説明

ガス供給装置およびエアバッグ装置

【課題】より小型化させて設置することのできるガス供給装置、およびこのガス供給装置を用いたエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】ガス供給装置100は、シリンダ型のインフレータ104と、板金をインフレータ104の周囲に隙間無く巻きつけて設置されるディフレクタ106とを備える。ディフレクタ106は、円形の第1孔部114a・114bと、ディフレクタ106の巻かれる方向に沿って長尺な第2孔部116a・116bとを有していて、これらは重なっている。インフレータ104は外表面にスタッドボルト110a・110bを有していて、これらは第1・第2孔部を通って車両に締結される。このディフレクタ106は、ガス噴出口からのガスを受けることで、スタッドボルトが長尺の第2孔部116a・116bの巻き端側に相対的に移動するように巻きつけが一部解消されてその径が所定の大きさに広がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置、およびエアバッグ用のガス供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアバッグは、車両衝突時などに乗員とステアリングホイールとの間、または乗員と車室側壁との間などに膨張展開して乗員を保護する装置である。エアバッグは、ガスを利用して膨張展開する構成となっていて、ガスの発生源としてインフレータと呼ばれるガス発生装置が備えられている。インフレータは、その内部にガス発生剤が充填されていて、センサ等による衝撃の検知に起因してガス発生剤を燃焼させ、ガスを噴出する構成となっている。インフレータには、エアバッグの種類に応じて、円盤形状のディスク型や、円筒形状のシリンダ型など様々な種類が存在している。
【0003】
エアバッグが瞬時に膨張展開するためには、インフレータから噴出するガスをエアバッグの内部へ効率よく行き渡らせる必要がある。このことに応じて、エアバッグには、インフレータから噴出するガスの流れを整えるために、ディフレクタまたはディフューザと呼ばれる部材を備えているものも多く存在する。
【0004】
例えば特許文献1に記載されているサイドエアバッグでは、シリンダ型のインフレータの周囲を、布製のディフューザが覆っている。このディフューザは、矩形状に裁断された布材を、インフレータの周囲に円筒形状となるように巻きつけることで形成されている。ディフューザの長手方向の両端(インフレータの長手方向の両端)は開放されていて、ディフューザはインフレータから噴出したガスを長手方向へ導く働きを有している。
【0005】
また、特許文献2に記載されているニーエアバッグにおいても、シリンダ型のインフレータが円筒形状のディフューザに覆われている。この特許文献2に記載されたディフューザは金属製であると思われ、円筒形状の内側にインフレータを挿入した後、外側からかしめられることでインフレータを固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−126499号公報
【特許文献2】特開2010−36882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在では、車両のコンパクト化がますます進む傾向にあり、上記のディフレクタおよびディフューザもより簡潔かつ低廉な構成が望まれている。ここで、特許文献1の構成では、インフレータが車両への取付け用のスタッドボルトを有していて、布製のディフューザにはスタッドボルトが通される孔が設けられている。一方、特許文献2の構成では、インフレータはスタッドボルトを有しておらず、スタッドボルトはインフレータの外部を覆っている金属製のディフューザに設けられている。
【0008】
特許文献1に記載されているスタッドボルト付きインフレータに対しても、耐熱性等を考慮すると、布製のディフューザよりも、特許文献2に記載されている金属製のディフューザと組み合わせたほうが都合のよい場合がある。しかしその場合、特許文献2に記載されている金属製かつ円筒形状のディフューザでは、スタッドボルト付きインフレータをそのまま挿入することは難しいため、形状の変更が少なからず必要となり、結果として複雑かつ高価な構成となってしまう。
【0009】
加えて、一般的なエアバッグは、巻回または折り畳まれて小型にされた状態で、車両に取り付けられる。しかし、金属製のディフューザまたはディフレクタが組み付けられたインフレータを備えていた場合、これらがエアバッグを巻回等する際に障害となる可能性もある。その場合、エアバッグを小型にすることが難しくなり、車両に広い設置領域が必要となったり、車両への取付け作業が煩雑になったりしかねない。