説明

ガス分解発電システム

【課題】アンモニアを含む種々のバイオガスに適用できるとともに、処理システムにおける各装置の能力を最大限に発揮させることができる、ガス分解発電システムを提供する。
【解決手段】アンモニアガスを含むガスを分解して除害するシステム1であって、分解対象となるガス4を収集するガス収集手段100と、収集した上記ガスを収着できるとともに脱着できる多孔質収着回収素子を設けて構成されるガス濃縮手段200と、上記ガス収集手段によって収集したガス又は濃縮手段によって濃縮したガスを脱硫する脱硫手段250と、脱硫したガスを、加熱しながら多孔質触媒体内で流動させることにより、アンモニアガスから水素を生成させる水素生成手段300と、固体電解質を備えて構成されるとともに、上記水素生成手段において生成された上記水素及びアンモニアガスを用いて発電するガス分解発電手段400とを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ガス分解発電システムに関する。詳しくは、し尿処理や堆肥製造工程等において生成されるガスを収集し、分解して除害するとともに、生成される水素を用いて発電を行うガス分解発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、し尿処理や堆肥製造プラントにおいて生じるバイオガスは、アンモニア等の有害物質を含むとともに、悪臭等の原因となる。このため、そのまま大気に放出することができず、種々の手法を用いて上記ガスを回収し、処理する装置が提案されている。
【0003】
たとえば、堆肥製造プラントは、有機性廃棄物である堆肥原料を堆肥化するための醗酵槽と、上記醗酵槽に堆肥原料を供給するための堆肥原料供給手段と、醗酵槽内の堆肥原料を攪拌するための攪拌装置と、醗酵槽内の堆肥原料に酸素を供給する酸素供給手段等を備えて構成される。上記製造装置プラントは、全体が気密性のある建屋内に建造されており、製造工程において発生する悪臭ガスを収集し、燃焼装置等に導いて燃焼処理するように構成される場合が多い。
【0004】
【特許文献1】特開2002−361200公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
堆肥製造プラント等において生じるバイオガスは、アンモニアや硫黄分を含むため、そのまま燃焼させると、NOxやSOxが生成されてしまう。
【0006】
上記不都合を回避するために、燃焼させることができないガス成分を収着剤等を用いて収集して収着剤ごと処理する手法を採用することも多い。ところが、この手法では、ランニングコストが大きくなるという問題がある。
【0007】
また、バイオガスは、濃度や発生量、さらには、発生するガスの成分をコントロールするのが困難であり、処理装置等の能力に応じた濃度や成分のガスを供給することができない。このため、システム全体が非効率なものとなることが多い。たとえば、電気化学的にガスを分解する手法等を用いてガスを分解処理することも考えられるが、ガスの濃度や成分を一定に保持することが困難なため、分解装置の性能を充分に発揮させることができない。
【0008】
本願発明は、アンモニアを含む種々のバイオガスに適用できるとともに、処理システムにおける各装置の能力を最大限に発揮させることができる、ガス分解発電システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に記載した発明は、アンモニアガスを含むガスを分解して除害するガス分解発電システムであって、分解対象となるガスを収集するガス収集手段と、収集した上記ガスを収着できるとともに脱着できる多孔質収着回収素子を設けて構成されるガス濃縮手段と、濃縮手段において脱着されたガスを、加熱しながら多孔質触媒体内で流動させることにより、アンモニアガスから水素を生成させる水素生成手段と、固体電解質を備えて構成されるとともに、上記水素生成手段において生成された上記水素及びアンモニアガスを用いて発電するガス分解発電手段とを含んで構成される。
【0010】
本願発明は、収集したガスを燃焼させることなく、最終的に燃料電池による発電に利用して処理するように構成している。このため、NOxやSOxが大気中に放出されることがない。
【0011】
本願発明では、ガスの発生源からガス収集手段を用いてガスを収集する。上記ガス収集手段の構成は特に限定されることはない。たとえば、堆肥製造装置が設置された建屋の天井や壁面にダクトを設け、送風機等を利用して発生するガスを収集することができる。上記ガス収集手段は、次に設けられるガス濃縮手段や脱硫手段の能力を最大限に発揮できる流量で上記ガスを流動させるように構成するのが望ましい。また、収集するガスの濃度等に応じて流量を制御できるように構成するのが望ましい。
【0012】
本願発明に係る上記ガス濃縮手段は、収集した上記ガスを収着できるとともに脱着できる多孔質収着回収素子を設けて構成される。
【0013】
上記多孔質収着回収素子を設けることにより、収集したガスの濃度等に変化があっても、ガスを確実に捕捉することができる。また、収着したガスを所要の濃度で脱着することが可能となり、後に設けられる各手段における処理に適した濃度のガスを生成することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載した発明のように、上記多孔質収着回収素子を、連続気孔を有する多孔質収着体と、上記多孔質収着体の表面及び/又は内部に設けられて、上記ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質発熱体とを備えて構成し、上記多孔質発熱体を発熱させることにより、上記多孔質収着体に収着されたガスを脱着させるように構成することができる。
【0015】
多孔質収着体の表面及び/又は内部に多孔質発熱体を設けることにより、上記多孔質収着体や脱着用に流動させられるキャリヤガスを、多孔質収着体を収容した容器内で直接加熱することができる。このため、収着されたガスを脱着させる際のエネルギ効率が高い。
【0016】
一方、上記多孔質発熱体は、収着対象となるガスを流動させることができる連続気孔を有する多孔質体から形成されている。このため、多孔質発熱体を多孔質収着体の表面や内部に設けても、上記多孔質発熱体が収着ガスの流動を妨げることがない。このため、多孔質収着体の形態やガスの流動経路等に応じて上記多孔質発熱体を配置することが可能になり、大量のガスを容器内で流動させるとともに、均一な収着処理及び脱着処理することが可能となる。
【0017】
また、上記多孔質発熱体の発熱温度を制御することにより、多孔質収着体及び流動するキャリヤガスを所要の温度に加熱することができる。このため、収着体に収着されたガスを確実に脱着させることが可能となる。また、後工程での処理に適した濃度のガスを脱着させることができる。
【0018】
さらに、脱着用のキャリヤガスを別途加熱するための加熱装置を設ける必要がないため、装置を小型化することができる。また、多孔質収着剤を繰り返し使用できるため、ランニングコストを低く抑えることも可能となる。
【0019】
