ガス中の蒸気としての化合物を分析するための高感度イオン検出装置及び方法
検体粒子の予備濃縮又はトラッピングすることなく、キャリアガス(特に周囲空気)中に溶解又は懸濁した微量ガス状分子化合物を検出するイオン移動度分光計(IMS)を提供する。IMSは、5cm3以上、好ましくは100cm3より大きいイオン化容量を備える。本発明のより大きいサイズのイオン化装置は、気相内の微量(1ppb未満)の試料化合物の分析を可能にする。IMSの大容量イオン化領域及び反応領域を通して効率的なイオン運動を促進するために、電場勾配が、イオン化領域中、又はイオン化領域と反応領域の両領域中に設けられてもよい。このシステムは、放射性イオン源、コロナ放電イオン源を用いて実施することができる。一実施形態では、試料ガスは、測定器に進入する前に加熱され、測定器は周囲を上回る温度で実行され、測定器は、測定器から退出する加熱試料ガスに接触することで加熱される。
【発明の詳細な説明】
【米国連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載】
【0001】
[0001]本発明は、米国エネルギー省によって授与された助成金番号DE−AC04−944−AL85000の下、米国政府支援によってなされた。米国政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【関連出願の相互参照】
【0002】
[0002]本出願は、2007年11月6日に出願した米国特許仮出願第61/002,121号の利益を主張するものであり、これは、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
[0003]本発明は、一般に物質検出の分野に関し、具体的には、蒸気相にある微量物質の検出感度の増大をもたらす、ガス状試料入口及びイオン化装置を備えるイオン検出装置に関する。本発明の装置は、液体又は固体として蒸気を凝縮又は濃縮することを用いることも、小滴又は粒子として検体物質を収集することもなく、蒸気相の検体に対する優れた感度を実現している。検体物質の凝縮又は濃縮と併せて用いると、いっそう大きい感度を実現することができる。
【0004】
[0004]爆発物、爆発性残留物、化学薬品、空気で運ばれる毒素、及び他の揮発性有機化合物の迅速同定は、イオン移動度測定器の分野においてなされた進歩によって近年革命がなされた。イオン移動度分光測定法に起きた変革にも関わらず、この技術の全潜在能力は、特にガス分析において、未だに現実のものとされていない。このことは、従来のイオン移動度分光計に用いた小さいイオン化装置中で発生するイオンの個数が少ないことに一部原因がある。既存の装置は、イオンの出所である物質を検出するために、(閾値を上回る)ある一定の個数のイオンが存在していることを必要とするので、当業者には理解されるように、既存の装置は、イオン化チャンバ中の物質によって発生するイオンの個数が少ないことで微量の物質を検出することに限られる。
【0005】
[0005]図1は、典型的なイオン移動度分光計(IMS)を示しており、このIMSは、イオン化領域1と、ガス7が内部に入りイオン化される反応チャンバ10と、イオンインジェクションシャッタ12を介して反応チャンバ10に直列に結合されたイオンドリフトチャンバ15と、ドリフトチャンバ15の内部でインジェクションシャッタ12の向かい側に配設されたコレクタプレート16とを含む。動作時は、キャリアガスが、ガス又は蒸気を、分析される材料からイオン源2を含むイオン化領域1の中に輸送する。プレート又はスクリーンの形態であり得る(押出し電極とも呼ばれる)リペラ電極4は、ドリフトチャンバに向かってイオンを向けるために、イオン化領域中に設けられる。複数回の衝突がイオン化種と検体分子の間で生じる場合、結果として生じるイオン(一次イオン)の大部分は、キャリアガス分子からのものであり(「反応性イオン又は反応イオン」)、それらイオンは、反応チャンバ(10)に移動する。これらの衝突により、イオン電荷は、二次イオンを形成する検体分子に移される。反応領域の中に導入される試薬ガスを用い、それによって二次イオンが、一次イオンと相互作用する試薬から主に形成されることが当技術分野でやはり知られている。この場合、試料が、反応領域の中にやはり導入され、電荷が、一次イオン及び二次イオンから検体(第3のイオン)へ移される。全てのイオンは、分光計の内部の電場中で主に「電気泳動」によって移動する。従来の技法によって形成される電場は、イオンを反応チャンバ10からドリフトチャンバ15へ移動させ、そして最終的にコレクタプレート16に到達するようにする。典型的には、ドリフトガスが、ドリフトチャンバの中に導入され、ガス出口9を通って退出する。電気泳動によってイオンが移動する、イオン化装置の外側の装置の結合部は、一般に「ドリフトチューブ」と呼ばれる。Hill,H.Hら(1990年)「Ion Mobility Spectrometry」、Anal.Chem.62(23):1201A〜1209A頁、及びEiceman,G.A.,Karpas,Z.(2005年)Ion Mobility Spectrometry,(CRC Press)は、計器を含むイオン移動度分光測定法の概説を提供する。
【0006】
[0006]米国特許第4,777,363号明細書は、周囲空気中の微量物質を検出するための大気イオン移動度分光計(atmospheric ion mobility spectrometer)を報告する。この分光計では、空気は、試料ガス、キャリアガス、及びドリフトガスとして働く。「単流」では、周囲空気がドリフトチューブのコレクタ端部で入口を通って導入され、ポンプを備えるガス出口が、イオン源を越えて測定器の反対端で設けられる。リペラプレートは、ドリフトガス出口を有する測定器の端部に設けられる。イオン源で形成されたイオン及び反応の際に形成された二次イオンは、イオンパルスがイオンシャッタで形成されるにつれて、ドリフトチャンバの中に移動する。ドリフトチャンバ中のイオンは、空気ドリフトガスの流れの方向とは反対方向に移動する。イオンは、コレクタプレートで検出される。参考文献は、Ni−63(放射性線源)イオン源の使用を記載している。参考文献は、「典型的なNi−63源」を、Ni−63を内面にめっきした(直径1〜2cm、及び長さ1〜2cmで、表面積3〜5cm2を有する)Niの円筒として記載している。「線形応答レンジでの主な制限は、イオン源からのイオンの利用が限られていることに起因している」ことが述べられている。参考文献は、より高放射性のイオン源を、「Ni−63めっきのための複数の穴を備えた直径約3〜5cmのニッケルスラグ(nickel slug)」として記載している。このイオン源は、「イオン源のサイズの増加を必要とすることなく、ずっと大きい表面積及び活動率(activity rate)」を提供することであると言われている。光イオン源も記載されている。測定器は、リペラ端部のポンプを用いて空気圧で封止されると言われている。
【0007】
[0007]米国特許第5,218,203号明細書は、イオン移動度測定手段のドリフトチューブへ試料イオンを導入するための高圧インタフェース装置を報告する。この特許は、この特許の図1に示す「隔離された」イオン源が、イオン源ガス(B1)入口にあることを記載する。「イオン源ガスのイオン化が、試料ガスが存在しない隔離された領域で生じることが重要である」と述べられている。形成された試料ガスイオンは、第2の反応領域の中に導入され、そこで試料ガスイオンは、試料ガス(B2)と反応して試料イオンを形成すると記載されている。使用されるこの装置の構成は、ドリフトチューブの中への不要成分の導入を最小限にするかなくすと記載されている。この特許は、試料ガスの流路を通ってイオン源ガスイオンを向けるための電場Eの存在を述べている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]本発明は、検体粒子を予備濃縮又はトラッピングせずに、イオン移動度分光測定法(IMS)によってキャリアガス中、特に周囲空気中に溶解又は懸濁した微量ガス状分子化合物を検出するための計器及び方法を提供する。
【0009】
[0009]小容量(1cm3未満)のイオン化装置を用いるIMSの従来の手法とは対照的に、本発明は、少なくとも5cm3であるかなり大きい容量のイオン化装置を使用する。好ましい実施形態では、本明細書に用いたイオン化装置は、25cm3より大きい、50cm3より大きい容量を有し、より好ましくは、100cm3より大きい容量を有する。イオン化容量の上限は、特に限定されていないが、理にかなった適用の上限はおそらく、約100Lである。ある特定の実施形態では、イオン化容量は、0.5Lより大きい。他の特定の実施形態では、イオン化容量は、0.5L〜2Lである。追加の特定の実施形態では、イオン化容量は、0.5〜1Lである。本発明のより大きいサイズのイオン化装置は、気相内の微量(1ppb未満)の試料化合物の分析を可能にする。
【0010】
[0010]イオン化及び反応領域を通して効率的なイオン運動を促進するために、好ましくは、本発明のシステムは、イオン化領域中、又はイオン化領域と反応領域の両領域中に電場勾配を備える。設けた電場勾配は、ドリフト領域中に形成された電場勾配に平行である。電場勾配は、イオン化領域と反応領域の両領域中に存在していることが必要であるが、2つの領域間で異なる値であってもよく、勾配は、必ずしもリニアである必要はない。
【0011】
[0011]ある特定の実施形態では、周囲空気は、本発明のIMS中の試料ガスである。別の実施形態では、特に試料ガスが周囲空気であるとき、試料ガスは、測定器の中へ進入する前に、具体的には温度50℃〜120℃へ加熱される。別の実施形態では、測定器は、周囲を上回る温度、具体的には温度50℃〜120℃で実行される。別の実施形態では、測定器は、測定器から退出する加熱した試料ガスに接触することによって加熱される。
【0012】
[0012]ある特定の実施形態では、イオン移動度分光計は、大気圧で動作する。
【0013】
[0013]別に、本発明は、検体混合物の定量化を行うために、検体分子を予備分離するための他の試料導入方法と併用してもよい。
【0014】
[0014]別に、どちらか一方の技術単独の感度を越える感度をもたらすために、本発明のガス分析技術は、検体物質を予備濃縮するための他の試料導入技術と併用してもよい。
【0015】
[0015]空気中の低蒸気圧化合物を検出するためのある特定の実施形態では、本発明は、50cm3以上のイオン化装置の容量、好ましくは500cm3以上のイオン化装置の容量を有するIMSを提供する。本実施形態の測定器は、空気中で1ppbの飽和濃度にあるTNTなどの低蒸気圧化合物を検出するために特に役立つ。
【0016】
[0016]本発明では、空気中のTNTの検体の5ppt(1兆分の1)以下に相当するものと同じくらい小さい濃度の、検出可能な量の検体を含むのに十分なガスを効率的な導入及びイオン化することを可能にするイオン化チャンバ及び反応チャンバが提供される。
【0017】
[0017]IMS分析に用いられるガスの湿度制御を必要とする従来の手法とは対照的に、本発明の測定器及び方法は、ガスの湿度制御を必要としない。特に、周囲空気を分析するときは、周囲空気の湿度制御の必要がない。
【0018】
[0018]ある特定の試料化合物の分析の感度を高めるために試薬化合物の添加を用いる従来の手法とは対照的に、本発明の測定器及び方法は、試薬化合物の使用を必要としない。
【0019】
[0019]さらに、イオンシャッタから離れて空気流中のイオンのエントレインメントを避けるために、イオン化装置及び反応領域の断面積は、試料イオンの電気泳動の方向に垂直な方向のリニア的な局所流速が、試料イオンの電気泳動の速さのかなりの割合(例えば、20%未満又は好ましくは10%未満)とならないように、十分に大きいものとすべきことが望ましい。この制限は、測定器感度を著しく減少させないよう十分に低いものとすべきである。試料イオンの電気泳動の方向に対してキャリアガスが逆流する場合では、リニア的な局所流量は、試料イオンの電気泳動のリニア的な速さを超えるべきではない。好ましくは、リニア的な局所流量は、試料イオンの電気泳動の速さの25%を超えるべきではない。
【0020】
[0020]本発明の別な態様によれば、イオン化チャンバ内で反応性イオンを生成するための様々な可能な手段が、提供される。
【0021】
[0021]ある特定の実施形態では、本発明は、イオン源を有するイオン化領域と、反応領域と、ドリフト領域と、イオン検出器とを含むイオン移動度分光計であって、イオン源のイオン化容量が、5cm3より大きいイオン移動度分光計を提供する。より具体的な実施形態では、イオン源のイオン化容量は、100cm3より大きく、又はイオン源のイオン化容量は、0.5L〜2L(0.5L及び2Lを含む)である。
【0022】
[0022]ある特定の実施形態では、イオン検出器は、ファラデープレートなどのコレクタである。他の実施形態では、イオン検出器は、質量分析計である。追加の実施形態では、イオン検出器は、電子増倍管検出器を備える四重極質量分析計である。これらのベース全てをカバーすることが最良と思われる。
【0023】
[0023]ある特定の実施形態では、本発明は、イオン源を有するイオン化領域と、反応領域と、ドリフト領域と、イオンを検出するためのコレクタとを含むイオン移動度分光計であって、イオン源のイオン化容量が、5cm3より大きく、イオン化領域及び反応領域からイオンシャッタ及びドリフト領域までイオンが移動するのを促進するように、電場勾配が、イオン化領域中、又はイオン化領域と反応領域の両領域中に設けられるイオン移動度分光計を提供する。
【0024】
[0024]本発明のイオン移動度分光計は、1つ又は複数の放射性イオン源を備えてもよい。本発明のイオン移動度分光計は、1つ又は複数のコロナ放電イオン源を備えてもよい。本発明のイオン移動度分光計は、1つ又は複数の多極コロナ放電を備えてもよい。
【0025】
[0025]本発明のイオン移動度分光計は、分光計に入る試料ガスの温度を調整するための加熱器又は冷却器をさらに備えてもよい。
【0026】
[0026]ある特定の実施形態では、本発明は、イオン源のイオン化容量が、0.5Lより大きく、電場勾配が、イオン化領域中、又はイオン化領域と反応領域の両領域中にあるイオン移動度分光計を提供する。
【0027】
[0027]請求項8の本発明のイオン移動度分光計では、イオン化領域中の電場勾配は、複数のリング電極によって与えられてもよい。
【0028】
[0028]本発明は、本発明のIMS分光計を用いるイオン移動度分光法によって試料ガス中の低レベルの検体を検出する方法をさらに提供する。そのような方法では、低レベルの検体を含む試料ガスが、IMSのイオン化容量の中に導入され、検体イオンが、IMS中で検出するのに十分な量で形成されるように、イオン化領域のほぼ全容量が、イオン化を受ける。
【0029】
[0029]本明細書中の方法のある特定の実施形態では、試料ガスは、周囲空気である。本明細書中の方法のある特定の実施形態では、検体は、低蒸気圧検体である。本明細書中の方法のある特定の実施形態では、検体は、TNT又は別の爆発性化合物である。
【0030】
[0030]明細書に組み込まれ、明細書の一部を形成する添付図面は、詳細な説明と共に、本発明の一実施形態を示しており、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来技術のイオン移動度分光計の概略図である。
【図2A】試料含有ガスが、検体イオンの電気泳動の方向と同じ方向にイオン化装置を通過する場合の、本発明の典型的なシステムの、イオン化領域に焦点を合わせた概略図である。放射性イオン源の好ましい位置が示されている。このイオン化領域は、イオン化領域中に透過壁を設けることによって放射性線源を欠いた状態で、光イオン化に同様に用いられてもよい。
【図2B】図2Aの試料導入領域、イオン化領域、及び反応領域を有するイオン化移動度分光計の概略図である。このシステムは、放射性イオン源の配置と共に示される。図2Aについて述べたように、以下本明細書中で述べることになる通り、イオン化領域は、コロナ放電源などの放射性イオン源以外のイオン源の使用、及び光イオン化に適合し得る。
【図2C】図2Aの試料導入領域、イオン化領域、及び反応領域を有する、本発明のイオン化移動度分光計の典型的な実施形態の概略図である。このシステムは、放射性イオン源の配置と共に示される。図面は、イオン化及び反応領域を通してイオンのドリフトを促進するように、電場勾配をイオン化領域中に組み込むことを示す。イオン化ドリフト領域は、例えば一連のリング電極を用いてドリフト領域(15)に類似して形成される。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。
【図2D】図2Cの電場勾配の特徴をより詳細に示す概略図である。複数のリング電極が、リペラとイオンシャッタの間に設けられている。
【図3】試料含有ガスが、検体イオンの電気泳動の方向と反対の方向にイオン化装置を通過する、本発明の測定器の別の典型的な実施形態の、イオン化領域に焦点を合わせた概略図である。図面は、放射性イオン源の使用を示す。例示のイオン化領域は、光イオン化、及びコロナ放電源などの放射性イオン源以外のイオン源の使用に適合し得る。例示の試料導入、イオン化、及び反応領域の特徴は、図2B、図2C、及び図2Dに示すように、IMSシステムに組み込むことができる。
【図4】試料含有ガスが、検体イオンの電気泳動の方向に対して横切る方向にイオン化装置を通過する、本発明の測定器の別の典型的な実施形態の、イオン化領域に焦点を合わせた概略図である。図面は、放射性イオン源の使用を示す。例示のイオン化領域は、光イオン化、及びコロナ放電源などの放射性イオン源以外のイオン源の使用に適合し得る。例示の試料導入、イオン化、及び反応領域の特徴は、図2B、図2C、及び図2Dに示すように、IMSシステムに組み込むことができる。
【図5】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図6】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図7】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図8】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図9】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図10】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図11】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図12】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図13】イオン化領域中にドリフト電場を確立するためのリング電極を含む選択した放射性線源の構成の典型的な実施形態を示す概略図である。図5〜図12の特定のイオン源の構成のいずれかが、一連のそのようなリング電極と容易に組み合わせることができる。これらの構成では、イオン源は、リング電極及び電場勾配の形成に適合するように、図13に示すように複数の部分に構成される。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。
