説明

ガスミスト吸入器

【課題】ガスミスト生成器の一部のみを使い捨てにして衛生を保つと共に低コスト化を実現できるガスミスト吸入器を提供する。
【解決手段】酸素、炭酸ガス、又は酸素と炭酸ガスの混合ガスを供給するガス供給手段30と、ガス供給手段30との接続部45と液体を貯留する液体貯留部とガスが供給されるノズルとノズル先端に液体を送液する吸液管とノズルからのガス流によって吹き上げられた液体を衝突させてガスミストにする衝突部材とノズルの上部までガスを導く円筒状のガス導入部とガスミストを収集及び排出するドーナツ形のガスミスト排出部とを有するガスミスト生成手段40と、ガスミスト生成手段40と接続されガスミストを生体に吸入させるための吸入口53を有する吸入部材50と、を備え、ガスミスト生成手段40を、少なくとも液体貯留部を他に対して取り外し可能に構成して、液体貯留部を使い捨てにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素、炭酸ガス、又は酸素と炭酸ガスの混合ガスと薬剤等の液体を粉砕溶解させたガスミストを生体に経口吸入させるためのガスミスト吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭酸ガス(二酸化炭素:CO)は、水に溶けやすい(水溶性)だけでなく油にも溶けやすい(脂溶性)という性質を双方併せ持つおかげで、水と油の混じったような生体の皮膚及び粘膜に触れるだけでその皮下に浸透し、浸透部位の血管を拡張させて血液循環を改善する作用があることが知られている。そしてこの血行促進作用により、血圧降下、代謝の改善、疼痛物質や老廃物の排除促進等、様々な生理的効果を発揮する。また、抗炎症、抗菌作用も有している。このため、近年、炭酸ガスは医療目的のほか、健康増進、美容促進といった点からも広く注目を集めている。
【0003】
生体の組織中で炭酸ガスは、赤血球内のヘモグロビンに結合して運ばれた酸素を放出させる働きがある。炭酸ガス濃度の高いところでは、赤血球はより多くの酸素を放出する。このように、赤血球による細胞への酸素の供給は、主に炭酸ガスがコントロールしている。つまり、炭酸ガスなしでは、ヘモグロビンは酸素が結合したままの状態となり、細胞は酸素を受け取ることができなくなってしまう。このように、炭酸ガスは、細胞の活動の結果出てくる老廃物のように思われがちだが、実は体の中で非常に重要な役割を果たしている。
【0004】
また、昨今、高濃度酸素が新陳代謝の活性、血行促進、疲労回復、血圧の安定等に効果があることが広く知られるようになった。このほかに酸素は、酸化作用による殺菌、滅菌効果をも有している。
【0005】
ところで、喘息やアレルギー性鼻炎等、呼吸器系疾患の症状の緩和には、従来から吸入器や点鼻スプレーを用いた薬剤や蒸気等の経口、経鼻吸入が行われている。
【0006】
また、近年ではインフルエンザウィルスに対する粘膜免疫を形成するための経鼻ワクチン(スプレー式点鼻ワクチン)が開発され、その高い効果が注目を集めている。この経鼻ワクチンは、一般に皮下に注射するワクチンよりインフルエンザの発症を防止する効果が高く、また、注射型と異なり様々なウィルス株に対して有効に働くという利点がある。さらに、インフルエンザの予防や治療においても、吸入投与される抗ウィルス剤が開発されている。
【0007】
そこで本発明者は、上記のような薬剤に炭酸ガス又は酸素を効率よく溶解させ、薬剤に加えてガスの生理作用を生体に効果的に及ぼすガスミスト吸入器を開発している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような吸入器の衛生を保つためには、ガスミストを生成する部位を使い捨てにすることが望ましい。しかしながら、使い捨てにする部位が大きければコストが上昇し、無駄が増えることとなる。
【0009】