上記多孔質発熱体を設ける位置は、特に限定されることはない。多孔質収着体の表面に設けて、多孔質収着体に流入する直前のガスを加熱するように構成することができる。また、多孔質収着体の内部に設けて、多孔質収着体自体を加熱するように構成することもできる。
【0020】
請求項5に記載した発明のように、上記多孔質収着回収素子を、連続気孔を有する多孔質発熱体の各気孔表面にガス収着剤層を設け、上記多孔質発熱体を発熱させることにより、上記ガス収着剤層に収着されたガスを脱着できるように構成することができる。
【0021】
請求項5に記載した多孔質収着回収素子は、ガス収着剤層と発熱体とが一体的に形成されているため、ガス収着剤層を直接加熱して収着されたガスを脱着させることができる。このため、収着されたガスを脱着させる際のエネルギ効率がきわめて高い。
【0022】
また、通電した多孔質発熱体の全域を、所定温度に迅速に加熱することができる。このため、ガスの脱着効率が高いばかりでなく、多量のガスを収着し、また、脱着することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載した発明のように、上記ガス濃縮手段は、上記多孔質収着回収素子をそれぞれ設けた複数の収着領域を備えて構成されており、選択した上記収着領域にガスを流動させて収着させるとともに、選択した上記収着領域を加熱することにより上記収着領域に収着されたガスを脱着させるように構成することができる。
【0024】
上記構成を採用することにより、大量のガスを連続して処理することが可能となる。たとえば、ガスを複数の領域に順次流動させて多孔質収着体に収着させる一方、ガスが収着された領域の多孔質収着体を順次加熱してガスを脱着することにより、ガス収着回収装置を連続して運転することが可能となる。
【0025】
上記領域を設ける手法は特に限定されることはない。たとえば、一の容器内を複数の領域に区画して、各区画内に多孔質収着体と多孔質発熱体とをそれぞれ収容し、上記領域に順次収着ガスを流動させるとともに、順次脱着させるように構成することができる。
【0026】
また、上記各領域を、独立した容器を備えて構成するとともに、上記各容器に収着ガスを順次流動させて収着させるとともに、ガスを収着した多孔質収着体を順次加熱してガスを脱着させて回収することもできる。
【0027】
ガス収着作用を発揮できるものであれば、上記多孔質収着体を構成する材料は限定されることはなく、また、収着するガスの種類に応じて選定することができる。たとえば、活性炭やゼオライト等を採用することができる。また、収着ガスを所要の流速で流動させることができれば、形態も限定されることはない。たとえば、一体的に成形されたブロック状の多孔質体から構成される収着体を採用することができる。また、粒状の収着剤を集合させて多孔質収着体を構成することもできる。
【0028】
請求項7に記載した発明のように、上記ガス濃縮手段を、ガスを脱着させる収着領域の範囲や加熱温度を制御することにより、後に設けられる各手段に、所要の濃度及び流量のガスを供給できるように構成するのが好ましい。
【0029】
上記構成によって、脱着したガスが供給される水素生成手段や発電装置の能力等に応じて、所要の濃度や流量のガスを供給することが可能となり、各手段の能力を最大限に発揮させて、装置全体の効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0030】
上記水素生成手段は、脱着させられたアンモニアガスを熱分解して、水素を生成するものである。水素生成手段を設けることにより、ガス分解発電手段の能力を補い、排出されるアンモニアガスの濃度を低下させることができる。なお、流動するアンモニアガスの全量を分解する必要はなく、ガス分解発電手段における効率を高めることができる範囲でアンモニアガスを熱分解して、水素が生成される。上記水素生成手段の構成は特に限定されることはない。たとえば、請求項8に記載した発明のように、上記水素生成手段を、ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質触媒体と、上記多孔質触媒体の表面及び/又は内部に設けられるとともに、上記ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質発熱体とを備えて構成することができる。
【0031】
本願発明では、多孔質発熱体を、多孔質触媒体の表面及び/又は内部に設けている。すなわち、多孔質発熱体を、多孔質触媒体を収容する容器の内部において、上記多孔質触媒体と一体的に設けている。
【0032】
本願発明に係る発熱体は連続気孔を有する多孔質発熱体であるため、発熱体内でガスを流動させることできる。このため、多孔質触媒体の表面や内部に設けても、上記発熱体がガスの流動を妨げることがない。したがって、ガスの偏流等が生じることがなく、多孔質触媒体にガスを均等に作用させることができる。
【0033】
上記多孔質発熱体を設ける位置は、特に限定されることはない。たとえば、上記多孔質発熱体を、流動するガスが上記多孔質触媒体内に流入する表面に設けて、上記多孔質触媒体に接触する直前にガスを加熱することができる。また、上記多孔質触媒体内に埋設するように設けることにより、多孔質触媒体の内部温度が低下するのを防止することができる。これにより、多孔質触媒体内を流動するガスを効率よく加熱することができるとともに、大流量を処理する場合にも、触媒体の温度が低下するのを防止できる。また、大流量を処理するために、筒状容器の直径を大きくした場合にも、流動するガスを均等に加熱して触媒に作用させることができる。
【0034】
上記水素生成手段を、複数の多孔質発熱体を設けるとともに、これら発熱体を選択的に発熱させることができるように構成することができる。上記発熱体は多孔質発熱体であるため、容器内のいずれの部位に設けてもガスの流動を妨げることがない。このため、複数の多孔質発熱体を設け、発熱体内を流れるガスの流速や温度に応じて、所要の発熱体を発熱させるように構成することが可能となる。
【0035】
上記構成を採用することにより、ガスの流動量が変動しても、アンモニアガスを確実に分解して水素を生成させることが可能となる。また、温度が低下しやすい領域に多孔質発熱体を配置して、流動するガスを均一に加熱して分解することも可能となり、エネルギ効率を高めることもできる。
【0036】
請求項9に記載した発明のように、上記水素生成手段を、ガスが流動させられる連続気孔を有するとともに通電することにより発熱する多孔質発熱体の上記各気孔表面に触媒層を設けて構成することができる。
【0037】
上記構成を採用することにより、触媒自体を発熱させてアンモニアガスに作用させることが可能となる。このため、多孔質発熱体内を流動するアンモニアガスを確実に分解して水素を生成することができる。
【0038】
上記水素生成手段における触媒の組成及び形態は、特に限定されることはない。たとえば、ニッケル、鉄、チタン等を採用することができる。
【0039】
上記水素生成手段を、触媒機能を有する複数の多孔質発熱体を備えて構成し、選択した発熱体を発熱させるように構成することができる。この構成を採用することにより、生成される水素の濃度を調整することが可能となり、ガス分解発電手段の能力を最大限に発揮させる配合のガスを生成することができる。
【0040】
