説明

ガス供給装置、基板処理装置および基板処理方法

【課題】簡易な配管構成を採用しながら、基板の最外周の特性補正を有効に行うこと。
【解決手段】ガス供給装置60は、シャワーヘッド16と、処理ガスをシャワーヘッド16に向けて供給する処理ガス供給部66と、処理ガス供給部66からの処理ガスを流す処理ガス供給流路64と、処理ガス供給流路64から分岐してシャワーヘッド16に処理ガスを供給する分岐流路64a,64bと、付加ガスをシャワーヘッド16に向けて供給する付加ガス供給部75と、付加ガス供給部75からの付加ガスをシャワーヘッド16に流す付加ガス供給流路76とを具備し、シャワーヘッド16は、ウエハWの配置領域にガスを供給する第1、第2ガス導入部51,52と、ウエハWの外縁よりも外側にガスを供給する第3ガス導入部53とを有し、分岐流路64a,64bは第1、第2ガス導入部51,52に接続され、付加ガス供給流路76は、第3ガス導入部53に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対してプラズマエッチング等の基板処理を行う際に、処理容器にガスを供給するガス供給装置、およびこのようなガス供給装置を含む基板処理装置、ならびに基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置等の電子デバイスの製造プロセスにおいては、基板の表面に所定の膜を形成する成膜処理や、基板上に形成された膜を所定パターンに加工するエッチング処理などの基板処理が行われる。
【0003】
このような基板処理においては、高い反応性を得る観点からプラズマが用いられることがあり、特にエッチング処理にはプラズマエッチング装置が多用されている。プラズマエッチング装置は、基板を収容する処理容器内に、基板を載置する下部電極と、下部電極と対向して設けられ、下部電極の基板に向けてガスを噴出するシャワーヘッドを構成する上部電極とを有している。そして、シャワーヘッドから所定の混合ガスを噴出しつつ両電極間に高周波電界を形成してプラズマを生成し、このプラズマにより基板上の膜をエッチングする。
【0004】
このようなプラズマエッチング装置において、エッチングレートやエッチング選択比などのエッチング特性は基板上に供給されるガス濃度に影響されるため、エッチング特性を基板面内において均一にする観点から、基板面内においてガス分布を調整する手法が種々提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、比較的簡単な配管構成で処理容器の複数箇所に任意の混合ガスを供給してガス分布を調整する技術が開示されている。また、特許文献2には、処理ガスを第1および第2の流路に分岐させてシャワーヘッドの第1および第2の部位から吐出するようにし、これら流路を介して所定の付加ガスを流せるようにして、ガス成分や流量を調整し、簡単な配管構成および制御で処理容器の複数箇所に任意の混合ガスを供給してガス分布を調整する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、処理ガスを第1および第2の流路に分岐させてシャワーヘッドの第1および第2の部位から吐出するようにし、それとは別個に所定の付加ガスを吐出可能にして、より高い自由度でガス成分や流量を調整し、簡単な配管構成および制御で処理容器の複数箇所に任意の混合ガスを供給してガス分布を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−165399号公報
【特許文献2】特開2007−207808号公報
【特許文献3】特開2007−214295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基板の面内均一性のスペックがより厳しくなっており、特に、基板のエッジの最外周の特性補正を行うことが困難であり、単に上記技術を採用しただけでは、面内均一性が十分とは言えない場合が生じる。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、簡易な配管構成を採用しながら、基板の最外周の特性補正を有効に行うことができるガス供給装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、基板の最外周の特性を有効に補正して基板の面内で均一な処理を行うことが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点では、被処理基板が配置された処理室内に、被処理基板に対して所定の処理を行うための処理ガスを供給するガス供給装置であって、前記処理室内において、その中に配置された被処理基板に対向して設けられ、前記処理室内に前記処理ガスを含むガスを導入する複数のガス導入部を有するガス導入部材と、前記処理ガスを前記ガス導入部材に向けて供給する処理ガス供給部と、前記処理ガス供給部からの前記処理ガスを流す処理ガス供給流路と、前記処理ガス供給流路から分岐し、前記ガス導入部材に接続され、所定の分流割合で前記処理ガスを供給する複数の分岐流路と、前記処理ガスによる処理特性を調整するための付加ガスを前記ガス導入部材に向けて供給する付加ガス供給部と、前記付加ガス供給部からの付加ガスを流し、前記ガス導入部材に接続された付加ガス供給流路とを具備し、前記複数のガス導入部は、前記被処理基板の配置領域にガスを供給する複数の内側ガス導入部と、前記被処理基板の外縁よりも外側の領域にガスを導入する外側ガス導入部を有し、前記複数の分岐流路は前記複数の内側ガス導入部に接続され、前記付加ガス供給流路は前記外側ガス導入部に接続され、前記内側ガス導入部から前記被処理基板の配置領域に導入された前記処理ガスにより被処理基板に対する処理が行われ、前記外側ガス導入部から前記被処理基板の外縁よりも外側の領域に導入された前記付加ガスにより、被処理基板の最外周部分の前記処理ガスによる処理特性が補正されることを特徴とするガス供給装置を提供する。
【0010】
上記第1の観点において、前記ガス導入部材は、複数のガス導入部が同心状に設けられ、最外側が前記外側ガス導入部であり、その内側に複数の内側ガス導入部が配置されている構成とすることができる。また、前記ガス導入部材は、内部にガス拡散空間を有し、下壁に複数のガス吐出孔を有するシャワーヘッドを構成し、前記ガス拡散空間が前記複数のガス導入部に対応して複数のガス拡散室に区画されている構成とすることができる。そして、前記ガス導入部材の前記複数のガス導入部は、前記内側ガス導入部として、前記被処理基板の中心領域に前記処理ガスを導入する第1ガス導入部と、前記被処理基板の周辺領域に前記処理ガスを導入する第2ガス導入部とを有し、前記第2ガス導入部の外側に前記外側ガス導入部として第3ガス導入部を有し、前記複数の分岐流路は、第1分岐流路と第2分岐流路とを有し、これらはそれぞれ前記第1ガス導入部および前記第2ガス導入部に接続されている構成とすることができる。
