説明

ガス供給装置

【課題】においの原因となる物質の濃度を制御し、においの原因となる物質を安定的に供給することが可能なガス供給装置を提供することを目的とする。
【解決手段】においの原因となる物質20を収容する収容部2と、収容部2から放出された物質20をキャリアガスにのせて供給する第1配管31と、希釈ガスを供給する第2配管41と、第1配管31から供給された物質20を含むキャリアガスと第2配管41から供給された希釈ガスとが混合された混合ガスを供給する第3配管42と、収容部2の質量を測定する測定装置6と、収容部2の質量の時間変化に基づいて、収容部2から放出された物質20の量を演算する演算装置7と、演算装置7で演算された物質20の量に基づいて、混合ガス内の物質20の濃度が所望の濃度になるように、第1配管31内を流れるキャリアガスの流量と第2配管41内を流れる希釈ガスの流量とを制御する制御装置8と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
においを検知する嗅覚センサーが知られている。嗅覚センサーの開発においては、においの原因となる物質であるにおい分子の濃度を制御し、におい分子を嗅覚センサーに安定的に供給するガス供給装置の開発が求められている。
【0003】
ここで、におい分子の種類は40万種類といわれている。におい分子は、複数の化学物質の組合せからなるものがほとんどで、その種類は膨大である。においの種類は化学構造や温度、濃度、混合比率などで大まかに分けられるが、大部分はヒトが官能的に分けている。同じ化学構造であっても、温度が違ったり、酸化反応や還元反応等の反応方法が違ったりすると、異なるにおい分子となる。におい分子の多くは、濃度がppmオーダー以下(例えばppbオーダー)であり、非常に低濃度である。そのため、におい分子の濃度を測定することは困難である。
【0004】
従来、におい分子を供給する方法としては、拡散管、ディフュージョンチューブ、パーミエーションチューブ等を用いた方法がある(例えば、特許文献1参照)。これらの方法では、拡散方程式、推算、実験的に求めた拡散係数を用いることにより、におい分子の濃度を調整している。これらの方法によれば、連続して一定濃度のにおい分子を得ることができる。
【0005】
一方、におい分子の濃度を検知する検知器としては、北川式検知器が知られている。北川式検知器においては、検知管に試料ガス(測定対象のにおい分子を含むガス)を通気すると、薬剤が特定のガスと反応して変色する。この変色した先端の目盛を読むことで、ガス濃度(におい分子の濃度)が分かるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−101685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、使用実績の無いにおい分子がある場合、その都度実験を行い、拡散管から発せられるにおい分子の濃度を算出する必要がある。また、特許文献1に記載の方法においては、拡散管の形状が定形であるため、拡散管から発せられるにおい分子の濃度を自在に調整することは困難である。
一方、北川式検知器では、測定可能なにおい分子の種類が限られる。さらに、呈色反応によるため、干渉物質があると濃度の測定が困難な場合もある。北川式検知器においては、最低測定能(測定下限)はそれぞれ異なるが、低くてもppmオーダーであるため、ppmオーダー以下の低濃度のにおい分子の濃度を測定することはできない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、においの原因となる物質の濃度を制御し、においの原因となる物質を安定的に供給することが可能なガス供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のガス供給装置は、においの原因となる物質を収容する収容部と、前記収容部から放出された前記物質をキャリアガスにのせて供給する第1配管と、希釈ガスを供給する第2配管と、前記第1配管から供給された前記物質を含む前記キャリアガスと前記第2配管から供給された前記希釈ガスとが少なくとも混合された混合ガスを供給する第3配管と、前記収容部の質量を測定する測定装置と、前記測定装置で測定された前記収容部の質量の時間変化に基づいて、前記収容部から放出された前記物質の量を演算する演算装置と、前記演算装置で演算された前記物質の量に基づいて、前記混合ガス内の前記物質の濃度が所望の濃度になるように、前記第1配管内を流れる前記キャリアガスの流量と前記第2配管内を流れる前記希釈ガスの流量との少なくとも一方の流量を制御する制御装置と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、収容部の質量の時間変化に基づいて演算された、収容部から放出されたにおいの原因となる物質(以下、におい分子という)の量に基づいて、収容部から放出されたにおい分子の濃度が所望の濃度となるように、キャリアガスと希釈ガスのうち少なくとも一方の流量が制御される。例えば、収容部から放出されたにおい分子の濃度を低濃度に調整する場合、キャリアガスの流量を小さくし、希釈ガスの流量を大きくする。これにより、収容部から放出されたにおい分子の濃度を低濃度に調整することができる。また、収容部から放出されたにおい分子の濃度を低濃度に維持した状態でキャリアガスの流量及び希釈ガスの流量を一定の値に制御する。これにより、低濃度のにおい分子を安定して供給することができる。よって、におい分子の濃度を制御し、におい分子を安定的に供給することができる。
【0011】
前記ガス供給装置において、前記収容部は、前記物質を収容する容器と、前記容器から放出された前記物質を拡散させる拡散管と、を含むことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、混合ガス供給配管内を流れる混合ガス内のにおい分子の濃度を極めて小さい値に調整しやすくなる。例えば、拡散管の長さ(高さ)や内径を所定寸法にして拡散方程式を適用することにより、拡散管の出口におけるにおい分子の流量を極めて小さく(例えば略0に近い値)設定することができる。
【0013】
前記ガス供給装置において、前記拡散管は前記容器に取り外し可能に接続されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、他の形状の異なる拡散管と取り替えることができる。例えば、予め拡散管の長さや内径が互いに異なる複数種類の拡散管を用意しておけば、所望の濃度のにおい分子を得るのに適した寸法を有する拡散管と適宜取り替えることができる。よって、所望の濃度のにおい分子を供給することが容易となる。
【0015】
前記ガス供給装置において、前記容器は前記物質と化学反応しない材料で形成されていることが好ましい。
【0016】
におい分子は、同じ化学構造であっても、酸化反応や還元反応等の反応方法が違ったりすると、異なるにおい分子となる。仮に、容器がにおい分子と化学反応する材料で形成されていると、目的とするにおい分子とは異なるにおい分子が生成されてしまう。また、容器とにおい分子が吸着しやすい材料で形成されていると、所望の濃度と異なるにおいとなってしまう。これに伴い、低濃度のにおい分子の濃度を精度良く測定できなくなる。これに対し、容器がにおい分子と吸着、化学反応しない材料で形成されていれば、目的とするにおい分子を得ることができる。よって、この構成によれば、低濃度のにおい分子を安定的に供給するとともに低濃度のにおい分子の濃度を精度良く測定することができる。
【0017】
前記ガス供給装置において、前記物質は液体状態で前記容器に収容されており、前記拡散管は、液体状態の前記物質から揮発された気体と化学反応しない材料で形成されていることが好ましい。
【0018】
におい分子が液体状態で容器に収容される場合には、液体から揮発された気体がにおい分子を含んだ状態で拡散管から放出される。仮に、拡散管がにおい分子を含んだ気体と化学反応する材料で形成されていると、目的とするにおい分子とは異なるにおい分子が生成されてしまう。また、拡散管や容器とにおい分子が吸着しやすい材料で形成されていると、所望の濃度と異なるにおいとなってしまう。これに伴い、低濃度のにおい分子の濃度を精度良く測定できなくなる。これに対し、拡散管がにおい分子と吸着、におい分子を含んだ気体と化学反応しない材料で形成されていれば、目的とするにおい分子を得ることができる。よって、この構成によれば、低濃度のにおい分子を安定的に供給するとともに低濃度のにおい分子の濃度を精度良く測定することができる。
【0019】
前記ガス供給装置において、前記容器の内壁面及び前記拡散管の内壁面は撥液処理されていることが好ましい。
【0020】
