説明

ガス中粒子計測システム

【課題】 ガス中の粒子を空気中粒子計数器で精度を低下させることなく計測することができるガス中粒子計測システムを提供する。
【解決手段】 空気以外の気体に浮遊する粒子を計測するガス中粒子計測システムであって、多孔性隔壁を介して計測対象となる試料ガスと空気との分圧差による拡散により、試料ガスを空気に置換するガス空気置換部1と、このガス空気置換部1で置換された空気中の粒子を計測する空気中粒子計数器2を備える。ガス空気置換部1の試料ガス流入口Aと空気流入口Bの差圧を測定する差圧計10を設けることができる。また、ガス空気置換部1の試料ガス流入口Aの上流に、試料ガス又は空気を選択して試料ガス流入口Aへ導く切換バルブ12を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気以外の気体に浮遊する粒子を計測するガス中粒子計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子デバイス産業では、デバイスの生産工程において、エッチング・成膜・洗浄を繰り返すことが多く、これらの作業で使用するガスは高清浄度を維持することが要求される。ガスを管理する手段として、ガス中に浮遊する粒子を精度よく検出する粒子計測器が望まれている。ここで、ガスとは空気以外の気体である。一般に、空気中に浮遊する粒子数を計測する粒子計数器は、空気中粒子計数器、ガス用はガス用粒子計数器と称される。空気中粒子計数器のうち光散乱式気中粒子計数器は、クリーンルームの管理に使用されている。
【0003】
ガス中の粒子を計測するためには、ガスの密度・屈折率や粘性等の違いから、空気中で調整した空気中粒子計数器を使用できないので、計測対象となるガスを使用し、夫々のガスに合わせて、試料空気供給部の調整をしなければならない。また、受光部の調整や流量計の指示値の校正等も必要となる。また、レーザキャビティ内においても、ガス毎の光源部の調整が必須となる。メンテナンスにおいても、同様に、計測対象となるガスを使用して行わなければならない。
【0004】
また、腐食性、毒性や反応性を有するガス中の粒子管理は、高リークタイトで不純物を残留しない構造が必要なため、試料空気を粒子検出領域に導入するための空気動力学ノズルを使用せず、粒子検出領域を密閉された透明な流路(フローセル)で構成した専用のガス用粒子計数器を使用することが知られている。ここで、試料空気とは、計測対象となる粒子を含む空気である。
【0005】
また、水素等の反応性ガス中の粒子数を計測する技術として、水素等の反応性ガスに含まれる粒子の数をそのまま維持させた状態で反応性ガスを不活性ガスによって稀釈し、実質的にアルコール類の蒸気と反応を起こさない程度に不活性化させる拡散希釈装置を使用して、反応性ガス中の粒子数を計測する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−264432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、フローセルを使用したガス用粒子計数器は、夫々のガス毎に、計測対象となるガスを使用して、供給部の調整、受光部の調整は不要であるが、オープンキャビティ方式を用いることが出来ないので、空気中粒子計数器で使用するレーザのキャビティ内と同等の照射強度を得るためには、より照射強度の高い光源を必要とする。あるいは、照射光のエネルギー密度を上げるため、試料流量を減らすことが必要になる。これらの理由により、フローセルを使用したガス用粒子計数器は、光散乱式気中粒子計数器に比べ、かなり高価である。
【0008】
また、特許文献1に記載の発明においては、97%程度の希釈でも安全が確保できる水素等の反応性ガスを不活性ガスにより希釈するものであり、希釈した状態のガスでは、粒子を計測する装置によっては危険な状態になる可能性がある。また、希釈の程度により、用いる粒子計数器によっては、計測精度が低下してしまうことも想定される。