【0011】
また、前記付加ガス供給流路と前記処理ガス供給流路またはいずれかの前記分岐流路とを繋ぐバイパス配管をさらに具備する構成とすることができる。
【0012】
上記第1の観点において、前記付加ガスは、前記処理ガスとは異なるガスとすることができる。また、前記処理ガスは複数のガスを含み、前記付加ガスは、これら複数のガスと異なるガスとすることができるし、また、前記処理ガスを構成するガスの一部とすることもできる。
【0013】
本発明の第2の観点では、その中に被処理基板が配置される処理室と、前記処理室内に、被処理基板に対して所定の処理を行うための処理ガスを供給するガス供給装置とを具備し、前記ガス供給装置から前記処理ガスを前記処理室内に供給して被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置であって、前記ガス供給装置は、前記処理室内において、その中に配置された被処理基板に対向して設けられ、前記処理室内に前記処理ガスを含むガスを導入する複数のガス導入部を有するガス導入部材と、被処理基板を処理する処理ガスを前記ガス導入部材に向けて供給する処理ガス供給部と、前記処理ガス供給部からの処理ガスを流す処理ガス供給流路と、前記処理ガス供給流路から分岐し、前記ガス導入部材の前記複数のガス導入部に接続され、所定の分流割合で前記処理ガスを供給する複数の分岐流路と、前記処理ガスによる処理特性を調整するための付加ガスを前記ガス導入部材に向けて供給する付加ガス供給部と、前記付加ガス供給部からの付加ガスを流し、前記ガス導入部材に接続された付加ガス供給流路とを備え、前記ガス導入部材は、前記処理室に配置された被処理基板の外縁よりも外側の領域にガスを導入する外側ガス導入部を有し、前記付加ガス供給流路は、前記外側ガス導入部に接続され、前記内側ガス導入部から前記被処理基板の配置領域に導入された前記処理ガスにより被処理基板に対する処理が行われ、前記外側ガス導入部から前記被処理基板の外縁よりも外側の領域に導入された前記付加ガスにより、被処理基板の最外周部分の前記処理ガスによる処理特性が補正されることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0014】
上記第2の観点において、前記基板処理装置は、前記処理ガスと前記付加ガスのプラズマを生成するプラズマ生成機構をさらに具備し、生成したプラズマにより被処理基板を処理するものとすることができる。また、前記ガス供給装置は、前記付加ガス供給流路と前記処理ガス供給流路またはいずれかの前記分岐流路とを繋ぐバイパス配管をさらに有する構成とすることができる。
【0015】
本発明の第3の観点では、被処理基板が配置された処理容器内に処理ガスを導入して被処理基板に所定の処理を施す基板処理方法であって、前記被処理基板の配置領域に所定の分流割合で処理ガスを複数部位から供給して前記被処理基板に前記所定の処理を行い、前記処理ガスによる処理特性を調整するための付加ガスを前記複数部位よりも外側の外側部位から前記被処理基板の外縁よりも外側の領域に供給して、被処理基板の最外周部分の前記処理ガスによる処理特性を補正することを特徴とする基板処理方法を提供する。
【0016】
上記第3の観点において、前記複数部位は同心状に設けられ、前記外側部位は前記複数部位の外側に同心状に設けられている構成をとることができる。この場合に、前記複数部位は、前記被処理基板の中心領域に対応する第1の部位と、前記被処理基板の周辺領域に対応する第2の部位とを有するものとすることができる。
【0017】
また、上記第3の観点において、前記基板処理は、被処理基板の所定の膜をプラズマエッチングするプラズマエッチング処理とすることができる。また、前記複数部位のいずれかに処理ガスを供給する処理ガス供給路と、前記外側部位へ付加ガスを供給する付加ガス供給路とがバイパス配管で繋がれていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、処理室内に設けたガス導入部材を、複数の内側ガス導入部と、外側ガス導入部とを有する構成とし、複数の内側ガス導入部から被処理基板の配置領域に分流量を調整して処理ガスを供給し、外側ガス導入部から被処理基板の外縁よりも外側の領域に処理ガスによる処理特性を調整するための付加ガスを流すようにしたので、被処理基板の最外周部分における処理特性を有効に補正して最適化することができ、処理特性をより均一にすることができる。すなわち、被処理基板の周縁領域に付加ガスを供給しても、被処理基板の最外周部分の処理特性を補正することが困難であるが、付加ガスを被処理基板の外縁から外側の部分に供給すれば、付加ガスが被処理基板の最外周部分に有効に作用してその部分の処理特性を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス供給装置が適用された基板処理装置としてのプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
【図2】図1のプラズマエッチング装置におけるシャワーヘッドの底面図。
【図3】図1のプラズマエッチング装置に搭載されたガス供給装置の構成を示す模式図。
【図4】図1の装置を用いてエッチング特性の補正を行った例を模式的に示す図。
【図5】図1の装置を用いてSiN膜を付加ガスを用いずにエッチングした場合の中心領域と周辺領域のエッチングパターンの状態を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図6】図1の装置を用いてSiN膜を付加ガスを用いずにエッチングした場合のDense部およびIsolation部のウエハ径方向のCDシフト量を示す図。
【図7】図1の装置を用いてSiN膜を付加ガスを用いずにエッチングした場合の反応生成物であるCN系物質の濃度分布のシミュレーション結果を示す図。
【図8】図1の装置を用いてSiN膜を付加ガスとしてCHガスを用いてエッチングした場合のDense部およびIsolation部のウエハ径方向のCDシフト量を示す図。
