説明

ガス分解装置、発電装置及びガス分解方法

【課題】筒状MEA及び分解に供せられるガスの温度を高めて分解効率をより高めることができるとともに、加熱に必要な電力を低減させることのできるガス分解装置及びガス分解方法を提供することを課題とする。
【解決手段】筒状の固体電解質層1と、この固体電解質層の内周部に積層形成された第1の電極層2と、上記固体電解質層の外周部に積層形成された第2の電極層5とを有する筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)7を用いて構成されるガス分解装置100であって、上記筒状MEAを収容して加熱する加熱容器51を備えるとともに、ガス分解反応で生成された排気ガス中の燃焼可能ガスを燃焼させて上記加熱容器を補助加熱できる補助加熱装置71を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ガス分解装置、発電装置及びガス分解方法に関する。詳しくは、所定のガスを効率良く分解することができるガス分解装置、このガス分解装置を備える発電装置及びガス分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、アンモニアは農業や工業に不可欠の化合物であるがヒトには有害であるため、水中や大気中のアンモニアを分解する種々の方法が知られている。高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、アンモニア水を噴霧するとともに空気流と接触させて空気中にアンモニアを分離し、次亜臭素酸溶液又は硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また、上記方法と同じプロセスで空気中にアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法(特許文献2)や、アンモニア含有排水を、触媒を用いて、窒素と水に分解する方法が提案されている(特許文献3)。さらに、半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれることが多く、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除去する必要がある。この目的のために、半導体装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。一方、エネルギや薬品等の投入なしに安価なランニングコストで有害ガスを分解するために、リン酸燃料電池でアンモニアを分解する、半導体製造装置等における廃ガス処理の方法も提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開2003−45472号公報
【特許文献5】特許第3238086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような中和剤等の薬液を用いる方法、特許文献2に記載されているような燃焼させる方法、特許文献3に記載されているような触媒を用いた熱分解反応による方法により、アンモニアを分解することはできる。ところが、これらの方法では、薬品や外部エネルギ(燃料)を必要とし、さらには、触媒を定期的に交換する必要があり、ランニングコストが大きくなるという問題がある。
【0005】
また、装置が大掛かりとなり、既存の設備に付加的に設ける場合には、スペースを確保するのが困難である。また、リン酸型燃料電池を、化合物半導体製造の排気中のアンモニアの除去に用いる装置についても、電解質が液体であるため、空気側とアンモニア側との仕切りをコンパクトにできず、装置の小型化が難しいという問題があった。
【0006】
上記問題を解決するため、特許文献5に記載されているように、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層を内外から挟むようにして積層形成された第1の電極層及び第2の電極層とを備えて構成される筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を採用することができる。上記筒状MEAの内側空間を、分解されるガスを含む気体が、軸方向に流動させられる。
【0007】
上記ガスを分解するには、ガスを含む気体の温度をできるだけ高めて、上記筒状MEAの第1の電極層(燃料極)に作用させるのが好ましい。このため、上記筒状MEAを加熱容器内に収容するとともに、この加熱容器を加熱ヒータによって加熱し、上記筒状MEA及びこれに作用させられるガスを加熱するように構成している。
【0008】
ガス分解反応を効率よく行うには、上記加熱容器内の温度を800〜850℃に保持しなければならない。このため、上記加熱ヒータの消費電力が大きくなる。
【0009】
本願発明は、上記加熱容器を加熱するための電力を低減させることのできるガス分解装置及びガス分解方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の請求項1に記載した発明は、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層の内周部に積層形成された第1の電極層と、上記固体電解質層の外周部に積層形成された第2の電極層とを有する筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を用いて構成されるガス分解装置であって、上記筒状MEAを収容して加熱する加熱容器を備えるとともに、ガス分解反応で生成された排気ガス中の燃焼可能ガスを燃焼させて上記加熱容器を補助加熱できる補助加熱装置を備えて構成される。
【0011】
