説明

ガス分析用前処理装置

【課題】 含有水分の少ない排ガスの場合であっても、測定対象成分の溶解損失を招かないで、構成部品の腐食及び冷却器の詰まり並びに測定精度の低下等の原因となる測定妨害成分を確実に除去できるようにする。
【解決手段】 固形分除去用のフィルタ7、ドレンセパレータ8、電子冷却器12が上流側から下流にかけて順に配設されているガス分析用前処理装置1のサンプルガス流路6のドレンセパレータ8下流側に、一定量の希酸液を貯溜しその希酸液中にサンプルガスをバブリングさせて該サンプルガス中の腐食性ガスの大部分の溶解除去及び高温気化物質の固化又は溶解除去を行うバブリング槽9と残留腐食性ガスを分離除去するスクラバ10を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一般廃棄物を1,000℃以上の高温で焼却処理するガス化溶融炉で発生し排出される排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO2 )や窒素酸化物(NOx )等の成分を赤外線ガス分析計を用いて測定し分析する場合において、その排ガス中に含有され測定対象成分と共存している測定妨害成分を除去するために用いられるガス分析用前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス化溶融炉等の高温焼却炉から排出される排ガス中には、SO2 やNOX 等の測定対象成分以外に、その測定妨害成分として、塩素ガス(Cl2)、臭素ガス(Br2)等の難溶性及び塩化水素(HCl)、臭水素(HBr)等の易溶性の腐食性ガスや、少量の高温気化塩類の低温化結晶物質(飛灰ともいう。以下、フライアッシュと称するものを含む)及びダスト等の粉塵が含有されている。これら測定対象成分及び測定妨害成分を含む排ガスをサンプルガスとして吸引し、その吸引したサンプルガスをガス分析部に供給する前段において前述した腐食性ガスやフライアッシュ等の測定妨害成分を除去する前処理装置として、従来一般的には、図3の概略フロー図に示すような構成のものが用いられていた。
【0003】
図3に示す従来一般の前処理装置20は、ガス化溶融炉(図示省略する)の煙道中に挿設されて排ガスを真空ポンプ22を介してサンプルガスSとして吸引採取し、その吸引したサンプルガスSを赤外線ガス分析計なりなるガス分析部23にまで移送し供給するサンプルガス流路21に、その上流側から下流にかけて、サンプルガスS中のダスト等の固形分を除去する一次フィルタ24と、サンプルガスS中の含有水分の凝縮により凝縮水を生成するドレンセパレータ25と、サンプルガスSを冷却し除湿する第1の電子冷却器26と、HClやHBr等の難溶性の腐食性ガスを分離除去する塩素スクラバ27と、フライアッシュを含む残留固形分を除去する二次フィルタ28と、サンプルガスSを分析に適した湿度に調整する第2の電子冷却器29とをこの順に配設して構成されている。
【0004】
このような従来一般のガス分析用前処理装置20によれば、サンプルガスS、即ち、排ガスの含有水分率が20〜30%程度と高い場合は、ドレンセパレータ25で含有水分の凝縮により生成されるところの凝縮水によってHClやHBr等の易溶性の腐食性ガスが溶解除去されるとともに、その凝縮水中にフライアッシュが生成され同時に除去され、また、Cl2やBr2等の難溶性の腐食性ガスは塩素スクラバ27で分離除去されることになり、これによって、ガス分析計23における測定セルなど金属部品の腐食及び電子冷却器26,29の入口部で高温気化塩類が冷却結晶化して発生するフライアッシュによる閉塞(詰まり)等の不都合を防止することが可能である。
【0005】
しかしながら、ガス化溶融炉等の高温焼却炉から排出される排ガスのように、含有水分率が2.5〜4.0%程度と低く、さらに前処理装置20の設置環境温度が高い場合は、ドレンセパレータ25での水分凝縮が起こらない、あるいは、起こったとしても極く僅かな凝縮水が生成されるに過ぎないために、上述したようなHClやHBr等の易溶性腐食性ガスの溶解除去及びフライアッシュの生成除去が不確実、不十分となり、その結果、測定セルなど金属部品の腐食及びフライアッシュによる電子冷却器26,29入口部の閉塞等の不都合の発生は避けられず、前処理装置20の耐久寿命の低下、測定セルの腐食による指示ドリフトなどの発生に起因して測定精度の低下を招くという問題がある。
【0006】