【0009】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガス中の粒子を空気中粒子計数器で精度を低下させることなく計測することができるガス中粒子計測システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、空気以外の気体に浮遊する粒子を計測するガス中粒子計測システムであって、計測対象となる試料ガスを空気に置換する前処理部を備えるものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記前処理部が多孔性隔壁を介して計測対象となる試料ガスと空気との分圧差による拡散により、試料ガスを空気に置換するガス空気置換部であり、このガス空気置換部で置換された空気中の粒子を計測する空気中粒子計数器を備えるものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記ガス空気置換部の試料ガス流入口と空気流入口の差圧を測定する差圧計と、前記空気流入口への空気流量を制御するバルブを設ける。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記ガス空気置換部の試料ガス流入口の上流に、試料ガス又は空気を選択して前記試料ガス流入口へ導く切換バルブを設ける。
【0014】
請求項5に係る発明は、空気以外の気体に浮遊する粒子を計測するガス中粒子計測システムであって、計測対象となる試料ガスを空気に置換するガス空気置換部と、このガス空気置換部で置換された空気中の粒子を計測する空気中粒子計数器を備え、前記ガス空気置換部は一段置換部と二段置換部からなる二段式で、前記一段置換部で試料ガスを中間ガスに置換し、この中間ガスを前記二段置換部で空気に置換するものである。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記一段置換部は、多孔性隔壁を介して試料ガスと中間ガスとの分圧差による拡散により、試料ガスを中間ガスに置換し、前記二段置換部は、多孔性隔壁を介して中間ガスと空気との分圧差による拡散により、中間ガスを空気に置換するものである。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記一段置換部の試料ガス流入口と中間ガス流入口の差圧を測定する差圧計と、前記二段置換部の中間ガス流入口と空気流入口の差圧を測定する差圧計と、前記中間ガス流入口への中間ガス流量を制御するバルブと、前記空気流入口への空気流量を制御するバルブを設ける。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記一段置換部の試料ガス流入口の上流に、試料ガス又は中間ガスを選択して前記試料ガス流入口へ導く切換バルブと、前記二段置換部の中間ガス流入口の上流に、中間ガス又は空気を選択して前記中間ガス流入口へ導く切換バルブを設ける。
【0018】
請求項9に係る発明は、請求項5乃至請求項8のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記試料ガスが特殊ガスであり、前記中間ガスが不活性ガスである。
【0019】
請求項10に係る発明は、請求項5乃至請求項8のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記中間ガスがヘリウムである。
【0020】
請求項11に係る発明は、請求項2乃至請求項10のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記空気中粒子計数器の内部に前記ガス空気置換部を備える。
【0021】
請求項12に係る発明は、請求項2乃至請求項11のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記空気中粒子計数器が、光散乱式気中粒子計数器又は凝縮粒子計数器である。
【0022】
請求項13に係る発明は、請求項2乃至請求項11のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記空気中粒子計数器が、電気移動度分級器による粒子径弁別機能を備えている。
【0023】
請求項14に係る発明は、請求項2乃至請求項13のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記空気中粒子計数器が所定の試料空気流量を吸引した時の粒子数測定値を、前記ガス空気置換部に吸引される試料ガス流量から個数濃度に換算する処理部を備える。
【0024】
