説明

ガス分解素子、発電装置

【課題】ランニングコストを抑えながら大きな処理能力を得ることができると共に、筒状MEA内を流れるガスの分解効率をより向上させることのできるガス分解素子及びそのガス分解素子を備える発電装置の提供を課題とする。
【解決手段】筒状の固体電解質層1と、この固体電解質層1の内周部に積層形成された第1の電極層2と、この固体電解質層1の外周部に積層形成された第2の電極層5とを有する筒状MEA7を備え、上記筒状MEA7の内側には分解に供せられる第1のガスを流す第1のガス流路を備えると共に上記筒状MEA7の外側に第2のガスを流す第2のガス流路を備えたガス分解素子であって、上記筒状MEA7の内側に備えられる第1のガス流路に、流れてくる第1のガスと接触して分解を促進するガス分解促進手段71を配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ガス分解素子及び発電装置に関する。詳しくは、所定のガスを効率良く分解することができるガス分解素子、このガス分解素子を備える発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアンモニアは、農業や工業に不可欠の化合物であるがヒトには有害であるため、水中や大気中のアンモニアを分解する種々の方法が知られている。高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、アンモニア水を噴霧すると共に空気流と接触させて空気中でアンモニアを分離し、次亜臭素酸溶液又は硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また上記方法と同じプロセスで、空気中でアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法(特許文献2)や、アンモニア含有排水を触媒を用いて窒素と水に分解する方法が提案されている(特許文献3)。更に半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれることが多く、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除去する必要がある。この目的のために、半導体装置の廃ガス放出の際に、スクラバーを通して薬品を含む水に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。一方、エネルギーや薬品等の投入なしに安価なランニングコストで有害ガスを分解するために、リン酸燃料電池でアンモニアを分解する半導体製造装置等における廃ガス処理の方法も提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開2003−45472号公報
【特許文献5】特許第3238086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような中和剤等の薬液を用いる方法、特許文献2に記載されているような燃焼させる方法、特許文献3に記載されているような触媒を用いた熱分解反応による方法により、アンモニアを分解することはできる。ところが、これらの方法では、薬品や外部エネルギー(燃料)を必要とし、更には触媒を定期的に交換する必要があり、ランニングコストが大きくなるという問題がある。
【0005】
また装置が大掛かりとなり、既存の設備に付加的に設ける場合には、スペースを確保するのが困難である。またリン酸型燃料電池を、化合物半導体製造の排気中のアンモニアの除去に用いる装置についても、電解質が液体であるため、空気側とアンモニア側との仕切りをコンパクトにできず、装置の小型化が難しいという問題があった。
【0006】
上記問題を解決するため、特許文献5に記載されているように、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を採用することができる。上記筒状MEAの内側空間を、分解されるガスを含む気体が、軸方向に流動させられる。
【0007】
上記ガスを分解するには、ガスを含む気体の温度をできるだけ高めて、上記筒状MEAの第1の電極層(燃料極)に作用させるのが好ましい。このため、上記筒状MEAの全体を加熱するヒータが設けられている。
その一方、多量のガスを分解するには、上記筒状MEA内を流れるガスの流量を大きくする必要がある。ところが、ガス流量を大きくすると、充分に加熱されないガスが、上記筒状MEAに作用させられることになり、ガス分解効率が低下するという問題があった。
【0008】
また上記筒状MEA内を流れるガスの分解を良くするためには、ガスを高温に加熱する必要があるが、筒状MEAがコンパクトであればあるほど、ガスの加熱が効率よく行えないという問題があった。
【0009】
その他、従来の筒状MEAでは、両端部に接続部材を接続して、ガスを筒状MEAの軸方向に流動させるように構成されていた。ところが筒状MEAの全体が高温になるので、上記筒状MEAの両端部と上記接続部材とのシール性能が低下しやすく、接続の信頼性が低いという問題があった。
【0010】
そこで本願発明は、固体電解質を用いた電気化学反応を利用することによって、ランニングコストを抑えながら大きな処理能力を得ることができると共に、筒状MEA内を流れるガスの分解効率をより向上させることのできるガス分解素子及びそのガス分解素子を備える発電装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明のガス分解素子は、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層の内周部に積層形成された第1の電極層と、この固体電解質層の外周部に積層形成された第2の電極層とを有する筒状MEAを備え、上記筒状MEAの内側には分解に供せられる第1のガスを流す第1のガス流路を備えると共に上記筒状MEAの外側に第2のガスを流す第2のガス流路を備えたガス分解素子であって、
上記筒状MEAの内側に備えられる第1のガス流路に、流れてくる第1のガスと接触して分解を促進するガス分解促進手段を配置してあることを第1の特徴としている。
ここにおいて、MEAとはMembrane Electrode Assemblyの略で、膜/電極接合体と訳すことができるが、MEAとしても当業者に周知の技術用語であるので、そのまま用いている。
【0012】
上記本発明の第1の特徴によれば、分解に供せられる第1のガスは、ガス分解素子の第1のガス流路に導かれ、そこで加熱がなされながら分解に供される。第1のガス流路を流れる第1のガスは、第1のガス流路に配置されたガス分解促進手段と接触することで、分解の機会をより多く得て、分解効率が向上される。これにより第1のガス流路を流れる第1のガスの温度が装置のコンパクト化等により十分なる反応温度まで上昇されないようなことがあっても、その温度不足を分解効率の向上により補うことができる。よって第1のガスのガス供給量を増加させた場合等による加熱温度不足と、それによる分解効率の低下を補い、効率のよい分解を確保することができる。
よって本発明の第1の特徴によるガス分解素子によれば、分解に供される第1のガスの分解効率を向上させることができる。また第1のガスの流量を増加させて処理能力を増加させることができる。またガス分解素子を、その長さにおいてよりコンパクトなものとすることが可能となる。
【0013】
また本発明のガス分解素子は、上記第1の特徴に加えて、上記ガス分解促進手段として、Ni−YSZを表面に担持したアルミナ筒を、上記第1のガスの流れに平行に配置してあることを第2の特徴としている。
本発明の第2の特徴によれば、上記第1の特徴による作用、効果に加えて、ガス分解促進手段がアルミナ筒であるので、第1のガス流路において第1のガスをアルミナ筒の多孔質の筒内外表面において十分なる接触面積をもって接触させることができる。これにより、アルミナ筒の有する熱を第1のガスに与えて、第1のガスの温度上昇を図ることができる。
ガス分解促進手段が筒状であり、且つ第1のガス流路での第1のガスの流れに平行に配置されているので、第1のガスの流れに対する圧損を小さくすることができる。
