説明

ガス分析装置、水銀除去システム、ガス分析方法及び排ガス中の水銀除去方法

【課題】排ガス中に含まれるCl-濃度を測定することができるガス分析装置、水銀除去システム、ガス分析方法及び排ガス中の水銀除去方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係るガス分析装置10は、NH4Cl、SO3の両方を含む排ガス11が送給される煙道12から排ガス11Aを抜出す排ガス抜出し管13と、排ガス抜出し管13に設けられ、抜出した排ガス11A中に含まれる煤塵を除去する捕集器14と、排ガス抜出し管13に設けられ、排ガス11A中に含まれるNH4Cl、SO3の両方を析出させるロールフィルタ15と、ロールフィルタ15で析出されたNH4Cl、SO3の両方を含む試料にX線を照射させて試料から発生する蛍光X線を検出して排ガス11A中に含まれるNH4Cl、SO3の両方を測定する測定装置19とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラの排ガス中に供給した塩化アンモニウムの濃度を測定するガス分析装置、水銀除去システム、ガス分析方法及び排ガス中の水銀除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラやゴミ焼却炉などの燃焼設備から排出される排ガス中には、煤塵、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などの有害な成分が含まれていたため、排煙処理装置を用いて除去する必要があった。従来の排煙処理装置は、NOxを還元する脱硝装置と、アルカリ吸収液をSOx吸収剤とする湿式脱硫装置とを含み、煙道中、脱硝装置の前流側でアンモニア(NH3)を供給することで脱硝装置の脱硝触媒によりNOを下記式(1)のように、還元してNOxを除去し、湿式脱硫装置でSOxをアルカリ吸収液に吸収して、排ガス中に含まれる有害な成分を処理するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O・・・(1)
【0003】
SOxとしては、SO2やSO3などがあるが、排ガスのガス温度が低下すると、SO2やSO3 は、下記式(2)、(3)のように、硫酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムに変化し、煙道壁面や煙道内に設けられる装置に付着してしまう虞があった。また、硫酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムなどは、エアーヒータのエレメントへの付着による閉塞などを引き起こす虞がある上、硫酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムは腐食性物質であり、これが付着すると壁面や機器が腐食してしまう虞があった。
NH3+SO3+H2O=NH4HSO4・・・(2)
2NH3+SO3+H2O=(NH42SO4・・・(3)
【0004】
NOxを還元するため、脱硝装置の前流工程でNH3を供給しているが、NH3はSO3の中和用にも使用されていたことから、NH3の供給量も調整する必要があった。
【0005】
そのため、従来では、排ガスの一部を抜き出し、紫外線吸収分析を行い、排ガス中のSO3やNH3を分析して排ガス中のSO3やNH3の濃度を測定するガスの分析方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、石炭焚き排ガスや重質油を燃焼した際に生じる排ガス中には、煤塵、SOx、NOxのほか、金属水銀(Hg0)が含まれることがある。近年、NOxを還元する脱硝装置及びSOxを吸収する湿式脱硫装置と組み合わせて、金属水銀(Hg0)を処理する方法や装置について様々な考案がなされてきた。
【0007】
排ガス中の金属水銀(Hg0)を処理する方法として、煙道中、還元脱硝装置の前流側でNH4Cl溶液を液状で噴霧して煙道内に供給する方法が提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。煙道内にNH4Cl溶液を液状で噴霧すると、NH4Clは解離して、アンモニウム(NH3)ガス、塩酸(HCl)ガスを生成する。NH3ガスは還元剤として作用し、HClガスは水銀塩素化剤として作用する。即ち、還元脱硝装置に充填されている脱硝触媒上で、NH3は上記式(1)のように排ガス中のNOxと還元反応が進行し、HClは下記式(4)のように排ガス中のHg0と酸化反応が進行する。脱硝触媒上でNH3を還元脱硝すると共に、金属水銀(Hg0)を酸化し、水溶性の塩化水銀(HgCl2)とした後、後流側に設置した湿式の脱硫装置でHgCl2を水に溶解させて排ガス中に含まれる水銀を除去すると共に、排ガス中に含まれるSOxを吸収除去するようにしていた。
Hg0+1/2O2+2HCl→HgCl2+H2O・・・(4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−280540号公報
【特許文献2】特開2003−14625号公報
【特許文献3】特開2008−142602号公報
【特許文献4】特開2009−202107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、排ガス中に含まれるHg0を酸化して脱硫装置で処理するために、NH4Cl溶液を液状で煙道内に噴霧する場合、特許文献2に記載のような従来の排ガス中のSO3やNH3の濃度を測定するガスの分析方法では、NH4Clが解離して生じるHClに起因する塩素イオン(Cl-)の分析ができない、という問題があった。即ち、従来のような煙道内にNH3を供給する装置が設けられていた排煙処理装置に、排ガス中に含まれるHg0を酸化するためにNH4Cl溶液を供給する装置を追加すると、従来の特許文献2に記載のような排ガス中のNH3の濃度を測定した場合、分析して得られるNH3の濃度の値が、NH3を供給する装置から供給されたNH3の濃度に依存するのか、NH4Cl溶液を供給する装置から供給されたNH3の濃度に依存するのかと特定することができなくなる。
【0010】
