説明

ガス分散用装置、真空処理装置、基板の処理方法及びカーボンナノチューブの形成方法

【課題】シャワープレート等を取り外さずに、シャワープレートの有無を切り替えて基板の処理や成膜が可能なガス分散用装置、このガス分散用装置を備えた真空処理装置、並びにこの真空処理装置を用いた基板の処理方法及びカーボンナノチューブの形成方法を提供する。
【解決手段】ガス供給管に連通する第1の開口部32及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部33をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジング31と、ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材34であって、複数のガス供給用孔34cが設けられている前方部分34a及びこの孔が設けられていない後方部分34bとからなるガス分散用部材と、ガス分散用部材を滑動せしめるための駆動機構35とを備えてなり、ガス分散用部材を前方に滑動せしめた時に、第2の開口部に前方部分が位置するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分散用装置、真空処理装置、基板の処理方法及びカーボンナノチューブの形成方法に関し、特にシャワープレート等を取り外さずに、シャワープレートの有無を切り替えて成膜が可能なガス分散用装置、このガス分散用装置を備えた真空処理装置、並びにこの真空処理装置を用いて行う基板の処理方法及びカーボンナノチューブの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等に係る技術分野において、薄膜を形成する際に用いられる真空処理装置において、薄膜形成用の原料ガスや反応性ガスやプラズマ(ラジカルやイオン)等を装置内に載置される基板上に供給する場合、シャワープレートやメッシュ状の分散板を通し、それらのガスやプラズマの濃度分布や、ガスやラジカルやイオンの量を制御して実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、図1に示すプラズマCVD装置では、真空処理装置11の天板12にシャワープレート13が設置され、この装置内にはその下部に基板支持ステージ14が設置され、このステージ上に処理される基板Sが載置される。天板12には石英管(例えば、直径50mm)15がフランジ16を介して接続されており、石英管15にはプラズマ発生装置17が接続されており、このプラズマ発生装置により石英管15内にプラズマを発生せしめ、このプラズマがシャワープレート13を介して、真空排気系により真空排気されている真空処理装置11内へ供給されるように構成されている。石英管15には、図示していないガス供給管が接続されている。
【0004】
図1に示すような真空処理装置の場合、シャワープレートや分散板は、通常、装置内部にネジなどの固定具を使用して固定されている。そのため、同じ装置を用いてシャワープレートや分散板を必要としない成膜を行う場合には、シャワープレートや分散板を取り外さなければならないが、その作業は大変な困難を伴う。また、使用するガスやプラズマがすべて分散板等を通過するわけではなく、その外側から回り込む成分もある。このような回り込みを完全に抑えることは困難であるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−141116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、シャワープレート等を取り外さずに、シャワープレートの有無を切り替えて成膜をすることが可能なガス分散用装置、このガス分散用装置を備えた真空処理装置、並びにこの真空処理装置を用いた基板の処理方法及びカーボンナノチューブの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス分散用装置は、ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなり、該ガス分散用部材を前方に滑動せしめた時に、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部が該ハウジング内の一方の側壁に突き当たって該第2の開口部に該前方部分が位置するように構成され、また、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめた時に、該前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように構成されていること特徴とする。
【0008】
上記ガス分散用装置において、ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部にシール部材が設けられているか、又はこの先端部に対向するハウジングの内壁に凹部が設けられ、該凹部内にシール部材が設けられており、真空処理装置内部を真空封止できるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記ガス分散用装置において、ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構が、金属製のベローズ又はレール部材であることを特徴とする。
【0010】
