説明

ガス分析装置

【課題】本発明は、被測定ガスを加熱して加熱前後の被測定ガスの重量差を求め、被測定ガス中の微量ガスの実際の重さを測定することを課題とする。
【解決手段】大気等に含まれる微量ガスを定量するガス分析装置であり、被測定ガスを加熱する電気炉(加熱手段)31と、被測定ガスの加熱前後のガス量を測定する計測手段とを具備することを特徴とするガス分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大気等に含まれる微量ガスを高感度で定量することが可能なガス分析装置に関し、特に、大気中の特定ガス,自動車排気ガス中の有害ガス,呼気中の特定ガス,構造材に含まれる特定ガス等の微量ガスを最高ppmオーダーの高い感度で測定することができるガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大気等に含まれる微量ガスを質量分析法により測定する場合には、測定しようとするガス(対象ガス)を含む大気等(被測定ガス)を連続的に質量分析計のイオン源に流し込む必要があるが、大気圧かそれに近い被測定ガス圧力と質量分析計が正常に作動する圧力の間には1億倍(10)以上の差があるため、数段の差動排気を行い、質量分析計のイオン源へのガス流入口の孔径を極度に小さくしている。
【0003】
即ち、従来のガス分析装置は、図7に示すようになっている。ガス分析装置は、ガス供給機構1を備えている。ここで、ガス供給機構1は、被測定ガスリザーバ2と、可変リークバルブ3を介装した配管4と、圧力計5を備えたマニホールド6と、このマニホールド6と配管7を介して接続する真空排気装置8とから構成されている。真空排気装置8は、ターボ分子ポンプ9とダイヤフラムポンプ10とからなる。また、ガス分析装置は、前記ガス供給機構1の下流側にオリフィス板11を備えた分岐管12を備えている。図中の符番11aはオリフィス板11のオリフィスである。更に、ガス分析装置は、前記分岐管12の下流側にイオン源13を備えた四極子型質量分析計14と、この質量分析計14に接続する真空排気装置15を備えている。真空排気装置15は、ターボ分子ポンプ16とダイヤフラムポンプ17とからなる。
【0004】
こうした分析装置の動作は次のとおりである。即ち、まず、2つの前記真空排気装置8,15により可変リークバルブ3の下流側の配管4と四極子型質量分析計14内を高真空に排気し、質量分析計14を作動状態にする。次に、可変リークバルブ3を適度に開き、マニホールド6に取り付けてある圧力計5の指示が所定の値になるようにする。この所定の値は、このとき質量分析計のイオン源13部の圧力がこの値とオリフィス11aのコンダクタンスと排気装置の実効排気速度とにより、測定に最適な値となるように予め設定されたガス分析装置固有なものである。
【0005】
この状態において、被測定ガスリザーバ2から放出された被測定ガスの一部がマニホールド6の近くに設けられたオリフィス板11のオリフィス11aから四極子型質量分析計14のイオン源13に流れ込むので、そのガスのマススペクトルを分析することにより被測定ガスの中の対象ガスの濃度を測定することができる。
【0006】
しかしながら、図7の従来のガス分析装置では、可変リークバルブ3を絞って被測定ガスリザーバ2からのガス放出量を少なくすると、流量を微調整するのが難しいため再現性に乏しくなる。反対に、可変リークバルク3を開いて被測定ガスリザーバ2からのガス放出量を多くすると、マニホールド部の圧力が上昇するためオリフィス径を極端に小さくする必要がある。それ故、オリフィスのコンダクタンスが変化したり、オリフィスが詰まったりして、同様に再現性が悪くなるという難点がある。
【0007】
また、従来のガス分析装置では、基本的に被測定ガスを連続的に流して、定常状態にて測定する方式を採用しているため、流れの再現性が仮に確保されたとしても、通常、被測定ガス中に多量に含まれている水蒸気等の吸着性ガスの影響により対象ガスの検出感度が著しく低下するという問題を有している。
【0008】
即ち、例えば、被測定ガス中に存在する微量の水素を測定しようとする場合、イオンの質量数と電荷の比m/e=2(H)に着目して分析を行うが、被測定ガス中に多量の水蒸気が存在するとm/e=1(H)が生成し、m/e=1の値が大きくなるとこれに隣接するm/e=2の指値にも影響を与える。このため、対象ガスの水素に起因するm/e=2の正確な値が読めなくなり、結果的に検出感度の低下を招くことになる。
水蒸気等の吸着性ガスは、質量分析計の管壁や電極に吸着しやすく、一旦吸着すると高温に加熱しない限り簡単に脱離しない性質を有している。
【0009】
従って、質量分析法によるガス分析装置を大気等に含まれる微量ガスの分析に使用するためには、検出感度を最高ppmオーダーにまで高めるとともに、測定値の精度(再現性)の向上、測定の迅速化等、改善すべき課題が山積している。