請求項15に係る発明は、請求項2乃至請求項14のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記ガス空気置換部の外管及び接続管がステンレス製である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、空気動力学ノズル等による整流状態の調整、レーザ等の光学系の調整業や受光系の焦点調整などの作業を、計測対象となるガスごとに行う必要がなくなり、通常の空気中粒子計数器をそのまま使用することができる。メンテナンスにおいても、同様に計測対象となるガスを使用せずに、空気で行うことができる。また、ガスを使用した場合に比べ、各調整作業が容易となる。また、フローセルを使用しないなど、製造コストもガスを使用する場合に比べ安価となる。更に、計測対象となるガスの種類が複数であっても、ガス毎に専用の粒子計数器を必要としないので、設備コストが低減でき、管理も容易となる。
【0026】
また、ガス空気置換部の試料ガス流入口と空気流入口の差圧を測定する差圧計を設ければ、試料ガス流入口と空気流入口の差圧を所定値に調整して、試料ガスと空気を置換する際に、ガス置換効率を維持して試料ガス中の粒子を損なうことなく試料空気中へ効率よく移動させることができる。
【0027】
ガス空気置換部が一段置換部と二段置換部からなる二段式の場合には、一段置換部の試料ガス流入口と中間ガス流入口の差圧を測定する差圧計と、二段置換部の中間ガス流入口と空気流入口の差圧を測定する差圧計を設ければ、試料ガス流入口と中間ガス流入口の差圧を所定値に調整して、試料ガスと中間ガスを置換する際に、ガス置換効率を維持して試料ガス中の粒子を損なうことなく中間ガス中へ効率よく移動させ、次いで中間ガス流入口と空気流入口の差圧を所定値に調整して、中間ガスと空気を置換する際に、ガス置換効率を維持して中間ガス中の粒子を損なうことなく空気中へ効率よく移動させることができる。
【0028】
また、ガス空気置換部の試料ガス流入口の上流に、試料ガス又は空気を選択して試料ガス流入口へ導く切換バルブを設ければ、空気をガス空気置換部に流すことで洗浄をして、試料ガスを変更したときに、前の試料ガスの影響を無くすことができる。
【0029】
ガス空気置換部が一段置換部と二段置換部からなる二段式の場合には、一段置換部の試料ガス流入口の上流に、試料ガス又は中間ガス(又は空気)を選択して試料ガス流入口へ導く切換バルブと、二段置換部の中間ガス流入口の上流に、中間ガス又は空気を選択して中間ガス流入口へ導く切換バルブを設ければ、中間ガス(又は空気)を一段置換部に、空気を二段置換部に流すことで夫々洗浄をして、試料ガスを変更したときに、前の試料ガスの影響を無くすことができる。
【0030】
また、ガス空気置換部の外管及び接続管をステンレス製にすれば、石英ガラスと比較して溶着などの工程がなくなるので製造コストが下がると共に、製造作業時・搬送時・現場での取付け作業時などで、外管の破損などの可能性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るガス中粒子計測システムの第1実施の形態の構成図
【図2】ガス空気置換部の断面図
【図3】光散乱式気中粒子計数器の構成図
【図4】本発明に係るガス中粒子計測システムの第2実施の形態の構成図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係るガス中粒子計測システムの第1実施の形態は、図1に示すように、計測対象となる試料ガスを空気に置換するガス空気置換部1と、ガス空気置換部1で置換された空気中の粒子を計測する空気中粒子計数器2と、試料ガスと空気を所定の条件で導くためのバルブ3,4,5,6と、流量計7,8,9と、差圧計10と、切換バルブ12などを備えてなる。13はガス空気置換部1に供給する空気の清浄度を所望レベルに維持するためのフィルタである。なお、ガス中粒子計測システムの最小構成としては、ガス空気置換部1・空気中粒子計数器2・バルブ3・流量計7及びフィルタ13を設けることで構成できる。
【0033】
ガス空気置換部1は、空気中粒子計数器2の内部に設けることもできる。ガス空気置換部1における置換方法としては、多孔性隔壁を介して試料ガスと空気との分圧差による拡散により、試料ガスを空気に置換する方法が知られている(例えば、特開2006−170659号公報参照)。
【0034】
この方法を適用するガス空気置換部1は、図2に示すように、多孔性隔壁で形成された内管1aと、内管1aを囲む外管1bと、内管1aと外管1bを接続する接続管1cなどからなる。外管1bと接続管1cはステンレス製、内管1aは石英ガラス製又はセラミックス製である。内管1aと接続管1c及び接続管1cと外管1bは樹脂材などで固定することで、ガスや空気などの漏れを防止することができる。樹脂材は、試料ガスの種類によって選定し、ガス漏れし難く、粒子を含む異物等が付着し難いものであれば、限定されない。
【0035】