処理するガスに硫黄成分が含まれている場合、発電装置の触媒や電解質を傷める恐れがある。ガスに硫黄成分が含まれる場合、請求項2に記載した発明のように、上記ガス収集手段によって収集したガス又は濃縮手段によって濃縮したガスを脱硫する脱硫手段を含ませることができる。上記脱硫手段の構成は特に限定されることはない。例えば、請求項10に記載した発明のように、上記脱硫手段を、硫黄化合物を分離除去できる収着剤を備えて構成することができる。
【0041】
上記脱硫剤の構成及び形態も特に限定されることはない。たとえば、粒状の酸化亜鉛を所定の気孔率で保持し、硫黄成分を含むガスを上記気孔内で流動させることにより、脱硫を行うことができる。
【0042】
上記脱硫手段は、少なくとも、上記ガス分解発電手段の前に設けるのが好ましい。硫黄成分を含むガスが、上記ガス分解発電手段に供給されると、固体電解質等を損傷させる恐れがある。
【0043】
本願発明に係るガス分解発電システムは、固体電解質層を備えて構成されるガス分解発電素子を備えて構成されてり、アンモニアを電気化学的に分解しつつ、アンモニアと水素を用いて発電するように構成されている。
【0044】
上記ガス分解発電素子の構成は特に限定されることはない。たとえば、請求項11に記載されている発明のように、上記ガス分解発電素子を、上記固体電解質層と、この固体電解質層の一側に形成された第1の電極層と、上記固体電解質層の他側に形成された第2の電極層と、第1の電極層及び/又は第2の電極層に設けられた集電体を備えたガス分解発電素子を備えて構成することができる。上記電極層及び/又は上記集電体には、アンモニアガス及び水素ガスを分解する触媒が設けられる。
【0045】
固体電解質を構成する材料は特に限定されることはない。たとえば、上記固体電解質として、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いて構成される酸素イオン導電性の、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いることができる。また、BYZ(イットリウム添加ジルコン酸バリウム)から形成された固体電解質層を採用することができる。BYZは、低い作動温度においてプロトン伝導率が高く、活性化エネルギが低いため、エネルギ効率を高めることができる。また、酸素イオン導電性のSSZに比べて低温で作動させることができ、汎用のステンレス材料を用いて容器等の部材を形成することができる。さらに、反応生成物である水が、カソード側(空気極側)に生じるため、アノード側(燃料極側)に作用させられる分解ガスが、水等の生成物により希釈されて反応効率が低下するのを防止することができる。
【0046】
すなわち、BYZ等のプロトン導電性の固体電解質層を用いると、たとえばアンモニアを分解する場合、第1の電極層(アノード)でアンモニアを分解してプロトン、窒素分子および電子を生じさせて、生成されたプロトンを、固体電解質層を経て第2の電極層(カソード)へと移動させ、第2の電極層(カソード)において酸素と反応して水(H2O)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいので固体電解質層中の移動速度は大きい。このため加熱温度を低くしながら効率よくガスを分解することができる。また、反応効率が高いため、発電性能も高い。
【0047】
また、堆肥製造工程においては、上記ガス分解発電手段において生成された水分が原料に作用すると、醗酵作用を阻害する恐れがあるため、水分が生成される側を流動する排出ガスを、屋外に排出するように構成するのが好ましい。
【0048】
本願発明に係る上記ガス分解発電素子には、水素とアンモニアの混合気体が作用させられる。上記ガス分解発電素子において、水素を分解するには、ニッケル触媒を用いるのが効果的である。一方、アンモニアを分解するには、鉄触媒を用いるのが好ましい。このため、上記アンモニアと水素を含むガスを分解する場合、ニッケル−鉄合金から形成される触媒を採用するのが好ましい。
【0049】
ところが、上記ガス分解発電素子においては、処理対象となるガスが、アンモニアと水素の組成比が変化しながら流動して、上記アノードに作用させられる。このため、ニッケルと鉄の配合割合が一定の触媒を採用した場合、分解効率が低下する恐れがある。
【0050】
請求項12に記載した発明は、上記不都合を解消するものであり、上記ガス分解発電素子における上記触媒の組成が、ガスの流動方向に対して連続的に変化するように構成されており、流動にともなって変化するガスの成分に対応して、触媒作用を発揮させるように構成したものである。
【0051】
具体的には、上記ガス分解発電素子内での流動初期には、アンモニアを分解するのが好ましいため、鉄成分の配合量を大きく設定する一方、分解が進行するにつれて水素成分が多くなるため、下流側にいくほどニッケル成分を多く設定した触媒層を設けるのが好ましい。上記構成を採用することにより、ガス分解発電手段におけるガス分解効率及び発電効率を高めることが可能になる。
【0052】
また、請求項13に記載した発明は、上記ガス分解発電手段が、複数のガス分解発電素子を備えて構成されており、これら複数のガス分解発電素子が、各電極又は集電体に設けた触媒の構成を異ならせて構成されているとともに、これら複数のガス分解発電素子が、これらガス分解素子間で流動するガスの成分変化に対応して配列されているものである。
【0053】
上記構成を採用することにより、複数のガス分解発電素子を効率的に作動させることが可能となり、発電効率及びガス分解効率を高めることができる。
【0054】
上記ガス分解発電手段において生じた電力は、上記ガス分解発電素子を加熱する加熱ヒータに供給することもできるし、請求項3に記載した発明のように、蓄電池を設けて蓄電することもできる。
【発明の効果】
【0055】
アンモニアを含むバイオガスを、有害成分を排出することなく効率よく処理できるとともに、アンモニア分解過程において生成される水素を用いて効率よく発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本願発明に係るガス分解発電システムの概要を示す図である。
【図2】ガス濃縮手段の一例を示す斜視図である。
【図3】図2におけるII−II線に沿う断面図である。
【図4】ガス濃縮手段の他の実施形態を示す図であり、図3に相当する断面図である。
【図5】水素生成手段の一例を示す断面図である。
【図6】図5に示す水素生成手段の要部の拡大図である。
【図7】水素生成手段の他の実施形態を示す断面図である。
【図8】ガス分解発電手段の概要を示す断面図である。
【図9】(a)ガス分解発電手段の要部を示す縦断面図である。(b)図9(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。
【図10】図9(a)の要部の拡大断面図である。
【図11】ガス分解発電手段の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて具体的に説明する。
【0058】
図1は、本願発明に係るガス分解発電システム1の概要を示す図である。なお、本実施形態は、本願発明に係るガス分解発電システム1を、堆肥製造プラントにおいて発生するバイオガスの処理に適用したものである。