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、金属製のディフレクタとシリンダ型のインフレータとを含む主にエアバッグ用のガス供給装置であって、簡潔かつ低廉な構成でより小型化させて設置することのできるガス供給装置、およびこのガス供給装置を用いたエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかるガス供給装置の代表的な構成は、エアバッグに取り付けられ、エアバッグに膨張展開用のガスを供給するガス供給装置であって、ガスを噴出するガス噴出口を外表面に有するインフレータと、板金からなり、インフレータの周囲に隙間無く巻きつけられ、少なくともガス噴出口を覆っているディフレクタと、を備え、ディフレクタは、円形の第1孔部と、第1孔部からディフレクタの巻き端側へ離れた位置に設けられ、ディフレクタの巻かれる方向に沿って長尺であり、第1孔部と重なっている第2孔部と、を有し、インフレータはさらに、外表面から突出し第1孔部および第2孔部を通って車両に締結される1以上のスタッドボルトを有し、ディフレクタがガス噴出口からのガスを受けることで、スタッドボルトが長尺の第2孔部の巻き端側に相対的に移動するようにディフレクタの巻きつけが一部解消されてその径が所定の大きさに広がることを特徴とする。
【0012】
上記構成のディフレクタは、もとは板金であって、設置時においてはインフレータに隙間なく巻きついているため、場所をとらない。そして、エアバッグの作動時においては、インフレータからのガスの噴出を受けて径が広がるよう変形し、ガスを自体の長手方向へ案内する。このディフレクタは、金属製であるために耐熱性に優れている。さらには、ディフレクタは溶接やボルト締め等を行うことなくインフレータに組み付けることができるため、組付作業時の労力も低減できる。これらによって、上記構成であれば、構成が簡潔であってコストを抑えることができ、また作動前には小型となっているため設置場所をとらずかつ設置作業も簡単な、耐熱性に優れたガス供給装置が提供できる。
【0013】
上記の第2孔部は、第2孔部の幅を狭めるよう設けられてスタッドボルトに干渉する干渉部であって、ディフレクタの径が所定の大きさに広がったときにスタッドボルトに干渉する干渉部を有してもよい。この干渉部を設けることで、エアバッグ作動時におけるディフレクタの径を任意の大きさに設定することが可能となる。
【0014】
上記の第2孔部は、その両端部がスタッドボルトの径に応じた円形状となっていて、両端部以外は幅が狭められていてもよい。この構造の第2孔部であれば、巻きつけが簡単には解消されないため、設置時にその形態を安定して維持できる。またガスの噴出時においても、スタッドボルトが第2孔部の端にはまるため、変形後の形態が安定し、ガスの整流性能も安定する。
【0015】
上記のディフレクタは、材質に軟鋼が用いられているとよい。ある程度の軟らかさをもつ軟鋼であれば、上記構成のディフレクタが好適に実現できる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明にかかるエアバッグ装置の代表的な構成は、上記のガス供給装置を備えることを特徴とする。これにより、構成が簡潔であってコストを抑えることができ、また作動前には小型となっているため設置場所をとらずかつ設置作業も簡単なエアバッグ装置が実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、属製のディフレクタとシリンダ型のインフレータとを含む主にエアバッグ用のガス供給装置であって、簡潔かつ低廉な構成でより小型化させて設置することのできるガス供給装置、およびこのガス供給装置を用いたエアバッグ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるガス供給装置およびエアバッグ装置の概要を例示した図である。
【図2】図1(b)のガス供給装置を構成する各要素をそれぞれ例示した図である。
【図3】図2(d)のディフレクタの曲げ加工を施す以前の状態を例示した図である。
【図4】図3のディフレクタをインフレータに取り付ける過程を例示した図である。
【図5】図4のディフレクタのエアバッグ作動時における変形過程を例示した図である。
【図6】図3のディフレクタの第1変形例を例示した図である。
【図7】図6のディフレクタをインフレータに取り付ける過程を例示した図である。
【図8】図7のディフレクタのエアバッグ作動時における変形過程を例示した図である。
【図9】図3のディフレクタの第2変形例を例示した図である。
【図10】図9のディフレクタのエアバッグ作動時における変形過程を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるガス供給装置100およびエアバッグ装置の概要を例示した図である。図1(a)の例では、ガス供給装置100を、エアバッグ装置の一例であるサイドエアバッグ102に適用している。なお、ガス供給装置100は、サイドエアバッグ以外にも、ニーエアバッグやカーテンエアバッグ等、各種エアバッグ装置に適用可能である。
【0021】
図1(a)に例示したサイドエアバッグ102は、膨張展開前の状態を例示している。サイドエアバッグ102は、主に、座席101の側部のハウジング103内に設置されていて、衝突事故等の衝撃発生時に乗員と車室内側壁との間に向かって膨張展開する。この膨張展開は、ガス供給装置100から供給される膨張展開用のガスによって行われる。
【0022】
