説明

ガス分析装置

【課題】 本発明の目的は、減圧雰囲気のガス種の分圧比とともに全圧の計測を
可能とし、各ガス種分圧の正確な計測が可能なガス分析装置を提供することにあ
る。
【解決手段】 円筒状のグリッド及びその外側に配置されたフィラメントからな
る、ガスをイオン化するイオン源と、グリッドの一端部に隣接し、その中心軸と
同一軸上に設けられたイオンを引き出すための引出し電極と、引出されたイオン
を分別する質量分析器と、質量分別されたイオンを検出する分圧用コレクタと、
中心軸上に配置された全圧用コレクタと、からなり、グリッド内に電界方向の異
なる二つの領域を同時に形成し、又は、電界方向が異なる二つの状態を交互に形
成して、全圧用コレクタ及び分圧用コレクタに流れる電流により、混合ガスの全
圧及び分圧比を計測可能な構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧雰囲気のガス組成を計測するためのガス分析装置に係り、特に、各ガスの圧力(分圧)の絶対値を正確に計測するためのガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧雰囲気のガス組成を計測するガス分析装置は残留ガス分析装置とも呼ばれ、例えば先端的な半導体・電子部品製造に使用される真空装置を安定的に稼働させるために不可欠なものとなっている。ガス分析装置は、図7に示すように、円筒状グリッド2及びフィラメント3を有する、ガスをイオン化するイオン源5と、イオン源よりイオンを引出すための円孔板状の引出し電極4と、引出されたイオンを質量に応じて分別する質量分別器6と、および質量分別されたイオンを検出する分圧用コレクタ7と、から構成される。近年では、質量分別器に四重極高周波電界を使用したマスフィルター型が最も一般的となっている。
分圧用コレクタにより検出される特定ガスのイオン量は、そのガスの圧力に比例している。しかし、引出しや質量分別の効率が一定でないため、イオン数の絶対値と圧力値には固定された関係がない。したがって、ガス分析装置は、各ガス種の分圧比(濃度比)を測定することは出来るが、その各圧力の絶対値を求めることは不可能である。そこで、別途同一雰囲気に設置した真空計(全圧計)により全圧値(各分圧の合計値)を計測し、これとガス分析装置により計測される分圧比とから、各圧力の絶対値を計算する方法が用いられている。
【0003】
一方、全圧計は、全圧を正確に測定することの出来る装置であり、真空技術の基本として古くから幅広く使用され、通常6桁以上の広い測定範囲をプラスマイナス20%程度の精度で測定することが出来る。全圧計は、図8及び9に示すように、電子を内部で飛行・振動させてから捕捉するために、透過率の高い格子等にて形成された円筒状のグリッド2、熱電子を放出するフィラメント3、電子の衝突によって生成したイオンを捕捉して電流として検出する全圧用コレクタ1によって構成され、これらグリッド2、フィラメント3、全圧用コレクタ1の配置により三極型(図8)、B−A型(図9)に分類される。
グリッド、フィラメント、全圧用コレクタの各電圧をVg、Vf、Vtcとすると、これらの電圧はVtc<Vf<Vgとされ、その一例としては、Vg
= 180V、Vf = 45V、Vtc = 0Vとなっている。Vg−Vf は電子がガス分子に衝突するエネルギーとなり、少なくとも20V電離電圧以上、通常70〜150V程度となっている。Vg−Vtc
はイオンが全圧用コレクターに進むエネルギーとなり、捕捉効率から100V以上が望ましい。Vf−Vtc はゼロ以下であると電子が全圧用コレクターに流れ込んでしまうので、10V以上が望ましい。なお、Vtc
= 0Vとするのは制御電源側の理由によるもので、実用的には必須な条件となっている。すなわち、全圧用コレクターには最小1pA程度の電流が流れ込むが、この微小な電流を計測する電流計はアース電位付近でなければ十分な性能が得られないからである。
【0004】
全圧計は、図8に示されているように、グリッド2の軸上にフィラメント3、グリッド2の外側を囲む筒状の全圧用コレクタ1とした三極型と呼ばれるものが初期には一般的であり、グリッド2の外部で生成されたイオンは、全圧用コレクタ1とグリッド2により形成された電界によって外側に拡がって全圧用コレクタ1に捕捉される。しかし、三極型は、電子衝撃を受けたグリッド2から放射される軟X線が全圧用コレクタ1を照射し、全圧用コレクタ1から光電子が飛び出して検出すべきイオンと区別がつかなくなり、圧力の低い場合には測定が不可能となる欠点があった。
【0005】