におい分子が液体状態で容器に収容される場合には、液体から揮発された気体がにおい分子を含んだ状態で拡散管から放出される。容器の内壁面及び拡散管の内壁面が撥液処理されていないと、におい分子が容器の内壁面または拡散管の内壁面に吸着することがある。この場合、理想的な拡散状態が得られなくなり、低濃度のにおい分子の濃度を精度良く測定することが困難となる。これに対し、容器の内壁面及び拡散管の内壁面が撥液処理されていれば、におい分子が容器の内壁面または拡散管の内壁面に吸着しにくくできるため、理想的な拡散状態を得ることができる。よって、この構成によれば、低濃度のにおい分子を安定的に供給するとともに低濃度のにおい分子の濃度を精度良く測定することができる。
【0021】
前記ガス供給装置において、前記演算装置は、前記測定装置が第1の時刻t1に測定した前記収容部の質量をm1、前記測定装置が前記第1の時刻t1から所定時間経過後の第2の時刻t2に測定した前記収容部の質量をm2、前記物質の分子量をw、大気圧をP、前記収容部が前記物質を収容する空間の体積をV、前記物質の物質量をn、気体定数をR、前記拡散管の内部の温度をK、前記拡散管の出口における前記物質の流量をD1、前記第1配管から前記第3配管に供給される前記キャリアガスの流量及び前記第2配管から前記第3配管に供給される前記希釈ガスの流量の総流量をD2、前記第2の時刻t2における前記第3配管内を流れる前記混合ガス内の前記物質の濃度をGとしたとき、下記(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式によって前記第3配管内を流れる前記混合ガス内の前記物質の濃度を演算することが好ましい。
PV=nRT ・・・(1)
n=(m1−m2)/w ・・・(2)
D1=V/(t2−t1) ・・・(3)
G=D1/D2 ・・・(4)
【0022】
この構成によれば、収容部の質量の時間変化に基づいて、収容部から放出された低濃度のにおい分子の濃度を容易に演算することができる。また、これらの式に基づいて、拡散管の出口における低濃度のにおい分子の流量、におい分子の物質量も容易に演算することができる。
【0023】
前記ガス供給装置において、前記測定装置の最低測定能は1mg以下であることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、濃度がppmオーダー以下の低濃度のにおい分子の濃度の測定を実現することができる。これと反対に、測定装置の最低測定能が1mgを超えてしまうと、質量変化を観測するのに長時間要し、濃度がppmオーダー以下の低濃度のにおい分子の濃度を測定することが困難となる。
上述したように、におい分子の質量は、測定装置で測定された収容部の質量の時間変化に基づいて演算される。ここで、「測定装置の最低測定能」は、測定装置が測定可能な最低の質量(測定下限値)である。測定時間の最低分解能は、測定装置の最低測定能に相当する質量のにおい分子が収容部から放出されるまでの時間(測定下限値が変化する時間)である。つまり、測定装置の最低測定能が小さいほど測定時間の最低分解能も小さくなる。これにより、実際に装置を使用しているときに収容部から放出されるにおい分子の濃度をリアルタイムで測定しやすくなる。
【0025】
前記ガス供給装置において、前記第3配管には、前記第3配管内を流れる前記混合ガスに乱流を発生させる乱流発生機構が設けられていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、キャリアガスと希釈ガスとを均一に混合することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することが容易となる。
【0027】
前記ガス供給装置において、前記第1配管に、前記第1配管から前記第3配管への前記キャリアガスの供給量を制御するキャリアガス制御弁が設けられていることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、所望の量のにおい分子を供給することができる。
【0029】
前記ガス供給装置において、前記第1配管に、前記キャリアガス制御弁によって前記第3配管への供給が阻止された前記キャリアガスを排気するキャリアガス排気弁が設けられていることが好ましい。
【0030】
低濃度のにおい分子を安定して供給するに際しては、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することが重要である。この構成によれば、キャリアガスが第3配管に供給されないようにキャリアガスを排気することができる。これにより、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0031】
前記ガス供給装置において、前記第1配管には、常時一定の流量の前記キャリアガスが供給されることが好ましい。
【0032】
この構成によれば、キャリアガスの供給量を常時一定にした状態でキャリアガスが第3配管に供給されないようにキャリアガスを排気することができる。これにより、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0033】
前記ガス供給装置において、互いに異なる種類の物質を収容した複数の前記収容部が設けられ、前記第1配管は、複数の前記収容部の各々に対応して複数設けられており、前記第3配管には、複数の前記収容部から放出された前記物質を含む複数の前記キャリアガスが供給されるようになっていることが好ましい。
【0034】
この構成によれば、複数種類のにおい分子を混合させて様々な種類のにおい分子を生成することができる。
【0035】
前記ガス供給装置において、複数の前記第1配管の各々に、前記第1配管から前記第3配管への前記キャリアガスの供給量を制御するキャリアガス制御弁が設けられていることが好ましい。
【0036】
この構成によれば、複数種類のにおい分子のうち所望のにおい分子を選択して混合させ様々な種類のにおい分子を生成することができる。また、複数種類のにおい分子に対応するキャリアガスの供給量を調整すれば、それぞれのキャリアガスに含まれるにおい分子の混合比を変えて所望のにおい分子を生成することもできる。
【0037】
前記ガス供給装置において、複数の前記第1配管の各々に、前記キャリアガス制御弁によって前記第3配管への供給が阻止された前記キャリアガスを排気するキャリアガス排気弁が設けられていることが好ましい。
【0038】
低濃度のにおい分子を安定して供給するに際しては、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することが重要である。この構成によれば、キャリアガスが第3配管に供給されないようにキャリアガスを排気することができる。これにより、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0039】
前記ガス供給装置において、複数の前記第1配管の各々には、常時一定の流量の前記キャリアガスが供給されることが好ましい。
【0040】
この構成によれば、キャリアガスの供給量を常時一定にした状態でキャリアガスが第3配管に供給されないようにキャリアガスを排気することができる。これにより、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0041】
前記ガス供給装置において、前記第3配管にダミーガスを供給する第4配管を備え、前記制御装置は、前記第3配管内を流れる前記ダミーガス、前記キャリアガス及び前記希釈ガスを含む前記混合ガスの流量が常時一定となるように、前記第4配管から前記第3配管に供給されるダミーガスの流量を制御することが好ましい。
【0042】
この構成によれば、ダミーガスとキャリアガスと希釈ガスの総流量が常時一定に維持される。よって、低濃度のにおい分子を常時安定的に供給することができる。
【0043】
前記ガス供給装置において、前記第4配管に、前記第4配管から前記第3配管への前記ダミーガスの供給量を制御するダミーガス制御弁と、前記ダミーガス制御弁によって前記第3配管への供給が阻止された前記ダミーガスを排気するダミーガス排気弁と、が設けられていることが好ましい。
【0044】
低濃度のにおい分子を安定して供給するに際しては、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することが重要である。この構成によれば、ダミーガスが第3配管に供給されないようにダミーガスを排気することができる。これにより、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0045】
前記ガス供給装置において、前記第4配管には、常時一定の流量のダミーガスが供給されることが好ましい。