筒状MEAを用いてガスを分解した場合、排気中に燃焼可能ガスが含まれる場合がある。たとえば、上記筒状MEAを用いてアンモニアガスを分解する場合、理論的には、アンモニアは窒素ガスと水に分解されるのであるが、上記筒状MEAによる分解の他、加熱によってアンモニアガスの一部が2NH→N+3Hのように直接分解される。また、メタン等の炭化水素系ガスを分解する場合、一酸化炭素や、二酸化炭素等が発生するため、これらガスを適用することもできる。
【0012】
すなわち、可燃性の水素ガスが加熱された流動路内で生成される。上記水素ガスは、そのまま排気ガスとして排出されることになる。本願発明は、上記水素ガスのような燃焼可能ガスをリサイクルして、上記補助加熱装置で燃焼させ、生じた熱を上記加熱容器に作用させて補助加熱するものである。これにより、上記加熱容器を加熱するヒータの消費電力を低減させることができる。
【0013】
上記燃焼可能ガスを燃焼させる手段は特に限定されることはない。たとえば、請求項2に記載した発明のように、上記補助加熱装置を、上記燃焼可能ガスを燃焼させて上記加熱容器を加熱できるバーナを備えて構成することができる。上記燃焼可能ガスをバーナで燃焼させて燃焼熱を上記加熱容器に加えることにより、加熱容器を加熱するヒータの消費電力を低減させることができる。
【0014】
また、請求項3に記載した発明のように、上記補助加熱装置を、上記燃焼可能ガスを触媒反応によって燃焼させる触媒燃焼装置を備えて構成することができる。
【0015】
触媒反応を利用することにより、燃焼可能ガスの濃度が低い場合等にもガスを燃焼させることができる。たとえば、燃焼触媒として、プラチナ、パラジウム、ニッケル等を用いることにより、生成された燃焼可能ガスを燃焼させることができる。
【0016】
一般に触媒反応を用いてガスを燃焼させる場合、温度が高いほど効率が高い。請求項4に記載した発明は、上記触媒燃焼装置に上記加熱容器の温度を作用させて、上記燃焼可能ガスを燃焼させるように構成したものである。
【0017】
上述したように、本願発明では、上記加熱容器が800℃以上に加熱される。このため、上記加熱容器の温度を上記触媒に作用させることにより、燃焼可能ガスを効率よく燃焼させることが可能となる。加熱容器の温度を触媒に作用させる手法は特に限定されることはない。たとえば、触媒燃焼装置を、上記加熱容器に接触させて設けたり、上記加熱容器内に設けることができる。
【0018】
燃焼可能ガスを燃焼させる場合、ガス分解装置から排出されたガスをそのまま予備加熱装置を構成するバーナや触媒燃焼装置に供給して燃焼させることができる。また、請求項5に記載した発明のように、上記排気ガスから上記燃焼可能ガスを分離するガス分離装置を設け、燃焼可能ガスのみを燃焼させることもできる。たとえば、アンモニアガスを分解する場合、可燃性ガスとして水素を含む排気ガスが排出される。上記排気ガスには、窒素や水蒸気が含まれており、そのまま補助加熱装置で燃焼させると燃焼効率が悪い。このため、水素ガスを注出できるガス分離装置を設けるのが好ましい。
【0019】
上記ガス分離装置の原理及び構成は特に限定されることはない。たとえば、燃焼可能ガスである水素ガスを他のガス成分から分離できるフィルター等を用いて構成することができる。また、活性炭やゼオライト等の吸着材を用いて分離することもできる。
【0020】
さらに、燃焼させることにより有害なガスが発生する場合も考えられる。このような場合、上記有害ガスを発生させることなく燃焼させることができる添加ガス等を加えて燃焼させることもできる。たとえば、有害なNOが発生する場合、アンモニアガスやメタン系ガスを添加して燃焼させることにより、無害化することができる。
【0021】
請求項6に記載した発明は、分解に供せられるガスが、アンモニアを含むガスであり、生成される燃焼可能ガスが水素である場合に本願発明を適用したものである。アンモニアガスに適用した場合の詳細は後に詳説する。
【0022】
上記筒状MEAの形態は特に限定されることはない。両端に開口端部を備え、これら開口端部に突出部をそれぞれ設けて接続部材を接続し、ガスを一方向に流動させるように構成された筒状MEAを採用することができる。
【0023】
また、上記筒状MEAを、下端部を封止して設けられるとともに、上記加熱容器内に配置される封止部と、上記筒状MEAの内部空間に挿入されて、上記筒状MEAの内周面との間に筒状流路を形成するガス誘導パイプを備え、上端部に設けられた上記接続部材を介して上記ガス誘導パイプ内に導入されたガスを、上記封止部に向けて流動させるとともに、上記封止部近傍において上記誘導パイプ内から流出させることにより反転流動させ、上記筒状流路を上記ガス誘導パイプ内の流れと反対方向に向けて流動させながら第1の電極層に作用させて分解し、上記接続部材を介して排出するように構成することができる。
【0024】
上記構成を採用することにより、ガスを出入りさせる接続部材を上端のみに設けることが可能となり、筒状MEAと上記接続部材とのシール構造も1か所に設ければ良い。したがって、接続の信頼性が高まる。また、部品点数や加工工程を低減させることができる。
【0025】
また、上記構成を採用することにより、筒状MEAを流れるガスは、筒状MEAの筒長さの2倍の距離を流動させられることになる。このため、上記ガス誘導パイプ内でガスの温度を上昇させた後に、上記筒状MEAに作用させることができる。したがって、ガスの分解効率を高めることが可能となり、ガスの流量を増加させてガスの処理量を増加させることが可能となる。
【0026】