【図9】図1の装置を用いてSiN膜をエッチングする際に、付加ガスであるCHをウエハのエッジ部に供給した場合とウエハの外縁よりも外側部分に供給した場合とで、ウエハ径方向の選択比シフト量を示す図。
【図10】本発明により実際にエッチング特性を均一化した際に用いたサンプル構造例を示す図。
【図11】本発明により実際にエッチング特性を均一化した際に用いたサンプル構造例を示す図。
【図12】本発明により実際にエッチング特性を均一化した際に用いたサンプル構造例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るガス供給装置が適用された基板処理装置としてのプラズマエッチング装置を示す概略断面図であり、図2は、図1の装置におけるシャワーヘッドの底面図である。
【0021】
このプラズマエッチング装置は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、気密に構成され、略円筒状をなし、壁部が例えば表面が酸化処理されたアルミニウム製のチャンバ1を有している。このチャンバ1は接地されている。
【0022】
このチャンバ1内には、被処理基板である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wを水平に支持するとともに下部電極として機能する支持テーブル2が設けられている。支持テーブル2は例えば表面が酸化処理されたアルミニウムで構成されており、チャンバ1の底壁から突出する支持部3上に絶縁部材4を介して支持されている。また、支持テーブル2の上方の外周には導電性材料または絶縁性材料で形成されたフォーカスリング5が設けられている。フォーカスリング5の外側にはバッフル板14が設けられている。また、支持テーブル2とチャンバ1の底壁との間には空洞部7が形成されている。
【0023】
支持テーブル2の表面上にはウエハWを静電吸着するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aが介在されて構成されており、電極6aには直流電源13が接続されている。そして電極6aに電源13から電圧が印加されることにより、例えばクーロン力によって半導体ウエハWが吸着される。
【0024】
支持テーブル2内には冷媒流路8aが設けられ、この冷媒流路8aには冷媒配管8bが接続されており、冷媒制御装置8により、適宜の冷媒がこの冷媒配管8bを介して冷媒流路8aに供給され、循環されるようになっている。これにより、支持テーブル2が適宜の温度に制御可能となっている。また、静電チャック6の表面とウエハWの裏面との間に熱伝達用の伝熱ガス、例えばHeガスを供給するための伝熱ガス配管9aが設けられ、伝熱ガス供給装置9からこの伝熱ガス配管9aを介してウエハW裏面に伝熱ガスが供給されるようになっている。これにより、チャンバ1内が排気されて真空に保持されていても、冷媒流路8aに循環される冷媒の冷熱をウエハWに効率良く伝達させることができ、ウエハWの温度制御性を高めることができる。
【0025】
支持テーブル2のほぼ中央には、高周波電力を供給するための給電線12が接続されており、この給電線12には整合器11および高周波電源10が接続されている。高周波電源10からは所定の周波数、例えば10MHz以上の高周波電力が支持テーブル2に供給されるようになっている。一方、下部電極として機能する支持テーブル2に対向してその上方には後述するシャワーヘッド16が互いに平行に設けられており、このシャワーヘッド16はチャンバを介して接地されている。したがって、シャワーヘッド16は上部電極として機能して、支持テーブル2とともに一対の平行平板電極を構成している。
【0026】
上記シャワーヘッド16は、チャンバ1の天壁部分に嵌め込まれている。このシャワーヘッド16は、チャンバ1内のウエハ中心領域(センター領域)にガスを導入する第1ガス導入部51と、チャンバ1内のウエハ周辺領域(エッジ領域)にガスを導入する第2ガス導入部52と、第2ガス導入部51よりも外側領域にガスを導入する第3ガス導入部53とを有しており、これらが同心状に配置されている。
【0027】
シャワーヘッド16は、シャワーヘッド本体16aと、その下面に交換可能に設けられた電極板18とを有している。シャワーヘッド本体16aの底壁および電極板18を貫通するように多数のガス吐出孔17が設けられており、シャワーヘッド本体16aの内部にはガス拡散空間40が設けられている。このガス拡散空間40は、例えばOリングからなる第1環状隔壁部材42および第2環状隔壁部材43により中心側の第1ガス拡散室40aとその外側の第2ガス拡散室40bとさらにその外側(最外周)の第3ガス拡散室40cに区画されており、これら第1ガス拡散室40a、第2ガス拡散室40b、第3ガス拡散室40cから上記多数のガス吐出孔17が下方に延びている。そして、第1ガス拡散室40aとその下面に設けられている多数のガス吐出孔17とで第1ガス導入部51が構成され、第2ガス拡散室40bとその下面に設けられている多数のガス吐出孔17とで第2ガス導入部52が構成され、第3ガス拡散室40cとその下面に設けられている多数のガス吐出孔17とで第3ガス導入部53が構成される。
【0028】
第1および第2ガス拡散室40a,40bにはエッチングのための処理ガスが供給されウエハWに向けてエッチングガスを吐出可能となっている。第3ガス拡散室40cには付加ガスが供給される。第3ガス拡散室40cに対応するガス吐出孔17は、サセプタ16に載置されているウエハWの外縁よりも外側の領域に対応し、ウエハWの外縁よりも外側の領域に付加ガスを吐出可能となっている。
【0029】
第1ガス拡散室40aおよび第2ガス拡散室40bには、共通の処理ガス供給部66から処理ガスが所望の流量比で供給されるようになっている。すなわち、処理ガス供給部66からのガス供給管64が途中で2つの分岐管64a,64bに分岐し、シャワーヘッド本体16aに形成されたガス導入口62a,62bに接続され、ガス導入口62a,62bからの処理ガスがガス導入室40a、40bに至る。分岐管64a,64bの分流量は、これらの途中に設けられた分流量調整機構71により調整される。また、第3ガス拡散室40cには、付加ガス供給部75から、処理ガスによるエッチング特性を調整するための付加ガスが供給されるようになっている。付加ガスは、エッチングの際に例えばエッチング処理を均一にするために所定の作用を及ぼすものである。付加ガス供給部75からのガス供給管76は、シャワーヘッド本体16aに形成されたガス導入口62cに接続され、付加ガスはガス導入口62cを介して第3ガス拡散室40cに至る。そして、シャワーヘッド16、処理ガス供給部66、付加ガス供給部75、分流量調整機構71および配管系によりガス供給装置60が構成されている。