本発明の真空処理装置は、プラズマ発生装置、ガス供給管、及び真空排気系を備えた真空処理装置であって、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置と、該真空処理装置内の下部に設置された基板支持ステージとを備えてなり、該ガス分散用装置が、ガス供給管に連通する第1の開口部及び該真空処理装置の内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなり、該ガス分散用部材を前方に滑動せしめた時に、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部が該ハウジング内の一方の側壁に突き当たって該第2の開口部に該前方部分が位置するように構成され、また、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめた時に、該前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように構成されていること特徴とする。
【0011】
上記真空処理装置において、ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部にシール部材が設けられているか、又はこの先端部に対向するハウジングの内壁に凹部が設けられ、該凹部内にシール部材が設けられており、真空処理装置内部を真空封止できるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
上記真空処理装置において、ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構が、金属製のベローズ又はレール部材であることを特徴とする。
【0013】
本発明の基板の処理方法は、プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部を該ハウジング内の一方の側壁に突き当てて該第2の開口部に該前方部分が位置するように位置決めし、該プラズマを該第2の開口部に配置された該複数のガス供給用孔を通して該真空処理装置内へ供給し、該ガス供給用孔を通して供給されるラジカルを用いて該基板の表面を処理することを特徴とする。
【0014】
本発明の別の基板の処理方法は、プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、該プラズマを該第2の開口部を通して該真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に供給されるイオン成分を用いて該基板の表面を処理することを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに別の基板の処理方法は、プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部を該ハウジング内の一方の側壁に突き当てて該第2の開口部に該前方部分が位置するように位置決めし、該プラズマ発生装置により発生せしめた第1のプラズマを該第2の開口部に配置された該複数のガス供給用孔を通して該真空処理装置内へ供給し、該ガス供給用孔を通って供給されるラジカルを用いて該基板の表面を処理し、次いで該ガス分散用部材を後方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、該プラズマ発生装置により発生せしめた第2のプラズマを該第2の開口部を通して該真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に供給されるイオン成分を用いてラジカル処理された基板表面をさらに処理することを特徴とする。
【0016】
本発明のさらに別の基板の処理方法は、プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、該プラズマ発生装置により発生せしめた第1のプラズマを該第2の開口部を通して該真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に供給されるイオン成分を用いて該基板の表面を処理し、次いで該ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部を該ハウジング内の一方の側壁に突き当てて該第2の開口部に該前方部分が位置するように位置決めし、該プラズマ発生装置により発生せしめた第2のプラズマを該第2の開口部に配置された該複数のガス供給用孔を通して該真空処理装置内へ供給し、該ガス供給用孔を通って供給されるラジカルを用いて該イオン処理された基板表面をさらに処理することを特徴とする。
【0017】
本発明のカーボンナノチューブの形成方法は、プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている、表面にカーボンナノチューブ成長用触媒金属が形成されている基板を処理し、次いでカーボンナノチューブを形成する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分とからなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、該ガス供給官へArガスを流して該プラズマ発生装置により発生せしめたArプラズマを該第2の開口部から該真空処理装置内へ供給し、該Arプラズマ中のイオン成分を用いて該基板の表面に形成されているカーボンナノチューブ成長用触媒金属である金属粒子を微粒化し、次いで該ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部を該ハウジング内の一方の側壁に突き当てて該第2の開口部に該前方部分が位置するように位置決めし、該ガス供給管へ炭素原子含有のカーボンナノチューブ成長用化合物ガスを流して該プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを該第2の開口部を通して該真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内へ供給されるラジカルを用いて基板上にカーボンナノチューブを成長せしめることを特徴とする。