そのため、NH4Cl溶液の供給量を特定するため、排ガス中に含まれるCl-濃度も測定可能なガス分析装置が求められている。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、排ガス中に含まれるCl-濃度を測定することができるガス分析装置、水銀除去システム、ガス分析方法及び排ガス中の水銀除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、ボイラから排出され、塩化アンモニウムを供給した排ガスを煙道から抜出す排ガス抜出し管と、前記排ガス抜出し管に設けられ、抜出した排ガス中に含まれる煤塵を除去する煤塵除去手段と、前記排ガス抜出し管に設けられ、前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムを析出させる析出手段と、前記析出手段で析出された塩化アンモニウムにX線またはレーザ光を照射させて発生する蛍光X線を検出して、前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムを測定する測定手段とを含むことを特徴とするガス分析装置である。
【0013】
第2の発明は、第1において、前記排ガスが、更に亜硫酸を含み、前記析出手段が亜硫酸を析出させると共に、前記測定手段が亜硫酸を測定するガス分析装置である。
【0014】
第3の発明は、ボイラから排出される排ガス中に含まれる水銀を除去する水銀除去システムであり、前記ボイラの煙道内に、塩化アンモニウムを含む溶液を噴霧する塩化アンモニウム供給手段と、前記排ガス中の窒素酸化物をアンモニアで還元すると共に、塩化水素共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置と、該還元脱硝装置において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫装置と、前記還元脱硝装置の上流側と下流側の何れか一方又は両方に設けられ、前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムの濃度を分析する塩化アンモニウム濃度測定手段とを有し、前記塩化アンモニウム濃度測定手段として、第1の発明のガス分析装置が用いられ、前記塩化アンモニウム濃度測定手段により求められた塩化アンモニウムの濃度に応じて前記塩化アンモニウムを含む溶液の噴霧量を制御することを特徴とする水銀除去システムである。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、前記還元脱硝装置と前記湿式脱硫装置との間に設けられ、前記還元脱硝装置を通過した排ガスと熱交換して熱回収する熱交換器とを有し、予め求めた塩化アンモニウム濃度とガス温度との関係に基づいて前記熱回収器を通過する排ガスのガス温度を制御することを特徴とする水銀除去システムである。
【0016】
第5の発明は、第3の発明において、前記還元脱硝装置と前記湿式脱硫装置との間に設けられ、前記還元脱硝装置を通過した排ガスと熱交換して熱回収する熱交換器とを有し、前記塩化アンモニウム濃度測定手段として、第2の発明のガス分析装置が用いられ、予め求めた塩化アンモニウム濃度とガス温度との関係と、亜硫酸濃度とガス温度との関係との何れか一方又は両方に基づいて前記熱回収器を通過する排ガスのガス温度を制御することを特徴とする水銀除去システムである。
【0017】
第6の発明は、ボイラから排出され、塩化アンモニウムを供給した排ガスを煙道から抜出し、前記排ガス中に含まれる煤塵を除去し、前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムを析出させた後、排ガス中に含まれる塩化アンモニウムを測定することを特徴とするガス分析方法である。
【0018】
第7の発明は、第6の発明において、前記排ガスが、更に亜硫酸を含み、塩化アンモニウムの他に亜硫酸を析出させ、析出した亜硫酸を測定するガス分析方法である。
【0019】
第8の発明は、ボイラから排出される排ガス中に含まれる水銀を除去する水銀除去方法であり、前記ボイラの煙道内に、塩化アンモニウムを含む溶液を噴霧する塩化アンモニウム供給工程と、前記排ガス中の窒素酸化物をアンモニアで還元すると共に、塩化水素共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝工程と、該還元脱硝工程において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫工程と、前記還元脱硝装置の上流側と下流側の何れか一方又は両方で、前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムの濃度を分析する塩化アンモニウム濃度測定工程を含み、前記塩化アンモニウム濃度測定工程では、第6の発明のガス分析方法を用い、前記塩化アンモニウム濃度測定工程により前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムの濃度を求め、求められた塩化アンモニウムの濃度に応じて前記塩化アンモニウムを含む溶液の噴霧量を制御する排ガス中の水銀除去方法である。
【0020】
第9の発明は、第8の発明において、前記還元脱硝工程と前記湿式脱硫工程との間に、前記排ガスと熱交換器内を循環する熱媒体とを熱交換する熱回収工程と、前記湿式脱硫装置から排出される浄化ガスと前記熱媒体とを熱交換して、前記浄化ガスを再加熱する再加熱工程とを含み、前記塩化アンモニウム濃度測定工程では、第6の発明のガス分析方法を用い、予め求めた塩化アンモニウム濃度とガス温度との関係に基づいて前記熱回収工程で前記熱媒体と熱交換する前記排ガスのガス温度を制御する排ガス中の水銀除去方法である。
【0021】
第10の発明は、第8の発明において、前記還元脱硝工程と前記湿式脱硫工程との間に、前記排ガスと熱交換器内を循環する熱媒体とを熱交換する熱回収工程と、前記湿式脱硫装置から排出される浄化ガスと前記熱媒体とを熱交換して、前記浄化ガスを再加熱する再加熱工程とを含み、前記塩化アンモニウム濃度測定工程では、第7の発明のガス分析方法を用い、予め求めた塩化アンモニウム濃度とガス温度との関係と、亜硫酸濃度とガス温度との関係との何れか一方又は両方に基づいて前記熱回収工程で前記熱媒体と熱交換する前記排ガスのガス温度を制御する排ガス中の水銀除去方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、排ガス中に含まれる塩化アンモニウムを析出させた後、析出された塩化アンモニウムを分析し、排ガス中に含まれるCl-濃度を測定することで、排ガス中に含まれる塩化アンモニウムの濃度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るガス分析装置を示す概略図である。