【図14】コロナ放電イオン源を含む、本発明のシステムの典型的な実施形態を示す概略図である。
【図15】コロナ放電イオン源を含む、本発明のシステムの典型的な実施形態を示す概略図である。
【図16】コロナ放電イオン源を含む、本発明のシステムの典型的な実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[0041]用語「イオン移動度分光計」は、適切な単調な電場を通しての気相検体イオンの差異のある移動(differential migration)によって検体を検出及び同定する測定器のことを言うために本明細書で幅広く使用される。IMS検出は、イオン移動度に基づいている。典型的には、図1に示すようなIMSシステムは、イオン化領域と、反応領域と、イオンシャッタと、ドリフトガスを含むドリフト領域と、イオン検出器(ファラデープレートであってもよいコレクタ)とを含む。リペラ・アパーチャグリッドが、適宜設けられる。IMSシステムは、イオン化又は反応領域への任意のキャリアガス、試料ガス、又は試薬ガスの導入及び退出のための、或いはドリフトガスの導入及び/又は退出のための1つ又は複数のガス入口と、1つ又は複数のガス出口とをさらに備える。ファン又はポンプが、システム内のガス循環のために適宜設けられてもよい。電場勾配は、当技術分野で知られているように典型的にはリング電極を用いてドリフト領域中に与えられる。一次イオン、二次イオン、及び適宜の三次イオンは、イオン化及びリアクタ領域中で形成される(それらイオンのうちの一部が、検体イオンである)。測定器のイオン化の端部にあるリペラが、反応領域及びドリフト領域に向かってイオンを向けるために設けられてもよい。アパーチャグリッドは、コレクタのプレチャージを防ぐためにコレクタプレートのための保護物として設けることができる。このグリッドは、イオンの運動に関与する電場の一様性を保持するのを助けることもできる。様々なイオン源をIMSに用いることができ、アルファ放出型及びベータ放出型の放射性線源(例えば、Ni−63源及びAm−241源)、コロナ放電源、光イオン源などが含まれる。IMSは、イオン検出のためにファラデープレートなどのイオンコレクタをしばしば用いる。当技術分野で知られているように、他のイオン検出器が用いられてもよい。例えば、IMS分光計は、イオンの検出及び同定のために四重極質量分析計などの質量分析計に連結されてもよい。そのような測定器は、IMSと質量分析計の間で既知の技術のインタフェースを用いる。例えば、Wu,C.,Siems,W.F.,Asbury,G.R.,Hill,H.H.「Electrospray Ionization High−Resolution Ion Mobility Spectrometry−Mass Spectrometry」、(1998年)Anal.Chem.70:4929〜4938頁を参照されたい。
【0033】
[0042]当技術分野で知られているように、様々なガス流の構成をIMSに用いることができる。例えば、キャリアガス又は試料ガス(例えば、周囲空気)は、電気泳動の下で検体イオンがイオン検出器に向かって進むのと同じ方向にイオン化チャンバを通って流れることができ(「並流」)、或いはキャリアガス流は、電気泳動の方向と反対の方向であってもよく(「逆流」)、又はキャリアガス流は、電気泳動の方向に対して横切ってもよい(「直交流」)。試薬ガスは、使用される場合、典型的にはキャリアガス又は試料ガスとは別に導入される。キャリアガスは、(例えば、1つ又は複数の検体を搬送する)試料ガスであってもよく、又はキャリアガスは、試料ガスとは異なると共に試料ガスとは異なる位置で導入されてもよい。
【0034】
[0043]当技術分野で知られているように、ドリフト領域中へのイオンの進入は、イオンシャッタを用いてゲート制御される。ゲート制御されたイオンは、ドリフト領域の電場勾配中で、イオンが検出されるコレクタに向かって移動する。IMSは、当技術分野で知られているように、正のイオンモード又は負のイオンモードで動作することができる。正イオンは、正イオンモードで検出され、又は負イオンは、負イオンモードで検出される。当技術分野で知られているように、コレクタで形成されたイオン電流は、増幅されてもよい。やはり当技術分野で知られているように、複数のイオンパケットのイオン収集の結果を平均化して、最終的な信号対雑音比を改善することができる。収集されたデータは、任意の知られた手段を用いて分析され、例えば、付属のデータ取得ハードウェア及びソフトウェアを備えたパーソナルコンピュータが用いられ得る。追加の詳細なそのようなIMSは、Hill,H.H.ら(1990年)「Ion Mobility Spectrometry」、Anal.Chem..62(23):1201A〜1209A頁、及びEiceman,G.A.,Karpas,Z.(2005年)Ion Mobility Spectrometry,(CRC Press)の中に見出され得るものであり、それぞれのIMSは、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
[0044]イオン化装置又はイオン源の容量は、所与のイオン化装置又はイオン源によってイオン化できるガスの容量に言及するために本明細書で使用される。放射性同位体を搬送する1つ又は複数の表面を備えるNi−63源などの放射性イオン源に関しては、イオン化装置の容量は、これらの表面の個数、サイズ、形状、及び相対位置、並びに放射性同位体によって放出される粒子の空気中の侵入長に依存し、例えば、Ni−63によって放出されるベータ粒子の空気中の侵入長は、約3mmであり、したがってNi−63が円筒の内部表面上にある約5mmの長さのイオン源については、イオン化装置の容量は、約0.14cm3である。
【0036】
[0045]本発明の改善されたIMSは、種々の図中の同じ番号が、同じ装置要素又は関連した装置要素を表す図面を参照して本明細書中でさらに説明されている。図面は、概略的であり、必ずしも原寸に比例して描かれていない。
【0037】
[0046]図2Aは、反応領域10、試料入口7、ガス出口9、及びドリフト領域15と関連させて本発明の典型的なイオン化領域1を示す。イオン源2は、イオン化領域中に示される。本実施形態では、試料(キャリア)ガス(例えば、周囲空気)は、イオンの電気泳動の流れの方向と同じ方向にイオン化領域に流れ込む。
【0038】
[0047]図2Bは、図2Aの試料ガス流、イオン化領域、及び反応領域を有するIMSシステムを示す。この図は、リペラ(押出し電極4)の位置を示しており、このリペラは、イオン化装置領域中で形成されたイオンを反応領域、及びドリフト領域上へ向ける。反応領域は、イオンシャッタによってドリフト領域から分離されている。試料ガスは、入口7から入り、ガス出口9から退出する。この図は、適宜のものであるドリフトガス入力19を示す。ドリフトガスは、ガス出口から退出するようにドリフト領域を通って流すことができる。本実施形態では、ドリフト領域(ドリフトチャンバ)は、外来性ガス(exogenous gas)のエントランスが封止される。例えば、空気以外のガス、例えば窒素を用いてイオン移動度の決定を行うことが望まれ得る。周囲空気中の検体を分析するための本発明のある特定の実施形態では、特定のドリフトガス入力はなく、ドリフトチャンバは、ドリフトガスとしての役割を果たす周囲空気による進入に対して封止されていない。周囲空気が、システムの中に導入される前に周囲空気を乾燥させる必要がないことが本発明の測定器で示されている。測定器は、望まれていない成分を試料又はドリフトガスから排除するためのフィルタを適宜備えることができることが示されている。当技術分野で知られているように、ドリフト領域は、ドリフトチューブ中のイオンをコレクタに向かって移動させる電場勾配を備える。
【0039】
[0048]上述の通り、微量検体を検出するのに必要なより多数のイオンを発生させるために、本発明のIMSのイオン化領域は、従来のIMSシステムよりも大きいイオン化容量を有する。具体的な実施形態では、イオン化容量は、50cm3より大きく、又は100cm3より大きい。より具体的な実施形態では、イオン化容量は、0.1〜1.0リットル(100cm3〜1000cm3)、又は0.5〜1.0リットルである。微量ガス分析のためのこれらの実施形態では、IMSの中に導入されるほぼ全て(95%以上)の試料ガスの容量が、イオン化を受けることが好ましい。好ましくは、イオン化容量は、IMSのイオン化領域の容量にほぼ(95%以上)一致させられる。
【0040】
[0049]本発明の実施形態では、イオン化領域は、反応領域及びドリフト領域へのイオンの電気泳動を促進するように電場勾配20を備える。本実施形態は、(IMSの軸に沿った)イオン化容量の長さが、イオン化容量の直径(円筒)[又は、矩形の高さ又は幅]の25%より大きい場合、特に役立つ。例えば、複数のリング電極が、反応領域及びドリフト領域へのイオンの電気泳動を促進するように設けられてもよい。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。
【0041】
[0050]図2Cは、図2Aのイオン化領域を含む本発明のいくつかの特定の実施形態を示す。第1の実施形態では、電場勾配は、複数のリング電極を設けることによって上記のようにイオン化領域中に与えられる。電極は、イオン化領域の長さに沿って等間隔で配置されてもよい。リング電極は、同様に反応領域を通って延在してもよい。これらのリング電極の電気的接続を図2Dにより詳細に示す。この図は、イオン源、リペラ、リング電極、及びシャッタの好ましい相対的なポジショニングを示す。様々な電極の構成が、所望の電場勾配を与えるために用いることができることは、当業者には明らかであろう。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。
【0042】
[0051]また、試料ガスが、加熱器領域22中のシステムの中へ進入する前に加熱され、測定器から退出する試料ガスは、測定器を囲む出口ガスプレナムに入る実施形態が、図2Cに示されている。このようにして、加熱器試料ガスを用いて測定器全体を加熱する。測定器は、周囲温度又は周囲を上回る温度で実行することができる。ある特定の実施形態では、測定器は、50℃を上回る温度で実行される。ある特定の実施形態では、測定器は、温度50℃〜120℃で実行される。ある特定の実施形態では、測定器は、温度100℃で実行される。代替の実施形態では、本発明のIMSは、冷却器又は冷却剤を与えることによって周囲を下回る温度で実行されてもよい。例えば、試料ガスは、IMSシステムの中に導入する前に所望の温度に冷却されてもよく、システムから退出する冷却した試料ガスが、システムを冷却するために用いられてもよい。
【0043】
[0052]図3は、反応領域10、試料入口7、ガス出口9、及びドリフト領域15と関連させて、本発明の別の典型的なイオン化領域1を示す。イオン源2は、イオン化領域中に示される。本実施形態では、試料(キャリア)ガス(例えば、周囲空気)は、イオンの電気泳動の流れの方向とは反対方向にイオン化領域に流れ込む。図3の構成は、図2B〜図2Dに示す装置のいずれかで実施することができる。
【0044】
[0053]図4は、反応領域10、試料入口7、ガス出口9、及びドリフト領域15と関連させて、本発明の別の典型的なイオン化領域1を示す。イオン源2は、イオン化領域中に示される。本実施形態では、試料(キャリア)ガス(例えば、周囲空気)は、イオンの電気泳動の流れの方向に垂直な方向にイオン化領域に流れ込む。図3又は図4の構成は、図2B〜図2Dに示す装置のいずれかで実施することができる。印加電場が、イオンをイオンシャッタへさらに搬送するようにガス流量を調整しなければならないことが理解されよう。
【0045】
[0054]図5〜図12は、本発明のIMSに役立つ様々な典型的な放射性イオン源の構成を示す。これらの構成は、より大きいイオン化容量で高効率イオン化を実現するのに特に役に立つ。これらの構成は、イオン源に役立つ任意の適切な放射性同位体を用いて、特にNi−63源及びAm−241源について実施することができる。各構成では、例示の円筒内の全容量が、イオン化を受けることが意図される。様々なイオン源の要素のサイズ(例えば、直径)、及びそのような要素同士の間の間隔は、用いた放射性線源によって放出される粒子の侵入長に基づいて調整される。イオン源の構成の特定の実施形態は、円筒形であるように示されるが、これらの要素は、所望の機能を与えることになる任意の断面形状を有することができることが当業者によって理解されよう。
【0046】
[0055]図5は、(チューブの形態の)イオン源の要素42の内面28が、適切な放射性同位体で被覆又は適切な放射性同位体を他の方法で備える実施形態を示す。チューブ42は、イオン化領域の壁で形成することができ、又はイオン化領域内の分離要素であってよい。この図は、反応領域10、イオンシャッタ、及びドリフト領域に対してのイオン化領域中のイオン源の相対位置を示す。矢印は、アルファ粒子又はベータ粒子が、内面28上の放射性物質から放出する方向を示す。好ましくは、チューブ42の直径は、2×放出粒子の侵入長以下である。
【0047】
[0056]図6は、イオン源の要素が、イオン化領域中に配置された単一の円筒棒44である、別のイオン源の実施形態を示す。円筒棒は、イオン化領域の壁であり得るチューブ42内で中心にあるように示される。この棒は、矢印(29)によって示すように、棒の表面から粒子を放出する。この棒の直径に依存するが、好ましくは、外側チューブの直径は、最大でも約2×放出粒子の侵入長である。
【0048】
[0057]図7は、イオン源が、複数の要素(表面から粒子を放出する円筒棒44)を備えている、別の実施形態を示す。図8は、外側チューブ42と、このチューブ内に配置された複数の円筒形要素44とを備え、各円筒形要素44が粒子を放出する、さらに別のイオン源の実施形態を示す。この場合、外側チューブ(28)の内部表面は、やはり放射性同位体を備え、粒子を放出する。円筒形放出棒44の本数、及びこれらの実施形態における円筒形放出棒44の相対的配置は、イオン化領域の全容量が、放出粒子を受けることを確実にするように調整することもできる。イオン化領域を通るガス流が、特に限定されるべきではないこと以外は、棒の本数は、特に限定されていない。ある特定の実施形態では、1〜10個のそのような棒が、設けられてもよい。いずれの場合にも、イオン化領域の全容量がイオン化を受けるように、外側チューブ42の直径は、用いた(1つ又は複数の)放射性同位体の侵入長に基づいて調整されることが好ましい。イオン化領域及びイオン源の要素は、形状が円筒形であるように示される。これらの要素は、特に形状が限定されるものではなく、要素のサイズは、所望のイオン化容量を得るように調整されると共に、ほぼ全てのイオン化領域の容量が、放出粒子にさらされるように調整される。様々な放射性同位体を、様々な表面上に設けることができる。
【0049】
[0058]図9及び図10は、追加の典型的なイオン源の構成を示しており、この構成では、イオン源の要素は、外側チューブ42内の1つ又は複数のチューブ52である。図9では、外側チューブの内面(28)、並びに内側チューブの内面(58)及び外面(56)は、放射性同位体を備え、それによりこれらの表面から粒子が放出される(矢印29参照)。外側チューブ42の直径及び内側チューブ52の直径は、放出粒子が及ぶ容量を最大にするように調整される。図10は、複数の内側チューブ52が、より大きい直径の外側チューブ42内に設けられている関連した実施形態を示す。やはり、外側チューブ(28)の内面、並びに内側チューブ(52)の内面(58)及び外面(56)は、(1つ又は複数の)放射性同位体を備え、粒子を放出する。外側チューブの直径、並びに内側チューブ52の個数、相対的配置及び直径は、放出粒子が及ぶイオン化領域内の容量を最大にするように調整される。イオン化領域及びイオン源の要素は、形状が円筒形であるように示される。しかし、これらの要素は、特に形状が限定されるものではなく、要素のサイズは、所望のイオン化容量に調整されると共に、ほぼ全てのイオン化領域の容量が放出粒子にさらされるように調整される。様々な放射性同位体を、様々な表面上に設けることができる。
【0050】
[0059]図11及び図12は、(入れ子集合のチューブを形成する)複数の同心のチューブ(例えば、52、62)が、イオン化領域中で用いられている、他の典型的なイオン源の構成を示す。図12は、2つ以上の入れ子集合のチューブの設備を示す。外側チューブ42の内面28、並びに内側チューブ(52、62)の内面(58、68)及び外面(56、66)は、放射性同位体を備え、粒子を放出する。イオン化領域及びイオン源の要素は、形状が円筒形であるように示される。しかし、これらの要素は、特に形状が限定されるものではなく、要素のサイズは、所望のイオン化容量に調整されると共に、ほぼ全てのイオン化領域の容量が、放出粒子にさらされるように調整される。様々な放射性同位体を、様々な表面上に設けることができる。
【0051】
[0060]5〜図12の全実施形態では、イオン源の棒要素、ロッド要素、又はチューブ要素は、イオン化領域の長さに沿って不連続であっても連続であってもよいことが理解されよう。これらの要素は、電場勾配が、イオン化装置の長さに沿って確立及び保持することができる限り、適用に適した任意の物質で作製できる。
【0052】
[0061]図5〜図12に示すチューブ及び棒の組み合わせは、必要であれば、所与のイオン化領域中に作成することができることを理解されたい。
【0053】
[0062]図13は、リング電極21が設けられているイオン化領域の構成を示す。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。イオン化領域の長さに沿って不連続である複数の棒又はチューブ(42、44、52など)の使用は、リング電極による電場勾配の形成に適合する。例示の実施形態では、放射性同位体を搬送し、粒子を放出する(矢印29参照)複数のイオン源の要素72が、リング電極内に設けられる。リング電極の内面も、放射性同位体を備え、粒子を放出することができる。
【0054】
[0063]図5〜図12及び図13に示す各イオン化領域は、図2A、図3又は図4のシステムの構成、及び図2B〜図2DのIMS測定器で実施することができる。イオン源の要素(棒及びチューブ)を互い及びイオン化領域の(1つ又は複数の)内壁に対して所望の相対位置に保持するために、様々な支持要素を使用することができることは当業者には明らかであろう。
【0055】