この方法によれば、計測対象となる粒子を含む試料ガス(例えば、二酸化炭素)が試料ガス流入口Aから内管1aに流入し、置換ガスである空気が空気流入口Bから内管1aと外管1bで形成される通路1dに流入する。すると、試料ガスと空気の流れは逆向きとなり、多孔性隔壁を介して試料ガスと空気との分圧差による拡散の効率を上げつつ、試料ガスが空気に置換される。試料ガスの中の粒子はそのまま内管1aを通過し、置換された空気と共に試料空気排気口Dから流出して空気中粒子計数器2へ流入する。試料ガスは空気を含んで試料ガス排気口Cから排出される。
【0036】
空気中粒子計数器2を新たに調整せずに使用するためには、二酸化炭素から空気への置換率は99%程度以上で、二酸化炭素中の粒子がガス空気置換部1を通過する通過率は少なくとも95%以上であることが望ましい。ここで、試料ガスの種類によって、空気流入口Bから流入する空気量をバルブ3で調整することになる。試料ガスの分子量(密度)が小さいほど置換率を上げることができる。
【0037】
空気中粒子計数器による計測では、一般的に、試料空気流量は0.3リットル/分〜30リットル/分である。この試料空気流量に対応するため、ガス空気置換部1は、1個に限らず複数個を並列に設けることができる。
【0038】
ここでは、空気中の粒子を計測する空気中粒子計数器2として、光散乱式気中粒子計数器20を使用した場合について説明する。光散乱式気中粒子計数器20は、図3に示すように、試料空気供給部21、光源部22、受光部23、信号処理部24を備えている。受光部23からの電気信号を信号処理部24で処理し、粒子についての計測結果を表示又はプリンタ等へ出力する。
【0039】
試料空気供給部21は、試料空気を空気動力学ノズル25,26と流量調整部(不図示)により、粒子検出領域27の試料空気を整流にする。流量調整部には流量測定器が設けられている。試料空気は空気動力学ノズル25から粒子検出領域27を通過し空気動力学ノズル26へと流入する。周囲は清浄な空気が循環している。
【0040】
光源部22は、固体レーザ等のレーザ素子28と共振鏡29からなり、高い光エネルギー密度を得るため、オープンキャビティ方式であり、整流とされた試料空気の通路となる粒子検出領域27を含めその周囲は空気で満たされている。例えば、粒子径が0.1μm程度と小さい場合では、オープンキャビティ方式を採用するが、粒子径が大きい場合には、特にオープンキャビティ方式を採用しなくてもよい。
【0041】
オープンキャビティ方式を採用するか否かは、粒子の検出感度により選択することになる。ここで、オープンキャビティ方式とはレーザ素子28と共振鏡29間を光の共振により高い光エネルギーの光路L1を形成し、この光路L1内に粒子検出領域27を設けることで、高い光エネルギーを試料空気中の粒子に照射する方式である。
【0042】
受光部23は、粒子検出領域27の粒子の散乱光L2を、レンズ30を介して光電変換素子31で受ける。光電変換素子31は光の強度に応じて電気信号S1に変換し信号処理部24へ送る。
【0043】
以上のように構成された本発明に係るガス中粒子計測システムの第1実施の形態による計測手順を説明する。先ず、空気の流路を設定する。バルブ3,4を開状態にし、切換バルブ12を操作して、流入口Fを試料流入口Aと連通させ、空気を、試料ガス流入口Aから導くと共に、バルブ3と流量計7を介して空気流入口Bからガス空気置換部1へ導く。空気は、粒子の計測に影響しないよう、フィルタ13を介してガス空気置換部1へ流入される。
【0044】
次いで、試料ガス(例えば、二酸化炭素)の流路を設定する。バルブ4を閉状態にし、バルブ6を開状態にし、切換バルブ12を操作して流入口Eをガス空気置換部1の試料ガス流入口Aと連通させ、試料ガスを試料ガス流入口Aからガス空気置換部1へ導く。試料ガスの流量は空気中粒子計数器2(例えば、光散乱式気中粒子計数器20)に設けた流量コントローラにより制御する。
【0045】
次いで、試料ガスと空気の流量を調整する。試料ガスと空気の効率的な置換を行うためには、試料ガスが流入するガス空気置換部1の試料ガス流入口Aにおける圧力と空気が流入するガス空気置換部1の空気流入口Bにおける圧力が同程度になるように、試料ガス流入口Aと空気流入口Bの圧力差を差圧計10で測定してバルブ5で調整する。ここで、流量計9で排気する試料ガスの量が十分で、試料ガス流入口Aの圧力がほぼ大気圧になっていればこの調整は不要である。
【0046】
光散乱式気中粒子計数器20では、通常、試料ガス側の圧力が大気圧より高い場合、ほぼ大気圧にするために、流量計9から試料ガスを放出させながら、粒子を計測する。