【図2】図2は、ロールフィルタの構成を簡略に示す図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係るHg除去システムを示す概略図である。
【図4】図4は、噴霧ノズルの構成を簡略に示す図である。
【図5】図5は、本発明による第3の実施形態に係るHg除去システムの構成を示す図である。
【図6】図6は、熱交換器の構成を簡略に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適に実施するための形態(以下、実施形態という。)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
[第1の実施形態]
本発明による第1の実施形態に係るガス分析装置について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るガス分析装置を示す概略図であり、図2は、ロールフィルタの構成を簡略に示す図である。図1、2に示すように、本実施形態に係るガス分析装置10は、塩化アンモニウム(NH4Cl)、亜硫酸(SO3)の両方を含む排ガス11が送給される煙道12から排ガス11Aを抜出す排ガス抜出し管13と、排ガス抜出し管13に設けられ、抜き出した排ガス11A中に含まれる煤塵を除去する捕集器(煤塵除去手段)14と、排ガス抜出し管13に設けられ、排ガス11A中に含まれるNH4Cl、SO3の両方を析出させるロールフィルタ(析出手段)15と、ロールフィルタ15で析出されたNH4Cl、SO3の両方を含む試料16にX線17を照射させて試料16から発生する蛍光X線18を検出して排ガス11A中に含まれるNH4Cl、SO3の両方を測定する測定装置(測定手段)19とを含むものである。
【0025】
排ガス11はボイラから排出されるガスであり、排ガス11にはSO3が含まれている。煙道12内で排ガス11中にNH4Cl溶液を供給しているため、排ガス11はNH4Clを含む。排ガス11中の計測対象のガス成分には、NH4Cl、SO3の両方を含んでいるが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、排ガス11は、少なくともNH4Clを含んでいるガスであればよい。排ガス11に含まれるガス成分としては、NH4Cl、SO3の他に、例えば、一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、水(H2O)、二酸化窒素(NO2)、メタン(CH4)、アンモニア、ベンゼン等を含んでいてもよい。
【0026】
排ガス抜出し管13は煙道12に連結され、煙道12内を流れる排ガス11を排ガス抜出し管13から一部抜出す。排ガス抜出し管13には、調節弁V11が設けられ、煙道12から排ガス抜出し管13に抜き出す排ガス11の流量を調整する。排ガス抜出し管13より排ガス11を連続して抜出すことができるため、排ガス11中のガス成分を半連続して測定することができる。
【0027】
排ガス抜出し管13に抜き出された排ガス11Aは、排ガス抜出し管13を通って捕集器14に送給される。捕集器14は、排ガス11A中に含まれる煤塵を除去する。捕集器14としては、例えばサイクロン式ダスト捕集機などが用いられるが、特に本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0028】
捕集器14で排ガス11A中に含まれる煤塵が除去された後、排ガス11Aはロールフィルタ15に送給される。また、捕集器14は、捕集した煤塵を排出する煤塵搬送管21を有している。捕集器14で排ガス11Aから除去されたダストは、煤塵搬送管21から煙道12に戻される。
【0029】
ロールフィルタ15は、一対のローラ22と、搬送用ベルト23と、フィルタ24と、排ガス送給管25とを有する。ロールフィルタ15は、一対のローラ22が回転することで、搬送用ベルト23も回転し、フィルタ24が移動する。測定装置19は、排ガス11A中に含まれるNH4Cl、SO3の各々の濃度を分析する。測定装置19としては、例えば、蛍光X線分析装置が挙げられる。測定装置19は、試料16にX線17を照射するX線照射装置26と、試料16から発生する蛍光X線18を検出する検出器27とを有する。また、測定装置19は、フィルタ24の設けられている壁面側に開口部19aを設け、X線照射装置26からX線17がフィルタ24に照射される。排ガス抜出し管13から排ガス送給管25に送給された排ガス11Aは、フィルタ24に送給され、フィルタ24を通過する際、排ガス11A中に含まれるNH4Cl、SO3はフィルタ24で吸着され、フィルタ24上にNH4Cl、SO3の両方を含む試料16aが析出する。ロールフィルタ15上に析出した試料16aはフィルタ24が移動することにより、測定装置19に搬送される。測定装置19において開口部19a付近に移動した試料16bに対してX線照射装置26からX線17が照射される。試料16bに含まれるNH4Cl、SO3は、X線17が照射されることにより励起される。励起されたNH4Cl、SO3からは蛍光X線18を発生する。発生した蛍光X線18は検出器27で検出され、分析される。検出器27は、試料16bのNH4Cl、SO3にX線17が照射された際に放出された蛍光X線のエネルギーに基づき、排ガス11A中に含まれるNH4Cl、SO3を分析する。
【0030】
測定装置19は、蛍光X線分析装置に限定されるものではなく、排ガス11A中に含まれるNH4Cl、SO3を分析することができるものであれば、他の分析装置を用いてもよい。
【0031】
ロールフィルタ15は、排ガス抜出し管13の排ガス11A中に含まれるNH4Cl、SO3を析出させるため、排ガス11Aを流す排ガス送給管25は、排ガス11A中に含まれる水分が凝集し、測定装置19での分析精度が低下しないように、排ガス送給管25の外周にヒータを設け加熱しておくことが好ましい。
【0032】
本実施形態に係るガス分析装置10によれば、排ガス11中に含まれるNH4Clを析出させた後、析出されたNH4Cl、SO3から発生する蛍光X線を分析することで、排ガス11中に含まれるアンモニウムイオン(NH4+)、塩素イオン(Cl-)、SO3の濃度を安定して同時に分析することができる。このため、排ガス11中に含まれるNH4Cl及びSO3の濃度を安定して同時に測定することができる。従って、排ガス11中に含まれるHgを酸化する際、煙道12内にNH3ガス又はNH3水の他にNH4Cl溶液を供給する場合でも、煙道12内に供給したNH4Cl溶液の濃度を適正に求めることができる。