[0064]図14〜図16は、1つ又は複数のコロナ放電源が、イオン化領域中でイオン源として用いられている、本発明の典型的な実施形態を示す。コロナ放電源は、これらの図中でコロナ放電点及びコロナ放電スクリーンで概略的に示される。任意の既知の技術のコロナ放電の構成は、イオン源が、本発明の測定器に用いることができるときに役立つ。Madani,M.R.;Miller,Toby A.「Current Density Distribution Measurement Of Negative Point−To−Plane Corona Discharge」、IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement(1998年),47(4),907〜913頁;Cross,J.A..「An Analysis Of The Current In A Point−To−Plane Corona Discharge And The Effect Of A Back−Ionizing Layer On The Plane」、Journal of Physics D:Applied Physics(1985年),18(12),2463〜71頁を参照されたい。例えば、2つ以上のコロナ点の電極は、コロナ放電スクリーンと組み合わせて、多極コロナ放電を与えることができる。Jaworek,A.;Krupa,A.「Electrical Characteristics Of A Corona Discharge Reactor Of Multipoint−To−Plane Geometry」、Czechoslovak Journal of Physics(1995年),45(12),1035〜47頁を参照されたい。
【0056】
[0065]図14は、試料ガスが、イオンの電気泳動の方向にシステムの中に導入されている構成中のコロナ放電イオン源を示す。図15は、試料ガスが、イオンの電気泳動の方向のものとは反対である方向にシステムの中に導入されているコロナ放電イオン源の構成を示す。図16は、試料ガスが、コロナ放電に直接接触しない、別のコロナ放電イオン源の構成を示す。試薬ガスは、入口37で導入され、出口39又は試料ガス出口9から退出する。試料ガスは、コロナ放電の下流に導入され、試料ガス出口9から退出する。試薬ガスの流れは、試料ガスがコロナに接触するのを防ぐ傾向にある。この構成では、形成された一次イオンの大部分は、空気であり得る試薬ガスストリーム中の大部分のガスのものである。一次イオンは、電荷を試薬(二次イオン)に移し、試薬(二次イオン)は、電荷を試料(三次)に移す。一次イオン及び二次イオンは、反応領域を通って移動し続けて、第3のイオンを形成する。イオンは、最終的に、イオンシャッタを通過した後にドリフト領域に入る。
【0057】
[0066]本発明の一実施形態では、ある一定の検体の予備濃縮の必要性は、排除されており、すなわち、検体の粒子を収集すること、又は検体を蒸気から固相又は液相へ凝縮することは必要でない。予備濃縮をなくすことの工学的利益には、分析時間の削減、及び測定器の簡素化が含まれる。
【0058】
[0067]予備濃縮技術は、その効率の悪さに関わらず、IMSの感度の増加をもたらし得る。本発明の目的は、予備濃縮と本明細書に記載した大容量イオン化装置を組み合わせることによってさらにいっそう高感度のIMS測定器を実現する実施形態を提供することである。
【0059】
[0068]本発明の一実施形態では、大きい表面積の予備濃縮用試料収集装置が、大容量イオン化装置及び大容量反応領域を組み込むIMS測定器に接続され、適したイオンシャッタ、ドリフト領域、及び検出器に結合される。本実施形態では、非常に大容量の、おそらく何千リットルの非常に希釈した、おそらく100京分の1以下の濃度の蒸気相の検体からの検体分子は、何百平方センチメートルの表面上へ吸着でき、続いて試料をよりずっと小さい容量、おそらく1リットルのガスに脱着することにより、IMS測定器に入る検体蒸気の濃度の大きな増加をもたらすことになる。予備濃縮と本明細書に記載した大容量イオン化装置技術の感度の増加とを組み合わせると、感度への乗法的効果、すなわち、いっそう大きい感度をもたらすことになるということが予期される。
【0060】
[0069]別の実施形態では、本明細書に記載した大容量イオン化装置の特徴を組み込むIMS測定器は、検体分子の通過を可能にし、外部ガスの潜在的な影響を低減させる膜分離装置に接続されることになる。
【0061】
[0070]本発明の別の実施形態では、本明細書に記載した大容量イオン化装置の特徴を組み込むIMS測定器は、IMS分析の前に分子種の分離を行うために、ガスクロマトグラフなどの試料分離装置に接続されることになる。この予備分離により、検体混合物の定量分析、及びいっそう複雑な混合物の半定量分析が可能になる。
【0062】
[0071]従来の手法に対して大容量イオン化装置を用いる概念が採られる限り、本発明を用いて可能な多くの修正形態があることは明らかなはずである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって画定されるものである。
【0063】
[0072]さらに、様々な典型的な実施形態の要素及び/又は特徴は、本開示及び添付の特許請求の範囲の範囲内で、互いとの組み合わせ及び/又は互いとの置換を行うこともできる。
【0064】
[0073]他の実施形態では、本発明の上記及び他の典型的な特徴のいずれか1つは、装置、方法、又はシステムの形式で具現化することができる。例えば、前述の方法は、図面に示した方法論を行うための構造のいずれかを含むがそれに限定されないシステム又は装置の形式で具現化される。
【0065】
[0074]記載した方法のどれも、図面に示した方法論を行うための構造のいずれかを含むがそれに限定されないシステム又は装置の形式で具現化される。本明細書に記載した測定器、システム、又は装置のどれも、特に図面中のものは、開示した測定器、システム、又は装置を用いる方法の中で具現化することができる。
【0066】
[0075]このように例示的な実施形態を説明してきたが、同じものを多くのやり方で変更することができることは当業者に明らかであろう。そのような例示的な変更形態は、本発明の精神及び範囲から逸脱するとみなされるべきではなく、当業者に自明であろうそのような全ての修正形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものである。
【0067】
[0076]構成要素についての構成要素の個数、位置、形状などは、図面に示した方法論を行うための構造のどれにも限定されない。
【0068】
[0077]物質、装置の構成要素、構成、又は方法のグループを本明細書に開示するとき、これらグループの個々の全要素、及びその全てのサブグループは、別々に開示されていると理解される。マーカッシュグループ又は他のグループ化が本明細書で用いられるとき、そのグループの個々の全要素、並びにこのグループの可能な限り全ての組み合わせ及びサブコンビネーションは、その開示に個々に含まれるものである。本明細書に記載又は例示された構成要素のあらゆる表現(formulation)又は組み合わせを使用して、特段の明記がない限り、本発明を実施することができる。本明細書で範囲、例えば、温度範囲、時間範囲、又は距離範囲が与えられるときはいつでも、全ての中間範囲及び部分的範囲、並びに所与の範囲に含まれる全ての個々の値は、本開示に含まれるものである。
【0069】
[0078]本明細書において使用される、「備える、含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む、含有する(containing)」、又は「ことを特徴とする(characterized by)」と同義であり、包含的又はオープンエンドであり、追加の未列挙の要素又は方法ステップを除外しない。本明細書において使用される、「からなる(consisting of)」は、クレーム要素で特定されていないいずれもの要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書において使用される、「本質的に、〜からなる(consisting essentially of)」は、クレームの基本的な特徴及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない物質又はステップを除外しない。用語「備える、含む(comprising)」は、用語「本質的に、〜からなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」よりも広いものであるとするが、本明細書において使用される広義の用語「備える、含む(comprising)」は、より狭い用語「本質的に、〜からなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を包含するものであり、したがって、用語「備える、含む(comprising)」は、特許請求の範囲の基本的な特徴及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないステップを除外するために「本質的に、〜からなる(consisting essentially of)」と置き換えることができ、「備える、含む(comprising)」は、列挙されていないクレーム要素を除外するために「からなる(consisting of)」と置き換えることができる。
【0070】
[0079]本明細書に例示的に適切に記載した本発明は、本明細書に具体的には開示されていない任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の限定を欠く場合でも実施することができる。
【0071】
[0080]当業者は、具体的に本明細書に典型的に示されたもの以外の物質、装置の要素、装置の構成、及び方法が、過度の実験に頼ることなく本発明の実施に用いることができることを理解するであろう。任意のそのような物質、装置の要素、及び方法の既知の技術全ての機能的な均等物は、本発明に含まれるものである。用いられた用語及び表現は、説明の用語であり、限定でない用語として用いられており、そのような用語及び表現の使用において、例示及び記載した特徴、又はその部分の任意の均等物を除外することは意図されておらず、様々な修正形態が、クレームされた本発明の範囲内で可能であることが理解される。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び随意的な特徴によって具体的に開示されているが、本発明に開示された概念の修正形態及び変更形態は、当業者が用いることができ、そのような修正形態及び変更形態は、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲内であるとみなされることを理解されたい。
【0072】
[0081]明細書で言及した全ての特許及び公報は、本発明と関連する当業者の技術水準を示すものである。本明細書で引用された参考文献は、その出願日の時点での当技術分野の状態を示すために、全体として参照により本明細書に組み込まれ、この情報は、必要に応じて、従来技術にある特定の実施形態を除外するために本明細書において用いることができるものである。例えば、化合物が特許請求の範囲に記載されているときには、本明細書中で開示された参考文献に開示された化合物を含め、当技術分野で知られた化合物は、請求項に含まれるものではないことを理解されたい。
【0073】
[0082]本明細書中で引用された全ての参考文献は、本明細書の開示と矛盾のない限りにおいて参考により本明細書に組み込まれる。本明細書中で与えられたいくつかの参考文献は、参考により組み込まれることで、出発物質の源、追加の出発物質、追加の試薬、追加の合成方法、追加の分析方法、及び追加の本発明の用途に関して詳細を与える。
【0074】
[0083]以下の説明では、微量蒸気検体の検出のための図1のIMSなどのIMSの動作に対して、爆発物TNT(トリニトロトルエン、式量227)を微量蒸気検体の一例として用いることにする。実際には、試料がTNTである必要も、キャリアガスが空気である必要もない。この説明は、他のガス中で搬送される他の検体蒸気に一般化することができる。
【0075】
[0084]イオンは、各イオン種に固有の「移動度の減少」のパラメータ、及び課された電場勾配に比例する速さで電気泳動中に移動する。大気圧及び場の勾配200V/cmで、この速さは、200〜600cm/秒に及ぶ [Cl−などについての最大をチェックせよ]。TNTについては、イオンの速さは、300cm/秒近くになるであろう。
【0076】
[0085]分解能の改善のために、アパーチャグリッド17(図1参照)は、「イオンパケット」に接近することで帯電することによるコレクタのプレチャージを防ぐためにコレクタプレート16のための保護物として働く。このグリッドは、イオンの運動に関与する電場の一様性の保持も助ける。
【0077】
[0086]ドリフトチューブは、円形又は任意の特定の形状である必要はないが、電極アレイのパラメータは、シャッタ(又はパルスされたイオン源)によって解放されるイオンのパケットが、最小の時間の歪みでコレクタプレート電極16(図1)に到着することを可能にしなければならず、すなわち、理想的には、パケットの前線境界上のイオンは、同時に16に到着すべきである。同様に、イオン化領域又は反応領域が、円形又は任意の特定の形状である必要はない。
【0078】
[0087]イオンシャッタ12(帯電された1つ又は複数のグリッド)は周期的に開放されて、イオンのパルスが、ドリフトチャンバ15の中に入ることを可能にする。コレクタプレート16での各イオン種の到達時間は、ドリフトチャンバ15を満たす非イオン化ガスのイオン移動度によって決定される。ドリフト時間の関数として収集されたイオンの量は、マイクロプロセッサ(図示せず)によって記録される。
【0079】
[0088]典型的には、イオンシャッタ12は、イオンパケットの通過を可能にするように100〜1000μ秒の時間にわたって「開放」される(又はイオン源がパルスされる)。現在のIMSに用いられる電流測定装置は、ピコアンペアレンジの電流、又は毎秒約600万個のイオンを測定できるに過ぎない。幅による乗算(multiplication by the width)(検出器に到着し、三角形のようなピーク形状の近似を用いるイオンパケットは典型的には1000μ秒)は、検出可能な各パケットが、約3000個のイオンを含むことを明らかにする。これにより、約10ミリキュリーの放射能のNi−63放射性イオン源を含む市販のIMSについての公称検出限界になる。
【0080】
[0089]IMS装置の応答は、広範囲にわたってイオン化装置の活動状態と試料サイズの両方に比例する。小型IMS装置は、10μキュリーの放射性物質しか含まない可能性がある。結果として、10ミリキュリーの放射性物質を含む静的IMS装置(stationary IMS device)に比べると、3000個のイオンからなるイオンパケットを作り出すために、公称1000倍以上の試料が、小型IMS装置に導入されなければならない。試料サイズ、したがって検出限界を減少させるために、a)利用できるイオンに対する検出器の感度を増大させること、b)パケットのイオンの個数を増加させること、又はc)単一の検体のその個数のイオンをより短い時間内に到着させ、それによって瞬間イオン電流を増加させることが望ましい。3つの状況全てが、試料測定の信号対雑音比を増加させる。典型的には、多くのパケットが分析され(多数の「スキャン」)、その結果を平均化して最終的な信号対雑音比を改善する。
【0081】
[0090]既存のIMS測定器は、爆発物の粒子を収集するために空気を濾過すること、又は粒子状試料を収集するために表面をこすり「スワイプ」すること、又は試料蒸気を表面上へ凝縮することによって均一に爆発物試料を収集する。これらの手続きにより、試料を「予備濃縮」し(preconcentrate)、それによって、試料の凝縮相が、気相に蒸発されると、試料の可能な限り最高の気相濃度が、IMSのイオン化チャンバに導入される。これらの方法を用いて、市販のIMS測定器は、爆発物に対する「数十ピコグラム」の感度を実現する。
【0082】
[0091]その発明者らは、予備濃縮なしで「数十ピコグラム」の任意の物質を検出することができるIMS測定器に気付いていない。さらに、試料は、乾燥ガスを用いて分析されるに過ぎない。加えて、「試薬」ガスを用いて検体分子への電荷移動を促進することは当分野でよくあることである。
【0083】
[0092]市販の測定器の全体的効率は、参考文献によって3000個のイオンの検出限界に計算され得る。爆発物TNTの3000個のイオンのパケットは、スキャン当たり合計1.1アトグラム(「ag」)の重さがあることになる。毎秒25スキャンの繰り返し率での25スキャンを平均化してデータを取得すると仮定すると、TNTイオンの27.5agが、シャッタを通過する。これらのイオンが、試料10ピコグラムに由来する場合、導入された質量の0.00028%だけが、検出器に到達する。典型的なシャッタの0.1%のデューティサイクルの計算により、イオン化効率0.28%を得る。用語「数十ピコグラム」が、実際には50pgを意味する場合、イオン化効率は、いっそうおそらく0.05%である。低効率の予備濃縮/蒸発法は、1つには、加熱器の固体表面で加熱している間の試料の熱分解によるものであり得る。
【0084】
[0093]検出のため試料の濃度を最大にするためには、放射性同位体Ni63によって放出されるベータ粒子の空気中の侵入長に等しい内半径(約3mm)、及び長さ約5mm、又は容量0.14cm3を有する円筒によって代表されるように、市販の測定器のイオン化チャンバは、小さい。Siegelは、イオン再結合に利用できる時間を最小限にするために、チャンバのサイズは、イオン化装置の壁で試料イオンの損失を最小限にすると共に、リニア流速を増大させるように小さくすべきであると述べている(M.W.Siegel,in T.W.Carr,Plasma Chromatography,Plenum Press,New York,1984年,97ff頁)。Siegelの分析は、イオン化装置に印加される電場の影響を含まず、半径がより大きいイオン化装置を述べていない。電場の印加は、正に帯電された粒子及び負に帯電された粒子を迅速に分離することによってイオン再結合を大いに最小限にする。
【0085】
[0094]10pgのTNTを含む空気の容量が、評価され得る。結晶のTNTの固体と室温及び室内圧力での空気との間の平衡(「飽和」)状態での空気中のTNTの濃度は、10−9gTNT/1g空気である。室温及び密度1.18g/Lでは、TNTで飽和した空気8.49cm3は、10pgのTNTを含むことになる。この容量は、上記の市販のIMSイオン化装置の容量の約63倍である。
【0086】
[0095]TNTの試料の上を通る周囲空気は、TNTの飽和濃度近くにあるとは予想されない。追加の周囲空気又は他のガスによるそのような気流の希釈は、濃度をさらに低減させることになる。IMS装置に到達するTNTの濃度が、飽和の1/100又は1/10000である場合、10pgのTNTが入れられていることを確実にするために、空気0.085〜8.5Lが、イオン化装置に導入されなければならない。
【0087】
[0096]検出限界の試料10pgを取得するために、25スキャン/秒の繰り返し率での25スキャン(全サンプリング時間1秒)が必要とされる場合、流量85〜8,500cm3/秒(0.085〜8.5L/秒)が、必要とされることになる。通常は、上記の市販のイオン化装置の中への流量は、100cm3/分又は1.7cm3/秒程度である。周囲空気中に存在しているTNTは、従来のイオン化装置を用いて検出することができないことが明らかである。
【0088】