【0030】
図3はガス供給装置の構成を示す模式図である。処理ガス供給部66は、処理ガスの数に応じた複数、例えば3つの処理ガス供給源67a,67b,67cを有しており、これらから、それぞれガス配管68a,68b,68cが延びており、これらガス配管68a,68b,68cには、流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)69および開閉バルブ70が設けられていて、複数種の処理ガスを各々所望の流量で供給可能となっている。これらガス配管68a,68b,68cは上記ガス供給配管64に合流しており、ガス供給配管64では複数のガスが混合した混合ガスが通流される。なお、処理ガス供給源は、処理ガスの数に応じて設けられるものであり、2個以下または4個以上でもよいことは言うまでもない。
【0031】
分流量調整機構71は、分岐管64a,64bにそれぞれ設けられた流量制御弁71a,71bおよび圧力センサ72a,72bを有している。処理ガス供給部66から第1ガス拡散室40aおよび第2ガス拡散室40bまでの流路のコンダクタンスは等しいので、流量制御弁71a,71bにより第1ガス拡散室40aと第2ガス拡散室40bに供給する処理ガスの流量比を任意に調整することができる。実際の流量調整は、分岐管64a,64bに設けられた圧力センサ72a,72bの検出値に基づいて流量制御弁71a,71bの開度を調整することにより行われる。
【0032】
付加ガス供給部75は、ガス供給配管76に接続された付加ガス供給源77と、ガス供給管76に設けられた流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)78および開閉バルブ79を有している。
【0033】
このように、第1ガス拡散室40aと第2ガス拡散室40bとに導入する処理ガスの流量比を調整することで、中心側の第1ガス導入部51からチャンバ1内に導入される処理ガスの流量Fと周辺側の第2ガス導入部52からチャンバ1内に導入されるガスの流量Fとの比率(F/F)を任意に調整することができ、これによりラジカル分布制御(ラジカルディストリビューションコントロール;RDC)を行うことができる。また、これら処理ガスとは独立して所定の付加ガスを処理ガスに対して所定の割合で第3ガス導入部53の第3ガス拡散室40cからチャンバ1内のウエハWの外縁よりも外側部分に導入することができる。
【0034】
付加ガスを供給するガス供給配管76と分岐管64bとの間は、バイパス配管80で接続されており、ガス供給配管76とバイパス配管80の合流点には切換バルブ81が設けられている。切換バルブ81は例えば三方弁からなり、付加ガスを供給する場合にはバイパス配管80との接続を遮断して付加ガスが第3ガス拡散室40cに供給されるようにし、付加ガスを供給しない場合には付加ガス供給部75側との接続を遮断してバイパス配管80を介して処理ガスが第3ガス拡散室40cに供給されるようにする。すなわち、処理中に付加ガスを必要としない場合に、第3ガス拡散室40cに対応するガス吐出孔17に何も流れないことを防止することが可能となっている。
【0035】
チャンバ1の底壁には、排気管19接続されており、この排気管19には真空ポンプ等を含む排気装置20が接続されている。そして排気装置20の真空ポンプを作動させることによりチャンバ1内を所定の真空度まで減圧することができるようになっている。一方、チャンバ1の側壁上側には、ウエハWの搬入出口23を開閉するゲートバルブ24が設けられている。
【0036】
一方、チャンバ1の搬入出口23の上下にチャンバ1を周回するように、同心状に、2つのリング磁石21a,21bが配置されており、支持テーブル2とシャワーヘッド16との間の処理空間の周囲に磁界を形成するようになっている。このリング磁石21a,21bは、図示しない回転機構により回転可能に設けられている。
【0037】
プラズマエッチング装置の各構成部、例えば、処理ガス供給部66、分流量調整機構71、付加ガス供給部75、高周波電源10、整合器11、直流電源13、冷媒制御装置8、伝熱ガス供給装置9、排気装置20等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなる制御部(プロセスコントローラ)90に接続されて制御される構成となっている。また、制御部90には、オペレータがプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース91が接続されている。
【0038】
さらに、制御部90には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理を制御部90の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマエッチング装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部92が接続されている。レシピは記憶部92中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体はハードディスクのような固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース91からの指示等にて任意のレシピを記憶部92から呼び出して制御部90に実行させることで、制御部90の制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。
【0039】
次に、以上のように構成されたプラズマエッチング装置の処理動作について説明する。この際の処理動作は上述した制御部90により制御される。
まず、ゲートバルブ24を開にして搬送アームにてウエハWをチャンバ1内に搬入し、支持テーブル2上に載置した後、搬送アームを退避させてゲートバルブ24を閉にし、排気装置20の真空ポンプにより排気管19を介してチャンバ1内を所定の真空度にする。
【0040】
そして、処理ガス供給部66からエッチングのための処理ガスを所定の流量および比率で第1ガス拡散室40aおよび第2ガス拡散室40bへ供給し、第1ガス導入部51と第2ガス導入部52の処理ガス比率を調整する。また、第3ガス導入部53の第3ガス拡散室40cには所定の付加ガスを供給する。そして、これらのガスをガス吐出孔17を介してチャンバ1内へ供給しつつ、排気装置20の真空ポンプによりチャンバ1内を排気し、その中の圧力を例えば1〜150Paの範囲内の設定値とする。
