説明

ガス供給システム

【課題】ガスが外部に放出され難いガス供給システムを提供する。
【解決手段】水素タンク121と、第1遮断弁122と、高圧ラインと、水素を減圧する減圧機構と、その弁体20を閉位置で保持することで水素を遮断する遮断機構と、を有する第1減圧弁1と、中圧ラインと、燃料電池スタック110と、中圧ラインに設けられ、中圧ラインの圧力が所定リリーフ圧力以上である場合に開くリリーフ弁126と、中圧ラインの圧力を検出する中圧センサ132と、ECU170と、を備え、ECU170は、IG161のOFF信号を検知した場合、第1遮断弁122及び遮断機構に閉指令を出力する遮断ステップと、遮断ステップの後、所定単位時間Δt0当たりにおける中圧ラインの圧力上昇量ΔP2が所定圧力上昇量ΔP0以上である場合、燃料電池スタック110によるガス処理を開始するガス処理開始ステップと、を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車等の電源となる燃料電池(水素消費(処理)機器)には、水素タンクから水素(燃料ガス)が供給される(特許文献1参照)。そして、水素タンクから燃料電池に向かう水素が通流する水素供給流路には、水素を所望圧力に減圧する減圧弁が設けられる。減圧弁は、二次側圧力が所望圧力となるように、弁座に対して弁体が着座(閉状態)/離座(開状態)を繰り返すものである。また、水素供給流路には、長時間、高圧に曝されることを防止するためにリリーフ弁が設けられる。リリーフ弁は、水素供給流路が所定圧力以上になると開き、水素を外部に放出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−329120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した水素供給流路には、一般に、水素供給時に開かれる遮断弁が設けられるが、減圧弁と遮断弁を別々に備えたのでは、部品点数が増加するうえ、組み付け工数も増えてしまうので、これを解決するため、減圧弁に遮断機能を付加する構成が考えられる。
【0005】
ところが、減圧弁の遮断機能は、使用期間、使用状況(使用環境温度)等によって変化してしまい、入力された遮断指令に従って、減圧弁が遮断機能を発揮するように動作していたとしても、つまり、例えば、弁体を弁座に着座させ、連通ポートを閉じるように動作していたとしても、弁体及び弁座の密着部に設けられたOリング(シール部材)の使用に伴う劣化、低温環境による硬化等によって、連通ポートが完全に閉じられず、一次側圧力室から二次側圧力室に水素が流出(シートリーク)する虞もある。そして、このように水素がシートリークしてしまうと、減圧弁の二次側圧力が予定外に上昇し、リリーフ弁が開き、水素が外部に放出されてしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、減圧機能及び遮断機能を有する減圧弁においてシートリークが生じても、ガスが外部に放出され難いガス供給システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、高圧のガスを供給するガス供給源と、前記ガス供給源の下流に設けられ、開閉することで前記ガス供給源からのガスを供給/遮断する第1遮断弁と、前記第1遮断弁の二次側に接続され、高圧のガスが通流する高圧ラインと、前記高圧ラインの下流側に接続され、ガスを減圧する減圧機構と、その弁体を閉位置で保持することでガスを遮断する遮断機構と、を有する減圧弁と、前記減圧弁の二次側に接続され、前記減圧弁で減圧された中圧のガスが通流する中圧ラインと、前記中圧ラインの下流に設けられ、前記中圧ラインからのガスを処理するガス処理手段と、前記中圧ラインに設けられ、前記中圧ラインの圧力が所定リリーフ圧力(後記する実施形態ではP12)以上である場合に開くリリーフ弁と、前記中圧ラインの圧力を検出する中圧ライン圧力検出手段と、前記第1遮断弁、前記遮断機構、及び、前記ガス処理手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、システム停止指令を検知した場合、前記第1遮断弁及び前記遮断機構に閉指令を出力する遮断ステップと、前記遮断ステップの後、所定単位時間(後記する実施形態ではΔt0)当たりにおける前記中圧ラインの圧力上昇量(後記する実施形態ではΔP2)が所定圧力上昇量(後記する実施形態では所定ΔP0)以上である場合、前記ガス処理手段によるガス処理を開始するガス処理開始ステップと、を実行することを特徴とするガス供給システムである。
【0008】
このような構成によれば、制御手段は、システム停止指令を検知した場合、遮断ステップにおいて、第1遮断弁及び遮断機構に閉指令を出力する。そして、制御手段は、遮断ステップの後、ガス処理ステップにおいて、所定単位時間当たりにおける中圧ラインの圧力上昇量が所定圧力上昇量以上である場合、ガス処理手段によるガス処理を開始する。
【0009】
すなわち、制御手段が遮断機構に閉指令を出力している場合において、遮断機構が弁体を閉位置で保持しガスを遮断するために動作している状態で、減圧弁においてシートリークが生じているとき、中圧ラインの圧力が徐々に上昇する。そして、このように、中圧ラインの圧力が徐々に上昇した場合において、所定単位時間当たりにおける中圧ラインの圧力上昇量が所定圧力上昇量以上であるとき、制御手段がガス処理手段によるガス処理を開始することで、中圧ラインのガスが処理(消費、排出等)される。したがって、中圧ラインの圧力は所定リリーフ圧力に到達し難くなり、よって、リリーフ弁は開き難くなり、ガスが外部に放出され難くなる。ゆえに、判定基準となる所定単位時間及び所定圧力上昇量は、事前試験等によって求められ、中圧ラインの圧力が所定リリーフ圧力に到達しないと判断される値に設定される。
