説明

ガス処理システム

【課題】 吸着された被処理ガスの除去成分を脱着して生成する濃縮ガスの濃度および温度を、触媒に対応した最適な一定値に維持して、効率よく吸着剤から除去成分を脱着し脱着した除去成分を処理するガス処理システムを提供する。
【解決手段】 被処理ガスの除去成分を吸着部2の吸着剤に吸着させた後の脱ガス空気を排気し、吸着剤に加熱空気を供給することにより吸着剤から除去成分を脱着して濃縮ガスを生成し、濃縮ガスを触媒燃焼させて除去成分を処理し、処理後の脱ガス空気と濃縮ガスとを熱交換するガス処理システム1において、吸着剤の脱着時に吸着部2に加熱ガスを循環させる濃縮装置5と、脱着時の濃縮ガスの濃度を検知する濃度検知装置6とを設け、濃度検知装置6により濃縮装置5を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等で排出される有害ガスや臭気ガス等、環境対策上大気放出を抑制すべきガスの処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種工場等から排出される有害な化学物質の大気への排出防止対策として、地方自治体の条例により排出規制が定められ、有害ガスの種類およびその排出時の濃度基準値が設定されている。そのため、例えば特許文献1に開示されているような各種有害物質の処理方法が提案されている。
【0003】
従来より、比較的容易な有害物質の処理方法として、例えば活性炭等の吸着剤に吸着させる方法や、エアワッシャを通過させて洗浄する方法、直接燃焼する方法、光触媒を用いて処理する方法、化学的に中和させる方法等の単独処理の方法がある。その中で最も簡単な方法は、吸着剤によって有害ガスを除去する方法であり、微量なガスを処理する場合に用いられる。また、有害成分が高濃度の場合には、ガスを直接燃焼する方法が用いられる。
【0004】
ところが、実際に処理が必要な有害ガスの濃度は、これらのいずれの方法にも適さない中間濃度の場合が多い。このような場合には、吸着剤によって一旦有害ガスを吸着させ、吸着したガスを脱着して濃縮した後に処理する方法が一般的である。
【0005】
図6は、そのような従来の処理システムの一例を示す概略図である。図中、太い実線は、有害ガス等の処理すべきガス(被処理ガス)に含まれる除去すべきガス成分(除去成分)を吸着剤に吸着させる吸着工程時のガスの流路を示し、破線は、吸着された除去成分を吸着剤から離脱する脱着工程時のガスの流路を示す。また、黒い矢印は除去成分を含むガスの流れを示し、白抜きの矢印は、除去成分を含まない或いは取り除かれたガスの流れを示す。
【0006】
例えば日中、被処理ガスが排出されているときには、吸着部2内に備えられた例えば活性炭等の吸着剤に除去成分を吸着させる。吸着により除去成分が取り除かれ清浄化された脱ガス空気は、外部へ排出される。夜間等、被処理ガスの排出が停止している間に、吸着部2へ加熱空気を送り込むことにより、吸着剤に吸着した除去成分を脱着する。十分に脱着することにより、吸着前の被処理ガスに比べ、含有される除去成分が濃縮された濃縮ガスが得られる。この濃縮ガスを処理装置3へ送り、直接燃焼することにより除去成分を処理する。燃焼により除去成分が取り除かれ清浄化された脱ガス空気は、外部へ排出される。
【0007】
この方法によれば、簡単な装置で有害ガス等に含まれる除去成分を取り除くことができる。ところが、処理装置3内が800℃〜1000℃程度の燃焼温度になるために、極めて大きな燃焼用のエネルギーを要するとともに、処理装置3の材質を高い耐熱性を有するものにしなければならない。
【0008】
図7は、従来の異なる処理システムの例を示し、処理装置3に要するエネルギーを低減させるものである。太い実線、破線、黒い矢印、白抜きの矢印のそれぞれが示す意味は、図6と同様である。
【0009】
上記の図6と同様、吸着部2に被処理ガスの除去成分を吸着させる。被処理ガスの吸着工程が停止している間に、吸着部2に加熱空気を送り込んで吸着剤を脱着する。十分に脱着することにより、除去成分が濃縮された濃縮ガスが得られる。この濃縮ガスが、熱回収装置(熱交換器)4を介して処理装置3へ送られる。処理装置3は酸化触媒からなり、濃縮ガスを触媒燃焼させる。触媒による反応熱を熱回収装置4で回収し、その熱によって、処理装置3へ送り込む濃縮ガスを予熱し、触媒の反応効率を高める。