【0046】
この構成によれば、ダミーガスの供給量を常時一定にした状態でダミーガスが第3配管に供給されないようにダミーガスを排気することができる。これにより、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0047】
前記ガス供給装置において、前記キャリアガス、前記希釈ガス及び前記ダミーガスとして互いに同じガスが用いられていることが好ましい。
【0048】
この構成によれば、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0049】
前記ガス供給装置において、前記キャリアガス、前記希釈ガス及び前記ダミーガスとして用いられるガスは、空気または窒素であることが好ましい。
【0050】
この構成によれば、既知のガスを用いるため、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持しやすくなる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス供給装置を示す模式図である。
【図2】同、収容部を示す模式図である。
【図3】同、拡散管とキャリアガス供給配管との接続状態を示す模式図である。
【図4】同、ゴムリングの平面図である。
【図5】同、測定装置で測定された収容部の質量の時間変化を示すグラフである。
【図6】同、拡散管とキャリアガス供給配管との接続状態の変形例を示す模式図である。
【図7】同、乱流発生機構の変形例を示す模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るガス供給装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0053】
(第1実施形態)
本実施形態においては、においの原因となる物質、つまりにおいを持った分子(以下、におい分子という)を嗅覚センサーに導くガスを供給するガス供給装置を例に挙げて説明する。ここで、においとは、嗅覚を刺激され人が感じる感覚をいう。においには、良いにおい(香り)、悪いにおい(臭い)のいずれもが含まれる。
【0054】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガス供給装置1を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係るガス供給装置1は、ガス供給部10と、希釈ガス供給装置4と、ダミーガス供給装置5と、演算装置7と、制御装置8と、混合ガス供給配管(第3配管)42と、乱流発生機構9と、を備えて構成されている。
【0055】
ガス供給部10は、収容部2と、キャリアガス供給装置3と、測定装置6と、を備えている。
【0056】
図2は、本実施形態に係る収容部2を示す模式図である。
図2に示すように、収容部2は、におい分子20を収容する容器21と、容器21から放出されたにおい分子20を拡散させる拡散管22と、を有する。
【0057】
本実施形態においては、におい分子20は液体状態で容器21に収容されている。なお、におい分子20の収容状態は液体状態に限らず、固体状態や気体状態など種々の収容状態を採用することができる。
【0058】
におい分子20としては、種々のものを用いることができ、例えばトルエン、エタノールを挙げることができる。本実施形態においては、におい分子20としてトルエンを用いる。
【0059】
容器21は、拡散管22と接続される部分(上部)に開口21aが形成された円筒状の容器である。開口21aの内径は、10mm以上が好ましい。開口21aの内径が10mm未満であると、一般的に化学実験で用いられる器具(例えばピペット等)で液体を注入することが困難となる。なお、容器21の形状は円筒状に限らず、上部に開口21aが形成されていれば、種々の形状を採用することができる。
【0060】
拡散管22は、本体部221と接続部222とを有する。本体部221は、容器21と接続される部分とは反対側の部分である。接続部222は、容器21と接続される部分である。拡散管22は、本体部221の上部に開口221aが形成され、接続部222の下部に開口222aが形成された管である。
【0061】
拡散管22の本体部221は、長手方向において一定の内径を有する。拡散管22の本体部221の内径は、1mm〜15mm程度が好ましい。拡散管22の本体部221の長さは、10mm以上が好ましい。なお、拡散管22の本体部221の内径、長さはこれに限定されず、種々の形状を採用することができる。
【0062】
拡散管22の接続部222は、容器21から取り外し可能に接続されている。拡散管22の接続部222と容器21とは気密性よく接続されている。
【0063】
容器21と拡散管22の接続部222との接続は、取り扱い性の観点からスクリュー方式を採用している。例えば、容器21の上部の外壁面には、開口21aの周方向に沿って凸状の突起21bが形成されている。一方、拡散管22の接続部222の下部の内壁面には、開口222aの周方向に沿って凹状の溝222bが形成されている。
【0064】
このような構成により、容器21と拡散管22の接続部222との接続は、スクリュー方式で接続される。例えば、容器21ににおい分子20の液体を注入した後、容器21に拡散管22の接続部222を押し当てて時計回りに回転させる。すると、容器21と拡散管22の接続部222とは、容器21の上部の外壁面に形成された突起21bが拡散管22の接続部222の下部の内壁面に形成された溝222bに嵌合した状態で接続される。
【0065】
なお、本実施形態においては、容器21の上部の外壁面に凸状の突起21bが形成され、拡散管22の接続部222の下部の内壁面に凹状の溝222bが形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、容器21の上部の外壁面に凹状の溝が形成され、拡散管22の接続部222の下部の内壁面に凸状の突起が形成されていてもよく、種々の形状を採用することができる。
【0066】
また、容器21と拡散管22の接続部222との接続は、スクリュー方式に限らない。別途器具を用いなくても容器21と拡散管22の接続部222との着脱が可能であれば、種々の接続方式を採用することができる。
【0067】
容器21は、におい分子20と化学反応しない材料で形成されている。また、容器21は、揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compounds)に耐性を有する材料で形成されている。また、容器21は、容器自体からVOCを発生しない材料で形成されている。例えば、容器21の形成材料としては、ガラス、石英、ステンレス、テフロン(登録商標)を用いる。
【0068】
拡散管22は、液体状態のにおい分子20から揮発された気体と化学反応しない材料で形成されている。また、拡散管22は、容器21と同様、揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compounds)に耐性を有する材料で形成されている。また、拡散管22は、拡散管自体からVOCを発生しない材料で形成されている。例えば、拡散管22の形成材料としては、ガラス、石英、ステンレス、テフロン(登録商標)を用いる。
【0069】
容器21の内壁面及び拡散管の内壁面は撥液処理されている。例えば、撥液処理としては、容器21の内壁面及び拡散管の内壁面にフッ素コーティングを施す。
【0070】
図1に戻り、キャリアガス供給装置3は、キャリアガス用流量制御装置30と、キャリアガス供給配管(第1配管)31と、温度計32と、キャリアガス排気管33と、キャリアガス制御弁34と、キャリアガス排気弁35と、を備えている。キャリアガス供給装置3は、収容部2の拡散管22から放出されたにおい分子20を運ぶキャリアガスを供給する。
【0071】
キャリアガス用流量制御装置30は、制御装置8の制御信号に基づいて、キャリアガス供給配管31内のキャリアガスの流量を制御する。本実施形態において、キャリアガス供給配管31には、常時一定の流量のキャリアガスが供給される。
【0072】
例えば、キャリアガス用流量制御装置30は、キャリアガスの流量を拡散管22の出口におけるにおい分子20の流量の10倍以上の流量に制御する。この場合、拡散管22の出口におけるにおい分子20の流量が0に近づく。これにより、拡散方程式で得られる結果(混合ガス供給配管42内を流れる混合ガス内のにおい分子20の濃度)の再現性を高めることができる。
【0073】
キャリアガスとして用いるガスは、空気または窒素を用いることが好ましい。本実施形態では、キャリアガスとして窒素を用いる。なお、キャリアガスはこれに限らず、種々のガスを用いることができる。