【0010】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、高圧のガスを供給するガス供給源と、前記ガス供給源の下流に設けられ、開閉することで前記ガス供給源からのガスを供給/遮断する第1遮断弁と、前記第1遮断弁の二次側に接続され、高圧のガスが通流する高圧ラインと、前記高圧ラインの下流側に接続され、ガスを減圧する減圧機構と、その弁体を閉位置で保持することでガスを遮断する遮断機構と、を有する減圧弁と、前記減圧弁の二次側に接続され、前記減圧弁で減圧された中圧のガスが通流する中圧ラインと、前記中圧ラインの下流に設けられ、前記中圧ラインからのガスを処理するガス処理手段と、前記中圧ラインに設けられ、前記中圧ラインの圧力が所定リリーフ圧力(後記する実施形態ではP12)以上である場合に開くリリーフ弁と、前記中圧ラインの圧力を検出する中圧ライン圧力検出手段と、前記第1遮断弁、前記遮断機構、及び、前記ガス処理手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、システム停止指令を検知した場合、前記第1遮断弁及び前記遮断機構に閉指令を出力する遮断ステップと、前記遮断ステップの後、前記中圧ラインの圧力が所定圧力上昇量(後記する実施形態ではΔP0)上昇するまでに経過した経過時間(後記する実施形態ではΔt1)が、所定経過時間(後記する実施形態では所定Δt2)以下である場合、前記ガス処理手段によるガス処理を開始するガス処理開始ステップと、を実行することを特徴とするガス供給システムである。
【0011】
このような構成によれば、制御手段は、システム停止指令を検知した場合、遮断ステップにおいて、第1遮断弁及び遮断機構に閉指令を出力する。そして、制御手段は、遮断ステップの後、ガス処理ステップにおいて、中圧ラインの圧力が所定圧力上昇量上昇するまでに経過した経過時間が、所定経過時間以下である場合、ガス処理手段によるガス処理を開始する。
【0012】
すなわち、制御手段が遮断機構に閉指令を出力している場合において、遮断機構が弁体を閉位置で保持しガスを遮断するために動作している状態で、減圧弁においてシートリークが生じているとき、中圧ラインの圧力が徐々に上昇する。そして、このように、中圧ラインの圧力が徐々に上昇した場合において、中圧ラインの圧力が所定圧力上昇量上昇するまでに経過した経過時間が、所定経過時間以下であるとき、制御手段がガス処理手段によるガス処理を開始することで、中圧ラインのガスが処理(消費、排出等)される。したがって、中圧ラインの圧力は所定リリーフ圧力に到達し難くなり、よって、リリーフ弁は開き難くなり、ガスが外部に放出され難くなる。ゆえに、判定基準となる所定圧力上昇量及び所定経過時間は、事前試験等によって求められ、中圧ラインの圧力が所定リリーフ圧力に到達しないと判断される値に設定される。
【0013】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、高圧のガスを供給するガス供給源と、前記ガス供給源の下流に設けられ、開閉することで前記ガス供給源からのガスを供給/遮断する第1遮断弁と、前記第1遮断弁の二次側に接続され、高圧のガスが通流する高圧ラインと、前記高圧ラインの下流側に接続され、ガスを減圧する減圧機構と、その弁体を閉位置で保持することでガスを遮断する遮断機構と、を有する減圧弁と、前記減圧弁の二次側に接続され、前記減圧弁で減圧された中圧のガスが通流する中圧ラインと、前記中圧ラインの下流に設けられ、前記中圧ラインからのガスを処理するガス処理手段と、前記中圧ラインに設けられ、前記中圧ラインの圧力が所定リリーフ圧力以上である場合に開くリリーフ弁と、前記中圧ラインの圧力を検出する中圧ライン圧力検出手段と、前記第1遮断弁、前記遮断機構、及び、前記ガス処理手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、システム停止指令を検知した場合、前記第1遮断弁及び前記遮断機構に閉指令を出力する遮断ステップと、前記遮断ステップの後、前記中圧ラインの圧力が、その後に前記リリーフ弁が開くと判断される所定圧力以上である場合、前記ガス処理手段によるガス処理を開始するガス処理開始ステップと、を実行することを特徴とするガス供給システムである。
【0014】
このような構成によれば、制御手段が、遮断ステップの後、中圧ラインの圧力が、その後にリリーフ弁が開くと判断される所定圧力以上である場合、ガス処理手段によるガス処理を開始するガス処理開始ステップと、を実行する。これにより、中圧ラインのガスが処理(消費、排出等)される。したがって、中圧ラインの圧力は所定リリーフ圧力に到達し難くなり、よって、リリーフ弁は開き難くなり、ガスが外部に放出され難くなる。
なお、中圧ラインの圧力が所定圧力以上であるか否かの判定は、遮断ステップから所定時間経過後に実行することが好ましい。
【0015】
また、前記ガス供給システムにおいて、高圧ラインの圧力を検出する高圧ライン圧力検出手段を備え、前記制御手段は、前記ガス処理開始ステップの後、前記高圧ラインの圧力が所定高圧ライン圧力(後記する実施形態ではP3)以下となった場合、前記ガス処理手段によるガス処理を停止するガス処理停止ステップを実行し、前記所定高圧ライン圧力は、仮にその後に前記減圧弁においてシートリークしても、前記中圧ラインの圧力が前記リリーフ圧力未満となるように設定されることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、制御手段は、ガス処理開始ステップの後、高圧ラインの圧力が所定高圧ライン圧力以下となった場合、ガス処理手段によるガス処理を停止する。そして、所定高圧ライン圧力は、仮にその後に減圧弁においてシートリークしても、中圧ラインの圧力がリリーフ圧力未満となるように設定されているので、ガス処理手段によるガス処理の停止後、リリーフ弁が開き難くなる。
【0017】
また、前記ガス供給システムにおいて、前記中圧ラインに設けられた第2遮断弁を備え、前記制御手段は、前記システム停止指令を検知した場合、前記第2遮断弁を閉じ、前記ガス処理開始ステップにおいてガス処理を開始する前に、前記第2遮断弁を開くことが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、制御手段は、システム停止指令を検知した場合、第2遮断弁を閉じる。これにより、その後に、第2遮断弁の一次側の中圧ラインのガスが、二次側の中圧ラインに流出しない。
また、制御手段は、ガス処理開始ステップにおいてガス処理を開始する前に、第2遮断弁を開く。これにより、その後に、ガス処理手段でガスを良好に処理できる。
【発明の効果】
【0019】
これら本発明によれば、減圧機能及び遮断機能を有する減圧弁においてシートリークが生じても、ガスが外部に放出され難いガス供給システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】第1実施形態に係る第1減圧弁の側断面図であり、ソレノイドのOFF時(遮断時)を示している。