【0018】
本発明の別のガス分散用装置は、ゲートバルブの仕切板部分に複数のガス供給用孔を設けてなるもの、該仕切板部分をくり抜き、そこに複数のガス供給用孔を設けた部材若しくは網状や格子状の部材をはめ込んでなるもの、又は該仕切板部分の代わりに複数のガス供給用孔を設けた部材若しくは網状や格子状の部材を設けてなるものであることが好ましい。本発明の真空処理装置はまた、このガス分散用装置を備えてなることを特徴とし、本発明の基板を処理する及びカーボンナノチューブの形成方法はまた、このガス分散用装置を備えてなる真空得処理装置を用いて行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガス分散用装置を用いることにより、従来のようにシャワープレートや分散板を取り外したり、取り付けたりする作業をすることなく、成膜中にシャワープレートの有無を切り替えて成膜をすることが可能になるという効果を奏すると共に、使用するガスやプラズマの成分がシャワープレートや分散板の外側から回り込むことを完全に抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の真空処理装置の一構成例を模式的に示す概念図。
【図2】本発明のガス分散用装置を配置した真空処理装置の一構成例を模式的に示す概念図。
【図3】本発明のガス分散用装置の一構成例を模式的に示す概念図であり、(a)は、ガス分散用装置の第2の開口部(真空処理装置のガス供給用の開口部に対向している)に、ガス供給用孔が設けられたガス分散用部材の前方部分を位置せしめた状態を示し、(b)は、ガス分散用装置の第2の開口部(真空処理装置のガス供給用開口部に対向している)に、ガス供給用孔が設けられたガス分散用部材の前方部分を位置していない状態を示す。
【図4】図3に示すガス分散用装置の一部を模式的に示す平面図であり、(a)は、ガス分散用装置の第2の開口部に、ガス供給用孔が設けられたガス分散用部材の前方部分を位置せしめた状態を示し、(b)は、ガス分散用装置の第2の開口部に、ガス供給用孔が設けられたガス分散用部材の前方部分を位置していない状態を示す。
【図5】実施例1で得られたカーボンナノチューブが成長している基板の断面SEM像を示す写真。
【図6】比較例1で得られたカーボンナノチューブが成長している基板の表面の写真。
【図7】比較例2で得られたカーボンナノチューブが成長している基板の断面SEM像を示す写真。
【図8】比較例3で得られたカーボンナノチューブが成長している基板の断面SEM像を示す写真。
【図9】比較例4で得られたカーボンナノチューブが成長している基板の断面SEM像を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るガス分散用装置の実施形態によれば、このガス分散用装置は、ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、このハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及びこのガス供給用孔が設けられていない後方部分とからなるガス分散用部材と、このガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなり、ガス分散用部材を前方に滑動せしめた時に、ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部がハウジング内の一方の側壁に突き当たって衝止され、第2の開口部に前方部分が位置するように構成され、また、ガス分散用部材を後方に滑動せしめた時に、前方部分が第2の開口部に位置しなくなるように構成されてなり、前記ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部にシール部材が設けられているか、又はこの先端部に対向するハウジングの内壁に凹部が設けられ、この凹部内にシール部材が設けられ、真空処理装置内部を真空封止できるように構成されており、前記ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構が、金属製のベローズ又はレール部材からなっている。上記第2の開口部は、真空処理装置のガス供給口と対向して設けられている。
【0022】
また、本発明に係る真空処理装置の実施形態によれば、この真空処理装置は、プラズマ発生装置、ガス供給管、及び真空排気系を備えた真空処理装置であって、この真空処理装置の天板の上に固定して設けられた(すなわち、ガス供給管と真空処理装置の天板との間に設けられた)上記したガス分散用装置と、真空処理装置内の下部に設置された基板支持ステージとを備えてなる。かくして、従来のようにシャワープレートや分散板を取り外したり、取り付けたりする作業をすることなく、成膜中にシャワープレートの有無を切り替えて基板を処理したり、成膜をしたりすることが可能になると共に、使用するガスやプラズマやイオンの成分が従来のようにシャワープレートや分散板の外側から回り込むことを完全に抑えることができる。
【0023】