[0097]イオンだけが、「電気的ダウンヒル(electrically downhill)」で移動し、すなわち、負イオン(陰イオン)だけが、もっと正の電圧の領域に向かって移動し、正イオン(陽イオン)だけが、もっと負の電圧の領域に向かって移動する。イオン化領域が電場を受けるとき、同じ現象が、イオン化装置で生じる。これを利用して、イオンシャッタ及びドリフト領域の方向のガスストリームからイオンを取り出すことができる。
【0089】
[0098]印加電場勾配200V/cmでは、TNTイオンは、電気泳動の下で、TNTイオンを搬送するガスに対して300cm/秒で移動する。キャリアガスが、イオン化装置を通過した後、キャリアガスは、ある種の排気口を通って排除されなければならない。排気口の外へ移動するガスのエントレインメントに対するイオンの損失を最小限にするために、空気は、空気が反応領域を離れるときに、イオン流に対して横切る方向に大変ゆっくり移動しなければならない。
【0090】
[0099]キャリアガスは、電気泳動の下で検体イオンがイオン検出器に向かって進むのと同じ方向にイオン化チャンバを通って流れることができ(「並流」)、又は反対の方向に流れることができ(「逆流」)、又はイオン流に対して横切る方向に流れることができる(「直交流」)。逆流を用いる測定器では、検体イオンの電気泳動の方向とは反対方向のガスのリニア流速は、検体の電気泳動の速さを超えてはならず、さもなければ、検体イオンは、検出器に決して到達せず、エントレインされ、排気口を通って運び出されることになる。並流を用いる測定器、及び直交流を用いる測定器では、過度のキャリアガス流が、検体イオンの一部をエントレインすることになり、検体イオンのほんの一部は、検出器に決して到達しない。
【0091】
[00100]逆流モードと直交流モードの両方の動作は、試料分子が、望まれていない電荷符号の反応性イオンにさらされることにならないという少なくとも利点を有し得る。そのようにさらされることにより、試料分子の分解及び感度の低下がもたらされ得る。
【0092】
[00101]IMS測定器用の最適に設計されたイオン化装置は、測定器の残りで必要なドリフト時間及びデータ処理時間に適合する速さでガス流量を与えなければならない。円筒中のガス流量の「栓流(plug−flow)」モデルを用いて、円盤状の容量の試料を含む空気のイオン化が、中性試料分子と反応性イオンを混合する間の時間、及びイオンがシャッタに到達する時間で生じなければならない。試料分子が、イオン化装置のチャンバ内でイオン化されていない場合、ドリフト領域が妨げられないように、排気ガスが、反応領域から一部の試料分子をエントレイン及び搬送することができるように、ガスの大部分は、ガスがシャッタに到達する前に測定器から退出しなければならない。イオン化装置領域の幾何形状、反応領域の幾何形状、換気領域の幾何形状の構成ごとにいくつかの最適なリニア流速があることになる。
【0093】
[00102]正に帯電された検体イオンを直接生成するように試料分子の光イオン化を仕向けることによってイオン化が生じる適用例では、反応領域の必要性がない。光イオン化によって解き放たれる電子は、検出器から離れて移動し、試料分子が電子にさらされることを最小限にするために逆流を利用することが有利であり得る。検体分子の性質に応じて、電子との有害な反応はない可能性がある。
【0094】
[00103]電子源(プラズマ、コロナ放電、光電子放出など)が、負に帯電された検体イオンを作り出すために用いられる適用例では、正に帯電されたイオンがほとんど又は全く生成されないことが期待される。この場合、キャリア流は、並流又は逆流であり得るものであり、測定器の感度の違いはほとんどない。
【0095】
[00104][数値例]蒸気相にあるTNTのIMS分析を示すことにする。この分析は、市販の3000電子/秒の検出器エレクトロニクス、及び上記の飽和率1/10000に基づいている。
【0096】
[00105]放射性同位体Am241(アメリシウム241)によって放出されるアルファ粒子の比較的大きい侵入範囲(約5cm)を利用することができる。内径4インチ(10.16cm)、及び長さ4インチの円筒形イオン化装置の断面全体は、円筒の中心軸に位置するAm241源からのアルファ粒子にさらされることになる。平均リニア流速224cm/秒(5マイル毎時)において、内径4インチのチューブは、18.2×103cm3/秒、又は必要とされる流量8,500cm3/秒の2倍(濃度が大きくなるほど少なくなる)を送ることになる。空気が、長さ2インチの周方向開口によって排出される場合、半径方向の気流速度は、10cm/秒になり、この速度は、エントレインメントに対してイオンの損失を最小限にするのに十分に低いものである。
【0097】
[00106]試料分子の試料イオンへの最高の変換は、試料分子数密度に比べて、過度の反応性イオン数密度が発生し、反応性イオンが、最大数の試料分子を試料イオンに変換するのに十分な期間にわたって試料分子と接触すると生じる。
【0098】
[00107]Siegelは、イオン化装置内のイオン発生率は、106×(単位がミリキュリーの放射能の強さ)×(単位がeVの粒子エネルギー)/容量であると述べている。以下の実験例(Experimental Example)では、直径4インチ×4インチのイオン化装置の2.7mCiのAm241(粒子エネルギー4.5MeV)を用いると、これは、9.88×109電荷/cm3/秒である。Siegelは、検体と反応性イオンの間の電荷交換の二次反応率定数は、10−9cm3秒−1であるとも述べている。したがって、検体が90%イオン化されるのに必要な時間は、0.01秒である。この時間は、5マイル毎時のリニア的な流れでの内径4インチ×4インチの円筒形イオン化装置内の空気の滞留時間(0.045秒)の状態よりも短く、(空気流を無視している)200V/cmで4インチのイオン化装置及び2インチの反応領域を横切るための一価のTNTイオンの時間(0.051秒)より短い。結果として、TNT試料蒸気のほぼ完全なイオン化が予想される。
【0099】
[00108]これらの比較は、分光計内のガス流量のリニア流速、及びイオン化装置/反応領域の長さは、相互依存的であることを示唆する。反応領域が、反応性イオンと検体分子の間の電荷移動が本質的に完了するのに十分長い場合、効果的なイオン化が、大容量の流量で生じることになる。
【0100】
[00109]代替として、より小さい侵入範囲の複数の放射性線源、例えば、侵入深さ3mmであるベータ粒子を放出する同位体Ni63を含む装置が、大直径のストリーム又は複数のストリームの試料含有ガスをイオン化放射にさらすために使用されもよい。別の代替例として、光源が、ガス中に含まれた試料分子を光イオン化するために使用されもよく、おそらく試料の光子への露出を増加させることを可能にするために反射鏡を用いる。さらに別の代替例として、放射性同位体源のいくつかの可能なタイプの電子源が、所定の位置で使用されてもよい。
【0101】
[00110]放射性物質は、イオン化チャンバの内面にあってもよく、エネルギー粒子が、チャンバの軸に向かって内向きに放射することが可能である。好ましくは、放射性線源は、放出粒子が外向きに放射するようにチャンバのインナー軸に、又はその軸の近くに設置されてもよい。全粒子は、全粒子がその運動エネルギーを全て失ってしまうまで反応性イオンを生成することになるので、この幾何形状は、所与の放射能レベルの反応性イオンを発生させることにおいて潜在的により効率的である。放射性物質がチャンバの内面にあり、粒子が、内向きに放射するイオン化装置の効率を最大にするために、粒子の侵入範囲内にいずれのチャンバ壁も有するのを避けるように気を付けなければならない。イオン化装置の壁又は任意の固体物質に当たる粒子は、その粒子が、反応性イオンの最大数の発生を完了する前に失われる。
【0102】
[00111]従来のデータ取得/処理速度は、10〜50スキャン/秒である。18.2×103cm3/秒の速度例では、内径4インチ×長さ4インチのイオン化装置は、毎秒15回完全に補充されることになる。この補充速度は、15スキャン/秒の取得速度で、フレッシュな試料蒸気が、スキャンごとに利用できることを保証することになる。
【0103】
[00112]反応領域中のイオンの電気泳動の速さを増加させて、キャリアガスの流れの影響を低減させることが可能であるが、イオンが、ガス分子との衝突によって加熱され、普通でない化学反応及び/又は予期してない化学反応が生じる場合、「高電圧状態」にイオンが入る前に、許容可能な電場勾配に限界がある。高電圧状態への遷移は、大気圧で、小さい分子について、2000V/cm未満で生じる。
【0104】
[00113]
【実施例】
【0105】
[00114]イオン移動度分光計(IMS)は、中心軸に沿って円筒対称性のリニア装置(linear device)として構築された。全ての構成要素は、測定器の軸に垂直及び測定器の軸を中心に組み立てられた。全ての構成要素は、真っ直ぐ揃えられ、ソケット及びほぞ継手は、縦方向セラミックロッド及びばね張力によって所定の位置に保持された。
【0106】
[00115]試料は、まず電気カートリッジ加熱器を備えているフィン付きのアルミニウムのガス加熱器を通って測定器の中に流れると共に、温度制御を用いて100℃で保持され、次いでイオン化装置の中に流れた。
【0107】
[00116]イオン化装置は、内径(ID)4インチのセラミックリングによって封止及び絶縁された4つの電極リング(「ドリフトリング」)からなる内径4インチ×長さ4インチのイオン化チャンバであった。このイオン化装置は、第1のドリフトリングに電気的に取り付けられた有孔金属リペラプレートによって試料入口端で終端となっていた。2.7mCiのAm241で帯電された金属箔が、チャンバの中心軸に取り付けられ、金フィルムに保護されていた。この箔からのアルファ粒子は、ソースフォイルから外向きに試料ガスの中に放射された。
【0108】
[00117]イオン化チャンバを通って流れた後、試料ガスは、セラミックスペーサによって分離された追加の内径4インチの金属ドリフトリングからなる長さ2.5インチの反応領域を通って前進した。主に中性種を含む試料ガスは、ドリフトリング同士の間のギャップを通って低速でこの領域(総面積162cm2)から自由に逃れることができた。
【0109】
[00118]イオンは、電気泳動によって、分光計の軸に沿って、微細電鋳導体によってクロスハッチされた直径2インチの面積をそれぞれ有する薄いニッケルスクリーンからなるイオンシャッタへ送られた。このシャッタ構造は、米国特許出願公開第2008/0179515号(2008年7月31日)(2007年7月27日に提出されたUSSN11/769,513)に記載されている。
【0110】
[00119]イオン分離又は「ドリフト領域」は、全長6インチで、セラミックリングによって封止及び絶縁された追加の11個の金属のドリフトリングからなっていた。ドリフトチューブは、微細電鋳導体によってロスハッチされた直径2インチの面積を有する薄いニッケルスクリーン(「アパーチャグリッド」)によって終端となっていた。分離イオンは、アパーチャグリッドを通過し、アパーチャグリッドから1mmの直径1インチのファラデープレート電極で中和された。ファラデー電極で形成されたイオン電流は、Texas Instruments社のIVC102集積回路に類似するが、IVC102集積回路よりも高感度である高精度スイッチ式積分器検出器を用いて増幅された。データは、付属のデータ取得ハードウェア及びカスタム開発したソフトウェアと共に、パーソナルコンピュータを使用して分析された。
【0111】
[00120]約−5000ボルトの電位差が、イオン化装置及び反応領域の両端間に印加され、約−7000ボルトが、シャッタとファラデー電極の間のドリフト領域の両端間に印加された。アパーチャグリッドとファラデープレートの間の電位差は−200ボルトであり、この勾配は、ピーク分解能において小さい損失でイオンの大部分を収集したはずである。
【0112】
[00121]反応領域中の排気口を貫通した熱い空気は、ドリフト領域の外側を加熱するために使用された。この空気は、内径4インチのダクトホースを用いて、較正された4インチの風速計、及び速度制御されたファンを通ってIMSから排除された。出口空気の温度は、97℃であり、測定した気流速度は、4〜5マイル毎時様々であった。
【0113】
[00122]溶解トリニトロトルエン(TNT)0.2グラムを含有するアセトニトリル20ミリリットルは、幅9インチ×長さ13インチ×深さ1.5インチのガラストレイの底部で、室温で夜通し蒸発された。このトレイは、高さ12フィート及び幅8フィートの少し使用された回廊に配置され、ここで平均気流速度は毎秒約1/3フィートであり、この速度は一陣の煙を観察することによって求められた。したがって、空気の質量流量は、1.07kgm/秒だった。固体TNTからのTNT蒸気の蒸発速度は、約26pg/cm2/秒であることが知られており、そして、空気中のTNTの濃度は、約5ppt(1兆分の1)であった。(Mu,R.;Ueda,A.;Liu,Y.C;Wu,M.;Henderson,D.O.;Lareau,R.T.;Chamberlain,R.T.「Effects of interfacial interaction potential on the sublimation rates of TNT films on a silica surface examined by QCM and AFM techniques」、Surface Science(2003年),530(1−2),L293〜L296頁)。
【0114】
[00123]TNTは、ガラス試料トレイが、IMS測定器の風上71フィートに配置されたとき、回廊内の空気のドリフト速さに対応する時間(3.5分)で、評価されたベースラインノイズの約6倍の高さの単一ピークとしてIMSスペクトル中で観測された。このピークは、トレイが排除されると10分以内に高さゼロに減少した。より大きいピークは、トレイが、測定器近くに導入されたときに観測され、トレイが、非常に近いとき、蒸気が、測定器をバイパスしないようにIMSのすぐ上流にトレイを配置することが必要であった。TNTについてのIMSドリフト時間は、IMS測定器の真正面で加熱されたガラスチケット(glass ticket)に加えられた市販の分析TNT溶液によって確認された。各分析IMSスペクトルは、平均200スキャンであり、完了するのに、パーソナルコンピュータ上でのデータ取得、分析、及び描写を含め、約15秒必要とした。試料を回廊に導入する前に、バックグラウンドスペクトルが、同じやり方で収集された。このスペクトルは、その後の各検体スペクトルから減算された。別途の実験では、800mgのTNTを備えた同じガラストレイ、及び同じIMSを用いて、このレベルのTNTが、トレイから135フィートの距離で検出することができた。
【0115】
[00124]実験時の回廊内の温度及び相対湿度は、85°F及び相対湿度62%であった。どの点でも、試薬が、TNT試料又は気流に加えられず、どの点でも、気流を乾燥させる試みはなされなかった。
【米国連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載】
【0001】
[0001]本発明は、米国エネルギー省によって授与された助成金番号DE−AC04−944−AL85000の下、米国政府支援によってなされた。米国政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【関連出願の相互参照】
【0002】
[0002]本出願は、2007年11月6日に出願した米国特許仮出願第61/002,121号の利益を主張するものであり、これは、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
[0003]本発明は、一般に物質検出の分野に関し、具体的には、蒸気相にある微量物質の検出感度の増大をもたらす、ガス状試料入口及びイオン化装置を備えるイオン検出装置に関する。本発明の装置は、液体又は固体として蒸気を凝縮又は濃縮することを用いることも、小滴又は粒子として検体物質を収集することもなく、蒸気相の検体に対する優れた感度を実現している。検体物質の凝縮又は濃縮と併せて用いると、いっそう大きい感度を実現することができる。
【0004】
[0004]爆発物、爆発性残留物、化学薬品、空気で運ばれる毒素、及び他の揮発性有機化合物の迅速同定は、イオン移動度測定器の分野においてなされた進歩によって近年革命がなされた。イオン移動度分光測定法に起きた変革にも関わらず、この技術の全潜在能力は、特にガス分析において、未だに現実のものとされていない。このことは、従来のイオン移動度分光計に用いた小さいイオン化装置中で発生するイオンの個数が少ないことに一部原因がある。既存の装置は、イオンの出所である物質を検出するために、(閾値を上回る)ある一定の個数のイオンが存在していることを必要とするので、当業者には理解されるように、既存の装置は、イオン化チャンバ中の物質によって発生するイオンの個数が少ないことで微量の物質を検出することに限られる。
【0005】
[0005]図1は、典型的なイオン移動度分光計(IMS)を示しており、このIMSは、イオン化領域1と、ガス7が内部に入りイオン化される反応チャンバ10と、イオンインジェクションシャッタ12を介して反応チャンバ10に直列に結合されたイオンドリフトチャンバ15と、ドリフトチャンバ15の内部でインジェクションシャッタ12の向かい側に配設されたコレクタプレート16とを含む。動作時は、キャリアガスが、ガス又は蒸気を、分析される材料からイオン源2を含むイオン化領域1の中に輸送する。プレート又はスクリーンの形態であり得る(押出し電極とも呼ばれる)リペラ電極4は、ドリフトチャンバに向かってイオンを向けるために、イオン化領域中に設けられる。複数回の衝突がイオン化種と検体分子の間で生じる場合、結果として生じるイオン(一次イオン)の大部分は、キャリアガス分子からのものであり(「反応性イオン又は反応イオン」)、それらイオンは、反応チャンバ(10)に移動する。これらの衝突により、イオン電荷は、二次イオンを形成する検体分子に移される。反応領域の中に導入される試薬ガスを用い、それによって二次イオンが、一次イオンと相互作用する試薬から主に形成されることが当技術分野でやはり知られている。この場合、試料が、反応領域の中にやはり導入され、電荷が、一次イオン及び二次イオンから検体(第3のイオン)へ移される。全てのイオンは、分光計の内部の電場中で主に「電気泳動」によって移動する。従来の技法によって形成される電場は、イオンを反応チャンバ10からドリフトチャンバ15へ移動させ、そして最終的にコレクタプレート16に到達するようにする。典型的には、ドリフトガスが、ドリフトチャンバの中に導入され、ガス出口9を通って退出する。電気泳動によってイオンが移動する、イオン化装置の外側の装置の結合部は、一般に「ドリフトチューブ」と呼ばれる。Hill,H.Hら(1990年)「Ion Mobility Spectrometry」、Anal.Chem.62(23):1201A〜1209A頁、及びEiceman,G.A.,Karpas,Z.(2005年)Ion Mobility Spectrometry,(CRC Press)は、計器を含むイオン移動度分光測定法の概説を提供する。
【0006】