そこで、図9に示されているように、グリッド2の外側にフィラメント3、グリッド2の軸上に細いワイヤー状の全圧用コレクタ1を設置したB-A型と呼ばれる全圧計が開発された。B-A型では、ワイヤー状の全圧用コレクタ1はグリッド2内の3/4〜4/5程度まで延長され、グリッド2の内部で生成されたイオンが、全圧用コレクタ1とグリッド2により形成された電界によって内側に集まって全圧用コレクタ1に捕捉される。B-A型では、グリッド2からの全圧用コレクタ1の見込み角が狭いので軟X線効果が激減し、測定限界が数桁も低くなり10−11Torr台(10−9Pa台)の測定までが可能となった。
【0006】
以上のように、従来は、各ガスの分圧を正確に計測するためには、ガス分析装置と全圧計を別個に設け、全圧計で全圧を正確に計測し、それを基に各ガスの分圧を計算する構成をとっていた。しかし、この方法は、ガス分析装置と全圧計の2つの装置が必要である。しかもそれぞれの信号を別個に取り出し、信号処理して分圧を演算する必要があるため、計測に時間がかかるという問題から、ガス分析装置のイオン源に全圧計の機能を付加したガス分析装置が提案されている。即ち、従来のガス分析装置のグリッドおよびフィラメントの外側を囲むように三極型と類似の筒状の全圧用コレクターを別途配置し、この全圧用コレクタで、グリッドの外側で生成されたイオンを捕捉・検出し、分圧比とともに全圧をも測定しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−83661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の全圧計の機能を付加したガス分析装置(以後、改良型ガス分析装置という)では、幅広い圧力範囲で高精度に全圧を測定するには不十分であり、そのため、分圧の絶対値を高精度に得ることはできなかった。
【0009】
本発明者は、この原因を追求すべく、ガス分析装置、三極型及びB−A型全圧計の構造、動作について、根本的な見直しを行ったところ、上記改良型ガス分析装置には次の問題があることが分かった。
まず、三極型・B-A型いずれの全圧計でも、イオンが生成・捕捉される領域(三極型ではグリッド外部、B-A型ではグリッド内部)に、フィラメントが存在すると、二つのイオン生成のモードが出来て動作が不安定となることが分かった。すなわち、フィラメント近傍ではグリッドに到達する前の電子により、一方フィラメント近傍以外ではグリッドの外側から入った後再び外側に出た電子によりイオンが生成するため、高精度の全圧測定は困難となる。
また、イオンが生成・捕捉される領域の電界が軸対称かつ単調変化でない場合には、圧力が変化するとイオン生成量が変化し、イオンによる空間電荷の影響や電子電流制御への影響が発生してしまい、その結果、広範囲の測定が不可能になる。
【0010】
即ち、幅広い圧力範囲で高精度の測定を可能とするには、<1>イオンが生成・捕捉される領域にはフィラメントが存在しないこと、<2>電界が軸対称かつ単調変化であることの2条件を満たすことが不可欠であるが、上記改良型ガス分析装置はこれらの条件を満足しないことが分かった。さらには、従来の改良型ガス分析装置は、三極型全圧計と同様に軟X線による誤差を生じ、正確な全圧計測ができなくなるという問題があった。
このように、従来の全圧計の機能が付加されたガス分析装置では、正確な全圧計測は不可能であった。
【0011】
その一方、従来の三極型やB-A型などの全圧計をそのままの形でガス分析装置のイオン源としても、正確な分圧比及び全圧は得られないことが分かった。全圧計とガス分析装置のイオン源は構造・動作が類似しているが、イオンを移動させる電界の方向が全く異なるからである。すなわち、全圧計の場合、グリッド内のすべての領域において軸方向の電界はほとんどなく、主に径方向の電界強度のみが存在する(即ち、グリッド内における軸方向電界強度Et<径方向の電界強度Er)。これに対して、ガス分析装置のイオン源は、グリッド内のすべての領域において径方向の電界はほとんどなく、主に軸方向の電界強度のみが存在する(即ち、Et>Er)。
従って、ガス分析装置として使用すると、グリッド内に存在するフィラメントや全圧用コレクタにより形成される電界に阻害されてイオンを十分に引き出せないという問題が生じる。また、全圧計として使用すると、引出し電極により形成される電界に阻害されて、イオンが全圧用コレクタに十分に捕捉されないという問題が起こる。つまり、このような構成では、ガス分析装置としても全圧計としても本来の機能を十分果たすことが出来ないことが分かった。
【0012】
本発明者は、かかる知見を基にさらに研究を進め、全圧計及びガス分析装置の各構成要素の形状、配置及びこれらに加える電圧と計測精度との関係を詳細に調査、検討した結果として、本発明を完成させたものであり、本発明は、減圧雰囲気のガス種の分圧比とともに全圧の計測を可能とし、各ガス種の正確な分圧計測を可能とするガス分析装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述したように、従来のガス分析装置のイオン源及びB-A型全圧計をさらに詳細に検討した結果、これらの構造、動作に、次の関係があることを見いだした。すなわち、