上記第1の電極層及び上記第2の電極層を構成する材料も特に限定されることはない。たとえば、請求項7に記載した発明のように、上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層を、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒子連鎖体と、イオン導電性セラミックスとを含む焼成体とすることができる。金属粒子連鎖体は、金属粒子が連なってできた数珠状の細長い金属体をいう。Ni、Fe含有Ni、もしくはNi,Fe含有Niに微量Tiを含む金属とするのがよい。Niなどは表面酸化された状態では、その金属粒子連鎖体の表面が酸化されており、中身(表層の内側の部分)は酸化されずに金属の導電性を保持している。
【0027】
このため、たとえば固体電解質層内を移動するイオンが陰イオンの場合(陽イオンの場合もある)、次のような作用効果が生じる。
(A1)金属粒子連鎖体を第1の電極層(アノード)に含有させた場合、第1の電極層(アノード)において、固体電解質層から移動してくる陰イオンと、第1の電極層(アノード)の外部から第1の電極層(アノード)へと導かれる気体中のガス分子との化学反応を、金属粒子連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ陰イオンを参加させて第1の電極層(アノード)での化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、その化学反応の結果、生じる電子の導電性を、金属粒子連鎖体の金属部分で確保することができる。この結果、第1の電極層(アノード)における電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。金属粒子連鎖体を第1の電極層(アノード)に含有させた場合、第1の電極層(アノード)において、陽イオンたとえばプロトンを発生させて固体電解質層中を第2の電極層(カソード)へと陽イオンを移動させ、上記の電荷による促進作用を、同様に得ることができる。
ただし、金属粒子連鎖体の酸化層については、使用前は焼成処理によって確実に形成されているが、使用中に還元反応によって酸化層がなくなることが多い。酸化層がなくなっても、上記の触媒作用は減ずることはあってもなくなることはない。とくにFeやTiを含有させたNiは、酸化層がなくても触媒作用は高い。
(A2)金属粒子連鎖体を第2の電極層(カソード)に含有させた場合、第2の電極層(カソード)において、第2の電極層(カソード)の外部から第2の電極層(カソード)へと導かれる気体中のガス分子の化学反応を、金属粒子連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ外部回路からの電子の導電性を向上させるとともに、当該電子を参加させて第2の電極層(カソード)での化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、当該分子から効率よく陰イオンを生じて、固体電解質層へと送り出すことができる。(A1)と同様に、(A2)の場合、固体電解質層中を移動してきた陽イオンと、外部回路を流れてきた電子と、第2の気体との電気化学反応を促進することができる。このため、上記第1の電極層(アノード)に含ませる場合と同様に、第2の電極層(カソード)における電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。どのような場合に、金属粒子連鎖体を第2の電極層(カソード)に含ませるかは、分解対象のガスによって変わる。
(A3)金属粒子連鎖体を第1の電極層(アノード)及び第2の電極層(カソード)に含有させた場合は、上記(A1)および(A2)の効果を得ることができる。
【0028】
上記の電気化学反応は、イオンの固体電解質層を移動する速度または移動時間で律速される場合が多い。イオンの移動速度を大きくするために、上記のガス分解装置は、上記筒状MEAの全体を収容できる加熱機器たとえばヒータを備え、高温、たとえば600℃〜1000℃にするのが普通である。高温にすることで、イオン移動速度だけでなく、電極層での電荷授受をともなう化学反応も促進される。
【0029】
固体電解質層を移動するイオンが陰イオンの場合は、上述のように、第2の電極層(カソード)での化学反応によって発生し、供給される。第2の電極層(カソード)において導入された流体中の分子と電子とが反応して陰イオンが生成する。生成した陰イオンは、固体電解質層中を第1の電極層(アノード)へと移動する。第2の電極層(カソード)での反応に参加する電子は、第1の電極層(アノード)と第2の電極層(カソード)とを連絡する外部回路(蓄電器、電源、電力消費機器を含む)から入ってくる。固体電解質層を移動するイオンが陽イオンの場合は、第1の電極層(アノード)での電気化学反応によって発生して固体電解質層中を第2の電極層(カソード)へと移動する。電子は、第1の電極層(アノード)で発生して外部回路を第2の電極層(カソード)へと流れて第2の電極層(カソード)での電気化学反応に参加する。上記電気化学反応は、燃料電池としての発電反応であってもよいし、または電気分解反応であってもよい。
【0030】
請求項8に記載した発明のように、固体電解質層を、酸素イオン導電性またはプロトン導電性を有する構成とすることができる。酸素イオン導電性の固体電解質を用いた場合、たとえば第2の電極層(カソード)で電子と酸素分子とを反応させて酸素イオンを生じさせ、この酸素イオンを固体電解質層内で移動させて第1の電極層(アノード)にて所定の電気化学反応を起こさせることができる。この場合、酸素イオンの固体電解質層中の移動速度はプロトンと比べて大きくないので、実用レベルの分解容量を得るには、温度を十分高める、及び/又は固体電解質層の厚みを十分薄くする、などの対策が必要である。
【0031】