そこで本発明は、上記状況に鑑み、ガスミスト生成器の一部のみを使い捨てにして衛生を保つと共に低コスト化を実現できるガスミスト吸入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、酸素、炭酸ガス、又は酸素と炭酸ガスの混合ガス(以下、「ガス」という)を供給するガス供給手段と、そのガス供給手段との接続部と、液体を貯留する液体貯留部と、前記ガスが供給されるノズルと、そのノズル先端に前記液体を送液する吸液管と、前記ノズルからのガス流によって吹き上げられた液体を衝突させて前記液体と前記ガスとを粉砕溶解させたミスト(以下、「ガスミスト」という)にする衝突部材と、前記ガスが供給され前記ノズルの上部までガスを導く円筒状のガス導入部と、前記ガスミストを収集及び排出するドーナツ形のガスミスト排出部と、を有するガスミスト生成手段と、そのガスミスト生成手段と接続され、前記ガスミストを生体に吸入させるための吸入口を有する吸入部材と、を備え、前記ガスミスト生成手段において、少なくとも前記液体貯留部を取り外し可能にして他の液体貯蔵部と取替え可能に構成したことを特徴とするガスミスト吸入器を提供するものである。
【0011】
なお、本願においては、液体を粉砕し微細な液滴にして気体(酸素、炭酸ガス、又は酸素と炭酸ガスの混合ガス)と接触混合させることを、粉砕溶解という。
【0012】
ここで、前記ガスミスト生成手段は、外気を取り込むための通気孔を備えるのが好適である。あるいは、前記吸入部材が、外気を取り込むための開口をさらに有するようにしても良い。
【0013】
また、前記ガス供給手段は、カートリッジ式ガスボンベであるのが好適である。さらに、前記ガス供給手段は、ガス供給時間設定部、ガス供給圧調整部、ガス混合比設定部の何れか一つ又は複数を備えるのが好適である。
【0014】
また、前記ガスミスト生成手段は、複数の前記吸入部材にガスミストを供給するようにしても良い。
【0015】
次に、前記液体は、水、イオン水、オゾン水、生理食塩水、精製水、又は滅菌精製水の何れか一つ又は複数の組み合わせであるのが最適である。そして、前記液体は、メンソール、ビタミンE、ビタミンC誘導体、レチノール、麻酔薬、シクロデキストリン、光触媒、光触媒とアパタイトの複合体、ヒアルロン酸、コエンザイムQ10、シードオイル、プロポリス、エタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、両性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、酢酸アルキルジアミノエテルグリシン、次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸、セスキ炭酸ナトリウム、シリカ、ポピドンヨード、炭酸水素ナトリウム、高濃度炭酸泉剤、抗アレルギー剤、抗炎症剤、解熱鎮痛剤、抗真菌剤、抗インフルエンザウィルス剤、インフルエンザワクチン、ステロイド剤、抗ガン剤、又は血圧降下剤のうち、何れか一つ又は複数をさらに含有するのが好ましい。
【0016】
なお、前記ガスミスト生成手段から前記吸入部材内に供給される前記ミストの粒径は、10μm以下であるのが好ましい。
【0017】
また、前記ガスミスト生成手段が、前記吸入部材内へガスミストを供給するためのガスミスト供給管を有し、このガスミスト供給管が、管内に付着する液滴を除去するためのフィルターを備えるようにするのが良い。さらにこのガスミスト供給管の全部又は一部は、ジャバラ状の管から構成されるのが好適である。また、このガスミスト供給管には、逆止弁を設けるのが良い。
【0018】
前記ガスミスト生成手段の取り外し可能部分は、予め滅菌処理されているのが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガスミスト吸入器によれば、ガスミスト生成器の一部を取り替え可能にする(使い捨て)ことで、衛生に配慮すると共にコストを低下させることが可能となる。これにより簡易な構成で、ガスミストの生理作用によって薬液を上気道及び下気道に浸透させるだけでなく患部の血流を盛んにし、炎症などを早く鎮める、免疫力を上昇させる等の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガスミスト吸入器の全体概略図である。
【図2】図1のガスミスト吸入器におけるガスミスト生成器の構造を示す断面模式図である。
【図3】図1のガスミスト吸入器における生成器本体の一部破断斜視図である。
【図4】図1のガスミスト吸入器において生成器本体を密封する態様を示す模式図である。