【0059】
ガス分解発電システム1は、堆肥製造工程において、建屋2内で発生するガスを収集するガス収集手段100と、収集した上記ガスを濃縮できる濃縮手段200と、濃縮されたガスを脱硫する脱硫手段250と、脱硫したガスから水素を生成させる水素生成手段300と、上記水素生成手段300において生成された上記水素を含むガスを用いて発電する発電手段400と、発電した電力を蓄電する蓄電手段500とを備えて構成される。
【0060】
上記堆肥製造工程においては、堆肥の醗酵過程等において、アンモニア及び硫黄成分を含むガスが発生する。本願発明は、上記ガスを電気化学的に分解することにより除害するとともに、発電を行うように構成したものである。
【0061】
上記堆肥製造プラントは、発生したガスが大気に漏れ出ないように建屋2内に設けられる。堆肥原料3の醗酵工程において生じるガス4は、天井等に設けた上記ガス収集手段100によって収集される。
【0062】
上記ガス収集手段100の構成は特に限定されることはない。たとえば、天井5に設けたダクトと吸引ファンを備えて構成することができる。
【0063】
堆肥の製造工程は連続的に行われ、堆肥原料3から連続的にガス4が放出される。このため、本願発明に係るガス分解発電システムも24時間稼働する必要がある。
【0064】
一方、上記堆肥製造工程において発生するガスの濃度や量は一定ではなく、しかも、発電に要する濃度より低い濃度のガスが発生する。このため、発生したガスそのままでは、本願発明に係るガス分解発電システム1を稼働させることができない。このため、発生したガスを収着して濃縮するガス濃縮手段200が設けられる。
【0065】
図2は、上記ガス濃縮手段の一例に係る要部の斜視図である。本実施形態に係るガス濃縮手段200は、上記ガス収集手段100によって収集した上記ガスを収着できるとともに脱着できる多孔質収着回収素子240a,240b,240c,240dを備えて構成される。
【0066】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係るガス濃縮手段200は、円筒状のロータ201を半径方向に延びる隔壁202a,202b,202c,202dで4つの領域A,B,C,Dに区画し、この区画に上記多孔質収着回収素子240a,240b,240c,240dを設けて構成される。上記多孔質収着回収素子240a,240b,240c,240dは、多孔質発熱体207a,207b,207c,207dと多孔質収着体211a,211b,211c,211dとを積層して構成される。
【0067】
上記ロータ201は、図示しないモータによって回転させられ、選択した領域を所定の回転位置に位置させるとともに、この領域にガスを流動させて選択した多孔質収着体に収着させる。一方、他の回動位置において上記多孔質発熱体に通電して加熱するとともにキャリヤガスを流動させることにより、選択した多孔質収着体に収着させたガスを脱着させて、濃縮回収できるように構成されている。
【0068】
本実施形態では、上記各領域A,B,C,Dにおいて、各2層の多孔質収着体211a,211b,211c,211dを挟むようにして各3層の多孔質発熱体207a,207b,207c,207dを積層することにより、各多孔質収着回収素子240a,240b,240c,240dが構成されている。上記ロータ201の回転軸212の外周部に各多孔質発熱体207a,207b,207c,207dに導通する第1の電極213a,213b,213c,213dが設けられているとともに、上記ロータ201の外周部に各多孔質発熱体207a,207b,207c,207dに導通する第2の電極214a,214b,214c,214dが設けられている。
【0069】
電源220からの電流が、ロータ201の回転軸212と、上記第2の電極214a,214b,214c,214dに接触しながら回転する通電体215を介して、所定の回転位置にある上記多孔質発熱体207a,207b,207c,207dに順次が流される。これにより、所定の回転位置に回動した区画の多孔質発熱体が順次発熱させられて、収着されたガスが脱着させられる。
【0070】
本実施形態に係る上記多孔質発熱体207a,207b,207c,207dは、円板を4等分した板状の多孔質体から形成されている。上記多孔質発熱体207a,207b,207c,207dは、ガスを流動させることができる連続気孔を有する多孔質体から形成されている。このため、多孔質発熱体を多孔質収着体の表面や内部に設けても、上記多孔質発熱体がガスの流動を妨げることはなく、大量のガスを流動させて収着処理及び脱着処理を行うことができる。
【0071】
上記多孔質発熱体の形態は特に限定されることはない。たとえば、多孔質発熱体207a,207b,207c,207dとして、発熱性を有する外殻と、中空又は/及び導電性を有する芯部とを有する骨格を備え、上記骨格が一体的に連続する3次元網目構造を備えるものを採用することができる。3次元網目構造の多孔質発熱体を採用することによって、気孔率をきわめて大きく設定することができる。上記構成の多孔質発熱体では、気孔内におけるガスの流動抵抗が低く、大量のガスを流動させることが可能となる。また、上記多孔質発熱体に通電することにより、多孔質収着体211a,211b,211c,211d及びキャリヤガスを効率よく加熱して、上記多孔質収着体211a,211b,211c,211dに収着されたガスを脱着して、濃縮されたガスを効率よく回収することができる。
【0072】
上記多孔質発熱体は、種々の手法を用いて形成することができる。たとえば、上記多孔質発熱体を構成する骨格をめっきによって形成する場合、3次元網目状樹脂に導電化処理を施す工程と、3次元網目状樹脂にNiめっきを施す工程と、上記合金化する領域以外の領域に、めっき処理又はコーティング処理に対するマスキング層を設けるマスキング工程と、上記マスキングを施していない領域に、Cr等の金属をめっき又はコーティングする積層工程と、上記3次元網目状樹脂を除去する工程と、上記めっき又はコーティングが施された多孔質体を加熱して、積層されたNi層とCr層とを合金化する熱処理工程とを含んで構成することができる。これにより、Ni−Cr合金層が形成されるとともに3次元網目構造を備える多孔質発熱体が形成される。
【0073】
上記多孔質収着体の構成は特に限定されることはない。本実施形態では、上記多孔質収着体211a,211b,211c,211dは、活性アルミナから形成された球体の表面に収着剤をコーティングして形成された球状収着剤の集合体として構成されている。上記多孔質発熱体207a,207b,207c,207dと、上記多孔質収着体211a,211b,211c,211dは、ロータの各区画内において、ガス流動方向に交互に積層配置されて、一体的な多孔質収着回収素子240a,240b,240c,240dが構成されている。本実施形態では、上記多孔質発熱体207a,207b,207c,207d間において、上記球状収着剤の集合体が保持された形態を備え、上記多孔質発熱体207a,207b,207c,207dは、球状収着剤の集合体を円板状あるいは円柱状の形態に保持する保持手段として機能するように構成されている。