【0010】
この方法では、濃縮ガスを触媒を用いて燃焼するため、直接燃焼する場合に比べて燃焼温度が低い。酸化触媒を用いて燃焼する場合には、200℃〜300℃程度の燃焼温度となるので、処理装置3の耐熱性を大幅に低減できる。
【0011】
また、酸化触媒を通して温度上昇した脱ガス空気と触媒燃焼前の低温の濃縮ガスとを熱回収装置4により熱交換し、燃焼前の濃縮ガスを予熱することにより、触媒反応を促進させることができる。このような酸化触媒は、入口温度により浄化率が変化し、95%あるいはそれ以上の浄化率を得るためには、除去成分の種類およびその濃度に応じた所定の入口温度以上にしなければならない。
【0012】
ところが、脱着の際、脱着用加熱空気の温度や量あるいは吸着された除去成分の量および経過時間などによって、濃縮ガスの濃度が変化する。
【0013】
濃縮ガスの濃度および入口温度が適切な状態では、触媒燃焼時に高い浄化率で除去成分が取り除かれ、所定の反応熱が得られる。例えば1000ppmの濃度のガスを酸化反応により燃焼した場合、ガスの種類によって温度上昇の値(入口温度と出口温度の差)が決まっている。例えばイソプロピルアルコールでは68℃、トルエンの場合は133℃である。温度上昇値が一定で出口温度が一定であれば、熱回収装置4によって常に一定量の熱が回収されるので、次に処理装置3へ送り込む濃縮ガスを一定の温度に昇温させるという制御を容易に行うことができる。そのため、制御装置の構成を簡素化でき、また、濃縮ガスを加熱するための加熱手段が不要となるか、あるいは低容量のものにできる。
【0014】
しかしながら、吸着した除去成分を脱着する際には、吸着部2内に徐々に加熱空気を送り込むため、初期には低濃度且つ低温度の濃縮ガスが熱回収装置4を介して処理装置3に入る。低濃度、低温度の状態では、十分な触媒効果が得られないため、浄化率が低下する。また、触媒燃焼による温度上昇が少なくなって、熱回収装置4による熱回収量も僅かとなる。そのため、熱交換を行う濃縮ガスを十分に昇温させることができず、十分な触媒反応促進作用が得られない。
【0015】
一方、濃縮ガスの濃度が高すぎると、触媒の反応熱による温度上昇が過大になり、処理装置3や熱回収装置4等を構成する各部材の耐熱温度を高くしなければならない。
【0016】
従来の別のガス濃縮装置として、ロータリー式吸着装置がある。ロータリー式吸着装置は、吸着剤を円板状ロータに設け、ロータを回転させて処理ゾーンおよび再生ゾーンを通過させ、処理ゾーンに被処理ガスを流通させて除去成分をロータの吸着剤に吸着させ、再生ゾーンに加熱空気を流通させて吸着剤の脱着を行うものである。
【0017】
このようなロータリー式吸着装置についても、前述の図6、図7の従来技術の問題と同様の問題が生じる。
【特許文献1】特開2002−282654
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記従来技術を考慮してなされたものであり、吸着された被処理ガスの除去成分を脱着して生成する濃縮ガスの濃度および温度を、触媒に対応した最適な一定値に維持して、効率よく吸着剤から除去成分を脱着し脱着した除去成分を処理するガス処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1の発明は、被処理ガスの除去成分を吸着部の吸着剤に吸着させた後の脱ガス空気を排気し、吸着剤に加熱空気を供給することにより吸着剤から除去成分を脱着して濃縮ガスを生成し、濃縮ガスを触媒燃焼させて除去成分を処理し、処理後の脱ガス空気と濃縮ガスとを熱交換するガス処理システムにおいて、吸着剤の脱着時に吸着部に加熱ガスを循環させる濃縮装置と、脱着時の濃縮ガスの濃度を検知する濃度検知装置とを設け、濃度検知装置により濃縮装置を制御することを特徴とするガス処理システムを提供する。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、吸着部へ脱着用加熱空気を供給する空気通路を備えるとともに空気通路に外気取入用給気バルブを設け、濃度検知装置により給気バルブを制御することを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、脱着用加熱空気として、濃縮ガスを触媒で処理した後の脱ガス空気の一部を用いることを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、吸着部から濃度検知用ガスを取り出すためのモニタ通路を備え、濃度検知装置は、モニタ通路上に設けられて濃縮ガスを処理する触媒と同じ触媒を備え、この触媒の入口と出口との温度差から濃縮ガスの濃度を判定することを特徴とする。