図1(b)は、図1(a)のガス供給装置100を単独で例示した図である。ガス供給装置100は、シリンダ型のインフレータ104と、インフレータ104から噴出したガスを整流するディフレクタ106とを含んで構成されている。インフレータ104はガス発生装置であって、内部にガス発生剤(図示省略)が充填されている。ディフレクタ106は、インフレータ104の一部の周囲を覆う円筒形状に形成された部材であって、ガスの噴出時に変形し、そのガスをインフレータ104の長手方向の前後へ導く働きをしている。
【0023】
図2は、図1(b)のガス供給装置100を構成する各要素をそれぞれ例示した図である。図2(a)は、図1(b)のインフレータ104を単独で例示している。インフレータ104の外表面にはガス噴出口108が複数設けられていて、内部のガス発生剤を燃焼させて発生したガスはこのガス噴出口108から噴出する構成となっている。また、インフレータ104の外表面には2本のスタッドボルト110a・110bが設けられていて、インフレータ104はこのスタッドボルト110a・110bをハウジング103(図1(a))に締結することで設置される。
【0024】
図2(b)は、図2(a)のインフレータ104の矢視A図である。図2(b)に例示しているインフレータ104の一端には、コネクタ112が設けられている。このコネクタ112にはハーネス(図示省略)が接続され、インフレータ104はこのハーネスを通じてセンサ(図示省略)からの信号を受け、これに起因して内部でガス発生剤に点火を行う。
【0025】
図2(c)は、図1(b)のディフレクタ106を単独で例示している。ディフレクタ106は、板金に曲げ加工を施すことで形成されていて、図2(a)に例示したインフレータ104のうちのガス噴出口108を覆う位置に取り付けられる。ディフレクタ106の内径R1は、図1(b)に例示したガスの噴出前の状態においてはインフレータ104の外径とほぼ同じになっていて、インフレータ104との間にはガスの通る隙間はほとんど生じていない。このように、ディフレクタ106は、ガス噴出前においては、非常に小型な形態となっている。
【0026】
図2(d)は、図2(c)の矢視B図である。ディフレクタ106には、インフレータ104のスタッドボルト110a・110b(図2(a)参照)を通すための複数の孔(第1孔部114a・114bおよび第2孔部116a・116b)が重ねて設けられている。本実施形態では、これら孔の形状に特徴があり、これによって、ディフレクタ106は、ガスの噴出時にはガスを案内することのできる形態へと変形する構成が実現されている。
【0027】
図3は、図2(d)のディフレクタ106の曲げ加工を施す以前の状態を例示した図である。ディフレクタ106は、矩形の板金に、スタッドボルト110a・110bを通すそれぞれ2つの第1孔部114a・114bおよび第2孔部116a・116bを設けることで形成されている。このディフレクタ106は、設置する際に、インフレータ104(図2(a)参照)の周囲に巻きつけるように曲げ加工を施して取り付けられる。その際に曲げ加工が施しやすいよう、ディフレクタ106の材質にはある程度の軟らかさをもつ軟鋼を用いている。なお、ディフレクタ106は矢印D1で示す長辺方向に沿って巻きつけられる。以下、この長辺方向を巻きつけ方向D1と称する。
【0028】
2種類の孔部のうち、まず第1孔部114a・114bはほぼ円形に形成されている。そして第2孔部116a・116bは、第1孔部114a・114bから見て巻き端側(巻きつけ方向D1)へ離れた位置に設けられていて、さらにこの巻きつけ方向D1に沿って長尺な長孔形状に形成されている。
【0029】
図4は、図3のディフレクタ106をインフレータ104に取り付ける過程を例示した図である。図4(a)に例示したように、ディフレクタ106は、まず第1孔部114a・114bにスタッドボルト110a・110bを通してインフレータ104に取り付ける。次に、図4(b)に例示したように、ディフレクタ106に、インフレータ104の周囲に巻きつけるようにして、曲げ加工を施す。
【0030】
図4(c)に例示したように、ディフレクタ106を、インフレータ104の周囲をほぼ一周するように巻きつけた後、第2孔部116a・116bにスタッドボルト110a・110bを通す。そしてその状態から、第2孔部116a・116b内にスタッドボルト110a・110bを滑らせるようにして、ディフレクタ106をさらに巻く。これによって図4(d)に例示したように、ディフレクタ106はインフレータ104に隙間無く接した、非常に小型の形態となる。この形態にて、ガス供給装置100はエアバッグに組み付けられ、さらに車両へと設置される。
【0031】
図5は、図4のディフレクタ106のエアバッグ作動時における変形過程を例示した図である。図5(a)は、ディフレクタ106が変形する前のガス供給装置100を例示している。図5(a)に例示するように、設置当初のディフレクタ106は、インフレータ104に巻きついている。図5(b)は、図5(a)の矢視図である。図5(b)に例示するように、設置当初のディフレクタ106は、インフレータ104との間に隙間が無い。この状態にて車両に衝撃が発生すると、インフレータ104が作動してガス噴出口108からガスが噴出し、ディフレクタ106に内側からガス圧G1がかけられる。
