説明

ガスバリヤ性コーティング剤組成物及びそれを用いて得られる積層体

【課題】従来知られた塗工剤と比較した場合、同じガスバリヤ性であるときには、より良好な接着性(ラミネート強度)が得られるガスバリヤ性コーティング剤組成物及びそれを用いて得られる積層体を提供する。
【解決手段】ガスバリヤ性樹脂(A)、モンモリロナイト(B)、ハイドロタルサイト(C)及び水性溶媒(D)を必須成分として含有するガスバリヤ性コーティング剤組成物であって、該ガスバリヤ性コーティング剤組成物中に含まれる(A)、(B)及び(C)の三成分の合計含有量が1〜30質量%であり、且つ(A)/((B)+(C))の質量比率が(60/40)〜(90/10)、(C)/(B)の質量比率が(0.8/99.2)〜(25/75)であるガスバリヤ性コーティング剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリヤ性に優れ、且つ接着性(ラミネート強度)が良好であるガスバリヤ性コーティング剤組成物及びそれを用いて得られる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製包装容器は、食品や医療等の包装用途で広く利用されている。プラスチックは、軽量で成形性に優れる等の多くの優れた特徴を有しているが、反面、金属やガラスと比較して、基本的に酸素や水蒸気等のガスを遮断する能力(ガスバリヤ性)が低いために、酸化や吸湿により内容物の変質や腐敗が起こり易い等の欠点を有している。
【0003】
そこで、プラスチック製包装容器の場合は、基材層とは別に特定の材料からなるガスバリヤ層を設けて、酸素や水蒸気等のガスを遮断する方法が利用され、更にシール材を積層した複合ラミネートフィルムも用いられている。
【0004】
とりわけ、高いガスバリヤ性を有する材料として利用されてきたのは、印刷基材フィルム等に蒸着方式により積層される金属(例えば、特許文献1参照)や金属酸化物(例えば、特許文献2参照)である。しかしながら、これらの材料を利用した複合ラミネートフィルムは総じて高価である。また、透明性が要求される分野で利用できない問題も有している。
【0005】
そこで、例えば、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール等のガスバリヤ性樹脂と、モンモリロナイト等の無機層状化合物とを含むガスバリヤ性塗工剤(例えば、特許文献3参照)を用いてガスバリヤ層を設ける方法が検討されている。
【0006】
この様な方法では、無機層状化合物の含有量が多くなるほど、ガスバリヤ性が向上することが知られているが、通常、ガスバリヤ層内に無機層状化合物を含有させると、基材フィルムとの接着性が低下するため、それに伴って得られる複合ラミネートフィルムのラミネート強度も低下する。即ち、ガスバリヤ性と接着性(ラミネート強度)は相反する性能であり、上記の方法において、無機層状化合物の含有量を多くしてガスバリヤ性を向上させると、その分、接着性の低下が大きくなるという問題があった。
【特許文献1】特開平08−318591号公報
【特許文献2】特開昭62−179935号公報
【特許文献3】特開平06−093133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、ガスバリヤ性樹脂と無機層状化合物とを含むガスバリヤ性塗工剤において、ガスバリヤ性と接着性等の相反する性能をより高いレベルで維持することである。即ち、従来知られた塗工剤と比較した場合、同じガスバリヤ性であるときには、より良好な接着性(ラミネート強度)が得られるガスバリヤ性コーティング剤組成物及びそれを用いて得られる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ガスバリヤ性樹脂、モンモリロナイト及び水性溶媒を必須成分とするガスバリヤ性コーティング剤組成物中に、更にハイドロサルタイトを特定の比率で含有させることにより、上記課題を実現することを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0009】
即ち、本発明は、ガスバリヤ性樹脂(A)、モンモリロナイト(B)、ハイドロタルサイト(C)及び水性溶媒(D)を必須成分として含有するガスバリヤ性コーティング剤組成物であって、該ガスバリヤ性コーティング剤組成物中に含まれる(A)、(B)及び(C)の三成分の合計含有量が1〜30質量%であり、且つ(A)/((B)+(C))の質量比率が(60/40)〜(90/10)、(C)/(B)の質量比率が(0.8/99.2)〜(25/75)であることを特徴とするガスバリヤ性コーティング剤組成物に関する。
また、本発明は、上記ガスバリヤ性樹脂(A)が、エチレン−ビニルアルコール系共重合体である上記(1)項に記載のガスバリヤ性コーティング剤組成物に関する。
また、本発明は、上記ガスバリヤ性樹脂(A)が、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られ、エチレン成分の含有率が20〜60モル%であり、酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体である上記(1)又は(2)項に記載のガスバリヤ性コーティング剤組成物に関する。
また、本発明は、少なくともベースフィルム層、ガスバリヤ層、接着剤層、ヒートシール材層をこの順に設けた積層体であって、該ガスバリヤ層が上記(1)、(2)又は(3)項に記載のガスバリヤ性コーティング剤組成物から得られるものであることを特徴とする積層体に関する。
【0010】
以下、本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物及びそれから得られる積層体について詳細に説明する。
先ず、本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物について説明する。