【0074】
上記収着剤を構成する材料も特に限定されることはない。たとえば、ゼオライト粉末とバインダ及び溶剤とから形成されるペーストを、上記球体にコーティングして収着層を形成することができる。また、粉状活性炭を所定の気孔率で充填して多孔質収着体を形成できる。
【0075】
図4に、多孔質収着回収素子に係る他の実施形態を示す。なお、図4に示す多孔質収着回収素子241a,241b,241c,241dは、図3に示す多孔質収着回収素子と同様に、図2に示すロータ式のガス収着回収手段200に装着されるものであり、ロータ等の構成は、図2に示す実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0076】
本実施形態に係る各多孔質収着回収素子241a,241b,241c,241dは、内周部が回転軸212に保持された円筒壁状の第1の電極213a,213b,213c,213dと、外周部を覆うように設けられた円筒壁状の第2の電極214a,214b,214c,214dと、これら電極の間の空間に設けられた多孔質発熱収着体208a,208b,208c,208dとを備えて構成されている。
【0077】
上記多孔質発熱体は、図3に示す多孔質発熱体と同様に形成することができる。上記多孔質発熱体の連続気孔表面に、ガス収着剤をコーティングすることにより、ガス収着剤層が形成される。上記ガス収着剤層を形成する手法も特に限定されることはない。たとえば、ゼオライト粉末とバインダと溶剤とを混合して形成されるペーストを、上記多孔質体に塗布し、乾燥させることにより、上記ガス収着剤層を形成することができる。
【0078】
上記多孔質収着回収素子241a,241b,241c,241dは、ガス収着剤層と多孔質発熱体とが一体的に形成されているため、ガス収着剤層を直接加熱して収着されたガスを脱着させることができる。このため、収着されたガスを脱着させる際のエネルギ効率がきわめて高い。
【0079】
また、通電した多孔質発熱体の全域を、所定温度に迅速に加熱することができる。このため、ガスの脱着効率が高いばかりでなく、多量のガスを収着し、また、脱着することが可能となる。しかも、キャリヤガスを加熱する装置を別途設ける必要がないことから、装置の小型化を図ることができる。
【0080】
上記脱硫手段250は、硫黄化合物を分離除去できる種々の脱硫剤を用いて構成することができる。
【0081】
上記脱硫剤の構成及び形態も特に限定されることはない。たとえば、粒状の酸化亜鉛を所定の気孔率で保持し、硫黄成分を含むガスを上記気孔内で流動させることにより、脱硫を行うことができる。また、ゼオライト等を担体として、銀、銅、コバルト等の金属成分を担持させたものを採用することもできる。
【0082】
上記脱硫手段は、少なくとも、上記ガス分解発電手段400の上流側に設けるのが好ましい。硫黄成分を含むガスが、上記ガス分解発電手段400に供給されると、固体電解質等を損傷させる恐れがある。
【0083】
図5及び図6に、水素生成手段300の一例を示す。
【0084】
水素生成手段300は、円筒状の容器301と、この容器301の内部空間に充填された多孔質給電体307,308,309,310及び多孔質触媒体311,312,313とを備えて構成されている。
【0085】
上記容器301は、金属等の材料から形成されるとともに、ガス流入口303と、ガス排出口304と、上記多孔質給電体307,308,309,310及び多孔質触媒体311,312,313を充填する円筒空間301aとを備えて構成されている。側壁302の内周部には、セラミック繊維等から形成された断熱材305が設けられている。
【0086】
本実施形態に係る上記多孔質給電体307,308,309,310は、円板ないし短円柱状に一体形成された多孔質体から形成されている。一方、上記多孔質触媒体311,312,313は、多孔質アルミナから形成された球体の表面に触媒層を設けて形成された球状触媒の集合体として構成されている。上記多孔質給電体307,308,309,310と、上記多孔質触媒体311,312,313とは、上記断熱材305の内周部において、ガス流動方向に交互に積層配置されて、一体的な多孔質体306が構成されている。本実施形態では、上記多孔質給電体307,308,309,310間において、上記球状触媒の集合体が保持された形態を備え、上記多孔質給電体307,308,309,310が多孔質触媒体311,312,313へ給電するとともに、球状触媒の集合体を円板状あるいは円柱状の形態に保持する保持手段として機能するように構成されている。
【0087】
各多孔質給電体307,308,309,310のうち、最上部に配置された給電体307と最下部に配置された給電体310には、上記側壁302から引き出されたリード線307b,310bを備える電極316,317が接続されている。上記リード線307b,310bは、電源340に接続されており、電極316,317を介して、上記多孔質給電体307,308,309,310及び上記多孔質触媒体311,312,313に電流を流すことができるように構成されている。
【0088】
上記多孔質給電体307,308,309,310及び多孔質触媒体311,312,313は、連続気孔を備えて構成されており、上記ガス流入口303から流入するガスを所定の流動速度で通過できる気孔率に設定されている。
【0089】
本実施形態では、上記多孔質給電体307,308,309,310を、上記多孔質触媒体に電流を供給できるとともに、自己発熱できるように構成している。上記多孔質給電体307,308,309,310及び上記多孔質触媒体311,312,313は、少なくとも800℃以上で発熱するように構成されており、上記多孔質給電体307,308,309,310及び上記多孔質触媒体311,312,313を通過するガスを所定の分解温度まで加熱する。
【0090】
図6に示すように、上記多孔質触媒体311,312,313は、球体320aの表面に、触媒層320bを設けた球状触媒320の集合体として構成されている。本実施形態では、直径が4〜6mmのアルミナ球体320aの表面に上記触媒層320bを設けた球状触媒320を採用している。これにより、多孔質触媒体の気孔率を40%〜80%に設定することができる。上記球体320aを構成する材料は、所要の耐熱性等を備えていれば、種々の材料を採用することができる。たとえば、多孔質アルミナから形成されるセラミック球体や、ステンレス等の金属球体を採用できる。また、上記触媒体の形態も特に限定されることはなく、不定形粒状の形態を備えるものや、所定の気孔率を有する多孔質成形体を採用することもできる。
【0091】
上記触媒層320bを構成する材料も特に限定されることはない。たとえば、Niから形成される触媒層や、Ni−Cr合金から形成される触媒層を採用できる。また、上記各多孔質触媒体311,312,313に、異なる材料から形成された触媒層を備える球状触媒を採用することもできる。本実施形態では、各多孔質触媒体を、Ni−Crから形成された触媒層320bを備える球状触媒の集合体から構成している。
【0092】