[1]グリッド端部の電界状況はイオンの利用効率に大きな影響を与えない、
[2]グリッド端部に位置する電極は、適切な電圧では径方向電界に大きな影響を与えない、
[3]グリッド中心軸上に位置するワイヤー状の全圧用コレクタは、適切な電圧では軸方向電界に大きな影響を与えない、という関係である。ここで、グリッドの端部とは、ガス分析装置のイオン源では引出し電極と反対側の終端付近(図7(b)のA-A付近)、またB-A型全圧計では全圧用コレクタ挿入側と反対側の終端付近(図9のA-A付近)をいう。
【0014】
そして、以上の関係に基づいて、本発明を完成するに至ったものである。即ち、本発明の第1の要旨は、混合ガスの分圧を計測するガス分析装置であって、円筒状のグリッド及び該グリッド外側に配置されたフィラメントからなる、ガスをイオン化するイオン源と、前記グリッドの一端部に隣接し、その中心軸と同一軸上に設けられたイオンを引き出すための引出し電極と、引出されたイオンを分別する質量分析器と、質量分別されたイオンを検出する分圧用コレクタと、前記中心軸上に配置された全圧用コレクタと、からなり、前記グリッド内に電界方向の異なる二つの領域を同時に形成し、前記全圧用コレクタ及び分圧用コレクタに流れる電流により、混合ガスの全圧及び分圧比を同時に計測可能な構成としたことを特徴とするガス分析装置に存在する。
【0015】
この第1の発明は、上記の関係[1]に基づくものであり、グリッドの内に、全圧計測のための領域と分圧比計測のための領域(すなわち、電界の異なる2つの領域)を同時に形成し、1つのグリッドで、全圧と分圧比の同時計測を可能とするものである。このような状況を作り出すには、例えば、全圧用コレクタをグリッドの中央付近まで挿入する、またはグリッドの外部の軸上に配置する等して、グリッド、全圧用コレクタ、引出電極に所定の電圧を印加することにより達成される。そして、上記関係[1]により、2つの領域の境界部の電界状況は全圧計測及び分圧計測にはほとんど影響しないため、正確な全圧及び分圧比計測が可能となる。
なお、関係[1]を、次に詳しく説明する。
ガス分析装置のイオン源において、グリッドとフィラメントの長さを長くしても測定される電流値(即ち、利用されるイオン量)はあまり増加しない。また、軸方向長さが短いフィラメントを軸方向に移動させ端部付近に近づけると利用されるイオン量は激減する。また、B-A型全圧計において、全圧用コレクタの長さを短くすると利用されるイオン量は減少する。これらの3つの事実はグリッド端部のイオンは有効に利用されておらず、測定される電流値に寄与しないことを示しており、逆に言えば、関係[1]の「グリッド端部の電界状況はイオンの利用効率に大きな影響を与えない」ことが明確になる。ガス分析装置のイオン源においては引出し電極によって形成される軸方向電界、B-A型全圧計においては全圧用コレクタにより形成される径方向電界のいずれの電界もがグリッド端部では弱く、生成したイオンが有効に移動できないためである。
【0016】
本発明の第2の要旨は、混合ガスの分圧を計測するガス分析装置であって、円筒状のグリッド及び該グリッド外側に配置されたフィラメントからなる、ガスをイオン化するイオン源と、前記グリッドの一端部に隣接し、その中心軸と同一軸上に設けられたイオンを引き出すための引出し電極と、引出されたイオンを分別する質量分析器と、質量分別されたイオンを検出する分圧用コレクタと、前記中心軸上に配置された全圧用コレクタと、からなり、少なくとも前記引出し電極の電圧を変更することにより前記グリッド内に電界方向が異なる二つの状態を交互に形成し、前記全圧用コレクタ及び分圧用コレクタに流れる電流により、混合ガスの全圧及び分圧比を交互に計測する構成としたことを特徴とするガス分析装置に存在する。ここで、前記引出し電極は、その厚さを開口径と略同等若しくはそれ以上とするのが好ましい。
【0017】
本発明の第2の発明は、全圧を上記関係[2]に基づき、また分圧比を[3]に基づいて計測する構成とし、高精度な全圧計測と分圧比計測が可能な状態を交互に作り出し、各ガス種の正確な分圧計測を可能としたものである。
ガス分析装置のイオン源においては、通常、引出し電極の電圧Veはグリッドの電圧Vgよりもかなり低く設定されており、このためグリッド内では軸方向の電界が形成されている。しかし、例えば、VeをVgとほぼ等しくすることにより、軸方向の電界をゼロとすることが出来、正確な全圧計測が可能となる。ただし、引出し電極は開口部を持っているため、厚み方向にある程度の長さがなければグリッド内での電界形成に寄与しない。従って、引出電極の開口厚みを開口径と同等以上とするのが好ましい。