【0010】
こうしたことから、本発明者らは、先に、上述した課題を解決するために高感度ガス分析装置を提案した(非特許文献1)。この提案は、被測定ガス導入部に開閉弁付小容器と該小容器に前記開閉弁を介して接続される比較的大容量のバッファタンクを設けた構成にすることにより、被測定ガスをパルス的に導入できるようにするとともに、オリフィスから被測定ガスの一部を四極子型質量分析計のイオン源に流入させることにより、特定ガス等の微量ガスを最高ppmオーダーの高い感度で再現性よく測定できるようにしたものである。
【非特許文献1】特願2004−234010
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、非特許文献1によれば、大気等に含まれる複数の微量ガスを高感度で検出することはできるものの、各ガスを相対値で測定するもので、絶対値で測定するものではなかった。また、被測定ガス中に微量ガスが具体的にどのくらい含まれているかを測定することもできなかった。
【0012】
本発明は、こうした事情を考慮してなされたもので、被測定ガスを加熱する加熱手段と、被測定ガスの加熱前後のガス量を測定する計測手段とを備えることにより、被測定ガスを加熱して加熱前後の被測定ガスの重量差を求めて、被測定ガス中の微量ガスの実際の重さを測定しえるガス分析装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、被測定ガスをパルス的に流すためのガス供給機構と、このガス供給機構の下流側に配置されたバッファタンクと、このバッファタンクの下流側に配置された,イオン源を備えた四極子型質量分析計と、前記ガス供給機構から被測定ガスの一部を前記四極子型質量分析計のイオン源に流入させるためのオリフィス板とを更に備えた構成にすることにより、被測定ガス中の各微量ガスの絶対量を測定しえるガス分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るガス分析装置は、大気等に含まれる微量ガスを定量するガス分析装置であり、被測定ガスを加熱する加熱手段と、被測定ガスの加熱前後のガス量を測定する計測手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被測定ガスを加熱して加熱前後の被測定ガスの重量差を求めて、被測定ガス中の微量ガスの実際の重さを測定することができる。また、本発明によれば、被測定ガスをパルス的に流すためのガス供給機構と、このガス供給機構の下流側に配置されたバッファタンクと、このバッファタンクの下流側に配置された,イオン源を備えた四極子型質量分析計と、前記ガス供給機構から被測定ガスの一部を前記四極子型質量分析計のイオン源に流入させるためのオリフィス板とを更に備えた構成にすることにより、被測定ガス中の各微量ガスの絶対量を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
上述したように、本発明のガス分析装置は、被測定ガスを加熱する加熱手段と、被測定ガスの加熱前後のガス量を測定する計測手段とを具備している。
【0017】
本発明において、前記計測手段としては、1)測定前後にサンプリング管内の試料を真空容器から取り出して大気中で測定する方法、あるいは2)真空マニプレータを使用して真空容器内に吊り下げ天秤を設置して連続してサンプリング内の試料からの微量放出ガスを測定する方法が挙げられる。ここで、1)による計測方法は、試料の重量変化量が大きく大気の影響を無視できる場合に有効で、簡単な計測装置を用いて低コストで微量放出ガスを測定できるというメリットを有する。2)による計測方法は、大気中での測定と比べて、微量放出ガスの測定を大気中での不純物の影響を受けずに正確に測定できるというメリットを有する。上記2)の具体的な例は、後述する図2、図3に示すとおりである。
【0018】
本発明においては、被測定ガスをパルス的に流すためのガス供給機構と、このガス供給機構の下流側に配置されたバッファタンクと、このバッファタンクの下流側に配置された、イオン源を備えた四極子型質量分析計と、前記ガス供給機構から被測定ガスの一部を前記四極子型質量分析計のイオン源に流入させるためのオリフィス板とを更に備えることが好ましい。こうした構成にすることにより、被測定ガス中の微量ガスの各成分の絶対量を測定することができる。
【0019】