Ni−YSZは、電子の移動と酸素イオンの移動が可能であるので、上記MEAの第1の電極層と連携した反応が可能である。またNiの凝集をYSZが阻害するため、触媒の寿命も長くすることが可能である。
【0014】
また本発明のガス分解素子によれば、上記第1又は第2の特徴に加えて、上記筒状MEAの一端部を封止する封止部を設けると共に、上記筒状MEAの他端部側から上記筒状MEAの内部空間に挿入されて、上記筒状MEAの内周面との間に筒状流路を形成するガス誘導パイプを設け、上記ガス誘導パイプ内を上記封止部に向けて流動する第1のガスを、上記封止部近傍において上記ガス誘導パイプ内から流出させることにより反転流動させ、上記筒状流路を上記誘導パイプ内の流れと反対方向に向けて流動させるようにして上記第1のガス流路を構成し、且つ上記ガス誘導パイプの少なくとも一部の内空に、上記ガス分解促進手段を配置してあることを第3の特徴としている。
【0015】
本発明の第3の特徴によれば、上記第1又は第2の特徴による作用、効果に加えて、本発明に係るガス分解素子においては、分解されるガスが、ガス誘導パイプ内を、上記封止部を設けた一端部側に向けて流動させられると共に、上記封止部近傍で反転流動させられ、上記ガス誘導パイプの外周面と上記筒状MEAの内周面との間に形成された筒状流路を、上記ガス誘導パイプ内の流れと反対方向に流動させられる。
よって上記第1のガスは、筒状MEAの筒長さの2倍の距離を流動させられることになる。このため、上記誘導パイプ内で充分に加熱されて温度が上昇させられた後に、上記筒状MEAに作用させることができる。従ってガスの分解効率を高めることが可能となり、ガスの流量を増加させてガスの処理量を増加させることが可能となる。
【0016】
加えて、上記ガス分解促進手段であるNi−YSZ等が上記挿入されたガス誘導パイプの少なくとも一部の内空に配置されているので、更に相乗して一層、第1のガスの分解効率を高めることができる。
【0017】
前記Ni−YSZは、ガス誘導パイプの内表面、外表面にも担持させるのが好ましい。これにより上記MEAの第1の電極層との間での電子及び酸素イオン移動を確保して、第1のガスの分解効率を一層向上させることができる。
【0018】
その他、上記第3の特徴によれば、上記第1のガスが筒状MEAに出入りする部分を、筒状MEAの片側端部に集中して設けることができる。このため、上記筒状MEAとガス配管の間のシールの信頼性を高めることができる。
上記筒状MEAにおけるガスの出入口は、分解前の第1のガスと分解後の第1のガスが混合しないように、二重構造を備える配管部材を備えて構成できる。
【0019】
上記筒状MEAの一端部を封止する構成は特に限定されることはない。例えば後述する第9の特徴に記載した発明のように、上記筒状MEAの一端部を、上記固体電解質層を一体延出させて形成された底部によって封止することができる。上記底部は、筒状MEAと一体形成されているため、ガスが漏れ出る恐れはなく、筒状MEAの一端部を確実に封止することができる。
また後述する第10の特徴に記載した発明のように、上記筒状MEAの一端部を、封止部材を筒状MEAの端部に嵌合させて封止することもできる。この構成を採用することにより、本発明を従来の両端が開口された筒状MEAに適用することが可能となる。
【0020】
また本発明のガス分解素子によれば、上記第3の特徴に加えて、上記ガス誘導パイプの内空に、Ni−YSZを担持したアルミナ筒を複数本、稠密状態に配置してあることを第4の特徴としている。
上記第4の特徴によれば、上記第3の特徴による作用、効果に加えて、Ni−YSZを担持したアルミナ筒をガス誘導パイプの内空に稠密状態に配置することで、第1のガスとNi−YSZを担持したアルミナ筒との接触面積を十分に確保して、ガス分解効率を最大限に発揮させることができる。勿論、稠密状態とすることでアルミナ筒の自由な移動を抑制して、位置の安定性を確保することができる。更に圧損も同表面積の他の構造体より小さくすることが可能である。
【0021】
また本発明のガス分解素子は、上記第4の特徴に加えて、上記ガス誘導パイプには、上記Ni−YSZを担持したアルミナ筒の配置位置を決めるための位置決め部を構成してあることを第5の特徴としている。
上記第5の特徴によれば、上記第4の特徴による作用、効果に加えて、複数本のアルミナ筒をガス誘導パイプ内に挿入して固定する場合、ガス誘導パイプに構成した位置決め部を利用して、アルミナ筒の位置を所定の位置に位置決めすることができる。よってアルミナ筒の挿入、配置、固定作業が容易で簡単、確実となる。
なお、固定はセラミックス接着剤やNiペーストで接着固定をして行うことができる。
【0022】
また本発明のガス分解素子は、上記第3〜第5の何れか1つの特徴に加えて、上記ガス誘導パイプは、導電性材料から形成されていると共に、上記第1の電極層に導通させられて、上記第1の電極層の集電体を構成していることを第6の特徴としている。
【0023】
上記第6の特徴によれば、上記第3〜第5の何れか1つの特徴による作用、効果に加えて、ガス誘導パイプを第1の電極層の集電体として利用することにより、ガス分解効率を高めることができるばかりでなく、筒状MEA内のスペースを有効活用することができる。
なお、ガス誘導パイプを構成する材料は特に限定されることはないが、分解するガスによって腐食等が生じない材料で形成する必要がある。例えばステンレス、銅、ニッケル、インコネル、インコネル等のNiをベースとして鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等を含有させた合金を用いて形成することができる。
【0024】
上記第1の電極層と上記ガス誘導パイプとを導通させる手法は、特に限定されることはない。例えば多孔質金属体を、上記筒状MEA内周面と上記ガス誘導パイプ外周面の間に形成される筒状流路内に挿入して、上記第1の電極層と上記ガス誘導パイプとを導通させることができる。また上記多孔質金属体を設けることにより、上記ガス誘導パイプを筒状MEA内で保持することが可能になると共に、上記第1の電極層の内周面と上記ガス誘導パイプの外周面との間の筒状流路を確保することができる。しかしながら、上記筒状MEAの直径が小さい場合等においては、これら多孔質金属体と、第1の電極層及びガス誘導パイプの間の接触面積や接触圧を大きくすることは困難であり、これら部材間の抵抗が増大する恐れがある。
【0025】
上記不都合を回避する手法として、第7の特徴に記載した発明がある。
即ち、本発明のガス分解素子は、上記第3〜第6の何れか1つの特徴に加えて、上記第1の電極層の内周面に、導電性の金属メッシュシートを配置すると共に、この金属メッシュシートを上記ガス誘導パイプに接続することにより、上記第1の電極層と上記ガス誘導パイプとを導通させたことを第7の特徴としている。
【0026】
上記第7の特徴によれば、上記第3〜第6の何れか1つの特徴による作用、効果に加えて、上記第1の電極層の内周面に、導電性のメッシュシートを配置すると共に、この金属メッシュシートを上記ガス誘導パイプに接続することにより、上記第1の電極層と上記ガス誘導パイプとを導通させることができる。
金属メッシュシートを上記第1の電極層に接触状態で保持することにより、上記電極層と金属メッシュシート間の抵抗を低減することができる。
また、この金属メッシュシートを上記ガス誘導パイプに直接接続することにより、集電体との接触抵抗を低減させることができる。例えば上記第1の電極層の内周面の全面に接触するように1枚の金属メッシュシートを配置することができる。
また上記構成を採用することにより、上記ガス誘導パイプを利用して、集電体の面積を大きくとることが可能となり、ガス分解効率をより高めることができる。
【0027】
更に上記多孔質金属体を、上記金属メッシュシートの内側と上記ガス誘導パイプとの間に挿入して、上記金属メッシュシートを内側からバックアップすることにより、上記第1の電極層と集電体との間の接触抵抗を低減させることができる。また、この構成によって、(1)Niメッシュシート/多孔質金属体/ガス誘導パイプ、という導電路と、(2)Niメッシュシート/ガス誘導パイプ、という2つの導電経路が形成される。この結果、アノード側集電体の接触抵抗をより低減させることができると共に、圧力損失の増大を防止することが可能となる。
【0028】