一方、上記多孔質給電体307,308,309,310として、上述したガス濃縮手段200に採用した発熱体と同様に、発熱性を有する外殻と、中空又は/及び導電性を有する芯部とを有する骨格を備え、上記骨格が一体的に連続する3次元網目構造を備えるものを採用することができる。
【0093】
上記多孔質給電体307,308,309,310は、連続気孔を有する多孔質状に形成されているため、上記気孔内でガスを流動させて、効率よく加熱することができる。しかも、上記多孔質給電体307,308,309,310に、上記3次元網目構造を採用することによって、気孔率をきわめて大きく設定することができる。このため、気孔内におけるガスの流動抵抗が低く、大量のガスを流動させて加熱することも可能となる。
【0094】
本実施形態に係る上記多孔質給電体307,308,309,310は、少なくともNiとCrとを含む合金から形成することができる。上記NiとCrの配合量は、所要の発熱量に応じて設定することができる。たとえば、上記多孔質給電体の上記外殻を、Niを70〜95%と、Crを5〜30%とを含む合金から形成することができる。
【0095】
図7に、上記水素生成手段の他の実施形態を示す。
【0096】
水素生成手段350は、長尺状の筒状容器359の内部に、触媒機能を有する多孔質発熱素子370を充填して構成される。上記筒状容器359は、少なくとも内面が電気絶縁性を備えるように構成される。たとえば、セラミックから形成された筒状容器を採用することができる。
【0097】
本実施形態に係る多孔質発熱素子370は、多孔質発熱体352と両側に設けられたリード部353,354とを備えて構成される。上記多孔質発熱体352は、図5に示す水素生成手段300の多孔質給電体307と同様の形態で形成されたものであり、Ni−Cr合金から形成された3次元網目状の骨格352aと、連続気孔352bとを備えて構成される。
【0098】
上記リード部353,354は、上記多孔質発熱体352の両端部に接続される金属多孔質体353a,354aと、上記金属多孔質体353a,354aの外周部を囲むように配置された環状の電極部353b,354bとを備えて構成される。
【0099】
上記金属多孔質体353a,354aは、上記多孔質発熱体352の端面に圧接あるいは溶接される。また、上記電極部353b,354bも、上記金属多孔質体353a,354aの外周部に、圧接あるいは溶接されている。
【0100】
上記電極部353b,354bに接続される配線355が、上記容器359から引き出されて電源380に接続されており、この配線355によって、上記多孔質発熱素子370に通電される。
【0101】
本実施形態に係る多孔質発熱素子370は、リード部353,354を含む全体が多孔質であるため通気性が高い。また、上記電極部353b,354bも、上記筒状容器内のガスの流動を妨げないように、端部内周面に添着するように配置されている。このため、筒状容器359のガス導入口357を介してガスを筒状容器内に導入するとともに、上記多孔質発熱素子370の内部を軸方向に向けて流動させ、ガス排出口358から排出することができる。また、上記多孔質発熱体352は、全体がほぼ均等に加熱されるため、流動するガスを均一に加熱することができる。このため、非常に効率よくガスを分解することができる。しかも、外部に熱源を設ける必要がないため、エネルギ効率も非常に高い。
【0102】
図8に、固体電解質層を備えて構成されるガス分解発電手段400の概略構造を示す。
【0103】
本実施形態に係るガス分解発電手段400は、内側にガスを流動させて分解する筒状MEA(ガス分解発電素子)410と、上記筒状MEA410を保持するとともにこの筒状MEA410の外周部に空気を流動させることのできる筒状容器409とを備えて構成される。
【0104】
上記筒状MEA410は、上記筒状容器409のガス流入口407とガス流出口408の間に接続されるようにして上記筒状容器409内に保持されている。上記筒状容器409の外周部には、空気を導入する空気導入口417と、上記筒状MEA410の外周部を流動した空気を排出する排出口418とを備える。
【0105】
上記ガス分解発電手段400は、外周部に図示しないヒータが設けられており、上記筒状MEA410及び上記空気が流動する空間Sを所定温度に加熱できるように構成されている。また、上記筒状MEA410の第1の電極層(アノード)402と第2の電極層(カソード)405の間には、配線411e,412eが設けられており、この配線内に蓄電手段500が設けられる。
【0106】
図9(a)は、ガス分解発電手段400の縦断面図であり、図9(b)は、図9(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。
【0107】
上記筒状MEA410は、円筒状の固体電解質層401と、この固体電解質層401の内面を覆うように形成された第1の電極層(アノード)402と、上記固体電解質層の外面を覆うように形成された第2の電極層(カソード)405とを備えて構成されている。上記第1の電極層402及び第2の電極層405には、集電体411,412が設けられている。上記アノード402は燃料極、また、カソード405は空気極と呼ばれる。本実施形態では、筒状MEA410(401,402,405)を採用したが、これに限定されることはなく、平板状の固体電解質層を備えるMEAを組み合わせてガス分解発電手段を構成することもできる。また、適用する装置に応じて寸法等を設定できる。
【0108】
アノード側集電体411は、銀ペースト塗布層411gと、Niメッシュシート411aと、多孔質金属体411sと、中心導電棒411kとを備えて構成されている。Niメッシュシート411aが、銀ペースト塗布層411gを介して、筒状MEA410の内面側のアノード402に接触して、多孔質金属体411sから中心導電棒411kへと導電するように構成されている。多孔質金属体411sは、アンモニアを含む気体の圧力損失を低減させるために、気孔率を高くできる金属メッキ体、たとえば、セルメット(登録商標:住友電気工業株式会社)を用いるのが好ましい。アノード402とアノード側集電体411との間の電気抵抗を低減させるために、上記銀ペースト塗布層411gとNiメッシュシート411aとが配置されている。
【0109】
カソード側集電体412は、銀ペースト塗布配線412gとNiメッシュシート412aとを備えて構成されている。本実施形態では、Niメッシュシート412aが、筒状MEA410の外面に接触して、外部配線へと導電している。銀ペースト塗布配線412gは、カソード405における酸素ガスを酸素イオンに分解するのを促進する触媒として作用する銀を含み、かつカソード側集電体412の電気抵抗を低くすることに寄与する。所定の性状の銀ペースト塗布配線412gは、酸素分子を通しながら銀粒子がカソード405に接触して、カソード405内に含まれる銀粒子と同等の触媒作用を発現する。しかも、カソード405に含ませるより安価である。
【0110】