【図5】図1のガスミスト吸入器における蓋部を下から覗いた状態の斜視図である。
【図6】図1のガスミスト吸入器における生成器本体の部分拡大断面図である。
【図7】本発明のガスミスト吸入器における吸入部材の例を示す模式図である。
【図8】本発明のガスミスト生成器と吸入部材とを接続するガスミスト供給管の例を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るガスミスト吸入器の全体概略図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るガスミスト吸入器の全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガスミスト吸入器の全体概略図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のガスミスト吸入器10は、酸素、炭酸ガス、又は酸素と炭酸ガスの混合ガス(以下、単にガスという)を供給するガス供給手段30としてのガスボンベ31と、ガスミスト生成手段であるガスミスト生成器40と、吸入部材50としての吸入マスク51とを有する。
【0024】
ガスミスト生成器40に酸素、炭酸ガス、又は酸素と炭酸ガスの混合ガスを供給するガスボンベ31は、本実施形態では携帯性に着目して小型のカートリッジ式のものを用いる。この小型のガスボンベ31は、図1のようにガスミスト生成器40のガス供給手段接続部45に装着され、ガスをガスミスト生成器40に所定圧で供給する。
【0025】
ガスミスト生成器40は、内部に液体を貯留して、ガスボンベ31から供給されるガスの高速流により、この液体とガスを粉砕溶解したガスミストを生成し、これを吸入マスク51に供給する。
【0026】
図2は、ガスミスト生成器40の構造を示す断面模式図である。図2に示すように、ガスミスト生成器40は、生成器本体41と、ガス供給手段接続部45と、蓋部46とから構成されている。
【0027】
図3は、生成器本体41の一部破断斜視図である。図3に示すように、生成器本体41は、液体を貯留する液体貯留部42と、ガスボンベ31から供給されるガスを先端開口43Aから吐出するノズル43と、液体貯留部42に貯留された液体をノズル43の先端まで吸い上げる吸液管44Aを構成する吸液管形成部材44と、を備えている。
【0028】
液体貯留部42は、図2及び図3に示すように、生成器本体41の底部内側と側壁の一部の内側から形成されている。この液体貯留部42には予め製造段階において所定の液体が貯留される。そして、液体が貯留された状態で図4に示すように生成器本体41は密封される。図4は、生成器本体41を密封する態様を示す模式図である。図4(a)は、生成器本体41の上部と下部をゴム等の弾性部材からなる栓41A、41Bで封じた例を示している。また、図4(b)では、生成器本体41の上部をアルミやプラスチック等からなるフィルム41Cで熱や接着剤等を用いて蓋をし、下部をゴム等の弾性部材からなる栓41Bで封じた例を示している。
【0029】
このように、本発明では、ガスミスト生成器40において、液体貯留部42を取り外し可能にして他の液体貯蔵部42と取替え可能にすることで、使い捨て部品を少なくしコストの抑制を図る。また、生成器本体41は密封して提供され、その都度使い捨てにすることで衛生を保つことができる。これによって、液体貯留部42に薬剤等の液体を供給するための構成を省くことが可能となり、コンパクト化と低コスト化を実現することができる。なお、この取り外しが可能な生成器本体41は、製造段階で予め滅菌処理されるのが好適である。また、使い捨てにしない部分も使用前に予め滅菌処理される。
【0030】
