説明

ガス分析装置

【課題】極めて簡素な装置構成で、しかも分析後の排ガスを大気中へ放出することのないガス分析装置を提供する。
【解決手段】排ガス通路2内の排ガスを捕集するサンプリング管8と、このサンプリング管8にて捕集された排ガスを滞留させる滞留室(第1空間部4、第2空間部6)と、この滞留室内に配され、排ガス中の酸素濃度を分析するジルコニア式酸素分析計プローブ11と、滞留室と排ガス通路2内とを連通させるように配され、ジルコニア式酸素分析計プローブ11にて分析後の排ガスを排ガス通路2内に還流させる還流路と、排ガス通路2内から滞留室内に排ガスを導入するために還流路内に加圧空気を噴射するエジェクタとを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内もしくは排ガス通路内の排ガスをサンプリング管にて捕集して分析するガス分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却炉等においては、有害成分を環境中に排出しないようにするために、排ガス中のO、CO、NOx等の濃度をガス分析装置にて分析し、この分析データに基づいて燃焼制御を行うようにされている。
【0003】
ところで、この種のガス分析装置を用いて燃焼制御を行う際に、集塵器出口側におけるダスト除去後の排ガスをサンプリングした場合には、炉内もしくは炉出口における排ガスデータに対してタイムラグがあり、また炉内とは排ガス濃度が異なることから、この排ガスデータを燃焼制御のために使用するのに不十分であるという問題点がある。
【0004】
そこで、燃焼制御を高精度に行うために、特許文献1においては、排ガスをサンプリングするためのサンプリングプローブの先端部にセラミック製もしくはステンレス製の多孔質フィルタを取り付け、この多孔質フィルタを焼却炉の炉内に突出させるようにし、炉内で発生するダスト含有排ガスをその多孔質フィルタより分析計に導入するようにしたものが提案されている。また、同様の装置が特許文献2〜4においても提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−139409号公報
【特許文献2】特開平6−81027号公報
【特許文献3】特開平7−5083号公報
【特許文献4】特開2000−227389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のガス分析装置においてはいずれも、炉内もしくは排ガス通路内の排ガスを分析計に導いてCO濃度等の分析を行った後、その分析済みガスを大気中に放出するように構成されているため、環境保全上好ましくないという問題点がある。また、この種の分析計として、例えば常磁性を利用する磁気式酸素分析計のように除湿器を必要とする分析計を用いた場合には、高精度の燃焼制御を行う上で応答性の面で難点があるほか、排ガスを除湿した後にドレン処理を行う必要があって、装置構成が複雑かつ大掛かりになるという問題点がある。
【0007】
本発明は、前述のような問題点を解消するためになされたもので、極めて簡素な装置構成で、しかも分析後の排ガスを大気中へ放出することのないガス分析装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明によるガス分析装置は、
炉内もしくは排ガス通路内の排ガスをサンプリング管にて捕集して分析するガス分析装置において、
(a)前記サンプリング管にて捕集された排ガスを滞留させる滞留室と、
(b)この滞留室内に配され、排ガス中の酸素濃度を分析する酸素分析計プローブと、
(c)前記滞留室と前記炉内もしくは排ガス通路内とを連通させるように配され、前記酸素分析計プローブにて分析後の排ガスを前記炉内もしくは排ガス通路内に還流させる還流路と、
(d)前記炉内もしくは排ガス通路内から前記滞留室内に排ガスを導入するために前記還流路内に加圧空気を噴射するエジェクタと
を備えることを特徴とするものである(第1発明)。
【0009】
本発明においては、前記サンプリング管内に圧縮空気を吹き込む圧縮空気吹き込み管が設けられるのが好ましい(第2発明)。
【0010】
また、前記酸素分析計プローブは、前記滞留室内に直接挿入して取り付けられるジルコニア式酸素分析計プローブであるのが好適である(第3発明)。
【0011】
さらに、前記サンプリング管の前記炉内もしくは排ガス通路内に突出する先端部が耐熱性を有する多孔質フィルタにて形成されているのが良い(第4発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、捕集された排ガスを滞留させる滞留室と、炉内もしくは排ガス通路内とが還流路にて連通され、この還流路内にエジェクタから加圧空気が噴射されるように構成されているので、このエジェクタが排ガス吸引装置として機能して排ガスが滞留室内に吸引され、分析後の排ガスはエジェクタから噴射される加圧空気とともに炉内もしくは排ガス通路内に排出される。したがって、分析後の排ガスが大気中に放出されることはなく、環境汚染を未然に防ぐことができる。また、滞留室内に酸素分析計プローブが配されているので、装置構成を極めて簡素にすることができるとともに、排ガスを連続的に分析することができて制御の応答性を向上させることができる。
