説明

ガス分析方法及びガス分析装置

【課題】EI処理に基づく質量分析及びソフトイオン化処理に基づく質量分析の両方の測定データを有効に活用することにより、混合ガスの定性分析をリアルタイムで高精度で行う。
【解決手段】EI処理によって第1ガスから得られたイオンの強度を質量分析してファイル1に記憶し(S1)、第1ガスと同じ成分を有する第2ガスからソフトイオン化処理によって得られたイオンの強度を質量分析してファイル2に記憶し(S2)、ソフトイオン化測定データから分子量を親イオンによって判定する(S3)。判定された分子量に対応するマススペクトルをNISTデータベースに基づいて読出し(S6)、ステップS1でファイル1に記憶したイオン強度データとステップS6で読み出されたNISTデータとを比較し(S13)、その比較結果に基づいて第1ガスの成分分子を判定する(S15)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガスに含まれる成分ガスを判定する手法である定性分析を行うガス分析方法及びガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定性分析の手法として、電子衝撃イオン化(Electro Impact Ionization:以下、EIという)に基づく質量分析処理とライブラリ検索システムとを利用した方法が知られている。この方法においては、EI処理によって試料ガスをイオン化し、そのイオンを質量電荷比(m/z)別に分離してイオン強度を測定し、マススペクトル(横軸=m/z(質量電荷比)、縦軸=イオン強度のグラフ)を得る。以下、EIに基づいて得られたマススペクトルの測定データをEI測定データということがある。
【0003】
得られたマススペクトルは、NIST(National Institute of Standards and Technology)等といった参照用データベースに基づいたライブラリ検索システムによって同定、すなわち物質名が判定される。具体的には、参照用データベース内に記憶された複数のマススペクトルデータの個々とEI測定データとをプロファイルフィッティングによって比較して物質名を判定する。
【0004】
EI処理においては、70eVという比較的高いイオン化エネルギを用いているので、ガスによるイオン化の選択性が少なく、ほとんど全ての揮発性化合物に適用可能である。このEI処理においては、ガスの成分分子に70eVの高エネルギを供給することにより、親分子に対応するイオン(親イオン)の生成に伴って、親分子の解裂によってフラグメントイオンが観測される。このフラグメントイオンは、ガスを生成する分子の構造を推定する上で重要な因子を与える。しかしながら、参照用データベースに格納されている複数のマススペクトルは、それぞれ、単一成分のガスに対応するものであり、定性分析の対象であるガスが複数の成分分子から成る混合ガスである場合には、ライブラリ検索システムを用いたとき、フラグメントイオンの生成が逆に妨害イオンとして作用してしまい、成分同定が困難になり、高精度の定性分析ができないという問題がある。
【0005】
このような混合ガスの分析を実現するため、従来、例えば図14に示すガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)による定性分析が提案されている。この方法においては、混合ガスをトラップによって一旦、捕集した後、ガスクロマトグラフ(GC)によって複数、例えばA,B,Cの3つ、の成分ガスを時系列的に分解して質量分析装置(MS)へ導入する。トラップによってガスを捕集するのは、GCによる分離を実施する時間(数分〜十数分)において次の試料を導入できないからである。
【0006】
質量分析装置(MS)では、EI処理、イオン分離、及びイオン強度測定の各工程を実行し、分解された成分ガスA,B,Cの個々のマススペクトルを測定する。質量分析装置(MS)の後段に設けられた演算処理装置は、例えばコンピュータを含んで構成され、図15に示す制御を行う。すなわち、演算処理装置は、各ガス成分A,B,CのEI測定データ(マススペクトル)をメモリに記憶し、その中から1つを選定する。そして、選定したEI測定データと、NISTデータベースから読み出した参照データ(マススペクトル)とを、m/z(質量電荷比)及びイオン強度について比較して、EI測定データに対する物質名を判定し、メモリに記憶する。この処理をその他の成分ガスB,Cに対しても行い、最後に、メモリ内に記憶された物質名から、混合ガスに含まれる成分ガスを特定する。
【0007】
上記GC/MSによれば、1つの親イオンに由来するフラグメントイオンが他の親イオンに由来するフラグメントイオンに重なることが無いので、成分ガスを正確に特定できるが、トラップによってガスを捕集しなければならないので、例えば混合ガスが試料から発生した未知成分試料である場合には、発生ガスをリアルタイムで分析できないという問題がある。また、GC/MSによれば、ラジカルを含む不安定成分ガスの熱変性等が分析の新たな障害になるおそれもある。
なお、リアルタイム分析とは、試料等といったガス源から出るガスであって経時的に成分、成分比(濃度)等が変わるガスを、直接に分析すること、同時又は即時に分析すること、一旦捕集することなく分析すること、二次的な処理を加えることなく分析すること、あるいは、発生したままの成分内容及び成分比を維持した状態のガスを分析することである。
【0008】
ところで、EIの欠点であるフラグメントイオンを抑制できるイオン化として、化学イオン化(Chemical Ionization)、光イオン化(Photo-Ionization)等が知られている。これらのイオン化は、フラグメントイオンを抑制できるということから、ソフトイオン化と呼ばれることがある。このソフトイオン化によれば、ガスの分子イオンのみを選択的にイオン化して観測できるので、混合ガスに含まれる各ガス成分を分子イオンごとにリアルタイムに識別できることになる。しかしながら、ソフトイオン化に基づく質量分析では、得られるものが分子イオン情報のみであり、しかもフラグメントイオンのような構造情報は持っていないため、質量イオンが重複する成分同士は識別できず、必ずしも正確な定性分析を行うことができない、という問題がある。
【0009】
本発明者等は、既に、EI処理とソフトイオン化処理との両方の機能を備えた質量分析装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、EI処理とソフトイオン化処理とをそれぞれ単独で行うこと、及びそれらを同時に行うこと、についての手法について詳しく説明されている。また、EI測定データとソフトイオン化測定データとの両方を得ることによる利点について、簡単に触れられている。しかしながら、EI測定データとソフトイオン化測定データとを、混合ガスの定性分析やその他のガス分析手法に利用することについては、触れられていない。
【0010】
【特許文献1】国際公開WO2007/108211パンフレット(第20〜48頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、EI処理及びライブラリ検索に基づく方法では、分析対象が混合ガスである場合にフラグメントイオンの重なり合いのために定性分析を十分な精度で行うことができないという問題がある。また、PI処理等といったソフトイオン化処理に基づいた測定では、イオンピークが重なる領域での成分分子の識別ができないので、やはり、混合ガスの定性分析を十分な精度で行うことができない。また、GC/MSによる混合ガスの定性分析では、定性分析の精度は向上するがリアルタイム分析ができないという問題がある。
【0012】