【0047】
バルブ5の調整や差圧計10については、例えば、差圧計10の測定値を基にバルブ5を所定の条件に基づき、自動的に制御してもよいし、ガス空気置換部1の試料ガス流入口Aと試料ガス排気口Cとの間に差圧計を設けてもよい。また、差圧計の替わりに、圧力計(不図示)を設けてもよい。例えば、試料ガス排気口Cに設ける。
【0048】
次いで、流量が調整された試料ガスは、ガス空気置換部1において、空気に置換される。また、試料ガス中の粒子は、そのまま、空気中に含まれることになる。粒子は空気と共に、試料空気排気口Dへ導かれる。
【0049】
次いで、ガス空気置換部1の試料空気排気口Dから流出する試料空気を空気中粒子計数器2で計測する。また、置換された試料ガスは空気に混じり、ガス空気置換部1の試料ガス排気口Cからバルブ5を介して排出される。なお、試料ガスが有害な場合には試料ガスを除害する除害装置がバルブ5の下流に設けられる。
【0050】
次いで、適宜に、ガス空気置換部1などを洗浄する。切換バルブ12を操作して流入口Fをガス空気置換部1の試料ガス流入口Aと連通させ、バルブ3及びバルブ4を開状態にする。そして、空気の流量・圧力等を所望の条件にして、空気を試料ガス流入口Aと空気流入口Bからガス空気置換部1に流し込むことでガス空気置換部1内の洗浄を行う。この洗浄作業は、複数の試料ガスを使用することが前提であるので、試料ガスを変更したときに、前の試料ガスの影響を無くすために行う。なお、試料空気排気口Dと空気中粒子係数器2の間に切換バルブ(不図示)を設け、空気中粒子係数器2を介さずに排出する経路を備えてもよい。
【0051】
次に、本発明に係るガス中粒子計測システムの第2実施の形態は、図4に示すように、ガス空気置換部が一段置換部41と二段置換部42からなる二段式の場合で、一段式では所望の置換率まで上げることが出来ない場合や試料ガスを中間ガスに置換してから空気に置換する場合などに採用される。
【0052】
第2実施の形態は、計測対象となる試料ガスを中間ガスに置換する一段置換部41と、中間ガスを空気に置換する二段置換部42と、二段置換部42で置換された空気中の粒子を計測する空気中粒子計数器2と、試料ガス・中間ガス・空気を所定の条件で導くためのバルブ43,44,45,46,47,48,49と、流量計50,51,52,53,54と、差圧計55,56と、切換バルブ57,58などを備えてなる。59は一段置換部41に、60は二段置換部42に、供給する空気の清浄度を所望レベルに維持するためのフィルタである。なお、二段式の置換部を設けるガス中粒子計測システムの最小構成としては、一段置換部41・二段置換部42・空気中粒子計数器2・バルブ43,47・流量計50,53及びフィルタ59,60を設けることで構成できる。
【0053】
二段式の場合には、分子量(密度)の小さい中間ガスを一段置換部41で使用することが望ましい。例えば、不活性ガスであるヘリウムを中間ガスとして使用するとよい。
【0054】
試料ガスであるオゾンが切換バルブ57を通って一段置換部41の試料ガス流入口Kから流入し、ヘリウムを一段置換部41の中間ガス流入口Lから流入する。続いて、一段置換部41の試料中間ガス排気口Nから流出するヘリウムが切換バルブ58を通って二段置換部42の試料中間ガス流入口Rから流入すると共に、空気が二段置換部42の空気流入口Sから流入することで、ヘリウムから空気に置換して、粒子を含む空気(試料空気)が試料空気排気口Uから空気中粒子計数器2へ流入すればよい。
【0055】
一段置換部41と二段置換部42以外の配管などは、図1に示す第1実施の形態と同様に構成すればよい。このような二段式置換が有効となる試料ガスとしては、オゾンを含め、特殊材料ガス・毒性ガス・可燃性ガスや高濃度では危険な酸素などの特殊ガスである。特殊材料ガスは、半導体製造等に用いられるガスで39種類が定められている。毒性ガスとしては、一酸化炭素等であり、可燃性ガスとしては、水素等である。また、中間ガスとしては、不活性ガスを使用することが望ましい。不活性ガスとしては、窒素・二酸化炭素・ヘリウム・アルゴン等である。
【0056】
以上のように構成された本発明に係るガス中粒子計測システムの第2実施の形態による計測手順を説明する。先ず、空気の流路を設定する。バルブ47を開状態にし、バルブ48を閉状態にし、空気をバルブ47と流量計53を介して空気流入口Sから二段置換部42へ導く。空気は、粒子の計測に影響しないよう、フィルタ60を介して二段置換部42へ流入される。
【0057】