【図3】第1実施形態に係る第1減圧弁の側断面図であり、ソレノイドのON時(減圧時)を示している。
【図4】第1実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【図6】第2実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】図7の故障部位推定処理S300のサブフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0022】
≪燃料電池システムの構成≫
図1に示す燃料電池システム100(ガス供給システム)は、図示しない燃料電池車(車両、移動体)に搭載されている。燃料電池車は、例えば、四輪車、三輪車、二輪車、一輪車、列車等である。ただし、その他の移動体、例えば、船舶、航空機に搭載された構成でもよい。
【0023】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック110(ガス処理手段)と、燃料電池スタック110のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック110のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系と、燃料電池スタック110の発電を制御する電力制御系と、これらを電子制御するECU170(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
【0024】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック110は、複数(例えば200〜400枚)の固体高分子型の単セルが積層して構成されたスタックであり、複数の単セルは直列で接続されている。単セルは、MEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)と、これを挟む2枚の導電性を有するセパレータと、を備えている。MEAは、1価の陽イオン交換膜等からなる電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟むアノード及びカソード(電極)とを備えている。
【0025】
アノード及びカソードは、カーボンペーパ等の導電性を有する多孔質体と、これに担持され、アノード及びカソードにおける電極反応を生じさせるための触媒(Pt、Ru等)と、を含んでいる。
【0026】
各セパレータには、各MEAの全面に水素又は空気を供給するための溝や、全単セルに水素又は空気を給排するための貫通孔が形成されており、これら溝及び貫通孔がアノード流路111(燃料ガス流路)、カソード流路112(酸化剤ガス流路)として機能している。
【0027】
そして、アノード流路111を介して各アノードに水素が供給されると、式(1)の電極反応が起こり、カソード流路112を介して各カソードに空気が供給されると、式(2)の電極反応が起こり、各単セルで電位差(OCV(Open Circuit Voltage)、開回路電圧)が発生するようになっている。次いで、燃料電池スタック110とモータ151等の外部回路とが電気的に接続され、電流が取り出されると、燃料電池スタック110が発電するようになっている。
【0028】
2H→4H+4e …(1)
+4H+4e→2HO …(2)
【0029】
<アノード系>
アノード系は、水素タンク121(ガス供給源)と、常閉型の第1遮断弁122と、第1減圧弁1と、常閉型の第2遮断弁123と、第2減圧弁124と、エゼクタ125と、リリーフ弁126と、常閉型のパージ弁127と、高圧センサ131(高圧ライン圧力検出手段)と、中圧センサ132(中圧ライン圧力検出手段)と、配管122a等と、を備えている。
【0030】
水素タンク121は、第1遮断弁122、配管122a、第1減圧弁1、配管123a、第2遮断弁123、配管123b、第2減圧弁124、配管124a、エゼクタ125、配管125aを介して、アノード流路111の入口に接続されている。そして、第1遮断弁122及び第2遮断弁123がECU170からの指示に従って開くと、水素タンク121の水素が配管122a等を通って、アノード流路111に供給されるようになっている。
【0031】
水素タンク121は、水素が高圧で封入されるタンクである。
第1遮断弁122及び第2遮断弁123は、例えば、ゲート弁をソレノイド(アクチュエータ)で開閉する電磁弁で構成される。
【0032】
<第1減圧弁>
第1減圧弁1は、図2、図3に示すように、水素を減圧する減圧機構と、その弁体20を閉位置で保持することで水素を遮断する遮断機構と、を備えるものである。
【0033】
具体的には、第1減圧弁1は、ハウジング10と、ハウジング10内を所定方向(図2では上下方向)において往復する弁体20と、ダイヤフラム31と、を備えている。そして、ハウジング10内は、隔壁11によって、一次側圧力室12と二次側圧力室13とに仕切られている。一次側圧力室12には配管122aの水素が流入し、二次側圧力室13の水素は配管123aに流出するようになっている。
【0034】
隔壁11には、一次側圧力室12と二次側圧力室13とを連通する連通ポート14が形成されており、連通ポート14には弁体20の後記する弁棒22が遊挿されている。また、連通ポート14を囲む隔壁11の一次側圧力室12側には、環状の弁座15が形成されている。
【0035】
弁体20は、一次側圧力室12に配置された円板状の弁頭21と、弁頭21の中心から二次側圧力室13側に延びる棒状の弁棒22と、を備えている。そして、弁頭21が弁座15に着座すると第1減圧弁1が閉状態となり、弁頭21が弁座15から離座すると第1減圧弁1が開状態となる。
【0036】
ダイヤフラム31は、その正面側が二次側圧力室13に臨むように設けられ、その背面側(隔壁11と反対側)に大気と連通する大気室32を形成している。ダイヤフラム31の中心部分はアダプタ33、アダプタ34で挟まれており、アダプタ34は弁棒22の先端部と連結されている。これにより、ダイヤフラム31と弁体20とは一体となって図2の上下方向で動作するようになっている。
【0037】