【0033】
本実施形態に係るガス分析装置10においては、排ガス11にNH4Clを含む溶液を用いているが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、気化した際にHgを酸化するために用いられる酸化性ガスと、NOxを還元するために用いられる還元性ガスとを生成する助剤であれば用いることができる。本実施形態では、NH4Clを含む溶液を用いているため、酸化性ガスとしてHClガスが用いられ、還元性ガスとしてNH3ガスが用いられている。NH4Clを含む溶液以外には、例えば臭化アンモニウム(NH4Br)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)などのハロゲン化アンモニウムを含む溶液を用いてもよい。
【0034】
[第2の実施形態]
本発明による第2の実施形態に係るHg除去システムについて、図面を参照して説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係るHg除去システムを示す概略図である。本実施形態に係るHg除去システムは、NH4Cl測定装置(NH4Cl測定手段)として、図1、2に示す第1の実施形態に係るガス分析装置10を用いているため、NH4Cl測定装置の説明は省略する。
【0035】
図3に示すように、本実施形態に係るHg除去システム30Aは、ボイラ31から排出される排ガス11中に含まれるHgを除去するHg除去システムであり、ボイラ31の下流の煙道12内に、NH4Cl溶液41を噴霧するNH4Cl溶液供給手段32と、排ガス11中のNOxをNH3ガスで還元すると共に、HClガス共存下でHg0を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置(還元脱硝手段)33と、脱硝された排ガス11を熱交換するエアヒータ(AH)34と、脱硝された排ガス11中の煤塵を除去する集塵器(ESP:Electrostatic Precipitator)35と、還元脱硝装置33において酸化されたHgを石灰石膏スラリー(アルカリ吸収液)36を用いて除去する湿式脱硫装置37と、還元脱硝装置33の上流側と下流側に設けられ、排ガス11中に含まれるNH4Clの濃度を分析するNH4Cl測定装置(NH4Cl測定手段)38−1、38−2とを有するものである。
【0036】
ボイラ31から排出される排ガス11には、NH4Cl溶液供給手段32からNH4Cl溶液41が供給される。NH4Cl溶液供給手段32は、排ガス11中に含まれるHg0を酸化するための噴霧ノズル42と、NH4Cl溶液41を液体状で噴霧ノズル42に供給する塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管43と、煙道12内にNH4Cl溶液41を圧縮して噴霧させる空気44を噴霧ノズル42に供給する空気供給管45とを有する。
【0037】
噴霧ノズル42は、煙道12内に挿入して設けられ、NH4Cl溶液41と空気44とを煙道12内に同時に噴射する二流体ノズルである。図4は、噴霧ノズルの構成を簡略に示す図である。図4に示すように、噴霧ノズル42は、内管46と外管47とからなる二重管48と、二重管48の先端に設けられるノズルヘッド49とから形成されている。内管46は、NH4Cl溶液41を送給するために用いる管である。外管47は、内管46の外周を覆うように設けられ、内管46との空間内に空気44を送給するために用いる管である。噴霧ノズル42は、ノズルヘッド49からNH4Cl溶液41を煙道12内に噴霧すると共に、空気44を煙道12内に噴射する。
【0038】
NH4Cl溶液41は、NH4Cl溶液タンク51からNH4Cl溶液供給管43を介して噴霧ノズル42に送給される。NH4Cl溶液供給管43から供給されるNH4Cl溶液41の流量は調節弁V21により調整される。NH4Cl溶液41はNH4Cl溶液タンク51内で所定濃度に調整される。NH4Cl溶液41は、塩化アンモニウム(NH4Cl)粉末を水に溶解させて生成することができる。NH4Cl粉末、水の各々の供給量を調整することで所定濃度のNH4Cl溶液41を調整することができる。NH4Cl溶液41は、HCl溶液とNH3溶液とを所定濃度の割合で混合させて生成するようにしてもよい。
【0039】
空気44は、空気供給部52から空気供給管45を介して噴霧ノズル42に送給され、ノズルヘッド49からNH4Cl溶液41を噴霧する際の圧縮用の空気として用いられる。空気44の気流によりNH4Cl溶液41を微粒化することで、ノズルヘッド49から噴射されるNH4Cl溶液41を煙道12内に微細な液滴として噴霧することができる。空気供給管45から供給される空気44の流量は調節弁V22により調整される。
【0040】
ノズルヘッド49から煙道12内に噴霧されたNH4Cl溶液41の液滴は、排ガス11の高温雰囲気温度により蒸発して気化され、微細なNH4Clの固体粒子を生成し、下記式(5)のように、HClとNH3とに分解し、昇華する。よって、噴霧ノズル42から噴霧されたNH4Cl溶液41は分解されて、HCl、NH3を生じ、NH3ガス、HClガスを煙道12内に供給することができる。
NH4Cl→NH3+HCl・・・(5)
【0041】
空気供給管45から供給される空気44の流量により、ノズルヘッド49のノズル孔から噴霧されるNH4Cl溶液41の液滴の大きさを調整することができる。ノズルヘッド49から噴射される空気44の流量は、例えば気水比100以上10000以下(体積比)とするのが好ましい。これは、ノズルヘッド49から噴射されるNH4Cl溶液41を微細な液滴として煙道12内に噴霧させるようにするためである。
【0042】
空気44は内管46と外管47との間の空間を流れるため、空気44はNH4Cl溶液41の冷却用として働き、煙道12内の排ガス11の熱が空気44によりNH4Cl溶液41に伝達されるのを抑制することができる。NH4Cl溶液41が排ガス11の熱により加熱されるのを抑制することができるため、NH4Cl溶液41が噴射される直前まで液体状態を維持することができる。
【0043】