【0041】
ここで、処理ガスとしては、従来用いられている種々のものを採用することができ、例えばCガスのようなフロロカーボンガス(C)に代表されるハロゲン元素を含有するガスを好適に用いることができる。さらに、ハロゲン元素を含有するガスとともに、またはハロゲン元素を含有するガスに代えてArガスやOガス等の他のガスを用いることもできる。
【0042】
付加ガスは、ウエハのエッチング特性に特異な部分が存在するような場合に、その部分の環境を調整してエッチングの面内均一性を高めるためのガスである。例えば、ウエハの周縁部で副生成物が少ないためにエッチング形状が細る場合があるが、その場合には副生成物を生成するガスを付加ガスとして供給することが有効である。また、例えば、ウエハの周縁部で膜の構成成分に対応するガスが少ないためにエッチング形状が細る場合があるが、その場合にはその膜の構成成分に対応するガスを付加ガスとして供給することが有効である。
なお、付加ガスとしては、処理ガスの一部を用いることもできるし、処理ガスとは全く異なるガスを用いることもできる。
【0043】
このようにチャンバ1内に処理ガスおよび付加ガスを導入した状態で、高周波電源10から支持テーブル2に、周波数が10MHz以上、例えば13.56MHzの高周波電力を供給する。このとき、直流電源13から静電チャック6の電極6aに所定の電圧が印加され、ウエハWは例えばクーロン力により吸着される。
【0044】
このようにして下部電極である支持テーブル2に高周波電力が印加されることにより、上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である支持テーブル2との間の処理空間には高周波電界が形成され、これにより処理空間に供給された処理ガスがプラズマ化されて、そのプラズマ中のラジカルやイオンによってウエハWの被エッチング膜がエッチングされる。
【0045】
この場合に、上記特許文献1〜3にあるように、処理ガスの流量をウエハWの中心領域と周辺領域とで調整するラジカル分布制御(RDC)と、付加ガスをウエハWの周辺領域に流すことにより、処理によってはエッチング特性を均一にすることができる。
【0046】
しかしながら、ハードマスク層として用いられるSiN膜や、低誘電率(Low−k)層間絶縁膜のような有機系膜のエッチングにおいては、ウエハWの最外周部分において、エッチング特性、特にCD(クリティカルデメンジョン)が急激に変化する。具体的にはウエハWの最外周部分において、レジストの細りが生じる傾向にある。この場合には、単に上記特許文献1〜3のようなハード構成を用いてラジカル分布制御および付加ガスの供給を行っても、必ずしもエッチング特性の均一化を達成することができない。
【0047】
そこで、本実施形態では、第1ガス導入部51および第2ガス導入部52の2系統で比率調整して流すようにしたことに加え、第3ガス導入部53において、付加ガスをウエハW外縁よりも外側に対応する位置に導入するようにした。
【0048】
これにより、ウエハWの最外周部分におけるエッチング特性を有効に補正して最適化することができ、エッチング特性をより均一にすることができる。すなわち、ウエハWのエッジ領域に付加ガスを供給しても、ウエハWの最外周部分のエッチング特性を補正することは困難であるが、付加ガスをウエハWの外縁から外側の部分に供給することにより、付加ガスがウエハWの最外周部分に有効に作用してその部分のエッチング特性を補正することができる。
【0049】
また、付加ガスは、ウエハWのミドル領域およびセンター領域にも拡散し、これらの領域の環境にも変化をもたらすが、第1ガス導入部51および第2ガス導入部52の間で処理ガスの比率を調整することによりその影響をキャンセルすることができる。
【0050】
このようなエッチング特性の補正を図4を参照して具体的に示すと、例えば、SiN膜をエッチングの際に、処理ガスとしてCHガス、CFガス、Arガス、Oガスを用い、付加ガスを用いない場合には、(a)に示すようにエッチングCDがミドル領域を過ぎたあたりから大きく低下する傾向がある。また、上記処理ガスとともに付加ガスとしてCHガスをウエハのエッジ領域に供給した場合には、(b)に示すようにCD分布は改善されるもののウエハWの最外周部分にCDが低下する部分が生じ、この部分はラジカル密度空間分布制御を行っても改善されない。これに対して、本実施形態のように、ウエハWの外縁よりも外側部分に付加ガスとしてCHガスを供給した場合には、(c)に示すようにウエハWの最外周部分のCD補正効果を最適化することができる。(c)におけるウエハの中心領域のCD低下は、第1ガス導入部51および第2ガス導入部52の間で処理ガスの比率を調整してラジカル密度空間分布制御を行うことにより(d)のように平坦化することができ、CDの均一性を極めて高くすることができる。なお、図4は概略の傾向を模式的に示したものである。
【0051】
また、プロセスによっては付加ガスを用いる必要のない場合もあるが、その場合に、単に付加ガスの供給を停止したのでは、第3ガス拡散室40cに対応するガス吐出孔17に何も流れない状態となり、この状態でチャンバ1内にプラズマを生成すると、プラズマが第3ガス拡散室40cに対応するガス吐出孔17にプラズマが入り込み、異常放電が生じたり、デポが生じたりする。
【0052】
そこで、本実施形態では、付加ガスを供給するガス供給配管76と分岐管64bとの間をバイパス配管80で接続し、切換バルブ81により第3ガス拡散室40cに付加ガスと処理ガスとを選択的に供給することができるようにし、付加ガスを流す必要のない場合に、切換バルブ81をバイパス配管80側にして第3ガス拡散室40cに処理ガスを流すことにより、このような異常放電やデポの問題を解消することができる。
【0053】
次に、本発明を想到するに至った実験結果について詳細に説明する。