また、引出し電極の開口部は軸対称となっているため、VeをVgとほぼ等しくすることにより、軸方向の電界だけでなく径方向の電界にもほとんど影響を与えなくなる。これは、B-A型全圧計において、端部の蓋(終端面にはめ込む円板)の有無が性能に大きな影響を与えないという事実からも確認できる。これらからも、「グリッド端部に位置する電極は、適切な電圧では径方向電界に大きな影響を与えない」ことは明らかである。これは、グリッド電圧Vgを適切な値とすることにより、電界(イオン)にとっては引出し電極があたかも消失したような状況を作り出すことができることを意味している。
【0018】
また、B-A型全圧計のように、グリッド軸上にワイヤー状の全圧用コレクタがある場合には、グリッド内部の径方向電界分布は対数関数となる。対数関数では中心軸上付近には鋭い電位の谷間が形成されるが、その他の領域では高い電位で緩やかに変化する。計算によると、谷底の2/3以下まで電位が下がるのは中心軸からわずか1mm程度離れた位置である。しかし、このような緩やかな径方向電界でも、軸方向電界がゼロであれば、イオンは有効に径方向に移動して全圧用コレクタにて効率よく捕捉されることになり、高精度の全圧計測が可能となる。
【0019】
一方、分圧比計測時には、全圧用コレクタの影響が問題となる。しかしながら、グリッド端部に存在する引出し電極のような面状電位物体がグリッドと異なる電位を持つと、形成される軸方向電界は全圧用コレクタによる径方向電界よりもかなり大きいものとなる。これは、径方向電界のワイヤー状電位物体と、軸方向電界の面状電位物体の、表面積の違いを考慮すると当然な結果である。面状電位物体としては、電界的に開口厚みが開口径と同等以上の引出し電極であればよい。これらからも、「軸上に位置するワイヤー状の全圧用コレクタは、適切な電圧では軸方向電界に大きな影響を与えない」ことは明らかである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、ガス種の分圧比とともに、全圧(各分圧の合計値)を正確に計測できるガス分析装置を実現することが可能となる。これにより、従来はガス分析装置と全圧計の二つの装置が必要であったのが、一台で済むことになる。このことはコスト面・操作面・スペース面で非常に大きなメリットがある。さらに、ガス分析装置と全圧計の別々の装置では決して得られない重要なメリットは、例えば、全圧・分圧の信号処理が装置内部で行えるので計測が容易で高速であること、イオン源の諸特性(感度変化・ガス放出など)のバラツキ・経時変化の影響を相殺して排除できるので、より一層高精度の計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施例のガス分析装置の全体構成及び電流値の変化を示す模式図及びグラフである。
【図2】図1のイオン源各部の電位分布を示すグラフである。
【図3】第2の実施例のガス分析装置の全体構成及び電流値の変化を示す模式図及びグラフである。
【図4】図3のイオン源各部の電位分布を示すグラフである。
【図5】第3の実施例のガス分析装置の全体構成及び電流値の変化を示す模式図及びグラフである。
【図6】図5のイオン源各部の電位分布を示すグラフである。
【図7】従来のガス分析装置の構成及びその電位分布を示す模式図及びグラフである。
【図8】三極型全圧計の構成及びその電位分布を示す模式図及びグラフである。
【図9】B−A型全圧計の構成及びその電位分布を示す模式図及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明のガス分析装置について、その実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施例)
図1及び2を参照して、本発明のガス分析装置の第1の実施例を説明する。
図1(a)、(b)は、ガス分析装置の全体構成及び計測される電流値の変化を示す模式図及びグラフである。また、図2は、イオン源各部の電位分布を示すグラフである。
本実施例は、上記の関係[1]「グリッド端部の電界状況はイオンの利用効率に大きな影響を与えない」を利用し、グリッド中央部を「端部」としての境界にして、グリッドの両端に径方向電界が大きい領域と軸方向電界が大きい領域を存在させたものである。このように構成することにより、全圧と分圧比の同時測定が可能となる。
【0024】