【0074】
キャリアガス供給配管31は、キャリアガス用流量制御装置30により流量が調整されたキャリアガスを導く。キャリアガス供給配管31の一部は、拡散管22の出口部分と接続されている。これにより、キャリアガス供給配管31における拡散管22の出口部分と合流した後の経路では、拡散管22から放出されたにおい分子20を含んだキャリアガスが流れる。
【0075】
図3は、拡散管22とキャリアガス供給配管31との接続状態を示す模式図である。図3は、図1に示すα部分の詳細を示す拡大図である。図3において符号d1は拡散管22の外径である。
【0076】
図3に示すように、キャリアガス供給配管31の一部には拡散管22の出口部分が挿通されている。これにより、拡散管22から放出されたにおい分子20がキャリアガス供給配管31の内部に導かれる。
【0077】
拡散管22とキャリアガス供給配管31とは、ゴムリング23と、固定板24と、固定ネジ25とを用いて接続されている。拡散管22の出口近傍にはゴムリング23が嵌め込まれている。
【0078】
図4は、ゴムリング23の平面図である。図4において符号d2はゴムリング23の内径である。
【0079】
ゴムリング23の内径d2は、拡散管22の外径d1よりも小さい(d1>d2)。このため、拡散管22はゴムリング23に圧入される。これにより、拡散管22の外壁面とゴムリング23の内側部分とが隙間なく密着する。
【0080】
図3に戻り、ゴムリング23に圧入された拡散管22とキャリアガス供給配管31とは、ゴムリング23を挟んで固定板24及び固定ネジ25により固定されている。これにより、キャリアガス供給配管31の外壁面とゴムリング23の外側部分とが隙間なく密着する。
【0081】
このような構成により、拡散管22とキャリアガス供給配管31とは隙間なく接続される。このため、拡散管22とキャリアガス供給配管31との気密性を高めることができる。
【0082】
図1に戻り、温度計32は、キャリアガス供給配管31において拡散管22の出口部分が接続された部分の近くに配置されている。温度計32は、拡散管22の出口付近(拡散管22の内部)の温度を測定する。
【0083】
なお、温度計32の配置位置は、好ましくは、キャリアガス供給配管31において拡散管22の出口部分の直上に配置するのがよく、さらに好ましくは、拡散管22の内部に配置するのがよい。これにより、拡散管22の内部の温度を精度良く測定することができる。
【0084】
キャリアガス排気管33、キャリアガス制御弁34及びキャリアガス排気弁35は、キャリアガス供給配管31の下流側(後述する希釈ガス供給配管41に近い側)に接続されている。
【0085】
キャリアガス排気管33は、キャリアガス供給配管31から供給されるキャリアガスを排気する管である。キャリアガス制御弁34は、キャリアガス供給配管31から混合ガス供給配管(第3配管)42へのキャリアガスの供給量を制御する弁である。キャリアガス排気管33には、キャリアガス制御弁34によって混合ガス供給配管42への供給が阻止されたキャリアガスを排気するキャリアガス排気弁35が設けられている。キャリアガス排気弁35は、キャリアガス排気管33を開閉する弁である。例えば、キャリアガス制御弁34及びキャリアガス排気弁35としては、三方弁を用いる。例えば、この三方弁は、キャリアガス供給配管31の流路、キャリアガス排気管33の流路を全開もしくは全閉のいずれかの状態に制御する電磁弁(方向制御弁)である。
【0086】
測定装置6は、収容部2の下側に配置されている。測定装置6は、収容部2の質量を測定する。例えば、測定装置6としては、天秤を用いる。なお、測定装置6としては、これに限らず種々のものを用いることができるが、収容部2の質量を正確に測定可能な質量計測器を用いることが好ましい。
【0087】
例えば、測定装置6の最低測定能は0.1mgである。ここで、「測定装置6の最低測定能」は、測定装置6が測定可能な最低の質量(測定下限値)である。なお、測定装置6の最低測定能は1mg以下であることが好ましい。これにより、濃度がppmオーダー以下の低濃度のにおい分子20の濃度の測定を実現することができる。これと反対に、測定装置6の最低測定能が1mgを超えてしまうと、濃度がppmオーダー以下の低濃度のにおい分子20の濃度を測定することが困難となる。
【0088】
希釈ガス供給装置4は、希釈ガス用流量制御装置40と、希釈ガス供給配管(第2配管)41と、を備えている。希釈ガス供給装置4は、収容部2の拡散管22から放出されたにおい分子20の濃度を希釈する希釈ガスを供給する。
【0089】
希釈ガス用流量制御装置40は、制御装置8の制御信号に基づいて、希釈ガス供給配管41内のキャリアガスの流量を制御する。
【0090】
希釈ガスとして用いるガスは、空気または窒素を用いることが好ましい。本実施形態では、希釈ガスとしてキャリアガスと同様に窒素を用いる。なお、希釈ガスはこれに限らず、キャリアガスと同様のガスであれば種々のガスを用いることができる。
【0091】
希釈ガス供給配管41は、希釈ガス用流量制御装置40により流量が調整された希釈ガスを導く。希釈ガス供給配管41の出口部分は、キャリアガス供給配管31の出口部分と接続されている。希釈ガス供給配管41の出口部分とキャリアガス供給配管31の出口部分とは、混合ガス供給配管42に接続されている。これにより、混合ガス供給配管42には、拡散管22から放出されたにおい分子20を含んだキャリアガスと希釈ガスとの混合ガスが流れる。
【0092】
ダミーガス供給装置5は、ダミーガス用流量制御装置50と、ダミーガス供給配管(第4配管)51と、温度計52と、ダミーガス排気管53と、ダミーガス制御弁54と、ダミーガス排気弁55と、を備えている。ダミーガス供給装置5は、ダミーガス供給装置5から供給されるダミーガス、キャリアガス供給装置3から供給されるキャリアガス及び希釈ガス供給装置4から供給される希釈ガスを含む混合ガスの流量が常時一定になるようダミーガスを供給する。
【0093】
ダミーガス用流量制御装置50は、制御装置8の制御信号に基づいて、ダミーガス供給配管51内のダミーガスの流量を制御する。本実施形態において、ダミーガス供給配管51には、常時一定の流量のダミーガスが供給される。
【0094】
例えば、ダミーガス用流量制御装置50は、ダミーガスの流量をキャリアガス供給配管31から供給されるキャリアガスの流量と同量の流量に制御する。言い換えると、ダミーガス用流量制御装置50は、キャリアガス供給配管31から本来供給されるべきキャリアガスの流量が所定の値に満たないときに、その不足分に相当する流量のダミーガスを供給するよう制御する。これにより、キャリアガス供給配管31から供給されるキャリアガスの流量及び希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスの流量の総流量が常時一定になるよう調整される。
【0095】
ダミーガスとして用いるガスは、空気または窒素を用いることが好ましい。本実施形態では、ダミーガスとしてキャリアガスと同様に窒素を用いる。なお、ダミーガスはこれに限らず、キャリアガスと同様であれば種々のガスを用いることができる。
【0096】
ダミーガス供給配管51は、ダミーガス用流量制御装置50により流量が調整されたダミーガスを導く。ダミーガス供給配管51の出口部分は、混合ガス供給配管42の一部と接続されている。これにより、混合ガス供給配管42におけるダミーガス供給配管51の出口部分と合流した後の経路では、拡散管22から放出されたにおい分子20を含んだキャリアガスと希釈ガスとダミーガスとの混合ガス(ただし、キャリアガスの供給を完全に停止させた場合は希釈ガスとダミーガスとの混合ガス)が流れる。
【0097】
温度計52は、ダミーガス供給配管51においてダミーガス用流量制御装置50とダミーガス制御弁54との間に配置されている。温度計52は、ダミーガス供給配管51の内部の温度を測定する。
【0098】
ダミーガス排気管53、ダミーガス制御弁54及びダミーガス供給弁55は、ダミーガス供給配管51の下流側(希釈ガス供給配管41に近い側)に接続されている。
【0099】
ダミーガス排気管53は、ダミーガス供給配管51から供給されるダミーガスを排気する管である。ダミーガス制御弁54は、ダミーガス供給配管51から混合ガス供給配管42へのダミーガスの供給量を制御する弁である。ダミーガス排気管53には、ダミーガス制御弁54によって混合ガス供給配管42への供給が阻止されたダミーガスを排気するダミーガス排気弁55が設けられている。ダミーガス排気弁55は、ダミーガス排気管53を開閉する弁である。例えば、ダミーガス制御弁54及びダミーガス排気弁55としては、三方弁を用いる。例えば、この三方弁は、ダミーガス供給配管51の流路、ダミーガス排気管53の流路を全開もしくは全閉のいずれかの状態に制御する電磁弁(方向制御弁)である。