このような従来一般のガス分析用前処理装置20が有する問題を解消する手段として、サンプルガス流路に洗浄水を導入して流路を洗浄し、その洗浄水及びこれにより洗い流されるサンプルガス中のダストやタール等の固形分をサンプルガスと共にバブリングポットに導き、このバブリングポット内に溜まった洗浄水にサンプルガスを気泡通過させる、いわゆる、バブリング作用によりダスト等の固形分を除去した後、サンプルガスをガス分析計に供給するように構成した前処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−322597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示されている従来の前処理装置は、サンプルガス中に含まれているタールやダスト等の固形分を除去する金属フィルタを用いていないため、フィルタを用いる場合のように経時的にフィルタに付着した固形分を除去するための逆洗パージなど高頻度かつ手間のかかるメンテナンスが不要で連続した測定が可能であり、かつ、ダスト等の固形分を効率よく除去できるという利点を有しているものの、洗浄水をサンプルガス流路に流すために、サンプルガス中のSO2 やNOX 等の測定対象成分の溶解損失を招いて所定の成分測定を正確に行うことができないという問題がある。また、洗浄水の円滑な流れを確保するために、サンプルガス流路に傾斜勾配をつけたり、流路配管径を大きくする必要があり、それに伴ってサンプルガス圧が変動し、成分測定に悪影響を及ぼすという問題もあった。
【0009】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、含有水分の低い排ガスであっても、測定対象成分の溶解損失を招くことなく、測定妨害成分を確実に除去して所定の成分測定を高精度に、かつ、長期安定性よく行なうことができ、また、メンテナンス性にも優れたガス分析用前処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るガス分析用前処理装置は、煙道を流れる排ガスをサンプルガスとして吸引しそのサンプルガスをガス分析部に供給するまでのサンプルガス流路に、サンプルガス中の固形分を除去するフィルタと、サンプルガス中の含有水分を凝縮させるドレンセパレータと、サンプルガスを分析に適した湿度に調整する冷却除湿器とを流路の上流側から下流にかけて順に配設しているガス分析用前処理装置において、前記ドレンセパレータの下流側に、一定量の希酸液を貯溜しその希酸液中にサンプルガスを気泡として通過させることにより該サンプルガス中の腐食性ガスの大部分を溶解除去し、かつ、高温気化物質を固化又は溶解除去するバブリング槽を設置するとともに、このバブリング槽の希酸液中を気泡通過した後のサンプルガス中に残留する腐食性ガスを分離除去するスクラバを設置していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記のような特徴構成を有する本発明のガス分析用前処理装置によれば、サンプルガス流路に吸引されたサンプルガスを、ドレンセパレータの下流側に設置されたバブリング槽内に貯溜された希酸液中に気泡として通過させる、いわゆる、バブリング作用により、サンプルガス中の測定妨害成分である腐食性ガスのうちHClやHBr等の易溶性腐食性ガスの大部分を溶解除去することが可能であるとともに、高温焼却処理に伴い気化した物質を低温固化して生成されるフライアッシュを質量差により沈殿させてバブリング中のサンプルガスから分離除去することが可能であり、このバブリング作用のための液として希酸液を用いているので、サンプルガス中のSO2 やNOX 等の測定対象成分が溶解損失されることはない。また、バブリング作用によって溶解除去されないままでバブリング槽内の上部気室まで気化上昇したサンプルガス中のCl2やBr2など少量の難溶性の腐食性ガスをバブリング槽の後段に配置したスクラバにより分離除去することが可能である。
【0012】
このようにドレンセパレータ内で生成される凝縮水による腐食性ガスの溶解除去を殆ど期待することができない含有水分の低い排ガスをガス分析用のサンプルガスとする場合であっても、測定対象成分の溶解損失を招くことなく、サンプルガス中の測定妨害成分を確実に除去することができる。したがって、腐食性ガスによる測定セルなど金属部品の腐食及びガス冷却器の入口部付近でのフライアッシュの閉塞(詰まり)等の不都合を防止して、所定の成分測定を非常に高精度に、かつ、長期安定的に行うことができる。その上、フライアッシュの詰まり解除等のためのメンテナンスも不要もしくは低頻度に抑えることができるので、メンテナンス費用の軽減を図りつつ、長期に亘る高精度測定を安定よく確保することができるという効果を奏する。なお、測定対象成分がSO2 やNOX以外のO2やCO,CO2 の測定に適用する場合においても同様な効果を奏する。
【0013】