上記したガス分散用装置を備えた真空処理装置の一構成例を模式的に図2に示す。図2に示すプラズマCVD装置では、真空処理装置21の天板22上に本発明のガス分散用装置23が固定して取り付けられている。このガス分散用装置23は、ハウジング24内に分散板として機能する複数のガス供給用孔25a−1が設けられた前方部分25aとガス供給用孔が設けられていない後方部分25bとからなる水平方向に滑動自在のガス分散用部材25を有しており、このガス分散用部材25は水平方向に滑動できるような駆動機構(図示せず)を備えている。また、ハウジング24は、その上面及び下面に、それぞれ、ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置21内部にガスを供給するための第2の開口部を対向して有している。
【0024】
真空処理装置21内にはその下部に基板支持ステージ26が設置され、このステージ上に処理される基板Sが載置される。天板22には石英管(例えば、直径50mm、70mm、116mm等)27がフランジ28を介して接続されており、石英管27にはプラズマ発生装置29が接続されており、このプラズマ発生装置により石英管27内にプラズマを発生せしめ、このプラズマが、ガス分散用部材25を介して、真空排気系により真空排気されている真空処理装置21内へ供給されるように構成されている。石英管27には、図示していないガス供給管が接続されている。
【0025】
プラズマ中のイオン成分を照射させて触媒金属粒子を微粒子化する際には、装置構成によっても異なるが、図2に示す真空処理装置の場合、基板Sと天板22との間の距離は、出来るだけ小さい方が良く、そして距離の上限は100mm程度以内でも時間はかかるが微粒子化は可能である。また、ラジカルを照射させてカーボンナノチューブを成長させる際にも、装置構成によっても異なるが、図2に示す真空処理装置の場合、基板Sと天板22との間の距離は、例えば、30mm程度以上、100mm程度以下であっても良い。30mm程度よりも近づけるとカーボンナノチューブが分散用部材の前方部分の孔配置形状に沿ってしか成長しない場合がある。上記距離は、触媒金属の微粒子化の状態、カーボンナノチューブの成長速度や原料ガス濃度により適宜設定すれば良い。
【0026】
図2に示す真空処理装置の場合、本発明のガス分散用装置を用いるので、従来のようにシャワープレートや分散板を取り外したり、取り付けたりする作業をすることなく、成膜中にシャワープレートの有無を切り替えて成膜が可能になると共に、使用するガスやプラズマの成分がシャワープレートや分散板の外側から回り込むことを完全に抑えることができる。
【0027】
次に、図3(a)及び(b)並びに図4(a)及び(b)を参照して、本発明のガス分散用装置の一構成例について説明する。
【0028】
図3(a)及び(b)に示すように、ガス分散用装置3は、ハウジング31を有し、このハウジングは、その上面及び下面に、それぞれ、ガス供給管に連通する第1の開口部32及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部33を対向して有している。このハウジング31内には、滑動自在のガス分散用部材34であって、複数のガス供給用孔34cが設けられている前方部分34aとガス供給用孔34cが設けられていない後方部分34bとからなるガス分散用部材34が設けられている。また、このガス分散用部材34は、このガス分散用部材を水平方向に滑動せしめるための駆動機構である伸縮自在の金属製ベローズ35を備えている。
【0029】
上記ガス分散用部材34は、このガス分散用部材を前方に滑動せしめて、ガス供給用孔34cが設けられている前方部分34aの先端部がハウジング31内の一方の側壁に突き当たって衝止され、第2の開口部33に前方部分34aが位置するように構成されてなり(図3(a))、また、ガス分散用部材34を後方に滑動せしめて、前方部分が第2の開口部に位置しなくなるように構成されてなる(図3(b))。ガス供給用孔34cが設けられている前方部分34aの先端部にシール部材36が設けられているか、又はこの先端部に対応するハウジングの内壁に凹部38が設けられ、この凹部38内にシール部材36が設けられ、真空処理装置内部を真空封止できるように構成されている。ガス分散用部材34を滑動せしめるための駆動機構は、水平方向に滑動できれば特に制限されないが、例えば上記したような伸縮自在の金属製ベローズであっても良いし、又はレール部材等であっても良い。
【0030】
また、このガス分散用部材34が前後に滑動されるため、ハウジング31の長手方向は、ガス分散用部材34が後方に滑動される距離の分だけ、余裕を持たせた長さにするか、又はこの滑動される距離の分がハウジング31の外側に突出されるように構成すれば良い。
【0031】
さらに、ガス分散用部材34の前方部分34aの先端部がハウジング31内の一方の側壁に突き当たって衝止されて第2の開口部33に前方部分34aが位置するようにする場合、ハウジング31の内壁に設けたストッパ部材として働く突起部31aと、ガス分散用部材の後方部分34bに設けたストッパ部材として働く突起部34dとがシール部材37を介して突き当たって、真空処理装置内を真空封止できるに構成することが好ましい。
【0032】
本発明のガス分散用装置は、上記したように構成され、かつ動作するので、このようなガス分散用装置を用いることにより、従来のようにシャワープレートや分散板を取り外したり、取り付けたりする作業をすることなく、成膜中にシャワープレートの有無を切り替えて基板を処理したり、成膜をしたりすることが可能になると共に、使用するガスやプラズマの成分が従来のようにシャワープレートや分散板の外側から回り込むことを完全に抑えることができる。