ここで、液体貯留部42に貯留する液体は、水、イオン水、オゾン水、生理食塩水、精製水、滅菌精製水を用いるのが好適である。さらに、これらの液体に使用者の疾患、症状等に有効な薬剤を含有させても良い。薬剤とは、例えば、抗アレルギー剤、抗炎症剤、解熱鎮痛剤、抗真菌剤、抗インフルエンザウィルス剤、インフルエンザワクチン、ステロイド剤、抗ガン剤、血圧降下剤等が挙げられる。さらに、清涼作用のあるメンソールや、血行を促進させるビタミンE、皮膚組織に吸収されやすく美肌効果の高いビタミンC誘導体、皮膚の角化作用を正常にし粘膜を保護するレチノール、粘膜への刺激を和らげるための麻酔薬、臭気を除去するためのシクロデキストリン、殺菌、消炎効果のある光触媒、又は光触媒とアパタイトの複合体、保水力に優れ肌の保湿効果を有するヒアルロン酸、細胞を活性化し免疫力を向上させるコエンザイムQ10、抗酸化物質や多量の栄養素を含むシードオイル、抗酸化作用、抗菌作用、抗炎症作用、鎮痛・麻酔作用、免疫作用等を有するプロポリス等を単独あるいは複数組み合わせて混合して、ガスの生理作用との相乗効果を生じさせることも可能である。あるいは、エタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、両性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、酢酸アルキルジアミノエテルグリシン、次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸、セスキ炭酸ナトリウム、シリカ、ポピドンヨード、炭酸水素ナトリウムを添加しても良い。さらに、炭酸塩と有機酸を主成分とする高濃度炭酸泉剤(有効成分の一例としては、硫酸塩、炭酸塩、有機酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム)を添加しても良い。
【0031】
生成器本体41(液体貯留部42)の底部中央には、ノズル43が設けられている。このノズル43は、液体貯留部42の底から隆起して、生成器本体41の上部に向かって絞られる略円錐筒状に形成されている。ノズル43の基端にはガス供給手段接続部45のガス吐出口45Aが接続され、ノズル43の先端開口43Aからはガスを吐出可能である。
【0032】
吸液管44Aは、ノズル43の外周面と、ノズル43より一回り大きい略円錐筒状の吸液管形成部材44との間に形成される。即ち、図2に示すように、ノズル43に吸液管形成部材44を被せるように配置することにより、ノズル43の外周面と吸液管形成部材44の内周面との間に吸液管44Aが形成される。図示は省略したが吸液管形成部材44の基端(略円錐筒状部の下部)には微小な爪状突起部が設けられているため、吸液管形成部材44の基端と液体貯留部42の底面には隙間が形成されており、この隙間から液体貯留部42に貯留された液体が吸液管44Aによって吸い上げられる。また、吸液管形成部材44の先端部44Bは、ノズル43の先端開口43Aの近傍で開口しており、ノズル43から吐出されるガス流に、吸液管44Aが吸い上げた液体が突き当たるように構成されている。
【0033】
ガス供給手段接続部45は、好適にはワンタッチでガスボンベ31を装着できる接続部である。図示は省略するが、ガス供給手段接続部45は内部にレギュレータを備えており、ガスボンベ31から供給されるガスの流量を調節可能にする。また、ガスボンベ31から供給されるガス流は、ガス供給手段接続部45内で二つに分岐され(図2の分岐部45B)、一方はノズル43に、他方は後述するガス導入部47に供給される。なお、ここではガス供給手段接続部45に、ダイヤルスイッチ451、残量ゲージ452が設けられた例を示している(図1参照)。ダイヤルスイッチ451は、回すことでガス供給のオン・オフ、及び供給量調節が可能である。残量ゲージ452には、ガスボンベ31のガス残量が表示される。
【0034】
蓋部46は、生成器本体41の上部に装着し、生成されたガスミストを吸入マスク51へ導出する部材である。また、生成器本体41内にノズル43とは別途にガスを供給することで、吸入マスク51へのガスミストの供給圧を上げるための部材である。蓋部46の詳細を図5に示す。図5は、蓋部46を底側から覗いた状態の斜視図である。
【0035】
蓋部46は、ガスを生成器本体41内に導入すると共にガスミストを排出する気流を作るためのガス導入部47と、ノズル43の先端開口43Aと対向する位置に配置されるバッフル(衝突部材)48と、ガスミストを収集して吸入マスク51へ排出するためのガスミスト排出部49とを備える。
【0036】