本発明者は、混合ガスをリアルタイムで定性分析する際の分析精度の向上を目指して鋭意、努力した。その結果、EI処理を用いた分析を基本とし、その際にソフトイオン化処理を用いた分析の結果を活用すれば、リアルタイム分析を維持しつつ、分析精度の向上につながることに想到した。
従って、本発明は、EI処理に基づく質量分析及びソフトイオン化処理に基づく質量分析の両方の測定データを有効に活用することにより、混合ガスの定性分析をリアルタイムで高精度で行うことができるガス分析方法及びガス分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るガス分析方法は、第1ガスの成分を判定するガス分析方法であって、電子衝撃イオン化処理によって前記第1ガスから得られたイオンの強度を測定する第1質量分析工程と、前記第1ガスと同じ成分を有する第2ガスからソフトイオン化処理によって得られたイオンの強度を測定する第2質量分析工程と、第2質量分析工程で得られたデータから分子量を親イオンによって判定する分子量判定工程と、電子衝撃イオン化法によって励起した場合の化合物のマススペクトルを化合物の分子量別に記憶してなる参照用データベースに基づいて、前記分子量判定工程において判定された分子量に対応するマススペクトルを読出す参照データ読出し工程と、前記第1質量分析工程で得られたイオン強度データと、前記参照データ読出し工程で読み出されたデータとを比較する比較工程とを有し、前記比較工程における比較結果に基づいて前記第1ガスの成分を判定することを特徴とする。
【0014】
上記構成において、第1ガスが定性分析を行おうとしているガスであり、第2ガスがその定性分析の正確性を向上させるために用いる参照用ガスである。これらの第1ガス及び第2ガスは、1つの試料から異なる時点で発生したガスであることもあるし、1つの試料から所定時間内の異なる時点で交互に発生したガスであることもあるし、1つの試料を分割して得られた別々の試料から発生したガスであることもあるし、あるいは、分子構造が同じである別々の試料から発生したガスであることもある。
【0015】
本発明に係るガス分析方法によれば、第1ガスの成分分子と第2ガスの成分分子が同じであり、第1質量分析工程によってEI(電子衝撃イオン化)の測定データを求め、第2質量分析工程によってソフトイオン化の測定データを求め、ソフトイオン化の測定データから第2ガスの成分分子の分子量を推定し、その分子量に基づいて参照用データ(NISTデータ等)を絞り込んで不要なデータを排除した上で、その参照用データとEI測定データとを比較して、第1ガスの成分分子の物質名の特定、すなわち第1ガスの定性分析を行うことにした。このため、NISTデータのような膨大なデータの全てを比較対象とする必要が無くなり、それ故、短時間で正確な定性分析を行うことができる。しかも、比較処理を行う際のメモリ容量及び演算処理時間を大幅に低減することができる。
【0016】
本発明に係るガス分析方法においては、(1)分子量判定工程によって複数の親イオンの分子量が判定され、(2)参照データ読出し工程によって複数の親イオンの分子量の個々に対応するマススペクトルが読み出され、(3)比較工程では、それら複数のマススペクトルを合成して合成マススペクトルを求め、第1質量分析工程で得られたイオン強度データと前記合成マススペクトルとを比較することができる。
【0017】
また、本発明に係るガス分析方法においては、(1)分子量判定工程によって複数の親イオンの分子量が判定され、(2)参照データ読出し工程によって複数の親イオンの分子量の個々に対応するマススペクトルが読み出され、(3)前記比較工程では、読み出されたマススペクトルが第1質量分析工程で得られたイオン強度データと1つづつ比較されるものとすることができる。そしてこの場合には、複数のマススペクトルは分子量の小さいものから順に比較され、さらに、個々の比較後に当該分子量に対応するマススペクトルを比較前のイオン強度データから減算することが望ましい。
【0018】
一般に、マススペクトルの検索アルゴリズムは、イオン強度の高い信号と分子量の大きい信号を用いてプロファイルフィッティングするため、分析対象が混合ガスの場合、分子量の小さい成分は、大きい分子のフラグメントと区別し難くなり、定性することが難しい。ソフトイオン化では低質量成分の情報が分かるので、この情報を利用して低質量成分から先に検索を行うことにすれば、従来は検索にかかりにくかった低質量成分を確実に検索対象にすることができる。
【0019】
本発明に係るガス分析方法においては、ソフトイオン化に基づくデータから複数の親イオン間の強度比を求め、参照用データベースから読み出したマススペクトルにそのイオン強度比を掛けることが望ましい。イオン強度比は、とりもなおさず各成分分子の混合ガス全体に対する濃度比である。ライブラリスペクトル(すなわち参照用データベース)のデータはイオン強度が規格化されているので、比較処理及び減算処理には実際の強度ファクタが入っていない。発生ガスの量に関する情報をソフトイオン化測定データから入手し、その情報を検索アルゴリズムに付加することで定性確率を向上することができる。
【0020】
本発明に係るガス分析方法においては、ソフトイオン化の測定データに基づいて判定された分子成分に対応する化合物のイオン化率を化合物の分子量別に記憶してなるイオン化率データベースから読出し、参照用データベースから読み出された分子成分ごとのマススペクトルに当該分子量に対応するイオン化率を掛けることが望ましい。そして、その掛け算処理の後の参照用データとEI測定データとを比較することが望ましい。
【0021】
次に、本発明に係るガス分析装置は、第1ガスの成分を判定するガス分析装置であって、(1)電子衝撃イオン化処理によって前記第1ガスをイオン化し、そのイオンをm/zごとに分離し、m/zごとのイオンの強度を測定する第1質量分析手段と、(2)前記第1ガスと同じ成分を有する第2ガスをソフトイオン化処理によってイオン化し、そのイオンをm/zごとに分離し、m/zごとのイオンの強度を測定する第2質量分析手段と、(3)第2質量分析手段によって得られたデータから分子量を親イオンによって判定する分子量判定手段と、(4)電子衝撃イオン化処理によって励起した場合の単一成分の化合物のマススペクトルを化合物の分子量別に記憶してなる参照用データベースに基づいて、前記分子量判定手段によって判定された分子量に対応するマススペクトルを読出す参照データ読出し手段と、(5)前記第1質量分析手段によって得られたイオン強度データと、前記参照データ読出し手段によって読み出されたデータとを比較することにより、前記第1ガスの成分を判定するする判定手段とを有することを特徴とする。
【0022】
上記構成において、分子量判定手段、参照データ読出し手段、及び判定手段は、例えば、コンピュータのCPUとメモリ内に記憶されたプログラムとによって実現される機能によって達成することができる。
【0023】
本発明に係るガス分析装置によれば、第1ガスの成分分子と第2ガスの成分分子が同じであり、第1質量分析手段によってEIの測定データを求め、第2質量分析手段によってソフトイオン化の測定データを求める。そして、分子量判定手段によってソフトイオン化の測定データから第2ガスの成分分子の分子量を推定する。そして、推定したその分子量に基づいて、参照データ読出し手段によって参照用データ(NISTデータ等)を絞り込んで不要なデータを排除する。そして、その参照用データとEI測定データとを判定手段によって比較して、第1ガスの成分分子の物質名の特定、すなわち第1ガスの定性分析を行う。以上の構成要件の組合せの結果、NISTデータのような膨大なデータの全てを比較対象とする必要が無くなり、それ故、短時間で正確な定性分析を行うことができる。しかも、比較処理を行う際のメモリ容量及び演算処理時間を大幅に低減することができる。