次いで、中間ガスの流路を設定する。バルブ43,44を開状態にし、切換バルブ57を操作して、流入口Qを試料ガス流入口Kに連通させ、中間ガスを、試料ガス流入口Kから導くと共に、バルブ43と流量計50を介して中間ガス流入口Lから一段置換部41へ導く。また、切換バルブ58を操作して流入口Vを二段置換部42の試料中間ガス流入口Rと連通させる。なお、空気の流路設定と中間ガスの流路設定の順序は限定するものではない。
【0058】
次いで、試料ガスの流路を設定する。バルブ44を閉状態にし、バルブ46を開状態にし、切換バルブ57を操作して流入口Pを一段置換部41の試料ガス流入口Kと連通させ、試料ガスを試料ガス流入口Kから一段置換部41へ導く。試料ガスの流量及び試料中間ガスの流量は空気中粒子計数器2(例えば、光散乱式気中粒子計数器20)に設けた流量コントローラにより制御する。ここで、試料中間ガスとは、計測対象となる粒子を含む中間ガスである。
【0059】
次いで、試料ガスと中間ガスと空気の流量を調整する。試料ガスと中間ガスの効率的な置換を行うためには、試料ガスが流入する一段置換部41の試料ガス流入口Kにおける圧力と試料ガスが流入する一段置換部41の中間ガス流入口Lにおける圧力が同程度になるように、試料ガス流入口Kと中間ガス流入口Lの圧力差を差圧計55で測定してバルブ45で調整する。ここで、流量計52で排気する試料ガスの量が十分で、試料ガス流入口Kの圧力がほぼ大気圧になっていればこの調整は不要である。
【0060】
また、試料中間ガスと空気の効率的な置換を行うためには、試料中間ガスが流入する二段置換部42の試料中間ガス流入口Rにおける圧力と空気が流入する二段置換部42の空気流入口Sにおける圧力が同程度になるように、試料中間ガス流入口Rと空気流入口Sの圧力差を差圧計56で測定してバルブ49で調整する。
【0061】
次いで、流量が調整された試料ガスは、一段置換部41において、中間ガスに置換される。また、試料ガス中の粒子は、そのまま、中間ガスに含まれることになる。粒子は中間ガスと共に、試料中間ガス排気口Nへ導かれる。
【0062】
次いで、試料中間ガス排気口Nから切換バルブ58を通って二段置換部42の試料中間ガス流入口Rに流入した試料中間ガスは、二段置換部42において、空気流入口Sから流入する空気に置換される。また、試料中間ガス中の粒子は、そのまま、空気に含まれることになる。粒子は空気と共に、試料空気排気口Uへ導かれる。
【0063】
次いで、二段置換部42の試料空気排気口Uから流出する試料空気を空気中粒子計数器2で計測する。また、一段置換部41で置換された試料ガスは中間ガスに混じり、試料ガス排気口Mからバルブ45を介して排出される。また、二段置換部42で置換された中間ガスは空気に混じり、試料中間ガス排気口Tからバルブ49を介して排出される。なお、試料ガスが有害な場合には試料ガスを除害する除害装置がバルブ45の下流に設けられる。
【0064】
次いで、適宜に、一段置換部41や二段置換部42などを洗浄する。切換バルブ57を操作して流入口Qを一段置換部41の試料ガス流入口Kと連通させ、バルブ43及びバルブ44を開状態にする。そして、中間ガスの流量・圧力等を所望の条件にして、中間ガスを試料ガス流入口Kと中間ガス流入口Lから一段置換部41に流し込むことで一段置換部41内の洗浄を行う。なお、必要に応じて、中間ガスの代わりに、空気をもちいて洗浄してもよい。
【0065】
また、切換バルブ58を操作して流入口Wを二段置換部42の試料中間ガス流入口Rと連通させ、バルブ47及びバルブ48を開状態にする。そして、空気の流量・圧力等を所望の条件にして、空気を試料中間ガス流入口Rと空気流入口Sから二段置換部42に流し込むことで二段置換部42内の洗浄を行う。これらの洗浄作業は、複数の試料ガスを使用することが前提であるので、試料ガスを変更したときに、前の試料ガスの影響を無くすために行う。なお、二段置換部42の試料空気排気口Uと空気中粒子計数器2の間に切換バルブ(不図示)を設け、空気中粒子計数器2を介さずに排出する経路を備えてもよい。
【0066】
空気中粒子計数器2として、電気移動度分級器(DMA:Differential Mobility Analyzer)と空気中微粒子計を組み合わせてもよい。DMAも空気中の粒子に使用するのが一般的である。DMAとは、印加電圧を制御することで、所定の移動度を有した粒子だけを分級する装置である。
【0067】