本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物は、ガスバリヤ性樹脂(A)、モンモリロナイト(B)、ハイドロタルサイト(C)及び水性溶媒(D)を必須成分として含有するものである。
【0011】
<ガスバリヤ性樹脂>
本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物を構成するガスバリヤ性樹脂(A)としては、高結晶性樹脂であるポリビニルアルコール系重合体(PVA)及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル酸樹脂等のガスバリヤ性樹脂からなる群から選択される1種以上が使用できる。
【0012】
上記ガスバリヤ性樹脂(A)は、室温(23℃)において、樹脂膜厚を10μmとしたときの酸素透過度が100(cm/m・day・kPa)以下であるものが好ましい。
なお、上記「室温において、樹脂膜厚を10μmとした時の酸素透過度が100(cm/m・day・kPa)以下である」とは、JIS K7126 B法に準拠して、酸素透過率測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100)を用いて23℃、0%RH(相対湿度)の雰囲気下で測定した値が100(cm/m・day・kPa)以下であることを意味する。
【0013】
なかでも、高いガスバリヤ性が得られる点、後記する接着剤層との接着性の点等から、好ましくは、ポリビニルアルコール系重合体又はエチレン−ビニルアルコール系共重合体を、特に好ましくは、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を使用できる。
【0014】
本発明において用いることができるポリビニルアルコール系重合体としては、ポリビニルアルコール、その誘導体及び変性物のいずれであってもよく、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記ポリビニルアルコール系重合体としては、重合度は好ましくは100〜5000、より好ましくは500〜3000、また、ケン化度は好ましくは60モル%以上、より好ましくは75モル%以上である。上記ポリビニルアルコールの誘導体としては、水酸基の40モル%程度までがアセタール化されているポリビニルアルコール誘導体等を挙げることができ、上記ポリビニルアルコールの変性物としては、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体等を共重合して得られるポリビニルアルコール変性物等を挙げることができる。
【0015】
なお、ポリビニルアルコール系重合体は、乾燥状態でのガスバリヤ性が非常に高いという利点がある反面、高湿度下でのガスバリヤ性の低下の度合いがエチレン−ビニルアルコール系共重合体より大きい欠点を有する。
【0016】
本発明において用いることができるエチレン−ビニルアルコール系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られるものが使用できる。
上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られるものの具体例としては、エチレン及び酢酸ビニルを共重合して得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるもの、並びに、エチレン及び酢酸ビニルとともに、その他の単量体を共重合して得られるエチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られるものが挙げられる。
【0017】
ガスバリヤ層を設けるための材料としては、エチレン−酢酸ビニル系共重合体の共重合前の単量体全体におけるエチレンの比率が20〜60モル%であることが好ましい。エチレン比率が20モル%未満であると、高湿度下におけるガスバリヤ性が低下し、一方、エチレン比率が60モル%を超えると、全般に渡ってガスバリヤ性が低下する傾向がある。また、上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%以上のものが好ましく、95モル%未満ではガスバリヤ性や耐油性が不充分になる傾向がある。
【0018】
上記エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、過酸化物等により処理して分子鎖切断して低分子量化したものが、溶剤中での溶解安定性が良好となるという点でより好ましい。
上記エチレン−ビニルアルコール系共重合体のその他の特性値としては、例えば、特開平05−295119号公報の請求の範囲に記載されているそれぞれの数値を有することが好ましく、このような特性値を有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、後述の水と、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類との混合系溶媒中に溶解させてガスバリヤ性コーティング剤組成物を調製することが容易となるという点からも好適なガスバリヤ性樹脂といえるものである。
【0019】
<モンモリロナイト>
本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物を構成するモンモリロナイト(B)としては、従来からガススバリヤ剤に使用されている公知のものが使用できる。
例えば、一般式:(X,Y)2〜310(OH)・mHO・(Wω)(式中、Xは、Al、FeIII、CrIIIを表す。Yは、Mg、FeII、MnII、Ni、Zn、Liを表す。Zは、Si、Alを表す。Wは、K、Na、Caを表す。HOは、層間水を表す。)で示されるモンモリロン石群鉱物を使用することができる。これらのなかでも、WはNaであるものが水性媒体中でへき開する点から好ましい。
【0020】