また、第1減圧弁1は、大気室32において、ダイヤフラム31(アダプタ33)とハウジング10との間に介装された圧縮コイルばね35を備えている。圧縮コイルばね35は、アダプタ33及びアダプタ34を介して、弁体20を開方向(図2の下方向)に付勢するようになっている。
【0038】
また、第1減圧弁1は、プランジャ41と、圧縮コイルばね42と、ソレノイド43と、を備えている。プランジャ41は、弁頭21の背面側(弁座15と反対面側)で、弁棒22と同軸線上で進退自在に配置されている。圧縮コイルばね42は、プランジャ41とハウジング10との間に介装されており、プランジャ41を弁体20に向かって付勢している。ソレノイド43は、ECU170によってON(通電)/OFF(非通電)制御されることで、プランジャ41を進退させるものである。
【0039】
<第1減圧弁−遮断機構>
第1減圧弁1の遮断機構を説明する。
ソレノイド43がOFFされると、圧縮コイルばね42で付勢されるプランジャ41は弁頭21の背面に当接し、弁頭21が弁座15に着座するようになっている。このように弁頭21が弁座15に着座すると、弁体20が閉位置で保持され、水素が遮断されるようになっている。
したがって、弁体20を閉位置で保持することで水素を遮断する遮断機構は、プランジャ41と、圧縮コイルばね42と、ハウジング10の一部とを備えて構成されている。
【0040】
<第1減圧弁−減圧機構>
第1減圧弁1の減圧機構を説明する。なお、減圧機構は、図1に示す第1遮断弁122の開状態であって、図3に示すように、ソレノイド43がONされ、プランジャ41が弁頭21から離間した状態において機能する。
【0041】
二次側圧力室13の圧力が高く、二次側圧力室13の水素がダイヤフラム31を図2の上向きに付勢する力と、一次側圧力室12の水素が弁体20を図2の上向きに付勢する力との合力が、圧縮コイルばね35がダイヤフラム31を図2の下向きに付勢する力よりも大きい場合、弁頭21が弁座15に着座し、第1減圧弁1が閉じた状態となる。
【0042】
燃料電池スタック110で水素が消費され、二次側圧力室13の圧力が低くなり、二次側圧力室13の水素がダイヤフラム31を図2の上向きに付勢する力と、一次側圧力室12の水素が弁体20を図2の上向きに付勢する力との合力が、圧縮コイルばね35がダイヤフラム31を図2の下向きに付勢する力よりも小さくなると、弁頭21が弁座15から離座し、第1減圧弁1が開いた状態となる。なお、その後、水素が一次側圧力室12から二次側圧力室13に流入し、二次側圧力室13の圧力が高くなると、第1減圧弁1が閉じた状態となる。
【0043】
ここで、弁体20が着座/離座する圧力、つまり、第1減圧弁1の二次側圧力は、圧縮コイルばね35のばね力を変更することにより、適宜に設定される。なお、圧縮コイルばね35のばね力は、圧縮コイルばね35を構成する線材の太さ、材質等を変更することで可変される。
【0044】
したがって、第1減圧弁1の減圧機構は、弁体20と、ダイヤフラム31と、圧縮コイルばね35と、を備えて構成されている。
【0045】
図1に戻って説明を続ける。
第2減圧弁124は、その一次側(上流側)に供給される水素の圧力を所定の二次側圧力(下流側圧力)に減圧するもの、つまり、その二次側圧力を調整するレギュレータである。このような第2減圧弁124は、例えば特開2009−277620号公報に記載されるように、弁体、弁座、ダイアフラム(図示しない)等を内蔵し、配管124bから入力されるパイロット圧と、二次側圧力とに基づいて、弁体が弁座に対して着座/離座を繰り返すことで、二次側圧力を調整するように構成される。なお、配管124bはカソード流路112に向かう空気が通流する配管141aに接続されており、配管141aの圧力が第2減圧弁124にパイロット圧として入力されるようになっている。
【0046】
エゼクタ125は、水素タンク121からの新規の水素をノズルで噴射することで負圧を発生させ、この負圧で配管125bの水素を含むアノードオフガスを吸引・混合し、アノード流路111に向けて吐出する真空ポンプである。
【0047】
リリーフ弁126は、配管126aを介して配管123aに接続されており、配管123aの圧力が所定リリーフ圧力P12以上になると開き、配管123aの水素を車外に放出する弁である。
【0048】
そして、第1実施形態において、第1遮断弁122及び第1減圧弁1を接続する配管122aは、水素タンク121からの高圧の水素が通流する高圧ラインを構成している。また、第1減圧弁1及び第2遮断弁123を接続する配管123aと、第2遮断弁123及び第2減圧弁124を接続する配管124aは、第1減圧弁1で減圧された中圧の水素が通流する中圧ラインを構成している。よって、第2遮断弁123は、中圧ラインに設けられている。
【0049】
アノード流路111の出口は、配管125bを介して、エゼクタ125の吸気口に接続されている。そして、アノード流路111から排出された未消費の水素を含むアノードオフガスが、エゼクタ125に戻された後、アノード流路111に再供給され、その結果、水素が循環するようになっている。なお、配管125bには、アノードオフガスに同伴する液状の水分を分離する気液分離器(図示しない)が設けられている。
【0050】
配管125bの途中は、配管127a、パージ弁127、配管127bを介して、後記する希釈器142に接続されている。パージ弁127は、燃料電池スタック110の発電時に、配管125bを循環するアノードオフガスに含まれる不純物(水蒸気、窒素等)を排出(パージ)する場合、ECU170によって定期的に開かれる。
【0051】
高圧センサ131は、配管122aに取り付けられており、配管122a(高圧ライン)の圧力P1を検出し、ECU170に出力するようになっている。
【0052】
中圧センサ132は、配管123aに取り付けられており、配管123a(中圧ライン)の圧力P2を検出し、ECU170に出力するようになっている。
【0053】
<カソード系>
カソード系は、コンプレッサ141と、希釈器142(ガス処理手段)と、を備えている。
コンプレッサ141の吐出口は、配管141aを介して、カソード流路112の入口に接続されている。そして、コンプレッサ141は、ECU170の指令に従って作動すると、酸素を含む空気を取り込み、配管141aを介して、カソード流路112に供給するようになっている。なお、コンプレッサ141や前記した第1遮断弁122等は、燃料電池スタック110及び/又は後記するバッテリ153を電源としている。