一方、プロトン導電性の固体電解質は、バリウムジルコネート(BaZrO)などが知られている。プロトン導電性の固体電解質を用いると、たとえば第1の電極層(アノード)でアンモニアを分解してプロトン、窒素分子および電子を生じさせて、このプロトンを、固体電解質層を経て第2の電極層(カソード)へと移動させ、第2の電極層(カソード)において酸素と反応して水(HO)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいので固体電解質層中の移動速度は大きく、加熱温度を低くして実用レベルの分解容量を得ることができる。
【0032】
請求項9に記載した発明のように、分解対象のガスを燃料とし、上述した本願発明に係るガス分解装置を備えて発電装置を構成することもできる。
【0033】
請求項10に記載した発明は、筒状の固体電解質層と、この固体電解質層の内周部に積層形成された第1の電極層と、上記固体電解質層の外周部に積層形成された第2の電極層とを有する筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を用いて構成されるガス分解装置によって行われるガス分解方法であって、加熱容器内で上記筒状MEAを加熱して上記ガスを分解するとともに、ガス分解反応で生成された排気ガス中の燃焼可能ガスを燃焼させて上記加熱容器を補助加熱するものである。
【発明の効果】
【0034】
筒状MEAを加熱する加熱容器を、ガス分解反応において生じる燃焼可能ガスを用いて補助加熱することにより、上記容器を加熱するための消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本願発明に係るガス分解装置の概略構成を示す図である。
【図2】本願発明の第1の実施形態に係るガス分解装置の加熱容器内の構造を示す縦断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のガス分解装置の電気配線系統を示す図である。
【図5】図1に示すガス分解装置の突出部側(開口端側)の縦断面図である。
【図6】本願発明の第2の実施形態に係るガス分解装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本願発明の実施形態を、図に基づいて具体的に説明する。
図1は、本願発明の第1の実施形態に係るガス分解装置100の概略構成を示す図である。
【0037】
第1の実施形態では、筒状MEA7を備えて構成される複数のガス分解素子10を加熱容器51内に収容してガス分解装置100が構成されている。
【0038】
上記筒状MEA7には、下部を加熱容器51内に収容するとともに、上部を上記加熱容器から上方へ突出させることにより突出部41が設けられている。上記筒状MEA7の上端の開口端部には、接続部材30が設けられており、この接続部材30を介して、上記筒状MEA内へ分解されるガスを含む第1のガスを導入するとともに、分解後の排気ガスを排出するように構成している。
【0039】
上記加熱容器51には、加熱ヒータ52が設けられており、このヒータ52を作動させることにより、上記筒状MEA7及び、これに作用させられる第1及び第2のガスを加熱するように構成している。上記ヒータ52は、図示しない制御装置によって制御されるように構成されており、加熱容器51内を所定の温度を、たとえば、800〜1000℃に保持できるように構成されている。
【0040】
後に説明するように、上記接続部材30から排出された排気ガスには水素ガスが含まれる。本実施形態では、上記接続部材から延出する排気管65を、水素分離装置71に連結するとともに、この水素分離装置71において水素を分離し、ガスバーナ72に供給して燃焼させるように構成している。上記ガスバーナ72は、上記加熱容器51を加熱するように構成されており、上記加熱容器51を加熱する加熱ヒータ52の消費電力を低減させることができるように構成している。
【0041】
図2は、上記ガス分解装置100における加熱容器51内の構造を示す縦断面図である。また図3は、図2におけるIII−III線に沿う断面図である。なお本実施形態では、特に分解に供される第1のガスをアンモニア含有ガスとした場合のガス分解装置について説明する。
【0042】
ガス分解素子10は、円筒状の固体電解質層1の内面を覆うように第1の電極層(アノード)2が設けられると共に、外面を覆うように第2の電極層(カソード)5が設けられた筒状MEA7(1、2、5)を備えて構成されている。第1の電極層(アノード)2は燃料極、また、第2の電極層(カソード)5は空気極と呼ばれることがある。
本実施形態では上記したように、上記筒状MEA7(1、2、5)の内側には第1のガスとしてアンモニア含有ガスが流される。また、筒状MEA7(1、2、5)の外側には、第2のガスとして酸素含有ガスである空気が流される。そして、上記第1のガスが流れる筒状MEA7(1、2、5)の内側の流路を第1のガス流路91とするとともに、上記第2のガスが流れる筒状MEA7(1、2、5)の外側の加熱容器51内の空間Sを第2のガス流路としている。本実施形態に係る上記筒状MEA7(1、2、5)は、図2に示すように、直円筒状に形成されている。筒状MEA7(1、2、5)の内径は、例えば20mm程度であるが、適用する装置に応じて寸法等を設定できる。
【0043】
本実施形態のガス分解素子10では、上記筒状MEA7(1、2、5)の下端部が封止されると共に、上端部からガス誘導パイプ11kが挿入されている。上記ガス誘導パイプ11kは、ステンレス、銅、ニッケル、インコネル等のNiをベースとして、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等を含有させた合金、即ち600〜1000℃に対する耐熱性と、アンモニアガス耐蝕性とを備えた材料で構成される。上記下端部は、上記筒状MEA7(1、2、5)の固体電解質層1及び内側に位置する第1の電極層2を延出させて、底部を設けることにより封止部44が設けられている。