本発明に係るガス分析用前処理装置において、バブリング槽への希酸液補給装置としては、請求項2に記載のように、バブリング槽の上部に設置した希酸液タンクから希酸液を重力滴下により自動補給可能に構成されているとともに、その補給希酸液の液面が一定以上になったとき、余剰液を水封管内にオーバーフローさせて常に一定量の希酸液を貯溜保持可能に構成された重力滴下式の自動補給装置、あるいは、請求項3に記載のように、バブリング槽の上部には希酸液を重力滴下により自動補給可能な希酸液タンクが設置されているとともに、バブリング槽の側部には該バブリング槽と同量の希酸液を貯溜保持可能な置換タンクが設置され、この置換タンクの底部とバブリング槽の底部とを相互に連通する接続管には、前記希酸液タンクからバブリング槽に自動補給される希酸液を置換タンクに送給して該置換タンク内にバブリング槽と同量の希酸液を貯溜保持する通常状態と、前記置換タンク内の貯溜希酸液を外部に排出してバブリング槽内に希酸液タンクから新たな希酸液を自動補給可能とする液置換状態とに切換自在な切換弁が設けられた定期的液置換式の自動補給装置のいずれであってもよい。
【0014】
そのうち、特に、後者の定期的液置換式の自動補給装置を用いる場合は、サンプルガスの連続バブリング作用に伴う腐食性ガス成分の取り込み(溶解)やフライアッシュの沈積による液汚損、濃度変化等があったとしても切換弁を定期的に切換制御するだけで、バブリング槽内の希酸液を自動的かつ定期的に新たな希酸液に置換することができ、その結果、バブリング作用による測定妨害成分の除去効率を常に高く維持して、連続測定時の高い測定精度を容易に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るガス分析用前処理装置1全体の概略構成図であり、この前処理装置1は、ガス化溶融炉2の煙道2a中に挿設されたサンプリング用のプローブ管3を経て、その煙道2a内を流れる排ガスを真空ポンプ4を介してサンプルガスSとして吸引採取し、その吸引したサンプルガスSを、例えば赤外線ガス分析計よりなるガス分析部5にまで移送し供給するサンプルガス流路6に、その上流側から下流にかけて、サンプルガスS中のダスト等の固形分を除去する一次フィルタ7と、サンプルガスS中の含有水分の凝縮により凝縮水を生成するドレンセパレータ8と、後述するバブリング槽9と、Cl2 やBr2 等の難溶性の腐食性ガスを分離除去する塩素スクラバ10と、フライアッシュを含む残留固形分を除去する二次フィルタ11と、前記真空ポンプ4と、サンプルガスSを分析に適した湿度に調整する冷却除湿器としての電子冷却器12とがこの順に配設されて構成されている。
【0016】
前記サンプルガス流路6は、ドレンセパレータ8の直下流位置から下向きに屈曲されてバブリング槽9内の底部で開口するように形成された上流側流路部分6Aと、バブリング槽9内の上部気室9aに接続されてガス分析部5にまで至るように形成された下流側流路部分6Bからなる。なお、バブリング槽9は、室温または10〜35℃程度の温度に保たれる。
【0017】
また、バブリング槽9の上部には、希硫酸、希りん酸などの希酸液(5〜10%液)Wを収容するタンク13が設置され、この希酸液タンク13の底部からバブリング槽9内の所定高さ位置まで液供給管14が垂下されているとともに、この液供給管14の下端開口と同一液面レベルに相当するバブリング槽9の側壁部にはオーバーフロー用の水封管15が接続されており、これによって、希酸液タンク13内の希酸液Wが前記液供給管14を通して重力滴下によりバブリング槽9に自動補給可能に構成されているとともに、その補給希酸液Wの液面が一定以上になったとき、余剰液を水封管15内にオーバーフローさせて常に一定量の希酸液Wがバブリング槽9に貯溜保持され、この貯溜されたバブリング槽9の希酸液Wの底部に上流側流路部分6Aを経て供給されるサンプルガスSが希酸液W中を気泡として通過されてバプリング作用を行うように構成されている。なお、前記水封管15はドレンセパレータ16を経て流下され容器17内に受容された余剰液のサイフォン作用により水封される。
【0018】
次に、上記のように構成されたガス分析用前処理装置1による前処理作用について説明する。