[0006]米国特許第4,777,363号明細書は、周囲空気中の微量物質を検出するための大気イオン移動度分光計(atmospheric ion mobility spectrometer)を報告する。この分光計では、空気は、試料ガス、キャリアガス、及びドリフトガスとして働く。「単流」では、周囲空気がドリフトチューブのコレクタ端部で入口を通って導入され、ポンプを備えるガス出口が、イオン源を越えて測定器の反対端で設けられる。リペラプレートは、ドリフトガス出口を有する測定器の端部に設けられる。イオン源で形成されたイオン及び反応の際に形成された二次イオンは、イオンパルスがイオンシャッタで形成されるにつれて、ドリフトチャンバの中に移動する。ドリフトチャンバ中のイオンは、空気ドリフトガスの流れの方向とは反対方向に移動する。イオンは、コレクタプレートで検出される。参考文献は、Ni−63(放射性線源)イオン源の使用を記載している。参考文献は、「典型的なNi−63源」を、Ni−63を内面にめっきした(直径1〜2cm、及び長さ1〜2cmで、表面積3〜5cm2を有する)Niの円筒として記載している。「線形応答レンジでの主な制限は、イオン源からのイオンの利用が限られていることに起因している」ことが述べられている。参考文献は、より高放射性のイオン源を、「Ni−63めっきのための複数の穴を備えた直径約3〜5cmのニッケルスラグ(nickel slug)」として記載している。このイオン源は、「イオン源のサイズの増加を必要とすることなく、ずっと大きい表面積及び活動率(activity rate)」を提供することであると言われている。光イオン源も記載されている。測定器は、リペラ端部のポンプを用いて空気圧で封止されると言われている。
【0007】
[0007]米国特許第5,218,203号明細書は、イオン移動度測定手段のドリフトチューブへ試料イオンを導入するための高圧インタフェース装置を報告する。この特許は、この特許の図1に示す「隔離された」イオン源が、イオン源ガス(B1)入口にあることを記載する。「イオン源ガスのイオン化が、試料ガスが存在しない隔離された領域で生じることが重要である」と述べられている。形成された試料ガスイオンは、第2の反応領域の中に導入され、そこで試料ガスイオンは、試料ガス(B2)と反応して試料イオンを形成すると記載されている。使用されるこの装置の構成は、ドリフトチューブの中への不要成分の導入を最小限にするかなくすと記載されている。この特許は、試料ガスの流路を通ってイオン源ガスイオンを向けるための電場Eの存在を述べている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]本発明は、検体粒子を予備濃縮又はトラッピングせずに、イオン移動度分光測定法(IMS)によってキャリアガス中、特に周囲空気中に溶解又は懸濁した微量ガス状分子化合物を検出するための計器及び方法を提供する。
【0009】
[0009]小容量(1cm3未満)のイオン化装置を用いるIMSの従来の手法とは対照的に、本発明は、少なくとも5cm3であるかなり大きい容量のイオン化装置を使用する。好ましい実施形態では、本明細書に用いたイオン化装置は、25cm3より大きい、50cm3より大きい容量を有し、より好ましくは、100cm3より大きい容量を有する。イオン化容量の上限は、特に限定されていないが、理にかなった適用の上限はおそらく、約100Lである。ある特定の実施形態では、イオン化容量は、0.5Lより大きい。他の特定の実施形態では、イオン化容量は、0.5L〜2Lである。追加の特定の実施形態では、イオン化容量は、0.5〜1Lである。本発明のより大きいサイズのイオン化装置は、気相内の微量(1ppb未満)の試料化合物の分析を可能にする。
【0010】
[0010]イオン化及び反応領域を通して効率的なイオン運動を促進するために、好ましくは、本発明のシステムは、イオン化領域中、又はイオン化領域と反応領域の両領域中に電場勾配を備える。設けた電場勾配は、ドリフト領域中に形成された電場勾配に平行である。電場勾配は、イオン化領域と反応領域の両領域中に存在していることが必要であるが、2つの領域間で異なる値であってもよく、勾配は、必ずしもリニアである必要はない。
【0011】
[0011]ある特定の実施形態では、周囲空気は、本発明のIMS中の試料ガスである。別の実施形態では、特に試料ガスが周囲空気であるとき、試料ガスは、測定器の中へ進入する前に、具体的には温度50℃〜120℃へ加熱される。別の実施形態では、測定器は、周囲を上回る温度、具体的には温度50℃〜120℃で実行される。別の実施形態では、測定器は、測定器から退出する加熱した試料ガスに接触することによって加熱される。
【0012】
[0012]ある特定の実施形態では、イオン移動度分光計は、大気圧で動作する。
【0013】
[0013]別に、本発明は、検体混合物の定量化を行うために、検体分子を予備分離するための他の試料導入方法と併用してもよい。
【0014】
[0014]別に、どちらか一方の技術単独の感度を越える感度をもたらすために、本発明のガス分析技術は、検体物質を予備濃縮するための他の試料導入技術と併用してもよい。
【0015】
[0015]空気中の低蒸気圧化合物を検出するためのある特定の実施形態では、本発明は、50cm3以上のイオン化装置の容量、好ましくは500cm3以上のイオン化装置の容量を有するIMSを提供する。本実施形態の測定器は、空気中で1ppbの飽和濃度にあるTNTなどの低蒸気圧化合物を検出するために特に役立つ。
【0016】
[0016]本発明では、空気中のTNTの検体の5ppt(1兆分の1)以下に相当するものと同じくらい小さい濃度の、検出可能な量の検体を含むのに十分なガスを効率的な導入及びイオン化することを可能にするイオン化チャンバ及び反応チャンバが提供される。
【0017】
[0017]IMS分析に用いられるガスの湿度制御を必要とする従来の手法とは対照的に、本発明の測定器及び方法は、ガスの湿度制御を必要としない。特に、周囲空気を分析するときは、周囲空気の湿度制御の必要がない。
【0018】
[0018]ある特定の試料化合物の分析の感度を高めるために試薬化合物の添加を用いる従来の手法とは対照的に、本発明の測定器及び方法は、試薬化合物の使用を必要としない。
【0019】
[0019]さらに、イオンシャッタから離れて空気流中のイオンのエントレインメントを避けるために、イオン化装置及び反応領域の断面積は、試料イオンの電気泳動の方向に垂直な方向のリニア的な局所流速が、試料イオンの電気泳動の速さのかなりの割合(例えば、20%未満又は好ましくは10%未満)とならないように、十分に大きいものとすべきことが望ましい。この制限は、測定器感度を著しく減少させないよう十分に低いものとすべきである。試料イオンの電気泳動の方向に対してキャリアガスが逆流する場合では、リニア的な局所流量は、試料イオンの電気泳動のリニア的な速さを超えるべきではない。好ましくは、リニア的な局所流量は、試料イオンの電気泳動の速さの25%を超えるべきではない。
【0020】
[0020]本発明の別な態様によれば、イオン化チャンバ内で反応性イオンを生成するための様々な可能な手段が、提供される。
【0021】
[0021]ある特定の実施形態では、本発明は、イオン源を有するイオン化領域と、反応領域と、ドリフト領域と、イオン検出器とを含むイオン移動度分光計であって、イオン源のイオン化容量が、5cm3より大きいイオン移動度分光計を提供する。より具体的な実施形態では、イオン源のイオン化容量は、100cm3より大きく、又はイオン源のイオン化容量は、0.5L〜2L(0.5L及び2Lを含む)である。
【0022】
[0022]ある特定の実施形態では、イオン検出器は、ファラデープレートなどのコレクタである。他の実施形態では、イオン検出器は、質量分析計である。追加の実施形態では、イオン検出器は、電子増倍管検出器を備える四重極質量分析計である。これらのベース全てをカバーすることが最良と思われる。
【0023】
[0023]ある特定の実施形態では、本発明は、イオン源を有するイオン化領域と、反応領域と、ドリフト領域と、イオンを検出するためのコレクタとを含むイオン移動度分光計であって、イオン源のイオン化容量が、5cm3より大きく、イオン化領域及び反応領域からイオンシャッタ及びドリフト領域までイオンが移動するのを促進するように、電場勾配が、イオン化領域中、又はイオン化領域と反応領域の両領域中に設けられるイオン移動度分光計を提供する。
【0024】
[0024]本発明のイオン移動度分光計は、1つ又は複数の放射性イオン源を備えてもよい。本発明のイオン移動度分光計は、1つ又は複数のコロナ放電イオン源を備えてもよい。本発明のイオン移動度分光計は、1つ又は複数の多極コロナ放電を備えてもよい。
【0025】
[0025]本発明のイオン移動度分光計は、分光計に入る試料ガスの温度を調整するための加熱器又は冷却器をさらに備えてもよい。
【0026】
[0026]ある特定の実施形態では、本発明は、イオン源のイオン化容量が、0.5Lより大きく、電場勾配が、イオン化領域中、又はイオン化領域と反応領域の両領域中にあるイオン移動度分光計を提供する。
【0027】
[0027]請求項8の本発明のイオン移動度分光計では、イオン化領域中の電場勾配は、複数のリング電極によって与えられてもよい。
【0028】
[0028]本発明は、本発明のIMS分光計を用いるイオン移動度分光法によって試料ガス中の低レベルの検体を検出する方法をさらに提供する。そのような方法では、低レベルの検体を含む試料ガスが、IMSのイオン化容量の中に導入され、検体イオンが、IMS中で検出するのに十分な量で形成されるように、イオン化領域のほぼ全容量が、イオン化を受ける。
【0029】
[0029]本明細書中の方法のある特定の実施形態では、試料ガスは、周囲空気である。本明細書中の方法のある特定の実施形態では、検体は、低蒸気圧検体である。本明細書中の方法のある特定の実施形態では、検体は、TNT又は別の爆発性化合物である。
【0030】
[0030]明細書に組み込まれ、明細書の一部を形成する添付図面は、詳細な説明と共に、本発明の一実施形態を示しており、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来技術のイオン移動度分光計の概略図である。
【図2A】試料含有ガスが、検体イオンの電気泳動の方向と同じ方向にイオン化装置を通過する場合の、本発明の典型的なシステムの、イオン化領域に焦点を合わせた概略図である。放射性イオン源の好ましい位置が示されている。このイオン化領域は、イオン化領域中に透過壁を設けることによって放射性線源を欠いた状態で、光イオン化に同様に用いられてもよい。
【図2B】図2Aの試料導入領域、イオン化領域、及び反応領域を有するイオン化移動度分光計の概略図である。このシステムは、放射性イオン源の配置と共に示される。図2Aについて述べたように、以下本明細書中で述べることになる通り、イオン化領域は、コロナ放電源などの放射性イオン源以外のイオン源の使用、及び光イオン化に適合し得る。
【図2C】図2Aの試料導入領域、イオン化領域、及び反応領域を有する、本発明のイオン化移動度分光計の典型的な実施形態の概略図である。このシステムは、放射性イオン源の配置と共に示される。図面は、イオン化及び反応領域を通してイオンのドリフトを促進するように、電場勾配をイオン化領域中に組み込むことを示す。イオン化ドリフト領域は、例えば一連のリング電極を用いてドリフト領域(15)に類似して形成される。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。
【図2D】図2Cの電場勾配の特徴をより詳細に示す概略図である。複数のリング電極が、リペラとイオンシャッタの間に設けられている。
【図3】試料含有ガスが、検体イオンの電気泳動の方向と反対の方向にイオン化装置を通過する、本発明の測定器の別の典型的な実施形態の、イオン化領域に焦点を合わせた概略図である。図面は、放射性イオン源の使用を示す。例示のイオン化領域は、光イオン化、及びコロナ放電源などの放射性イオン源以外のイオン源の使用に適合し得る。例示の試料導入、イオン化、及び反応領域の特徴は、図2B、図2C、及び図2Dに示すように、IMSシステムに組み込むことができる。
【図4】試料含有ガスが、検体イオンの電気泳動の方向に対して横切る方向にイオン化装置を通過する、本発明の測定器の別の典型的な実施形態の、イオン化領域に焦点を合わせた概略図である。図面は、放射性イオン源の使用を示す。例示のイオン化領域は、光イオン化、及びコロナ放電源などの放射性イオン源以外のイオン源の使用に適合し得る。例示の試料導入、イオン化、及び反応領域の特徴は、図2B、図2C、及び図2Dに示すように、IMSシステムに組み込むことができる。
【図5】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図6】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図7】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図8】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図9】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図10】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図11】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図12】イオン化領域で用いる放射性イオン源の構成、及び本発明のIMSの典型的な実施形態を示す概略図である。例示のイオン源の構成のそれぞれは、図2B〜図2D、図3又は図4のいずれかの測定器で用いることができる。
【図13】イオン化領域中にドリフト電場を確立するためのリング電極を含む選択した放射性線源の構成の典型的な実施形態を示す概略図である。図5〜図12の特定のイオン源の構成のいずれかが、一連のそのようなリング電極と容易に組み合わせることができる。これらの構成では、イオン源は、リング電極及び電場勾配の形成に適合するように、図13に示すように複数の部分に構成される。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。
【図14】コロナ放電イオン源を含む、本発明のシステムの典型的な実施形態を示す概略図である。
【図15】コロナ放電イオン源を含む、本発明のシステムの典型的な実施形態を示す概略図である。
【図16】コロナ放電イオン源を含む、本発明のシステムの典型的な実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[0041]用語「イオン移動度分光計」は、適切な単調な電場を通しての気相検体イオンの差異のある移動(differential migration)によって検体を検出及び同定する測定器のことを言うために本明細書で幅広く使用される。IMS検出は、イオン移動度に基づいている。典型的には、図1に示すようなIMSシステムは、イオン化領域と、反応領域と、イオンシャッタと、ドリフトガスを含むドリフト領域と、イオン検出器(ファラデープレートであってもよいコレクタ)とを含む。リペラ・アパーチャグリッドが、適宜設けられる。IMSシステムは、イオン化又は反応領域への任意のキャリアガス、試料ガス、又は試薬ガスの導入及び退出のための、或いはドリフトガスの導入及び/又は退出のための1つ又は複数のガス入口と、1つ又は複数のガス出口とをさらに備える。ファン又はポンプが、システム内のガス循環のために適宜設けられてもよい。電場勾配は、当技術分野で知られているように典型的にはリング電極を用いてドリフト領域中に与えられる。一次イオン、二次イオン、及び適宜の三次イオンは、イオン化及びリアクタ領域中で形成される(それらイオンのうちの一部が、検体イオンである)。測定器のイオン化の端部にあるリペラが、反応領域及びドリフト領域に向かってイオンを向けるために設けられてもよい。アパーチャグリッドは、コレクタのプレチャージを防ぐためにコレクタプレートのための保護物として設けることができる。このグリッドは、イオンの運動に関与する電場の一様性を保持するのを助けることもできる。様々なイオン源をIMSに用いることができ、アルファ放出型及びベータ放出型の放射性線源(例えば、Ni−63源及びAm−241源)、コロナ放電源、光イオン源などが含まれる。IMSは、イオン検出のためにファラデープレートなどのイオンコレクタをしばしば用いる。当技術分野で知られているように、他のイオン検出器が用いられてもよい。例えば、IMS分光計は、イオンの検出及び同定のために四重極質量分析計などの質量分析計に連結されてもよい。そのような測定器は、IMSと質量分析計の間で既知の技術のインタフェースを用いる。例えば、Wu,C.,Siems,W.F.,Asbury,G.R.,Hill,H.H.「Electrospray Ionization High−Resolution Ion Mobility Spectrometry−Mass Spectrometry」、(1998年)Anal.Chem.70:4929〜4938頁を参照されたい。
【0033】
[0042]当技術分野で知られているように、様々なガス流の構成をIMSに用いることができる。例えば、キャリアガス又は試料ガス(例えば、周囲空気)は、電気泳動の下で検体イオンがイオン検出器に向かって進むのと同じ方向にイオン化チャンバを通って流れることができ(「並流」)、或いはキャリアガス流は、電気泳動の方向と反対の方向であってもよく(「逆流」)、又はキャリアガス流は、電気泳動の方向に対して横切ってもよい(「直交流」)。試薬ガスは、使用される場合、典型的にはキャリアガス又は試料ガスとは別に導入される。キャリアガスは、(例えば、1つ又は複数の検体を搬送する)試料ガスであってもよく、又はキャリアガスは、試料ガスとは異なると共に試料ガスとは異なる位置で導入されてもよい。
【0034】
[0043]当技術分野で知られているように、ドリフト領域中へのイオンの進入は、イオンシャッタを用いてゲート制御される。ゲート制御されたイオンは、ドリフト領域の電場勾配中で、イオンが検出されるコレクタに向かって移動する。IMSは、当技術分野で知られているように、正のイオンモード又は負のイオンモードで動作することができる。正イオンは、正イオンモードで検出され、又は負イオンは、負イオンモードで検出される。当技術分野で知られているように、コレクタで形成されたイオン電流は、増幅されてもよい。やはり当技術分野で知られているように、複数のイオンパケットのイオン収集の結果を平均化して、最終的な信号対雑音比を改善することができる。収集されたデータは、任意の知られた手段を用いて分析され、例えば、付属のデータ取得ハードウェア及びソフトウェアを備えたパーソナルコンピュータが用いられ得る。追加の詳細なそのようなIMSは、Hill,H.H.ら(1990年)「Ion Mobility Spectrometry」、Anal.Chem..62(23):1201A〜1209A頁、及びEiceman,G.A.,Karpas,Z.(2005年)Ion Mobility Spectrometry,(CRC Press)の中に見出され得るものであり、それぞれのIMSは、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