上記モンモリロナイト(B)として、具体的には、モンモリロン石、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アミルニアンバンデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト等が挙げられる。
【0021】
<ハイドロタルサイト>
本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物は、必須成分としてハイドロタルサイト(C)が用いられる。ガスバリヤ層内に、ガスバリヤ性樹脂とモンモリロナイト等の無機層状化合物とが使用された場合、ガスバリヤ性と接着性(ラミネート強度)が相反する性能であることから、両性能を両立することは極めて困難である。これに対し、本発明は、ガスバリヤ性樹脂及びモンモリロナイトに加えて、更にハイドロタルサイトが使用されているため、従来困難とされてきたガスバリヤ性と接着性(ラミネート強度)の両立が可能である。
【0022】
本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物を構成するハイドロタルサイト(C)は、従来から公知のものが使用できる。
例えば、ハイドロタルサイト(層状複水酸化物)としては、一般式:〔M2+1−x3+(OH)x+〔An−x/n・yHO〕x−で表されるものからなっており、プラスに荷電した基本層[M2+1−X3+(OH)]の層間に内包されたアニオン及び結晶水等を中間層に内包する層状化合物を挙げることができる。
【0023】
上記ハイドロタルサイト(層状複水酸化物)における基本層中の2価金属としては、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等、3価金属としては、Al、Fe、Cr、In等を挙げることができる。また、層間に内包される物質としては、OH、F、Cl、NO、CO2−、V10286−、Fe(CN)4−、CHCOO等を挙げることができる。
【0024】
上記ハイドロタルサイト(C)は、水性媒体中で層間で容易に剥離するものが好ましく、例えば、脂肪酸炭素数が1〜5の脂肪族カルボン酸金属塩を内包させたことにより得られるハイドロタルサイト等が好適に使用できる。
【0025】
このようなハイドロタルサイトは、水性媒体(水や水を含有する水溶性溶剤)中に入れた場合、層間で容易に剥離、分散し、ゾル化する。水溶性溶剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、それらの混合溶剤を挙げることができる。
【0026】
上述した水性媒体中で層間で容易に剥離するハイドロタルサイトとしては、下記一般式で表される層状複水酸化物が好適に使用される。
一般式:〔M2+1−x3+(OH)〕〔G・yHO〕
(式中、M2+は、Mg、Ca、Zn、Co、Ni、Cu、Mn又はFeの2価金属イオンを表す。M3+は、Ce、Al、Fe、Cr、Co又はInの3価金属イオンを表す。xは、0.2≦x≦0.33の範囲内を表す。Gは、炭素数1〜5の飽和脂肪族モノカルボン酸のCa、Mg、Zn、Ni、Cu、Co、Mn、Al、Fe、Cr又はCe塩を表す。yは、0より大きい実数を表す。)
【0027】
上記2価金属は、Mg、Znが好ましく、Mgが特に好ましい。上記3価金属は、Ce、Alが好ましく、Alが特に好ましい。即ち、本発明では、2価金属がMgで、かつ3価金属がAlであるものが最も好ましい。これらの金属は、1種を用いても良いし、2種以上を用いても良い。
上記飽和脂肪族モノカルボン酸塩(G)は、脂肪酸炭素数1〜5のものを用いることができ、炭素数2、即ち酢酸金属塩が特に好ましい。
【0028】
上記水性媒体中で層間で容易に剥離するハイドロタルサイトの製造方法には、共沈法、イオン交換法、再構築法等が挙げられるが、再構築法が好ましい。
共沈法では、先ず脂肪族カルボン酸金属塩水溶液を調整する。この水溶液に対して、例えばMg(NO等の2価金属の塩と、Al(NO等の3価金属の塩との混合水溶液を滴下する。滴下中は、pH6〜10に調整し、その後熟成して、固体生成物を分離することにより中間層に脂肪族カルボン酸金属塩が内包された層状複水酸化物を得ることができる。
【0029】
イオン交換法では、先ず脂肪族カルボン酸金属塩水溶液を調整し、これに対して中間層にOH、Cl、CO2−等のアニオンを内包した層状複水酸化物を加え熟成した後、固体生成物を分離すると中間層に脂肪族カルボン酸金属塩を含むアニオンが内包された層状複水酸化物を得ることができる。
【0030】
再構築法では、先ず脂肪族カルボン酸金属塩水溶液を調整し、これに対して予め400℃以上800℃未満の温度下で1時間以上加熱後、冷却を行った炭酸型複水酸化物熱分解物を加える。撹拌又は振とうした後、固体生成物を分離し、目的とする層状複水酸化物を得ることができる。
【0031】
<水性溶媒>
本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物を構成する水性溶媒(D)としては、モンモリロナイト及びハイドロタルサイトの分散性、ガスバリヤ性樹脂の溶解性の点から、水、及びメチルアルコール、エチルアルコール、iso−プロパノール、n−プロピルアルコール、n−エチレングリコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとそのアルキルエーテル誘導体、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類の水混和性有機溶剤が例示できる。
【0032】
本発明においてガスバリヤ樹脂として、好ましいガスバリヤ樹脂である過酸化物等で処理することにより分子鎖切断したエチレン−ビニルアルコール系共重合体を使用する場合は、水と低級アルコールとの混合溶剤を利用して、ガスバリヤ性コーティング剤組成物を構成することが好ましい。具体的には、水と、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数2〜4の低級アルコールの少なくとも1種を15〜70質量%含む混合溶剤を使用すると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶解性が良好となり、適度な固形分を維持するためにも好適である。混合溶剤中の低級アルコールの含有量が70質量%を超えると、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトを分散した場合、へき開が不充分になるおそれがある。一方、混合溶剤中の低級アルコールが15質量%未満であると、ガスバリヤ性コーティング剤組成物の塗布適性が低下する傾向がある。