ガス導入部47は、蓋部46の外部から生成器本体41のノズル43周辺までガスを導く略L字状の管状孔であり、ガス供給手段接続部45で分岐されたガスがここから生成器本体41内へ供給される。ガス導入部47の上端部には、ガス供給手段接続部45にチューブ等で接続されるガス導入口47Aが設けられている。ガス導入口47Aには、ここでは図示していないが、外気を取り込むための通気孔を設けるようにしても良い。なお、ガス供給手段接続部45とガス導入口47Aとを接続するチューブ等には、図2に示すようにガス導入部47へのガス供給量を調節するための流量調整部(例えばバルブ)45Cを配置しても良い。
【0037】
バッフル48は、バッフル支持部48Aによってガス導入部47の下端近傍に配置される。なお、ここではバッフル48が蓋部46に固定されている例を示しているが、生成器本体41側に配置するようにしても良い。
【0038】
ガスミスト排出部49は、蓋部46の内側の側部及び上部等によって円筒状のガス導入部47の周囲に形成されている、ドーナツのような形状の空間である。なお、上述したように、ガス導入部47は円筒状の形状、ガスミスト排出部49はドーナツ型の形状が望ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。このように、ガスミスト排出部49の空間を仕切らずに広く取ることで、ミストの排出をスムーズにすると共にミストの液化を防ぐことができる。また、これによって構造が簡潔となることから、蓋部46の洗浄効率が上がり衛生的に使用することができる。
【0039】
ノズル43及びバッフル48によって生成されたガスミストは、ガス導入部47からのガスによってガスミスト排出部49へと追いやられる。ガスミスト排出部49はそのガスミストを吸入マスク51へと導く。なお、ガスミスト排出部49の上部には、吸入マスク51に接続されるガスミスト排出口49Aが設けられている。
【0040】
吸入マスク51は、生成されたガスミストを使用者が吸入しやすいよう、使用者の呼吸器(ここでは鼻と口)を覆う形状を有する吸入部材である。この吸入マスク51は、接続部52によりガスミスト排出部49と接続され、使用者は吸入口53からガスミストを吸入する。なお、吸入マスク51には開口54を設けるのが好適である。
【0041】
以下、上記第1の実施形態のガスミスト吸入器10を用いてガスミストの吸入を行う手順の一例について説明する。
【0042】
まず、密封された生成器本体41を開封して、ガス供給手段接続部45と蓋部46をセットし、ガスミスト生成器40を完成させる。次いで、ガスボンベ31をガス供給手段接続部45にセットする。そして、ガス供給手段接続部45のダイヤルスイッチ451をONにすると、ガスがノズル43及びガス導入部47へ供給され始める。なお、ダイヤルスイッチ451ではガスの流量を調整することができる。
【0043】
ガスがノズル43に供給されると、ノズル43は図6に示すように先端に向かって狭窄されているため、ガスは流速を増して吐出される。液体はこのときの気流により発生する負圧で吸液管44Aを吸い上げられ、吸液管44Aの先端部44Bでガスに吹き上げられてバッフル48に衝突し、ミストが生成される。この衝突によって生成されるミストの粒径は微細であることが望ましく、具体的には10μm以下であるのが最適である。このように微細に粉砕されたミストは、マイナスイオンの効果を発揮することができる。
【0044】
ガスはさらにガス導入部47からも生成器本体41内に供給されて、生成されたガスミストの排出圧を高くする。ガスミストはガスミスト排出部49から吸入マスク51へ排出される。吸入マスク51に排出されたガスミストは、吸入口53から吸入することができる。
【0045】
なお、上記では吸入部材50として、鼻と口を覆うタイプの吸入マスク51を使用する例を示したが、これ以外にも様々なタイプの吸入部材を用いることができる。図7に他の吸入部材50の例を示す。
【0046】
図7(a)は、口からのみ吸入を行う場合に用いるマウスピース型の口用マスク55である。接続部52Aでガスミスト排出部49と接続され、使用者は吸入口53Aからガスミストを口で吸入する。口用マスク55には、開口54Aが設けられている。この口用マスク55は特に、のどの症状を処置、治療するために好適である。
【0047】