【0023】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、濃縮ガスを処理する触媒の上流側に、前記濃縮ガスの濃度を調整する二次調整部を設けた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によると、吸着剤の脱着時に、吸着部内の濃縮ガスの濃度を検知しながら濃縮装置の運転を制御することにより、脱着されて吸着部内に充満する脱着ガスの濃度を触媒反応に最適な一定濃度にし、触媒へ送り込む濃縮ガスの濃度を一定に維持することができる。従って、酸化触媒による燃焼過程において、高い浄化率で除去成分を処理できる。また、この触媒反応で安定した一定の温度上昇が得られる。そのため、熱回収装置による熱の回収量が安定し、その後触媒へ送る濃縮ガスの入口温度を、触媒反応に最適な一定温度に維持できる。それにより、触媒への入口温度制御が不要または簡単にできる。また、触媒の反応熱を熱交換して再利用するため、エネルギーの有効利用が図られる。
【0025】
このように、濃縮ガスの濃度および温度を一定に維持できるため、従来技術では必要であった触媒燃焼部での濃縮ガスの加熱エネルギーが不要になり、大きな省エネ効果が得られる。
【0026】
請求項2の発明によると、吸着剤の脱着時に、吸着部内の濃縮ガスの濃度に応じて給気バルブを開閉制御し、外気量を調整することにより、脱着用加熱空気の温度および触媒に送り込む濃縮ガスの濃度を制御できる。これにより、脱着時に安定して一定の最適濃度の濃縮ガスを触媒に供給して、高い浄化率の触媒反応を得ることができる。
【0027】
請求項3の発明によると、脱着用加熱空気として、本来は全て排出される触媒通過後の昇温した脱ガス空気の一部を用いるため、排熱を効率よく利用して、加熱のためのエネルギーを軽減させることができる。
【0028】
請求項4の発明によると、濃縮ガスを処理する触媒と同じ触媒が、モニタ通路上の濃度検知装置に設けられていることにより、濃縮ガスを処理する触媒と同じ条件を濃度検知装置内で再現して、触媒反応をモニタすることができる。このモニタする触媒の入口および出口の温度差から、濃縮ガスの濃度を判別することができ、これに応じて、濃縮ガスの濃度を制御できる。
【0029】
尚、吸着部に接続されるモニタ通路が常に開いているため、これがリリーフ通路として作用し、吸着部が加熱されて吸着部内の濃縮ガスが体積膨張を始めても、膨張した濃縮ガスを吸着部の外に逃がすことができる。従って、吸着部内の圧力が上がることがなく、濃縮ガスが外部に漏れ出すことがない。
【0030】
請求項5の発明によると、触媒燃焼させる濃縮ガスの濃度を、吸着部内で制御するとともに触媒の直前でも調整するので、タイムラグをなくして触媒の位置で正確に所定の濃度に保つことができる。そのため、触媒の反応熱を利用した温度制御が正確且つ容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明の処理システムの概略を示す図である。太い実線は、有害ガス等の処理すべきガス(被処理ガス)に含まれる除去すべきガス成分(除去成分)を吸着剤に吸着させる吸着工程時のガスの流路を示し、破線は、吸着された除去成分を吸着剤から離脱する脱着工程時のガスの流路を示す。また、黒い矢印は除去成分を含むガスの流れを示し、白抜きの矢印は、除去成分を含まない或いは取り除かれたガスの流れを示す。
【0032】
吸着部2には、被処理ガスの除去成分を吸着する活性炭やゼオライト等からなる吸着剤が備えられる。吸着部2において、例えば95%以上の吸着効率で被処理ガスから除去成分を取り除くことができるように、除去成分に応じた最適な吸着剤の種類や量が設定される。
【0033】