前記ガス供給機構は、前記バッファタンクに接続された,被測定ガスの一部を一時的に貯蔵する一次貯蔵容器と、この一次貯蔵容器の開閉を行う複数の開閉バルブを備えていることが好ましい。こうした構成にすることにより、サンプリング管表面に付着した不純物ガスの各成分の絶対量を測定することができる。ここで、前記一時貯蔵容器と前記バッファタンクの内容積の比は、1/10000〜1/400であることが好ましい。この数値限定の理由は、上記比が1/400未満ではガス量を測定する測定手段(例えば、四極子型質量分析計)がOFFとなってガス量の検出が不可能であり、上記比が1/10000を越えると前記分析計の感度が低下するからである。ここで、一時貯蔵容器に採取した一定量の大気圧の被測定ガスを前記開閉弁を高速で全開して流出させることにより、前記ガス供給機構の被測定ガスの流れを繰り返し再現できる。
【0020】
本発明においては、前記ガス供給機構と前記加熱手段間に、被測定ガスが流通する配管を冷却するための冷却手段が配置されていることが好ましい。冷却手段を設けることにより、加熱手段からバッファタンク等に熱的悪影響が及ぶのを回避することができる。
【0021】
本発明において、前記加熱手段としては、電気炉、あるいは電気炉と高周波加熱、レーザ加熱、ハロゲンランプの少なくともいずれか1つとを組み合わせることができる。電気炉は一般に急速加熱するのに不向きであるので、サンプリング管表面の不純物ガスの加熱には急速加熱に適した高周波加熱、レーザ加熱あるいはハロゲンランプによる加熱処理を行うことが好ましい。高周波加熱等の急速加熱手段はサンプリング管を収容する加熱管の内側あるいは外側に配置することができる。
【0022】
本発明において、前記四極子型質量分析計には真空排気装置が接続されていることが好ましい。但し、前記質量分析計が不要の場合、この真空排気装置又は前記ガス供給機構の真空排気装置の一方のみを用いることにより、コスト低減を図ることができる。
【0023】
次に、本発明に係るガス分析装置の具体的な例について図面を参照して説明する。
(実施例1)
本発明の実施例1に係るガス分析装置について図1を参照して説明する。
図中の符番21は、両端にフランジ21a,21bが形成されたバッファタンクを示す。このバッファタンク21の片側(右側)には、被測定ガスをバッファタンク側にパルス的に流すためのガス供給機構23が接続されている。ガス供給機構23は、片側にフランジ24aが形成された一時貯蔵容器24と、この一時貯蔵容器24に設けられた開閉バルブ25,26とから構成されている。一時貯蔵容器24の片側には、フランジ27aが形成された配管27を冷却するための二重壁構造の冷却管(冷却手段)28が配置されている。この冷却管28には冷却水が矢印Yのように供給される。また、配管27の一端側にはフランジ29aを備えた加熱管29が取り付けられ、この加熱管29内に被測定ガスを収容するサンプリング管30が配置されている。
【0024】
前記ガス分析装置は、加熱管29及びサンプリング管30を加熱するヒータ31aを備えた電気炉(加熱手段)31を更に備え、該電気炉31はX方向に移動できるようになっている。また、前記加熱管29は、フランジ29a部分で配管27から取り外しできるようになっている。前記バッファタンク21の他端側(左側)のフランジ21aには、一端側にフランジ32aが形成され,途中にバルブ33が設けられたマニホールド32が接続されている。マニホールド32は、他端部に加熱管29側から被測定ガスの一部を四極子型質量分析計34のイオン源35に流入させるためのオリフィス板36を具備している。オリフィス板36は、円形のオリフィス(孔)36aを有する薄い金属板で、孔の直径は0.3mm前後である。オリフィス板36に厚みがある場合には、孔径がこれよりも大きくなる。
【0025】
前記バッファタンク21には、バルブ37aを備えた配管37を介して第1の真空排気装置38が接続されている。この真空排気装置38は、ターボ分子ポンプ39とダイヤフラムポンプ40とからなる。前記四極子型質量分析計34は前記マニホールド32の下流側に配置され、マニホールド32と四極子型質量分析計34間には真空容器41が配置されている。この真空容器41には配管42を介して第2の真空排気装置43が接続されている。真空排気装置43は、ターボ分子ポンプ44とダイヤフラムポンプ45とからなる。
【0026】
次に、こうした構成のガス分析装置を用いて、例えばA356(Al合金)100g中の不純物ガスを測定する例を示す。
1)まず、不純物を含む被測定ガスをガス分析装置に導入する前に、別途用意した天秤で被測定ガスの重量Wを測定しておく。ここで、被測定ガスの重量とは、サンプリング管30、ガス及びサンプルの重さを示す。次に、サンプリング管30を収容した加熱管29のフランジ部29aを、配管27のフランジ部27aに位置あわせ、ボルトで固定する。つづいて、一時貯蔵容器24の開閉弁25,開閉弁26が開き、配管37のバルブ37aを開いた状態で、第1の真空排気装置38により加熱管29内の真空排気を行う。
【0027】