図7(b)は、鼻からのみ吸入を行う場合に用いるノーズピース型の鼻用マスク56である。接続部52Bでガスミスト排出部49と接続され、使用者は吸入口53Bからガスミストを鼻で吸入する。鼻用マスク56には、開口54Bが設けられている。この鼻用マスク56は特に、アレルギー性鼻炎等の鼻の症状を処置、治療するために好適である。
【0048】
なお、上記ではガスミスト排出部49と吸入部材50の接続部52が直接接続される例を示したが、図8のように、ガスミスト排出部49と吸入マスク50との間をガスミスト供給管57で接続するようにしても良い。この際、ガスミスト供給管57の内部には、図示しないがガスミストの逆流を防止するための逆止弁を設けるようにする。また、ガスミスト供給管57には、図示しないが管内に付着する余分な液滴を取り除くための液滴除去フィルターを設けるようにしても良い。
【0049】
さらに、ガスミスト供給管57は、その全部又は一部を図8に示すような管径の太い柔軟なジャバラ状の管で構成すれば、自在に曲がり、伸縮させることもできるため、使用者の動きを制限することもない。また、ガスミスト供給管57を流れるガスミストが液化してもジャバラの凹凸部にその液体を取り除くことが可能となる。
【0050】
〔第2の実施形態〕
上記第1の実施形態では、ガス供給手段30として小型のカートリッジ式ガスボンベ31を用いる例を示したが、本実施形態では、据置型のガス供給装置を用いる例について示す。
【0051】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るガスミスト吸入器の全体概略図である。なお、図1乃至図8に示す第1の実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
図9に示すように、本実施形態のガスミスト吸入器20Aは、ガス供給手段30としてのガス供給装置32と、ガスミスト生成手段であるガスミスト生成器40と、吸入部材50としての吸入マスク51とを有する。
【0053】
ガス供給装置32は、ガス(酸素、炭酸ガス、又は酸素と炭酸ガスの混合ガス)を所定圧でガスミスト生成器40に供給するための据置型の装置である。その内部にはガスボンベ(図示せず)を内蔵している。また、コンプレッサを内蔵していても良い。もしくは、外部のガスボンベ等に接続されていても良い。
【0054】
ガス供給装置32は、例えば図9に示すように、電源スイッチ33、酸素供給ON/OFFスイッチ34、炭酸ガス供給ON/OFFスイッチ35、ガス混合比設定部36、OFFタイマー(ガス供給時間設定部)37、ガス供給圧調整部38とを備えている。即ち本実施形態では、ガス供給手段接続部にダイヤルスイッチや残量ゲージを設けず(ガス供給手段接続部45′)、ガス供給装置32で種々の調整を行うように構成している。また、ガス供給装置32とガスミスト生成器40とは、ガス供給管39で接続されている。
【0055】
ガス混合比設定部36は、炭酸ガスと酸素の混合比を任意に設定できるように構成されている。これにより、例えば喘息や疲労回復の目的で使用する場合には酸素の混合比を多めに設定したり、呼吸器の血流を促進する目的で使用する場合には炭酸ガスの混合比を多めに設定したりと、使用者の目的に自由に対応することが可能となる。また、OFFタイマー37は、ガスの供給時間を設定するためのもので、設定した時間が経過すると自動的にガスの供給を停止させる。また、ガス供給圧調整部38では、ガスの供給圧を任意に設定することができる。これにより、ガスの供給時間や供給圧の設定が可能なため、その使用目的の範囲を広範にすることができる。
【0056】
なお、ここでは第1の実施形態同様に、ガス供給装置32から供給されるガスをガス供給手段接続部45で二つに分岐する例を図示しているが、これに代えてガス供給装置32からノズル43とガス導入部47に別々に直接ガスを供給する構成としても良い。その場合、ノズル43とガス導入部47とで同じガスを供給しても良いし、異なるガスを供給するようにしても良い。
【0057】
〔第3の実施形態〕
上記第2の実施形態では、一つのガスミスト生成器40に対して一つの吸入部材50を接続する例を示したが、本実施形態では、複数の吸入部材を接続する構成について説明する。
【0058】
図10は、本発明の第3の実施形態に係るガスミスト吸入器の全体概略図である。なお、図1乃至図9に示す実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