【0054】
カソード流路112の出口は、配管142aを介して、希釈器142に接続されており、カソード流路112から排出されたカソードオフガスは、配管142aを通って、希釈器142に導入されるようになっている。
【0055】
希釈器142は、アノードオフガスとカソードオフガスとを混合し、アノードオフガス中の水素を、カソードオフガス(希釈用ガス)で希釈する容器であり、その内部に希釈空間を備えている。そして、希釈後のガスは、配管142bを介して、車外に排出されるようになっている。
【0056】
<電力制御系>
電力制御系は、モータ151と、電力制御器152と、バッテリ153とを備えている。モータ151は、電力制御器152を介して、燃料電池スタック110の出力端子(図示しない)に接続されており、バッテリ153は、電力制御器152に接続されている。すなわち、モータ151とバッテリ153とは、電力制御器152に並列で接続されている。
【0057】
モータ151は、燃料電池車を走行させるための駆動力を発生する電動機である。
【0058】
電力制御器152は、ECU170の指令に従って、(1)燃料電池スタック110の出力(発電電力、電流値、電圧値)を制御する機能と、(2)バッテリ153の充放電を制御する機能と、を備えている。このような電力制御器152は、DC−DCチョッパ回路等の各種電子回路を備えて構成される。
【0059】
バッテリ153は、電力を充電/放電する蓄電装置であり、例えば、リチウムイオン型の単電池が複数組み合わせてなる組電池で構成される。
【0060】
<その他機器>
IG161は、燃料電池システム100(燃料電池車)の起動スイッチであり、運転席周りに設けられている。また、IG161はECU170と接続されており、ECU170はIG161のON信号(システム起動信号)、OFF信号(システム停止信号)を検知するようになっている。
【0061】
<ECU>
ECU170(制御手段)は、燃料電池システム100を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機器を制御し、各種処理を実行するようになっている。
【0062】
≪燃料電池システムの動作≫
次に、燃料電池システム100の動作・効果について、図4を参照して説明する。
なお、運転者によってIG161がOFFされ、ECU170が、IG161のOFF信号を検知すると、図4の一連の処理を開始する。
【0063】
ステップS101において、ECU170は、第1遮断弁122及び第2遮断弁123に閉指令を出力し、第1遮断弁122及び第2遮断弁123を閉じ、遮断ステップを実行する。また、ECU170は、ソレノイド43にOFF指令(閉指令)を出力して、第1減圧弁1を閉じる(図2参照)。
これに並行して、ECU170は、コンプレッサ141を停止して、カソード流路112への空気の供給を停止する。また、ECU170は、電力制御器152を制御して、燃料電池スタック110の発電を停止する。
【0064】
ステップS102において、ECU170は、所定単位時間Δt0当たりにおける配管123a(中圧ライン)の圧力上昇量ΔP2が、所定圧力上昇量ΔP0以上であるか否か判定する。なお、ECU170は、中圧センサ132を介して検出される配管123a(中圧ライン)の圧力P2に基づいて、直前の所定単位時間Δt0における圧力上昇量ΔP2を、連続的又は所定周期で算出している。
【0065】
所定単位時間Δt0は、事前試験等に基づいて、誤判定を防止しつつ(短すぎると誤判定し易くなる)、早期な判定を可能とする時間(例えば1分間)に設定されている(図5参照)。所定圧力上昇量ΔP0は、圧力上昇量ΔP2がこれ以上となると、その後に、配管123a(中圧ライン)の圧力P2がリリーフ弁126の開く所定リリーフ圧力P12に到達すると判断される圧力上昇量(例えば100kPa)に設定されている(図5参照)。なお、所定単位時間Δt0が長くなると、所定圧力上昇量ΔP0は大きくなる。
【0066】
圧力上昇量ΔP2が所定圧力上昇量ΔP0以上であると判定した場合(S102・Yes)、ECU170の処理は、ステップS103に進む。一方、圧力上昇量ΔP2が所定圧力上昇量ΔP0以上でないと判定した場合(S102・No)、ECU170は、ステップS102の判定を繰り返す。
【0067】
ステップS103において、ECU170は、ステップS104で水素処理を開始する前に、第2遮断弁123を開く。そうすると、配管123aの水素が配管123b、アノード流路111に流入し、配管122aの圧力P1が低下し易くなる。なお、ここでは、パージ弁127は閉じたままである。
【0068】
ステップS104において、ECU170は、水素処理を開始する、つまり、水素(ガス)処理開始ステップを実行する。
具体的には、ECU170は、コンプレッサ141を作動させ、空気をカソード流路112に供給する。そして、ECU170は、電力制御器152を制御して、燃料電池スタック110を発電させ、その発電電力をバッテリ153に充電する。その他、発電電力を抵抗(図示しない)に供給し熱に変換する構成としてもよい。
【0069】
また、バッテリ153のSOC(State Of Charge)を検出するSOCセンサを設け、バッテリ153のSOCが上限SOCに到達するまで、バッテリ153への充電を優先し、到達後、前記抵抗に通電して熱に変換する構成としてもよい。なお、上限SOCは、バッテリ153の過充電を防止するための上限値である。
【0070】
そうすると、この発電に伴って、アノード流路111の水素、カソード流路112の空気(酸素)がそれぞれ消費される。これにより、第2減圧弁124が適宜に開き、配管123aの水素が配管124aに流入する。そして、配管122aの水素が配管123aに流入し、配管122aの圧力P1が下がり始める。この場合において、ソレノイド43をONし、第1減圧弁1を開き易くする構成としてもよい(図5の破線参照)。
【0071】
ステップS105において、ECU170は、高圧センサ131を介して検出される配管122a(高圧ライン)の圧力P1が、所定高圧ライン圧力P3(例えば10MPa)以下であるか否か判定する(図5参照)。
所定高圧ライン圧力P3は、その後に水素処理を停止し、ソレノイド43がOFFされ閉状態(遮断状態)の第1減圧弁1においてシートリークが生じたとしても、配管123a(中圧ライン)の圧力P2がリリーフ弁126の開く所定リリーフ圧力未満となるように設定される。