2)次に、加熱管29内が所定の圧力になったら、真空排気を止め、開閉弁26を開いて、開閉弁25を閉じる。つづいて、電気炉31のヒータ31aで加熱管29及びサンプリング管30を加熱し、サンプリング管30内の被測定ガスを一時貯蔵容器24に詰める。開閉弁26を閉じると、一時貯蔵容器24には一定容積の大気圧(略1気圧,10Pa)の被測定ガスが採取できる。
【0028】
3)次に、バルブ37aを開き、バルブ33が閉じた状態で第1の真空排気装置38が作動していることを確認してから、開閉弁25を高速で全開する。これにより、一時貯蔵容器24内の被測定ガスはバッファタンク21内に速やかに拡散する。このとき、バッファタンク21内の圧力は、図4に示すように一旦極大値に達し、以後、第1の真空排気装置38により排気されるので、徐々に低下していく。なお、マニホールド32内の圧力はバッファタンク21内の圧力と略同様な変化をする。
【0029】
4)ここで、通常、一時貯蔵容器24の内容積は0.1〜0.5mL、バッファタンク21の内容積は0.2〜1Lで両者の比は1/2000前後である。従って、開閉弁25を開いた直後のバッファタンク21及びマニホールド32内の圧力は、およそ1/2000気圧の50Pa前後である。第1の真空排気装置38によるバッファタンク21及びマニホールド32における実効排気速度は0.02〜0.1L/sで、圧力減衰(図4参照)の時定数は10s前後である。
【0030】
5)次に、冷却管28で配管27等を冷却しながら、加熱炉31のヒータ31aでサンプリング管30の被測定ガスを加熱する。これにより、被測定ガスの温度が上がり、被測定ガス中の各成分例えばH,CO,HO,CO,C,Cが出てくる。
【0031】
6)次に、バルブ37aを閉じ、バルブ33を開いた状態で第2の真空排気装置43を作動させることにより、バッファタンク21及びマニホールド32より被測定ガスの一部を真空容器41を介して四極子型質量分析計34のイオン源35に流し込む。ここで、第2の真空排気装置43の実効排気速度は20〜100L/sである。
【0032】
7)第2の真空排気装置43が作動状態にあり、オリフィス36aからのガス流入がないときには、四極子型質量分析計34のイオン源35内は圧力が10−5Pa以下の超高真空になっている。しかし、マニホールド32内に被測定ガスが存在すると、該被測定ガスの一部がオリフィス36a、真空容器41を通ってイオン源35に流入し、イオン源35内の圧力が上昇する。イオン源35に流入したガスは第2の真空排気装置43によって排気される。
【0033】
8)オリフィス36aを通過するガスの流量はマニホールド32内のガスの圧力に略比例するが、第2の真空排気装置43の実効排気速度は圧力によらず略一定なので、イオン源35内の被測定ガスの圧力はマニホールド32内の被測定ガスの圧力に略比例して変化し、その比例定数は(オリフィスのコンダクタンス)/(第2の真空排気装置の実効排気速度)で表される。本実施例1では、比例定数がおよそ1/10000〜1/2000である。
【0034】
9)サンプリング管30内又は表面の被測定ガス中の対象ガス(H,CO,HO,CO,C,C等)の定量は、四極子型質量分析計34のイオン源35で被測定ガスをイオン化し、対象ガスに特有なm/eのイオンを四極子型質量分析計34で分離してそのイオン電流を測定する。通常、イオン電流が極大に達したときのイオン電流を測定し、予め作成してある校正曲線から絶対値を求める。本発明の具体的な実施例では、最高ppmオーダーまでの微量ガスの測定が可能である。
【0035】
10)図6は、各対象ガスによる時間と濃度(イオン電流)との関係を示す。なお、図6中、曲線(a),(b),(c),(d),(e),(f)は、夫々H,CO,HO,CO,C,Cの曲線を示す。前記特性図より、各対象ガスの夫々の相対比は、次のようにして計算する。
:S1×2=S1’
CO :S2×28=S2’
O:S3×18=S3’
CO:S4×44=S4’
C :S5×12=S5’
:S6×55=S6’
但し、S1,S2,S3,S4,S5,S6は夫々図4中の各曲線(a),(b),(c),(d),(e),(f)の下側の面積(積分値)を示す。
上記S1’,S2’,S3’,S4’,S5’,S6’により、各対象ガスの相対比が判明する。例えば、Hの相対比は、S1’/(S1+S2’+S3’+S4’+S5’+S6’)である。このようにして他の対象ガスの相対比も求めることができる。
【0036】
11)次に、加熱後の被測定ガスの重量Wを別途用意した天秤で求め、加熱前後の被測定ガスの重量差ΔW=(W−W)を求める。従って、被測定ガス中の個々の対象ガスの重量を求めることができる。例えば、Hは、次の式で求めることができる。
【0037】
:ΔW×S1’/(S1+S2’+S3’+S4’+S5’+S6’)