DMAには清浄空気(シースエア)が必須である。ガスを試料として導入する場合、同じガスをクリーン化してシースエアとして用いれば、原理的には動作するが、試料ガス流量の十倍程度以上が必要であり、かなりの高清浄にしなければならないのでコスト的に高額となり、DMAに空気以外の試料を導入することは現実的ではない
【0068】
また、空気中粒子計数器2として、DMAと凝縮粒子計数器(CPC:Condensation Particle Counter)を組み合わせてもよい。この組み合わせを走査型移動度粒径測定器(SMPS:Scanning Mobility Particle Sizer)といい、多く用いられている。CPCとは、気化させたアルコールや水などを粒子に凝縮させて、光散乱法による粒子検出をより小さな粒子にまで適用できるようにしたものである。アルコール等を粒子に凝縮させて検出するため,実際の粒子の大きさの情報は失われる。
【0069】
また、空気中粒子計数器2が、所定の試料空気流量を吸引した時の粒子数測定値を、ガス空気置換部1に吸引されるガス流量から個数濃度換算にする処理部を備えることができる。分子拡散による移動は、単位時間あたりの質量の移動量(質量フラックス)の収支が合うことが基本である。本発明において、ガス流れを対向させるなど実際上は圧力勾配に依存する部分もあるが、基本原理は分子拡散によるものであり、分子の拡散速度は分子量(質量)に1/2乗に反比例する。つまり、空気中微粒子計が空気として所定試料空気流量を吸引した場合、置換前の試料ガスの吸引(体積)流量はガスの種類によって異なることになる。
【0070】
ガスの種類が異なっても空気体積量相当で粒子個数濃度を求めるなら、そのまま空気中微粒子計の表示値を使用すれば良いが、元の試料ガスの体積量あたりの粒子数として個数濃度を求める場合、ガス種ごとに体積を換算する必要がある。
空気中微粒子計に流量計及び試料ガス体積量を算出する処理部を設け、流量計により試料空気体積量を求め、求めた試料空気体積量を用い処理部により試料ガス体積量を算出する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、空気動力学ノズル等による整流状態の調整、レーザ等の光学系の調整業や受光系の焦点調整などの作業を、計測対象となるガスを使用せずに、空気で行うことができ、計測対象となるガスの種類が複数であっても、ガス毎に専用の粒子計数器を必要としないガス中粒子計測システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…ガス空気置換部、2…空気中粒子計数器、3,4,5,6,43,44,45,46,47,48,49…バルブ、7,8,9,50,51,52,53,54…流量計、10,55,56…差圧計、12,57,58…切換バルブ、13,59,60…フィルタ、20…光散乱式気中粒子計数器、41…一段置換部、42…二段置換部、A,K…試料ガス流入口、B,S…空気流入口、C,M…試料ガス排気口、D,U…試料空気排気口、L…中間ガス流入口、N,T…試料中間ガス排気口、R…試料中間ガス流入口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気以外の気体に浮遊する粒子を計測するガス中粒子計測システムであって、計測対象となる試料ガスを空気に置換する前処理部を備えることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記前処理部が多孔性隔壁を介して計測対象となる試料ガスと空気との分圧差による拡散により、試料ガスを空気に置換するガス空気置換部であり、このガス空気置換部で置換された空気中の粒子を計測する空気中粒子計数器を備えることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項3】
請求項2に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記ガス空気置換部の試料ガス流入口と空気流入口の差圧を測定する差圧計と、前記空気流入口への空気流量を制御するバルブを設けることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記ガス空気置換部の試料ガス流入口の上流に、試料ガス又は空気を選択して前記試料ガス流入口へ導く切換バルブを設けることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項5】