【0033】
<ガスバリヤ性樹脂(A)、モンモリロナイト(B)及びハイドロタルサイト(C)の含有量と混合比率>
本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物中に含まれるガスバリヤ性樹脂(A)、モンモリロナイト(B)及びハイドロタルサイト(C)の三成分の合計含有量は、ガスバリヤ性コーティング剤全質量(100質量%)に対して1〜30質量%となる量である。当該合計量が1質量%未満である場合は、一回の塗工で形成できるガスバリヤ層の膜厚が薄くなるため、厚いガスバリヤ層が必要な場合には何回も塗工が必要となり、一方、30質量%を超える場合は、ガスバリヤ性コーティング剤組成物の流動性が低下する傾向が見られるので好ましくない。
【0034】
また、本発明において、ガスバリヤ性樹脂(A)の質量と、無機層状化合物(モンモリロナイト(B)及びハイドロタルサイト(C))の合計質量(B)+(C)との質量比率、即ち、(A)/((B)+(C))の質量比率は(60/40)〜(90/10)の範囲である。この比率が上記の範囲より小さくなると、充分なガスバリヤ性が得られず、一方、大きくなるとラミネート強度が不足して好ましくない。
【0035】
また、本発明において用いられるハイドロタルサイト(C)とモンモリロナイト(B)との質量比率、即ち、(C)/(B)の質量比率は、(0.8/99.2)〜(25/75)の範囲である。この比率が上記の範囲より小さくなると、ガスバリヤ性樹脂/無機層状化合物の合計量の同一の質量比率において、ラミネート強度の向上が見られず、一方、大きくなると塗膜流動性が低下して好ましくない。
なお、上記の質量比率はいずれも、各成分の固形分としたときの質量比率である。
【0036】
本発明において、ガスバリヤ性コーティング剤組成物の固形成分としては、上記の必須成分以外の他の成分を含有してもよいが、大部分がガスバリヤ性樹脂(A)、モンモリロナイト(B)及びハイドロタルサイト(C)から構成されることにより、それらの成分が有する作用を充分に発揮することができるという点で好ましい。
【0037】
<その他添加剤>
更に、本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物においては、ガスバリヤ性やラミネート強度を低下させない範囲において、種々の性能を向上させるために、着色剤、レベリング剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
<ガスバリヤ性コーティング剤組成物の製造方法>
上記構成材料を使用してガスバリヤ性コーティング剤組成物を製造する方法としては、例えば、
(1)水性溶媒にガスバリヤ性樹脂を溶解し樹脂溶液を得る(ガスバリヤ性樹脂として好ましい分子鎖切断したエチレン−ビニルアルコール系共重合体を使用する場合は、エチレン−ビニルアルコール系樹脂を溶解した溶液に、過酸化物を添加して加温・反応させエチレン−ビニルアルコール系樹脂の分子鎖切断を行い、その後、残存過酸化物を除去し樹脂溶液を得る)。次いで、モンモリロナイト(水等の分散媒に予め膨潤・へき開させておいてもよい)、ハイドロタルサイト(水等の分散媒に予め膨潤・へき開させておいてもよい)を添加混合し、攪拌装置や分散装置を利用してモンモリロナイト、ハイドロタルサイトを分散させる方法、
(2)モンモリロナイトを水等の分散媒に攪拌装置や分散装置を利用し膨潤・へき開させた分散物とハイドロタルサイトを水等の分散媒に攪拌装置や分散装置を利用し膨潤・へき開させた分散物とを混合した後、更に攪拌装置や分散装置を利用し、混合分散する。得られた分散液(分散溶液)に、予め溶媒にガスバリヤ性樹脂を溶解させた樹脂溶液(ガスバリヤ性樹脂として好ましい分子鎖切断したエチレン−ビニルアルコール系共重合体を使用する場合は、エチレン−ビニルアルコール系樹脂を溶解させた溶液に過酸化物を添加して加温・反応させエチレン−ビニルアルコール系樹脂の分子鎖切断を行い、その後、残存過酸化物を除去した樹脂溶液)を添加混合し、更に、攪拌装置や分散装置を利用し混合分散する方法、
等を挙げることができる。
【0039】
上記攪拌装置や分散装置としては、通常の撹拌装置や分散装置であれば特に限定されず、これらを用いて分散液中でモンモリロナイト、ハイドロタルサイトを均一に分散することができるが、透明で安定なガスバリヤ性コーティング剤組成物が得られる点から、高圧分散機、超音波分散機等を使用することが好ましい。高圧分散機としては、例えば、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、マイクロフルイタイザー(商品名、マイクロフライデックス社製)、アルチマイザー(商品名、スギノマシン社製)、DeBee(商品名、Bee社製)、ニロ・ソアビホモジナイザー(商品名、ニロ・ソアビ社)等が挙げられ、これら高圧分散機の圧力条件として100MPa以下で分散処理を行うことが好ましい。圧力条件が100MPaを超えると、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトの破砕が起こり易くなり、目的であるガスバリヤ性が低下する場合がある。
【0040】
次に、上記ガスバリヤ性コーティング剤組成物を用いて得られる積層体について具体的に説明する。
本発明の積層体は、複合ラミネートフィルムとも呼ばれ、ベースフィルム層、ガスバリヤ層、接着剤層、ヒートシール材層をこの順に設けたもの等を挙げることができる。
【0041】
<ベースフィルム層>