【0072】
その他に、所定高圧ライン圧力P3は、次のようにしても設定される。
水素処理停止後、第1減圧弁1のシートリークにより配管122a(高圧ライン)から配管123a(中圧ライン)への流入が許容される許容水素流入量Q11inは式(4)で与えられ、配管122a(高圧ライン)からの流出が許容される許容水素流出量Q11outは式(4)で与えられる。
【0073】
Q11in=f(P12、Vt)−f(P10、Vt) …(3)
Q11out=f(P3、Vk)−f(P12、Vk) …(4)
【0074】
式(3)〜式(4)において、各パラメータは次の通りである。
P10:水素処理停止時(ソーク開始時)における配管123a(中圧ライン)の圧力
P12:リリーフ弁126の所定リリーフ圧力
P3:所定高圧ライン圧力P3
Vt:配管123a(中圧ライン)の容積
Vk:配管122a(高圧ライン)の容積
そして、f(P、V)は、圧力Pと容積Vとの関数であることを示している。
【0075】
すなわち、式(3)は、許容水素流入量Q11inは、リリーフ弁126の開く時に配管123aに存在する水素量(L)から、水素処理停止時(第2遮断弁123の閉弁時、ソーク開始時)に配管123aに存在する水素量(L)を減算することで得られる、ことを示している。
また、式(4)は、許容水素流出量Q11outは、配管122aが所定高圧ライン圧力P3である場合において配管122aに存在する水素量(L)から、配管122aが所定リリーフ圧力P12である場合において配管122aに存在する水素量(L)を減算することで得られる、ことを示している。
【0076】
そして、式(4)は、式(5)に変形され、さらに、「Q11in=Q11out」であるから、式(5)に式(3)を代入すると式(6)を得る。
【0077】
f(P3、Vk)=Q11out+f(P12、Vk) …(5)
f(P3、Vk)=f(P12、Vt)−f(P10、Vt)+f(P12、Vk) …(6)
【0078】
式(6)において、配管123aの容積Vt、配管122aの容積Vk、所定リリーフ圧力P12は固定値であるから、ステップS105の判定毎に、配管123aの圧力P2を検出し、これを式(6)の水素処理停止時の圧力P10として、判定基準となる所定高圧ライン圧力P3を算出することもできる。
【0079】
配管122aの圧力P1が所定高圧ライン圧力P3以下であると判定した場合(S105・Yes)、ECU170の処理は、ステップS106に進む。一方、配管122aの圧力P1が所定高圧ライン圧力P3以下でないと判定した場合(S105・No)、ECU170は、ステップS106の判定を繰り返す。
【0080】
ステップS106において、ECU170は、水素処理を停止する。
具体的には、ECU170は、燃料電池スタック110の発電を停止させ、コンプレッサ141を停止させる。
【0081】
ステップS107において、ECU170は、第2遮断弁123を閉じる。
その後、ECU170の処理は、ステップS102に戻り、一連の処理を繰り返す。なお、このように一連の処理を繰り返す場合において、ステップS102の判定結果が再度「Yes」となった場合、例えば、第1遮断弁122においてシートリークしている虞があるので、警告灯(図示しない)を点灯させ、運転者に報知する構成としてもよい。
【0082】
≪燃料電池システムの効果≫
このような燃料電池システムによれば、次の効果を得る。
第1遮断弁122、第2遮断弁123及び第1減圧弁1に閉指令を出力している場合において、圧力上昇量ΔP2が所定圧力上昇量ΔP0以上であり(S102・Yes)、第1減圧弁1内のシートリークにより、リリーフ弁126が開いてしまう虞があると判断し、第2遮断弁123を開き、配管122a(高圧ライン)の圧力P1を所定高圧ライン圧力P3以下に低下させるので(S105・Yes)、その後にリリーフ弁126が開かず、水素が外部に放出されることはない。
【0083】
≪第1実施形態−変形例≫
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、後記する実施形態と組み合わせたり、次のように変更できる。
【0084】
図4のステップS102に代えて、配管123a(中圧ライン)の圧力P2が所定圧力以上であるか否か判定し、圧力P2が所定圧力以上である場合、ステップS104に進む構成としてもよい。所定圧力は、リリーフ弁126の開く所定リリーフ圧力P12よりも低い圧力であって、その後に、リリーフ弁126が開く虞があると判断される圧力に設定される。なお、このような判定は、ステップS101(又はステップS107)から所定時間経過後に実行することが好ましい。
【0085】
前記した実施形態では、水素処理方法として、燃料電池スタック110を発電させることで水素を消費する方法を例示したが、その他に例えば、燃料電池スタック110を発電させずに、パージ弁127を適宜に開き、水素を排出する方法でもよい。なお、この方法の場合、希釈器142(ガス処理手段)において、パージ弁127からの水素をカソードオフガスで希釈した後、車外に排出する。
【0086】
前記した実施形態では、ガスが水素である構成を例示したが、ガスの種類はこれに限定されず、例えば、窒素、アルゴン、CNGガス等でもよい。
【0087】
前記した実施形態では、ガス供給システムが燃料電池車に搭載された燃料電池システム100に組み込まれた構成を例示したが、適用箇所はこれに限定されず、例えば、定置型の燃料電池システムに組み込まれた構成でもよい。
【0088】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態について、図6を参照して説明する。なお、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0089】
第2実施形態では、ECU170の処理は、ステップS101の後、ステップS201に進む。
ステップS201において、ECU170は、配管123a(中圧ライン)の圧力P2が所定圧力上昇量ΔP0上昇するまでに経過した経過時間Δt1が、所定経過時間Δt2以下であるか否か判定する。なお、ECU170は、中圧センサ132を介して検出される配管123a(中圧ライン)の圧力P2に基づいて直前の所定圧力上昇量ΔP0上昇するまでに経過した経過時間Δt1を算出している。
【0090】