吸着部2には、脱着用加熱空気の給気バルブ10の開閉により外気を導入する加熱空気用空気通路2a、および熱回収装置4を介して処理装置3へ濃縮ガスを送る濃縮ガス用空気通路2cが接続される。処理装置3は酸化触媒を備え、送り込まれた濃縮ガス中の除去成分を触媒燃焼により取り除く。更に、吸着部2内に加熱空気を循環させて吸着剤から除去成分を脱着させる濃縮装置5、および吸着部2内の脱着ガスの濃度を検知する濃度検知装置6が、それぞれ循環空気通路2b、モニタ通路2dを介して吸着部2に連結される。
【0034】
以下、図1の処理システム1による被処理ガスの処理手順について説明する。
【0035】
各種工場で塗装工程等により排出される例えばイソプロピルアルコールやトルエン等の除去成分ガスを含む被処理ガスは、吸着部2へ送られ、除去成分を例えば95%以上吸着剤に吸着させた後、清浄化された脱ガス空気が外部へ排気される。
【0036】
夜間等、吸着工程が停止される時に、吸着部2内の吸着剤に吸着された除去成分の脱着工程が、以下のように行われる。尚、24時間吸着工程が連続する場合には、吸着部2を複数個所設けて、吸着工程を行う吸着部と、脱着工程を行う吸着部とを切り替えてもよい。
【0037】
脱着工程の開始時に濃縮装置5が用いられる。すなわち、脱着開始時には、吸着剤から脱着された除去成分がほとんどないため、吸着部2内のガス濃度は低く、処理装置3で必要とする濃度に達していない。従って、この濃度の低いガスをそのまま処理装置3に送り込んでも、十分な触媒燃焼が得られず、燃焼後の触媒出口での脱ガス空気温度も必要な温度に達しない。従って、加熱ヒータにより処理装置3を加熱して触媒入口温度を高め、触媒燃焼を促進させなければならない。
【0038】
このような吸着部2内のガス濃度が低い状態は、時間経過とともに解消され、脱着が進めば徐々に濃度が濃くなり、必要な濃度の濃縮ガスが得られる。しかし、それまでの間、濃度が徐々に変化するため、濃度変化に応じて加熱ヒータによる触媒入口温度の加熱制御が必要になる。
【0039】
そこで、本実施例では、脱着を始めるときに、吸着部2内のガス濃度を迅速に高め、所定濃度の濃縮ガスを速やかに生成し、生成された適正濃度の濃縮ガスを処理装置3に送り込む。従って、処理装置3には初めから所定濃度の濃縮ガスが送り込まれるため、十分な触媒燃焼作用が得られる。
【0040】
濃縮装置5は、加熱機能および送風機能を備え、40℃〜100℃程度に加熱した空気を循環空気通路2bに流し、吸着部2との間で循環させる。これにより、吸着部2が徐々に加熱され、吸着剤に吸着した除去成分が吸着剤から脱着する。これにより、吸着部2内に充満する脱着した除去成分の濃度が上昇して濃縮ガスが生成される。
【0041】
吸着部2内の濃縮ガスの一部は、モニタ通路2dを介して濃度検知装置6へ送られる。濃度検知装置6では、吸着部2で脱着されて生成された濃縮ガスの濃度が、処理装置3の触媒燃焼が十分効果的に行える濃度に達しているかどうかを判定する。
【0042】
必要な濃度の濃縮ガスが得られたら、濃縮装置5の運転を停止して、吸着部2から熱回収装置4を介して処理装置3へ濃縮ガスを供給する。
【0043】
処理装置3で触媒燃焼して昇温した後の脱ガス空気は、熱回収装置4で濃縮ガスと熱交換され、濃縮ガスの温度を上昇させた後、外部へ排出される。尚、脱ガス空気とは、吸着剤あるいは触媒を通して、吸着作用或いは触媒作用を受けた後のガス(通常は空気)のことをいう。
【0044】
以下、処理装置3を通した本システムの脱着時の動作について更に説明する。
【0045】
処理装置3を出て熱回収装置4を通過する脱ガス空気は、ファン7により吸引され、大気開放部8で外部へ排出される。
【0046】
大気開放部8には、脱着用加熱空気通路2eの空気取入口9が開口する、大気開放部8から排出された脱ガス空気の一部は、空気取入口9から空気通路2eおよび2aを通して吸着部2内に供給され、再び脱着作用を行って熱回収装置4および処理装置3を循環する。このような脱ガス空気の循環は、ファン7によって行われる。すなわち、大気開放部8は、ファン7の吐出側であるため正圧であり、脱ガス空気が大気に放出される。一方、ファン7の吸引側は、大気開放されない閉じた状態の空気通路系により、処理装置3、熱回収装置4および吸着部2を連通し、更に空気通路2a,2eを通して空気取入口9に連通する。従って、脱着用空気通路2eの空気取入口9は負圧であり、排出された脱ガス空気の一部が吸引される。このとき、空気取入口9から外気が吸い込まれないように、空気取入口9は、大気開放部8の正圧の範囲内に配置しておく。