【0044】
上記ガス誘導パイプ11kは、上記筒状MEA7(1、2、5)の上端部から下端部である上記封止部44側に向けて挿入されており、上記筒状MEA7の第1の電極層2の内周面と上記ガス誘導パイプ11kの外周面との間に、筒状流路43が形成されるように設定されている。この筒状流路43には、多孔質金属体11sが挿入されており、上記ガス誘導パイプ11kを中央部に保持しつつ、上記ガス誘導パイプ11kの外周面と上記第1の電極層2の内周面との間に、筒状流路43が形成される構成としている。
【0045】
本実施形態に係るガス分解素子10においては、上記ガス誘導パイプ11kの内部空間42内を上記封止部44に向けて第1のガスを流し、上記封止部44の近傍において上記ガス誘導パイプ11k内から第1のガスを流出させると共に反転させ、更に上記筒状流路43を上記内部空間42での流れとは反対方向に向けて第1のガスを流すように構成している。すなわち、上記内部空間42と筒状流路43とで上記第1のガス流路91が構成される。
【0046】
上記構成を採用することにより、上記筒状MEA7の内側の空間において、筒状MEA7の筒長さの約2倍の距離を第1のガス流路91とすることができる。このため、上記ガス誘導パイプ11k内で充分に加熱され、温度が上昇された状態で、上記筒状MEA7に作用させることができる。従って、第1のガスの分解効率を高めることが可能となり、ガスの流量を増加させてガスの処理量を増加させることが可能となる。
【0047】
また、上記ガス誘導パイプ11kは、ステンレス等の導電性の金属で形成されており、アノード側集電体11の構成要素として機能するように構成されている。一方、第2の電極層(カソード)5の外面に巻き付くようにカソード側集電体12が配置されている。
【0048】
上記アノード側集電体11は、銀ペースト塗布層11gとNiメッシュシート11aと上記多孔質金属体11sと上記ガス誘導パイプ11kとを備えて構成されている。上記Niメッシュシート11aは、銀ペースト塗布層11gを介して、筒状MEA7の内面側の第1の電極層(アノード)2に接触して、多孔質金属体11sからガス誘導パイプ11kへと導電するように構成されている。上記銀ペースト塗布層11gを設けることにより、第1の電極層2とアノード側集電体との間の電気抵抗を低減することができる。また、上記Niメッシュシート11aの先端部Wは、上記封止部44の近傍において、上記ガス誘導パイプ11kの外周部にバンド状の接合部材Wを介して巻き付けるように導電接続されている。このため、Niメッシュシート11aは、並列的に、(1)Niメッシュシート11a/多孔質金属体11s/ガス誘導パイプ11k、という導電路と、(2)Niメッシュシート11a/ガス誘導パイプ11k、という導電路とを形成している。この結果、筒状MEA7の内面に位置して、低い電気抵抗を維持しながら、圧力損失の増大を防止することが可能となる。
【0049】
多孔質金属体11sは、第1のガスの圧力損失を低減させるために、気孔率を高くできる金属メッキ体、例えばセルメット(登録商標:住友電気工業株式会社)を用いるのが好ましい。
【0050】
上記カソード側集電体12は、銀ペースト塗布配線12gとNiメッシュシート12aとを備えて構成されている。本実施形態では、Niメッシュシート12aが、筒状MEA7の外面に接触して、図5に示す外部配線12eへと導電している。銀ペースト塗布配線12gは、第2の電極層(カソード)5において、第2のガスである酸素含有ガス(空気)内の酸素を酸素イオンに分解するのを促進する触媒として作用する銀を含み、且つカソード側集電体12の電気抵抗を低くすることに寄与する。銀ペースト塗布配線12gは、酸素分子を通しながら銀粒子が第2の電極層(カソード)5に接触して、第2の電極層(カソード)5内に含まれる銀粒子と同等の触媒作用を発現する。
【0051】
上記加熱容器51内の空間Sは、上記第2のガスを流すための第2のガス流路90を構成している。上記加熱容器51の外周部には、上記ヒータ52が配置されている。本実施形態では、上記空間Sには予備加熱用配管53が上記加熱容器51を貫通して配置されている。
【0052】
上記ヒータ52はガス分解素子10を加熱するためのものであり、このヒータ52によって、筒状MEA7及びこれに作用させられる第1のガス及び第2のガスが、分解に適した温度に加熱される。上記予備加熱用配管53は、上記第1のガスを予熱するための配管である。第1のガスを上記筒状MEA7内に導入する前に予備加熱用配管53に通すことで、第1のガスを予熱し、温度の低い第1のガスがいきなり筒状MEA7に導入されることにより反応不足となるのを解消する。これによってガス分解素子10の分解性能の向上とコンパクト化を図ることが可能となる。予備加熱用配管53は、第1のガス源からの配管との接続端53aを含み、下流側は図5に示すガス導入管45と接続される。上記予備加熱用配管53としては、耐熱性の管、例えばNi管、インコネル管、その他の金属製やセラミックス製の耐熱及び耐腐食性を有する管を用いることができる。
なお、筒状MEA7及び予備加熱用配管53は、図3には、各ガス分解素子10に対し1本ずつ設けているが、一つの予備加熱配管から複数のガス分解素子10にガスを供給するように構成してもよい。上記筒状MEA7を加熱するヒータ52及び加熱容器51を利用して上記予備加熱用配管53が加熱され、この予備加熱用配管内を流動する上記第1のガスが良好に予備加熱される。
上記加熱容器51は耐熱材料で構成されることになるが、耐火物材料で厚肉に構成し、ヒータ52を埋設したものとしてもよい。また、厚肉とした耐火物材料からなる加熱容器51の肉厚内に予備加熱用配管53を埋設、貫通させた構成とすることもできる。