【0032】
図5(c)は、図5(a)の状態から変形したディフレクタ106を例示している。図5(c)に例示しているように、第2孔部116a・116bが長孔形状であることで、ディフレクタ106はその形状が固定されていない。この構成によって、ディフレクタ106は内側からガス圧G1がかけられることで、スタッドボルト110a・110bが第2孔部116a・116b内を巻き端側へ向かって相対的に移動ようにディフレクタ106は変形し、その巻きつけが一部解消される。このように変形することで、図5(d)(図5(d)は図5(c)の矢視図)に例示したように、ディフレクタ106の内径は広がる。そしてこの変形によって、ディフレクタ106とインフレータ104との間に隙間S1が生じ、この隙間S1を通って図5(c)のようにガスがインフレータ104の長手方向両側へと案内され、そのガスがサイドエアバッグ102(図1(a)参照)へと供給される。
【0033】
以上説明したディフレクタ106を備えることにより、当該ガス供給装置100およびサイドエアバッグ102は、作動前の設置時においてはより小型な形態となっているため、設置に場所をとらない。また、ディフレクタ106は、その組付けに溶接やボルト締め等が必要ない簡潔な構造であって、組付作業時の労力が減るため、部材単体としてだけでなく組付作業の面からもコストを抑えることが可能になっている。そして、ガス供給装置100の作動時においては、ディフレクタ106は金属製であることで優れた耐熱性を発揮することが可能である。
【0034】
(第1変形例)
図6は、図3のディフレクタ106の第1変形例を例示した図である。図6に例示したディフレクタ200は、第2孔部202a・202bの形状の点で、図3のディフレクタ106と異なっている。第2孔部202a・202bもまた巻きつけ方向D1に沿った長尺な形状であるが、この第2孔部202a・202bには幅を狭めるように干渉部204a・204bが設けられている。この干渉部204a・204bは、ガスの噴出時において、ガス圧G1(図8(a)参照)によってディフレクタ200の径が所定の大きさに広がったときに、第2孔部202a・202bに通されたスタッドボルト110a・110b(図8(a)参照)に干渉して、ディフレクタ200の径を所定の大きさに保持するためにはたらく部位である。
【0035】
図7は、図6のディフレクタ200をインフレータ104に取り付ける過程を例示した図である。図7(a)に例示したように、まず、ディフレクタ200は、第1孔部114a・114bおよび第2孔部202a・202bにスタッドボルト110a・110bを通してインフレータ104に巻きつける。そしてその状態から、スタッドボルト110a・110bが干渉部204a・204bを越えるよう、ディフレクタ200をさらに巻く。このようにして、図7(b)に例示したように、ディフレクタ200をインフレータ104に隙間無く接するように巻きつける。なお、干渉部204a・204bに対しては、スタッドボルト110a・110bを通過させた後にあらためてカシメを行うなど、これらスタッドボルト110a・110bが再び通過できないよう加工を施してもよい。
【0036】
図8は、図7のディフレクタ200のエアバッグ作動時における変形過程を例示した図である。図8(a)は、ディフレクタ200が変形する前のガス供給装置を例示している。図8(a)に例示したインフレータ104に巻きついた状態のディフレクタ200に対し、インフレータ104が作動すると内側からガス圧G1がかけられる。すると、図8(b)に例示しているように、ディフレクタ200はその巻きつけが一部解消されて、内径が広がるように変形する。この変形によってディフレクタ200とインフレータ104との間に隙間S1が生じ、ガスがエアバッグ(図1(a)参照)へと供給される。
【0037】
ここで、第2孔部202a・202bに干渉部204a・204bが設けられていてこの干渉部204a・204bがスタッドボルト110a・110bに干渉することで、ディフレクタ200の内径は必要以上に広がることはなくなっている。このように、干渉部204a・204bを任意の位置に設けることで、第2孔部202a・202bの大きさ(長さ)にかかわらず、ディフレクタ200のエアバッグ作動時における径を任意の大きさに設定することが可能になる。
【0038】
(第2変形例)
図9は、図3のディフレクタ106の第2変形例を例示した図である。図9に例示したディフレクタ300においても、第2孔部302a・302bの形状の点で、図3のディフレクタ106と異なっている。第2孔部302a・302bは、その両端部(端部304a・304bおよび端部306a・306b)がスタッドボルト110a・110bの径に応じた円形状となっていて、両端部以外は幅が狭められている(狭隘部308a・308b)。このディフレクタ300もまた、図4を参照して説明したディフレクタ106と同様に、インフレータ104へ巻きつけるようにして組み付ける。
【0039】