ここでは、Si基板上にSiN膜を200nm、その上にポリビニルアルコール系の樹脂膜(OPL)を287nm、さらにその上に反射防止膜(Si−ARC)を80nm形成し、さらにその上にフォトレジスト膜(PR)を形成した後、フォトレジスト膜をフォトリソグラフィー工程によりCD(ライン幅)80nmにパターン化した300mmウエハを用い、シャワーヘッド16の最外側のガス吐出孔がウエハ配置領域内(中心から140mm)である以外は図1と同様の装置を用いて、SiN膜までエッチングした。このとき、処理ガスとしてCHFガス、CFガス、Arガス、およびOガスを用い、これらの流量をCHF/CF/Ar/O=30/90/600/15mL/min(sccm)とし、処理ガスの比率をセンター:エッジ=45:55とし、チャンバ内圧力:16.6Pa(125mTorr)、高周波パワー:600Wの条件でエッチングを行った。なお、その結果、図5の走査型電子顕微鏡(SEM)写真で示すように、パターンが密(Dense)の部分および疎(Isolation)の部分のいずれも、中心領域に比べて周辺領域のライン部分が細くなることが確認された。なお、図中の数字は、左側がトップのCD値(nm)を示し、右側がボトムのCD値(nm)を示す。
【0054】
次に、同様の装置を用い、処理ガスとしてCHガス、CFガス、Arガス、およびOガスを用い、これらの流量をCH/CF/Ar/O=20/80/150/21mL/min(sccm)とし、ガス比率をセンター:エッジ=45:55とし、チャンバ内圧力:18.6Pa(140mTorr)、高周波パワー:700Wの条件でCD(ライン幅)80nmでSiN膜をエッチングした。この場合のDense部およびIsolation部のウエハ径方向のCDシフト量について図6の(a)、(b)に示す。これら図からもウエハのエッジ部分においてCDが低下することがわかる。
【0055】
このようなウエハのエッジ部分のCD低下に相関のある指標について調査した結果、図7に示すように、反応生成物(副生成物)であるCN系物質の濃度と相関があり、ウエハのエッジ部分において反応生成物の濃度が低下することが判明した。なお、図7はウエハの0.5mm上の位置についてシミュレーションを行ったデータである。図7の結果から、ウエハエッジ部分におけるCDの低下は、ウエハエッジ部分において反応生成物(CN系物質)の濃度が低下していることに起因するものと推測される。
【0056】
そこで、上記実験で用いたシャワーヘッド16の最外側のガス吐出孔がウエハ配置領域内(中心から140mm)である装置を用い、付加ガスとして反応生成物であるCN系物質に代わるガスであるCHガスを用いて、処理ガスを供給すると同時にこのCHガスを上記最外側のガス吐出孔(図1の装置における第2ガス拡散室に相当)からウエハのエッジ部分に吐出した。この場合のDense部およびIsolation部のウエハ径方向のCDシフト量について図8の(a)、(b)に示す。これら図から、ウエハのエッジ部分のCDの低下が緩和し、付加ガスによりCDの均一性が改善しているものの、ウエハの最外周部におけるCDの低下が解消されていないことがわかる。
【0057】
これに対して、本発明に従って付加ガスであるCHガスをウエハの外縁よりも外側部分(中心から156mm)に供給するようにした結果、ウエハの最外周部におけるCDの低下を補正することができた。図9は直接CDシフト量を示したものではないが、CDシフト量と強い相関のあるSiN膜のレジスト膜に対する選択比シフト量を示すものであり、(a)が付加ガスであるCHガスをウエハのエッジ部に供給した場合、(b)はウエハの外縁よりも外側部分に供給した場合を示す。これらの図に示すように、(a)では、ウエハ最外周部で選択比が低下しているのに対し、(b)ではウエハ最外周部で選択比が上昇して最大値を示している。そして、このような状態からは、RDC制御により容易にエッチング特性の均一化を図ることができる。
【0058】
以上は、雰囲気中の反応生成物(副生成物)の濃度がエッジ部分のエッチング特性に影響を与えていた場合であるが、膜の成分そのものの濃度がエッジ部分のエッチング特性に影響を与えることもある。例えば、アモルファスカーボン(a−C)や有機膜のエッチングにおいては、膜の成分であるCの濃度がウエハのエッジ部分の雰囲気中で低くなる結果、ウエハのエッジ部分でCDが低下する傾向にある。この場合には、付加ガスとして膜成分であるCを増加させるガス、例えばCOガスを用いることができ、このような付加ガスによりCD等のエッチング特性を均一にすることができる。
【0059】
次に、本発明を用いて実際にエッチング特性を均一化した実例について説明する。
図10に示すような、Si基板101上にハードマスクとしてSiN膜102を形成し、その上に反射防止膜(BARC)103を形成し、その上にフォトレジスト膜104を形成した後、フォトレジスト膜(PR)104をフォトリソグラフィー工程によりパターン化したウエハサンプルを作成し、図1の装置によりBARC103およびSiN膜102にエッチング処理を施した。
【0060】
共通条件として、ウエハ温度を60℃、センター領域とエッジ領域との処理ガスの流量比をセンター:エッジ=45:55とし、BARC103のエッチングの際には、処理ガスとしてCFガス、Arガス、Oガスを、それぞれ120mL/min(sccm)、420mL/min(sccm)、15mL/minの流量で供給し、チャンバ内圧力を13.3Pa(100mTorr)、高周波パワーを800Wに設定してプラズマエッチングを行い、SiN膜102のエッチングの際には、処理ガスとしてCHガス、CFガス、Arガス、Oガスを、それぞれ20mL/min(sccm)、80mL/min(sccm)、150mL/min、20mL/minの流量で供給し、さらに第3ガス拡散領域40cを介してウエハ外縁よりも外側部分に付加ガスとしてCN系反応生成物を形成するCHガスを2mL/min(sccm)の流量で供給し、チャンバ内圧力を18.6Pa(140mTorr)、高周波パワーを700Wに設定してプラズマエッチングを行った。なお、BARCのエッチングの際には、第3ガス領域40cから処理ガスを供給した。
【0061】
その結果、SiN膜102のエッチングの際には、付加ガスとしてのCHガスの作用により、ウエハの最外周部分のCDが補正されて均一性の高いエッチングを実現することができた。また、BARC103のエッチングの際には、付加ガスを供給しなかったが、付加ガス供給用の第3ガス拡散領域40cから処理ガスを吐出したので、異常放電やデポは生じなかった。
【0062】
次に、図11に示すような、Si基板201上にハードマスクとしてSiN膜202を形成し、その上にアモルファスカーボン(a−C)膜203を形成し、その上にSiO膜204を形成し、さらにその上にフォトレジスト膜(PR)205を形成した後、フォトレジスト膜205をフォトリソグラフィー工程によりパターン化したウエハサンプルを作成し、図1の装置によりSiO膜204およびa−C膜203にエッチング処理を施した。