【0047】
このように、触媒燃焼後の脱ガス空気を脱着用加熱空気として利用することにより、吸着部2に送り込む脱着用加熱空気の加熱が不要になるかまたは軽減され、エネルギーの削減が図られる。
【0048】
加熱空気用空気通路2aには、給気バルブ10を介して外気が導入される。濃度検知装置6で検出された吸着部2内の濃縮ガスの濃度が必要以上に濃い場合や、あるいは温度が必要以上に高い場合に、給気バルブ10を開いて適正な温度の加熱空気を生成して、これを吸着部2へ送る。吸着部2内で脱着して生成された濃縮ガスは、処理装置3に供給される。給気バルブ10は、吸着部2内の濃度および温度に応じて、流量を調整可能としておくことが望ましい。
【0049】
尚、濃縮装置5の動作中、すなわち濃縮ガスの濃度が所定濃度に達する前に、この濃縮ガスを処理装置3に供給し、濃縮装置5と処理装置3とを併用してもよい。
【0050】
図2は濃度検知装置6の内部構造を示す概略図である。吸着部2(図1)で濃縮ガスが生成されると、吸着部2から濃度検知装置6へ、ファン21またはポンプで濃縮ガスを少量取り込む。
【0051】
濃度検知装置6には、酸化触媒25と、その入口側および出口側に設けられる温度センサ24,26と、各温度センサ24,26に接続されて温度センサ24,26の検出値により各種制御を行う調節器23,27と、取り込んだガスを加熱する加熱器22とが設けられる。触媒25は、処理装置3内の触媒と同じものである。
【0052】
一般に、酸化触媒は温度が高いほど化学反応が促進されるという特徴があるため、濃度検知装置6へ取り込んだ濃縮ガスは、触媒25に入る際、どのような種類のガスでも十分に触媒25に反応するように、例えば300℃になるまで加熱器22で加熱される。この温度制御は、触媒25の入口側温度センサ24に接続した調節器23により、加熱器22を制御して行われる。
【0053】
所定温度の濃縮ガスを触媒25に通し、出口側温度センサ26で検出されるガスの温度と、入口側温度センサ24で検出された温度とを比較し、触媒燃焼による温度上昇値から、濃縮ガスの濃度を出口側調節器27により判定する。例えば、入口と出口との温度差が100℃になるときが、濃縮ガスを処理工程へ送るのに適した濃度である場合には、300℃で触媒25に入ったガスの出口温度が400℃であれば、最適濃度に達していると判定される。調整器27により400℃に対して高低いずれかを判定し、外気導入用の給気バルブ10に制御信号を送信する。触媒25を通過した濃縮ガスは、そのまま大気中に排気される。
【0054】
尚、空気通路2e(図1)上に流量調整バルブ11を設け、給気バルブ10と連動させて開閉制御し、外気とこれよりも高温の脱ガス空気の流量を調整することにより、吸着部2内を温度制御して、濃縮ガスの濃度を調整してもよい。
【0055】
濃縮装置5の運転開始により徐々に吸着部2を加熱する際、吸着部2内のガスが徐々に体積膨張を始めるが、濃度検知装置6へのモニタ通路2dが常に開いているため、膨張したガスを吸着部2の外に逃がすことができる。従って、初期の低濃度時から最適濃度に至るまで、吸着部2内の圧力が過度に上がることがない。
【0056】
処理装置3は、濃縮ガスを触媒燃焼させる白金等の酸化触媒と加熱手段を備える。濃縮ガスを触媒燃焼させる際、ガスの温度により、触媒反応作用に大きな差が生じる。
【0057】
図3は、ガスを触媒燃焼させる際の触媒への入口温度による浄化率の変化を示すものである。この曲線は、ガスの種類およびその濃度により異なり、図3では、250ppmのイソプロピルアルコールと、537ppmのトルエンの場合の測定結果を示す。イソプロピルアルコールの場合には、220℃以上で触媒に入れると、ほぼ95%以上の浄化率が得られる。トルエンの場合は、170℃を超えると急激に浄化率が上昇し、180℃以上で約95%、200℃を超えると98%以上の浄化率が得られる。従って、例えばトルエンを除去する場合、150℃以下で触媒に入れても、ほとんど除去効果が得られない。このように、除去成分を処理するためには、浄化率の高い適温で触媒に入れることが必要である。