図3に示すように、排ガス11は、NH4Cl溶液供給手段32から煙道12内に噴霧されたNH4Cl溶液41の液滴から生じたHClガス、NH3ガスを含んだ後、還元脱硝装置33に送給される。還元脱硝装置33では、NH4Clが分解して生じたNH3ガスはNOxの還元脱硝用に用いられ、HClガスはHgの酸化用に用いられ、NOx及びHgを排ガス11から除去する。
【0044】
即ち、還元脱硝装置33に充填されている脱硝触媒上でNH3ガスは、下記式(6)のようにNOxを還元脱硝し、HClガスは、下記式(7)のようにHgを水銀酸化する。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O・・・(6)
Hg+1/2O2+2HCl→HgCl2+H2O・・・(7)
【0045】
還元脱硝装置33は、脱硝触媒層53を1つ備えているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、還元脱硝装置33は、脱硝性能に応じて脱硝触媒層53の数を適宜変更することができる。
【0046】
排ガス11は、還元脱硝装置33において排ガス11中のNOxの還元とHgの酸化がされた後、エアヒータ34、集塵器(ESP)35を通過して湿式脱硫装置37に送給される。
【0047】
湿式脱硫装置37では、排ガス11を装置本体55内の底部の壁面側から送給し、アルカリ吸収液として用いられる石灰石膏スラリー36を吸収液送給ライン54により装置本体55内に供給し、ノズル56より塔頂部側に向かって噴流させる。装置本体55内の底部側から上昇してくる排ガス11と、ノズル56から噴流して流下する石灰石膏スラリー36とを対向して気液接触させ、排ガス11中のHgCl2、硫黄酸化物(SOx)は石灰石膏スラリー36中に吸収され、排ガス11から分離、除去され、排ガス11は浄化される。石灰石膏スラリー36により浄化された排ガス11は、浄化ガス57として塔頂部側より排出され、煙突58から系外に排出される。
【0048】
排ガス11の脱硫に用いられる石灰石膏スラリー36は、水に石灰石粉末を溶解させた石灰スラリCaCO3と、石灰と排ガス11中のSOxが反応し更に酸化させた石膏スラリCaSO4と、水とを混合させて生成される。石灰石膏スラリー36は、例えば湿式脱硫装置37の装置本体55の塔底部59に貯留した液を揚水したものが用いられる。装置本体55内で排ガス11中のSOxは石灰石膏スラリー36と下記式(8)のような反応を生じる。
CaCO3+SO2+0.5H2O→CaSO3・0.5H2O+CO2・・・(8)
【0049】
一方、排ガス11中のSOxを吸収した石灰石膏スラリー36は、装置本体55内に供給される水61と混合され、装置本体55の塔底部59に供給される空気62により酸化処理される。このとき、装置本体55内を流下した石灰石膏スラリー36は、水61、空気62と下記式(9)のような反応を生じる。
CaSO3・0.5H2O+0.5O2+1.5H2O→CaSO4・2H2O・・・(9)
【0050】
湿式脱硫装置37の塔底部59に貯留される脱硫に用いた石灰石膏スラリー36は酸化処理された後、塔底部59より抜き出され、脱水器63に送給された後、塩化水銀(HgCl)を含んだ脱水ケーキ(石膏)64として系外に排出される。脱水器63として、例えばベルトフィルターなどが用いられる。また、脱水したろ液(脱水ろ液)は、例えば脱水ろ液中の懸濁物、重金属の除去、脱水ろ液のpH調整などの排水処理が行われる。この排水処理された脱水ろ液の一部は湿式脱硫装置37に返送され、脱水ろ液の他の一部は排水として処理される。
【0051】
アルカリ吸収液として石灰石膏スラリー36を用いているが、排ガス11中のHgCl2を吸収できるものであれば他の溶液をアルカリ吸収液として用いることができる。
【0052】
石灰石膏スラリー36はノズル56より塔頂部側に向かって噴流させる方法に限定されるものではなく、例えばノズル56から排ガス11と対向するように流下させてもよい。
【0053】
(NH4Cl溶液の噴霧量の制御)
NH4Cl測定装置38−1は、還元脱硝装置33の前流側に設けられ、NH4Cl測定装置38−2は、還元脱硝装置33の後流側に設けられている。NH4Cl測定装置38−1、38−2は、上述の通り、図1、2に示す第1の実施形態に係るガス分析装置10を用いている。よって、NH4Cl測定装置38−1、38−2は、排ガス11中に噴霧ノズル42から供給されたNH4Clの濃度を分析することができる。また、ボイラ31が、例えば石炭焚きボイラ31の場合、排ガス11中にはSO3も含まれているが、NH4Cl測定装置38−1、38−2は、排ガス11中に含まれるSO3の濃度も測定することができる。従って、NH4Cl測定装置38−1、38−2は、排ガス11中に含まれるNH4ClおよびSO3の濃度を同時に測定することができる。
【0054】
NH4Cl測定装置38−1、38−2で測定された排ガス11中に含まれるNH4Clの濃度の測定結果は、制御装置70に伝達される。制御装置70は、予め求めたNH4Clの濃度とNH4Clが析出するガス温度との関係を示すマップと、SO3の濃度とSO3が析出するガス温度との関係を示すマップとを記録しておく。例えば、NH4Clの濃度が高くなるほどNH4Clが析出するガス温度は高くなり、SO3の濃度が高くなるほどSO3が析出するガス温度は高くなる。NH4Clの濃度とNH4Clが析出するガス温度との関係を示すマップやSO3の濃度とSO3が析出するガス温度との関係を示すマップを予め求めておくことで、NH4Clの濃度またはSO3の濃度に応じてNH4ClやSO3が析出しないようにガス温度を調整することが可能となる。
【0055】
制御装置70は、NH4Cl測定装置38−1、38−2で測定された排ガス11中に含まれるNH4Clの濃度の測定結果から予め求めたNH4Clの濃度とNH4Clが析出するガス温度との関係を示すマップに基づいて排ガス11中に含まれるCl-の濃度を分析し、排ガス11中に含まれるNH4Clの濃度を求めることができる。排ガス11中に含まれるNH4Clの濃度を求めることで、制御装置70は、NH4Cl溶液の噴霧量を制御することができるので、噴霧ノズル42から噴霧されるNH4Cl溶液を適正な噴霧量とすることができる。
【0056】