最初にベースフィルム層について説明する。
ベースフィルム層としては、例えば、従来から軟包装で使用されているポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン等からなる各種プラスチックフィルム、及びこれらの2種以上からなる複合フィルム等を挙げることができ、これらのフィルムは、コロナ放電処理又は表面コート処理されていることが好ましい。また、ガスバリヤ性の面からは、ポリオレフィン系フィルムが好ましい。
【0042】
<ガスバリヤ層>
次にガスバリヤ層について説明する。
ガスバリヤ層は、上記ガスバリヤ性コーティング剤組成物を、各種塗工手段を用いて形成することができる。上述した成分を含むガスバリヤ性コーティング剤組成物を使用することにより、積層体において、ガスバリヤ性と接着性(ラミネート強度)の性能を両立することができる。
【0043】
<接着剤層>
次に接着剤層について説明する。
接着剤層としては、従来から包装用複合ラミネートフィルムの製造に用いられているラミネート用接着剤組成物をヒートシール材層に応じて適宜選択し、各種塗工手段を用いて形成することができる。ラミネート用接着剤組成物としては、例えば、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系等の各種ラミネート用接着剤、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の各種ラミネート用アンカーコート剤を挙げることができる。
【0044】
また、ラミネート用接着剤組成物としては、アミノ基、水酸基及びカルボキシル基の少なくとも1つの官能基を有するポリウレタン樹脂を主成分とする主剤とエポキシ系硬化剤及びイソシアネート系硬化剤とからなる硬化剤とを用い、これらの材料を溶媒中に含有させた接着剤組成物も使用できる。
【0045】
上記ポリウレタン樹脂としては、例えば、高分子ポリオールと有機ジイソシアネートとを反応させて得られる、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、更に鎖伸長剤で鎖伸長した後、必要に応じて反応停止剤を用いて反応させる方法を用いて得られる、分子内に水酸基、アミノ基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有するポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0046】
上記有機ジイソシアネート化合物、高分子ポリオール化合物、鎖伸長剤、反応停止剤等としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、特開平06−136313号公報、特開平06−248051号公報、特開平07−258357号公報及び特開平07−324179号公報等に記載された各化合物を使用することができる。分子内に水酸基、アミノ基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有するポリウレタン樹脂の合成方法における温度等の条件についても、上記公報に記載された条件を用いることができる。
【0047】
上記イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤としては、包装用複合ラミネートフィルムの製造に用いられている、従来公知の二液接着剤の成分であるポリイソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤を使用することができる。
【0048】
上記主剤及び硬化剤の材料を溶解又は分散させる溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。水性溶剤と有機溶剤との混合系溶剤としては、水と、上記アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、多価アルコール誘導体のうち水と混和性を有する有機溶剤との混合溶剤を使用することができる。
【0049】
<ヒートシール材層>
次に、ヒートシール材層について説明する。
ヒートシール材層としては、例えば、従来から軟包装で使用されている熱融着性のシール材料であり、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。上記ヒートシール材層は、また、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンポリマー等の熱溶融ポリマーを溶融状態で積層して、冷却によりフィルム状に成形したものであってもよい。この場合、ベースフィルム層に接着剤層を先に設けることができないため、ガスバリヤ層側に接着剤層を設けた後、接着剤層に溶融状態で上記熱溶融ポリマーを積層する方法が用いられる。
【0050】
<必要に応じて設けることができる層>
本発明の積層体には、ベースフィルム層とガスバリヤ層の間に接着剤層を、ベースフィルム層とヒートシール材層との間に印刷層を設けることもできる。
ベースフィルム層とガスバリヤ層との間に設ける接着剤層としては、上記ガスバリヤ層とヒートシール材層との間に設ける接着剤層と同じものを使用することができる。
【0051】
印刷層(内容物表示や装飾機能のための印刷層)としては、従来から軟包装で使用されている有機溶剤型印刷インキ組成物、水性印刷インキ組成物等を、通常、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式にて印刷することにより形成することができる。
【0052】
上記有機溶剤型印刷インキ組成物としては、例えば、顔料とポリウレタン樹脂とを含む芳香族・非芳香族混合系有機溶剤性印刷インキ組成物の他、特開平01−261476号公報(顔料、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレンを含む芳香族・非芳香族混合系有機溶剤性印刷インキ組成物)、特公平07−113098号公報(顔料、ポリウレタン樹脂を含む非芳香族系有機溶剤性印刷インキ組成物)、特開平07−324179号(顔料、ポリウレタン樹脂、非芳香族系・非ケトン系有機溶剤性印刷インキ組成物)等で開示された有機溶剤性印刷インキ組成物等が挙げられる。