このようにして他の対象ガスの重量を求めることができる。
【0038】
上記実施例1によれば、第1に、被測定ガスの上流,下流側に夫々開閉弁26,25を備えた一時貯蔵容器24を用いて被測定ガスをガス分析装置にパルス的に導入できる。これにより、ガスの流れの再現性が確保されるとともに、従来のガスを連続的に流す装置に比べ、四極子型質量分析計34の管壁や電極が被測定ガスに触れる度合いが数桁低くなり、ひいては、水蒸気等の吸着性ガスに起因するバックグラウンド圧上昇が抑えられ、対象ガスに対する検出感度の低下を防ぐことができる。第2に、加熱炉31を用いて加熱前後の被測定ガスの重量を測定し、図6の時間−濃度特性図に基づいて、被測定ガス中の各対象ガスの重量を具体的に測定できる。従って、実施例1のガス分析装置によれば、被測定ガス中の各対象ガスの実際の重量を感度よく測定できる。
【0039】
なお、サンプリング管29には、内部のみならず表面にも不純物ガスが付着しているので、時間とサンプルの不純物ガスの重さの変化をグラフ化すると、立ち上がりに急激な重さの変化を示すことが明らかになっている。この特性は、サンプルの表面の不純物ガスに起因すると考えられている。
【0040】
(実施例2)
本発明の実施例2に係るガス分析装置について図2を参照して説明する。このガス分析装置は、実施例1のガス分析装置と比べて、加熱手段,計測手段のみが異なるため、要部のみ説明する。即ち、実施例1では、被測定ガスの重量は別途用意した天秤を用いて測定したが、本実施例2では、図2に示す構成の計測手段51及び加熱手段を用いて行った。なお、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
【0041】
計測手段51は、図2に示すように、加熱管29及びサンプリング管30を出入するための窓52が形成された真空容器53を備えている。この真空容器53の側壁には、図1の配管27のフランジ部27aと位置あわせ、固定する為のフランジ部53aが形成されている。真空容器53内の上方には電子天秤54が配置され、該電子天秤54には吊り下げ部材55により受け皿56が吊り下げられている。前記真空容器53内で受け皿56の周囲には、受け皿56に載置される前記加熱管及びサンプリング管を加熱するヒータ57が載置されている。電子天秤54と受け皿56間には、ヒータ57からの熱を遮蔽するための板状の熱遮蔽板58が配置されている。この熱遮蔽板58の材質は例えばステンレスである。なお、熱遮蔽板は板状に限らず、内部に水を流すことができるように中空状にしてもよい。
【0042】
こうした構成のガス分析装置によれば、配管27のフランジ部27aと位置合わせるフランジ部53aを備えた真空容器53と、加熱管及びサンプリング管を収容する受け皿56と、電子天秤54と、ヒータ57と、熱遮蔽板58とを備えた計測手段51となっているので、実施例1の装置と比べ、微量放出ガスの測定を大気中での不純物の影響を受けずに正確に測定できるという効果が得られる。
【0043】
(実施例3)
本発明の実施例3に係るガス分析装置について図3を参照して説明する。このガス分析装置は、実施例2のガス分析装置の計測手段と比べ、計測手段51の構成が若干異なるのみであるため、要部のみ説明する。
図3中の符番59は、受け皿56を電子天秤54まで上下動させる昇降機構を示す。昇降機構59はマニプレーター(図示せず)を大気側から操作するもので、窓52から受け皿56に加熱管及びサンプリング管を載置した後、受け皿56を電子天秤54側まで矢印Aのように下降させて微量放出ガスを測定する。
実施例3によれば、実施例2と同様な効果が得られる。
【0044】
(実施例4)
図5を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。実施例4に係るガス分析装置は、実施例1の装置のように不純物ガス中の各対象ガスの重量を測定するものではなく、加熱前後の不純物ガスの全量変化を測定する場合に有効である。従って、実施例4のガス分析装置においては、実施例1の場合と異なり、四極子型質量分析計、第2の真空排気装置及びオリフィス板が不要となる。
【0045】
このように、実施例4のガス分析装置によれば、被測定ガスをパルス的に流すためのガス供給機構23と、被測定ガスを加熱する加熱手段としての電気炉31と、被測定ガスの加熱前後のガス量を測定する計測手段としての天秤(図示せず)とを具備し、ガス供給機構23は、片側にフランジ24aを有した一時貯蔵容器24と、この一時貯蔵容器24に設けられた開閉弁25,26とを備えた構成となっている。従って、加熱前後の不純物ガスの全量変化を測定することができる。また、実施例1の場合と比べ、高価な第2の真空排気装置等を不要にできるので、コスト低減を図ることができる。