NH4Cl測定装置38−1、38−2は、排ガス11中に含まれるNH4Clの濃度の他に、SO3の濃度も測定することができるため、NH4Cl測定装置38−1、38−2は、排ガス11中に含まれるSO3の濃度を制御装置70に伝達する。制御装置70は、NH4Cl測定装置38−1、38−2で測定された排ガス11中に含まれるSO3の濃度の測定結果から予め求めたSO3の濃度とSO3が析出するガス温度との関係を示すマップに基づいて排ガス11中に含まれるSO3の濃度を分析することにより、排ガス11中に含まれるSO3の濃度を求めることができる。排ガス11中に含まれるSO3の濃度を求めることで、制御装置70は、NH4Cl溶液の噴霧量を制御することができるので、噴霧ノズル42から噴霧されるNH4Cl溶液を適正な噴霧量とすることができる。
【0057】
このように、本実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システム30Aによれば、排ガス11中に含まれるNH4+、Cl-、SO3の濃度を安定して同時に分析することができるため、排ガス11中に含まれるNH4Cl及びSO3の濃度を安定して同時に測定することができる。従って、噴霧ノズル42から煙道12内にNH4Cl溶液41を適正な量で噴霧することができるため、還元脱硝装置33においてHgの除去性能およびNOxの還元性能を安定して維持することができる。また、噴霧ノズル42の外管47など噴霧設備の腐食の防止も可能となるため、安定して運転することが可能となると共に、噴霧ノズル42などの装置の延命化、装置のメンテナンスに要する費用の低減を図ることが可能となる。更に、煙道12内にNH3水を供給するNH3水供給手段が設けられている場合、NH4Cl溶液供給手段32を煙道12内に新たに新設する場合でも、煙道12内に供給するNH4Cl溶液の濃度を適正に求めることができる。
【0058】
噴霧ノズル42の上流側には、排ガス11の流量を計測する流量計71が設けられている。流量計71により排ガス11の流量が測定される。流量計71により測定された排ガス11の流量の値は制御装置70に送られ、排ガス11の流量の値に基づいてノズルヘッド49から噴射するNH4Cl溶液41の流量、角度、初速度などを調整することができる。
【0059】
還元脱硝装置33及び湿式脱硫装置37の出口側には、NOx濃度計72が設けられている。NOx濃度計72で測定された排ガス11中のNOx濃度の値は、制御装置70に伝達される。制御装置70はNOx濃度計72で測定された排ガス11中のNOx濃度の値から還元脱硝装置33におけるNOxの還元割合を確認することができる。よって、NOx濃度計72で測定された排ガス11中のNOx濃度の値から噴霧ノズル42から噴霧されるNH4Cl溶液41のNH4Cl濃度、供給量を調整すると共に、排ガス11中に別途供給されるNH3水の供給量を調整し、NH3の混合比率を調整することができる。これにより、還元脱硝装置33において排ガス11のNOxを還元し、還元脱硝装置33が所定の脱硝性能を満足するようにすることができる。
【0060】
煙道12には、ボイラ31から排出される排ガス11中のHg含有量を測定するHg濃度計73−1〜73−3が設けられている。Hg濃度計73−1は、ボイラ31とノズルヘッド49との間の煙道12に設けられ、Hg濃度計73−2は、還元脱硝装置33とエアヒータ34との間に設けられ、Hg濃度計73−3は、湿式脱硫装置37の後流側に設けられる。Hg濃度計計73−1〜73−3で測定された排ガス11中のHg濃度の値は、制御装置70に伝達される。制御装置70は、Hg濃度計計73−1〜73−3で測定された排ガス11中のHg濃度の値から排ガス11中に含まれるHgの含有量を確認することができる。具体的には、Hg濃度計計73−1〜73−3は、金属水銀Hg0と、酸化水銀Hg2+と、全水銀(金属水銀Hg0と酸化水銀Hg2+とを含む水銀量)とを各々任意に測定することができる。Hg濃度計73−2、73−3で全水銀に対する酸化水銀Hg2+の比率を把握することで、排ガス11中に含まれるHgの水銀酸化率を求めることができる。Hg濃度計73−1〜73−3で測定された排ガス11中のHg濃度の値と水銀酸化率からNH4Cl溶液41のNH4Cl濃度、供給流量を制御することで、ノズルヘッド49から噴霧されるNH4Cl溶液41のNH4Cl濃度、供給流量を所定の脱硝性能を満足すると共に、Hgの酸化性能を維持するようにすることができる。
【0061】
湿式脱硫装置37の塔底部59には、石灰石膏スラリー36の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定制御装置(ORPコントローラ)74が設けられている。このORPコントローラ74により石灰石膏スラリー36の酸化還元電位の値を測定する。測定された酸化還元電位の値に基づいて湿式脱硫装置37の塔底部59に供給される空気62の供給量を調整する。塔底部59に供給される空気62の供給量を調整することで、湿式脱硫装置37の塔底部59に貯留する石灰石膏スラリー36内に捕集されている酸化されたHgが還元されるのを防止し、煙突58より放散されるのを防止することができる。
【0062】
湿式脱硫装置37内の石灰石膏スラリー36の酸化還元電位は、石灰石膏スラリー36からのHgの再飛散を防止するためには、例えば0mV以上+600mV以下の範囲内にあることが好ましい。これは酸化還元電位が上記範囲内であれば石灰石膏スラリー36中にHgCl2として捕集されたHgが安定な領域であり、大気中への再飛散を防ぐことができるためである。
【0063】
本実施形態に係るHg除去システム30Aにおいては、Hgを酸化すると共に、NOxを還元するのにNH4Clを含む溶液を用いているが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、上述のように、NH4Clを含む溶液以外に、例えば、NH4Br、NH4Iなどのハロゲン化アンモニウムを含む溶液を用いてもよい。
【0064】
[第3の実施形態]
本発明による第3の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムについて、図面を参照して説明する。図5は、本発明による第3の実施形態に係るHg除去システムの構成を示す図であり、図6は、熱交換器の構成を簡略に示す図である。なお、本発明の第2の実施形態に係るHg除去システムの構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0065】