図10は、固体電解質層401にプロトン導電性の固体電解質を採用した場合における要部を模式的に表した図である。アンモニアを含む気体は、気密性を厳格にした筒状MEA410の内筒、すなわちアノード側集電体411が配置されている空間に導入される。筒状MEA410を用いた場合、内面側にアンモニアを含む気体を通すことから、多孔質金属体411sが用いられる。圧力損失を低くする点から、上述のように、多孔質金属体411sとして、多孔質金属めっき体、たとえば、上述したセルメットを用いることができる。アンモニアを含む気体は、多孔質金属体411s、Niメッシュシート411a、及び多孔質の銀ペースト塗布層411gの空隙を通りながら、アノード402と接触して、下記のアンモニア分解反応をする。
(アノード反応):2NH3→N2+6H++6e-
【0111】
すなわち、プロトン導電性の固体電解質層401を用いると、アノード402でアンモニアを分解することにより、プロトン、窒素分子及び電子を生じさせる。発生したプロトンは、固体電解質層401中をカソード405へ移動する。プロトンは、酸素イオンと比べて小さいので固体電解質層401中の移動速度が大きく、装置の加熱温度を低く設定することが可能となる。
【0112】
また、本実施形態では、ガス分解発電手段400の上流に、水素生成手段300が設けられているため、アノード402には、アンモニアと水素とを含む混合気体が作用させられる。上記水素は、下記のように、プロトンに分解される。
(アノード反応):H2→2H++2e-
【0113】
上記水素の分解反応で生じたプロトンも、上記アンモニアの分解によって生じたプロトンと同様に、固体電解質層401中をカソード405に向けて移動する。
【0114】
カソード405では、固体電解質層401を移動してきた上記プロトンと空気中の酸素とが反応し、水が生成される。
(カソード反応):4H++O2+4e-→2H2
【0115】
上記の電気化学反応の結果、電力が発生し、アノード402とカソード405との間に電位差を生じ、カソード側集電体412からアノード側集電体411へと電流Iが流れる。カソード側集電体412とアノード側集電体411との間に蓄電池500を接続することにより、電力が蓄えられる。また、蓄電池の代わりに、負荷、たとえばこのガス分解発電手段400を加熱するための図示しないヒータに接続しておけば、そのための電力を供給することができる。
【0116】
内側をアノードとした場合、酸素イオン導電性の固体電解質では、水を筒状MEA410の内側(アノード側)で生成する反応となる。水は、筒状MEA410の出口付近の温度が低い部分では水滴を形成して圧力損失の原因となる場合がある。これに対して、本実施形態のようにプロトン導電性の固体電解質を用いると、プロトンと酸素分子と電子とが、外側(カソード側)で反応して水を生成する。外側はほぼ開放されているので、出口側の温度の低い箇所で水滴となって付着しても圧力損失を生じにくい。
【0117】
上記固体電解質層401として、BYZ(イットリウム添加ジルコン酸バリウム)から形成されたものを採用するのが好ましい。BYZは、低い作動温度においてプロトン伝導率が高く、活性化エネルギが低いため、エネルギ効率を高めることができる。また、上記構成によって、反応生成物である水が、外側(カソード側)に生じるため、内側(アノード側)に作用させられるアンモニアガスが、水蒸気により希釈されて反応効率が低下するのを防止することができる。
【0118】
特に、堆肥製造工程においては、上記ガス分解発電手段400において発生した水分が醗酵途中の原料に作用すると、醗酵作用を阻害する恐れがあるため、BYZから形成された固体電解質層を備えて構成されるガス分解発電装置においては、水分が生成されるカソード側を流動する排出ガスを、屋外に排出するように構成するのが好ましい。
【0119】
上記アノード及び上記カソードにおける上記反応促進するため、触媒が設けられる。上記触媒は、筒状MEAの電極層内に配合することもできるし、電極の表面や上記メッシュシート等の集電体に触媒層として設けることもできる。なお本実施形態では、上記アノードを構成する材料に上記Ni系とFe系の触媒を配合している。
【0120】
アンモニアを分解する触媒としてFe系の触媒を用いるのが好ましい。一方、水素を分解するには、Ni系の触媒を用いるのが好ましい。本実施形態では、アノード402に、アンモニアと水素とが作用させられるため、NiとFeとを含む触媒を採用するのが好ましい。
【0121】
一方、上記ガス分解反応が進行するにつれて、流動するガスにおける上記アンモニアと水素の比率が変化する。このため、上記アノードの全域にわたって、同一構成のNi−Fe触媒を用いると、上記2種類のガスを効率よく分解できない場合が生じる。
【0122】
上記不都合を回避するため、上記筒状MEA410のアノード側に設けられる触媒のNi−Feの配合比率を、ガスの流動路に沿って変化させるのが好ましい。本実施形態の場合、ガス分解発電手段の分解ガスの入口近傍の触媒組成におけるFeの配合比率を大きく設定する一方、分解ガスの出口近傍に向けて、上記Feの配合比率が次第に小さくなるように構成するとともに、Niの配合比率が次第に大きくなるように構成するのが好ましい。
【0123】
上記触媒層の成分を変化させる手法は特に限定されることはない。たとえば、上記筒状MEA410の第1の電極層(アノード)402に配合されるFe触媒の成分の配合量を変化させることにより、Ni−Feの配合比率を連続的に変化させる場合、次のようにして構成することができる。まず、筒状の個体電解質の内部にNiペーストを充填等することにより、上記個体電解質の内面にNi層を形成する。次に、上記個体電解質層の外面にマスキングを施した状態で、硝酸Fe水溶液中に浸漬した後、所定の速度で引き上げ、乾燥させる。これにより、上記筒状MEAの内面において、軸方向に付着量を変化させたFe層を設けることができる。その後、上記個体電解質を焼成することによりNi−Feを合金化して、Ni成分とFe成分の配合率が連続的に変化する第1の電極層(アノード)を有する筒状MEAを形成することができる。
【0124】
Ni成分の配合量を変化させる場合も、上記Fe成分の配合量を変化させたのと同様の手法を採用することができる。上記手法を、Fe成分とNi成分に適用することにより、これら2種類の触媒成分の配合比率を所要のパターンで連続的に変化させた第1の電極層(アノード)を形成することができる。たとえば、Ni成分とFe成分の配合量を共に変化させることにより、Ni:Feの配合比率を、分解ガスの入口近傍において1:9に設定し、流動路の中央部分において5:5まで変化させ、さらに、分解ガスの出口近傍において9:1となるように連続的に変化させるのが好ましい。上記構成を採用することにより、アンモニアと水素とを含む混合気体を効率よく分解できるとともに、効率よく発電することが可能となる。
【0125】
また、上記集電体411に、配合比率が変化する触媒を設けることができる。たとえば、Feメッシュシートに厚みが連続的に変化するNiメッキ層を設け、これを加熱して合金化することにより、Ni−Fe成分の配合比率が連続的に変化する触媒集電体を形成できる。厚みが変化する上記Niメッキ層は、たとえば、上記Feメッシュシートを、所定の速度でメッキ浴から引き上げながらメッキ処理することにより形成することができる。
【0126】
図11に、アノードの表面に、Ni−Feから構成される触媒層を設けた複数のガス分解発電装置400a,400b,400cを組み合わせてガス分解発電手段400を構成した例を示す。
【0127】
