Siが1以上1.8以下になるように混合することか望ましく、好ましくは1.2以上1.7以下である。金属錫または酸化錫は、金属珪素と二酸化珪素の混合材料に対して1重量%以上50重量%以下混合することが望ましく、好ましくは1重量%以上40重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上30重量%以下である。
【0042】
蒸着膜層13の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法などの公知の方法を適宜用いてよいが、真空蒸着法が望ましい。また、蒸着膜層13の透明性を上げるために、蒸着材料を蒸着させる際に、蒸発した粒子と雰囲気中に導入した酸素ガスなどと反応させて蒸着させる反応蒸着をさせてもよい。酸素ガスやアルゴンガスとの反応蒸着を行うことにより、蒸着材料中の金属成分が酸化され、蒸着膜層13の透明性を向上させることができる。ガスを導入する際は、成膜室の圧力が2×10−1Pa以下にすることが望ましい。成膜室の圧力が2×10−1Paよりも大きくなってしまうと、蒸着膜層13がきれいに積層されず、水蒸気バリア性が低下してしまう。
【0043】
蒸着膜層13の膜厚は、0.005μm以上0.3μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.03μm以上0.05μm以下である。0.005μmを小さいと十分なバリア性が発現せず、また0.3μmを超えると脆く、クラックが発生しやすくなり、バリア性が発現しない問題が生じる。
【0044】
本発明のガスバリア積層フィルムは、図2に示すガスバリア積層フィルム20のように、図1のガスバリア積層フィルム10の蒸着膜層13の上に、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物とを含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリア性被覆層21が設けられていてもよい。
【0045】
ガスバリア性被覆層21は、硬く脆い蒸着膜層13を保護し、擦れや屈曲によるクラックの発生を防止するために設けられ、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物を含有した成分からなる。水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物とを含有するコーティング液を蒸着膜層13の上に塗工し、乾燥させることにより形成される。
【0046】
ガスバリア性被覆層21の形成方法としては、プライマー層12と同様に通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0047】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリビニルピロリドン樹脂(PVP)などを用いることができ、これらを単独あるいは複数組み合わせて用いてもよい。
【0048】
アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどを用いることができる。また、アルコキシシランの加水分解生成物としては、メタノールなどのアルコールにアルコキシシランを溶解し、その溶液に塩酸などの酸の水溶液を添加し、加水分解反応させることにより調製したものが挙げられる。
【0049】
また、蒸着膜層15との密着性を上げるために、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するもの、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するもの、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するもの、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するものなどが挙げられ、これらのシランカップリング剤を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0050】
本発明のガスバリア積層フィルムは、図3に示すガスバリア積層フィルム30のように、図2のガスバリア積層フィルム20の両面に、接着剤層31を介してラミネート樹脂層32を設けることで、より実用性の高い積層フィルムを提供できる。ラミネート樹脂層32は、ヒートシール性のあるシーラントフィルムを積層することで、袋状包装体などを形成する際の接着部に利用される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15μm以上200μm以下の範囲である。なお、接着剤層31を介してラミネート樹脂層32は、図2のガスバリア積層フィルム20の片面にのみ設けてもよい。
【0051】
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムを本発明のガスバリア積層フィルムの片面または両面に積層することで、液晶表示素子や、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネルで使用する透明伝導シートなどの封止材として用いることもできる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はこの形態に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
<プライマー層溶液の調液1〜4>
ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルメタクリレート(MMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)をモノマーとして共重合させて得られたアクリルポリオール(重量平均分子量10×10)を主剤とし、HDIヌレート型のイソシアネート系硬化剤を主剤のヒドロキシル基量に対して1当量配合したメチルエチルケトン5%溶液を調製した。なお、溶液1〜4に含まれる主剤の共重合比(モル%基準)とアクリルポリオールの水酸基価を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
<プライマー層溶液の塗工工程>
樹脂基材に、片面がコロナ処理された厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム(東レフィルム加工、P60)を使用し、コロナ処理面にグラビアコート機を用い上記プライマー層溶液を塗工、乾燥後の厚みが0.17μmのプライマー層を積層した。
【0056】
<蒸着膜層の積層工程>
元素比O/Siが1.5になるように金属珪素粉末及び二酸化珪素粉末を混合した材料に、金属錫粉末を20重量%混合した蒸着材料(A)、及び元素比O/Siが1.5になるように金属珪素粉末及び二酸化珪素粉末を混合した材料(B)を作製し、真空蒸着機を使用して、プライマー層の上に厚さ0.05μmの蒸着膜層を積層し、目的のガスバリア積層フィルムを作製した。
【0057】
<ガスバリア積層フィルムの水蒸気透過度の測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4のガスバリア積層フィルムについて、モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN−W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m/day)を測定した。
【0058】
<評価結果>
評価結果を表2に示す。実施例1〜6はいずれも水蒸気透過度が1g/m/day以下であった。それに対し、脂環構造を含有しないアクリルポリオールをプライマー層材料に用いた場合(比較例1及び2)、プライマー層を設けなかった場合(比較例3及び4)は、水蒸気透過度が1g/m/dayを上回る結果となった。
【0059】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のガスバリア積層フィルムは、食品、日用品、医薬品などの包装分野、及び電子機器関連部材などの分野において、高いガスバリア性が必要とされる場合に特に好適に利用が期待される。
【符号の説明】
【0061】
11・・・樹脂基材
12・・・プライマー層
13・・・蒸着膜層
21・・・ガスバリア性被覆層
31・・・接着剤層
32・・・ラミネート樹脂層
10、20、30・・・ガスバリア積層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材とプライマー層と蒸着膜層とからなり、前記樹脂基材の少なくとも片面に前記プライマー層と前記蒸着膜層とがこの順に積層されたガスバリア積層フィルムであって、
前記プライマー層が、脂環構造を有するモノマーを10モル%以上80モル%以下の割合で重合させて得られたアクリルポリオールとイソシアネート系化合物との複合物によって形成されたものであり、前記蒸着膜層が、金属珪素と二酸化珪素とを含有した蒸着材料を蒸着させたものであることを特徴とするガスバリア積層フィルム。
【請求項2】
前記蒸着膜層が、さらに金属錫または酸化錫を含有したものであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項3】
前記脂環構造を有するモノマーの一部または全部が、シクロヘキシル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア積層フィルム。
【請求項4】
前記蒸着膜層の表面に、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物とを含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリア性被覆層が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガスバリア積層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95111(P2013−95111A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242170(P2011−242170)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】