【0033】
上記ガス分散用部材34の前方部分34aに設けられるガス供給用孔34cは、通常の分散板などに設ける孔と同様であり、例えば、直径が1〜3mm程度であり、孔と孔との間隔が10mm程度であれば良い。
【0034】
本発明に係る基板の処理方法によれば、この処理方法は、上記した図3に示すガス分散用装置3を備えた真空処理装置を用いて実施する方法であり、例えば、プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、ガス分散用部材34を前方に滑動せしめて、ガス供給用孔34cが設けられている前方部分34aの先端部をハウジング内の一方の側壁に突き当てて衝止せしめ、第2の開口部33に前方部分34aが位置するように位置決めして真空処理装置内を封止し、プラズマを第2の開口部33に配置された複数のガス供給用孔34cを通して真空処理装置内へ供給し、ガス供給用孔34cを通って供給されるラジカルを用いて、載置位置を調整した基板の表面を処理することからなる。プラズマ中のイオン成分は、このガス供給用孔34cにより排除される。
【0035】
上記基板の処理方法において、ガス分散用部材34を前方に滑動せしめるのではなく、後方に滑動せしめれば、ガス供給用孔34cが設けられている前方部分が第2の開口部33に位置しなくなるように位置決めできるので、プラズマを第2の開口部33を通して真空処理装置内へ供給し、基板の載置位置を調整すれば、真空処理装置内に供給される直進するイオン成分を用いて基板の表面を処理することができる。
【0036】
本発明に係る基板の別の処理方法の実施形態によれば、この処理方法は、上記したガス分散用装置を備えた真空処理装置を用いて実施する方法であり、プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部をハウジング内の一方の側壁に突き当てて衝止せしめ第2の開口部に前方部分が位置するように位置決めし、プラズマを第2の開口部に配置された複数のガス供給用孔を通して真空処理装置内へ供給し、ガス供給用孔を通って供給されるラジカルを用いて載置位置を調整した基板の表面を処理し、次いでガス分散用部材を後方に滑動せしめて、ガス供給用孔が設けられている前方部分が第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、別のプラズマを発生せしめ、この別のプラズマを第2の開口部を通して真空処理装置内へ供給し、基板の載置位置を調整して、真空処理装置内に供給される直進するイオン成分を用いてプラズマ処理された基板表面をさらに処理することからなる。
【0037】
本発明に係る基板のさらに別の処理方法の実施形態によれば、この処理方法は、上記したガス分散用装置を備えた真空処理装置を用いて実施する方法であり、プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、ガス分散用部材を後方に滑動せしめて、ガス供給用孔が設けられている前方部分が第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、プラズマを第2の開口部を通して真空処理装置内へ供給し、真空処理装置内に供給される直進するイオン成分を用いて真空処理装置内に載置されている基板表面を処理し、次いでガス分散用部材を前方に滑動せしめて、ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部をハウジング内の一方の側壁に突き当てて衝止せしめ第2の開口部に前方部分が位置するように位置決めし、プラズマ発生装置により発生せしめた別のプラズマを第2の開口部に配置された複数のガス供給用孔を通して真空処理装置内へ供給し、ガス供給用孔を通って供給されるラジカルを用いてイオン処理された基板表面をさらに処理することからなる。
【0038】
本発明のカーボンナノチューブの形成方法は、上記したガス分散用装置を備えた真空処理装置を用いて実施する方法であり、ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部をハウジング内の一方の側壁に突き当てて衝止せしめ第2の開口部に前方部分が位置するように位置決めし、プラズマ発生装置により発生させたArプラズマを第2の開口部に配置された複数のガス供給用孔を通して真空処理装置内へ供給し、ガス供給用孔を通って供給されるArラジカルを用いて基板の表面に形成されているカーボンナノチューブ成長用触媒としての金属粒子(例えば、Fe、Co、Ni等)を微粒子化し、次いでガス分散用部材を後方に滑動せしめて、ガス供給用孔が設けられている前方部分が第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、ガス供給管から公知の炭素原子含有のカーボンナノチューブ成長用化合物ガス(例えば、アセチレン、エチレン、メタン等)を流してプラズマ発生装置によりプラズマを発生せしめ、このプラズマをガス分散用装置の第2の開口部を通して真空処理装置内へ供給し、真空処理装置内へ供給される直進するイオンを用いて基板上にカーボンナノチューブを成長せしめるものである。
【0039】
上記したプラズマは、その発生方法には特に制限はなく、例えばマイクロ波や高周波、直流電流プラズマを用いて発生させれば良い。
【0040】