【0058】
また、ガスの種類およびその濃度によって、燃焼後の温度上昇の値が異なり、例えば1000ppmのイソプロピルアルコールでは68℃、トルエンの場合は133℃の温度上昇が得られる。
【0059】
従って、図1の処理装置3へ送り込む濃縮ガスの濃度を一定値、例えば1000ppmにすれば、触媒により酸化燃焼した後の温度上昇値が一定に決まる。また、ガスの種類により、所望する浄化率を得るための触媒への入口温度が決まる。例えば濃度が1000ppm、温度が250℃のイソプロピルアルコールを触媒に通すことにより、触媒の出口では、約95%浄化され、68℃温度上昇する。
【0060】
以下、図1の処理システム1において、250℃で触媒に入れると所定の浄化率が得られ、触媒燃焼により1000ppmの場合に100℃温度上昇する濃縮ガスの処理工程手順について説明する。
【0061】
濃縮装置5により吸着部2内のガスを濃縮し、濃度検知装置6により1000ppmに制御された濃縮ガスが、例えば50℃で熱回収装置4に送り込まれる。熱回収装置4による熱交換が行えない初期には、50℃の濃縮ガスをヒータ等で250℃まで加熱した後、触媒に入れる。触媒燃焼すると、反応熱の発生により温度が100℃上昇するとともに、濃縮ガスの除去成分が取り除かれ、350℃の脱ガス空気として処理装置3から排出される。排出された脱ガス空気は熱回収装置4に入り、熱交換により例えば150℃に温度低下して濃縮ガスを50℃から250℃に昇温させる。これにより、ヒータでの加熱が不要となる。この状態を維持すると、濃縮ガスの触媒入口温度を250℃にするために加熱する必要がなくなり、大きな省エネ効果が図れる。
【0062】
熱回収装置4を通過した150℃の脱ガス空気は、前述のようにファン7により大気中に排出され、一部は空気通路2eを介して吸着部2へ戻される。吸着部2の加熱温度の適温は60℃〜100℃程度なので、給気バルブ10を制御して空気と混合し、温度を下げて吸着部2へ送る。
【0063】
吸着部2内で生成される濃縮ガスは、処理装置3内での触媒燃焼が最大の反応効率で行われるように、濃度が正確に1000ppm、入口温度が250℃になるように、濃度検知装置6で監視するとともに、濃縮装置5および給気バルブ10を制御する。
【0064】
このように、触媒による反応熱を熱回収装置4を用いて再利用するとともに、吸着部2から処理装置3へ送られる濃縮ガスの濃度を一定に制御することにより、処理システム1の自己循環で被処理ガスの除去成分を除去するとともに加熱に要するエネルギーを大幅に低減させることができる。触媒が十分に反応するために必要な入口温度、および触媒燃焼による温度上昇値は、ガスの種類により異なるので、除去するガスの種類に応じて温度および濃度を制御する。
【0065】
図4は、本発明の異なる実施の形態を示し、濃縮ガスの濃度検知精度を更に向上させるために、二次調整部12を設けたものである。
【0066】
吸着部2と濃度検知装置6との間は、ある程度の距離が隔てられるため、吸着部2から濃縮ガスのモニタ用サンプルを取り出すときと、その濃度を検知するときとの間にタイムラグが生じる。また、脱着開始時には、吸着部2の入口側では所定の濃度および温度に達しても、出口側では濃度および温度が低い状態となる。従って、適正な濃度および温度の濃縮ガスが処理装置3に到達するまでに、タイムラグが生じる。このようなタイムラグにより、濃度検知装置6で濃縮ガスの濃度制御を行っても、適正な濃度の濃縮ガスが処理装置3に供給されない状態が生じる。また、最適濃度を検知した後、更に濃縮作用が続いて、濃縮ガスの濃度が必要以上に高くなる場合がある。
【0067】
そこで、図4の例では、吸着部2と熱回収装置4との間に二次調整部12を設けて、濃縮ガスの濃度をさらに調整する。
【0068】
図5は、二次調整部12の内部構成を示す。二次調整部12に送られた濃縮ガスは、一時的に緩衝タンク31に溜める。二次調整部12内に、例えば図2に示す濃度検知装置6と同様の構成を有する濃度検知装置33を設けて、緩衝タンク31から出て熱回収装置4へ流れる濃縮ガスの一部を取り込んで濃度検知する。所定の濃度よりも高い場合には、外気導入用のバルブ32を開き、外気を混合して希釈する。これにより、所定濃度の濃縮ガスを処理装置3に送り込むことができる。また、緩衝タンク31を設けることにより、濃縮ガスの高濃度化を抑えることができる。