図1(a)に示すように、全圧用コレクタ1と分圧用コレクタ7はともに一つの電流計9に接続されている。フィラメント3、グリッド2、全圧用コレクタ1の各電圧は従来の全圧計と同じ関係に設定されており、同時にフィラメント3、グリッド2、円孔板状の引出し電極4、質量分別器6、分圧用コレクタ7の各電圧も従来のガス分析装置と同じ関係に設定されている。なお、質量分別器6はマスフィルター型である。図1(b)に示すように、質量分別器6の質量掃引をゼロ、すなわち全てのガスイオンを質量分別器6を通過しないようにすると、電流計9では全圧に対応した電流が検出される。つぎに質量掃引を行うと、各ガス分圧に対応した電流が全圧対応電流に重畳して検出される。同一のイオン源5を使いながら全圧と分圧比が計測できるメカニズムを、以下に図2を用いて詳しく説明する。
【0025】
グリッド2とフィラメント3の長さは通常の1.5〜2倍程度となっているが、その他の形状・構造・設定・動作は従来のガス分析装置及び全圧計と同じである。グリッド2の一方(図では上)から、ワイヤー状の全圧用コレクタ1が軸上をグリッド2内のほぼ中央付近まで延長されている。他方には、引出し電極4がグリッド2に隣接して同軸上に配置されている。全圧用コレクタ1と引出し電極4の形状・構造・設定・動作は従来の場合と同じである。グリッド2、フィラメント3、全圧用コレクタ1、引出し電極4の各電圧をVg、Vf、Vtc、Veとすると、例えば、これらをVtc≒Ve≒0<Vf<Vgを満たすように設定する。具体的には、例えば、Vg
= 180V、Vf = 45V、Vtc = 0V、Ve = 0Vとする。なお、質量分別器6(マスフィルター)の四重極中心電位は170Vとしている。
【0026】
グリッド2内における軸方向と径方向の電界強度をそれぞれEt、Erとすると、グリッド2の上半分は全圧用コレクタ1による径方向電界が支配的となるので、Et<Erとなり全圧計と同等となる。また、グリッド2の下半分は引出し電極4による軸方向電界が支配的となるので、Er<Etとなりガス分析装置のイオン源5と同等となる。さらに、センター(グリッド中心軸)上の電位、およびA、C上電位も、グリッド2の上半分は全圧計と、グリッド2の下半分はガス分析装置のイオン源と同等となる。
【0027】
したがって、グリッド2の上半分は全圧計として完全に動作し、またグリッド2の下半分はガス分析装置のイオン源として完全に動作する。グリッド2の中央では、全圧計及びガス分析装置のイオン源のいずれの条件ともなっていないが、これはそれぞれ従来例でのグリッド端部と同じ状況であり、全圧及び分圧比測定のそれぞれの使用状況において、イオンの利用効率に大きな影響はない。
【0028】
このようにして、ガス分析装置部分において分圧比を、また全圧計部分にて正確な全圧を同時に測定することが可能となる。また、質量掃引を制御することにより出力される電流から簡単に全圧分と分圧分を区別することが出来る。即ち、本実施例のガス分析装置は、従来に比べてイオン源は若干大きくなるものの、全圧計測と分圧計測の切り替えが不要であり、同時に計測できるという特徴を有している。
なお、本実施例では、グリッド長さを従来の1.5〜2倍程度とし、全圧用コレクタをグリッドの中央付近まで延長した構造としたが、本発明はこれらの値に限ることはなく、所望の計測感度等に応じて、グリッドの径、長さ、全圧用コレクタの長さ等について、種々の大きさ、配置を選択することができる。なお、全圧用コレクタのグリッド内の長さは、グリッド長さの1/3〜2/3とするのが好ましい。この範囲で、分圧比及び全圧計測精度は一層向上する。
【0029】
また、本実施例では、質量掃引をDC的に行って全圧成分と分圧成分が重畳した電流を検出したが、質量掃引をゼロとの値を振幅とするAC的に行い変動する電流幅から分圧成分を直接検出することも出来る。この計測には電流計としてロックインアンプの利用が有効となる。
さらに、全圧用コレクタと分圧用コレクタをスイッチを介して電流計に接続し、このスイッチを切り替え、全圧分と分圧分を区別して測定するようにしてもよい。
【0030】
(第2の実施例)
図3及び4を参照して、本発明のガス分析装置の第2の実施例を説明する。
図3(a)、(b)は、ガス分析装置の全体構成及び計測される電流値の変化を示す模式図及びグラフである。また、図4は、イオン源各部の電位分布を示すグラフである。
本実施例は、全圧計測時には、上記関係[2]「グリッド端部に位置する電極は、適切な電圧では径方向電界に大きな影響を与えない」を利用し、引出し電極が存在するにも関わらずその影響を少なくしている。一方、分圧計測時には上記関係[3]「軸上に位置するワイヤ状の全圧用コレクタは、適切な電圧では軸方向電界に大きな影響を与えない」を利用し、全圧用コレクタが存在するにも関わらずその影響をなくしている。
【0031】