【0013】
前記第2発明の構成を採用すれば、圧縮空気吹き込み管から噴射される圧縮空気によって、サンプリング管の外表面に付着したダストを確実に払い落とすことができる。
【0014】
また、第3発明のようにジルコニア式酸素分析計プローブを用いれば、応答性が早く、しかも除湿器等の付属装置が不要となって、装置構成をより簡素化することができる。
【0015】
また、第4発明の構成によれば、炉内の高温部にサンプリング管を挿入することができて、サンプリング管を損傷させずにその高温部の排ガスを導入してガス分析を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明によるガス分析装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態に係るガス分析装置の断面図が示され、図2には、一部断面にて示す図1のA矢視図(a)および図1のB−B断面図(b)が示されている。
【0018】
本実施形態は、ガス分析装置1が、熱分解ガス化溶融プラント(図示せず)のボイラ出口における排ガス通路2の通路壁3に設置して使用される例に適用されたものである。
【0019】
ガス分析装置1は、排ガス通路2の通路壁3に固着されて内部に第1空間部4を有する第1ケーシング5と、この第1ケーシング5の後端部にフランジ結合されて内部に第2空間部6を有する第2ケーシング7と、前記第1ケーシング5の先端側に通路壁3を貫通するように配される円筒状のサンプリング管(プローブ)8とを備えている。ここで、サンプリング管8は、第1ケーシング5に固着される取付金物としての排ガス配管9と、この排ガス配管9の先端にフランジ結合にて固着される多孔質フィルタ10とにより構成されている。なお、多孔質フィルタ10は、排ガス温度(150〜1200℃)を考慮して、セラミック製もしくはステンレス製のものが採用される。また、排ガス配管9はステンレス製とされる。
【0020】
前記第1空間部4と第2空間部6とは略同径になるように連通され、それら空間部4,6によって排ガスを滞留させる滞留室が形成されている。そして、この滞留室(空間部4,6)内には第2ケーシング7の基端側から、先端部にジルコニア式酸素分析計プローブ11を有する酸素濃度検出器12が挿入・固定されている。このジルコニア式の酸素濃度検出器12は、チューブ状のジルコニア素子の外面側が排ガスにされされると、この排ガスとジルコニア素子内の空気との酸素濃度差に応じて内側電極、外側電極間に起電力が生じ、この起電力を検出信号として排ガス中の酸素濃度を検出するように構成されたものである。
【0021】
前記第2ケーシング7の後端部には、その第2ケーシング7の軸線と直交するように排ガス抽出管13が固着され、この排ガス抽出管13の先端部にはその排ガス抽出管13と連通するように、かつ第2ケーシング7の軸線と平行に排ガス還流管14が取り付けられている。そして、この排ガス還流管14の先端部は排ガス通路2の通路壁3に固着されている。こうして、前記第2ケーシング7内の第2空間部6は、排ガス抽出管13および排ガス還流管14を介して排ガス通路2に連通されている。なお、本実施形態における排ガス抽出管13および排ガス還流管14が、本発明における還流路に相当する。
【0022】
前記排ガス抽出管13と排ガス還流管14との接続部にはエジェクタ15が設けられている。このエジェクタ15では、噴射ノズルから圧縮空気が排ガス還流管14内に噴射されることによって、この噴射力によって排ガス抽出管13内の排ガスを随伴吸引しながら排ガス還流管14内に噴射させる(エジェクタ作用)。なお、排ガス還流管14の管径は、中央部において拡径されて基端部(エジェクタ15設置側)に対し先端部(排ガス通路2側)が大径にされている。
【0023】
また、前記第2ケーシング7の後端部には、排ガス抽出管13と対向する位置に排ガス検出管16が取り付けられ、この排ガス検出管16の先端部には連成計(微圧計)17が取り付けられている。こうして、滞留室(第2空間部6)内の排ガス圧力がその連成計17によって計測される。
【0024】
前記第1空間部4、第2空間部6、排ガス抽出管13、排ガス還流管14および排ガス検出管16の周囲は保温材18により被覆されるとともに、第2空間部6、排ガス抽出管13、排ガス還流管14および排ガス検出管16においてはその保温材18の下にテープヒータ19が設置されている。このテープヒータ19は、第2ケーシング7、排ガス抽出管13等の表面温度が200℃以下になる場合に200℃を保持することによって金物の低温腐食を防止する役目をする。
【0025】