[0044]イオン化装置又はイオン源の容量は、所与のイオン化装置又はイオン源によってイオン化できるガスの容量に言及するために本明細書で使用される。放射性同位体を搬送する1つ又は複数の表面を備えるNi−63源などの放射性イオン源に関しては、イオン化装置の容量は、これらの表面の個数、サイズ、形状、及び相対位置、並びに放射性同位体によって放出される粒子の空気中の侵入長に依存し、例えば、Ni−63によって放出されるベータ粒子の空気中の侵入長は、約3mmであり、したがってNi−63が円筒の内部表面上にある約5mmの長さのイオン源については、イオン化装置の容量は、約0.14cm3である。
【0036】
[0045]本発明の改善されたIMSは、種々の図中の同じ番号が、同じ装置要素又は関連した装置要素を表す図面を参照して本明細書中でさらに説明されている。図面は、概略的であり、必ずしも原寸に比例して描かれていない。
【0037】
[0046]図2Aは、反応領域10、試料入口7、ガス出口9、及びドリフト領域15と関連させて本発明の典型的なイオン化領域1を示す。イオン源2は、イオン化領域中に示される。本実施形態では、試料(キャリア)ガス(例えば、周囲空気)は、イオンの電気泳動の流れの方向と同じ方向にイオン化領域に流れ込む。
【0038】
[0047]図2Bは、図2Aの試料ガス流、イオン化領域、及び反応領域を有するIMSシステムを示す。この図は、リペラ(押出し電極4)の位置を示しており、このリペラは、イオン化装置領域中で形成されたイオンを反応領域、及びドリフト領域上へ向ける。反応領域は、イオンシャッタによってドリフト領域から分離されている。試料ガスは、入口7から入り、ガス出口9から退出する。この図は、適宜のものであるドリフトガス入力19を示す。ドリフトガスは、ガス出口から退出するようにドリフト領域を通って流すことができる。本実施形態では、ドリフト領域(ドリフトチャンバ)は、外来性ガス(exogenous gas)のエントランスが封止される。例えば、空気以外のガス、例えば窒素を用いてイオン移動度の決定を行うことが望まれ得る。周囲空気中の検体を分析するための本発明のある特定の実施形態では、特定のドリフトガス入力はなく、ドリフトチャンバは、ドリフトガスとしての役割を果たす周囲空気による進入に対して封止されていない。周囲空気が、システムの中に導入される前に周囲空気を乾燥させる必要がないことが本発明の測定器で示されている。測定器は、望まれていない成分を試料又はドリフトガスから排除するためのフィルタを適宜備えることができることが示されている。当技術分野で知られているように、ドリフト領域は、ドリフトチューブ中のイオンをコレクタに向かって移動させる電場勾配を備える。
【0039】
[0048]上述の通り、微量検体を検出するのに必要なより多数のイオンを発生させるために、本発明のIMSのイオン化領域は、従来のIMSシステムよりも大きいイオン化容量を有する。具体的な実施形態では、イオン化容量は、50cm3より大きく、又は100cm3より大きい。より具体的な実施形態では、イオン化容量は、0.1〜1.0リットル(100cm3〜1000cm3)、又は0.5〜1.0リットルである。微量ガス分析のためのこれらの実施形態では、IMSの中に導入されるほぼ全て(95%以上)の試料ガスの容量が、イオン化を受けることが好ましい。好ましくは、イオン化容量は、IMSのイオン化領域の容量にほぼ(95%以上)一致させられる。
【0040】
[0049]本発明の実施形態では、イオン化領域は、反応領域及びドリフト領域へのイオンの電気泳動を促進するように電場勾配20を備える。本実施形態は、(IMSの軸に沿った)イオン化容量の長さが、イオン化容量の直径(円筒)[又は、矩形の高さ又は幅]の25%より大きい場合、特に役立つ。例えば、複数のリング電極が、反応領域及びドリフト領域へのイオンの電気泳動を促進するように設けられてもよい。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。
【0041】
[0050]図2Cは、図2Aのイオン化領域を含む本発明のいくつかの特定の実施形態を示す。第1の実施形態では、電場勾配は、複数のリング電極を設けることによって上記のようにイオン化領域中に与えられる。電極は、イオン化領域の長さに沿って等間隔で配置されてもよい。リング電極は、同様に反応領域を通って延在してもよい。これらのリング電極の電気的接続を図2Dにより詳細に示す。この図は、イオン源、リペラ、リング電極、及びシャッタの好ましい相対的なポジショニングを示す。様々な電極の構成が、所望の電場勾配を与えるために用いることができることは、当業者には明らかであろう。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。
【0042】
[0051]また、試料ガスが、加熱器領域22中のシステムの中へ進入する前に加熱され、測定器から退出する試料ガスは、測定器を囲む出口ガスプレナムに入る実施形態が、図2Cに示されている。このようにして、加熱器試料ガスを用いて測定器全体を加熱する。測定器は、周囲温度又は周囲を上回る温度で実行することができる。ある特定の実施形態では、測定器は、50℃を上回る温度で実行される。ある特定の実施形態では、測定器は、温度50℃〜120℃で実行される。ある特定の実施形態では、測定器は、温度100℃で実行される。代替の実施形態では、本発明のIMSは、冷却器又は冷却剤を与えることによって周囲を下回る温度で実行されてもよい。例えば、試料ガスは、IMSシステムの中に導入する前に所望の温度に冷却されてもよく、システムから退出する冷却した試料ガスが、システムを冷却するために用いられてもよい。
【0043】
[0052]図3は、反応領域10、試料入口7、ガス出口9、及びドリフト領域15と関連させて、本発明の別の典型的なイオン化領域1を示す。イオン源2は、イオン化領域中に示される。本実施形態では、試料(キャリア)ガス(例えば、周囲空気)は、イオンの電気泳動の流れの方向とは反対方向にイオン化領域に流れ込む。図3の構成は、図2B〜図2Dに示す装置のいずれかで実施することができる。
【0044】
[0053]図4は、反応領域10、試料入口7、ガス出口9、及びドリフト領域15と関連させて、本発明の別の典型的なイオン化領域1を示す。イオン源2は、イオン化領域中に示される。本実施形態では、試料(キャリア)ガス(例えば、周囲空気)は、イオンの電気泳動の流れの方向に垂直な方向にイオン化領域に流れ込む。図3又は図4の構成は、図2B〜図2Dに示す装置のいずれかで実施することができる。印加電場が、イオンをイオンシャッタへさらに搬送するようにガス流量を調整しなければならないことが理解されよう。
【0045】
[0054]図5〜図12は、本発明のIMSに役立つ様々な典型的な放射性イオン源の構成を示す。これらの構成は、より大きいイオン化容量で高効率イオン化を実現するのに特に役に立つ。これらの構成は、イオン源に役立つ任意の適切な放射性同位体を用いて、特にNi−63源及びAm−241源について実施することができる。各構成では、例示の円筒内の全容量が、イオン化を受けることが意図される。様々なイオン源の要素のサイズ(例えば、直径)、及びそのような要素同士の間の間隔は、用いた放射性線源によって放出される粒子の侵入長に基づいて調整される。イオン源の構成の特定の実施形態は、円筒形であるように示されるが、これらの要素は、所望の機能を与えることになる任意の断面形状を有することができることが当業者によって理解されよう。
【0046】
[0055]図5は、(チューブの形態の)イオン源の要素42の内面28が、適切な放射性同位体で被覆又は適切な放射性同位体を他の方法で備える実施形態を示す。チューブ42は、イオン化領域の壁で形成することができ、又はイオン化領域内の分離要素であってよい。この図は、反応領域10、イオンシャッタ、及びドリフト領域に対してのイオン化領域中のイオン源の相対位置を示す。矢印は、アルファ粒子又はベータ粒子が、内面28上の放射性物質から放出する方向を示す。好ましくは、チューブ42の直径は、2×放出粒子の侵入長以下である。
【0047】
[0056]図6は、イオン源の要素が、イオン化領域中に配置された単一の円筒棒44である、別のイオン源の実施形態を示す。円筒棒は、イオン化領域の壁であり得るチューブ42内で中心にあるように示される。この棒は、矢印(29)によって示すように、棒の表面から粒子を放出する。この棒の直径に依存するが、好ましくは、外側チューブの直径は、最大でも約2×放出粒子の侵入長である。
【0048】
[0057]図7は、イオン源が、複数の要素(表面から粒子を放出する円筒棒44)を備えている、別の実施形態を示す。図8は、外側チューブ42と、このチューブ内に配置された複数の円筒形要素44とを備え、各円筒形要素44が粒子を放出する、さらに別のイオン源の実施形態を示す。この場合、外側チューブ(28)の内部表面は、やはり放射性同位体を備え、粒子を放出する。円筒形放出棒44の本数、及びこれらの実施形態における円筒形放出棒44の相対的配置は、イオン化領域の全容量が、放出粒子を受けることを確実にするように調整することもできる。イオン化領域を通るガス流が、特に限定されるべきではないこと以外は、棒の本数は、特に限定されていない。ある特定の実施形態では、1〜10個のそのような棒が、設けられてもよい。いずれの場合にも、イオン化領域の全容量がイオン化を受けるように、外側チューブ42の直径は、用いた(1つ又は複数の)放射性同位体の侵入長に基づいて調整されることが好ましい。イオン化領域及びイオン源の要素は、形状が円筒形であるように示される。これらの要素は、特に形状が限定されるものではなく、要素のサイズは、所望のイオン化容量を得るように調整されると共に、ほぼ全てのイオン化領域の容量が、放出粒子にさらされるように調整される。様々な放射性同位体を、様々な表面上に設けることができる。
【0049】
[0058]図9及び図10は、追加の典型的なイオン源の構成を示しており、この構成では、イオン源の要素は、外側チューブ42内の1つ又は複数のチューブ52である。図9では、外側チューブの内面(28)、並びに内側チューブの内面(58)及び外面(56)は、放射性同位体を備え、それによりこれらの表面から粒子が放出される(矢印29参照)。外側チューブ42の直径及び内側チューブ52の直径は、放出粒子が及ぶ容量を最大にするように調整される。図10は、複数の内側チューブ52が、より大きい直径の外側チューブ42内に設けられている関連した実施形態を示す。やはり、外側チューブ(28)の内面、並びに内側チューブ(52)の内面(58)及び外面(56)は、(1つ又は複数の)放射性同位体を備え、粒子を放出する。外側チューブの直径、並びに内側チューブ52の個数、相対的配置及び直径は、放出粒子が及ぶイオン化領域内の容量を最大にするように調整される。イオン化領域及びイオン源の要素は、形状が円筒形であるように示される。しかし、これらの要素は、特に形状が限定されるものではなく、要素のサイズは、所望のイオン化容量に調整されると共に、ほぼ全てのイオン化領域の容量が放出粒子にさらされるように調整される。様々な放射性同位体を、様々な表面上に設けることができる。
【0050】
[0059]図11及び図12は、(入れ子集合のチューブを形成する)複数の同心のチューブ(例えば、52、62)が、イオン化領域中で用いられている、他の典型的なイオン源の構成を示す。図12は、2つ以上の入れ子集合のチューブの設備を示す。外側チューブ42の内面28、並びに内側チューブ(52、62)の内面(58、68)及び外面(56、66)は、放射性同位体を備え、粒子を放出する。イオン化領域及びイオン源の要素は、形状が円筒形であるように示される。しかし、これらの要素は、特に形状が限定されるものではなく、要素のサイズは、所望のイオン化容量に調整されると共に、ほぼ全てのイオン化領域の容量が、放出粒子にさらされるように調整される。様々な放射性同位体を、様々な表面上に設けることができる。
【0051】
[0060]5〜図12の全実施形態では、イオン源の棒要素、ロッド要素、又はチューブ要素は、イオン化領域の長さに沿って不連続であっても連続であってもよいことが理解されよう。これらの要素は、電場勾配が、イオン化装置の長さに沿って確立及び保持することができる限り、適用に適した任意の物質で作製できる。
【0052】
[0061]図5〜図12に示すチューブ及び棒の組み合わせは、必要であれば、所与のイオン化領域中に作成することができることを理解されたい。
【0053】
[0062]図13は、リング電極21が設けられているイオン化領域の構成を示す。用語「リング」は、制御された場の勾配を作り出すことになる任意の電極構造を説明するために使用される。イオン化領域の長さに沿って不連続である複数の棒又はチューブ(42、44、52など)の使用は、リング電極による電場勾配の形成に適合する。例示の実施形態では、放射性同位体を搬送し、粒子を放出する(矢印29参照)複数のイオン源の要素72が、リング電極内に設けられる。リング電極の内面も、放射性同位体を備え、粒子を放出することができる。
【0054】
[0063]図5〜図12及び図13に示す各イオン化領域は、図2A、図3又は図4のシステムの構成、及び図2B〜図2DのIMS測定器で実施することができる。イオン源の要素(棒及びチューブ)を互い及びイオン化領域の(1つ又は複数の)内壁に対して所望の相対位置に保持するために、様々な支持要素を使用することができることは当業者には明らかであろう。
【0055】
[0064]図14〜図16は、1つ又は複数のコロナ放電源が、イオン化領域中でイオン源として用いられている、本発明の典型的な実施形態を示す。コロナ放電源は、これらの図中でコロナ放電点及びコロナ放電スクリーンで概略的に示される。任意の既知の技術のコロナ放電の構成は、イオン源が、本発明の測定器に用いることができるときに役立つ。Madani,M.R.;Miller,Toby A.「Current Density Distribution Measurement Of Negative Point−To−Plane Corona Discharge」、IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement(1998年),47(4),907〜913頁;Cross,J.A..「An Analysis Of The Current In A Point−To−Plane Corona Discharge And The Effect Of A Back−Ionizing Layer On The Plane」、Journal of Physics D:Applied Physics(1985年),18(12),2463〜71頁を参照されたい。例えば、2つ以上のコロナ点の電極は、コロナ放電スクリーンと組み合わせて、多極コロナ放電を与えることができる。Jaworek,A.;Krupa,A.「Electrical Characteristics Of A Corona Discharge Reactor Of Multipoint−To−Plane Geometry」、Czechoslovak Journal of Physics(1995年),45(12),1035〜47頁を参照されたい。
【0056】
[0065]図14は、試料ガスが、イオンの電気泳動の方向にシステムの中に導入されている構成中のコロナ放電イオン源を示す。図15は、試料ガスが、イオンの電気泳動の方向のものとは反対である方向にシステムの中に導入されているコロナ放電イオン源の構成を示す。図16は、試料ガスが、コロナ放電に直接接触しない、別のコロナ放電イオン源の構成を示す。試薬ガスは、入口37で導入され、出口39又は試料ガス出口9から退出する。試料ガスは、コロナ放電の下流に導入され、試料ガス出口9から退出する。試薬ガスの流れは、試料ガスがコロナに接触するのを防ぐ傾向にある。この構成では、形成された一次イオンの大部分は、空気であり得る試薬ガスストリーム中の大部分のガスのものである。一次イオンは、電荷を試薬(二次イオン)に移し、試薬(二次イオン)は、電荷を試料(三次)に移す。一次イオン及び二次イオンは、反応領域を通って移動し続けて、第3のイオンを形成する。イオンは、最終的に、イオンシャッタを通過した後にドリフト領域に入る。
【0057】
[0066]本発明の一実施形態では、ある一定の検体の予備濃縮の必要性は、排除されており、すなわち、検体の粒子を収集すること、又は検体を蒸気から固相又は液相へ凝縮することは必要でない。予備濃縮をなくすことの工学的利益には、分析時間の削減、及び測定器の簡素化が含まれる。
【0058】
[0067]予備濃縮技術は、その効率の悪さに関わらず、IMSの感度の増加をもたらし得る。本発明の目的は、予備濃縮と本明細書に記載した大容量イオン化装置を組み合わせることによってさらにいっそう高感度のIMS測定器を実現する実施形態を提供することである。
【0059】
[0068]本発明の一実施形態では、大きい表面積の予備濃縮用試料収集装置が、大容量イオン化装置及び大容量反応領域を組み込むIMS測定器に接続され、適したイオンシャッタ、ドリフト領域、及び検出器に結合される。本実施形態では、非常に大容量の、おそらく何千リットルの非常に希釈した、おそらく100京分の1以下の濃度の蒸気相の検体からの検体分子は、何百平方センチメートルの表面上へ吸着でき、続いて試料をよりずっと小さい容量、おそらく1リットルのガスに脱着することにより、IMS測定器に入る検体蒸気の濃度の大きな増加をもたらすことになる。予備濃縮と本明細書に記載した大容量イオン化装置技術の感度の増加とを組み合わせると、感度への乗法的効果、すなわち、いっそう大きい感度をもたらすことになるということが予期される。
【0060】
[0069]別の実施形態では、本明細書に記載した大容量イオン化装置の特徴を組み込むIMS測定器は、検体分子の通過を可能にし、外部ガスの潜在的な影響を低減させる膜分離装置に接続されることになる。
【0061】
[0070]本発明の別の実施形態では、本明細書に記載した大容量イオン化装置の特徴を組み込むIMS測定器は、IMS分析の前に分子種の分離を行うために、ガスクロマトグラフなどの試料分離装置に接続されることになる。この予備分離により、検体混合物の定量分析、及びいっそう複雑な混合物の半定量分析が可能になる。
【0062】
[0071]従来の手法に対して大容量イオン化装置を用いる概念が採られる限り、本発明を用いて可能な多くの修正形態があることは明らかなはずである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって画定されるものである。
【0063】
[0072]さらに、様々な典型的な実施形態の要素及び/又は特徴は、本開示及び添付の特許請求の範囲の範囲内で、互いとの組み合わせ及び/又は互いとの置換を行うこともできる。
【0064】
[0073]他の実施形態では、本発明の上記及び他の典型的な特徴のいずれか1つは、装置、方法、又はシステムの形式で具現化することができる。例えば、前述の方法は、図面に示した方法論を行うための構造のいずれかを含むがそれに限定されないシステム又は装置の形式で具現化される。
【0065】
[0074]記載した方法のどれも、図面に示した方法論を行うための構造のいずれかを含むがそれに限定されないシステム又は装置の形式で具現化される。本明細書に記載した測定器、システム、又は装置のどれも、特に図面中のものは、開示した測定器、システム、又は装置を用いる方法の中で具現化することができる。