本発明の基板処理方法は、上記したカーボンナノチューブの形成方法の他にも、例えば、チタン等の金属の表面の酸化物膜を水素イオン処理により除去し、次いで窒素ラジカルを用いて窒化チタン膜(TiN等)形成する場合や、基板表面に形成された膜の保護膜を除去し、次いで成膜する場合等に利用可能である。後者の場合、銅膜の形成されている基板を大気中に取り出す際に銅膜の表面上に形成した保護膜としての窒化チタン膜をAr等のイオンでエッチング除去し、次いで銅膜表面でラジカルを用いて窒化反応を行う場合に利用できる。スパッタリングにより石英基板上に数十nmの銅膜を形成した後に酸化防止のため表面に設けた窒化チタン膜を、CVD装置を用いてAr等のイオンで除去し、次いで炭素系のラジカルにより銅膜上にグラフェンを形成する場合等に利用できる。
【0041】
本発明に係るガス分散用装置の別の実施形態によれば、そのガス分散用装置は、ゲートバルブの仕切板部分に複数の孔を設けてなるもの、この仕切板部分をくり抜き、そこに複数の孔を設けた部材若しくは網状や格子状の部材をはめ込んでなるもの、又はこの仕切板部分の代わりに複数の孔を設けた部材若しくは網状や格子状の部材を設けてなるものであっても良い。このように、ゲートバルブを改造して転用することも可能である。
【実施例1】
【0042】
本実施例では、図2に示すガス分散用装置を備えている真空処理装置(プラズマCVD装置)を用いて表面に触媒層(Fe層)の形成された基板S上にカーボンナノチューブを成長せしめる方法について記載する。
【0043】
まず、複数の孔25a−1が設けられているガス分散用装置23のガス分散用部材25の前方部分25aが真空処理装置のガス供給用開口部上に位置しないように、ガス分散用部材25を後方に滑動せしめ、真空処理装置21のガス供給用開口部が石英管27と障害物なしに連通するようにした。真空処理装置21内に、表面にFe層の形成された基板Sを搬送して、真空処理装置21の天板から30mmの位置になるように基板支持ステージ26上に載置し、真空排気系により2×10−5Pa以下になるまで真空排気した。Arガス:500sccmを1kPaになるまで導入し、そのArガスを導入しながら、基板Sの温度を240℃まで10分間で昇温させ、次いでマイクロ波(500W)を照射させて石英管27内にプラズマを発生させると共に、基板Sの温度を450℃まで40分間で昇温させながら、発生したArプラズマを真空処理装置21内へ導入し、このプラズマ中のイオン成分により触媒層を微粒子化せしめた。この際、基板Sは、プラズマ中の直進するイオン成分が照射されうる高さ、すなわち、真空処理装置21の天板から30mmの位置になるように基板支持ステージ26上に載置した。
【0044】
次いで、真空一貫のまま、複数の孔(直径:φ=1mm、孔間隔:10mm)25a−1が設けられているガス分散用部材25の前方部分25aが真空処理装置のガス供給用開口部上に位置するようにガス分散用部材25を前方に滑動せしめ、石英管27内へアセチレン(C)を導入し、Ar:500sccm、アセチレン:0.1sccm、1kPaの条件でプラズマを生成せしめると共に、得られたプラズマを真空処理装置21内へ導入し、真空処理装置内の基板Sにラジカルを照射せしめ、基板S上にカーボンナノチューブを成長せしめた。その後、プラズマ生成を停止し、排気して基板Sを取り出した。かくして得られたカーボンナノチューブが成長している基板の断面SEM像を図5に示す。図5から明らかなように、基板上に成長したカーボンナノチューブの密度は、ほぼ1012本/cmであった。
【0045】
(比較例1)
実施例1記載の触媒層の微粒子化工程を、ガス分散用部材25の前方部分25aにφ1mmの孔25a−1が10mm間隔で開いたガス分散用装置を用い、この前方部分25aから3mmの距離の位置に基板Sを載置して行った。次いで、実施例1のカーボンナノチューブ成長工程を、上記前方部分25aから30mmの距離の位置に基板Sを載置して行った。かくして得られたカーボンナノチューブが成長している基板の表面の写真を図6に示す。図6から明らかなように、カーボンナノチューブが孔の周辺だけに、すなわち孔配置の形状に沿ってムラに成長していた。かくして、基板がプラズマの吹き出し口に近すぎると触媒が孔配置の形状に沿ってしか微粒子化しないので、カーボンナノチューブの成長がムラになることが分かる。
【0046】
(比較例2)
実施例1記載の触媒層の微粒子化工程の後、一度大気に出してから実施例1記載のカーボンナノチューブ成長工程を行った。かくして得られたカーボンナノチューブが成長している基板の断面SEM像を図7に示す。図7から明らかなように、基板上に成長したカーボンナノチューブの密度は、ほぼ1010本/cmであった。
【0047】
(比較例3)
実施例1記載の触媒層の微粒子化工程の後、真空一貫のまま、ガス分散用部材25を滑動させず、そのままの位置にとどめて実施例1記載のカーボンナノチューブ成長を行った。但し、この成長工程では、基板をプラズマから遠ざけ、天板から130mmとした。かくして得られたカーボンナノチューブが成長している基板の断面SEM像を図8に示す。図8から明らかなように、基板上に成長したカーボンナノチューブの密度は、ほぼ1011本/cmであり、長さが短い上、カーボンナノチューブの外層にダメージが観察された。
【0048】
(比較例4)
実施例1記載の触媒層の微粒子化工程を、複数の孔25a−1が設けられているガス分散用部材25の前方部分25aが真空処理装置のガス供給用開口部上に位置するようにガス分散用部材25を前方に滑動せしめた状態で行った。この場合の微粒子化プラズマ処理のプラズマを実施例1の場合よりも強くして行った(1000W、0.5kPa)。
【0049】