図5、6に示すように、本実施形態に係るHg除去システム30Bは、エアヒータ34と集塵器35との間に、還元脱硝装置33を通過した排ガス11と熱交換して熱回収する熱交換器80が設けられている。熱交換器80は、熱回収器81と、再加熱器82とを含むものである。熱回収器81は、エアヒータ34と集塵器35との間に設けられ、ボイラ31から排出される排ガス11と熱交換器80内を循環する熱媒体83とを熱交換する。再加熱器82は、湿式脱硫装置37の後流側に設けられ、湿式脱硫装置37から排出される浄化ガス57と熱媒体83とを熱交換して、浄化ガス57を再加熱する。
【0066】
熱交換器80は、熱回収器81と再加熱器82とを熱媒体83が循環するための熱媒体循環通路84を有する。熱媒体83は、熱媒体循環通路84を介して熱回収器81と再加熱器82との間を循環している。熱回収器81と再加熱器82との各々の内部に設けられる熱媒体循環通路84の表面には、複数のフィンチューブ85が設けられている。熱媒体循環通路84には熱交換部86が設けられ、熱媒体83をスチーム87と熱交換することで、熱媒体83の媒体温度を調整することができる。
【0067】
NH4Cl測定装置38−1、38−2により、排ガス11中に含まれるNH4Cl濃度及びSO3濃度を測定することができるため、制御装置70は、予め求めたNH4Clの濃度とNH4Clが析出するガス温度との関係を示すマップと、SO3の濃度とSO3が析出するガス温度との関係を示すマップとの何れか一方又は両方に基づいて熱交換部86で熱媒体83をスチーム87と熱交換することで、熱媒体83の媒体温度を上昇させる。熱回収器81の出口側の排ガス11のガス温度をNH4Cl及びSO3が析出するガス温度以上にすることで、熱回収器81のフィンチューブ85にSO3が析出するのを抑制することができる。これにより、熱回収器81のフィンチューブ85の腐食を抑制することができる。
【0068】
熱回収器81に流入させる熱媒体83の量を減少させると、熱媒体83が熱回収器81で回収する熱回収量は減少するため、熱回収器81の出口ガス温度は高い状体を維持したままであり、再加熱器82に流入する熱媒体83の熱量は少ないため、再加熱器82に入る浄化ガス57の温度を上昇させることができない。そのため、再加熱器82を通過した浄化ガス57の温度を上昇させるために、スチーム87の添加量を増大させて再加熱器82に流入する熱媒体83の熱量を上昇させることで、再加熱器82を通過する浄化ガス57の温度を上昇させることができる。
【0069】
また、熱回収器81に流入させる熱媒体83の量を増大させると、熱回収器81で熱媒体83が回収する熱回収量が増大する。これにより、熱回収器81から出る排ガス11の出口ガス温度は低下し、再加熱器82に流入する熱媒体83の温度は上昇するため、再加熱器82に入る浄化ガス57の温度を上昇させることができる。これにより、熱媒体83と熱交換するために供給されるスチーム87の供給量を軽減ことができる。
【0070】
熱媒体83は、熱媒体タンク88から熱媒体循環通路84に供給される。熱媒体83は、熱媒体送給ポンプ89により熱媒体循環通路84内を循環させる。また、浄化ガス57のガス温度に応じて調節弁V31によりスチーム87の供給量を調整し、熱回収器81から排出される排ガス11のガス温度に応じて調節弁V32により再加熱器82に送給される熱媒体83を熱回収器81に供給し、再加熱器82に送給される熱媒体83の供給量を調整する。
【0071】
よって、NH4Cl測定装置38−1、38−2により、排ガス11中に含まれるNH4Cl濃度及びSO3濃度を測定し、予め求めたNH4Clの濃度とNH4Clが析出するガス温度との関係を示すマップと、SO3の濃度とSO3が析出するガス温度との関係を示すマップとの何れか一方又は両方に基づいて熱媒体83の媒体温度を上昇させ、熱回収器81の出口側の排ガス11のガス温度をNH4Cl及びSO3が析出するガス温度以上にする。これにより、熱回収器81のフィンチューブ85など煙道12内に設けられた設備にNH4Cl及びSO3が析出するのを抑制することができ、熱回収器81のフィンチューブ85などの腐食を抑制することができる。
【0072】
本実施形態では、熱交換器80は、エアヒータ34と集塵器35との間に設けているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、還元脱硝装置33と湿式脱硫装置37との間であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明に係るガス分析装置は、ガス中に含まれるNH4Cl濃度を測定し、Cl-濃度を求めることができるので、排ガス中のHgを除去する水銀除去システムの噴霧装置に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0074】
10 ガス分析装置
11、11A 排ガス
12 煙道
13 排ガス抜出し管
14 捕集器(煤塵除去手段)
15 ロールフィルタ(析出手段)
16、16a、16b 試料
17 X線
18 蛍光X線
19 測定装置(測定手段)
21 煤塵搬送管
22 ローラ
23 搬送用ベルト
24 フィルタ
25 排ガス送給管
26 X線照射装置
27 検出器
30A、30B Hg除去システム
31 ボイラ
32 NH4Cl溶液供給手段
33 還元脱硝装置(還元脱硝手段)
34 エアヒータ(AH)
35 集塵器
36 石灰石膏スラリー(アルカリ吸収液)
37 湿式脱硫装置
38−1、38−2 NH4Cl測定装置(NH4Cl測定手段)
41 NH4Cl溶液
42 噴霧ノズル
43 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管
44 空気
45 空気供給管
46 内管
47 外管
48 二重管
49 ノズルヘッド
51 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液タンク
52 空気供給部
53 脱硝触媒層
54 吸収液送給ライン
55 装置本体
56 ノズル
57 浄化ガス
58 煙突
59 塔底部
61 水
62 空気
63 脱水器
64 脱水ケーキ(石膏)
70 制御装置
71 流量計
72 NOx濃度計
73−1〜73−3 水銀(Hg)濃度計
74 酸化還元電位測定制御装置(ORPコントローラ)
80 熱交換器
81 熱回収器
82 再加熱器
83 熱媒体
84 熱媒体循環通路
85 フィンチューブ
86 熱交換部
87 スチーム