図10に示すように、本実施形態のガスミスト吸入器20Bは、ガス供給手段30としてのガス供給装置32と、ガスミスト生成手段であるガスミスト生成器40と、複数の吸入部材50(ここでは例として複数の吸入マスク51A〜51C)とを有する。
【0060】
本実施形態では、ガスミスト生成器40と複数(ここでは三つ)の吸入部材50の間に、複数(ここでは三つ)に分岐するガスミスト供給管58を設ける。これにより、一つのガス供給装置32及びガスミスト生成器40に対して、複数の吸入マスク51A、51B、51Cを接続することが可能となる。このとき、ガス供給装置32では、複数の吸入マスク51A、51B、51Cの各々で、ガスミストの吸入を最適に行えるよう、ガス供給圧調整部38によりガスの供給圧を調整する。
【0061】
なお、ここでは複数に分岐したガスミスト供給管58を用いる例を図示しているが、ガスミスト排出部49に複数の排出口を設けて各々にガスミスト供給管を接続するようにしても良いし、別途複数に分岐する管を通常のガスミスト供給管の途中に設けることによってガスミストを複数の吸入部材に供給するようにしても良い。
【0062】
上記のように、本発明のガスミスト吸入器によれば、吸入器の通常の効果に加えて、ガスミストの生理作用により、薬液を上気道及び下気道に浸透させるだけでなく、患部の血流を盛んにし、炎症などを早く鎮める、免疫力を上昇させる等の効果を発揮することができる。
【0063】
上記のように、本発明のガスミスト吸入器によれば、ガスミスト生成器の一部である液体貯留部を取り外し可能にして他の液体貯蔵部と取替え可能に構成して使用後の液体貯蔵部を使い捨てにすることで、衛生に配慮すると共にコストを低下させることが可能となる。これにより簡易な構成で、ガスミストの生理作用によって薬液を上気道及び下気道に浸透させるだけでなく患部の血流を盛んにし、炎症などを早く鎮める、免疫力を上昇させる等の効果を発揮することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、酸素、炭酸ガス、又は酸素と炭酸ガスの混合ガスと薬剤等の液体を粉砕溶解させたガスミストを生体に経口吸入させるためのガスミスト吸入器に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0066】
10 ガスミスト吸入器
20A ガスミスト吸入器
30 ガス供給手段
31 ガスボンベ
32 ガス供給装置
33 電源スイッチ
34 酸素供給ON/OFFスイッチ
35 炭酸ガス供給ON/OFFスイッチ
36 ガス混合比設定部
37 OFFタイマー(ガス供給時間設定部)
38 ガス供給圧調整部
39 ガス供給管
40 ガスミスト生成器
41 生成器本体
41A、41B 栓
41C フィルム
42 液体貯留部
43 ノズル
43A 先端開口
44 吸液管形成部材
44A 吸液管
45、45′ ガス供給手段接続部
45A ガス吐出口
45B 分岐部
45C 流量調整部
451 ダイヤルスイッチ
452 残量ゲージ
46 蓋部
47 ガス導入部
48 バッフル(衝突部材)
48A バッフル支持部
49 ガスミスト排出部
50 吸入部材
51、51A、51B、51C 吸入マスク
52、52A、52B 接続部
53、53A、53B 吸入口
54、54A、54B 開口
55 口用マスク
56 鼻用マスク
57 ガスミスト供給管
58 ガスミスト供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素、炭酸ガス、又は酸素と炭酸ガスの混合ガス(以下、「ガス」という)を供給するガス供給手段と、
該ガス供給手段との接続部と、液体を貯留する液体貯留部と、前記ガスが供給されるノズルと、該ノズル先端に前記液体を送液する吸液管と、前記ノズルからのガス流によって吹き上げられた液体を衝突させて前記液体と前記ガスとを粉砕溶解させたミスト(以下、「ガスミスト」という)にする衝突部材と、前記ガスが供給され前記ノズルの上部までガスを導く円筒状のガス導入部と、前記ガスミストを収集及び排出するドーナツ形のガスミスト排出部と、を有するガスミスト生成手段と、