【0024】
本発明に係るガス分析装置において、(1)分子量判定手段は複数の親イオンの分子量を判定し、(2)参照データ読出し手段は、判定された前記複数の親イオンの分子量の個々に対応するマススペクトルを読み出し、(3)前記判定手段は、それら複数のマススペクトルを合成して合成マススペクトルを求め、第1質量分析手段によって測定されたイオン強度データと前記合成マススペクトルとを比較することができる。
【0025】
本発明に係るガス分析装置において、(1)分子量判定手段は複数の親イオンの分子量を判定し、(2)参照データ読出し手段は、判定された前記複数の親イオンの分子量の個々に対応するマススペクトルを読み出し、(3)前記判定手段は、読み出されたマススペクトルを1つずつ、前記第1質量分析手段によって測定されたイオン強度データと比較することができる。そして、この場合には、(4)前記判定手段は、読み出されたマススペクトルを分子量の小さいものから順に比較し、個々の比較後に当該分子量に対応するマススペクトルを比較前のイオン強度データから減算することが望ましい。
【0026】
本発明に係るガス分析装置において、前記判定手段は、第1質量分析手段によって測定した前記複数の親イオン間の強度比を求め、前記参照用データベースから読み出したマススペクトルにイオン強度比を掛けることが望ましい。
【0027】
また、本発明に係るガス分析装置は、化合物のイオン化率を化合物の分子成分別に記憶してなるイオン化率データベースをさらに有することができ、そして、前記判定手段は、前記判定された分子成分に対応するイオン化率を前記イオン化率データベースから読出し、前記参照用データベースから読み出された分子成分ごとのマススペクトルに当該分子成分に対応するイオン化率を掛けることが望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るガス分析方法及びガス分析装置によれば、測定によって得られたEI測定データを膨大なNISTデータと直接的に検索するのではなく、PI測定データによって得られた分子量及び発生ガス数のデータを有効に活用してNISTデータを予め絞り込んだ状態でEI測定データと比較する。このため、最終的に得られる判定結果は非常に正確であり、演算の対象となるデータ数を大きく減じることができ、しかも、メモリ容量及び演算処理時間を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(ガス分析方法及びガス分析装置の第1実施形態)
以下、本発明に係るガス分析方法及びガス分析装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0030】
図1は、本発明に係るガス分析方法を実施するためのガス分析装置の一実施形態を示している。このガス分析装置1は、EI質量分析装置2、ソフト質量分析装置3、画像表示装置4、プリンタ6、入力装置7、及び制御装置8を有している。画像表示装置4は、例えば液晶表示装置等といったフラットディスプレイによって構成されている。プリンタ6は、例えば静電転写方式のプリンタによって構成されている。入力装置7は、マウス、キーボード等によって構成されている。
【0031】
EI質量分析装置2は、例えば、図2(a)に示すように、試料処理部10aと、電子衝撃イオン化装置(以下、EI装置ということがある)9と、イオン分離装置11aと、イオン強度検出装置12bと、それらの動作を制御するMS制御装置13とを有している。試料処理部10aは、試料を固定配置できる任意の構造を有しており、さらに試料配置位置の周囲に温度調整器を有している。温度調整器はヒータ及び必要に応じて冷却器を有しており、試料S1の温度を所定のプログラムに従って昇温及び必要に応じて降温させる。本実施形態では、試料S1から発生するガスがガス分析の対象となる。
【0032】
EI装置9は、導入されたガスを構成している分子をイオン化する装置である。このEI装置9は、例えば、分子に電子を衝突させて、分子中の電子を放出させることにより、イオンを生成する手法である。分子に当てる電子は、例えばフィラメントへ通電を行うことにより、そのフィラメントから熱電子として取り出すことができる。分子に対応するイオンは親イオンと呼ばれることがある。また、分子に電子を衝突させた際、分子が解裂することにより、広いm/z(質量電荷比)範囲内でフラグメントイオンが親イオンと共に発生する。親イオンはガスを構成する分子の分子量に関連する情報を与え、フラグメントイオンは分子の構造に関する情報を与える。
【0033】
イオン分離装置11aは、生成されたイオンを質量電荷比(m/z)別に分離してイオン強度検出装置12aへ供給するものであり、例えば、電場や磁場を利用してイオンを質量ごとに分離する。電場を利用するものとして、4つの棒状電極を互いに平行に並べ、それらに印加する電圧を制御することによりイオンを質量別に分離する四重極形イオン分離装置を用いることができる。イオン強度検出装置12aは、イオンが当たったときに電子を放出する電子増倍管を用いて構成されている。イオン強度検出装置12aの出力端子には、質量電荷比(m/z)ごとのイオン強度(I)が出力される。この関係をグラフとして表示したものがマススペクトルである。EI質量分析装置2の測定結果としては、親イオンのピーク及びフラグメントイオンのピークを含むマススペクトルが得られる。
【0034】
図1のソフト質量分析装置3は、例えば、図2(b)に示すように、試料処理部10bと、ソフトイオン化装置14と、イオン分離装置11bと、イオン強度検出装置12bと、それらの動作を制御するMS制御装置16とを有している。イオン分離装置11b及びイオン強度検出装置12bはEI質量分析装置2で用いたイオン分離装置11a及びイオン強度検出装置12aと同じ構成である。
【0035】
試料処理部10bは、EI質量分析装置2の試料処理部10aと同様に、試料を固定配置できる任意の構造を有しており、さらに試料配置位置の周囲に温度調整器を有している。温度調整器はヒータ及び必要に応じて冷却器を有しており、試料S2の温度を所定のプログラムに従って昇温及び必要に応じて降温させる。通常の測定においては、試料S2は試料S1と同じ物質である。また、温度調整器による昇温及び降温のプログラムはEI質量分析装置2の試料処理部10aにおけるプログラムと正確に一致させられている。つまり、試料S1に熱的な変化が生じる場合には、試料S2にも必ず同じ熱的変化が生じるように、両者の温度が制御される。
【0036】
ソフトイオン化装置14は、導入されたガスを構成している分子をイオン化する装置であり、特にイオンの解裂を発生させることなく、成分分子だけをイオン化するものである。ソフト質量分析装置3のイオン強度検出装置12bの出力端子にも、質量電荷比(m/z)ごとのイオン強度(I)が出力される。ソフト質量分析装置3の測定結果としては、フラグメントイオンを含まず、親イオンのピークのみを含むマススペクトルが得られる。
【0037】
ソフトイオン化装置14は、例えば光イオン化(Photo-Ionization)装置や化学イオン化(Chemical Ionization)装置等を用いて構成されている。光イオン化装置及び化学イオン化装置は、それぞれ、PI装置及びCI装置と呼ばれることがある。PI装置は、分子に光を照射してその分子をイオン化する装置である。光の波長としては、長い方から順に紫外光、真空紫外光、軟X線等が用いられる。レーザ光を用いることもできる。CI装置は、反応ガス(試薬ガスと呼ばれることもある)分子のイオン化されたものをガスの成分分子に衝突させることにより、その成分分子をイオン化するものである。反応ガス分子のイオン化はEIの原理によって行われる。PI処理でもCI処理でも、分子のイオン化の際に解裂が生じることなく、従って、分子量関連のイオンだけを得ることができる。