次いで、ガス分散用部材25を滑動させずにそのままの位置においた状態で、実施例1のカーボンナノチューブ成長工程を行った。かくして得られたカーボンナノチューブが成長している基板の断面SEM像を図9に示す。図9から明らかなように、基板上に成長したカーボンナノチューブの密度は、ほぼ1011本/cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、従来のようにシャワープレートや分散板を取り外したり、取り付けたりする作業をすることなく、成膜中にシャワープレートの有無を切り替えて基板を処理したり、成膜をすることが可能になり、また、使用するガスやプラズマの成分がシャワープレートや分散板の外側から回り込むことを完全に抑えることができるので、基板の処理及び基板上への成膜を行う半導体技術分野や、その他の技術分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
3 ガス分散用装置 11 真空処理装置
12 天板 13 シャワープレート
14 基板支持ステージ 15 石英管
16 フランジ 17 プラズマ発生装置
21 真空処理装置 22 天板
23 ガス分散用装置 24 ハウジング
25 ガス分散用部材 25a 前方部分
25a−1 ガス供給用孔 25b 後方部分
26 基板支持ステージ 27 石英管
28 フランジ 29 プラズマ発生装置
31 ハウジング 31a 突起部
32 第1の開口部 33 第2の開口部
34 ガス分散用部材 34a 前方部分
34b 後方部分 34c ガス供給用孔
35 金属製ベローズ 36、37 シール部材
38 凹部 S 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなり、該ガス分散用部材を前方に滑動せしめた時に、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部が該ハウジング内の一方の側壁に突き当たって該第2の開口部に該前方部分が位置するように構成され、また、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめた時に、該前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように構成されていること特徴とするガス分散用装置。
【請求項2】
前記ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部にシール部材が設けられているか、又はこの先端部に対向するハウジングの内壁に凹部が設けられ、該凹部内にシール部材が設けられており、真空処理装置内部を真空封止できるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のガス分散用装置。
【請求項3】
前記ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構が、金属製のベローズ又はレール部材であることを特徴とする請求項1又は2記載のガス分散用装置。
【請求項4】
プラズマ発生装置、ガス供給管、及び真空排気系を備えた真空処理装置であって、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置と、該真空処理装置内の下部に設置された基板支持ステージとを備えてなり、該ガス分散用装置が、ガス供給管に連通する第1の開口部及び該真空処理装置の内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなり、該ガス分散用部材を前方に滑動せしめた時に、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部が該ハウジング内の一方の側壁に突き当たって該第2の開口部に該前方部分が位置するように構成され、また、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめた時に、該前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように構成されていること特徴とする真空処理装置。
【請求項5】
前記ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部にシール部材が設けられているか、又はこの先端部に対向するハウジングの内壁に凹部が設けられ、該凹部内にシール部材が設けられており、真空処理装置内部を真空封止できるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の真空処理装置。
【請求項6】
前記ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構が、金属製のベローズ又はレール部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の真空処理装置。
【請求項7】
プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部を該ハウジング内の一方の側壁に突き当てて該第2の開口部に該前方部分が位置するように位置決めし、該プラズマを該第2の開口部に配置された該複数のガス供給用孔を通して該真空処理装置内へ供給し、該ガス供給用孔を通して供給されるラジカルを用いて該基板の表面を処理することを特徴とする基板の処理方法。
【請求項8】
プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、該プラズマを該第2の開口部を通して該真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に供給されるイオン成分を用いて該基板の表面を処理することを特徴とする基板の処理方法。