【0053】
また、上記水性印刷インキ組成物としては、例えば、特開平06−155694号公報(顔料、アクリル系バインダー樹脂、ヒドラジン系架橋剤を含む水性印刷インキ組成物)、特開平06−206972号(顔料、水、ポリウレタン系バインダー樹脂を含む水性印刷インキ組成物)等で開示された水性印刷インキ組成物等が挙げられる。
【0054】
尚、最近では、環境対応インキとして、水性タイプの印刷インキ組成物や、有機溶剤系印刷インキ組成物であっても芳香族及びケトン系有機溶剤を極力使用しないタイプのものが使用されており、本発明でも、これらを好適に用いることができる。
更に、本発明の積層体においては、他の機能層、例えば、紫外線遮蔽層、抗菌層、ガスバリヤ層以外の層同士を接着するための接着剤層等を有していてもよい。
【0055】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体を製造する方法としては、結果的に高いガスバリヤ性、ラミネート強度、及び必要に応じて印刷により付加される装飾や表示機能を有するものであれば、どの方法であっても良いが、例えば以下の(A)〜(D)の方法等が挙げられる。
【0056】
最も基本的な構成として、
(A)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記ガスバリヤ性コーティング剤組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、ヒートシール材層を積層することにより積層体を得る方法、
(B)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記接着剤組成物、ガスバリヤ性コーティング剤組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、ヒートシール材層を積層することにより積層体を得る方法、
(C)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、先にインキ組成物を印刷して印刷層を形成した後、上記接着剤組成物、ガスバリヤ性コーティング剤組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、ヒートシール材層を積層することにより積層体を得る方法、
(D)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記接着剤組成物、ガスバリヤ性コーティング剤組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、インキ組成物を印刷して印刷層を形成し、更にヒートシール材層を積層することにより積層体を得る方法、等である。
【0057】
尚、上記接着剤組成物及びガスバリヤ性コーティング剤組成物の塗工方法については、通常のグラビアシリンダー等を用いたロールコーティング法、ドクターナイフ法やエアーナイフ・ノズルコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法及びこれらの方法を組合わせたコーティング法等を用いることができる。
また、印刷層を形成するには、通常、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が使用できる。
【0058】
以上の方法から得られる積層体において、接着剤層の膜厚(乾燥膜厚)は、好ましくは2〜3μm、また、ガスバリヤ層の膜厚(乾燥膜厚)は、好ましくは0.1〜5μmである。
接着剤層の膜厚が2μmより薄くなると、ガスバリヤ層と他層との接着性が低下するおそれがあり、一方、3μmより厚くなると、膜厚の増加に見合った接着性の増加が見られず、また、積層体を包装袋として用いたときに、良好な取扱い性を得ることができないおそれがある。また、ガスバリヤ層が0.1μmより薄くなると、高いガスバリヤ性を得ることが困難となり、一方、5μmを超えても顕著なガスバリヤ性の向上がみられない。
【0059】
尚、1回の塗工により上記範囲内の膜厚を有する塗膜が得られない場合は、多数回の塗工を行うことも可能である。
他の機能層を設ける場合も、それぞれの機能層を設けるための良好な手段と、上記(A)〜(D)の方法を組み合わせて、目的にあった積層体を製造することができる。
【0060】
<積層体の用途>
以上の製造方法から得られた積層体は、ヒートシーラー等を用いて、中折りして2辺を溶封するか又は2枚の積層体を重ねて三辺を溶封して先に袋状とした後、内容物を詰め、残りの一辺を溶封して、密封された包装袋として利用することができる。そして、得られた包装袋は、食品や医療品の包装袋として利用できる。
【発明の効果】
【0061】
本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物及びそれを用いて得られる積層体は、上述した構成からなるので、ガスバリヤ性と接着性(ラミネート強度)の相反する性能をより高いレベルで維持することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0063】
<エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液の調製>