【0100】
演算装置7は、測定装置6で測定された収容部2の質量の時間変化に基づいて、収容部2から放出されたにおい分子20の量を演算する。
【0101】
図5は、測定装置6で測定された収容部2の質量の時間変化を示すグラフである。
図5において、横軸は測定時間、縦軸は収容部2の質量である。図5において、符号t1は第1の時刻、符号t2は第1の時刻から所定時間経過後の第2の時刻である。
【0102】
図5に示すように、測定時間と収容部2の質量との関係は比例関係を有する。測定時間が経過するにつれて拡散管22からにおい分子20が徐々に放出されることにより、収容部2の質量は減少していく。
【0103】
演算装置7は、第1の時刻t1から第2の時刻t2の間における収容部2の質量の時間変化に基づいて、収容部2から放出されたにおい分子20の量(例えば質量)を演算する。
【0104】
上述したように、におい分子の質量は、測定装置6で測定された収容部2の質量の時間変化に基づいて演算される。ここで、「測定装置の最低測定能」は、測定装置が測定可能な最低の質量(測定下限値)である。測定時間の最低分解能は、測定装置の最低測定能に相当する質量のにおい分子が収容部から放出されるまでの時間(測定下限値が変化する時間)である。つまり、測定装置6の最低測定能が小さいほど測定時間の最低分解能も小さくなる。本実施形態では、測定装置6の最低測定能は0.1mgであるため、0.1mgのにおい分子20が収容部2から放出されるまでの時間が測定時間の最低分解能となる。
【0105】
演算装置7は、下記(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式によって混合ガス供給配管42内を流れる混合ガス内のにおい分子20の濃度を演算する。
【0106】
PV=nRT ・・・(1)
n=(m1−m2)/w ・・・(2)
D1=V/(t2−t1) ・・・(3)
G=D1/D2 ・・・(4)
【0107】
ここで、測定装置6が第1の時刻t1に測定した収容部2の質量をm1、測定装置6が第1の時刻t1から所定時間経過後の第2の時刻t2に測定した収容部2の質量をm2、におい分子20の分子量をw、大気圧をP、収容部2がにおい分子20を収容する空間の体積をV、におい分子の物質量をn、気体定数をR、拡散管22の内部の温度をK、拡散管22の出口におけるにおい分子20の流量をD1、キャリアガス供給配管31から混合ガス供給配管42に供給されるキャリアガスの流量及び希釈ガス供給配管41から混合ガス供給配管42に供給される希釈ガスの流量の総流量をD2、第2の時刻t2における混合ガス供給配管42内を流れる混合ガス内のにおい分子20の濃度をGとする。
【0108】
本実施形態において、におい分子20の分子量wは、トルエンの分子量を用いる。第1の時刻t1、第2の時刻t2は、図示しないタイマーにより測定された値を用いる。大気圧Pは、図示しない大気圧計により測定された値を用いる。収容部2がにおい分子20を収容する空間の体積Vは、容器21の容積(ただし、におい分子20の体積を除く)と拡散管22の容積とを足し合わせた値を用いる。におい分子20の物質量nは、トルエンの物質量を用いる。拡散管22の内部の温度Kは、温度計32により測定された値を用いる。
【0109】
図1に戻り、制御装置8は、キャリアガス用流量制御装置30、希釈ガス用流量制御装置40、ダミーガス用流量制御装置50、キャリアガス制御弁34、キャリアガス排気弁35、ダミーガス制御弁54、ダミーガス排気弁55、演算装置7を統括制御する。
【0110】
制御装置8は、演算装置7で演算されたにおい分子20の量に基づいて、収容部2から放出されたにおい分子20の濃度が所望の濃度となるように、キャリアガス供給配管31から供給されるキャリアガスと希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスの少なくとも一方の流量を制御する。
【0111】
また、制御装置8は、キャリアガス制御弁34とダミーガス制御弁54の少なくとも一方の弁の開閉動作を制御する。
【0112】
本実施形態において、制御装置8は以下の制御を行う。
キャリアガス供給配管31から供給されるキャリアガスと希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスとを混合させる場合には、キャリアガス制御弁34を開いた状態に制御しかつキャリアガス排気弁35を閉じた状態に制御する。このとき、ダミーガス制御弁54を閉じた状態に制御しかつダミーガス排気弁55を開いた状態に制御する。
一方、キャリアガス供給配管31から供給されるキャリアガスと希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスとを混合させない場合には、キャリアガス制御弁34を閉じた状態に制御しかつキャリアガス排気弁35を開いた状態に制御する。このとき、ダミーガス制御弁54を開いた状態に制御しかつダミーガス排気弁55を閉じた状態に制御する。
【0113】
混合ガス供給配管42には、混合ガス供給配管42内を流れる混合ガスに乱流を発生させる乱流発生機構9が設けられている。
【0114】
乱流発生機構9は、希釈ガス供給配管41の下流側の部分を流れる流体の流れの状態を時間的、空間的に不規則に変動させる。本実施形態において、乱流発生機構9は、混合ガス供給配管42の下流側の部分を複数箇所で折り曲げることによって構成されている。乱流発生機構9は、いわゆるミキシング流路である。これにより、混合ガスは、乱流発生機構9を通過する過程で、混合ガス供給配管42の下流側の部分の内壁面で衝突を複数回繰り返してミキシングされる。ミキシングされた混合ガスは、図示しない次工程の装置(例えば嗅覚センサー)に供給される。
【0115】
本実施形態のガス供給装置1によれば、収容部2の質量の時間変化に基づいて演算されたにおい分子20の量に基づいて、収容部2から放出されたにおい分子20の濃度が所望の濃度となるように、キャリアガスと希釈ガスのうち少なくとも一方の流量が制御される。例えば、収容部2から放出されたにおい分子20の濃度を低濃度に調整する場合、キャリアガスの流量を小さくし、希釈ガスの流量を大きくする。これにより、収容部2から放出されたにおい分子20の濃度を低濃度に調整することができる。また、収容部2から放出されたにおい分子20の濃度を低濃度に維持した状態でキャリアガスの流量及び希釈ガスの流量を一定の値に制御する。これにより、低濃度のにおい分子を安定して供給することができる。さらに、収容部2の質量の時間変化に基づいて、収容部2から放出された低濃度のにおい分子の濃度を演算することもできる。よって、におい分子20の濃度を制御し、におい分子20を安定的に供給することができる。
【0116】
また、この構成によれば、混合ガス供給配管42内を流れる混合ガス内のにおい分子20の濃度を極めて小さい値に調整しやすくなる。例えば、拡散管22の長さ(高さ)や内径を所定寸法にして拡散方程式を適用することにより、拡散管22の出口におけるにおい分子20の流量を極めて小さく(例えば略0に近い値)設定することができる。
【0117】
また、この構成によれば、拡散管22が容器21に取り外し可能に接続されているため、他の形状の異なる拡散管と取り替えることができる。例えば、予め拡散管の長さや内径が互いに異なる複数種類の拡散管を用意しておけば、所望の濃度のにおい分子20を得るのに適した寸法を有する拡散管と適宜取り替えることができる。よって、所望の濃度のにおい分子20を供給することが容易となる。
【0118】
におい分子は、同じ化学構造であっても、酸化反応や還元反応等の反応方法が違ったりすると、異なるにおい分子となる。仮に、容器21がにおい分子20と化学反応する材料で形成されていると、目的とするにおい分子とは異なるにおい分子が生成されてしまう。また、容器21とにおい分子20が吸着しやすい材料で形成されていると、所望の濃度と異なるにおいとなってしまう。これに伴い、低濃度のにおい分子20の濃度を精度良く測定できなくなる。これに対し、容器21がにおい分子20と吸着、化学反応しない材料で形成されていれば、目的とするにおい分子を得ることができる。よって、この構成によれば、低濃度のにおい分子20を安定的に供給するとともに低濃度のにおい分子20の濃度を精度良く測定することができる。
【0119】