所定圧力上昇量ΔP0は、事前試験等に基づいて、誤判定を防止しつつ(小さすぎると誤判定し易くなる)、早期な判定を可能とする上昇量(例えば100kPa)に設定されている。所定経過時間Δt2は、経過時間Δt1がこれ以下であると、その後に、配管123a(中圧ライン)の圧力P2がリリーフ弁126の開く所定リリーフ圧力P12に到達すると判断される経過時間(例えば1分間)に設定されている(図5参照)。なお、所定圧力上昇量ΔP0が大きくなると、所定経過時間Δt2が長くなる。
【0091】
経過時間Δt1は所定経過時間Δt2以下であると判定した場合(S201・Yes)、ECU170の処理は、ステップS103に進む。一方、経過時間Δt1は所定経過時間Δt2以下でないと判定した場合(S201・No)、ECU170はステップS201の判定を繰り返す。
【0092】
第2実施形態では、ECU170の処理は、ステップS104の後、ステップS202に進む。
ステップS202において、ECU170は、現在の配管122a(高圧ライン)の圧力P1が、ステップS104における水素処理開始時の配管122a(高圧ライン)の圧力P1の1/2以下であるか否か判定する。ただし、1/2に限定されず、1/3、1/4等に適宜変更してよい。
【0093】
1/2以下であると判定した場合(S202・Yes)、ECU170の処理は、ステップS106に進む。一方、1/2以下でないと判定した場合(S202・No)、ECU170は、ステップS202の判定を繰り返す。
【0094】
≪第2実施形態−変形例≫
前記した実施形態において、例えば、ステップS201の判定結果が2回連続してYesとなった場合、2回目の「S201・Yes」の後、ステップS202に代えて、図4のステップS105の処理を実行するようにしてもよい。
【0095】
≪第3実施形態≫
本発明の第3実施形態について、図7〜図8を参照して説明する。第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0096】
第3実施形態では、ECU170は、ステップS101後、ステップS201の判定処理(図6参照)を実行し、ステップS201・Yesと判定した場合、ステップS300の故障部位推定処理を実行する。一方、ステップS201・Noと判定した場合、ECU170は、ステップS201の判定を繰り返す。
【0097】
<故障部位推定処理>
ステップS300の故障部位推定処理(故障部位診断処理)について、図8を参照して説明する。
ステップS301において、ECU170は、第1遮断弁122、第2遮断弁123及び第1減圧弁1への閉指令の出力前後において、水素流出量Q2(高圧)outが、水素流入量Q3(中圧)inと等しいか否か判定する。
【0098】
水素流出量Q2(高圧)outは、配管122a(高圧ライン)から配管123a(中圧ライン)に流出した水素流出量であり、式(7)で与えられる。
水素流入量Q3(中圧)inは、配管122a(高圧ライン)から配管123a(中圧ライン)に流入した水素流入量であり、式(8)で与えられる。
【0099】
Q2(高圧)out=f(P25、Vk)−f(P24、Vk) …(7)
Q3(中圧)in=f(P21、Vt)−f(P20、Vt) …(8)
【0100】
式(7)〜式(8)において、各パラメータは次の通りである。
P25:初期時の配管122a(高圧ライン)の圧力
P24:故障部位推定処理時の配管122a(高圧ライン)の圧力
Vk:配管122a(高圧ライン)の容積
P21:初期時の配管123a(中圧ライン)の圧力
P20:故障部位推定処理時の配管123a(中圧ライン)の圧力
Vt:配管123a(中圧ライン)の容積
【0101】
なお、初期時は、第1遮断弁122、第2遮断弁123及び第1減圧弁1への閉指令の出力前である。故障部位推定処理時は、第1遮断弁122、第2遮断弁123及び第1減圧弁1への閉指令の出力中である。
また、圧力P25、圧力P24は高圧センサ131を介して検出され、圧力P21、圧力P20は中圧センサ132を介して検出される。容積Vk、容積Vtは固定値である。
【0102】
水素流出量Q2(高圧)outは水素流入量Q3(中圧)inと等しいと判定した場合(S301・Yes)、ECU170の処理は、ステップS302に進む。一方、水素流出量Q2(高圧)outは水素流入量Q3(中圧)inと等しくないと判定した場合(S301・No)、ECU170の処理は、ステップS303に進む。
【0103】
ステップS302において、ECU170は、第1減圧弁1は遮断不良である、つまり、第1減圧弁1においてシートリークが発生していると推定し、これをフラグ等で一時的に記憶する。なお、後記するステップS304、S305と区別して記憶し、そして、区別して報知(警告ランプの点灯数を変化等)する構成としてもよい。
その後、ECU170の処理は、ENDを通って、図7のステップS103に進む。
【0104】
ステップS303において、ECU170は、水素流出量Q2(高圧)outが水素流入量Q3(中圧)inよりも大きいか否か判定する。
【0105】
水素流出量Q2(高圧)outが水素流入量Q3(中圧)inよりも大きいと判定した場合(S303・Yes)、ECU170の処理は、ステップS304に進む。
一方、水素流出量Q2(高圧)outが水素流入量Q3(中圧)inよりも大きくないと判定した場合(S303・No)、ECU170の処理は、ステップS305に進む。なお、このようにステップS305に進む場合、ECU170は、水素流出量Q2(高圧)outが水素流入量Q3(中圧)inよりも小さいと判断している。
【0106】
ステップS304において、ECU170は、第1減圧弁1は遮断不良であると共に、配管123a(中圧ライン又は高圧ライン)はシール不良であると推定し、これをフラグ等で一時的に記憶する。なお、配管123a(中圧ライン)がシール不良であるとは、例えば、配管123aと第1減圧弁1等との接続部分におけるシールが不良であり、このシール不良部分から水素がリークしていることを意味する。
その後、ECU170の処理は、ENDを通って、図7のステップS103に進む。
【0107】
ステップ305において、ECU170は、第1減圧弁1は遮断不良であると共に、第1遮断弁122はシール不良であると推定し、これをフラグ等で一時的に記憶する。なお、第1遮断弁122がシール不良であるとは、例えば、第1遮断弁122内において、弁座とこれに着座した弁体とのシールが不良であり、このシール不良部分から水素がリークしていることを意味する。