図10は、図9のエアバッグの作動時におけるディフレクタ300の変形過程を例示した図である。図10(a)には、ディフレクタ300が変形する前のガス供給装置を例示している。図10(a)に例示したインフレータ104に巻きついた状態のディフレクタ300では、端部306a・306bがスタッドボルト110a・110bにはまっていて、巻きつけが簡単には解消されなくなっている。
【0040】
そして、インフレータ104が作動すると内側からガス圧G1がかけられる。すると、端部306a・306bはスタッドボルト110a・110bから離れて、スタッドボルト110a・110bは狭隘部308a・308bを通り、端部304a・304bがスタッドボルト110a・110bにはまる。この変形によって、ディフレクタ300とインフレータ104との間に隙間S1が生じ、エアバッグへガスが供給される。このときも、端部304a・304bがスタッドボルト110a・110bにはまっていることで、ディフレクタ300の形態は安定している。
【0041】
上記説明したように、ディフレクタ300は、端部306a・306bがスタットボルト110a・110bにはまることで、巻きつけが簡単には解消されないため、設置時にはその形態を安定して維持することができる。また、ガスの噴出時においても、端部304a・304bがスタッドボルト110a・110bにはまるため、変形後の形態を安定して維持することができ、ガスの整流性能も安定する。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0043】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
また、上記実施形態においては本発明にかかるガス供給装置を自動車が備えるサイドエアバッグに適用した例を説明した。しかし、サイドエアバッグ以外の他の種類のエアバッグや、自動車以外の航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置、およびエアバッグ用のガス発生装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
R1 …ディフレクタの内径、R2 …インフレータの外径、D1 …巻きつけ方向、S1 …隙間、G1 …ガス圧、100 …ガス供給装置、101 …座席、102 …サイドエアバッグ、103 …ハウジング、104 …インフレータ、106・200・300 …ディフレクタ、108 …ガス噴出口、112 …コネクタ、114a・114b …第1孔部、116a・116b・202a・202b・302a・302b …第2孔部、204a・204b …干渉部、304a・304b・306a・306b …端部、308a・308b …狭隘部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグに取り付けられ、該エアバッグに膨張展開用のガスを供給するガス供給装置であって、
前記ガスを噴出するガス噴出口を外表面に有するシリンダ型のインフレータと、
板金からなり、前記インフレータの周囲に隙間無く巻きつけられ、少なくとも前記ガス噴出口を覆っているディフレクタと、を備え、
前記ディフレクタは、
円形の第1孔部と、
前記第1孔部から該ディフレクタの巻き端側へ離れた位置に設けられ、該ディフレクタの巻かれる方向に沿って長尺であり、前記第1孔部と重なっている第2孔部と、を有し、
前記インフレータはさらに、前記外表面から突出し前記第1孔部および第2孔部を通って車両に締結される1以上のスタッドボルトを有し、
前記ディフレクタが前記ガス噴出口からのガスを受けることで、前記スタッドボルトが前記長尺の第2孔部の巻き端側に相対的に移動するように該ディフレクタの巻きつけが一部解消されてその径が所定の大きさに広がることを特徴とするガス供給装置。
【請求項2】
前記第2孔部は、該第2孔部の幅を狭めるよう設けられて前記スタッドボルトに干渉する干渉部であって、前記ディフレクタの径が所定の大きさに広がったときに該スタッドボルトに干渉する干渉部を有することを特徴とする請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記第2孔部は、その両端部が前記スタッドボルトの径に応じた円形状となっていて、該両端部以外は幅が狭められていることを特徴とする請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記ディフレクタは、材質に軟鋼が用いられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のガス供給装置を備えることを特徴とするエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−112217(P2013−112217A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260912(P2011−260912)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
【Fターム(参考)】