におい分子20が液体状態で容器21に収容される場合には、液体から揮発された気体がにおい分子20を含んだ状態で拡散管22から放出される。仮に、拡散管22がにおい分子20を含んだ気体と化学反応する材料で形成されていると、目的とするにおい分子とは異なるにおい分子が生成されてしまう。また、拡散管22や容器21とにおい分子20が吸着しやすい材料で形成されていると、所望の濃度と異なるにおいとなってしまう。これに伴い、低濃度のにおい分子の濃度を精度良く測定できなくなる。これに対し、拡散管22がにおい分子20と吸着、におい分子20を含んだ気体と化学反応しない材料で形成されていれば、目的とするにおい分子を得ることができる。よって、この構成によれば、低濃度のにおい分子20を安定的に供給するとともに低濃度のにおい分子20の濃度を精度良く測定することができる。
【0120】
におい分子20が液体状態で容器21に収容される場合には、液体から揮発された気体がにおい分子20を含んだ状態で拡散管22から放出される。容器21の内壁面及び拡散管22の内壁面が撥液処理されていないと、におい分子20が容器21の内壁面または拡散管22の内壁面に吸着することがある。この場合、理想的な拡散状態が得られなくなり、低濃度のにおい分子20の濃度を精度良く測定することが難しくなる。これに対し、容器21の内壁面及び拡散管の内壁面が撥液処理されていれば、におい分子20が容器21の内壁面または拡散管の内壁面に吸着しにくくできるため、理想的な拡散状態を得ることができる。よって、この構成によれば、低濃度のにおい分子20を安定的に供給するとともに低濃度のにおい分子20の濃度を精度良く測定することができる。
【0121】
また、この構成によれば、演算装置7が上記(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式によって混合ガス供給配管42内を流れる混合ガス内のにおい分子20の濃度を演算するため、収容部2の質量の時間変化に基づいて、収容部2から放出された低濃度のにおい分子20の濃度を容易に演算することができる。また、これらの式に基づいて、拡散管22の出口における低濃度のにおい分子20の流量、におい分子20の物質量も容易に演算することができる。
【0122】
また、この構成によれば、測定装置6の最低測定能が1mg以下であるため、濃度がppmオーダー以下の低濃度のにおい分子20の濃度の測定を実現することができる。これと反対に、測定装置6の最低測定能が1mgを超えてしまうと、質量変化を観測するのに長時間要し、濃度がppmオーダー以下の低濃度のにおい分子20の濃度を測定することが困難となる。
上述したように、におい分子20の質量は、測定装置6で測定された収容部2の質量の時間変化に基づいて演算される。ここで、「測定装置の最低測定能」は、測定装置が測定可能な最低の質量(測定下限値)である。測定時間の最低分解能は、測定装置6の最低測定能に相当する質量のにおい分子20が収容部2から放出されるまでの時間(測定下限値が変化する時間)である。つまり、測定装置6の最低測定能が小さいほど測定時間の最低分解能も小さくなる。これにより、実際に装置を使用しているときに収容部2から放出されるにおい分子20の濃度をリアルタイムで測定しやすくなる。
【0123】
また、この構成によれば、乱流発生機構9を有するため、キャリアガスと希釈ガスを均一に混合することができる。よって、低濃度のにおい分子20を安定的に供給することが容易となる。
【0124】
また、この構成によれば、所望の量のにおい分子を供給することができる。
【0125】
低濃度のにおい分子20を安定して供給するに際しては、低濃度のにおい分子20が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することが重要である。この構成によれば、キャリアガスが混合ガス供給配管42に供給されないようにキャリアガスを排気することができる。これにより、濃度のにおい分子20が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子20を安定的に供給することができる。
【0126】
この構成によれば、キャリアガスの供給量を常時一定にした状態でキャリアガスが混合ガス供給配管42に供給されないようにキャリアガスを排気することができる。これにより、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0127】
また、この構成によれば、ダミーガスとキャリアガスと希釈ガスの総流量が常時一定に維持される。よって、低濃度のにおい分子を常時安定的に供給することができる。
【0128】
低濃度のにおい分子20を安定して供給するに際しては、低濃度のにおい分子20が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することが重要である。この構成によれば、ダミーガスが混合ガス供給配管42に供給されないようにダミーガスを排気することができる。これにより、濃度のにおい分子20が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子20を安定的に供給することができる。
【0129】
また、この構成によれば、ダミーガスの供給量を常時一定にした状態でダミーガスが混合ガス供給配管42に供給されないようにダミーガスを排気することができる。これにより、濃度のにおい分子20が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子20を安定的に供給することができる。
【0130】
また、この構成によれば、低濃度のにおい分子20が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子20を安定的に供給することができる。
【0131】
また、この構成によれば、既知のガスを用いるため、低濃度のにおい分子20が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持しやすくなる。よって、低濃度のにおい分子20を安定的に供給することが容易となる。
【0132】
なお、本実施形態においては、拡散管22とキャリアガス供給配管31とが、ゴムリング23と、固定板24と、固定ネジ25とを用いて接続された例を挙げて説明したが、これに限らない。拡散管22とキャリアガス供給配管31との接続状態は、拡散管22とキャリアガス供給配管31とを隙間なく接続できる方法であれば、種々の方法を採用することができる。
【0133】
図6は、拡散管22とキャリアガス供給配管31との接続状態の変形例を示す模式図である。
図6に示すように、拡散管22とキャリアガス供給配管31とは、ゴム栓23Aを用いて接続されている。拡散管22の出口近傍にはゴムリング23が嵌め込まれている。
【0134】
ゴム栓23Aの内径は、拡散管22の外径よりも小さくなっている。このため、拡散管22はゴム栓23Aに圧入される。これにより、拡散管22の外壁面とゴム栓23Aの内側部分とが隙間なく密着する。
【0135】
キャリアガス供給配管31において拡散管22が挿通される部分にはゴム栓23Aの外径よりも径の小さい開口が形成されている。ゴム栓23Aに圧入された拡散管22とキャリアガス供給配管31とは、ゴム栓23Aが前記開口に圧入された状態で固定されている。これにより、キャリアガス供給配管31の開口とゴム栓23Aの外側部分とが隙間なく密着する。
【0136】
このような構成においても、拡散管22とキャリアガス供給配管31とは隙間なく接続される。このため、拡散管22とキャリアガス供給配管31との気密性を高めることができる。
【0137】
また、本実施形態においては、乱流発生機構9が、混合ガス供給配管42の下流側の部分を複数箇所で折り曲げることによって構成された例を挙げて説明したが、これに限らない。乱流発生機構9は、混合ガス供給配管42の下流側の部分を流れる流体の流れの状態を時間的、空間的に不規則に変動させることができる構成であれば、種々の構成を採用することができる。
【0138】
図7は、乱流発生機構の変形例を示す模式図である。
図7(a)は乱流発生機構の第1変形例を示す図であり、混合ガス供給配管90Aの下流側の部分を流体の流れ方向と直交する平面で切断した断面図である。
【0139】
図7(a)に示すように、第1変形例に係る乱流発生機構9Aは、混合ガス供給配管90Aの内部に格子状の網91Aが張られて構成されている。これにより、混合ガスは、乱流発生機構9Aを通過する過程で、網91Aに形成された複数の矩形状の仕切り部分に衝突して乱流となる。
【0140】
このような構成においても、キャリアガスと希釈ガスを均一に混合することができる。よって、低濃度のにおい分子20を安定的に供給することが容易となる。
【0141】
図7(b)は乱流発生機構の第2変形例を示す図であり、混合ガス供給配管90Bの下流側の部分を流体の流れ方向と平行な平面で切断した断面図である。
【0142】