【0038】
図1において、EI質量分析装置2とソフト質量分析装置3は別々の装置として設置されている。そして、測定対象である試料S1はEI質量分析装置2の試料処理部10a内の所定位置に装着される。また、参照試料S2がソフト質量分析装置3の試料処理部10b内の所定位置に装着される。測定試料S1と参照試料S2は互いに分子成分及び分子構造が全く同じ物質である。例えば、1つの物質を分割して測定試料S1と参照試料S2とが得られている。
【0039】
図1の制御装置8はコンピュータを用いて構成されている。具体的には、制御装置8は、CPU(Central Processing Unit/中央演算制御装置)17と、メモリ18と、NIST(National Institute of Standards and Technology)テーブル19と、イオン化率テーブル21とを有している。CPU17は、周知の通り、コンピュータによって種々の機能を実現させるための演算を行ったり、コンピュータ内の各種機器の動作の制御を行ったりする。メモリ18は種々の情報を所定の処理形式で記憶するための記憶媒体であり、機械式メモリや半導体メモリによって構成されている。メモリ18には、コンピュータの内部メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)も含まれている。CPU17によって行われる処理は、RAMを一時記憶領域として用いて行われることがある。
【0040】
メモリ18の内部には、後述する定性分析を実行するためのプログラムソフトや、各種のデータを記憶するためのファイル領域や、各種のデータを記憶するためのメモリ領域が設けられている。NISTテーブル19は、各種の物質をEI処理によってイオン化した上で質量分析を行った場合のマススペクトルを記憶して成る周知のデータテーブルであり、混合物でない単一成分から成る化合物の130万件程度のマススペクトルが格納されている。例えば、図3に示すように、m/z(質量電荷比)、化合物名、及びEIマススペクトルがそれぞれ対応付けられて記憶されている。図3では、例として、(m/z)=78、92、106に対応するデータ例を示している。
【0041】
例えば、図1において、入力装置7を操作してCPU17を通してNISTテーブル19へ(m/z)=78の化合物を検索すると、図4に示す検索結果が得られ、それが画像表示装置4の画面上に表示される。(m/z)=78を指示すると、図4の左欄22に示すように、図3のアルシン(Arsine)及びベンゼン(Benzene)を含む17種類の化合物が(m/z)=78に該当する化合物であるとしてリストアップされる。その他の(m/z)値に関しても、通常、複数の化合物がリストアップされる。
【0042】
図1のイオン化率テーブル21には、例えば図5に示すように、種々の化合物のイオン化率が(m/z)別に記憶されている。これらの値は、予め実験によって求めたもの、あるいは文献値である。
【0043】
以下、上記構成より成るガス分析装置1によって実施されるガス分析方法を図6に示すフローチャートを用いて説明する。なお、本実施形態では種々のガスを測定対象とできるのであるが、これからの説明では、理解を分かり易くするために、ベンゼン(m/z=78)、トルエン(m/z=92)、及びキシレン(m/z=106)の3つの分子を成分とする混合ガスを測定対象とする。もちろん、分析前においては、その混合ガス中に上記の3つの物質が含まれていることは分かっていない。また、本実施形態では、PI(光イオン化)処理によってソフトイオン化が行われるものとする。
【0044】
オペレータは、まず図1において、未知試料S1を分割して参照試料S2を作る。そして、未知試料S1をEI質量分析装置2の試料処理部10aの所定位置に装着し、参照試料S2をソフト質量分析装置3の試料処理部10bの所定位置に装着する。そして、両装置内に内蔵された温度調整装置を作動して、測定試料S1及び参照試料S2が正確に同じ温度変化を呈するように温度制御する。この温度変化の際、試料S1及びS2に熱的変化が生じてガスが発生する。本実施形態では、測定試料S1から発生したガスの成分ガスを判定する分析、すなわち定性分析が行われる。
【0045】
測定試料S1の発生ガスはEI処理に基づいて質量分析され、参照試料S2の発生ガスはPI処理に基づいて質量分析される。例えば、EI質量分析により、図7(a)に示すマススペクトルが測定結果として得られる。ベンゼン、トルエン、キシレンの各成分の(m/z)は、それぞれ、78、92、106であるが、EI処理に固有のフラグメントイオンが各成分の分子構造に応じて発生しており、広い範囲の(m/z)にわたってイオンピークが現れている。他方、図1のPI質量分析装置3によって行われたPI質量分析により、例えば、図7(b)に示すマススペクトルが測定結果として得られる。PIではフラグメントイオンが発生せず、親イオンのみが発生するので、(m/z)=78、92、106の3種類の親イオンが現れている。
【0046】
図1のCPU17は、図6のステップS1において、図7(a)のEI測定データをファイル1に記憶する。また、ステップS2において、図7(b)のPI測定データをファイル2に記憶する。次に、CPU17は、ステップS3において、ファイル2に記憶された図7(b)のPI測定データから、発生ガスの(m/z)=78、92、106を判定し、さらに発生ガス数が3個であることを判定し、これらをメモリに記憶する。このとき、発生ガスの物質名までは分からない。さらに、CPU17は、ステップS4において、ファイル2に記憶された図7(b)のPI測定データから、発生ガスの成分分子のイオン強度比dを判定する。本実施形態では、(m/z)=78、92、106のイオン強度比dが、それぞれ、50、100、75であった。イオン強度比は、とりもなおさず、各成分分子の混合物全体に対する濃度比である。
【0047】
次に、CPU17は、ステップS5において、3つの(m/z)のうちの最も小さいもの78を選定し、さらにステップS6において、このイオン種のNISTデータをNISTテーブル19から参照用マススペクトルデータとして読み出す。このとき、NISTテーブル19からは、図8(a)に示すベンゼンのマススペクトル(m/z=78)を含み、それ以外にも(m/z)=78と判定した多数の化合物が検索される。
【0048】
次に、ステップS7において、読み出された多数の参照用データに(m/z)=78に相当するイオン強度比dを掛ける。これは、NISTデータが規格化された値である一方で、実際の発生ガスでは図7(b)に示すように各分子成分間で強度が異なっているので、その強度差を補償するために行われるものである。
【0049】
次に、ステップS8において、図1のイオン化率テーブル21から(m/z)=78の物質のイオン化率IZを読出し、さらにステップS9でそのイオン化率をNISTデータに掛ける。これは、NISTデータが規格化された値である一方で、実際の発生ガス内の各分子間ではイオン化率が異なっているので、その相違を補償するために行われるものである。
【0050】
以上により、(m/z)=78の分子に関する参照用データが生成され、これらのデータはファイル3に記憶される。そして、ステップS3でメモリ1内に記憶された(m/z)のうち、処理が終わった(m/z)=78を除去する(ステップS10)。そして、ステップS11において、全ての成分分子について処理が終わったかどうかを判定し、終わっていなければ(ステップS11でNo)、ステップS5へ戻って、残りの(m/z)=92、106について、参照用EIデータ(ステップS9)を生成する処理を繰り返す。