【0053】
図4は、固体電解質層1が酸素イオン導電性である場合における、各ガス分解素子10の電気配線系統を示す図である。アンモニアを含む第1のガスは、上記予備加熱用配管53を経た後、上記ガス誘導パイプ11kを介して、気密性を厳格にした筒状MEA7の内筒の最奥部、即ち上記封止部44の近傍まで誘導される。上記筒状MEA7は、ヒータ52によってその全体が800℃程度に加熱されており、上記第1のガスは、上記ガス誘導パイプ11k内を流動する間に、昇温させられる。この間、上記第1のガス中のアンモニアが、上記ガス誘導パイプ11k内における加熱によって2NH→N+3Hのように分解される。
【0054】
筒状MEA7を用いた場合、内面側に分解ガスを含む第1のガスを通すと共に、上記ガス誘導パイプ11kを保持するため、多孔質金属体11sが用いられる。圧力損失を低くする点から、上述のように、上記筒状流路43内に配置される多孔質金属体11sとして、多孔質金属めっき体、例えば上述したセルメット(登録商標)を用いることができる。アンモニアを含む第1のガスは、上記第1のガス流路を内部空間42から筒状流路43内へと流れ、多孔質金属体11s、Niメッシュシート11a、及び多孔質の銀ペースト塗布層11gの空隙を通りながら、第1の電極層(アノード)2と接触して、下記のアンモニア分解反応をする。
【0055】
酸素イオンO2−は、第2の電極層(カソード)5での酸素ガス分解反応によって生じ、固体電解質層1を通って第1の電極層(アノード)2に到達したものである。即ち、陰イオンである酸素イオンが固体電解質層1を移動する場合の電気化学反応である。
【0056】
第1の電極層(アノード)2では、以下の反応が生じている。
(アノード反応):2NH+3O2−→N+3HO+6e
より詳しくは、一部のアンモニアが、2NH→N+3Hの反応を生じ、この3Hが酸素イオン3O2−と反応して3HOを生成する。
第2の電極層(カソード)5には空気、特に酸素ガスが、空間Sを通るように導入され、第2の電極層(カソード)5において酸素分子から分解した酸素イオンを第1の電極層(アノード)2に向かって固体電解質層1へと送り出す。
【0057】
第2の電極層(カソード)5では、以下の反応が生じている。
(カソード反応):O+4e→2O2−
上記の電気化学反応の結果、電力が発生し、第1の電極層(アノード)2と第2の電極層(カソード)5との間に電位差を生じ、カソード側集電体12からアノード側集電体11へと電流Iが流れる。カソード側集電体12とアノード側集電体11との間に負荷、例えばこのガス分解素子10を加熱するためのヒータ52に接続しておけば、そのための電力の一部を供給することができる。
【0058】
上記は、陰イオンである酸素イオンが固体電解質層1を移動する電気化学反応であるが、固体電解質層1に、例えばバリウムジルコネート(BaZrO)を用いてプロトンを第1の電極層(アノード)2で発生させて固体電解質層1中を第2の電極層(カソード)5へと移動させる反応も、本発明の望ましい一つの形態である。
【0059】
プロトン導電性の固体電解質層1を用いると、例えば第1のガス中のアンモニアを分解する場合、第1の電極層(アノード)2でアンモニアを分解してプロトン、窒素分子及び電子を生じさせて、このプロトンを、固体電解質層1を経て第2の電極層(カソード)5へと移動させ、第2の電極層(カソード)5において酸素と反応させて水(HO)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいので、固体電解質層1中の移動速度は大きい。このため、加熱温度を低くしながら実用レベルの分解容量を得ることができる。固体電解質層1の厚みも、強度を確保できる厚みにすることができる。
【0060】
上記固体電解質を介したアンモニアガスの分解過程においては、窒素(N)と水(H2O)が生成される。しかしながら、本実施形態では、熱によってもアンモニアガスが分解される。この場合、上述してように、2NH→N+3Hの反応が生じて水素が生成され、接続部材30から排出される排気ガス中に水素が含まれることになる。本実施形態では、図1に示すように、排気ガスに含まれる上記水素を、排気管65を介して水素分離装置71に導き、水素を注出して上記ガスバーナ72に導くように構成している。上記ガスバーナ72は、上記水素を燃焼させて上記加熱容器51を加熱するように構成されている。この構成を採用することにより、上記加熱容器51を加熱する加熱ヒータ52の消費電力を低減させることが可能となる。
【0061】
図5は、上記ガス分解装置100の上部の構造を示す縦断面図であり、上記ガス誘導パイプ11kと外部配線11eとの接続形態、筒状MEA7とガス導入管45及び排気管65との接続形態を示している。
【0062】
本実施形態では、上記加熱容器51に、軸を鉛直方向に配向した状態で上記筒状MEA7の下部を収容するとともに、上記筒状MEA7の上端部を上記加熱容器51の上方に突出させて突出部41を設け、この突出部41の上端の開口端部に、ガスを出入りさせる接続部材30を設けている。
【0063】
上記接続部材30は、本体部31から固体電解質層1へと延びる締結部31bの内面側に収納されたOリング33が、焼成体であるセラミックスの固体電解質層1の外面に当接された状態で接続される。接続部材30の締結部31bは、外径がテーパ状に形成されており、そこにねじが切られ、そのねじに環状ねじ32が螺合される。環状ねじ32の外径が大きくなる方向へと螺合することで、締結部31bは、外面から締め付けられ、Oリング33による気密性を確保することができる。
【0064】
上記突出部41を設けることにより、上記加熱容器51から伝導される熱の一部を放熱させ、上記Oリング33及び上記接続部材30に伝導される熱を低減させることができる。このため、上記シール構造や上記接続部材30に上記筒状MEAを介して高い温度が作用するのを防止することができる。