上記金属メッシュシートの形態は特に限定されることはない。例えば上記金属メッシュシートを筒状に形成して、上記第1の電極層の全面を覆うように配置することができる。
上記金属メッシュシートの外観構成も特に限定されることはない。例えば織布、不織布、打ち抜きシート等を採用できる。柔軟性、孔径の均一性等を確保するには、織布を採用するのが好ましい。
金属メッシュシートを構成する金属材料も特に限定されることはない。例えばNi、Ni−Fe、Ni−Co、Ni−Cr、Ni−W等の材料から形成された金属メッシュシートを採用するのが好ましい。また表層に銀メッキ層等が形成された金属メッシュシートを採用することもできる。また触媒反応を期待する場合には、Ni−W等の材料から形成された金属メッシュシートを採用するのが好ましい。
【0029】
本発明のガス分解素子は、上記第1〜第7の何れか1つの特徴に加えて、上記第1の電極層表面に多孔質導電層を設けたことを第8の特徴としている。
上記第8の特徴によれば、上記第1〜第7の何れか1つの特徴による作用、効果に加えて、上記導電層を第1の電極層の表面に形成することにより、第1の電極層と上記メッシュシート間の導電性を全域において確保することができる。また上記導電層が多孔質であるため、各電極層に対するガスの接触を妨げることもない。
金属メッシュシートを第1の電極層の内周面の全面に均一に接触させるのは困難な場合がある。即ち、第1の電極層の表面と上記金属メッシュシート間の接触圧力が異なったり、一部が第1の電極層の表面から浮き上がったりすることがあるからである。第1の電極層表面に多孔質導電層を設けることにより、そのようなことが防止できる。
【0030】
上記多孔質導電層として、多孔質の導電性ペースト塗布層を設けることができる。上記第1の電極層の内周面に多孔質の導電性ペースト塗布層を設けることにより、上記第1の電極層と上記金属メッシュシートとが、上記導電性ペースト塗布層を介して確実に導通され、上記第1の電極層と金属メッシュシートとの間の電気抵抗も低減される。
即ち、上記導電性ペースト塗布層を設けることにより、金属メッシュシートの表面の一部を上記導電性ペースト塗布層に埋め込むようにして、上記金属メッシュシートと上記第1の電極層との間を確実に導通させることができる。このため、これらの間の接触抵抗を大幅に低減させることができる。また上記金属メッシュシートの全面を上記第1の電極層に対して均一に接触させることができる。このため、上記第1の電極層と上記金属メッシュシート間の電気抵抗が部分的に増大することはない。
【0031】
また上記導電性ペースト塗布層を、第1の電極層の全面に塗布することにより、上記金属メッシュシートが上記導電性ペースト塗布層から離間した場合でも、第1の電極層表面における集電を確保することが可能となる。このため、温度等の作用によって上記金属メッシュシートの一部が、上記導電性ペースト塗布層から離間した場合であっても、集電効果が低下することはない。しかも上記導電性ペースト塗布層は多孔質であるため、上記第1の電極層にガスが接触することを妨げることもない。従って上記第1の電極層の全領域において電気化学反応を均一に生じさせてガス分解反応の効率を大幅に向上させることが可能となり、ガス分解の処理能力を増大させることができる。
【0032】
上記多孔質の導電性ペースト塗布層は、種々の導電性粒子を含むペーストから形成することができる。例えば上記多孔質の導電性ペースト塗布層を、銀粒子を含むペーストから形成することができる。銀粒子は導電性が高く、上記第1の電極層の集電体としての電気抵抗を低下させて、ガス分解の処理能力を向上させることができる。また安定性が良く、酸化することもほとんどない。
【0033】
また本発明のガス分解素子は、上記第3〜第8の何れか1つの特徴に加えて、上記筒状MEAの一端部は、上記固体電解質層を一体延出させて形成された底部によって封止されていることを第9の特徴としている。
上記第9の特徴によれば、上記第3〜第8の何れか1つの特徴による作用、効果に加えて、固体電解質層を予め有底の筒状に形成しておくことで、一端部が封止された筒状MEAをごく簡単に構成することができる。よって、ガス分解素子でのガス流路を容易に反転させることができる。
【0034】
また本発明のガス分解素子は、上記第3〜第8の何れか1つの特徴に加えて、上記筒状MEAの一端部は、封止部材を筒状MEAの端部に嵌合させて封止されていることを第10の特徴としている。
上記第10の特徴によれば、上記第3〜第8の何れか1つの特徴による作用、効果に加えて、別体の封止部材を嵌合させて筒状MEAの一端部を封止するようにしているので、筒状MEAの固体電解質層は筒状のまま用いることができ、筒状MEAの製作が容易である。
【0035】
また本発明のガス分解素子は、上記第1〜第10の何れか1つの特徴に加えて、上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層が、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックとを含む焼成体であることを第11の特徴としている。
ここで金属粒連鎖体とは、金属粒が連なってできた数珠状の細長い金属体をいう。
金属粒連鎖体は、Ni、Fe含有Ni、若しくはNi、Fe含有Niに微量Tiを含むものがよい。Niなどは表面酸化された状態では、その金属粒連鎖体の表面が酸化されており、中身(表層の内側の部分)は酸化されずに金属の導電性を保持している。
このため、例えば固体電解質層内を移動するイオンが陰イオンの場合(陽イオンの場合もある)、次のような作用効果が生じる。
【0036】
(A1)金属粒連鎖体を第1の電極層(アノード)に含有させた場合、第1の電極層(アノード)において、固体電解質層から移動してくる陰イオンと、第1の電極層(アノード)の外部から第1の電極層(アノード)へと導かれる気体中のガス分子との化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、且つ陰イオンを参加させて第1の電極層(アノード)での化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、その化学反応の結果、生じる電子の導電性を、金属粒連鎖体の金属部分で確保することができる。この結果、第1の電極層(アノード)における電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。金属粒連鎖体を第1の電極層(アノード)に含有させた場合、第1の電極層(アノード)において、陽イオン、例えばプロトンを発生させて、固体電解質層中を第2の電極層(カソード)へと陽イオンを移動させ、上記の電荷による促進作用を、同様に得ることができる。
ただし、金属粒連鎖体の酸化層については、使用前は焼成処理によって確実に形成されているが、使用中に還元反応によって酸化層がなくなることが多い。酸化層がなくなっても、上記の触媒作用は減ずることはあってもなくなることはない。特にFeやTiを含有させたNiは、酸化層がなくても触媒作用は高い。
(A2)金属粒連鎖体を第2の電極層(カソード)に含有させた場合、第2の電極層(カソード)において、第2の電極層(カソード)の外部から第2の電極層(カソード)へと導かれる気体中のガス分子の化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、且つ外部回路からの電子の導電性を向上させて、当該電子を参加させて第2の電極層(カソード)での化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、当該分子から効率よく陰イオンを生じて、固体電解質層へと送り出すことができる。(A1)と同様に、(A2)の場合、固体電解質層中を移動してきた陽イオンと、外部回路を流れてきた電子と、第2のガスとの電気化学反応を促進することができる。このため、上記第2の電極層(カソード)に含ませる場合と同様に、第2の電極層(カソード)における電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。どのような場合に、金属粒連鎖体を第2の電極層(カソード)に含ませるかは、分解対象のガスによって変わる。