図3に示すように、本実施例でのガス分析装置は、スイッチ13の切り替えにより、全圧計測と分圧計測を交互に行う構成としたものである。電流計は全圧計測時には全圧用コレクタ1に、分圧計測時には分圧コレクタ7に接続される。また、引出し電極4の電位は、全圧計測時にはグリッド電位に、分圧計測時にはアース電位になる。全圧用コレクタ1の電位はこの逆となる。
このようにして全圧計測時には、フィラメント3、グリッド2、全圧用コレクタ1の各電圧の関係は従来の全圧計と同じとすることができ、電流計では全圧に対応した電流が検出される。また、分圧計測時には、フィラメント3、グリッド2、引出し電極4、質量分別器6、分圧用コレクタ7の各電圧も従来のガス分析装置と同じ関係となり、各ガス分圧に対応した電流が検出される。質量分別器6はマスフィルター型である。同一のイオン源5を使いながら全圧と分圧が計測できるメカニズムを、以下に図4を用いて詳しく説明する。
【0032】
グリッド2とフィラメント3の長さは、従来のガス分析装置のイオン源と同じである。しかし、グリッド2の一方(図では上)から、ワイヤー状の全圧用コレクタ1が軸上をグリッド2内の3/4程度まで延長されている。他方には、引出し電極4がグリッド2に隣接して同軸上に設置されている。引出し電極4は、従来の円孔板状(円孔があいている板、アパーチャー板)ではなく、開口厚みが開口径の同等以上である円環状となっている。グリッド2、フィラメント3、全圧用コレクタ1、引出し電極4のその他の形状・構造は従来例と同じである。しかしながら、設定・動作については従来例とは全く異なり、次に説明するように特殊なものとなる。
【0033】
本実施例では、全圧計測時と分圧比計測時で設定・動作が異なっている。全圧計測時では、グリッド2、フィラメント3、全圧用コレクタ1、引出し電極4の各電圧Vg、Vf、Vtc、Veを、Vtc<Vf<Ve≒Vgと設定する。具体的には、例えば、Vg = 180V、Vf = 45V、Vtc = 0V、Ve
= 180Vとする。このときには、円環状の引出し電極4の電位がグリッド2と同じなので、グリッド4内の電界すなわちイオンにとっては、引出し電極が消失したような状態となる。そのため、グリッド2内における軸方向と径方向の電界強度をそれぞれEt、Erとすると、全圧用コレクタ1による径方向電界が支配的となるので、Et<Erとなり全圧計と同等となる。さらに、センター上の電位、およびA、B上電位も、全圧計と同等となる。したがって、以上の全圧計測時の設定では、全圧計として完全に動作する。
【0034】
一方、分圧計測時には、電圧をVe<Vf<Vtc<Vgとし、具体的には、例えばVg
= 180V、Vf = 45V、Vtc = 150V、Ve = 0Vとする。なお、質量分別器6(マスフィルター)の四重極中心電位は170Vとする。この場合、全圧用コレクタ1はワイヤー状であるため、形成される径方向電界が弱いのに対して、引出し電極4とグリッド2の電位差は180Vと大きくなっている。そのため、引出し電極4による軸方向電界が支配的、すなわち、Er<Etとなり、従来のガス分析装置のイオン源5と同等となる。センター上の電位、およびB上電位もほぼ同等となる。ただし、A上電位は軸上近傍だけ全圧用コレクタ1の電位となるが、その領域は狭いので大きな影響はない。したがって、上記分圧計測時用の設定ではガス分析装置のイオン源5としてほぼ完全に動作する。
【0035】
以上述べたように、本実施例の構成をとることにより、全圧と分圧比をそれぞれ正確に計測することが可能となる。電流測定と高電圧との切り替えが必要ではあるが、イオン源が通常のガス分析装置のものと同じ大きさであり、また、全圧と分圧比の電流が独立しているという長所を有している。
また、本実施例では、分圧計測時の全圧用コレクタの電位Vtcを150Vとしたが、この値はグリッド径、長さ等種々の条件に応じて最適値が変わる。Vtcを高くすると、電子が軸上近傍に集まりやすくなり、イオン密度の高い領域が軸上に発生する。これは質量分別器にとっては輝度が高い小さな光源となり分解能の面で有利となるが、軸方向電界の比率が小さくなりイオンの引出しには障害ともなる。一方、Vtcを低くすると、イオンを軸近傍に寄せ集める効果が出てイオンの引出しに有利となる。ただし、あまり低いと全圧用コレクタにイオンが流れ込みイオンの損失が大きくなる。いずれにしろ、Vtcは確定された値がないため、条件に応じて適正な値を選択すればよいが、簡便にはフローティングとしておく方法もある。
【0036】
(第3の実施例)
図5及び6を参照して、本発明のガス分析装置の第3の実施例を説明する。
図5(a)、(b)は、ガス分析装置の全体構成及び計測される電流値の変化を示す模式図及びグラフである。また、図6は、イオン源各部の電位分布を示すグラフである。
本実施例は、第2の実施例と同様に、全圧計測時には、上記関係[2]を利用し、引出し電極が存在するにも関わらずその影響を少なくしている。一方、分圧計測時には上記関係[3]を利用し、全圧用コレクタが存在するにも関わらずその影響をなくしている。