図11に示すように、複数のガス分解発電装置400a,400b,400cが、直列状に接続されている。本実施形態に係る各ガス分解発電装置400a,400b,400cのアノードの表面には、Ni−Feからなる触媒層451a,451b,451cがそれぞれ設けられている。上記触媒層451a,451b,451cは、NiとFeの配合割合がそれぞれ異なるように形成されている。すなわち、本実施形態では、上記触媒層451a,451b,451cにおいて、Feの成分割合が400a>400b>400cに設定される一方、Niの成分割合が400a<400b<400cとなるように設定されている。具体的には、
Ni:Feの配合比率を、第1のガス分解発電装置400aにおいて1:9に設定し、第2のガス分解発電装置400bにおいて5:5に設定し、第3のガス分解発電装置400cにおいて9:1に設定するのが好ましい。
【0128】
上記構成を採用することにより、アンモニアと水素とを含む気体を効率よく分解できるとともに、発電効率を高めることが可能となる。
【0129】
上記蓄電池500の形式等は特に限定されることはなく、発電量や発電電圧に応じて、種々の二次電池を採用できる。たとえば、鉛蓄電池、ニッケル蓄電池やリチウム系蓄電池等を採用することができる。
【0130】
本願発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0131】
アンモニアを含むガスを分解して除害できるとともに、分解反応を利用して効率よく発電を行うことができる。
【符号の説明】
【0132】
1 ガス分解発電システム
100 ガス収集手段
200 ガス濃縮手段
250 脱硫手段
300 水素生成手段
400 ガス分解発電手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアガスを含むガスを分解して除害するガス分解発電システムであって、
分解対象となるガスを収集するガス収集手段と、
収集した上記ガスを収着できるとともに脱着できる多孔質収着回収素子を設けて構成されるガス濃縮手段と、
濃縮手段において脱着されたガスを、加熱しながら多孔質触媒体内で流動させることにより、アンモニアガスから水素を生成させる水素生成手段と、
固体電解質を備えて構成されるとともに、上記水素生成手段において生成された上記水素及びアンモニアガスを用いて発電するガス分解発電手段とを含む、ガス分解発電システム。
【請求項2】
上記ガス収集手段によって収集したガス又は濃縮手段によって濃縮したガスを脱硫する脱硫手段を含む、請求項1に記載のガス分解発電システム。
【請求項3】
上記ガス分解発電手段で発電した電力を蓄電する蓄電手段を備える、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のガス分解発電システム。
【請求項4】
上記多孔質収着回収素子は、
連続気孔を有する多孔質収着体と、
上記多孔質収着体の表面及び/又は内部に設けられて、上記ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質発熱体とを備えて構成されており、
上記多孔質発熱体を発熱させることにより、上記多孔質収着体に収着されたガスを脱着させるように構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス分解発電システム。
【請求項5】
上記多孔質収着回収素子は、
連続気孔を有する多孔質発熱体の各気孔表面にガス収着剤層を設け、上記多孔質発熱体を発熱させることにより、上記ガス収着剤層に収着されたガスを脱着できるように構成されている、請 求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス分解発電システム。
【請求項6】
上記ガス濃縮手段は、上記多孔質収着回収素子をそれぞれ設けた複数の収着領域を備えて構成されており、
選択した上記収着領域にガスを流動させて収着させるとともに、選択した上記収着領域を加熱することにより上記収着領域に収着されたガスを脱着させるように構成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガス分解発電システム。
【請求項7】
上記ガス濃縮手段は、ガスを脱着させる収着領域の範囲及び加熱温度を制御することにより、後に設けられる各手段に、所要の濃度及び流量のガスを供給できるように構成されている、請求項6に記載のガス分解発電システム。
【請求項8】
上記水素生成手段は、
ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質触媒体と、
上記多孔質触媒体の表面及び/又は内部に設けられるとともに、上記ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質発熱体とを備えて構成されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のガス分解発電システム。
【請求項9】
上記水素生成手段は、
ガスが流動させられる連続気孔を有するとともに通電することにより発熱する多孔質発熱体の上記各気孔表面に触媒層を設けて構成されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のガス分解発電システム。
【請求項10】
上記脱硫手段は、硫黄化合物を分離除去できる収着剤を備えて構成されている、請求項2から請求項9のいずれか1項に記載のガス分解発電システム。
【請求項11】
上記ガス分解発電手段は、上記固体電解質層と、この固体電解質層の一側に形成された第1の電極層と、上記固体電解質層の他側に形成された第2の電極層と、第1の電極層及び/又は第2の電極層に設けられた集電体を設けて構成されたガス分解発電素子を備えて構成されているとともに、
上記電極層及び/又は上記集電体に、アンモニアガス及び水素ガスを分解する触媒が設けられている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のガス分解発電システム。
【請求項12】
上記ガス分解発電素子は、上記触媒の組成がガスの流動方向に対して連続的に変化するように構成されており、
流動にともなって変化するガスの成分に対応して、触媒作用を発揮させるように構成されている、請求項11に記載のガス分解発電システム。
【請求項13】
上記ガス分解発電手段は、複数のガス分解発電素子を備えて構成されており、
これら複数のガス分解発電素子は、各電極又は集電体に設けた触媒の構成を異ならせて構成されているとともに、
これら複数のガス分解発電素子が、これらガス分解素子間で流動するガスの成分変化に対応して配列されている、請求項11に記載のガス分解発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−78716(P2013−78716A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219340(P2011−219340)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】