(A3)金属粒連鎖体を第1の電極層(アノード)及び第2の電極層(カソード)に含有させた場合は、上記(A1)及び(A2)の効果を得ることができる。
【0037】
上記の電気化学反応は、イオンの固体電解質層を移動する速度または移動時間で律速される場合が多い。イオンの移動速度を大きくするために、上記のガス分解素子は、加熱機器、例えばヒータを備え、高温、例えば600℃〜1000℃にするのが普通である。高温にすることで、イオン移動速度だけでなく、電極層での電荷授受を伴う化学反応も促進される。
【0038】
固体電解質層を移動するイオンが陰イオンの場合は、上述のように、第2の電極層(カソード)での化学反応によって発生し、供給される。第2の電極層(カソード)において導入された流体中の分子と電子とが反応して陰イオンが生成する。生成した陰イオンは、固体電解質層中を第1の電極層(アノード)へと移動する。第2の電極層(カソード)での反応に参加する電子は、第1の電極層(アノード)と第2の電極層(カソード)とを連絡する外部回路(蓄電器、電源、電力消費機器を含む)から入ってくる。固体電解質層を移動するイオンが陽イオンの場合は、第1の電極層(アノード)での電気化学反応によって発生して固体電解質層中を第2の電極層(カソード)へと移動する。電子は第1の電極層(アノード)で発生して外部回路を第2の電極層(カソード)へと流れて第2の電極層(カソード)での電気化学反応に参加する。上記電気化学反応は、燃料電池としての発電反応であってもよいし、または電気分解反応であってもよい。
【0039】
また本発明のガス分解素子は、上記第1〜第11の何れか1つの特徴に加えて、上記固体電解質層が、酸素イオン導電性又はプロトン導電性を有することを第12の特徴としている。
上記第12の特徴によれば、上記第1〜第11の何れか1つの特徴による作用、効果に加えて、酸素イオン導電性の固体電解質層を用いた場合、例えば第2の電極層(カソード)で電子と酸素分子とを反応させて酸素イオンを生じさせ、これを固体電解質層を移動させて第1の電極層(アノード)にて所定の電気化学反応を起こさせることができる。この場合、酸素イオンの固体電解質層中の移動速度はプロトンと比べて大きくないので、実用レベルの分解容量を得るには、温度を十分高める、及び/又は固体電解質層の厚みを十分薄くする、などの対策が必要である。
一方、プロトン導電性の固体電解質層は、バリウムジルコネート(BaZrO3)などが知られている。プロトン導電性の固体電解質層を用いた場合、例えば第1の電極層(アノード)でアンモニアを分解してプロトン、窒素分子及び電子を生じさせて、プロトンを固体電解質層を経て第2の電極層(カソード)へと移動させ、第2の電極層(カソード)において酸素と反応させて水(H2O)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいため固体電解質層中の移動速度は大きいので、加熱温度を低くして実用レベルの分解容量を得ることができる。
【0040】
また例えば筒状MEAを用いてアンモニア分解を行うとき、酸素イオン導電性の固体電解質層では、水を筒状MEAの第1の電極層(アノード)で生成する反応となる。水は、温度が低い出口付近では水滴を形成して圧力損失の原因となる。これに対して、プロトン導電性の固体電解質層を用いると、プロトンと酸素分子と電子とが、第2の電極層(カソード)(外側)で生成する。外側はほぼ開放されているので、水滴となって付着しても圧力損失を生じにくい。
【0041】
また本発明の発電装置は、上記第1〜第12の何れか1つの特徴に加えて、上記ガス分解素子は、加えて、素子全体を加熱するためのヒータを備えると共に、上記第1のガス流路に導かれる上記第1のガスを予め通過させて予備加熱を行うための予備加熱用配管を備えていることを第13の特徴としている。
【0042】
上記第13の特徴によれば、上記第1〜第12の何れか1つの特徴による作用、効果に加えて、分解に供せられる第1のガスは、ガス分解素子の第1のガス流路に導かれるのに先立って、予備加熱用配管に導かれ、そこでヒータにより予備加熱される。そして予備加熱がなされた第1のガスが第1のガス流路に導かれるので、第1のガス流路での所定温度への加熱が効率よく速やかに行われる。
よって、第1のガスの分解効率を向上させることができる。また第1のガスの流量を増加させて処理能力を増加させることができる。またガス分解素子を、その長さにおいてよりコンパクトなものとすることが可能となる。
【0043】
また本発明の発電装置は、上記第1〜第13の何れか1つの特徴に記載のガス分解素子を備えることを第14の特徴としている。
第14の特徴による発電装置によれば、第1〜第13の何れか1つの特徴に記載のガス分解素子が有する作用効果を発揮させたガス分解を用いた発電、即ち燃料電池を得ることができる。
【0044】
ところで、分解の対象となるガスも特に限定されることはない。例えば上記の何れかのガス分解素子を備え、第1の電極層に供給される第1のガスとしてアンモニアを含むガスを採用し、第2の電極層に供給される第2のガスとして酸素分子を含むガスを採用することができる。これによって、第2の電極層(カソード)で発生させた酸素イオンを第1の電極層(アノード)に移動させて、第1の電極層においてアンモニアと酸素イオンとを、金属粒連鎖体による触媒作用、及びイオンによる促進作用のもとで反応させて、更に反応の結果生じる電子を速やかに移動させることができる。
【0045】
本発明に係るガス分解素子、発電装置は、排ガス等に含まれる有害ガスの分解、無害化を図り、また燃料ガスを用いた燃料電池や、ガス分解を利用した独自の電気化学反応装置の分野で、装置の小型化、高効率化、低いランニングコスト等を得ることに貢献できる。
【発明の効果】
【0046】
ランニングコストが低く、またガスの分解効率の高いガス分解素子、そのガス分解素子を備える発電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガス分解素子の先端側(封止側)を示す縦断面図である。
【図2】図1におけるI−I線に沿う断面構成図である。
【図3】図1のガス分解素子の電気配線系統を示す図である。
【図4】図1に示すガス分解素子の第1のガスの出入口側の縦断面構成図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るガス分解素子の先端側(封止側)の変形例を示す縦断面構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るガス分解素子を示し、図2が単数からなるガス分解素子の断面構成図であるのに対して、複数からなるガス分解素子群としてのガス分解素子の断面構成図を示す。
【図7】本発明の第1、第2の実施形態に係るガス分解素子に用いられるガス分解促進手段の具体的な配置を説明する断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本願発明の実施形態を、図を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガス分解素子10の縦断面図である。また図2は、図1におけるI−I線に沿う断面図である。なお本実施形態では、特に分解に供される第1のガスをアンモニア含有ガスとした場合のガス分解素子について説明する。
【0049】
ガス分解素子10は、円筒状の固体電解質層1の内面を覆うように第1の電極層(アノード)2が設けられると共に、外面を覆うように第2の電極層(カソード)5が設けられた筒状MEA7(1、2、5)を備えて構成されている。第1の電極層(アノード)2は燃料極、また第2の電極層(カソード)5は空気極と呼ばれることがある。
本実施形態では上記したように、上記筒状MEA7(1、2、5)の内側には第1のガスとしてアンモニア含有ガスが流される。また筒状MEA7(1、2、5)の外側には、第2のガスとして酸素含有ガスである空気が流される。そして上記第1のガスが流れる筒状MEA7(1、2、5)の内側の流路を第1のガス流路とする。また上記第2のガスが流れる筒状MEA7(1、2、5)の外側の流路を第2のガス流路とする。
本実施形態に係る上記筒状MEA7(1、2、5)は、図1に示すように、直円筒状に形成されている。筒状MEA7(1、2、5)の内径は、例えば20mm程度であるが、適用する装置に応じて寸法等を設定できる。