その後、ECU170の処理は、ENDを通って、図7のステップS103に進む。
【符号の説明】
【0108】
1 第1減圧弁
20 弁体
100 燃料電池システム(ガス供給システム)
110 燃料電池スタック(ガス処理手段)
121 水素タンク(ガス供給源)
122 第1遮断弁
122a 配管(高圧ライン)
123 第2遮断弁
123a、123b 配管(中圧ライン)
126 リリーフ弁
131 高圧センサ(高圧ライン圧力検出手段)
132 中圧センサ(中圧ライン圧力検出手段)
142 希釈器(ガス処理手段)
170 ECU(制御手段)
P1 配管122a(高圧ライン)の圧力
P2 配管123a(中圧ライン)の圧力
P3 所定高圧ライン圧力
P12 リリーフ弁126の開く所定リリーフ圧力
Δt0 所定単位時間
Δt1 経過時間
Δt2 所定経過時間
ΔP0 所定圧力上昇量
ΔP2 圧力上昇量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧のガスを供給するガス供給源と、
前記ガス供給源の下流に設けられ、開閉することで前記ガス供給源からのガスを供給/遮断する第1遮断弁と、
前記第1遮断弁の二次側に接続され、高圧のガスが通流する高圧ラインと、
前記高圧ラインの下流側に接続され、ガスを減圧する減圧機構と、その弁体を閉位置で保持することでガスを遮断する遮断機構と、を有する減圧弁と、
前記減圧弁の二次側に接続され、前記減圧弁で減圧された中圧のガスが通流する中圧ラインと、
前記中圧ラインの下流に設けられ、前記中圧ラインからのガスを処理するガス処理手段と、
前記中圧ラインに設けられ、前記中圧ラインの圧力が所定リリーフ圧力以上である場合に開くリリーフ弁と、
前記中圧ラインの圧力を検出する中圧ライン圧力検出手段と、
前記第1遮断弁、前記遮断機構、及び、前記ガス処理手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
システム停止指令を検知した場合、前記第1遮断弁及び前記遮断機構に閉指令を出力する遮断ステップと、
前記遮断ステップの後、所定単位時間当たりにおける前記中圧ラインの圧力上昇量が所定圧力上昇量以上である場合、前記ガス処理手段によるガス処理を開始するガス処理開始ステップと、
を実行する
ことを特徴とするガス供給システム。
【請求項2】
高圧のガスを供給するガス供給源と、
前記ガス供給源の下流に設けられ、開閉することで前記ガス供給源からのガスを供給/遮断する第1遮断弁と、
前記第1遮断弁の二次側に接続され、高圧のガスが通流する高圧ラインと、
前記高圧ラインの下流側に接続され、ガスを減圧する減圧機構と、その弁体を閉位置で保持することでガスを遮断する遮断機構と、を有する減圧弁と、
前記減圧弁の二次側に接続され、前記減圧弁で減圧された中圧のガスが通流する中圧ラインと、
前記中圧ラインの下流に設けられ、前記中圧ラインからのガスを処理するガス処理手段と、
前記中圧ラインに設けられ、前記中圧ラインの圧力が所定リリーフ圧力以上である場合に開くリリーフ弁と、
前記中圧ラインの圧力を検出する中圧ライン圧力検出手段と、
前記第1遮断弁、前記遮断機構、及び、前記ガス処理手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
システム停止指令を検知した場合、前記第1遮断弁及び前記遮断機構に閉指令を出力する遮断ステップと、
前記遮断ステップの後、前記中圧ラインの圧力が所定圧力上昇量上昇するまでに経過した経過時間が、所定経過時間以下である場合、前記ガス処理手段によるガス処理を開始するガス処理開始ステップと、
を実行する
ことを特徴とするガス供給システム。
【請求項3】
高圧のガスを供給するガス供給源と、
前記ガス供給源の下流に設けられ、開閉することで前記ガス供給源からのガスを供給/遮断する第1遮断弁と、
前記第1遮断弁の二次側に接続され、高圧のガスが通流する高圧ラインと、
前記高圧ラインの下流側に接続され、ガスを減圧する減圧機構と、その弁体を閉位置で保持することでガスを遮断する遮断機構と、を有する減圧弁と、
前記減圧弁の二次側に接続され、前記減圧弁で減圧された中圧のガスが通流する中圧ラインと、
前記中圧ラインの下流に設けられ、前記中圧ラインからのガスを処理するガス処理手段と、
前記中圧ラインに設けられ、前記中圧ラインの圧力が所定リリーフ圧力以上である場合に開くリリーフ弁と、
前記中圧ラインの圧力を検出する中圧ライン圧力検出手段と、
前記第1遮断弁、前記遮断機構、及び、前記ガス処理手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
システム停止指令を検知した場合、前記第1遮断弁及び前記遮断機構に閉指令を出力する遮断ステップと、
前記遮断ステップの後、前記中圧ラインの圧力が、その後に前記リリーフ弁が開くと判断される所定圧力以上である場合、前記ガス処理手段によるガス処理を開始するガス処理開始ステップと、
を実行する
ことを特徴とするガス供給システム。
【請求項4】
高圧ラインの圧力を検出する高圧ライン圧力検出手段を備え、
前記制御手段は、前記ガス処理開始ステップの後、前記高圧ラインの圧力が所定高圧ライン圧力以下となった場合、前記ガス処理手段によるガス処理を停止するガス処理停止ステップを実行し、
前記所定高圧ライン圧力は、仮にその後に前記減圧弁においてシートリークしても、前記中圧ラインの圧力が前記リリーフ圧力未満となるように設定されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス供給システム。
【請求項5】
前記中圧ラインに設けられた第2遮断弁を備え、
前記制御手段は、
前記システム停止指令を検知した場合、前記第2遮断弁を閉じ、
前記ガス処理開始ステップにおいてガス処理を開始する前に、前記第2遮断弁を開く
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113366(P2013−113366A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259430(P2011−259430)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】