【0051】
なお、これらの処理においては、図8(b)に示す(m/z)=92のトルエン及びその他の(m/z)=92に相当する分子に対して処理が行われる。そして、さらには、図9(a)に示す(m/z)=106のキシレン及びその他の(m/z)=106に相当する分子に対して処理が行われる。そして、最後の(m/z)までの処理が終わると、ステップS9のファイル3内には、(m/z)=78、92、106に対応した全ての参照用EIデータが蓄積されている。
【0052】
その後、CPU17は、ステップS12において、ステップS9のファイル3内に蓄積された(m/z)=78、92、106の3種類のEIデータを1つずつ合成する。その合成結果は、例えば、図9(b)に示すようなマススペクトルとなる。その後、その合成EIデータをステップS1でファイル1に記憶したEI測定データ(図7(a)参照)と比較する。具体的には、(m/z)及びイオン強度とを周知の所定のアルゴリズムに従って比較してヒット率%を演算する。そして、そのヒット率%が所定の値以上である場合に、そのときの合成EIデータを構成している3種の物質名及び混合比を、分析結果又は分析結果候補として決定する。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、発生ガス内の親イオンを推定し(ステップS3)、推定した親イオンのNISTデータを読出し(ステップS5〜S11)、読み出した成分分子ごとのNISTデータを合成した上でその合成データをEI測定データと比較する(ステップ12〜14)、という処理を繰り返すことにより、EI測定データに含まれた分子を判定することにした。
【0054】
この方法によれば、測定によって得られたEI測定データを膨大なNISTデータと直接的に検索するのではなく、PI測定データによって得られた分子量及び発生ガス数のデータを有効に活用してNISTデータを予め絞り込んだ状態でEI測定データと比較するものである。このため、最終的に得られる判定結果は非常に正確であり、演算の対象となるデータ数を大きく減じることができ、しかも、メモリ容量及び演算処理時間を大きく低減することができる。
【0055】
(ガス分析方法及びガス分析装置の第2実施形態)
図10は、本発明に係るガス分析方法及びガス分析装置の他の実施形態の主要部分であるフローチャートを示している。本実施形態の機械的な構成は図1に示した先の実施形態と同じである。異なっているのは、メモリ18内に格納された定性分析プログラムによって実現される処理内容である。以下、その処理内容について説明する。
【0056】
本実施形態においても種々の試料を測定対象とできるのであるが、これからの説明では、やはり理解を分かり易くするために、ベンゼン(m/z=78)、トルエン(m/z=92)、及びキシレン(m/z=106)の3つの分子を成分とする混合ガスを測定対象とする。もちろん、分析前においては、その混合ガス中に上記の3つの物質が含まれていることは分かっていない。また、本実施形態でも、PI(光イオン化)によってソフトイオン化が行われるものとする。
【0057】
先の実施形態において説明したように、図1において、EI質量分析装置2によってEI測定データ(図7(a)参照)が得られる。また、PI質量分析装置3によってPI測定データ(図7(b)参照)が得られる。EI測定データはフラグメントイオンを含んでおり、PI測定データはフラグメントイオンのない親イオンのみを含んでいる。
【0058】
図1のCPU17は、図10のステップS21において、図7(a)のEI測定データをファイル1に記憶する。また、ステップS22において、図7(b)のPI測定データをファイル2に記憶する。次に、CPU17は、ステップS23において、ファイル2に記憶された図7(b)のPI測定データから、発生ガスの(m/z)=78、92、106を判定し、さらに発生ガス数が3個であることを判定し、これらをメモリに記憶する。このとき、発生ガスの物質名までは分からない。さらに、CPU17は、ステップS24において、ファイル2に記憶された図7(b)のPI測定データから、発生ガスの成分分子のイオン強度比dを判定する。本実施形態では、(m/z)=78、92、106のイオン強度比dが、それぞれ、50、100、75であった。イオン強度比は、とりもなおさず、各成分分子の混合物全体に対する濃度比である。
【0059】
次に、CPU17は、ステップS25において、3つの(m/z)のうちの最も小さいもの78を選定し、さらにステップS26において、このイオン種のNISTデータをNISTテーブル19から参照用マススペクトルデータとして読み出す。このとき、NISTテーブル19からは、図8(a)に示すベンゼンのマススペクトル(m/z=78)を含み、それ以外にも(m/z)=78と判定した多数の化合物が検索される。
【0060】
次に、ステップS27において、読み出された多数の参照用データに(m/z)=78に相当するイオン強度比dを掛ける。これは、NISTデータが規格化された値である一方で、実際の発生ガスでは図7(b)に示すように各分子成分間で強度が異なっているので、その強度差を補償するために行われるものである。
【0061】
次に、ステップS28において、図1のイオン化率テーブル21から(m/z)=78の物質のイオン化率IZを読出し、さらにステップS29でそのイオン化率をNISTデータに掛ける。これは、NISTデータが規格化された値である一方で、実際の発生ガス内の各分子間ではイオン化率が異なっているので、その相違を補償するために行われるものである。
【0062】
以上により、(m/z)=78の分子に関する参照用データが生成され、これらのデータはファイル3に記憶される。そして、ステップS3でメモリ1内に記憶された(m/z)のうち、処理が終わった(m/z)=78を除去する(ステップS30)。そして、ステップS31において、(m/z)=78の分子に関する複数の参照用データの個々についての、ステップS21のファイル21に記憶されたEI測定データに対するヒット率を演算する。このヒット率は、(m/z)及びイオン強度に関して参照用データとEI測定データとを周知の所定のアルゴリズムに従って比較して演算される。複数の参照用データの中に所定のヒット率以上のヒット率のものがあれば、その化合物名をステップS33においてファイル4に記憶する。
【0063】
この検索処理を(m/z)=78で読み出された全ての化合物に対して行い、それが終了したときには、ステップS34において、ファイル4に記憶された全てのヒット化合物のマススペクトルをステップS21のファイル1内のEI測定データから減算する。これにより、残りの(m/z)=92、106に対応した化合物に対して検索処理を行う際の参照用データの数を絞り込むことができる。
【0064】
一般に、マススペクトルの検索アルゴリズムは、イオン強度の高い信号と分子量の大きい信号を用いてプロファイルフィッティングするため、混合ガスの場合、分子量の小さい成分は、大きい分子のフラグメントと区別し難くなり、定性することが難しい。これに対し本実施形態のように、(m/z)の小さい分子から順に検索処理を行うことにすれば、従来は分子量が小さいが故に検索にかかり難かった分子成分を確実に検査対象にすることができるようになる。
【0065】