【0050】
本実施形態のガス分解素子10では、上記筒状MEA7(1、2、5)の一端部が封止されると共に、他端部側から上記したステンレス、銅、ニッケル、インコネル等のNiをベースとして鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等を含有させた合金、即ち600〜1000℃に対する耐熱性と、アンモニアガス耐蝕性とを備えた材料で構成されるガス誘導パイプ11kが挿入されている。上記一端部は、上記筒状MEA7(1、2、5)の固体電解質層1及び内側電極層2を延出させて、底部を設けることにより封止部44が設けられている。
【0051】
上記ガス誘導パイプ11kは、上記筒状MEA7(1、2、5)の他端部側から上記一端部である封止部44側に向けて挿入されており、上記筒状MEA7の第1の電極層2の内周面と上記ガス誘導パイプ11kの外周面との間に、筒状流路43が形成されるように設定されている。この筒状流路43には、多孔質金属体11sが挿入されており、上記ガス誘導パイプ11kを中央部に保持しつつ、上記ガス誘導パイプ11kの外周面と上記第1の電極層2の内周面との間に、筒状流路43が形成される構成としている。
【0052】
本実施形態に係るガス分解素子10においては、上記ガス誘導パイプ11kの内部空間42内を上記封止部44に向けて第1のガスを流し、上記封止部44の近傍において上記ガス誘導パイプ11k内から第1のガスを流出させると共に反転させ、更に上記筒状流路43を上記内部空間42での流れとは反対方向に向けて第1のガスを流すように構成している。
上記内部空間42と筒状流路43とで上記第1のガス流路を構成する。
【0053】
上記構成を採用することにより、上記ガスは、上記筒状MEA7の内側の空間において、筒状MEA7の筒長さの約2倍の距離を第1のガス流路とすることができる。このため、上記ガス誘導パイプ11k内で充分に加熱され、温度が上昇された状態で、上記筒状MEA7に作用されることになる。従って第1のガスの分解効率を高めることが可能となり、ガスの流量を増加させてガスの処理量を増加させることが可能となる。
【0054】
本発明の実施形態では、上記筒状MEA7の内側に構成される第1のガス流路にガス分解促進手段71を配置している。このガス分解促進手段71は、第1のガス流路を流れてくる第1のガスと接触することで、第1のガスの分解を促進する手段である。
上記ガス分解促進手段71としては、具体的にはNi−YSZを表面に担持したアルミナ筒を用いている。
またこのNi−YSZを表面に担持したアルミナ筒からなるガス分解促進手段71は、上記第1のガス流路のうち、上記ガス誘導パイプ11kの少なくとも1部の内空、即ち上記内部空間42の少なくとも1部に配置している。Ni−YSZは、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの混合体であるサーメットである。
またガス分解促進手段71は、第1のガスの流れに対して平行となるように配置している。
ガス分解促進手段7をアルミナ筒で構成することにより、第1のガス流路において第1のガスをアルミナ筒の多孔質の筒内外表面において十分なる接触面積をもって接触させることができる。これにより、アルミナ筒の有する熱を第1のガスに与えて、第1のガスの温度上昇を図ることができる。またガス分解促進手段71が筒状であり、且つ第1のガス流路(内部空間42)での第1のガスの流れに平行に配置されているので、第1のガスの流れに対する圧損を小さくすることができる。
またNiの凝集をYSZが阻害するため、触媒の寿命も長くすることが可能である。
【0055】
上記Ni−YSZの担持はアルミナ筒の内側表面及び外側表面に施すのが、第1のガスとの接触面積を増大する上で好ましい。またNi−YSZの担持はガス誘導パイプ11kの内側表面、外側表面に施すのが好ましい。
上記Ni−YSZの担持は必ずしもアルミナ筒である必要はない。筒状以外の表面積の大きいフィンを備えたものを用いることが可能である。
前記アルミナ筒は、耐熱性、耐食性、多孔性に優れており、Ni−YSZを担持させるのによいが、他の耐熱性、耐食性に優れた金属やセラミックスの筒でも可能である。
また前記Ni−YSZは、アンモニアの分解を助け、電子の移動が可能な金属材料(Ni、Fe等)或いはその複合材料(NiFe、NiCu、NiCr等)と耐熱耐腐食材料(YSZ、アルミナ、シリカ等)を用いることが可能である。またPtやRu等の貴金属や、K、Li、Na、Ca等のアルカリ、アルカリ土類、希土類金属を添加してもよい。
【0056】
図7を参照して、上記ガス誘導パイプ11kの内空にNi−YSZを表面に担持したアルミナ筒(ガス分解促進手段71)を配置する場合、ガス分解促進手段71である複数本のアルミナ筒をガス誘導パイプ11kの内空に稠密に配置することが好ましい。アルミナ筒を稠密に配置することで、第1のガスとの接触面積を十分に確保して、ガスの分解効率を最大限に発揮させることができる。勿論、稠密状態とすることでアルミナ筒の自由な移動を抑制して、位置の安定性を確保することができる。
また上記ガス誘導パイプ11kの内空に、ガス分解促進手段71であるNi−YSZを表面に担持したアルミナ筒を配置する場合、ガス誘導パイプ11kに予め位置決め部11k1を構成しておくことができる。位置決め部11k1は、例えばガス誘導パイプ11kの内径を内向きの凸条となるように絞って構成することができる。
上記位置決め部11k1を設けることで、ガス分解促進手段71であるアルミナ筒の所定位置への挿入、配置、固定作業を容易で簡単且つ確実に行える。固定はセラミックス接着剤やNiペーストで接着固定をして行うことができる。
【0057】
上記ガス誘導パイプ11kの内空である内部空間42に配置されるNi−YSZ担持アルミナ筒(ガス分解促進手段71)の筒径、長さ、数本は特に限定されるものではない。が、例えばガス誘導パイプ11kの径を8〜10mmとする場合、アルミナ筒の径を2〜3mmとすることができる。
筒の径、長さ、本数等は、ガス誘導パイプ11kの径、長さ等を考慮して、第1のガスとの接触面積の増大による反応面積の増大の観点と、第1のガスの圧損の増加との関係が最良となるようにすることになる。
【0058】
上記ガス誘導パイプ11kは、SUS等の導電性の金属で形成されており、アノード側集電体11の構成要素として機能するように構成されている。一方、第2の電極層(カソード)5の外面に巻き付くようにカソード側集電体12が配置されている。
【0059】
上記アノード側集電体11は、銀ペースト塗布層11gとNiメッシュシート11aと多孔質金属体11sと上記ガス誘導パイプ11kとを備えて構成されている。
上記Niメッシュシート11aは、銀ペースト塗布層11gを介して、筒状MEA7の内面側の第1の電極層2(アノード)に接触して、多孔質金属体11sからガス誘導パイプ11kへと導電するように構成されている。また上記Niメッシュシート11aの先端部Wは、上記封止部44の近傍において、上記ガス誘導パイプ11kの外周部にバンド状の接合部材Wを介して巻き付けるように導電接続されている。このため、Niメッシュシート11aは、並列的に、(1)Niメッシュシート11a/多孔質金属体11s/ガス誘導パイプ11k、という導電路と、(2)Niメッシュシート11a/ガス誘導パイプ11k、という導電路とを形成している。この結果、筒状MEA7の内面に位置して、低い電気抵抗を維持しながら、圧力損失の増大を防止することが可能となる。
【0060】
多孔質金属体11sは、第1のガスの圧力損失を低減させるために、気孔率を高くできる金属メッキ体、例えばセルメット(登録商標:住友電気工業株式会社)を用いるのが好ましい。第1の電極層(アノード)2とアノード側集電体11との間の電気抵抗を低減させるために、上記銀ペースト塗布層11gとNiメッシュシート11aとが配置されている。
【0061】
上記カソード側集電体12は、銀ペースト塗布配線12gとNiメッシュシート12aとを備えて構成されている。
本実施形態では、Niメッシュシート12aが、筒状MEA7の外面に接触して、外部配線12eへと導電している。