【0037】
図5が示すように、本実施例では、全圧計測と分圧計測を切りスイッチ13により交互に行う構成としたものである。なお、切り替えは、引出し電極4の電位のみとなり、全圧用コレクタ1と分圧用コレクタ7はともに一つの電流計に接続された状態にある。引出し電極4の電位は全圧計測時にはグリッド電位に、分圧計測時にはグリッド電位の逆の大きなマイナス電位になる。
【0038】
引出し電極4の電位がマイナス電位であり、質量分別器15の中心電位がアース電位やプラス電位であれば、イオンが質量分別器15の内部で大きく減速し質量分別の性能に悪影響を与えてしまう。そこで、質量分別器15には中心電位を容易に変更できる磁石を利用したExB(イークロスビー)型を使用し、中心電位は引出し電極4と同じく大きなマイナス電位にしている。この場合、質量分別器15の内部でのイオンエネルギーは、グリッド電位と質量分別器15の中心電位の差となり、かなり大きなものとなるが、ExB型質量分別器はイオンビームのエネルギー分散(分布)が小さいほど分解能がよくなるので、むしろ好都合な条件となる。このような磁石を利用したExB型質量分別器15としては、本発明者が開発した質量分析器(特願平11−192605号)を好適に用いることができる。
【0039】
図が示すように、全圧計測時には、フィラメント3、グリッド2、全圧用コレクタ1の各電圧は従来の全圧計と同じとなり、電流計では全圧に対応した電流が検出される。また、分圧計測時にはフィラメント3、グリッド2、引出し電極4、質量分別器15、分圧用コレクタ7の各電圧も従来のガス分析装置と同じとなり、各ガス分圧に対応して電流が検出される。同一のイオン源5を使いながら全圧と分圧が計測できるメカニズムを、以下に図6を用いて詳しく説明する。
【0040】
グリッド2、フィラメント3、全圧用コレクタ1によるイオン源5、および引出し電極4の形状・構造は第2の実施例(図4)と同じである。また、全圧計測時の設定・動作についても第2の実施例と同じである。しかしながら、分圧計測時の設定・動作についてはやや異なり、これを以下に説明する。
【0041】
本実施例の分圧計測時においては、グリッド2、フィラメント3、全圧用コレクタ1、引出し電極4の各電圧Vg、Vf、Vtc、Veを、例えばVe<<Vtc≒0<Vf<Vgに設定する。具体的には、例えばVg = 180V、Vf = 45V、Vtc
= 0V、Ve = −1000Vとする。なお、質量分別器15の中心電位も−1000Vとする。この場合、全圧用コレクタ1はワイヤー状であるため、形成される径方向電界が弱いのに対して、引出し電極4とグリッド2の電位差は1180Vと非常に大きな値となる。そのため、第2の実施例とは異なり、全圧用コレクタ1とグリッド2の電位差が180Vと大きいのにもかかわらず、引出し電極4による軸方向電界が支配的でEr<<Etとなり、従来のガス分析装置のイオン源5と同等となっている。軸上近傍だけはアース電位となっているが、その領域は狭いのでイオンの引出しには、大きな影響を与えない。したがって、上記分圧計測時の設定ではガス分析装置のイオン源としてほぼ完全に動作する。
【0042】
また、第2の実施例とは異なり、全圧用コレクタ1の電位はアース電位で、イオン生成場所の電位(Vg-α)よりも低くなっているのでイオンが全圧用コレクタ1に流れ込む可能性がある。しかしながら、Er<<Etであるため、実際に全圧用コレクタ1に流れ込むはイオン数は少ない。したがって、全圧用コレクタ1を電流計につないだままであるにもかかわらず、電流計には主に分圧に対応する電流が検出される。以上のように、本実施例のガス分析装置は、引出し電極4のみの切り替えによって全圧と分圧比をそれぞれ測定することが出来る。
【0043】
なお、本実施例の分圧計測においては、検出電流は主に分圧成分となっているが一部は全圧成分も加わる可能性があるため、第1の実施例と同様に質量掃引を制御することにより全圧分と分圧分を区別しても良い。さらに、分圧計測において、引出し電極の電位を−1000Vとしたが、必ずしもこれほどの大きな引出し電位は必要ではなく、引出し電極の電位がマイナス、すなわちグリッドの電位と逆極性となっていれば多くのイオンが引き出されて分圧分をより多く得ることができる。
【0044】
以上、実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は以上の実施例に限定されるものではなく、例えば、以下のように一部を変更・限定、あるいは拡大することも出来る。