【請求項9】
プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部を該ハウジング内の一方の側壁に突き当てて該第2の開口部に該前方部分が位置するように位置決めし、該プラズマ発生装置により発生せしめた第1のプラズマを該第2の開口部に配置された該複数のガス供給用孔を通して該真空処理装置内へ供給し、該ガス供給用孔を通って供給されるラジカルを用いて該基板の表面を処理し、次いで該ガス分散用部材を後方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、該プラズマ発生装置により発生せしめた第2のプラズマを該第2の開口部を通して該真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に供給されるイオン成分を用いてラジカル処理された基板表面をさらに処理することを特徴とする基板の処理方法。
【請求項10】
プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている基板を処理する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分からなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、該プラズマ発生装置により発生せしめた第1のプラズマを該第2の開口部を通して該真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に供給されるイオン成分を用いて該基板の表面を処理し、次いで該ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部を該ハウジング内の一方の側壁に突き当てて該第2の開口部に該前方部分が位置するように位置決めし、該プラズマ発生装置により発生せしめた第2のプラズマを該第2の開口部に配置された該複数のガス供給用孔を通して該真空処理装置内へ供給し、該ガス供給用孔を通して供給されるラジカルを用いて該イオン処理された基板表面をさらに処理することを特徴とする基板の処理方法。
【請求項11】
プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを、ガス供給管を通して真空下の真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内に載置されている、表面にカーボンナノチューブ成長用触媒金属が形成されている基板を処理し、次いでカーボンナノチューブを形成する際に、該真空処理装置の天板の上に固定して設けられたガス分散用装置であって、該ガス供給管に連通する第1の開口部及び真空処理装置内部にガスを供給するための第2の開口部をそれぞれ対向して上面及び下面に有するハウジングと、該ハウジング内に設けられた水平方向に滑動自在のガス分散用部材であって、複数のガス供給用孔が設けられている前方部分及び該孔が設けられていない後方部分とからなるガス分散用部材と、該ガス分散用部材を前後に滑動せしめるための駆動機構とを備えてなるガス分散用装置を用い、該ガス分散用部材を後方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分が該第2の開口部に位置しなくなるように位置決めし、該ガス供給官へArガスを流して該プラズマ発生装置により発生せしめたArプラズマを該第2の開口部から該真空処理装置内へ供給し、該Arプラズマ中のイオン成分を用いて該基板の表面に形成されているカーボンナノチューブ成長用触媒金属である金属粒子を微粒化し、次いで該ガス分散用部材を前方に滑動せしめて、該ガス供給用孔が設けられている前方部分の先端部を該ハウジング内の一方の側壁に突き当てて該第2の開口部に該前方部分が位置するように位置決めし、該ガス供給管へ炭素原子含有のカーボンナノチューブ成長用化合物ガスを流して該プラズマ発生装置により発生せしめたプラズマを該第2の開口部を通して該真空処理装置内へ供給し、該真空処理装置内へ供給されるラジカルを用いて基板上にカーボンナノチューブを成長せしめることを特徴とするカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項12】
ゲートバルブの仕切板部分に複数の孔を設けてなるもの、該仕切板部分をくり抜き、そこに複数の孔を設けた部材若しくは網状や格子状の部材をはめ込んでなるもの、又は該仕切板部分の代わりに複数の孔を設けた部材若しくは網状や格子状の部材を設けてなるものであることを特徴とするガス分散用装置。
【請求項13】
請求項12記載のガス分散用装置を備えてなることを特徴とする真空処理装置。
【請求項14】
請求項12記載のガス分散用装置を備えてなる真空得処理装置を用いて基板を処理する方法。
【請求項15】
請求項12記載のガス分散用装置を備えてなる真空処理装置を用いてカーボンナノチューブを形成することを特徴とするカーボンナノチューブの形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−57206(P2012−57206A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200549(P2010−200549)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】