V11、V21、V22、V31、V32 調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラから排出され、塩化アンモニウムを供給した排ガスを煙道から抜出す排ガス抜出し管と、
前記排ガス抜出し管に設けられ、抜出した排ガス中に含まれる煤塵を除去する煤塵除去手段と、
前記排ガス抜出し管に設けられ、前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムを析出させる析出手段と、
前記析出手段で析出された塩化アンモニウムにX線またはレーザ光を照射させて発生する蛍光X線を検出して、排ガス中に含まれる塩化アンモニウムを測定する測定手段と
を含むことを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記排ガスが、更に亜硫酸を含み、前記析出手段が亜硫酸を析出させると共に、前記測定手段が亜硫酸を測定するガス分析装置。
【請求項3】
ボイラから排出される排ガス中に含まれる水銀を除去する水銀除去システムであり、
前記ボイラの煙道内に、塩化アンモニウムを含む溶液を噴霧する塩化アンモニウム供給手段と、
前記排ガス中の窒素酸化物をアンモニアで還元すると共に、塩化水素共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置と、
該還元脱硝装置において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫装置と、
前記還元脱硝装置の上流側と下流側の何れか一方又は両方に設けられ、前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムの濃度を分析する塩化アンモニウム濃度測定手段とを有し、
前記塩化アンモニウム濃度測定手段として、請求項1に記載のガス分析装置が用いられ、
前記塩化アンモニウム濃度測定手段により求められた塩化アンモニウムの濃度に応じて前記塩化アンモニウムを含む溶液の噴霧量を制御することを特徴とする水銀除去システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記還元脱硝装置と前記湿式脱硫装置との間に設けられ、前記還元脱硝装置を通過した排ガスと熱交換して熱回収する熱交換器とを有し、
予め求めた塩化アンモニウム濃度とガス温度との関係に基づいて前記熱回収器を通過する排ガスのガス温度を制御することを特徴とする水銀除去システム。
【請求項5】
請求項3において、
前記還元脱硝装置と前記湿式脱硫装置との間に設けられ、前記還元脱硝装置を通過した排ガスと熱交換して熱回収する熱交換器とを有し、
前記塩化アンモニウム濃度測定手段として、請求項2に記載のガス分析装置が用いられ、
予め求めた塩化アンモニウム濃度とガス温度との関係と、亜硫酸濃度とガス温度との関係との何れか一方又は両方に基づいて前記熱回収器を通過する排ガスのガス温度を制御することを特徴とする水銀除去システム。
【請求項6】
ボイラから排出され、塩化アンモニウムを供給した排ガスを煙道から抜出し、前記排ガス中に含まれる煤塵を除去し、前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムを析出させた後、析出された塩化アンモニウムを分析用ガス中に含有させ、前記分析用ガスを抜き出した後、前記分析用ガス中に含まれる塩化アンモニウムを測定することを特徴とするガス分析方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記排ガスが、更に亜硫酸を含み、塩化アンモニウムの他に亜硫酸を析出させ、析出した亜硫酸を測定するガス分析方法。
【請求項8】
ボイラから排出される排ガス中に含まれる水銀を除去する水銀除去方法であり、
前記ボイラの煙道内に、塩化アンモニウムを含む溶液を噴霧する塩化アンモニウム供給工程と、
前記排ガス中の窒素酸化物をアンモニアで還元すると共に、塩化水素共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝工程と、
該還元脱硝工程において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫工程と、
前記還元脱硝装置の上流側と下流側の何れか一方又は両方で、前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムの濃度を分析する塩化アンモニウム濃度測定工程を含み、
前記塩化アンモニウム濃度測定工程では、請求項6に記載のガス分析方法を用い、
前記塩化アンモニウム濃度測定工程により前記排ガス中に含まれる塩化アンモニウムの濃度を求め、求められた塩化アンモニウムの濃度に応じて前記塩化アンモニウムを含む溶液の噴霧量を制御する排ガス中の水銀除去方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記還元脱硝工程と前記湿式脱硫工程との間に、前記排ガスと熱交換器内を循環する熱媒体とを熱交換する熱回収工程と、
前記湿式脱硫装置から排出される浄化ガスと前記熱媒体とを熱交換して、前記浄化ガスを再加熱する再加熱工程とを含み、
前記塩化アンモニウム濃度測定工程では、請求項6に記載のガス分析方法を用い、
予め求めた塩化アンモニウム濃度とガス温度との関係に基づいて前記熱回収工程で前記熱媒体と熱交換する前記排ガスのガス温度を制御する排ガス中の水銀除去方法。
【請求項10】
請求項8において、
前記還元脱硝工程と前記湿式脱硫工程との間に、前記排ガスと熱交換器内を循環する熱媒体とを熱交換する熱回収工程と、
前記湿式脱硫装置から排出される浄化ガスと前記熱媒体とを熱交換して、前記浄化ガスを再加熱する再加熱工程とを含み、
前記塩化アンモニウム濃度測定工程では、請求項7に記載のガス分析方法を用い、
予め求めた塩化アンモニウム濃度とガス温度との関係と、亜硫酸濃度とガス温度との関係との何れか一方又は両方に基づいて前記熱回収工程で前記熱媒体と熱交換する前記排ガスのガス温度を制御する排ガス中の水銀除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−73106(P2012−73106A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217909(P2010−217909)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】