【0063】
共通条件として、ウエハ温度を20℃、センター領域とエッジ領域との処理ガスの流量比をセンター:エッジ=50:50とし、SiO膜204のエッチングの際には、処理ガスとしてCFガスを150mL/min(sccm)の流量で供給し、チャンバ内圧力を10.6Pa(80mTorr)、高周波パワーを400Wに設定してプラズマエッチングを行い、a−C膜203のエッチングの際には、処理ガスとしてOガス、Arガスを、それぞれ180mL/min(sccm)、300mL/min(sccm)の流量で供給し、さらに第3ガス拡散領域40cを介してウエハ外縁よりも外側部分に付加ガスとして雰囲気中の膜成分を増加させるガスであるCOガスを200mL/min(sccm)の流量で供給し、チャンバ内圧力を4.0Pa(30mTorr)、高周波パワーを500Wに設定してプラズマエッチングを行った。なお、SiO膜204のエッチングの際には、第3ガス領域40cから処理ガスを供給した。
【0064】
その結果、a−C膜203のエッチングの際には、付加ガスとしてのCOガスの作用により、ウエハの最外周部分のCDが補正されて均一性の高いエッチングを実現することができた。また、SiO膜204のエッチングの際には、付加ガスを供給しなかったが、付加ガス供給用の第3ガス拡散領域40cから処理ガスを吐出したので、異常放電やデポは生じなかった。
【0065】
次に、図12に示すような、Si基板301上にハードマスクとしてSiN膜302を形成し、その上にポリビニルアルコール系の樹脂膜(OPL)303を形成し、その上に反射防止膜(Si−ARC)304を形成し、さらにその上にフォトレジスト膜305を形成した後、フォトレジスト膜305をフォトリソグラフィー工程によりパターン化したウエハサンプルを作成し、図1の装置によりSi−ARC304およびOPL303にエッチング処理を施した。
【0066】
共通条件として、ウエハ温度を20℃、センター領域とエッジ領域との処理ガスの流量比をセンター:エッジ=50:50とし、Si−ARC304のエッチングの際には、処理ガスとしてCFガスを150mL/min(sccm)の流量で供給し、チャンバ内圧力を10.6Pa(80mTorr)、高周波パワーを400Wに設定してプラズマエッチングを行い、樹脂膜303のエッチングの際には、処理ガスとしてNガス、Oガス、Hガスを、それぞれ200mL/min(sccm)、18mL/min(sccm)、100mL/min(sccm)の流量で供給し、さらに第3ガス拡散領域40cを介してウエハ外縁よりも外側部分に付加ガスとして雰囲気中の膜成分を増加させるガスであるCOガスを40mL/min(sccm)の流量で供給し、チャンバ内圧力を2.3Pa(17mTorr)、高周波パワーを300Wに設定してプラズマエッチングを行った。なお、Si−ARC304のエッチングの際には、第3ガス領域40cから処理ガスを供給した。
【0067】
その結果、OPL303のエッチングの際には、付加ガスとしてのCOガスの作用により、ウエハの最外周部分のCDが補正されて均一性の高いエッチングを実現することができた。また、Si−ARC304のエッチングの際には、付加ガスを供給しなかったが、付加ガス供給用の第3ガス拡散領域40cから処理ガスを吐出したので、異常放電やデポは生じなかった。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、ウエハの中心領域に対応する第1ガス導入部51とウエハの周辺領域に対応する第2ガス導入部52に処理ガスを分流させたが、3つ以上の領域に分流させてもよい。また、必ずしもガス導入部が同心状に形成されている必要はない。また、上記実施形態では処理ガスおよび付加ガスをシャワーヘッドから導入したが、必ずしもシャワーヘッドでなくてもよく、例えば、単に配管からこれらガスを導入するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態ではプラズマエッチング処理について示したが、これに限るものではなくプラズマCVD処理等の他のプラズマ処理でもよく、また、熱CVD等の非プラズマ処理であってもよい。
【0070】
さらに、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを用いた例を示したが、これに限るものではなく、FPD(フラットパネルディスプレイ)用基板等、他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1;チャンバ
2;支持テーブル(電極)
10;高周波電源
16;シャワーヘッド
16a;シャワーヘッド本体
17;ガス吐出孔
20;排気装置
40;ガス拡散空間
40a;第1ガス拡散空間
40b;第2ガス拡散空間
40c;第3ガス拡散空間
51;第1ガス導入部
52;第2ガス導入部
53;第3ガス導入部
60;ガス供給装置
64;ガス供給管
64a,64b;分流管
66;処理ガス供給部
67a,67b,67c;処理ガス供給源
71;分流量調整機構
75;付加ガス供給部
76;ガス供給配管
77;付加ガス供給源
80;バイパス配管
81;切換バルブ
W;半導体ウエハ(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板が配置された処理室内に、被処理基板に対して所定の処理を行うための処理ガスを供給するガス供給装置であって、
前記処理室内において、その中に配置された被処理基板に対向して設けられ、前記処理室内に前記処理ガスを含むガスを導入する複数のガス導入部を有するガス導入部材と、
前記処理ガスを前記ガス導入部材に向けて供給する処理ガス供給部と、
前記処理ガス供給部からの前記処理ガスを流す処理ガス供給流路と、
前記処理ガス供給流路から分岐し、前記ガス導入部材に接続され、所定の分流割合で前記処理ガスを供給する複数の分岐流路と、
前記処理ガスによる処理特性を調整するための付加ガスを前記ガス導入部材に向けて供給する付加ガス供給部と、
前記付加ガス供給部からの付加ガスを流し、前記ガス導入部材に接続された付加ガス供給流路とを具備し、
前記複数のガス導入部は、前記被処理基板の配置領域にガスを供給する複数の内側ガス導入部と、前記被処理基板の外縁よりも外側の領域にガスを導入する外側ガス導入部を有し、前記複数の分岐流路は前記複数の内側ガス導入部に接続され、前記付加ガス供給流路は前記外側ガス導入部に接続され、