精製水44.2%、n−プロピルアルコール(NPA)71.996質量部の混合溶媒に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名:SG−525、日本合成化学社製、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られた重合体、エチレン比率26モル%、酢酸ビニル成分のケン化度約100%、以下、EVOHと略記することがある。)15質量部を加え、更に濃度が30%の過酸化水素水13質量部とFeSOの0.004質量部を添加して攪拌下で80℃に加温し、約2時間反応させた。その後冷却して カタラーゼを3000ppmになるように添加し、残存過酸化水素を除去し、これにより固形分15%のほぼ透明なエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液(EVOH溶液)を得た。
【0064】
<モンモリロナイト分散液の調製>
モンモリロナイト(商品名:クニピアF、クニミネ工業社製)4質量部を精製水96質量部中に攪拌しながら添加し、高圧分散装置にて圧力50MPaの設定にて充分に分散した。その後、40℃にて1日間保温し固形分4%のモンモリロナイト分散液を得た。
【0065】
<ハイドロタルサイト分散液の調製>
ハイドロタルサイト(商品名:剥離型複水酸化物、テイカ社製)2質量部を精製水98質量部中に攪拌しながら添加し、高圧分散装置にて圧力50MPaの設定にて充分に分散した。その後、40℃にて1日間保温し固形分2%のハイドロタルサイト分散液を得た。
【0066】
<実施例1のガスバリヤ性コーティング剤組成物>
EVOH/(モンモリロナイト+ハイドロタルサイト)=75/25(固形分質量比)、ハイドロタルサイト/モンモリロナイト=3/97)
モンモリロナイト分散液30.31質量部とハイドロタルサイト分散液1.88質量部とを混合した後、高圧分散装置にて混合分散した。更にこの分散液に高速攪拌を行いながら、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤42.8質量部、EVOH溶液25質量部を添加し、充分に攪拌混合した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例1のガスバリヤ性コーティング剤組成物を得た。
【0067】
<実施例2のガスバリヤ性コーティング剤組成物>
EVOH/(モンモリロナイト+ハイドロタルサイト)=80/20(固形分質量比)、ハイドロタルサイト/モンモリロナイト=3/97
モンモリロナイト分散液24.3質量部とハイドロタルサイト分散液1.5質量部とを混合した後、高圧分散装置にて混合分散した。更に、この分散液に高速攪拌を行いながら、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤47.5質量部、EVOH溶液26.7質量部を添加し、充分に攪拌混合した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例2のガスバリヤ性コーティング剤組成物を得た。
【0068】
<実施例3のガスバリヤ性コーティング剤組成物>
EVOH/(モンモリロナイト+ハイドロタルサイト)=70/30(固形分質量比)、ハイドロタルサイト/モンモリロナイト=3/97
モンモリロナイト分散液36.4質量部とハイドロタルサイト分散液2.3質量部とを混合した後、高圧分散装置にて混合分散した。更にこの分散液に高速攪拌を行いながら、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤38.0質量部、EVOH溶液23.3質量部を添加し、充分に攪拌混合した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例3のガスバリヤ性コーティング剤組成物を得た。
【0069】
<実施例4のガスバリヤ性コーティング剤組成物>
EVOH/(モンモリロナイト+ハイドロタルサイト)=75/25(固形分質量比)、ハイドロタルサイト/モンモリロナイト=1/99
モンモリロナイト分散液30.9質量部とハイドロタルサイト分散液0.6質量とを混合した後、高圧分散装置にて混合分散した。更にこの分散液に高速攪拌を行いながら、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤43.5質量部、EVOH溶液25質量部を添加し、充分に攪拌混合した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例4のガスバリヤ性コーティング剤組成物を得た。
【0070】
<実施例5のガスバリヤ性コーティング剤組成物>
EVOH/(モンモリロナイト+ハイドロタルサイト)=75/25(固形分質量比)、ハイドロタルサイト/モンモリロナイト=10/90
モンモリロナイト分散液28.1質量部とハイドロタルサイト分散液6.3質量部とを混合した後、高圧分散装置にて混合分散した。更にこの分散液に高速攪拌を行いながら、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤40.6質量部、EVOH溶液25質量部を添加し、充分に攪拌混合した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例5のガスバリヤ性コーティング剤組成物を得た。
【0071】
<比較例1のガスバリヤ性コーティング剤組成物>
EVOH/(モンモリロナイト+ハイドロタルサイト)=95/5(固形分質量比)、ハイドロタルサイト/モンモリロナイト=3/97
モンモリロナイト分散液6.4質量部とハイドロタルサイト分散液0.4質量部とを混合した後、高圧分散装置にて混合分散した。更に、この分散液に高速攪拌を行いながら、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤61.5質量部EVOH溶液の31.7質量部を添加し、充分に攪拌混合した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例1のガスバリヤ性コーティング剤組成物を得た。
【0072】
<比較例2のガスバリヤ性コーティング剤組成物>
EVOH/(モンモリロナイト+ハイドロタルサイト)=50/50(固形分質量比)、ハイドロタルサイト/モンモリロナイト=3/97