図7(b)に示すように、第2変形例に係る乱流発生機構9Bは、混合ガス供給配管90Bの内壁面に複数の楕円形状のフィン91Bが形成されて構成されている。複数のフィン91Bは所定の間隔を空けて配置されている。これにより、混合ガスは、乱流発生機構9Bを通過する過程で、複数のフィン91Bに衝突して乱流となる。
【0143】
このような構成においても、キャリアガスと希釈ガスを均一に混合することができる。よって、低濃度のにおい分子20を安定的に供給することが容易となる。
【0144】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係るガス供給装置1Aを示す模式図である。
図8に示すように、本実施形態に係るガス供給装置1Aは、複数の収容部2A(第1収容部2A1ないし第n収容部2An)を有する点、複数の収容部2Aに対応する複数のキャリアガス供給装置3A(第1キャリアガス供給装置3A1ないし第nキャリアガス供給装置3An)を有する点、複数の収容部2Aに対応する複数の測定装置6A(第1測定装置6A1ないし第n測定装置6An)を有する点、複数のキャリアガス供給配管31Aに対応する複数のキャリアガス制御弁34A(第1キャリアガス制御弁34A1ないし第nキャリアガス制御弁34An)有する点、複数のキャリアガス供給配管31Aに対応する複数のキャリアガス排気弁35A(第1キャリアガス排気弁35A1ないし第nキャリアガス排気弁35An)有する点、で上述の第1実施形態に係るガス供給装置1と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、図8においては、便宜上、収容部2Aを構成する容器、拡散管の図示を省略する。
【0145】
図8に示すように、本実施形態に係るガス供給装置1Aは、ガス供給部10Aと、希釈ガス供給装置4と、ダミーガス供給装置5と、演算装置7と、制御装置8と、混合ガス供給配管42と、乱流発生機構9と、を備えて構成されている。
【0146】
ガス供給部10Aは、複数の収容部2Aと、複数の収容部2Aに対応する複数のキャリアガス供給装置3Aと、複数の収容部2Aに対応する複数の測定装置6Aと、を備えている。複数の収容部2Aにはそれぞれ異なる種類のにおい分子が収容されている
【0147】
本実施形態においても、におい分子としては種々のものを用いることができる。例えば、複数の収容部2Aとして4つの収容部(第1収容部2A1、第2収容部2A2、第3収容部2A3及び第4収容部2A4)を用いる場合を考える。この場合、第1収容部2A1においてはにおい分子としてエタノールを用い、第2収容部2A2においてはにおい分子としてアセトアルデヒドを用い、第3収容部2A3においてはアセトンを用い、第4収容部2A4においてはにおい分子としてスルフィドを用いる。これにより、人の呼気中のアルコール検知を想定した混合ガスを得ることができる。
【0148】
なお、複数の収容部2Aとして5つ以上の収容部(第1収容部2A1、第2収容部2A2、第3収容部2A3及び第4収容部2A4、第5収容部2A5、・・・第n収容部2An)を用いてもよい。この場合、第1収容部2A1においてはにおい分子としてエタノールを用い、第2収容部2A2においてはにおい分子としてアセトアルデヒドを用い、第3収容部2A3においてはアセトンを用い、第4収容部2A4においてはにおい分子としてスルフィドを用い、第5収容部2A5ないし第n収容部2Anにおいてはにおい分子として人の呼気中のアルコール検知を想定した混合ガスを構成するにおい分子と異なるものを用いる。このような構成においても、第5収容部2A5ないし第n収容部2Anに対応する複数のキャリアガス供給装置3A(第5キャリアガス供給装置3A5ないし第nキャリアガス供給装置3An)からキャリアガスが供給されないように制御を行えば、人の呼気中のアルコール検知を想定した混合ガスを得ることができる。
【0149】
複数のキャリアガス供給装置3Aのそれぞれには、キャリアガス用流量制御装置30A(第1キャリアガス用流量制御装置30A1ないし第nキャリアガス用流量制御装置30An)、キャリアガス供給配管31A(第1キャリアガス供給配管31A1ないし第nキャリアガス供給配管31An)、キャリアガス排気管33A(第1キャリアガス排気管33A1ないし第nキャリアガス排気管33An)、キャリアガス制御弁34A(第1キャリアガス制御弁34A1ないし第nキャリアガス制御弁34An)、キャリアガス排気弁35A(第1キャリアガス排気弁35A1ないし第nキャリアガス排気弁35An)、が設けられている。
【0150】
複数のキャリアガス用流量制御装置30Aに対応して複数のキャリアガス供給配管31Aが配置されている。複数のキャリアガス用流量制御装置30Aは、制御装置8の制御信号に基づいて、それぞれのキャリアガス供給配管31A(第1キャリアガス供給配管31A1ないし第nキャリアガス供給配管31An)内のキャリアガスの流量を制御する。
【0151】
例えば、制御装置8は以下の制御を行う。
複数のキャリアガス供給配管31Aから供給されるキャリアガスと希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスとを混合させる場合には、それぞれのキャリアガス用流量制御装置30Aから所定の流量のキャリアガスが供給されるように制御する。このとき、ダミーガス制御弁54を閉じた状態に制御しかつダミーガス排気弁55を開いた状態に制御する。
一方、複数のキャリアガス供給配管31Aのうち一部のキャリアガス供給配管(例えば第1キャリアガス供給配管31A1)から供給されるキャリアガスと希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスとを混合させない場合には、前記一部のキャリアガス供給配管に対応したキャリアガス用流量制御装置(例えば第1キャリアガス用流量制御装置30A1)からキャリアガスが供給されないように制御する。このとき、ダミーガス制御弁54を開いた状態に制御しかつキャリアガス排気弁55を閉じた状態に制御する。
【0152】
例えば、ダミーガス用流量制御装置50は、ダミーガスの流量を複数のキャリアガス供給配管31Aから供給されるキャリアガスの流量と同量の流量に制御する。言い換えると、ダミーガス用流量制御装置50は、複数のキャリアガス供給配管31Aから本来供給されるべきキャリアガスの流量が所定の値に満たないときに、その不足分に相当する流量のダミーガスを供給するよう制御する。ここでは、複数のキャリアガス供給配管31Aのうち一部のキャリアガス供給配管(例えば第1キャリアガス供給配管31A1)から供給されるキャリアガスと希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスとを混合させない場合には、第1キャリアガス供給配管31A1から本来供給されるべきキャリアガスの流量に相当する流量のダミーガスを供給するよう制御する。これにより、複数のキャリアガス供給配管31Aから供給されるキャリアガスの流量及び希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスの流量の総流量が常時一定になるよう調整される。
【0153】
なお、制御装置8は以下の制御を行うこともできる。
複数のキャリアガス供給配管31Aから供給されるキャリアガスと希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスとを混合させる場合には、複数のキャリアガス制御弁34Aを開いた状態に制御しかつ複数のキャリアガス排気弁35Aを閉じた状態に制御する。このとき、ダミーガス制御弁54を閉じた状態に制御しかつダミーガス排気弁55を開いた状態に制御する。
一方、複数のキャリアガス供給配管31Aのうち一部のキャリアガス供給装置(例えば第1キャリアガス供給配管31A1)から供給されるキャリアガスと希釈ガス供給配管41から供給される希釈ガスとを混合させない場合には、前記一部のキャリアガス供給配管に対応したキャリアガス制御弁(例えば第1キャリアガス制御弁34A1)を閉じた状態に制御しかつ前記一部のキャリアガス供給配管に対応したキャリアガス排気弁(例えば第1キャリアガス排気弁35A1)を開いた状態に制御する。このとき、ダミーガス制御弁54を開いた状態に制御しかつダミーガス排気弁55を閉じた状態に制御する。
【0154】
本実施形態のガス供給装置1Aによれば、複数の収容部2Aを有し、複数の収容部2Aにはそれぞれ異なる種類のにおい分子が収容されているため、複数種類のにおい分子を混合させて様々な種類のにおい分子を生成することができる。
【0155】
また、この構成によれば、複数種類のにおい分子のうち所望のにおい分子を選択して混合させ様々な種類のにおい分子を生成することができる。また、複数種類のにおい分子に対応するキャリアガスの供給量を調整すれば、それぞれのキャリアガスに含まれるにおい分子の混合比を変えて所望のにおい分子を生成することもできる。