前記内側ガス導入部から前記被処理基板の配置領域に導入された前記処理ガスにより被処理基板に対する処理が行われ、前記外側ガス導入部から前記被処理基板の外縁よりも外側の領域に導入された前記付加ガスにより、被処理基板の最外周部分の前記処理ガスによる処理特性が補正されることを特徴とするガス供給装置。
【請求項2】
前記ガス導入部材は、複数のガス導入部が同心状に設けられ、最外側が前記外側ガス導入部であり、その内側に複数の内側ガス導入部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記ガス導入部材は、内部にガス拡散空間を有し、下壁に複数のガス吐出孔を有するシャワーヘッドを構成し、前記ガス拡散空間が前記複数のガス導入部に対応して複数のガス拡散室に区画されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記ガス導入部材の前記複数のガス導入部は、前記内側ガス導入部として、前記被処理基板の中心領域に前記処理ガスを導入する第1ガス導入部と、前記被処理基板の周辺領域に前記処理ガスを導入する第2ガス導入部とを有し、前記第2ガス導入部の外側に前記外側ガス導入部として第3ガス導入部を有し、
前記複数の分岐流路は、第1分岐流路と第2分岐流路とを有し、これらはそれぞれ前記第1ガス導入部および前記第2ガス導入部に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス供給装置。
【請求項5】
前記付加ガス供給流路と前記処理ガス供給流路またはいずれかの前記分岐流路とを繋ぐバイパス配管をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガス供給装置。
【請求項6】
前記付加ガスは、前記処理ガスとは異なるガスであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガス供給装置。
【請求項7】
前記処理ガスは複数のガスを含み、前記付加ガスは、これら複数のガスと異なるガス、または前記処理ガスを構成するガスの一部であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガス供給装置。
【請求項8】
その中に被処理基板が配置される処理室と、
前記処理室内に、被処理基板に対して所定の処理を行うための処理ガスを供給するガス供給装置と
を具備し、
前記ガス供給装置から前記処理ガスを前記処理室内に供給して被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置であって、
前記ガス供給装置は、
前記処理室内において、その中に配置された被処理基板に対向して設けられ、前記処理室内に前記処理ガスを含むガスを導入する複数のガス導入部を有するガス導入部材と、
被処理基板を処理する処理ガスを前記ガス導入部材に向けて供給する処理ガス供給部と、
前記処理ガス供給部からの処理ガスを流す処理ガス供給流路と、
前記処理ガス供給流路から分岐し、前記ガス導入部材の前記複数のガス導入部に接続され、所定の分流割合で前記処理ガスを供給する複数の分岐流路と、
前記処理ガスによる処理特性を調整するための付加ガスを前記ガス導入部材に向けて供給する付加ガス供給部と、
前記付加ガス供給部からの付加ガスを流し、前記ガス導入部材に接続された付加ガス供給流路とを備え、
前記ガス導入部材は、前記処理室に配置された被処理基板の外縁よりも外側の領域にガスを導入する外側ガス導入部を有し、前記付加ガス供給流路は、前記外側ガス導入部に接続され、
前記内側ガス導入部から前記被処理基板の配置領域に導入された前記処理ガスにより被処理基板に対する処理が行われ、前記外側ガス導入部から前記被処理基板の外縁よりも外側の領域に導入された前記付加ガスにより、被処理基板の最外周部分の前記処理ガスによる処理特性が補正されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記処理ガスと前記付加ガスのプラズマを生成するプラズマ生成機構をさらに具備し、生成したプラズマにより被処理基板を処理することを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記ガス供給装置は、前記付加ガス供給流路と前記処理ガス供給流路またはいずれかの前記分岐流路とを繋ぐバイパス配管をさらに有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
被処理基板が配置された処理容器内に処理ガスを導入して被処理基板に所定の処理を施す基板処理方法であって、
前記被処理基板の配置領域に所定の分流割合で処理ガスを複数部位から供給して前記被処理基板に前記所定の処理を行い、
前記処理ガスによる処理特性を調整するための付加ガスを前記複数部位よりも外側の外側部位から前記被処理基板の外縁よりも外側の領域に供給して、被処理基板の最外周部分の前記処理ガスによる処理特性を補正することを特徴とする基板処理方法。
【請求項12】
前記複数部位は同心状に設けられ、前記外側部位は前記複数部位の外側に同心状に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記複数部位は、前記被処理基板の中心領域に対応する第1の部位と、前記被処理基板の周辺領域に対応する第2の部位とを有することを特徴とする請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記基板処理は、被処理基板の所定の膜をプラズマエッチングするプラズマエッチング処理であることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記複数部位のいずれかに処理ガスを供給する処理ガス供給路と、前記外側部位へ付加ガスを供給する付加ガス供給路とがバイパス配管で繋がれていることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102214(P2013−102214A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−16806(P2013−16806)
【出願日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【分割の表示】特願2007−286411(P2007−286411)の分割
【原出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】