説明

ガス供給管接続用ネジ

【課題】接続用ネジ部からのガスのリークを防止できる接続用ネジを提供する。
【解決手段】接続用ネジ1は、ネジ本体2の頭部3の形状を頭部先端に向うに従い外径が漸増する裁頭逆円錐形としたことにより、頭部3に生じる半径方向及び軸方向の熱膨張の合成応力が、取り付け孔14のテーパ状の嵌挿孔15の孔壁に沿って生じ、ノズル11及び耐火モルタル17に対する密着強度が高まるとともに、軸方向の熱膨張によりノズル11の取り付け孔の雌ネジ16と、これに螺合する接続用ネジ1の雄ネジ6との接合度が高まり、これによりネジ部分からのガスのリークを防止できる。ネジ本体2の材質を接続されるガス供給管18よりも熱膨張係数の低い材質として、ガスのリークを防止できる。さらに、裁頭逆円錐形の頭部3の両側に互いに平行な削成面7を形成して回り止め効果を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル内孔と略同心で軸方向にリング状のガス吹き込み用のスリットを形成してなる浸漬ノズル、ロングノズル若しくはタンディッシュ上ノズル等に取り付けて、該スリットにガスを加圧供給するガス供給管を接続するガス供給管接続用ネジ(以下単に接続用ネジという)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳造時にノズル内壁に付着する介在物を除去したり、酸化を防止するため、ノズルにノズル内孔と略同心で軸方向にリング状のスリットを形成して、該スリットにアルゴンガス等の不活性ガスを吹き込んでいる。このガスを供給するガス供給管は、ノズル側壁に取り付けた接続用ネジに接続されている。この接続用ネジsは特開2005−052866に示すように、熱変形を防止するためSUS304等のステンレス製とするとともに、頭部hの形状を通常の六角形状としていた。そして、ノズルに形成した取り付け孔xと接続用ネジsとの間に耐火モルタルmを充填するとともに、頭部hの角部jを取り付け孔xに当接して回り止めを施していた(図8)。
【0003】
しかしながら、800〜850℃に加熱すると、六角形頭部hと充填した耐火モルタルmとの熱膨張差及び半径方向及び軸方向の熱膨張により、六角形頭部hと該耐火モルタルmとの密着性が破壊され、接続用ネジsの頭部外周部からのリーク量が増大する。一方、接続用ネジsには、ステンレス製のガス供給管が接続されている。このガス供給管は、供給されるガスにより冷却されて接続用ネジsとの間に熱膨張差が生じ、接続用ネジsの雌ネジとこれに螺合するガス供給管の雄ネジの間でシール不良が生じ、ガスがリークするという問題点が有った。
【特許文献1】特開2005−052866
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、接続用ネジ部からのガスのリークを防止できる接続用ネジを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の接続用ネジは、ノズル内孔と略同心で軸方向にリング状のガス吹き込み用のスリットを形成してなるノズルに取り付けて、該スリットにガスを加圧供給するガス供給管を接続するガス供給管接続用ネジであって、略中心を貫通するガス供給孔と、前記ノズルの取り付け孔の雌ネジに螺合する雄ネジとを形成したネジ本体の頭部形状を、頭部先端に向うに従い外径が漸増する裁頭逆円錐形としたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の接続用ネジは、請求項1に記載の構成において、前記ネジ本体の材質を接続されるガス供給管よりも熱膨張係数の低い材質としたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に記載の接続用ネジは、請求項1若しくは請求項2に記載の構成において、前記頭部の両側に互いに平行な削成面を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記請求項1に記載の接続用ネジは、ネジ本体の頭部形状を頭部先端に向うに従い外径が漸増する裁頭逆円錐形としたことにより、熱膨張により該頭部の耐火モルタルを介して密着するテーパ状の嵌挿孔の孔壁に対する密着強度が高まる。また、軸方向の熱膨張によりノズルの取り付け孔の雌ネジと、これに螺合する接続用ネジの雄ネジとの接合度が高まり、これによりネジ部分からのガスのリークを防止できる。