【0066】
[0075]このように例示的な実施形態を説明してきたが、同じものを多くのやり方で変更することができることは当業者に明らかであろう。そのような例示的な変更形態は、本発明の精神及び範囲から逸脱するとみなされるべきではなく、当業者に自明であろうそのような全ての修正形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものである。
【0067】
[0076]構成要素についての構成要素の個数、位置、形状などは、図面に示した方法論を行うための構造のどれにも限定されない。
【0068】
[0077]物質、装置の構成要素、構成、又は方法のグループを本明細書に開示するとき、これらグループの個々の全要素、及びその全てのサブグループは、別々に開示されていると理解される。マーカッシュグループ又は他のグループ化が本明細書で用いられるとき、そのグループの個々の全要素、並びにこのグループの可能な限り全ての組み合わせ及びサブコンビネーションは、その開示に個々に含まれるものである。本明細書に記載又は例示された構成要素のあらゆる表現(formulation)又は組み合わせを使用して、特段の明記がない限り、本発明を実施することができる。本明細書で範囲、例えば、温度範囲、時間範囲、又は距離範囲が与えられるときはいつでも、全ての中間範囲及び部分的範囲、並びに所与の範囲に含まれる全ての個々の値は、本開示に含まれるものである。
【0069】
[0078]本明細書において使用される、「備える、含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む、含有する(containing)」、又は「ことを特徴とする(characterized by)」と同義であり、包含的又はオープンエンドであり、追加の未列挙の要素又は方法ステップを除外しない。本明細書において使用される、「からなる(consisting of)」は、クレーム要素で特定されていないいずれもの要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書において使用される、「本質的に、〜からなる(consisting essentially of)」は、クレームの基本的な特徴及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない物質又はステップを除外しない。用語「備える、含む(comprising)」は、用語「本質的に、〜からなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」よりも広いものであるとするが、本明細書において使用される広義の用語「備える、含む(comprising)」は、より狭い用語「本質的に、〜からなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を包含するものであり、したがって、用語「備える、含む(comprising)」は、特許請求の範囲の基本的な特徴及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないステップを除外するために「本質的に、〜からなる(consisting essentially of)」と置き換えることができ、「備える、含む(comprising)」は、列挙されていないクレーム要素を除外するために「からなる(consisting of)」と置き換えることができる。
【0070】
[0079]本明細書に例示的に適切に記載した本発明は、本明細書に具体的には開示されていない任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の限定を欠く場合でも実施することができる。
【0071】
[0080]当業者は、具体的に本明細書に典型的に示されたもの以外の物質、装置の要素、装置の構成、及び方法が、過度の実験に頼ることなく本発明の実施に用いることができることを理解するであろう。任意のそのような物質、装置の要素、及び方法の既知の技術全ての機能的な均等物は、本発明に含まれるものである。用いられた用語及び表現は、説明の用語であり、限定でない用語として用いられており、そのような用語及び表現の使用において、例示及び記載した特徴、又はその部分の任意の均等物を除外することは意図されておらず、様々な修正形態が、クレームされた本発明の範囲内で可能であることが理解される。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び随意的な特徴によって具体的に開示されているが、本発明に開示された概念の修正形態及び変更形態は、当業者が用いることができ、そのような修正形態及び変更形態は、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲内であるとみなされることを理解されたい。
【0072】
[0081]明細書で言及した全ての特許及び公報は、本発明と関連する当業者の技術水準を示すものである。本明細書で引用された参考文献は、その出願日の時点での当技術分野の状態を示すために、全体として参照により本明細書に組み込まれ、この情報は、必要に応じて、従来技術にある特定の実施形態を除外するために本明細書において用いることができるものである。例えば、化合物が特許請求の範囲に記載されているときには、本明細書中で開示された参考文献に開示された化合物を含め、当技術分野で知られた化合物は、請求項に含まれるものではないことを理解されたい。
【0073】
[0082]本明細書中で引用された全ての参考文献は、本明細書の開示と矛盾のない限りにおいて参考により本明細書に組み込まれる。本明細書中で与えられたいくつかの参考文献は、参考により組み込まれることで、出発物質の源、追加の出発物質、追加の試薬、追加の合成方法、追加の分析方法、及び追加の本発明の用途に関して詳細を与える。
【0074】
[0083]以下の説明では、微量蒸気検体の検出のための図1のIMSなどのIMSの動作に対して、爆発物TNT(トリニトロトルエン、式量227)を微量蒸気検体の一例として用いることにする。実際には、試料がTNTである必要も、キャリアガスが空気である必要もない。この説明は、他のガス中で搬送される他の検体蒸気に一般化することができる。
【0075】
[0084]イオンは、各イオン種に固有の「移動度の減少」のパラメータ、及び課された電場勾配に比例する速さで電気泳動中に移動する。大気圧及び場の勾配200V/cmで、この速さは、200〜600cm/秒に及ぶ [Cl−などについての最大をチェックせよ]。TNTについては、イオンの速さは、300cm/秒近くになるであろう。
【0076】
[0085]分解能の改善のために、アパーチャグリッド17(図1参照)は、「イオンパケット」に接近することで帯電することによるコレクタのプレチャージを防ぐためにコレクタプレート16のための保護物として働く。このグリッドは、イオンの運動に関与する電場の一様性の保持も助ける。
【0077】
[0086]ドリフトチューブは、円形又は任意の特定の形状である必要はないが、電極アレイのパラメータは、シャッタ(又はパルスされたイオン源)によって解放されるイオンのパケットが、最小の時間の歪みでコレクタプレート電極16(図1)に到着することを可能にしなければならず、すなわち、理想的には、パケットの前線境界上のイオンは、同時に16に到着すべきである。同様に、イオン化領域又は反応領域が、円形又は任意の特定の形状である必要はない。
【0078】
[0087]イオンシャッタ12(帯電された1つ又は複数のグリッド)は周期的に開放されて、イオンのパルスが、ドリフトチャンバ15の中に入ることを可能にする。コレクタプレート16での各イオン種の到達時間は、ドリフトチャンバ15を満たす非イオン化ガスのイオン移動度によって決定される。ドリフト時間の関数として収集されたイオンの量は、マイクロプロセッサ(図示せず)によって記録される。
【0079】
[0088]典型的には、イオンシャッタ12は、イオンパケットの通過を可能にするように100〜1000μ秒の時間にわたって「開放」される(又はイオン源がパルスされる)。現在のIMSに用いられる電流測定装置は、ピコアンペアレンジの電流、又は毎秒約600万個のイオンを測定できるに過ぎない。幅による乗算(multiplication by the width)(検出器に到着し、三角形のようなピーク形状の近似を用いるイオンパケットは典型的には1000μ秒)は、検出可能な各パケットが、約3000個のイオンを含むことを明らかにする。これにより、約10ミリキュリーの放射能のNi−63放射性イオン源を含む市販のIMSについての公称検出限界になる。
【0080】
[0089]IMS装置の応答は、広範囲にわたってイオン化装置の活動状態と試料サイズの両方に比例する。小型IMS装置は、10μキュリーの放射性物質しか含まない可能性がある。結果として、10ミリキュリーの放射性物質を含む静的IMS装置(stationary IMS device)に比べると、3000個のイオンからなるイオンパケットを作り出すために、公称1000倍以上の試料が、小型IMS装置に導入されなければならない。試料サイズ、したがって検出限界を減少させるために、a)利用できるイオンに対する検出器の感度を増大させること、b)パケットのイオンの個数を増加させること、又はc)単一の検体のその個数のイオンをより短い時間内に到着させ、それによって瞬間イオン電流を増加させることが望ましい。3つの状況全てが、試料測定の信号対雑音比を増加させる。典型的には、多くのパケットが分析され(多数の「スキャン」)、その結果を平均化して最終的な信号対雑音比を改善する。
【0081】
[0090]既存のIMS測定器は、爆発物の粒子を収集するために空気を濾過すること、又は粒子状試料を収集するために表面をこすり「スワイプ」すること、又は試料蒸気を表面上へ凝縮することによって均一に爆発物試料を収集する。これらの手続きにより、試料を「予備濃縮」し(preconcentrate)、それによって、試料の凝縮相が、気相に蒸発されると、試料の可能な限り最高の気相濃度が、IMSのイオン化チャンバに導入される。これらの方法を用いて、市販のIMS測定器は、爆発物に対する「数十ピコグラム」の感度を実現する。
【0082】
[0091]その発明者らは、予備濃縮なしで「数十ピコグラム」の任意の物質を検出することができるIMS測定器に気付いていない。さらに、試料は、乾燥ガスを用いて分析されるに過ぎない。加えて、「試薬」ガスを用いて検体分子への電荷移動を促進することは当分野でよくあることである。
【0083】
[0092]市販の測定器の全体的効率は、参考文献によって3000個のイオンの検出限界に計算され得る。爆発物TNTの3000個のイオンのパケットは、スキャン当たり合計1.1アトグラム(「ag」)の重さがあることになる。毎秒25スキャンの繰り返し率での25スキャンを平均化してデータを取得すると仮定すると、TNTイオンの27.5agが、シャッタを通過する。これらのイオンが、試料10ピコグラムに由来する場合、導入された質量の0.00028%だけが、検出器に到達する。典型的なシャッタの0.1%のデューティサイクルの計算により、イオン化効率0.28%を得る。用語「数十ピコグラム」が、実際には50pgを意味する場合、イオン化効率は、いっそうおそらく0.05%である。低効率の予備濃縮/蒸発法は、1つには、加熱器の固体表面で加熱している間の試料の熱分解によるものであり得る。
【0084】
[0093]検出のため試料の濃度を最大にするためには、放射性同位体Ni63によって放出されるベータ粒子の空気中の侵入長に等しい内半径(約3mm)、及び長さ約5mm、又は容量0.14cm3を有する円筒によって代表されるように、市販の測定器のイオン化チャンバは、小さい。Siegelは、イオン再結合に利用できる時間を最小限にするために、チャンバのサイズは、イオン化装置の壁で試料イオンの損失を最小限にすると共に、リニア流速を増大させるように小さくすべきであると述べている(M.W.Siegel,in T.W.Carr,Plasma Chromatography,Plenum Press,New York,1984年,97ff頁)。Siegelの分析は、イオン化装置に印加される電場の影響を含まず、半径がより大きいイオン化装置を述べていない。電場の印加は、正に帯電された粒子及び負に帯電された粒子を迅速に分離することによってイオン再結合を大いに最小限にする。
【0085】
[0094]10pgのTNTを含む空気の容量が、評価され得る。結晶のTNTの固体と室温及び室内圧力での空気との間の平衡(「飽和」)状態での空気中のTNTの濃度は、10−9gTNT/1g空気である。室温及び密度1.18g/Lでは、TNTで飽和した空気8.49cm3は、10pgのTNTを含むことになる。この容量は、上記の市販のIMSイオン化装置の容量の約63倍である。
【0086】
[0095]TNTの試料の上を通る周囲空気は、TNTの飽和濃度近くにあるとは予想されない。追加の周囲空気又は他のガスによるそのような気流の希釈は、濃度をさらに低減させることになる。IMS装置に到達するTNTの濃度が、飽和の1/100又は1/10000である場合、10pgのTNTが入れられていることを確実にするために、空気0.085〜8.5Lが、イオン化装置に導入されなければならない。
【0087】
[0096]検出限界の試料10pgを取得するために、25スキャン/秒の繰り返し率での25スキャン(全サンプリング時間1秒)が必要とされる場合、流量85〜8,500cm3/秒(0.085〜8.5L/秒)が、必要とされることになる。通常は、上記の市販のイオン化装置の中への流量は、100cm3/分又は1.7cm3/秒程度である。周囲空気中に存在しているTNTは、従来のイオン化装置を用いて検出することができないことが明らかである。
【0088】
[0097]イオンだけが、「電気的ダウンヒル(electrically downhill)」で移動し、すなわち、負イオン(陰イオン)だけが、もっと正の電圧の領域に向かって移動し、正イオン(陽イオン)だけが、もっと負の電圧の領域に向かって移動する。イオン化領域が電場を受けるとき、同じ現象が、イオン化装置で生じる。これを利用して、イオンシャッタ及びドリフト領域の方向のガスストリームからイオンを取り出すことができる。
【0089】
[0098]印加電場勾配200V/cmでは、TNTイオンは、電気泳動の下で、TNTイオンを搬送するガスに対して300cm/秒で移動する。キャリアガスが、イオン化装置を通過した後、キャリアガスは、ある種の排気口を通って排除されなければならない。排気口の外へ移動するガスのエントレインメントに対するイオンの損失を最小限にするために、空気は、空気が反応領域を離れるときに、イオン流に対して横切る方向に大変ゆっくり移動しなければならない。
【0090】
[0099]キャリアガスは、電気泳動の下で検体イオンがイオン検出器に向かって進むのと同じ方向にイオン化チャンバを通って流れることができ(「並流」)、又は反対の方向に流れることができ(「逆流」)、又はイオン流に対して横切る方向に流れることができる(「直交流」)。逆流を用いる測定器では、検体イオンの電気泳動の方向とは反対方向のガスのリニア流速は、検体の電気泳動の速さを超えてはならず、さもなければ、検体イオンは、検出器に決して到達せず、エントレインされ、排気口を通って運び出されることになる。並流を用いる測定器、及び直交流を用いる測定器では、過度のキャリアガス流が、検体イオンの一部をエントレインすることになり、検体イオンのほんの一部は、検出器に決して到達しない。
【0091】
[00100]逆流モードと直交流モードの両方の動作は、試料分子が、望まれていない電荷符号の反応性イオンにさらされることにならないという少なくとも利点を有し得る。そのようにさらされることにより、試料分子の分解及び感度の低下がもたらされ得る。
【0092】
[00101]IMS測定器用の最適に設計されたイオン化装置は、測定器の残りで必要なドリフト時間及びデータ処理時間に適合する速さでガス流量を与えなければならない。円筒中のガス流量の「栓流(plug−flow)」モデルを用いて、円盤状の容量の試料を含む空気のイオン化が、中性試料分子と反応性イオンを混合する間の時間、及びイオンがシャッタに到達する時間で生じなければならない。試料分子が、イオン化装置のチャンバ内でイオン化されていない場合、ドリフト領域が妨げられないように、排気ガスが、反応領域から一部の試料分子をエントレイン及び搬送することができるように、ガスの大部分は、ガスがシャッタに到達する前に測定器から退出しなければならない。イオン化装置領域の幾何形状、反応領域の幾何形状、換気領域の幾何形状の構成ごとにいくつかの最適なリニア流速があることになる。
【0093】
[00102]正に帯電された検体イオンを直接生成するように試料分子の光イオン化を仕向けることによってイオン化が生じる適用例では、反応領域の必要性がない。光イオン化によって解き放たれる電子は、検出器から離れて移動し、試料分子が電子にさらされることを最小限にするために逆流を利用することが有利であり得る。検体分子の性質に応じて、電子との有害な反応はない可能性がある。
【0094】
[00103]電子源(プラズマ、コロナ放電、光電子放出など)が、負に帯電された検体イオンを作り出すために用いられる適用例では、正に帯電されたイオンがほとんど又は全く生成されないことが期待される。この場合、キャリア流は、並流又は逆流であり得るものであり、測定器の感度の違いはほとんどない。
【0095】
[00104][数値例]蒸気相にあるTNTのIMS分析を示すことにする。この分析は、市販の3000電子/秒の検出器エレクトロニクス、及び上記の飽和率1/10000に基づいている。
【0096】
[00105]放射性同位体Am241(アメリシウム241)によって放出されるアルファ粒子の比較的大きい侵入範囲(約5cm)を利用することができる。内径4インチ(10.16cm)、及び長さ4インチの円筒形イオン化装置の断面全体は、円筒の中心軸に位置するAm241源からのアルファ粒子にさらされることになる。平均リニア流速224cm/秒(5マイル毎時)において、内径4インチのチューブは、18.2×103cm3/秒、又は必要とされる流量8,500cm3/秒の2倍(濃度が大きくなるほど少なくなる)を送ることになる。空気が、長さ2インチの周方向開口によって排出される場合、半径方向の気流速度は、10cm/秒になり、この速度は、エントレインメントに対してイオンの損失を最小限にするのに十分に低いものである。
【0097】
[00106]試料分子の試料イオンへの最高の変換は、試料分子数密度に比べて、過度の反応性イオン数密度が発生し、反応性イオンが、最大数の試料分子を試料イオンに変換するのに十分な期間にわたって試料分子と接触すると生じる。
【0098】