空気以外の気体に浮遊する粒子を計測するガス中粒子計測システムであって、計測対象となる試料ガスを空気に置換するガス空気置換部と、このガス空気置換部で置換された空気中の粒子を計測する空気中粒子計数器を備え、前記ガス空気置換部は一段置換部と二段置換部からなる二段式で、前記一段置換部で試料ガスを中間ガスに置換し、この中間ガスを前記二段置換部で空気に置換することを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項6】
請求項5に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記一段置換部は、多孔性隔壁を介して試料ガスと中間ガスとの分圧差による拡散により、試料ガスを中間ガスに置換し、前記二段置換部は、多孔性隔壁を介して中間ガスと空気との分圧差による拡散により、中間ガスを空気に置換することを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記一段置換部の試料ガス流入口と中間ガス流入口の差圧を測定する差圧計と、前記二段置換部の中間ガス流入口と空気流入口の差圧を測定する差圧計と、前記中間ガス流入口への中間ガス流量を制御するバルブと、前記空気流入口への空気流量を制御するバルブを設けることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記一段置換部の試料ガス流入口の上流に、試料ガス又は中間ガスを選択して前記試料ガス流入口へ導く切換バルブと、前記二段置換部の中間ガス流入口の上流に、中間ガス又は空気を選択して前記中間ガス流入口へ導く切換バルブを設けることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項9】
請求項5乃至請求項8のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記試料ガスが特殊ガスであり、前記中間ガスが不活性ガスであることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項10】
請求項5乃至請求項8のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記中間ガスがヘリウムであることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項11】
請求項2乃至請求項10のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記空気中粒子計数器の内部に前記ガス空気置換部を備えることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項12】
請求項2乃至請求項11のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記空気中粒子計数器が、光散乱式気中粒子計数器又は凝縮粒子計数器であることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項13】
請求項2乃至請求項11のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記空気中粒子計数器が、電気移動度分級器による粒子径弁別機能を備えていることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項14】
請求項2乃至請求項13のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記空気中粒子計数器が所定の試料空気流量を吸引した時の粒子数測定値を、前記ガス空気置換部に吸引される試料ガス流量から個数濃度に換算する処理部を備えることを特徴とするガス中粒子計測システム。
【請求項15】
請求項2乃至請求項14のいずれかに記載のガス中粒子計測システムにおいて、前記ガス空気置換部の外管及び接続管がステンレス製であることを特徴とするガス中粒子計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−8059(P2012−8059A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145758(P2010−145758)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)
【出願人】(508116975)株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ (7)
【Fターム(参考)】