モンモリロナイト分散液60.6質量部とハイドロタルサイト分散液3.8質量部とを混合した後、高圧分散装置にて混合分散した。更に、この分散液に高速攪拌を行いながら、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤18.9質量部、EVOH溶液16.7質量部を添加し、充分に攪拌混合した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例2のガスバリヤ性コーティング剤組成物を得た。
【0073】
<比較例3のガスバリヤ性コーティング剤組成物>
EVOH/(モンモリロナイト+ハイドロタルサイト)=70/30(固形分質量比)、ハイドロタルサイト/モンモリロナイト=0/100
モンモリロナイト分散液37.5質量部に高速攪拌を行いながら、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤39.2質量部、EVOH溶液23.3質量部を添加し、充分に攪拌混合した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例36のガスバリヤ性コーティング剤組成物を得た。
【0074】
<比較例4のガスバリヤ性コーティング剤組成物>
EVOH/(モンモリロナイト+ハイドロタルサイト)=70/30(固形分質量比)、ハイドロタルサイト/モンモリロナイト=30/70
モンモリロナイト分散液26.3質量部とハイドロタルサイト分散液22.5質量部とを混合した後、高圧分散装置にて混合分散した。更に、この分散液に高速攪拌を行いながら、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤27.9質量部、EVOH溶液23.3質量部を添加し、充分に攪拌混合した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例4のガスバリヤ性コーティング剤組成物を得た。
【0075】
(実施例1〜5、比較例1〜4の積層体)
ポリエステルフィルムにラミネート用接着剤組成物(押出しアンカーコート剤、A3210/3070、三井化学ポリウレタン社製)に塗布し、乾燥後、実施例1〜5、比較例1〜4のガスバリヤ性コーティング剤組成物を塗工し、乾燥させた。得られたガスバリヤ層の上に、ポリエーテル系接着剤組成物(A−969、三井化学ポリウレタン社製)を用いてドライラミネート機にて無延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、40℃にて3日間エージングして実施例1〜5、比較例1〜3の積層体を得た。但し、比較例4のガスバリヤ性コーティング剤組成物は、粘度が高く塗布することができなかった。
なお、ガスバリヤ層の膜厚は0.5μm(乾燥皮膜)、接着剤層の膜厚は3μm(乾燥皮膜)であった。
【0076】
〔評価〕
(酸素透過度)
実施例1〜5、比較例1〜3の各積層体を23℃、90%RHの雰囲気下に2日間放置後、JIS K7126 B法に準じて、酸素透過率測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100、商品名)を用いて酸素透過度(OTR値)を測定した。尚、測定は、23℃において、90%RHの雰囲気下で行った。結果を表1に示す。
【0077】
(ラミネート強度)
実施例1〜5、比較例1〜3の各積層体を15mm幅に切断し、T型剥離強度を剥離試験機(安田精機社製)を用いて、剥離速度300mm/minにてラミネート強度を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例の積層体は、ラミネート強度(接着性)と酸素透過度(ガスバリヤ性)の両性能に優れていた。これに対し、比較例においては、両性能に優れたものを得ることはできなかかった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のガスバリヤ性コーティング剤組成物は、食品や医療等の包装用途におけるプラスチック製包装容器に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリヤ性樹脂(A)、モンモリロナイト(B)、ハイドロタルサイト(C)及び水性溶媒(D)を必須成分として含有するガスバリヤ性コーティング剤組成物であって、
該ガスバリヤ性コーティング剤組成物中に含まれる(A)、(B)及び(C)の三成分の合計含有量が1〜30質量%であり、且つ
(A)/((B)+(C))の質量比率が(60/40)〜(90/10)、(C)/(B)の質量比率が(0.8/99.2)〜(25/75)である
ことを特徴とするガスバリヤ性コーティング剤組成物。
【請求項2】
前記ガスバリヤ性樹脂(A)は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体である請求項1記載のガスバリヤ性コーティング剤組成物。
【請求項3】
前記ガスバリヤ性樹脂(A)は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られ、エチレン成分の含有率が20〜60モル%であり、酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体である請求項1又は2記載のガスバリヤ性コーティング剤組成物。
【請求項4】
少なくともベースフィルム層、ガスバリヤ層、接着剤層、ヒートシール材層をこの順に設けた積層体であって、該ガスバリヤ層が請求項1、2又は3記載のガスバリヤ性コーティング剤組成物から得られるものであることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2008−266522(P2008−266522A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114458(P2007−114458)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】