以上により(m/z)=78の分子に関する検索が終わってその結果がファイル4に記憶された後、残りの(m/z)=92、106の分子に対しても同様にして検索が行われ(ステップS35でNo〜S34)、その結果、ファイル4内にヒット率が高い(m/z)=92、106の分子が記憶される。そして、全ての成分分子に対する検索処理が終わった後(ステップS35でYES)、ステップ36において、ファイル4内に記憶されている分子名及び混合比を分析結果又は分析結果候補として決定する。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、発生ガス内の親イオンを推定し(ステップS23)、推定した親イオンのNISTデータを読出し(ステップS25〜S30)、読み出した成分分子ごとのNISTデータをEI測定データと比較する(ステップ31)、という処理を繰り返すことにより、EI測定データに含まれた成分分子が何であるかを判定することにした。
【0067】
この方法によれば、測定によって得られたEI測定データを膨大なNISTデータと直接的に検索するのではなく、PI測定データによって得られた分子量及び発生ガス数のデータを有効に活用してNISTデータを予め絞り込んだ状態でEI測定データと比較するものである。このため、最終的に得られる判定結果は非常に正確であり、演算の対象となるデータ数を大きく減じることができ、しかも、メモリ容量及び演算処理時間を大きく低減することができる。
【0068】
(ガス分析方法及びガス分析装置の第3実施形態)
図11は本発明に係るガス分析方法を実施するためのガス分析装置のさらに他の実施形態を示している。ここに示すガス分析装置31が図1に示したガス分析装置1と異なる点は、質量分析装置32に改変を加えたことであり、以下に詳しく説明する。図1と同じ符号で示す要素は同じ要素であり、その説明は省略することにする。
【0069】
図1に示したガス分析装置1においては、EI質量分析装置2とソフト質量分析装置3とをそれぞれ別々の装置として設置した。これに対し、本実施形態では、EI質量分析装置とPI質量分析装置とを1つの質量分析装置32によって構成している。測定対象である試料S1は質量分析装置32の内部の所定位置に装着される。質量分析装置32は、例えば図12に示すように、試料処理部10cと、イオン化装置33と、イオン分離装置11cと、イオン強度検出装置12cとを有している。イオン分離装置11c及びイオン強度検出装置12cはEI質量分析装置2で用いたイオン分離装置11a及びイオン強度検出装置12aと同じ構成である。
【0070】
試料処理部10cは、図2(a)のEI質量分析装置2の試料処理部10aと同様に、試料を固定配置できる任意の構造を有しており、さらに試料配置位置の周囲に温度調整器を有している。温度調整器はヒータ及び必要に応じて冷却器を有しており、試料S2の温度を所定のプログラムに従って昇温及び必要に応じて降温させる。イオン化装置33は、1つのケーシングの中にEI装置とソフトイオン化装置(例えばPI装置)の両方を有している。ケーシングの内部にガスを導入してEI装置を作動すれば、ガスをEI処理によってイオン化でき、一方、ソフトイオン化装置を作動すれば、ガスをソフトイオン化処理によってイオン化できる。
【0071】
通常は、経時的に異なったタイミングでEI装置及びソフトイオン化装置を選択的に作動させて、1つの発生ガスからEI測定データ及びソフトイオン化測定データを得ることができる。なお、異なったタイミングとは、適宜の時間を2つに分割したタイミングであっても良いし、適宜の時間内でEI処理とソフトイオン化処理とを短い時間で交互に繰り返すタイミングであっても良い。以上の構成により、イオン強度検出装置12cの出力端子に、EI測定データ及びソフトイオン化測定データ(例えば、PI測定データ)が別々に得られる。こうして得られたEI測定データ及びソフトイオン化測定データに対して、図6又は図10に示す処理が行われ、発生ガスに含まれる成分分子の物質名及び混合比が決定される。すなわち、発生ガスが定性分析される。この実施形態によれば、単一の発生ガスからEI測定データ及びソフトイオン化測定データの両方を得るので、発生ガスに関してリアルタイムで正確な定性分析を行うことができる。
【0072】
(ガス分析方法及びガス分析装置の第4実施形態)
図13は、本発明に係るガス分析方法を実施するためのガス分析装置のさらに他の実施形態を示している。ここに示すガス分析装置41は、国際公開WO2007/108211パンフレットの図1に開示されて既に公知の装置である。このガス分析装置41は、図11に示した実施形態、すなわち、1つの質量分析装置32でEI処理とソフトイオン化処理の両方を行う構成の実施形態に好適なガス分析装置である。
【0073】
このガス分析装置41の構造の詳細は上記国際公開パンフレットに説明されているので詳しい説明は省略するが、概説すれば、ガス分析装置41は、試料処理部としてのガス発生装置である昇温脱離装置42と、ガスの分析を行う分析装置43とを有する。昇温脱離装置42と分析装置43とはガス搬送装置44によって接続されている。
【0074】
昇温脱離装置42は昇温脱離法に基づいた熱分析を行うためのガス発生部として用いられるものである。昇温脱離法とは、ガスが吸着している固体試料表面の温度を上昇させたときの脱離過程の解析から、ガスの吸着量やガスの吸着状態を知るための分析方法である。この昇温脱離装置42は、試料室R0を形成するケーシング46と、ケーシング46の周囲に設けられた加熱手段としての加熱炉47と、ケーシング46に装着された試料管48とを有する。試料管48は、矢印Aのようにケーシング46に対して着脱可能である。
【0075】
試料管48はその先端において試料Sを支持する。また、試料管48の後部にはガス供給源49が配管51によって接続されている。ガス供給源49はキャリヤガス、例えば不活性ガス、例えばヘリウム(He)ガスを放出する。加熱炉47は、例えば通電によって発熱する発熱線を熱源とする加熱装置によって構成されており、温度制御装置52からの指令に従って発熱する。試料室R0を冷却する必要があるならば、別途、冷却装置が試料室R0に付設される。温度制御装置52はコンピュータ、シーケンサ、専用回路等によって構成される。昇温プログラムは温度制御装置52内の記憶媒体内に記憶されている。
【0076】
温度制御装置52は主制御装置53からの指令に基づいて作動する。主制御装置53は、例えばコンピュータを含んで構成される。主制御装置53には入出力インターフェースを介してプリンタ54、ディスプレイ56、そして入力装置57が接続されている。
【0077】
次に、分析装置43は、分析室R1を形成するケーシング58と、分析室R1内に設けられたイオン化装置59と、イオン分離手段としての四重極フィルタ61と、イオン検出装置62と、質量分析制御装置63とを有する。質量分析制御装置63は主制御装置53に接続されており、イオン化装置59、四重極フィルタ61、及びイオン検出装置62の各要素の動作を制御する。また、質量分析制御装置63の中にはイオン検出装置62によって検出されたイオンの強度を演算するエレクトロメータ64が含まれている。なお、主制御装置53の中には、エレクトロメータ64によって求められたイオン強度に基づいて所定の演算を行うための演算部66が含まれている。この演算部66は、例えば、コンピュータの演算制御装置とソフトウエアとの組み合わせによって構成される。
【0078】
ケーシング58にはターボ分子ポンプ67及びロータリーポンプ68が付設されている。ロータリーポンプ68は分析室R1内の圧力を粗く減圧し、ターボ分子ポンプ67はロータリーポンプ68によって粗く減圧された分析室R1内を真空状態又はそれに近い減圧状態へとさらに減圧する。分析室R1内の圧力は圧力計であるイオンゲージ76によって検出され、その検出結果は電気信号として主制御装置53へ送られる。
【0079】