【0065】
上記接続部材30の内側には、上記ガス誘導パイプ11kの基端部11dが気密性をもって嵌合できる嵌合部36が形成されている。これによって、ガス誘導パイプ11kと接続部材30とが連結され、上記ガス誘導パイプ11k内に第1のガスが導入される。
【0066】
接続部材30には、ガス導入管45との接続を行うためのガス導入部31aが設けられている。ガス導入管45の端部を、上記接続部材30のガス導入部31aの外周に嵌め合わせ、締結具47で締結することで、気密性のよい接続を得ることができる。第1のガスはガス導入管45からガス導入部31aを経てガス誘導パイプ11k内に流れ込む。ガス誘導パイプ11k内に流れ込んだ第1のガスは、その内部空間42を通って上記筒状MEA7の封止部44の近傍まで流動させられる。
【0067】
また、接続部材30には、排気管65との接続を行うためのガス排出部31cが設けられている。ガス排気管65の端部を、上記接続部材30のガス排出部31cの外周に嵌め合わせ、締結具67によって締結することで、気密性のよい接続を得ることができる。筒状MEA7を経た第1のガスは、接続部材30内の排気空間35、ガス排出部31cを通って排気管65に排出される。上記排気管65は、上述したように、水素分離装置71に接続されており、排気ガス中の水素を、上記バーナ72で燃焼させることができるように構成している。
【0068】
上記接続部材30を採用することにより、分解前の第1のガスと分解後の第1のガスとが混ざり合うことなく、且つ上記筒状MEA7の同じ片側の位置から第1のガスを出入りさせることが可能となる。
【0069】
上記接続部材30の本体部31には、気密性を保ってその本体部31を貫通する導電貫通部37cが設けられ、気密性を保つために封止樹脂38等が塗られている。この導電貫通部37cは、円柱棒で、外部配線11eと確実な導電接続を行うためにナット39を螺合させるねじを切っておくのがよい。導電貫通部37cの管内先端には導電線37bが接合されており、この導電線37bの他端部37aが上記ガス誘導パイプ11kの外周部に、環状の締め付け具34を介して接合されている。上記構成を採用することにより、上記ガス誘導パイプ11kと外部配線11eの接続抵抗を低減させることができる。
【0070】
一方、カソード側集電体12のNiメッシュシート12aの端部の外周に、外部配線12eが周回させられるとともに、外部へ引き出されている。これにより、2の電極層(カソード)5へ導通する配線が設けられている。
【0071】
上記固体電解質層1を構成する粉体材料として、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体酸化物としては、酸素イオン導電性の、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いるのがよい。また、プロトン導電性のバリウムジルコネートを用いることもできる。上記各粉体材料は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持することにより焼成することができる。
【0072】
第1の電極層(アノード)2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒子連鎖体と、酸素イオン導電性のセラミックスとを主成分とする焼成体として形成できる。酸素イオン導電性のセラミックスとしては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。
【0073】
上記SSZを採用する場合、平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。焼成工程は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持することにより行うことができる。また、SSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とするのが好ましい。表面酸化された金属粒子連鎖体と、SSZとの配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。
【0074】
上記金属粒子連鎖体の金属は、ニッケル(Ni)、または、Niに鉄(Fe)を含むものを採用するのが好ましい。更に好ましくは、チタン(Ti)を2〜10000ppm程度の微量含むものである。
【0075】
金属粒子連鎖体は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒子連鎖体の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。第1の電極層(アノード)2に含まれる金属粒子連鎖体の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
【0076】
第2の電極層(カソード)5は、酸素イオン導電性のセラミックスを主成分とする焼成体から形成される。この場合の酸素イオン導電性のセラミックスとして、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いることができる。これら粉体材料も、上記と同様の条件で焼成することができる。
【0077】
図6に、本願発明の第2の実施形態を示す。第2の実施形態では、第1の実施形態におけるガスバーナに代えて、触媒燃焼装置272を設けて、水素ガスを燃焼させるように構成している。なお、ガス分解素子210、加熱容器251の構成は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0078】