また、前記多孔質フィルタ10の外表面に付着したダストを払い落とすため、この多孔質フィルタ10内に圧縮空気を供給する圧縮空気吹き込み管20が設けられている。この圧縮空気吹き込み管20は、第1ケーシング5内に配された保温材18を貫通するとともに、排ガス配管9の上面からその排ガス配管9内に挿入されるように取り付けられ、その基端部にはパルス電圧によって開閉操作される電磁弁21を備えている。この電磁弁21は、前記連成計17によって検出される滞留室内の排ガス圧力と、図示されない圧力計によって検出される排ガス通路2内の排ガス圧力との差圧がある設定値に達したときに、多孔質フィルタ10の外表面にダストが付着したと判断され、図示されないコントローラからのパルス信号に基づき開操作される。この結果、空気源から圧縮空気吹き込み管20を介して多孔質フィルタ10内に圧縮空気が供給され、その多孔質フィルタ10の外表面に付着したダストが払い落とされる。
【0026】
本実施形態のガス分析装置1においては、エジェクタ15の噴射ノズルから排ガス還流管14内に圧縮空気(加圧空気)が噴射されることにより、滞留室(第1空間部4、第2空間部6)内が負圧になり、この結果、排ガス通路2内の排ガスが多孔質フィルタ10および排ガス配管9を介して滞留室内に吸引される。そして、この滞留室内においては、多孔質フィルタ10により除塵された排ガスの酸素濃度がジルコニア式酸素分析計プローブ11を有する酸素濃度検出器12によって分析され、分析後の排ガスはエジェクタ15から噴射される圧縮空気とともに排ガス還流管14を通って排ガス通路2内に排出される。また、排ガス通路2内の排ガス圧力と、連成計17によって検出される滞留室内の排ガス圧力との差圧がある設定値を越えたときには、圧縮空気吹き込み管20の電磁弁21にパルス電圧が印加されて開作動されることにより、多孔質フィルタ10の外表面に付着したダストが払い落とされる。
【0027】
このように本実施形態のガス分析装置1によれば、酸素濃度検出器12によって分析された後の排ガスを大気中に放出させずに、排ガス通路2に還流させるように構成されているので、環境汚染を未然に防ぐことができるという効果を奏する。また、排ガスの分析を行うのに、直接挿入型のジルコニア式酸素分析計プローブが用いられているので、装置構成を極めて簡素にすることができるとともに、排ガスを連続的に分析することができて制御の応答性を向上させることができるという利点がある。
【0028】
本実施形態においては、ガス分析装置1を排ガス通路2の通路壁3に設置したものを説明したが、このガス分析装置1は焼却炉の炉壁に設置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス分析装置の断面図
【図2】一部断面にて示す図1のA矢視図(a)および図1のB−B断面図(b)
【符号の説明】
【0030】
1 ガス分析装置
2 排ガス通路
3 通路壁
4 第1空間部(滞留室)
5 第1ケーシング
6 第2空間部(滞留室)
7 第2ケーシング
8 サンプリング管
9 排ガス配管
10 多孔質フィルタ
11 ジルコニア式酸素分析計プローブ
12 酸素濃度検出器
13 排ガス抽出管(還流路)
14 排ガス還流管(還流路)
15 エジェクタ
16 排ガス検出管
17 連成計(微圧計)
18 保温材
19 テープヒータ
20 圧縮空気吹き込み管
21 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内もしくは排ガス通路内の排ガスをサンプリング管にて捕集して分析するガス分析装置において、
(a)前記サンプリング管にて捕集された排ガスを滞留させる滞留室と、
(b)この滞留室内に配され、排ガス中の酸素濃度を分析する酸素分析計プローブと、
(c)前記滞留室と前記炉内もしくは排ガス通路内とを連通させるように配され、前記酸素分析計プローブにて分析後の排ガスを前記炉内もしくは排ガス通路内に還流させる還流路と、
(d)前記炉内もしくは排ガス通路内から前記滞留室内に排ガスを導入するために前記還流路内に加圧空気を噴射するエジェクタと
を備えることを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
前記サンプリング管内に圧縮空気を吹き込む圧縮空気吹き込み管が設けられる請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記酸素分析計プローブは、前記滞留室内に直接挿入して取り付けられるジルコニア式酸素分析計プローブである請求項1または2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記サンプリング管の前記炉内もしくは排ガス通路内に突出する先端部が耐熱性を有する多孔質フィルタにて形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−258462(P2006−258462A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72925(P2005−72925)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】