ガス化溶融炉2の煙道2a内を流れる排ガスはプローブ管3を経てサンプルガスSとしてサンプルガス流路6の上流側流路部分6Aに吸引採取される。その吸引採取されたサンプルガスSは先ず一次フィルタ7に通されてダスト等の固形分が除去された後、ドレンセパレータ8内に導かれ、このドレンセパレータ8内でのサンプルガスS含有水分の凝縮により生成された凝縮水によって、サンプルガスS中の測定妨害成分である腐食性ガスのうちHClやHBr等の易溶性の腐食性ガスは溶解除去され、かつ、高温気化物質はフライアッシュに生成されて除去される。ところが、ガス化溶融炉2の煙道2a中から吸引される排ガス、つまり、サンプルガスSは含有水分が低い上に、設置環境温度も高いためにドレンセパレータ8での水分凝縮が起こらない、あるいは、起こったとしても極く僅かな凝縮水が生成されるに過ぎないために、前記HClやHBr等の易溶性の腐食性ガス及びフライアッシュの除去は極く僅かであり、大部分の腐食性ガス及び高温気化物質を含んだサンプルガスSが前記上流側流路部分6Aの先端開口からバブリング槽9の底部に供給されることになる。
【0019】
このようにしてバブリング槽9の底部に供給されたサンプルガスSは、そのバブリング槽9内に一定量貯溜された希酸液W中に気泡として通過されるバブリング作用を受けることになる。このバブリング作用により、サンプルガスS中の測定妨害成分で、ドレンセパレータ8で殆ど除去されなかったところの腐食性ガスのうちHClやHBr等の易溶性ガスは溶解除去されるとともに、Cl2 やBr2 等の難溶性ガスも希酸液Wとの接触反応により易溶性ガスに分解されてその大部分が溶解除去される。同時にAlCl3 ガス等の高温気化物質も低温固化されてフライアッシュに生成され、このフライアッシュは質量差により沈殿されバブリングサンプルガスSから分離除去されてバブリング槽9の底部に沈積される。
【0020】
これら測定妨害成分の除去原理を説明すると、Cl2 やBr2 等の難溶性の腐食性ガスは、希酸液Wとの接触により、
Cl2 +H2 O→HClO+HCl
Br2 +H2 O→HBrO+HBr
なる反応を呈し、そのうち水溶性の大きいHCl及びHBrは希酸液W中に溶解除去されるとともに、残るHClO及びHBrの大部分も溶解除去され、極く少量の不溶解のCl2 やBr2 が気化してバブリング槽9内の上部気室9a内まで上昇する。一方、AlCl3 ガス等の高温気化物質は、希酸液Wとの接触により、
AlCl3 (Gas)+H2 O→AlCl3 (Aq)
なる反応で易溶性塩類または沈殿物となり、希酸液にとり込むことができ、サンプルガスSから分離除去されてバブリング槽9の底部に沈積される。
【0021】
そして、上述のバブリング作用によっても溶解除去されないままバブリング槽9内の上部気室9aまで気化したサンプルガス中のCl2 やBr2 などの腐食性ガスは、バブリング槽9の後段に配置した塩素スクラバ10により分離除去され、かつ、サンプルガスS中に残留する微量の固形分は二次フィルタ11により除去される。また、上述のバブリング作用に際しては、例えばリン酸液や希硫酸等の希酸液を用いているので、サンプルガス中のSO2 やNOX 等の測定対象成分が希酸液中に溶解損失されることがなく、それら測定対象成分をロスなくガス分析計5に導入して所定の測定を確実、正確に行うことができる。
【0022】
上述したことからも明らかなように、ドレンセパレータ8内で生成される凝縮水による腐食性ガスの溶解除去を殆ど期待することができない含有水分の低い排ガスがガス分析用のサンプルガスSであっても、SO2 やNOX 等の測定対象成分の溶解損失を招くことなく、サンプルガスS中の測定妨害成分であるところのCl2 、Br2、HCl、HBr等の腐食性ガス及びフライアッシュ又は高温気化物質を確実に除去することができるので、腐食性ガスによる測定セルなど金属部品の腐食及び電子冷却器12の入口部付近でのフライアッシュの閉塞(詰まり)等の不都合を防止して、所定の成分測定を非常に高精度に、かつ、長期安定的に行うことができる。そのうえ、フライアッシュの詰まり解除等のためのメンテナンスを不要もしくは低頻度に抑えてメンテナンス費用の著しい軽減を図りつつ、長期に亘る高精度測定を安定よく行うことができる。
【0023】
なお、上記実施例では、バブリング槽9への希酸液補給装置として、バブリング槽9の上部に設置した希酸液タンク13から希酸液Wを重力滴下させて常に一定量の希酸液が貯溜保持される自動補給装置を用いたが、これに代えて、図2に示すような定期的液置換式の自動補給装置を用いてもよい。
【0024】
この定期的液置換式自動補給装置は、バブリング槽9の上部に希酸液を重力滴下により自動補給可能な希酸液タンク13を設置するとともに、バブリング槽9の側部に該バブリング槽9と同量の希酸液を貯溜保持可能な置換タンク18を設置し、この置換タンク18の底部とバブリング槽9の底部とを接続管19を介して相互に連通し、この接続管19の途中に、バブリング槽9と置換タンク18を連通させる第1状態と、置換タンク18を外部排出管21に連通させる第2状態とにタイマー(図示省略する)制御によって定期的に流路切換自在な三方電磁弁(切換弁の一例)20を介在させて構成されたものである。なお、タイマー制御による三方電磁弁20の切換周期はサンブルガスSの性状に応じて適宜設定可能である。