銀ペースト塗布配線12gは、第2の電極層(カソード)5において、第2のガスである酸素含有ガス(空気)内の酸素を酸素イオンに分解するのを促進する触媒として作用する銀を含み、且つカソード側集電体12の電気抵抗を低くすることに寄与する。
銀ペースト塗布配線12gは、酸素分子を通しながら銀粒子が第2の電極層(カソード)5に接触して、第2の電極層(カソード)5内に含まれる銀粒子と同等の触媒作用を発現する。しかも、第2の電極層(カソード)5に含ませるより安価である。
【0062】
上記筒状MEA7(1、2、5)の外側には、上記第2のガスを流すためのスペースSが設けられている。スペースSの外側は外装体51で筒状MEA7全体が被覆されている。そして外装体51の外側にはヒータ52が配置されている。
上記スペースSには予備加熱用配管53が上記外装体51を貫通して配されている。
【0063】
上記ヒータ52は素子全体を加熱するためのものである。このヒータ52によってガス分解素子10の全体が第1のガスの分解に適した温度に加熱される。
上記予備加熱用配管53は、上記第1のガスを予熱するための配管である。第1のガスが、上記筒状MEA7内に導入される前に予備加熱用配管53に通すことで、第1のガスを予熱し、温度の低い第1のガスがいきなり筒状MEA7に導入されることにより反応不足となるのを解消する。これによってガス分解素子10の分解性能の向上とコンパクト化を図ることが可能となる。
予備加熱用配管53は、第1のガス源からの配管との接続端53aを含み、下流側はガス導入管45と接続される構成とされている。
予備加熱用配管53としては、耐熱性の管、例えばNi管、インコネル管、その他の金属製やセラミックス性の耐熱、耐腐食性管を用いることができる。
なお、予備加熱用配管53は、図1には1本だけを図示しているが、複数本を配管するようにしてもよい。
前記外装体51は耐熱材料で構成されることになるが、耐火物材料で厚肉に構成し、ヒータ52を埋設したものとしてもよい。また厚肉とした耐火物材料からなる外装体51の肉厚内に予備加熱用配管53を埋設、貫通させた構成とすることもできる。
本来的には上記筒状MEA7を加熱するヒータ52を兼用し、このヒータ52によって予備加熱用配管53が加熱されることで、分解に供される上記第1のガスが良好に予備加熱される。
【0064】
図3は、固体電解質層1が酸素イオン導電性である場合における、図1のガス分解素子10の電気配線系統を示す図である。アンモニアを含む第1のガスは、上記予備加熱用配管53を経た後、上記ガス誘導パイプ11kを介して、気密性を厳格にした筒状MEA7の内筒の最奥部、即ち上記封止部44の近傍まで誘導される。上記筒状MEA7は、ヒータ52によってその全体が800℃程度に加熱されており、上記第1のガスは、上記ガス誘導パイプ11k内を流動する間に、昇温させられる。この間、上記第1のガス中のアンモニアが、上記ガス誘導パイプ11k内における加熱によって2NH→N+3Hのように分解される。
【0065】
筒状MEA7を用いた場合、内面側に分解ガスを含む第1のガスを通すと共に、上記ガス誘導パイプ11kを保持するため、多孔質金属体11sが用いられる。圧力損失を低くする点から、上述のように、上記筒状流路43内に配置される多孔質金属体11sとして、多孔質金属めっき体、例えば上述したセルメットを用いることができる。アンモニアを含む第1のガスは、上記第1のガス流路を内部空間42から筒状流路43内へと流れ、多孔質金属体11s、Niメッシュシート11a、及び多孔質の銀ペースト塗布層11gの空隙を通りながら、第1の電極層(アノード)2と接触して、下記のアンモニア分解反応をする。
【0066】
酸素イオンO2−は、第2の電極層(カソード)5での酸素ガス分解反応によって生じ、固体電解質層1を通って第1の電極層(アノード)2に到達したものである。即ち、陰イオンである酸素イオンが固体電解質層1を移動する場合の電気化学反応である。
【0067】
第1の電極層(アノード)2では、以下の反応が生じている。
(アノード反応):2NH+3O2−→N+3HO+6e
より詳しくは、一部のアンモニアが、2NH→N+3Hの反応を生じ、この3Hが酸素イオン3O2−と反応して3HOを生成する。
第2の電極層(カソード)5には空気、特に酸素ガスが、スペースSを通るように導入され、第2の電極層(カソード)5において酸素分子から分解した酸素イオンを第1の電極層(アノード)2に向かって固体電解質層1へと送り出す。
【0068】
第2の電極層(カソード)では、以下の反応が生じている。
(カソード反応):O+4e→2O2−
上記の電気化学反応の結果、電力が発生し、第1の電極層(アノード)2と第2の電極層(カソード)5との間に電位差を生じ、カソード側集電体12からアノード側集電体11へと電流Iが流れる。カソード側集電体12とアノード側集電体11との間に負荷、例えばこのガス分解素子10を加熱するためのヒータ52を接続しておけば、そのための電力を供給することができる。ヒータ52への上記電力の供給は、部分的であってもよい。多くの場合、自家発電の供給量はヒータ52全体に要する電力の半分以下である。
【0069】
上記ガス分解素子10では、筒状MEA7の内面側の第1の電極層(アノード)2においては、アノード側集電体11の電気抵抗を低くしながら、ここを通る第1のガスの圧力損失を低くすることが重要である。また第2の電極層(カソード)5側においては、第2のガスである空気と第2の電極層(カソード)5との接触箇所を高密度化し、カソード側集電体12の低抵抗化するのが重要である。
【0070】
上記は、陰イオンである酸素イオンが固体電解質層1を移動する電気化学反応であるが、固体電解質層1に、例えばバリウムジルコネート(BaZrO)を用いてプロトンを第1の電極層(アノード)2で発生させて固体電解質層1中を第2の電極層(カソード)5へと移動させる反応も、本発明の望ましい一つの形態である。
【0071】
プロトン導電性の固体電解質層1を用いると、例えば第1のガス中のアンモニアを分解する場合、第1の電極層(アノード)2でアンモニアを分解してプロトン、窒素分子及び電子を生じさせて、プロトンを固体電解質層1を経て第2の電極層(カソード)5へと移動させ、第2の電極層(カソード)5において酸素と反応させて水(HO)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいので、固体電解質層1中の移動速度は大きい。このため加熱温度を低くしながら実用レベルの分解容量を得ることができる。固体電解質層1の厚みも、強度を確保できる厚みにすることができる。
【0072】
図4は、上記ガス誘導パイプ11kと外部配線11eとの接続形態、及び筒状MEA7とガス導入管45及び排気管65との接続形態を示す図である。これらの接続はフッ素樹脂製の管継手30を介して行われている。
【0073】
上記管継手30は、管継手30の本体部31から固体電解質層1へと延びる締結部31bの内面側に収納されたOリング33が、焼成体であるセラミックスの固体電解質層1の外面に当接された状態で接続される。管継手30の締結部31bは、外径がテーパ状に形成されており、そこにねじが切られ、そのねじに環状ねじ32が螺合される。環状ねじ32の外径が大きくなる方向へと螺合することで、締結部31bは、外面から締め付けられ、Oリング33による気密性を調節することができる。
【0074】
上記管継手30の内側には、上記ガス誘導パイプ11kの基端部11dに気密性をもって嵌合できる嵌合部36を備えている。これによって、ガス誘導パイプ11kと管継手30とが連結され、第1のガス通路が形成される。
【0075】
管継手30には、上記第1のガスのガス導入管45との接続を行うためのガス導入部31aが設けられている。ガス導入管45の端部を、上記管継手30のガス導入部31aの外周に嵌め合わせ、締結具47で締結することで、気密性のよい接続を得ることができる。第1のガスはガス導入管45からガス導入部31aを経てガス誘導パイプ11k内に流れ込む。ガス誘導パイプ11k内に流れ込んだ第1のガスは、内部空間42を通って上記筒状MEA7の封止部44の近傍まで流動させられる。
【0076】
また管継手30には、排気管65との接続を行うためのガス排出部31cが設けられている。排気管65の端部を、上記管継手30のガス排出部31cの外周に嵌め合わせ、締結具67によって締結することで、気密性のよい接続を得ることができる。筒状MEA7を経た第1のガスは、管継手30内の排気空間35、ガス排出部31cを通って排気管65に排出される。