【0046】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。具体的には、四極子型質量分析計は必ずしも必要なものではない。この場合、第1・第2の真空排気装置のうちいずれかが不要であるとともに、オリフィス板も不要となる。また、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は本発明の実施例1に係るガス分析装置の説明図である。
【図2】図2は本発明の実施例2に係るガス分析装置の一構成である計測手段及び加熱手段の説明図である。
【図3】図3は本発明の実施例3に係るガス分析装置の一構成である計測手段及び加熱手段の説明図である。
【図4】図4は図1のガス分析装置のバッファタンク及びマニホールド内の圧力の時間的変化を概略的に示す図である。
【図5】図5は本発明の実施例4に係るガス分析装置の概略的な図である。
【図6】図6は図1のガス分析装置による時間と濃度との関係を示す特性図である。
【図7】図7は従来のガス分析装置の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
21…バッファタンク、23…ガス供給機構、24…一時貯蔵容器、25,26…開閉弁、27,37,42…配管、28…冷却管、29…加熱管、30…サンプリング管、31…電気炉、32…マニホールド、34…四極子型質量分析計、35…イオン源、36…オリフィス板、36a…オリフィス、38,42…真空排気装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気等に含まれる微量ガスを定量するガス分析装置であり、被測定ガスを加熱する加熱手段と、被測定ガスの加熱前後のガス量を測定する計測手段とを具備することを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
前記計測手段は、真空容器と、この真空容器内に配置された電子天秤と、前記真空容器内に配置され,被測定ガスを収容するサンプリング管を載置する受け皿と、この受け皿に載置されたサンプリング管を加熱するヒータ部とを具備することを特徴とする請求項1記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記計測手段は、真空容器と、この真空容器内に配置された電子天秤と、前記真空容器内に配置され,被測定ガスを収容するサンプリング管を載置する受け皿と、この受け皿に載置されたサンプリング管を加熱するヒータ部と、前記受け皿を電子天秤まで上下動させる昇降機構とを具備することを特徴とする請求項1記載のガス分析装置。
【請求項4】
被測定ガスをパルス的に流すためのガス供給機構と、このガス供給機構の下流側に配置されたバッファタンクと、このバッファタンクの下流側に配置された,イオン源を備えた四極子型質量分析計と、前記ガス供給機構から被測定ガスの一部を前記四極子型質量分析計のイオン源に流入させるためのオリフィス板とを更に備えることを特徴とする請求項1記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記ガス供給機構は、前記バッファタンクに接続された,被測定ガスの一部を一時的に貯蔵する一次貯蔵容器と、この一次貯蔵容器の開閉を行う複数の開閉バルブを備えていることを特徴とする請求項4記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記ガス供給機構と加熱手段間に、被測定ガスが流通する配管を冷却するための冷却手段が配置されていることを特徴とする請求項4又は5いずれか記載のガス分析装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、電気炉、あるいは電気炉と高周波加熱、レーザ加熱、ハロゲンランプの少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載のガス分析装置。
【請求項8】
前記四極子型質量分析計に真空排気装置が接続されていることを特徴とする請求項4記載のガス分析装置。
【請求項9】
前記一時貯蔵容器と前記バッファタンクの内容積の比が1/10000〜1/400であることを特徴とする請求項5に記載のガス分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−151590(P2008−151590A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338659(P2006−338659)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(591058792)日本金属化学株式会社 (11)
【Fターム(参考)】