【0025】
このような液置換式自動補給装置によれば、三方電磁弁20を第1状態に切換えたときは、前記希酸液タンク13からバブリング槽9に自動補給される希酸液を、図2において実線矢印に示すように、置換タンク18に送給して該置換タンク18内にサイフォン原理によりバブリング槽9と同一量の希酸液を貯溜保持させ、また、三方電磁弁20を第2状態に切換えたときは、前記置換タンク18内の貯溜希酸液を、図2において点線矢印で示すように、外部排出管21を経て外部に排出し、その後、三方電磁弁20を第1状態へ切換えることに伴ってバブリング槽9内の希酸液を置換タンク18に移流させると同時にバブリング槽9内には希酸液タンク13から新たな希酸液を自動補給してバブリング槽9における希酸液を定期的かつ自動的に置換するといった作用が得られる。これによって、サンプルガスSの連続バブリング作用に伴う腐食性ガス成分の取り込み(溶解)やフライアッシュの沈積による液汚損、濃度変化があるとしても、三方電磁弁20を定期的に切換制御するだけで、バブリング槽9内の希酸液を定期的に新たな希酸液に自動置換することができ、その結果、バブリング作用による測定妨害成分の除去効率を高く維持して、連続測定時の高い精度を容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るガス分析用前処理装置の一実施例を示す装置全体の概略構成図である。
【図2】本発明に係るガス分析用前処理装置の他の実施例を示す要部の拡大概略構成図である。
【図3】従来一般のガス分析用前処理装置の構成を示す概略フロー図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ガス分析用前処理装置
5 ガス分析部
6 サンプルガス流路
6A 上流側流路部分
6B 下流側流路部分
7 フィルタ
8 ドレンセパレータ
9 バブリング槽
10 塩素スクラバ
12 電子冷却器(冷却除湿器)
13 希酸液タンク
15 水封管
18 置換タンク
19 接続管
20 三方電磁弁(切換弁)
S サンプルガス
W 希酸液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道を流れる排ガスをサンプルガスとして吸引しそのサンプルガスをガス分析部に供給するまでのサンプルガス流路に、サンプルガス中の固形分を除去するフィルタと、サンプルガス中の含有水分を凝縮させるドレンセパレータと、サンプルガスを分析に適した湿度に調整する冷却除湿器とを流路上流側から下流にかけて順に配設しているガス分析用前処理装置において、
前記ドレンセパレータの下流側に、一定量の希酸液を貯溜しその希酸液中にサンプルガスを気泡として通過させることにより該サンプルガス中の腐食性ガスの大部分を溶解除去し、かつ、高温気化物質を固化又は溶解除去するバブリング槽を設置するとともに、このバブリング槽の希酸液中を気泡通過した後のサンプルガス中に残留する腐食性ガスを分離除去するスクラバを設置していることを特徴とするガス分析用前処理装置。
【請求項2】
バブリング槽は、その上部に設置した希酸液タンクから希酸液を重力滴下により自動補給可能に構成されているとともに、その補給希酸液の液面が一定以上になったとき、余剰液を水封管内にオーバーフローさせて常に一定量の希酸液を貯溜保持可能に構成されている請求項1に記載のガス分析用前処理装置。
【請求項3】
バブリング槽の上部には希酸液を重力滴下により自動補給可能な希酸液タンクが設置されているとともに、バブリング槽の側部には該バブリング槽と同量の希酸液を貯溜保持可能な置換タンクが設置され、この置換タンクの底部とバブリング槽の底部とを相互に連通する接続管には、前記希酸液タンクからバブリング槽に自動補給される希酸液を置換タンクに送給して該置換タンク内にバブリング槽と同量の希酸液を貯溜保持する通常状態と、前記置換タンク内の貯溜希酸液を外部に排出してバブリング槽内に希酸液タンクから新たな希酸液を自動補給可能とする液置換状態とに切換自在な切換弁が設けられている請求項1または2に記載のガス分析用前処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−10555(P2006−10555A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189559(P2004−189559)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】