【0077】
以上のようにして上記管継手30を採用することにより、分解前の第1のガスと分解後の第1のガスとが混ざり合うことなく、且つ上記筒状MEA7の同じ片側の位置から第1のガスを出入りさせることが可能となる。
【0078】
管継手30の本体部31には、気密性を保ってその本体部31を貫通する導電貫通部37cが設けられ、気密性を保つために封止樹脂38等が塗られている。この導電貫通部37cは、円柱棒で、外部配線11eと確実な導電接続を行うためにナット39を螺合させるねじを切っておくのがよい。導電貫通部37cの管内先端には導電線37bが接合されており、この導電線37bの他端部37aが上記ガス誘導パイプ11kの外周部に、環状の締め付け具34を介して接合されている。
【0079】
上記構成を採用することにより、上記ガス誘導パイプ11kと外部配線11eの接続抵抗を低減させることができる。
【0080】
一方、カソード側集電体12のNiメッシュシート12aの端部の外周に、外部配線12eを周回させることで、外部への引き出しを行うことができる。第2の電極層(カソード)5は、筒状MEA7の外面側に位置するので、アノード側集電体11から外部への引き出しほど困難ではない。
【0081】
図4に示すように、アノード側集電体11と外部配線11eとの接続、及び管継手30とガス導入管45及び排気管65との接続を、小さなスペースで行うことができる。しかも上記の2種類の接続は、ヒータ52からの熱流の主流部から外れた位置において、行われている。このため、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂または耐食性樹脂によって、長期間の繰り返し耐久性を確保することも可能となる。
【0082】
本実施形態では、上記第1の電極層(アノード)2の内周部に多孔質導電層として銀ペースト塗布層11gが設けられると共に、Niメッシュシート11aが上記多孔質導電層である銀ペースト塗布層11gを介して上記第1の電極層2に接続されている。
【0083】
塗布して乾燥(焼成)させた後に多孔質になる銀ペーストは市販されており、例えば京都エレックス株式会社製のDD−1240などを用いることができる。銀ペースト塗布層11gを多孔質にすることにより、多くのアンモニア分子NHが、多孔質の気孔中に入って、上記第1の電極層(アノード)2中の触媒に触れてアノード反応が生じやすくなる。
【0084】
ガス分解反応の効率を高めるため、上記銀ペースト塗布層11gの気孔率を、20〜80%に設定するのが好ましい。気孔率が20パーセント以下である場合、ガスを導電性ペースト塗布層内へ導くのが困難になり、効率を高めることができない。一方、気孔率が80%以上になると、充分な導電性を確保するのが困難であると共に、塗布層の強度を確保できない。更に気孔率を40〜60%に設定するのがより好ましい。
【0085】
上記銀ペースト塗布層11gの厚みは、5〜300μmに設定することができる。5μm以下では、Niメッシュシート11aの全域を、銀ペースト塗布層11gに均一に接触させることができず、充分な導電性を確保するのが困難である。一方、300μm以上では、充分な気孔率を有するペースト塗布層を形成するのが困難となる。導電性と気孔率を確保するために、5〜100μmの厚みの銀ペースト塗布層11gを設けるのがより好ましい。
【0086】
上記銀ペースト塗布層11gを形成する手法は特に限定されることはない。筒状MEA7を、銀ペーストを満たした浸漬層に漬けるディッピング法や、筒状MEA7の内面に銀ペーストを噴射する塗布ノズルを挿入する手法等により、上記銀ペースト塗布層11gを形成することができる。
【0087】
また銀ペースト塗布層11gを、多孔質に形成する手法も特に限定されることはない。上述した所要の気孔率を確保するために、所定温度で消失するバインダを所定量配合した銀ペーストを採用できる。またバインダが消失する際の導電性ペースト塗布層の収縮を防止するために、昇華型のバインダを配合するのが好ましい。例えばナフタレン系のバインダを配合した銀ペーストを採用するのが好ましい。
【0088】
上記銀ペースト塗布層11gを設ける範囲も特に限定されることはないが、第1の電極層(アノード)2の全面に銀ペースト塗布層11gを設けるのが好ましい。銀ペースト塗布層11gを第1の電極層(アノード)2の全面に形成することにより、Niメッシュシート12aの一部が上記銀ペースト塗布層11gから離間した場合にも、第1の電極層(アノード)2における集電性能が低下することはなくなる。
【0089】
上記固体電解質層1を構成する粉体材料として、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体酸化物としては、酸素イオン導電性の、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いるのがよい。またプロトン導電性のバリウムジルコネートを用いることもできる。上記各粉体材料は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持することにより焼成することができる。
【0090】
第1の電極層(アノード)2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体と、酸素イオン導電性のセラミックスとを主成分とする焼成体として形成できる。酸素イオン導電性のセラミックスとしては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。
【0091】
上記SSZを採用する場合、平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。焼成工程は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持することにより行うことができる。またSSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とするのが好ましい。表面酸化された金属粒連鎖体と、SSZとの配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。
【0092】
上記金属粒連鎖体の金属は、ニッケル(Ni)またはNiに鉄(Fe)を含むものを採用するのが好ましい。更に好ましくは、チタン(Ti)を2〜10000ppm程度の微量含むものである。
【0093】
金属粒連鎖体は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。第1の電極層(アノード)2に含まれる金属粒連鎖体の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
【0094】
第2の電極層(カソード)5は、酸素イオン導電性のセラミックスを主成分とする焼成体から形成される。この場合の酸素イオン導電性のセラミックスとして、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いることができる。これら粉体材料も、上記と同様の条件で焼成することができる。
【0095】
図5に、本願発明の第1の実施形態に係るガス分解素子の先端側(封止側)の変形例を示す。この変形例では、封止部材60を用いて、上記筒状MEA7の一端部を封止して封止部44を形成したものである。なお、封止部44以外の構成は第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0096】
上記封止部材60は、テフロン(登録商標)樹脂等の耐熱性樹脂で形成されており、上記固体電解質層1の外周部に嵌合しうる側壁部60aと、上記側壁部60aの一方側を封止する底部60bとを備えて構成されている。
【0097】
上記側壁部60aの内面側に収納されたOリング63が、焼成体であるセラミックスの固体電解質層1の外面に当接された状態が維持されるように接続される。上記側壁部60aの縁部側は、外径がテーパ状に形成されており、そこにねじが切られ、そのねじに環状ねじ62が螺合される。環状ねじ62を外径が大きくなる方向へと螺合することで、側壁部60cは、外面から締め付けられ、Oリング63による気密性を調節することができる。