【0069】
尚、通常は、濃度検知装置6で濃度を判定した後、少し濃度が上がった状態で濃縮ガスが吸着部2から送り出されるため、二次調整部12では希釈により濃度を下げれば所定濃度ちょうどに調整することができるが、濃度検知装置6による濃度制御を所定の濃度よりも少し高めに設定してもよい。
【0070】
二次調整部12により濃度を再調整する以外の工程は、全て図1の例と同様である。熱回収装置4の直前に二次調整部12を設けることにより、更に濃縮ガスの濃度の精度を向上させ、触媒燃焼効果を正確に維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、工場等から排出される有害ガスを、吸着剤で吸着した後、吸着した有害成分を脱着して酸化触媒により燃焼処理するシステムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略図。
【図2】図1の濃度検知装置の内部構造を示す概略図。
【図3】触媒への入口温度と被処理ガスの浄化率との関係を示すグラフ。
【図4】本発明の異なる実施の形態を示す概略図。
【図5】図4の二次調整部の内部構造を示す概略図。
【図6】従来例を示す概略図。
【図7】従来の異なる例を示す概略図。
【符号の説明】
【0073】
1:処理システム、2:吸着部、2a:加熱空気用空気通路、2b:循環空気通路、2c:濃縮ガス用空気通路、2d:モニタ通路、2e:空気通路、3:処理装置、4:熱回収装置、5:濃縮装置、6:濃度検知装置、7:ファン、8:大気開放部、9:空気取入口、10:給気バルブ、11:流量調整バルブ、12:二次調整部、21:ファン、22:加熱器、23,27:調整器、24,26:温度センサ、25:触媒、31:緩衝タンク、32:バルブ、33:濃度検知装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスの除去成分を吸着部の吸着剤に吸着させた後の脱ガス空気を排気し、前記吸着剤に加熱空気を供給することにより前記吸着剤から除去成分を脱着して濃縮ガスを生成し、該濃縮ガスを触媒燃焼させて除去成分を処理し、処理後の脱ガス空気と前記濃縮ガスとを熱交換するガス処理システムにおいて、
前記吸着剤の脱着時に前記吸着部に加熱ガスを循環させる濃縮装置と、脱着時の濃縮ガスの濃度を検知する濃度検知装置とを設け、前記濃度検知装置により前記濃縮装置を制御することを特徴とするガス処理システム。
【請求項2】
前記吸着部へ脱着用加熱空気を供給する空気通路を備えるとともに該空気通路に外気取入用給気バルブを設け、前記濃度検知装置により前記給気バルブを制御することを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項3】
前記脱着用加熱空気として、前記濃縮ガスを触媒で処理した後の脱ガス空気の一部を用いることを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項4】
前記吸着部から濃度検知用ガスを取り出すためのモニタ通路を備え、前記濃度検知装置は、該モニタ通路上に設けられて前記濃縮ガスを処理する触媒と同じ触媒を備え、この触媒の入口と出口との温度差から前記濃縮ガスの濃度を判定することを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項5】
前記濃縮ガスを処理する触媒の上流側に、前記濃縮ガスの濃度を調整する二次調整部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−14885(P2007−14885A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199108(P2005−199108)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000222956)東洋熱工業株式会社 (35)
【Fターム(参考)】