【0009】
請求項2に記載の接続用ネジは、ネジ本体の材質を接続されるガス供給管よりも熱膨張係数の低い材質としたから、操業時に加熱されて熱膨張する接続用ネジの雌ネジと、供給されるガスの通過により冷却されるガス供給管の雄ネジの間でシール不良が生じることがなく、この部分からのガスのリークを防止できる。
【0010】
請求項3に記載の接続用ネジは、頭部の両側に互いに平行な削成面を形成したから、該削成面が取り付け孔に充填される耐火モルタルと接合することにより回り止め効果を高めることができるとともに、該削成面によりノズルへのねじ込み及びねじ戻しが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
接続用ネジ部からのガスのリークを防止できる接続用ネジを提供するという目的を、ネジ本体の頭部形状を頭部先端に向うに従い外径が漸増する裁頭逆円錐形とするとともに、ネジ本体の材質を接続されるガス供給管よりも熱膨張係数の低い材質とすることにより実現した。
【実施例】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は接続用ネジ1の正面図、図2は側面図である。接続用ネジ1のネジ本体2には、頭部先端に向うに従い外径が漸増する裁頭逆円錐形の頭部3が一体成形されている。そして、ネジ本体2の軸方向の略中心にガス供給孔4を貫通させるとともに、該ガス供給孔4に連続させてガス供給管接続用の雌ネジ5を形成する。そして、ネジ本体2の外周に雄ネジ6を形成したものである。前記頭部3には、両側に互いに平行な削成面7が形成されている。この接続用ネジ1は、雌ネジ5に螺合して接続されるステンレス製のガス供給管18の材質(例えば、SUS304等)よりも熱膨張係数の低い材質の耐熱鋼(例えば、SCM435等)により製造する。
【0013】
図3は、上記接続用ネジ1が取り付けられる連続鋳造用の浸漬ノズル(以下、ノズルという。)11の概略の断面図である。ノズル11は、ノズル内孔12と略同心で軸方向に環状のスリット13が形成されている。ノズル11の側壁には、スリット13に連通する取り付け孔14が形成されている。図2に示すように、取り付け孔14は、接続用ネジ1の頭部3を嵌挿するテーパ状の嵌挿孔15と、該嵌挿孔15に連成した接続用ネジ1の雄ネジ6を螺合する雌ネジ16とからなる。
【0014】
上記接続用ネジ1は、雄ネジ6を取り付け孔14の雌ネジ16にねじ込むとともに、嵌挿孔15と接続用ネジ1の頭部3の隙間には耐火モルタル17を充填してノズル11に取り付ける(図4)。そして、ガス供給孔管接続用の雌ネジ5にはガス供給管18の雄ネジ19を螺合して接続し、連続鋳造の操業時アルゴンガス等の不活性ガスをノズル11のスリット13に供給する。
【0015】
上記接続用ネジ1と従来品の加熱リーク試験を行なった。加熱リークテストは、ノズル11と同じ組成の耐火物(図示せず)に、本発明品の接続用ネジ1及び従来品を耐火モルタルを介して取り付け、供給されるアルゴンガスの背圧を1kg/cmに設定して耐火物を約900℃まで加熱する。その間のアルゴンガスの流量変化を測定した。図5のグラフにその結果を示す。開始から100分経過して耐火物31の温度が800℃を越えるあたりから、従来品の流量/圧力の値が増加して、アルゴンガスがリークしていることが分かる。一方本発明品の場合は、流量/圧力の値に変化がなく、リークが生じていないことが分かる。
【0016】
また、接続用ネジ1と従来品の常温と熱間における破壊強度試験を行った。このときの接続ネジ1の頭部3の最大外径は25mmであり、従来品の六角形頭部の厚さは5mmで、最大差し渡し寸法は35mmであり、ネジ本体部の各寸法は両者同一である。破壊強度試験は、ノズルソケットに、接続用ネジ1と従来品を締着して行なう。常温の場合は、トルクレンチを使い600kgf・cmから100kgf・cmずつ締め上げていき、ネジ部の破壊若しくは空回りした時点での荷重を最大破壊荷重とした。また、熱間の場合は、ノズルソケットを約800〜900℃程度に加熱する。そして、トルクレンチを使い900kgf・cmから120kgf・cmずつ締め上げていき、ネジ部の破壊若しくは空回りした時点での荷重を最大破壊荷重とした。
【0017】
図6は、上記破壊強度試験の結果を示したグラフである。グラフに示すように、本発明品の接続用ネジ1の最大破壊荷重は、常温で1150kgf・cm、熱間で1025kgf・cmで、従来品の六角形頭部のものに比して、若干低下するものの、実際取付の際の締め付けトルク200kgf・cmの5倍以上の強度を有しているもので使用上問題ない。