【0098】
上記構成を採用することにより、両端が開口された筒状MEA7を用いて、本願発明に係るガス分解素子10を容易に構成することができる。
【0099】
上述した実施形態は、本願発明をガス除害を目的としたガス分解素子に適用したが、ガス除害を主目的としないガス分解素子や、電気化学反応装置の筒状MEAに適用できる。例えば、燃料電池等を構成する筒状MEAにも用いることができる。
【0100】
上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0101】
図6に本発明の第2の実施形態に係るガス分解素子を示す。図6では複数からなるガス分解素子群としてのガス分解素子を、その断面構成図で示している。
この第2の実施形態に係るガス分解素子100は、複数のガス分解素子10を群として並列立体的配置したものに対して、外装体101とヒータ102と予備加熱用配管103とを共通に設けて、1つのガス分解素子100としたものである。従って本ガス分解素子100には、個々のガス分解素子10毎にはヒータ102及び予備加熱用配管103を備えていない。この点、ヒータ52及び予備加熱用配管53を個々に備えた上記第1の実施形態のガス分解素子10とは異なる。
本実施形態では、外装体101を耐火物材料で構成して、その内部にヒータ102と予備加熱用配管103を埋設した構成としている。
前記予備加熱用配管103は外装体101の内側のスペースSに貫通させて設けてもよい。また予備加熱用配管103は個々のガス分解素子10の配列数に対応して複数本を配管してもよい。ガス分解素子10の数が増すにつれて第1のガスの供給量も増加するので、対応する予備加熱用配管103の数も増加させるのがよい。或いは予備加熱用配管103の管径を大きくしたものを用いるようにしてもよい。
前記ヒータ102は外装体101そのものをヒータとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
ランニングコストが低く、小型であり、更に高い性能を有するガス分解素子、発電装置を提供できる。
【符号の説明】
【0103】
1 固体電解質層
2 第1の電極層(アノード)
5 第2の電極層(カソード)
7 筒状MEA
10 ガス分解素子
11 アノード側集電体
11a Niメッシュシート
11d 基端部
11e 外部配線
11g 銀ペースト塗布層
11k ガス誘導パイプ
11k1 位置決め部
11s 多孔質金属体
12 カソード側集電体
12a Niメッシュシート
12g 銀ペースト塗布配線
12e 外部配線
30 管継手
31 本体部
31a ガス導入部
31b 締結部
31c ガス排出部
32 環状ネジ
33 Oリング
34 締め付け具
35 排気空間
36 嵌合部
37a 他端部
37b 導電線
37c 導電貫通部
38 封止樹脂
39 ナット
42 内部空間
43 筒状流路
44 封止部
45 ガス導入管
46 排気空間
47 締結具
51 外装体
52 ヒータ
53 予備加熱用配管
53a 接続端
60 封止部材
60a 側壁部
60b 底部
60c 側壁部
62 環状ネジ
63 Oリング
65 排気管
67 締結具
71 ガス分解促進手段
100 ガス分解素子
101 外装体
102 ヒータ
103 予備加熱用配管
S スペース
Niメッシュシートの先端部
接合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の固体電解質層と、この固体電解質層の内周部に積層形成された第1の電極層と、この固体電解質層の外周部に積層形成された第2の電極層とを有する筒状MEAを備え、上記筒状MEAの内側には分解に供せられる第1のガスを流す第1のガス流路を備えると共に上記筒状MEAの外側に第2のガスを流す第2のガス流路を備えたガス分解素子であって、
上記筒状MEAの内側に備えられる第1のガス流路に、流れてくる第1のガスと接触して分解を促進するガス分解促進手段を配置してあることを特徴とするガス分解素子。
【請求項2】
上記ガス分解促進手段として、Ni−YSZを表面に担持したアルミナ筒を、上記第1のガスの流れに平行に配置してあることを特徴とする請求項1に記載のガス分解素子。
【請求項3】
上記筒状MEAの一端部を封止する封止部を設けると共に、
上記筒状MEAの他端部側から上記筒状MEAの内部空間に挿入されて、上記筒状MEAの内周面との間に筒状流路を形成するガス誘導パイプを設け、
上記ガス誘導パイプ内を上記封止部に向けて流動する第1のガスを、上記封止部近傍において上記ガス誘導パイプ内から流出させることにより反転流動させ、上記筒状流路を上記誘導パイプ内の流れと反対方向に向けて流動させるようにして上記第1のガス流路を構成し、
且つ上記ガス誘導パイプの少なくとも一部の内空に、上記ガス分解促進手段を配置してあることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス分解素子。
【請求項4】
上記ガス誘導パイプの内空に、Ni−YSZを担持したアルミナ筒を複数本、稠密状態に配置してあることを特徴とする請求項3に記載のガス分解素子。
【請求項5】
上記ガス誘導パイプには、上記Ni−YSZを担持したアルミナ筒の配置位置を決めるための位置決め部を構成してあることを特徴とする請求項4に記載のガス分解素子。
【請求項6】
上記ガス誘導パイプは、導電性材料から形成されていると共に、
上記第1の電極層に導通させられて、上記第1の電極層の集電体を構成している請求項3〜5の何れか1項に記載のガス分解素子。
【請求項7】
上記第1の電極層の内周面に、導電性の金属メッシュシートを配置すると共に、
この金属メッシュシートを上記ガス誘導パイプに接続することにより、上記第1の電極層と上記ガス誘導パイプとを導通させたことを特徴とする請求項3〜6の何れか1項に記載のガス分解素子。
【請求項8】
上記第1の電極層表面に多孔質導電層を設けたことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のガス分解素子。
【請求項9】
上記筒状MEAの一端部は、上記固体電解質層を一体延出させて形成された底部によって封止されていることを特徴とする請求項3〜8の何れか1項に記載のガス分解素子。
【請求項10】
上記筒状MEAの一端部は、封止部材を筒状MEAの端部に嵌合させて封止されていることを特徴とする請求項3〜8の何れか1項に記載のガス分解素子。
【請求項11】
上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層が、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックとを含む焼成体であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のガス分解素子。
【請求項12】
上記固体電解質層が、酸素イオン導電性又はプロトン導電性を有することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のガス分解素子。
【請求項13】
上記ガス分解素子は、加えて、素子全体を加熱するためのヒータを備えると共に、上記第1のガス流路に導かれる上記第1のガスを予め通過させて予備加熱を行うための予備加熱用配管を備えていることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載のガス分解素子。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1項に記載したガス分解素子を備える発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−115807(P2012−115807A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270362(P2010−270362)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】