[00107]Siegelは、イオン化装置内のイオン発生率は、106×(単位がミリキュリーの放射能の強さ)×(単位がeVの粒子エネルギー)/容量であると述べている。以下の実験例(Experimental Example)では、直径4インチ×4インチのイオン化装置の2.7mCiのAm241(粒子エネルギー4.5MeV)を用いると、これは、9.88×109電荷/cm3/秒である。Siegelは、検体と反応性イオンの間の電荷交換の二次反応率定数は、10−9cm3秒−1であるとも述べている。したがって、検体が90%イオン化されるのに必要な時間は、0.01秒である。この時間は、5マイル毎時のリニア的な流れでの内径4インチ×4インチの円筒形イオン化装置内の空気の滞留時間(0.045秒)の状態よりも短く、(空気流を無視している)200V/cmで4インチのイオン化装置及び2インチの反応領域を横切るための一価のTNTイオンの時間(0.051秒)より短い。結果として、TNT試料蒸気のほぼ完全なイオン化が予想される。
【0099】
[00108]これらの比較は、分光計内のガス流量のリニア流速、及びイオン化装置/反応領域の長さは、相互依存的であることを示唆する。反応領域が、反応性イオンと検体分子の間の電荷移動が本質的に完了するのに十分長い場合、効果的なイオン化が、大容量の流量で生じることになる。
【0100】
[00109]代替として、より小さい侵入範囲の複数の放射性線源、例えば、侵入深さ3mmであるベータ粒子を放出する同位体Ni63を含む装置が、大直径のストリーム又は複数のストリームの試料含有ガスをイオン化放射にさらすために使用されもよい。別の代替例として、光源が、ガス中に含まれた試料分子を光イオン化するために使用されもよく、おそらく試料の光子への露出を増加させることを可能にするために反射鏡を用いる。さらに別の代替例として、放射性同位体源のいくつかの可能なタイプの電子源が、所定の位置で使用されてもよい。
【0101】
[00110]放射性物質は、イオン化チャンバの内面にあってもよく、エネルギー粒子が、チャンバの軸に向かって内向きに放射することが可能である。好ましくは、放射性線源は、放出粒子が外向きに放射するようにチャンバのインナー軸に、又はその軸の近くに設置されてもよい。全粒子は、全粒子がその運動エネルギーを全て失ってしまうまで反応性イオンを生成することになるので、この幾何形状は、所与の放射能レベルの反応性イオンを発生させることにおいて潜在的により効率的である。放射性物質がチャンバの内面にあり、粒子が、内向きに放射するイオン化装置の効率を最大にするために、粒子の侵入範囲内にいずれのチャンバ壁も有するのを避けるように気を付けなければならない。イオン化装置の壁又は任意の固体物質に当たる粒子は、その粒子が、反応性イオンの最大数の発生を完了する前に失われる。
【0102】
[00111]従来のデータ取得/処理速度は、10〜50スキャン/秒である。18.2×103cm3/秒の速度例では、内径4インチ×長さ4インチのイオン化装置は、毎秒15回完全に補充されることになる。この補充速度は、15スキャン/秒の取得速度で、フレッシュな試料蒸気が、スキャンごとに利用できることを保証することになる。
【0103】
[00112]反応領域中のイオンの電気泳動の速さを増加させて、キャリアガスの流れの影響を低減させることが可能であるが、イオンが、ガス分子との衝突によって加熱され、普通でない化学反応及び/又は予期してない化学反応が生じる場合、「高電圧状態」にイオンが入る前に、許容可能な電場勾配に限界がある。高電圧状態への遷移は、大気圧で、小さい分子について、2000V/cm未満で生じる。
【0104】
[00113]
【実施例】
【0105】
[00114]イオン移動度分光計(IMS)は、中心軸に沿って円筒対称性のリニア装置(linear device)として構築された。全ての構成要素は、測定器の軸に垂直及び測定器の軸を中心に組み立てられた。全ての構成要素は、真っ直ぐ揃えられ、ソケット及びほぞ継手は、縦方向セラミックロッド及びばね張力によって所定の位置に保持された。
【0106】
[00115]試料は、まず電気カートリッジ加熱器を備えているフィン付きのアルミニウムのガス加熱器を通って測定器の中に流れると共に、温度制御を用いて100℃で保持され、次いでイオン化装置の中に流れた。
【0107】
[00116]イオン化装置は、内径(ID)4インチのセラミックリングによって封止及び絶縁された4つの電極リング(「ドリフトリング」)からなる内径4インチ×長さ4インチのイオン化チャンバであった。このイオン化装置は、第1のドリフトリングに電気的に取り付けられた有孔金属リペラプレートによって試料入口端で終端となっていた。2.7mCiのAm241で帯電された金属箔が、チャンバの中心軸に取り付けられ、金フィルムに保護されていた。この箔からのアルファ粒子は、ソースフォイルから外向きに試料ガスの中に放射された。
【0108】
[00117]イオン化チャンバを通って流れた後、試料ガスは、セラミックスペーサによって分離された追加の内径4インチの金属ドリフトリングからなる長さ2.5インチの反応領域を通って前進した。主に中性種を含む試料ガスは、ドリフトリング同士の間のギャップを通って低速でこの領域(総面積162cm2)から自由に逃れることができた。
【0109】
[00118]イオンは、電気泳動によって、分光計の軸に沿って、微細電鋳導体によってクロスハッチされた直径2インチの面積をそれぞれ有する薄いニッケルスクリーンからなるイオンシャッタへ送られた。このシャッタ構造は、米国特許出願公開第2008/0179515号(2008年7月31日)(2007年7月27日に提出されたUSSN11/769,513)に記載されている。
【0110】
[00119]イオン分離又は「ドリフト領域」は、全長6インチで、セラミックリングによって封止及び絶縁された追加の11個の金属のドリフトリングからなっていた。ドリフトチューブは、微細電鋳導体によってロスハッチされた直径2インチの面積を有する薄いニッケルスクリーン(「アパーチャグリッド」)によって終端となっていた。分離イオンは、アパーチャグリッドを通過し、アパーチャグリッドから1mmの直径1インチのファラデープレート電極で中和された。ファラデー電極で形成されたイオン電流は、Texas Instruments社のIVC102集積回路に類似するが、IVC102集積回路よりも高感度である高精度スイッチ式積分器検出器を用いて増幅された。データは、付属のデータ取得ハードウェア及びカスタム開発したソフトウェアと共に、パーソナルコンピュータを使用して分析された。
【0111】
[00120]約−5000ボルトの電位差が、イオン化装置及び反応領域の両端間に印加され、約−7000ボルトが、シャッタとファラデー電極の間のドリフト領域の両端間に印加された。アパーチャグリッドとファラデープレートの間の電位差は−200ボルトであり、この勾配は、ピーク分解能において小さい損失でイオンの大部分を収集したはずである。
【0112】
[00121]反応領域中の排気口を貫通した熱い空気は、ドリフト領域の外側を加熱するために使用された。この空気は、内径4インチのダクトホースを用いて、較正された4インチの風速計、及び速度制御されたファンを通ってIMSから排除された。出口空気の温度は、97℃であり、測定した気流速度は、4〜5マイル毎時様々であった。
【0113】
[00122]溶解トリニトロトルエン(TNT)0.2グラムを含有するアセトニトリル20ミリリットルは、幅9インチ×長さ13インチ×深さ1.5インチのガラストレイの底部で、室温で夜通し蒸発された。このトレイは、高さ12フィート及び幅8フィートの少し使用された回廊に配置され、ここで平均気流速度は毎秒約1/3フィートであり、この速度は一陣の煙を観察することによって求められた。したがって、空気の質量流量は、1.07kgm/秒だった。固体TNTからのTNT蒸気の蒸発速度は、約26pg/cm2/秒であることが知られており、そして、空気中のTNTの濃度は、約5ppt(1兆分の1)であった。(Mu,R.;Ueda,A.;Liu,Y.C;Wu,M.;Henderson,D.O.;Lareau,R.T.;Chamberlain,R.T.「Effects of interfacial interaction potential on the sublimation rates of TNT films on a silica surface examined by QCM and AFM techniques」、Surface Science(2003年),530(1−2),L293〜L296頁)。
【0114】
[00123]TNTは、ガラス試料トレイが、IMS測定器の風上71フィートに配置されたとき、回廊内の空気のドリフト速さに対応する時間(3.5分)で、評価されたベースラインノイズの約6倍の高さの単一ピークとしてIMSスペクトル中で観測された。このピークは、トレイが排除されると10分以内に高さゼロに減少した。より大きいピークは、トレイが、測定器近くに導入されたときに観測され、トレイが、非常に近いとき、蒸気が、測定器をバイパスしないようにIMSのすぐ上流にトレイを配置することが必要であった。TNTについてのIMSドリフト時間は、IMS測定器の真正面で加熱されたガラスチケット(glass ticket)に加えられた市販の分析TNT溶液によって確認された。各分析IMSスペクトルは、平均200スキャンであり、完了するのに、パーソナルコンピュータ上でのデータ取得、分析、及び描写を含め、約15秒必要とした。試料を回廊に導入する前に、バックグラウンドスペクトルが、同じやり方で収集された。このスペクトルは、その後の各検体スペクトルから減算された。別途の実験では、800mgのTNTを備えた同じガラストレイ、及び同じIMSを用いて、このレベルのTNTが、トレイから135フィートの距離で検出することができた。
【0115】
[00124]実験時の回廊内の温度及び相対湿度は、85°F及び相対湿度62%であった。どの点でも、試薬が、TNT試料又は気流に加えられず、どの点でも、気流を乾燥させる試みはなされなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源と、反応領域と、ドリフト領域と、イオンを検出するためのコレクタとを含み、前記イオン源のイオン化容量が、5cm3より大きいイオン移動度分光計。
【請求項2】
前記イオン源の前記イオン化容量が、100cm3より大きい、請求項1に記載のイオン移動度分光計。
【請求項3】
前記イオン源の前記イオン化容量が、0.5L〜2Lである、請求項1に記載のイオン移動度分光計。
【請求項4】
イオン化領域中に電場勾配がある、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項5】
前記イオン源が、1つ又は複数の放射性イオン源である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項6】
前記イオン源が、コロナ放電である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項7】
前記イオン源が、光イオン源である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項8】
前記分光計に入る試料ガスを加熱するための加熱器をさらに備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項9】
前記イオン源の前記イオン化容量が、0.5Lより大きく、イオン化領域中に電場勾配をさらに含む、請求項1に記載のイオン移動度分光計。
【請求項10】
前記イオン化領域中の前記電場勾配が、複数のリング電極によって与えられる、請求項9に記載のイオン移動度分光計。
【請求項11】
前記イオン化領域が、1つ又は複数の放射性イオン源を備える、請求項9に記載のイオン移動度分光計。
【請求項12】
イオン移動度分光法によって試料ガス中の低レベルの検体を検出する方法であって、
(a)イオン源、反応領域、ドリフト領域、及びイオン検出器を有し、前記イオン源のイオン化容量が、5cm3より大きいイオン移動度分光計(IMS)を用意するステップと、
(b)低レベルの検体を含む試料ガスを前記IMSの前記イオン化容量の中に導入し、イオン化領域のほぼ全容量が、イオン化を受け、それによって前記IMSにおける検出に十分な量の前記検体のイオンを形成するステップと、
(c)前記IMSにおける前記検体イオンを検出するステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記イオン検出器が、コレクタである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イオン検出器が、質量分析計である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記イオン検出器が、電子増倍管を備える質量分析計である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
用意した前記IMSが、検出のために前記ドリフト領域への検体イオンを含むイオンの通過を促進するように、前記イオン化領域中に電場勾配を設けた、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン源が、1つ又は複数の放射性イオン源である、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記イオン源が、コロナ放電源である、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン源が、光イオン源である、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記試料ガスが、周囲空気である、請求項12〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記検体が、低蒸気圧検体である、請求項12〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記検体が、TNTである、請求項12〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
イオン源と、反応領域と、ドリフト領域と、イオンを検出するためのコレクタとを含み、前記イオン源のイオン化容量が、5cm3より大きいイオン移動度分光計。
【請求項2】
前記イオン源の前記イオン化容量が、100cm3より大きい、請求項1に記載のイオン移動度分光計。
【請求項3】
前記イオン源の前記イオン化容量が、0.5L〜2Lである、請求項1に記載のイオン移動度分光計。
【請求項4】
イオン化領域中に電場勾配がある、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項5】
前記イオン源が、1つ又は複数の放射性イオン源である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項6】
前記イオン源が、コロナ放電である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項7】
前記イオン源が、光イオン源である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項8】
前記分光計に入る試料ガスを加熱するための加熱器をさらに備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項9】
前記イオン源の前記イオン化容量が、0.5Lより大きく、イオン化領域中に電場勾配をさらに含む、請求項1に記載のイオン移動度分光計。
【請求項10】
前記イオン化領域中の前記電場勾配が、複数のリング電極によって与えられる、請求項9に記載のイオン移動度分光計。
【請求項11】
前記イオン化領域が、1つ又は複数の放射性イオン源を備える、請求項9に記載のイオン移動度分光計。
【請求項12】
イオン移動度分光法によって試料ガス中の低レベルの検体を検出する方法であって、
(a)イオン源、反応領域、ドリフト領域、及びイオン検出器を有し、前記イオン源のイオン化容量が、5cm3より大きいイオン移動度分光計(IMS)を用意するステップと、
(b)低レベルの検体を含む試料ガスを前記IMSの前記イオン化容量の中に導入し、イオン化領域のほぼ全容量が、イオン化を受け、それによって前記IMSにおける検出に十分な量の前記検体のイオンを形成するステップと、
(c)前記IMSにおける前記検体イオンを検出するステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記イオン検出器が、コレクタである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イオン検出器が、質量分析計である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記イオン検出器が、電子増倍管を備える質量分析計である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
用意した前記IMSが、検出のために前記ドリフト領域への検体イオンを含むイオンの通過を促進するように、前記イオン化領域中に電場勾配を設けた、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン源が、1つ又は複数の放射性イオン源である、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記イオン源が、コロナ放電源である、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン源が、光イオン源である、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記試料ガスが、周囲空気である、請求項12〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記検体が、低蒸気圧検体である、請求項12〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記検体が、TNTである、請求項12〜20のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−503805(P2011−503805A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533231(P2010−533231)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/082589
【国際公開番号】WO2009/094059
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510124870)ジ アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/082589
【国際公開番号】WO2009/094059
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510124870)ジ アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ (1)
【Fターム(参考)】
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