図6に示すように、第1の実施形態と同様に、排気ガスは、排気管265を介して水素分離装置271に導かれる。そして、水素ガスが注出されるとともに、補助加熱装置としての触媒燃焼装置272に導かれる。
【0079】
本実施形態に係る触媒燃焼装置272は、ガス分解素子210を加熱する加熱容器251内に配置されている。これにより、上記水素ガスに加熱容器251内の温度を作用させて燃焼させることができる。
【0080】
上記触媒燃焼装置272は、繊維状のプラチナ等が充填されている。また、図示しない空気供給管が設けられており、上記触媒燃焼装置272内で、上記水素を効率よく燃焼させることができる。
【0081】
なお、第2の実施形態では、触媒燃焼装置272を、加熱容器251内に設けたが、上記加熱容器251の外周面に接して設けることもできる。
【0082】
上述した実施形態は、アンモニアガスを含む第1のガスを分解して、発生した水素を、加熱容器を加熱する補助加熱装置に導いて燃焼させたが、これに限定されることはない。たとえば、第1のガスとして、CHを採用するとともに、燃焼可能ガスとしてHを発生させ、加熱容器を補助加熱するように構成できる。
【0083】
上述した実施形態は、本願発明を、ガス除害を目的としたガス分解装置に適用したが、ガス除害を主目的としないガス分解装置や、電気化学反応装置の筒状MEAに適用できる。例えば、燃料電池等の発電装置を構成する筒状MEAにも用いることができる。
【0084】
上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に、特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
ガス分解性能が高いのみならず、筒状MEAを加熱するヒータの消費電力を低減させて、エネルギ効率のよいガス分解装置及び発電装置を提供できる。
【符号の説明】
【0086】
1 固体電解質層
2 第1の電極層(アノード)
5 第2の電極層(カソード)
7 筒状MEA
10 ガス分解素子
11 アノード側集電体
11k ガス誘導パイプ
12 カソード側集電体
30 接続部材
31c ガス排出部
41 突出部
42 内部空間
43 筒状流路
44 封止部
45 ガス導入管
51 加熱容器
52 ヒータ
65 排気管
71 水素分離装置
73 ガスバーナ(補助加熱装置)
100 ガス分解装置
S 空間(第2のガス流路)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の固体電解質層と、この固体電解質層の内周部に積層形成された第1の電極層と、上記固体電解質層の外周部に積層形成された第2の電極層とを有する筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を用いて構成されるガス分解装置であって、
上記筒状MEAを収容して加熱する加熱容器を備えるとともに、
ガス分解反応で生成された排気ガス中の燃焼可能ガスを燃焼させて上記加熱容器を補助加熱できる補助加熱装置を備える、ガス分解装置。
【請求項2】
上記補助加熱装置は、上記燃焼可能ガスを燃焼させるバーナを備えて構成されている、請求項1に記載のガス分解装置。
【請求項3】
上記補助加熱装置は、上記燃焼可能ガスを触媒反応によって燃焼させる触媒燃焼装置を備えて構成されている、請求項1に記載のガス分解装置。
【請求項4】
上記触媒燃焼装置は、上記加熱容器の温度を利用して、上記燃焼可能ガスを燃焼させる、請求項3に記載のガス分解装置。
【請求項5】
上記排気ガスから上記燃焼可能ガスを分離するガス分離装置を備える、請求項1から請求項4のいずれかに記載のガス分解装置。
【請求項6】
分解に供せられるガスが、アンモニアを含むガスであり、
生成される燃焼可能ガスが水素である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガス分解装置。
【請求項7】
上記第1の電極層及び/又は上記第2の電極層が、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒子連鎖体と、イオン導電性セラミックとを含む焼成体であることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のガス分解装置。
【請求項8】
上記固体電解質層が、酸素イオン導電性又はプロトン導電性を有することを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のガス分解装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載したガス分解装置を備える、発電装置。
【請求項10】
筒状の固体電解質層と、この固体電解質層の内周部に積層形成された第1の電極層と、上記固体電解質層の外周部に積層形成された第2の電極層とを有する筒状MEA(Membrane Electrode Assembly)を用いて構成されるガス分解装置によって行われるガス分解方法であって、
加熱容器内で上記筒状MEAを加熱して上記ガスを分解するとともに、
ガス分解反応で生成された排気ガス中の燃焼可能ガスを燃焼させて上記加熱容器を補助加熱する、ガス分解装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−157848(P2012−157848A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21382(P2011−21382)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】