【0156】
低濃度のにおい分子を安定して供給するに際しては、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することが重要である。この構成によれば、キャリアガスが混合ガス供給配管42に供給されないようにキャリアガスを排気することができる。これにより、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0157】
また、この構成によれば、キャリアガスの供給量を常時一定にした状態でキャリアガスが混合ガス供給配管42に供給されないようにキャリアガスを排気することができる。これにより、低濃度のにおい分子が供給される条件や雰囲気を一定の状態に維持することができる。よって、低濃度のにおい分子を安定的に供給することができる。
【0158】
また、この構成によれば、複数種類のにおい分子のうち所望のにおい分子を選択して混合させ様々な種類のにおい分子を生成することができる。また、複数種類のにおい分子に対応するキャリアガスの流量を調整すれば、それぞれのキャリアガスに含まれるにおい分子の混合比を変えて所望のにおい分子を生成することもできる。
【符号の説明】
【0159】
1,1A…ガス供給装置、2,2A…収容部、6,6A…測定装置、7…演算装置、8…制御装置、9,9A,9B…乱流発生機構、20…におい分子(においの原因となる物質)、21…容器、22…拡散管、31,31A…キャリアガス供給配管(第1配管)、41…希釈ガス供給配管(第2配管)、42,90A,90B…混合ガス供給配管(第3配管)、51…ダミーガス供給配管(第4配管)、34,34A…キャリアガス制御弁、35,35A…キャリアガス排気弁、54…ダミーガス制御弁、55…ダミーガス排気弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
においの原因となる物質を収容する収容部と、
前記収容部から放出された前記物質をキャリアガスにのせて供給する第1配管と、
希釈ガスを供給する第2配管と、
前記第1配管から供給された前記物質を含む前記キャリアガスと前記第2配管から供給された前記希釈ガスとが少なくとも混合された混合ガスを供給する第3配管と、
前記収容部の質量を測定する測定装置と、
前記測定装置で測定された前記収容部の質量の時間変化に基づいて、前記収容部から放出された前記物質の量を演算する演算装置と、
前記演算装置で演算された前記物質の量に基づいて、前記混合ガス内の前記物質の濃度が所望の濃度になるように、前記第1配管内を流れる前記キャリアガスの流量と前記第2配管内を流れる前記希釈ガスの流量との少なくとも一方の流量を制御する制御装置と、
を含むガス供給装置。
【請求項2】
前記収容部は、
前記物質を収容する容器と、
前記容器から放出された前記物質を拡散させる拡散管と、を含む請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記拡散管は前記容器に取り外し可能に接続されている請求項2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記容器は前記物質と化学反応しない材料で形成されている請求項2または3に記載のガス供給装置。
【請求項5】
前記物質は液体状態で前記容器に収容されており、
前記拡散管は、液体状態の前記物質から揮発された気体と化学反応しない材料で形成されている請求項2ないし4のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項6】
前記容器の内壁面及び前記拡散管の内壁面は撥液処理されている請求項5に記載のガス供給装置。
【請求項7】
前記演算装置は、前記測定装置が第1の時刻t1に測定した前記収容部の質量をm1、前記測定装置が前記第1の時刻t1から所定時間経過後の第2の時刻t2に測定した前記収容部の質量をm2、前記物質の分子量をw、大気圧をP、前記収容部が前記物質を収容する空間の体積をV、前記物質の物質量をn、気体定数をR、前記拡散管の内部の温度をK、前記拡散管の出口における前記物質の流量をD1、前記第1配管から前記第3配管に供給される前記キャリアガスの流量及び前記第2配管から前記第3配管に供給される前記希釈ガスの流量の総流量をD2、前記第2の時刻t2における前記第3配管内を流れる前記混合ガス内の前記物質の濃度をGとしたとき、下記(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式によって前記第3配管内を流れる前記混合ガス内の前記物質の濃度を演算する請求項2ないし6のいずれか一項に記載のガス供給装置。
PV=nRT ・・・(1)
n=(m1−m2)/w ・・・(2)
D1=V/(t2−t1) ・・・(3)
G=D1/D2 ・・・(4)
【請求項8】
前記測定装置の最低測定能は1mg以下である請求項1ないし7のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項9】
前記第3配管には、前記第3配管内を流れる前記混合ガスに乱流を発生させる乱流発生機構が設けられている請求項1ないし8のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項10】
前記第1配管に、前記第1配管から前記第3配管への前記キャリアガスの供給量を制御するキャリアガス制御弁が設けられている請求項1ないし9のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項11】
前記第1配管に、前記キャリアガス制御弁によって前記第3配管への供給が阻止された前記キャリアガスを排気するキャリアガス排気弁が設けられている請求項10に記載のガス供給装置。
【請求項12】
前記第1配管には、常時一定の流量の前記キャリアガスが供給される請求項11に記載のガス供給装置。
【請求項13】
互いに異なる種類の物質を収容した複数の前記収容部が設けられ、前記第1配管は、複数の前記収容部の各々に対応して複数設けられており、前記第3配管には、複数の前記収容部から放出された前記物質を含む複数の前記キャリアガスが供給されるようになっている請求項1ないし9のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項14】
複数の前記第1配管の各々に、前記第1配管から前記第3配管への前記キャリアガスの供給量を制御するキャリアガス制御弁が設けられている請求項13に記載のガス供給装置。
【請求項15】
複数の前記第1配管の各々に、前記キャリアガス制御弁によって前記第3配管への供給が阻止された前記キャリアガスを排気するキャリアガス排気弁が設けられている請求項14に記載のガス供給装置。
【請求項16】
複数の前記第1配管の各々には、常時一定の流量の前記キャリアガスが供給される請求項15に記載のガス供給装置。
【請求項17】
前記第3配管にダミーガスを供給する第4配管を備え、前記制御装置は、前記第3配管内を流れる前記ダミーガス、前記キャリアガス及び前記希釈ガスを含む前記混合ガスの流量が常時一定となるように、前記第4配管から前記第3配管に供給されるダミーガスの流量を制御する請求項1ないし16のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項18】
前記第4配管に、前記第4配管から前記第3配管への前記ダミーガスの供給量を制御するダミーガス制御弁と、前記ダミーガス制御弁によって前記第3配管への供給が阻止された前記ダミーガスを排気するダミーガス排気弁と、が設けられている請求項17に記載のガス供給装置。
【請求項19】
前記第4配管には、常時一定の流量のダミーガスが供給される請求項18に記載のガス供給装置。
【請求項20】
前記キャリアガス、前記希釈ガス及び前記ダミーガスとして互いに同じガスが用いられている請求項17ないし19のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項21】
前記キャリアガス、前記希釈ガス及び前記ダミーガスとして用いられるガスは、空気または窒素である請求項20に記載のガス供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−106836(P2013−106836A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254934(P2011−254934)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】