上記実施例においては、同一の電流計で全圧・分圧比の両方の計測を行う構成としたが、それぞれ専用の複数の電流計を設けても良い。コスト的には不利となるが、操作はより簡単となる。また、全圧用コレクタとして、グリッド内部の軸上に位置するものを使用したが、グリッド外部の軸上に位置するものを使用することも出来る。これは、軟X線効果をさらに低減したエキストラー型全圧計と同等な構造となる。この場合には、全圧計測と分圧計測でグリッド内での電界方向が軸方向で向きが正反対となる。
【0045】
第1、2の実施例の分圧比計測において、質量分別器に送り込まれるイオンの運動エネルギーは、0V電位の所ではほぼ180Vとなる。したがって、質量分別器としてマスフィルター型を使用する場合には、四重極での運動エネルギーを質量分別に必要な10eVとするために四重極の中心電位を170Vとした。しかしながら、簡便のために四重極の中心電位を0Vで使用したい場合には、Vg = 10V、Vf
= −125V、Vtc = −170V、Ve = 0V(または0V以下のマイナス電位)とすることが出来る。ただし、フィラメントからの電子が拡散しないようにフィラメントをより低い電圧のリペラーで囲む必要がある。
【0046】
また、第2、3の実施例においては、引出し電極は、開口径と略同等若しくはそれ以上の厚さを有するものを用いたが、これは、必ずしも一個の厚い円環状の電極だけを意味するものではなく、ほぼ同一電圧となっている複数の円孔板の組み合わせでも構わない。この場合には、構造的ではなく電界的な厚みに意味があるからである。なお、引出し電極に隣接している質量分別器を引出し電極とほぼ同等に出来るのであれば、単数の円孔板の引出し電極でも構わない。
さらに、第2、3の実施例の全圧計測において、Ve≒Vgとしたが、Veをやや低くした方が感度は上昇する。VeをVgより低くすると、電子をグリッド中心方向に閉じ込める効果が生じる。これにより、イオンは逃げ出しやすくなるが、もともと端部付近のイオンは有効に使われていないので、総合的には感度的に有利となる。
【符号の説明】
【0047】
1 全圧用コレクタ、
2 グリッド、
3 フィラメント、
4 引出し電極、
5 イオン源、
6 四重極質量分析計、
7 分圧用コレクタ、
8 四重極制御電源、
9 電流計、
10 径方向電界強度、
11 径方向+軸方向の電界強度、
12 軸方向電界強度、
13 全圧・分圧切替スイッチ、
14 ExB制御電源、
15 ExB質量分析計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形をなすグリッド及び、該グリッドの外側に配置され、ガスをイオン化するフィラメントを備えたイオン源と、
前記グリッド内に前記グリッドの軸方向電界を形成し、前記グリッドの一端部からイオンを引き出す引出し電極と、
前記引出し電極で引出されたイオンを質量分別する質量分別器と、
質量分別されたイオンを捕捉する分圧用コレクタと、
前記グリッド内に前記グリッドの径方向電界を形成し、前記グリッド内のイオンを捕捉する全圧用コレクタとを備え、
前記グリッド内を、前記引出し電極による前記グリッドの軸方向電界が前記全圧用コレクタによる前記グリッドの径方向電界より大なる状態と、
前記全圧用コレクタによる前記グリッドの径方向電界が前記引出し電極による前記グリッドの軸方向電界より大なる状態とに切り替え可能であることを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
前記引出し電極は、その厚さを開口径と略同等若しくはそれ以上としたことを特徴とする請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記全圧用コレクタが、前記グリッドの他端部から当該グリッド内に差し込まれたワイヤー状で、該全圧用コレクタの前記グリッド内の長さが、前記グリッドの長さの1/3〜
2/3であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記ワイヤー状の前記全圧用コレクタが、前記軸上を前記グリッド内の3/4まで延長されていることを特徴とする請求項3に記載のガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−259841(P2009−259841A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178811(P2009−178811)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【分割の表示】特願平11−353178の分割
【原出願日】平成11年12月13日(1999.12.13)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】