四重極フィルタ61は、周知の通り、4つの棒状電極(図示せず)を有する。周波数が経時的に変化する高周波交流電圧と所定の大きさの直流電圧とが重畳された状態の走査用電圧がこれらの電極に印加される。この高周波走査用電圧が四重極に印加されることにより、それらの四重極の間を通過するイオンが分子の質量電荷比ごとに分離され、分離された1つのイオンが後段のイオン検出装置62へ送られる。
【0080】
イオン検出装置62は、イオン偏向器及び電子増倍管(いずれも図示せず)を有する。四重極フィルタ61によって選択されたイオンはイオン偏向器によって電子増倍管へ集められた上で電気信号として出力され、その信号がエレクトロメータ64によって計数されてイオン強度信号として出力される。
【0081】
イオン化装置59は、光放出手段としてのPI(Photo-ionization)用ランプ33と、EI(Electron Ionization)装置74とを有する。ランプ73はケーシング58を貫通した状態でそのケーシング58に固定されている。その固定部は封止部材によって気密に封止されている。ランプ73の光放射面はEI装置74に対向している。また、ランプ73の光放射面と反対側の端部はケーシング58の外側に位置している。
【0082】
EI装置74は、通電によって電子を放出する電子発生手段としてのフィラメント(図示せず)と、そのフィラメントを包囲する外部電極(図示せず)と、その外部電極と対を成す内部電極(図示せず)とを有する。外部電極及び内部電極は共にランプ73からの光を透過可能な構造、例えば、網状、螺旋状、透光性部材を用いた構造になっている。
【0083】
EI装置74内において、フィラメントに通電が成されると熱電子が発生し、外部電極と内部電極とに印加された電圧によりその熱電子が加速される。EI装置74の内部にガスが導入されれば、熱電子の衝突によりそのガスがイオン化される。他方、ランプ73が点灯すると、EI装置74の内部に導入されたガスが光によってソフトイオン化される。フィラメントへの通電を所定時間行い、その後、通電を止めてランプ73を所定時間点灯させれば、1回のガス導入に対してEI及びソフトイオン化の両方を行うことができる。また、フィラメントへの通電及び遮電とランプ73の点灯及び消灯とを所定時間内で短時間で交互に繰り返すことによっても、1回のガス導入に対してEI及びソフトイオン化の両方を行うことができる。
【0084】
ガス搬送装置44は、ガスを搬送する内管81と、その内管81を包囲する外管82と、外管82と内管81とによって形成される中間室R2を排気する排気手段としてのロータリーポンプ83とを有する。ロータリーポンプ83の前段には流量調整手段としてのマスフローメータ86が設けられている。ロータリーポンプ83の排気作用により、中間室R2の内部は試料室R0よりも低い圧力に設定できる。中間室R2内の圧力は圧力計であるクリスタルゲージ84によって検出される。この検出結果は電気信号として主制御装置13へ送られる。
【0085】
マスフローメータ86は、ロータリーポンプ83の排気路と外部圧力(本実施形態では大気圧)との間でガスを通流させる要素である。例えば、このマスフローメータ86によって大気ガスをロータリーポンプ83の排気路内へ導入すれば、ロータリーポンプ83で維持している中間室R2の圧力を増圧できる。例えば、当初は10Paに維持されていた圧力を10Paへ増圧できる。
【0086】
ガス搬送装置44に関する上記の構成により、外管82の外部(すなわち、試料室R0の内部)を高圧にし、中間室R2を中間の圧力にし、そして内管81の内部(すなわち、分析室R1の内部)を低圧に、それぞれ設定してそれらの圧力を保持することができる。例えば、試料室R0を10 Pa程度の大気圧に保持し、中間室R2内を10Pa程度の中間圧力に保持し、そして分析室R1の内部を10−3Pa程度の真空状態に保持することができる。このように、高圧力と低圧力との間を排気によって中間圧力とする構造は差動排気構造と呼ばれることがある。
【0087】
上記の差動排気構造は、互いに圧力が異なる試料室R0と分析室R1との間の圧力差を維持しつつ、試料室R0内で発生したガスを内管81によって分析室R1へ搬送するという機能を確実に達成するための構造である。なお、本実施形態では、内管81及び外管82の試料室R0側の端部をオリフィス(すなわち、微細孔)として形成し、それに対向する分析室R1側の端部をオリフィス効果を奏しない普通の大きさの開口として形成している。オリフィスの径は、例えば100μm程度である。このように、内管81及び外管82の試料室側をオリフィスとし、それと反対の分析室側を普通の開口としておけば、試料Sから発生したガスをオリフィスによって効率良く収集して、尚且つ、効率良く分析室R1へ搬送することができる。
【0088】
以上の構成のガス分析装置41によれば、加熱炉47によって加熱された試料Sからガスが発生すると、ガス搬送装置44によってその発生ガスが分析装置43へ搬送される。搬送されたガスはEI装置74及びランプ73によってリアルタイムでEI処理及びPI(ソフトイオン化)処理の両方でイオン化される。そして、エレクトロメータ64によってEI測定データ及びPI測定データの両方が同時に得られる。その後、主制御装置53の演算部66によって図6又は図10に示す処理が実行されて、発生ガスが定性分析される。
【0089】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、以上の説明では、説明を分かり易くするために、ベンゼン、トルエン、キシレンの3種類の化合物を含む混合ガスを測定対象の発生ガスと考えたが、測定対象となり得る混合ガスがそれ以外の任意の成分ガスによって形成され得ることは、もちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係るガス分析方法を実施するガス分析装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の装置の主要部である質量分析装置を示しており、(a)はEI方式、(b)はソフトイオン化方式に従った質量分析装置をそれぞれ示している。
【図3】参照用データベースの記憶内容の一例を示す図である。
【図4】図3のデータベースに基づく検索画面の一例を示す図である。
【図5】イオン化率データベースの記憶内容の一例を示す図である。
【図6】本発明に係るガス分析方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図7】図6の処理中に得られる測定データの一例を示しており、(a)はEI測定データ、(b)はPI測定データを示している。
【図8】図3のデータベースに記憶されたデータの一例をマススペクトルで示す図であり、(a)はベンゼン、(b)はトルエンのマススペクトルである。
【図9】(a)は図3のデータベースに記憶されたキシレンのマススペクトルを示し、(b)は図6の処理中に生成される合成マススペクトルを示す図である。
【図10】本発明に係るガス分析方法の他の実施形態を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係るガス分析方法を実施するガス分析装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【図12】図11の装置の主要部である質量分析装置を示す図である。
【図13】本発明に係るガス分析装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【図14】従来のガス分析装置の一例を示す図である。
【図15】図14の装置によって実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1.ガス分析装置、 2.EI質量分析装置、 3.ソフト質量分析装置、