【0018】
また、タンディッシュ上ノズルでは、ハンドリング時に接続したガス供給管を手で持って引き上げることがある。このとき、ネジ部が破壊されないように、従来のタンディッシュ上ノズルでは、補強のためネジ装着部の外周に鉄皮を巻装していた。しかしながら、本発明の接続用ネジ1では、軸方向に直交する方向に荷重を加えても、約200kgf以上の強度を有し、ハンドリングでネジ部が破壊されることがない。このため図7に示すように、本発明の接続用ネジ1を用いる事により、タンディッシュ上ノズルから鉄皮を省略することができる。図7中、符号21はタンディッシュ上ノズル、22はノズル内孔、23は環状スリット、24はガス吹き込み路、25はガス供給路である。
【0019】
上記したように、本発明の接続用ネジ1は、ネジ本体2の頭部3の形状を頭部先端に向うに従い外径が漸増する裁頭逆円錐形としたことにより、熱膨張により該頭部3の耐火モルタル17を介して密着するテーパ状の嵌挿孔15の孔壁に対する密着強度が高まるとともに、軸方向の熱膨張によりノズル11の取り付け孔の雌ネジ16と、これに螺合する接続用ネジ1の雄ネジ6との接合度が高まり、これによりネジ部分からのガスのリークを防止できる。
【0020】
また、ネジ本体2の材質を接続されるガス供給管18よりも熱膨張係数の低い材質としたから、操業時に加熱されて熱膨張する接続用ネジ1の雌ネジ5と、供給されるガスの通過により冷却されるガス供給管18の雄ネジ19の間でシール不良が生じることがなく、この部分からのガスのリークを防止できる。さらに、裁頭逆円錐形の頭部3の両側に互いに平行な削成面7を形成したから、該削成面7が嵌挿孔15に充填される耐火モルタル17と接合することにより回り止め効果を高めることができる。また、該削成面7によりノズル11へのねじ込み及びねじ戻しが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】接続用ネジの正面図である。
【図2】同、側面図である。
【図3】ノズルの概略の断面図である。
【図4】接続用ネジの取り付け状態を示した要部の断面図である。
【図5】加熱リーク試験の結果を示したグラフである。
【図6】破壊強度試験の結果を示したグラフである。
【図7】接続用ネジを装着したタンディッシュ上ノズルの断面図である。
【図8】ノズルに取り付けた状態の従来品の正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1...接続用ネジ
2...ネジ本体
3...頭部
4...ガス供給孔
5...雌ネジ
6...雄ネジ
7…削成面
11...ノズル
12...ノズル内孔
13...スリット
14...取り付け孔
15...嵌挿孔
16...雌ネジ
17...耐火モルタル
18…ガス供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル内孔と略同心で軸方向にリング状のガス吹き込み用のスリットを形成してなるノズルに取り付けて、該スリットにガスを加圧供給するガス供給管を接続するガス供給管接続用ネジであって、
略中心を貫通するガス供給孔と、前記ノズルの取り付け孔の雌ネジに螺合する雄ネジとを形成したネジ本体の頭部形状を、頭部先端に向うに従い外径が漸増する裁頭逆円錐形としたことを特徴とするガス供給管接続用ネジ。
【請求項2】
前記ネジ本体の材質を接続されるガス供給管よりも熱膨張係数の低い材質としたことを特徴とする請求項1に記載のガス供給管接続用ネジ。
【請求項3】
前記頭部の両側に互いに平行な削成面を形成したことを特徴とする請求項1に記載のガス供給管接続用ネジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−32621(P2007−32621A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213594(P2005−213594)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000244176)明智セラミックス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】