該ガスミスト生成手段と接続され、前記ガスミストを生体に吸入させるための吸入口を有する吸入部材と、を備え、
前記ガスミスト生成手段において、少なくとも前記液体貯留部を取り外し可能にして他の液体貯蔵部と取替え可能に構成したことを特徴とするガスミスト吸入器。
【請求項2】
前記ガスミスト生成手段が、外気を取り込むための通気孔を備えることを特徴とする請求項1に記載のガスミスト吸入器。
【請求項3】
前記吸入部材が、外気を取り込むための開口をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のガスミスト吸入器。
【請求項4】
前記ガス供給手段が、カートリッジ式ガスボンベであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスミスト吸入器。
【請求項5】
前記ガス供給手段が、ガス供給時間設定部、ガス供給圧調整部、ガス混合比設定部の何れか一つ又は複数を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のガスミスト吸入器。
【請求項6】
前記ガスミスト生成手段が、複数の前記吸入部材にガスミストを供給することを特徴とする請求項5に記載のガスミスト吸入器。
【請求項7】
前記液体は、水、イオン水、オゾン水、生理食塩水、精製水、又は滅菌精製水の何れか一つ又は複数の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のガスミスト吸入器。
【請求項8】
前記液体は、メンソール、ビタミンE、ビタミンC誘導体、レチノール、麻酔薬、シクロデキストリン、光触媒、光触媒とアパタイトの複合体、ヒアルロン酸、コエンザイムQ10、シードオイル、プロポリス、エタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、両性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、酢酸アルキルジアミノエテルグリシン、次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸、セスキ炭酸ナトリウム、シリカ、ポピドンヨード、炭酸水素ナトリウム、高濃度炭酸泉剤、抗アレルギー剤、抗炎症剤、解熱鎮痛剤、抗真菌剤、抗インフルエンザウィルス剤、インフルエンザワクチン、ステロイド剤、抗ガン剤、又は血圧降下剤のうち、何れか一つ又は複数をさらに含有することを特徴とする請求項7に記載のガスミスト吸入器。
【請求項9】
前記ガスミスト生成手段から前記吸入部材内に供給される前記ミストの粒径が、10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスミスト吸入器。
【請求項10】
前記ガスミスト生成手段が、前記吸入部材へガスミストを供給するためのガスミスト供給管を有し、
該ガスミスト供給管が、管内に付着する液滴を除去するためのフィルターを備えることを特徴とする請求項1に記載のガスミスト吸入器。
【請求項11】
前記ガスミスト生成手段が、前記吸入部材へガスミストを供給するためのガスミスト供給管を有し、
該ガスミスト供給管の全部又は一部がジャバラ状の管から構成されることを特徴とする請求項1に記載のガスミスト吸入器。
【請求項12】
前記ガスミスト生成手段が、前記吸入部材へガスミストを供給するためのガスミスト供給管を有し、
該ガスミスト供給管に、逆止弁を設けることを特徴とする請求項1に記載のガスミスト吸入器。
【請求項13】
前記ガスミスト生成手段の取り外し可能部分が、予め滅菌処理されていることを特徴とする請求項1に記載のガスミスト吸入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−148021(P2012−148021A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10647(P2011−10647)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(505425878)
【出願人】(592248835)日本エー・シー・ピー株式会社 (56)
【Fターム(参考)】