8.制御装置、 9.EI装置、 10a,10b,10c.試料処理部、
18.メモリ、 19.NISTテーブル、 21.イオン化率テーブル、
22.左欄、 31.ガス分析装置、 32.質量分析装置、 33.イオン化装置、
41.ガス分析装置、 42.昇温脱離装置、 43.分析装置、
44.ガス搬送装置、 46.ケーシング、 47.加熱炉、 48.試料管、
49.ガス供給源、 51.配管、 52.温度制御装置、 53.主制御装置、
54.プリンタ、 56.ディスプレイ、 58.ケーシング、 59.イオン化装置、
61.四重極フィルタ(イオン分離手段)、 62.イオン検出装置、
63.質量分析制御装置、 64.エレクトロメータ、 66.演算部、
67.ターボ分子ポンプ、 68.ロータリーポンプ、 73.PI用ランプ、
74.EI装置、 76.イオンゲージ、 81.内管、 82.外管、
83.ロータリーポンプ、 84.クリスタルゲージ、 86.マスフローメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガスの成分を判定するガス分析方法であって、
電子衝撃イオン化処理によって前記第1ガスから得られたイオンの強度を測定する第1質量分析工程と、
前記第1ガスと同じ成分を有する第2ガスからソフトイオン化処理によって得られたイオンの強度を測定する第2質量分析工程と、
第2質量分析工程で得られたデータから分子量を親イオンによって判定する分子量判定工程と、
電子衝撃イオン化法によって励起した場合の化合物のマススペクトルを化合物別に記憶してなる参照用データベースに基づいて、前記分子量判定工程において判定された分子成分に対応するマススペクトルを読出す参照データ読出し工程と、
前記第1質量分析工程で得られたイオン強度データと、前記参照データ読出し工程で読み出されたデータとを比較する比較工程と、を有し、
前記比較工程における比較結果に基づいて前記第1ガスの成分を判定する
ことを特徴とするガス分析方法。
【請求項2】
請求項1記載のガス分析方法において、前記第1ガス及び前記第2ガスは、
1つの試料から異なる時点で発生したガスか、
1つの試料から所定時間内の異なる時点で交互に発生したガスか、
1つの試料を分割して得られた別々の試料から発生したガスか、あるいは
分子構造が同じである別々の試料から発生したガス、
のいずれかであることを特徴とするガス分析方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のガス分析方法において、
前記分子量判定工程によって複数の親イオンの分子量が判定され、
前記参照データ読出し工程によって複数の親イオンの分子量の個々に対応するマススペクトルが読み出され、
前記比較工程では、
それら複数のマススペクトルを合成して合成マススペクトルを求め、
第1質量分析工程で得られたイオン強度データと前記合成マススペクトルとが比較される
ことを特徴とするガス分析方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のガス分析方法において、
前記分子量判定工程によって複数の親イオンの分子量が判定され、
前記参照データ読出し工程によって複数の親イオンの分子量の個々に対応するマススペクトルが読み出され、
前記比較工程では、
読み出されたマススペクトルが第1質量分析工程で得られたイオン強度データと1つづつ比較される
ことを特徴とするガス分析方法。
【請求項5】
請求項4記載のガス分析方法において、
複数のマススペクトルは分子量の小さいものから順に比較され、
個々の比較後に当該分子に対応するマススペクトルを比較前のイオン強度データから減算する
ことを特徴とするガス分析方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のガス分析方法において、
複数の親イオン間の強度比を求め、参照用データベースから読み出したマススペクトルにイオン強度比を掛ける
ことを特徴とするガス分析方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のガス分析方法において、
前記判定された分子成分に対応する化合物のイオン化率を化合物の分子量別に記憶してなるイオン化率データベースから読出し、前記参照用データベースから読み出された分子成分ごとのマススペクトルに当該分子量に対応するイオン化率を掛ける
ことを特徴とするガス分析方法。
【請求項8】
第1ガスの成分を判定するガス分析装置であって、
電子衝撃イオン化処理によって前記第1ガスをイオン化し、そのイオンをm/zごとに分離し、m/zごとのイオンの強度を測定する第1質量分析手段と、
前記第1ガスと同じ成分を有する第2ガスをソフトイオン化処理によってイオン化し、そのイオンをm/zごとに分離し、m/zごとのイオンの強度を測定する第2質量分析手段と、
第2質量分析手段によって得られたデータから分子量を親イオンによって判定する分子量判定手段と、
電子衝撃イオン化処理によって励起した場合の単一成分の化合物のマススペクトルを化合物の分子量別に記憶してなる参照用データベースに基づいて、前記分子量判定手段によって判定された分子量に対応するマススペクトルを読出す参照データ読出し手段と、
前記第1質量分析手段によって得られたイオン強度データと、前記参照データ読出し手段によって読み出されたデータとを比較することにより、前記第1ガスの成分を判定するする判定手段と、
を有することを特徴とするガス分析装置。
【請求項9】
請求項8記載のガス分析装置において、
前記分子量判定手段は複数の親イオンの分子量を判定し、
前記参照データ読出し手段は、判定された前記複数の親イオンの分子量の個々に対応するマススペクトルを読み出し、
前記判定手段は、
それら複数のマススペクトルを合成して合成マススペクトルを求め、
第1質量分析手段によって測定されたイオン強度データと前記合成マススペクトルとを比較する
ことを特徴とするガス分析装置。
【請求項10】
請求項8記載のガス分析装置において、
前記分子量判定手段は複数の親イオンの分子量を判定し、
前記参照データ読出し手段は、判定された前記複数の親イオンの分子量の個々に対応するマススペクトルを読み出し、
前記判定手段は、
読み出されたマススペクトルを1つずつ、前記第1質量分析手段によって測定されたイオン強度データと比較する
ことを特徴とするガス分析装置。
【請求項11】
請求項10記載のガス分析装置において、
前記判定手段は、
読み出されたマススペクトルを分子量の小さいものから順に比較し、
個々の比較後に当該分子量に対応するマススペクトルを比較前のイオン強度データから減算する
ことを特徴とするガス分析装置。
【請求項12】
請求項8から請求項11のいずれか1つに記載のガス分析装置において、
前記判定手段は、
第1質量分析手段によって測定した前記複数の親イオン間の強度比を求め、前記参照用データベースから読み出したマススペクトルにイオン強度比を掛ける
ことを特徴とするガス分析装置。
【請求項13】
請求項8から請求項12のいずれか1つに記載のガス分析装置において、
化合物のイオン化率を化合物の分子成分別に記憶してなるイオン化率データベースをさらに有し、
前記判定手段は、
前記判定された分子成分に対応するイオン化率を前記イオン化率データベースから読出し、前記参照用データベースから読み出された分子成分ごとのマススペクトルに当該分子成分に対応するイオン化率を掛ける
ことを特徴とするガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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