説明

ガス分離膜、その製造方法、並びにそれを用いたガス分離方法、モジュール及び分離装置

【課題】ガス透過性、分離選択性、及び機械的物性に優れたガス分離膜を提供すること。
【解決手段】ガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを分離するためのガス分離膜であって、多孔質の第一層と、前記酸性ガスと相互作用し得る分子量が15,000以下の化合物を含有する分離活性層である第二層と、ガス透過性の高い第三層とを有するガス分離膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素、ヘリウム、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、酸素、窒素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、メタン、エタンなどの炭化水素、プロピレンなどの不飽和炭化水素、テトラフルオロエタンなどのパーフルオロ化合物などのガスを含有する気体混合物から特定の気体を効率よく分離し得る新規なガス分離膜に関し、特に二酸化炭素を含む気体混合物から二酸化炭素を選択分離するガス分離膜及びこの製造方法、これを用いたガス分離方法、モジュール、分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高分子素材には、その素材に特有の気体透過性があるため、高分子素材から構成された膜によって、気体成分を分離できることが知られており、近年の地球環境温暖化における問題と関連して、火力発電所やセメントプラント、製鉄所高炉等の大規模な二酸化炭素発生源から二酸化炭素を省エネルギーで分離回収することの出来る可能性のある手段として着目されている。一方、天然ガスやバイオガス(生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚水、ゴミ、エネルギー作物などの発酵、嫌気性消化により発生するガス)は主としてメタンと二酸化炭素の混合ガスであり、水素は一般的に天然ガスの水蒸気改質、水性ガスシフトを経て製造されており、その製造過程で、組成の約40%が二酸化炭素、約60%が水素の気体混合物が得られる。濃度の低い不純物である二酸化炭素を選択透過、除去させることができれば分離精製方法として経済的により優れているといえ、不純物を除去する手段として膜分離方法が検討されてきた(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
ところで、高分子膜における気体の透過性(透過係数)は気体の高分子膜への溶解度係数(溶解性)と拡散係数(拡散性)との積で表される(非特許文献1)。それゆえに、二酸化炭素の透過性(透過係数)を分離対象ガスに対して選択的に向上させるためには、二酸化炭素の高分子膜に対する溶解度係数(溶解性)及び/又は拡散係数(拡散性)を選択的に向上させればよいことになるが、一般的な高分子膜は選択性を上げると透過性が減少するというトレードオフの関係が知られており、問題となっていた。この高分子膜のトレードオフを克服する方法として、液膜あるいは促進輸送膜と呼ばれる分離活性膜が提案されている。促進輸送膜は、特定の透過物質とのみ可逆的、選択的に反応する物質(キャリア)を組み込んだ膜であり、キャリア輸送膜とも呼ばれる。透過物質は膜マトリックスを通しての溶解・拡散機構に加えてキャリアとの反応生成物を形成して、透過することができるので、溶解拡散機構でのみ透過する透過物質以外の共存ガスと比較して高い透過選択性が得られる(非特許文献2)。例えば二酸化炭素/水素分離においては既存の高分子膜では数十程度であるが(非特許文献3)、促進輸送膜では100以上の選択性を発現する例が開示されている。(特許文献3〜6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−297605号公報
【特許文献2】特開2006−297335号公報
【特許文献3】特開2008−36463号公報
【特許文献4】特開2008−36464号公報
【特許文献5】特開2009−195900号公報
【特許文献6】特開2009−185118号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】永井一清監修 シーエムシー出版、「気体分離膜・透過膜・バリア膜の最新技術」、52−59頁
【非特許文献2】膜、2004、29(4) 194-201.
【非特許文献3】Science,2006,311,639−642.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように天然ガスやバイオガス、水素製造プラントにおいては不純物である酸性ガス、特に二酸化炭素の分離が望まれている。
前記の特許文献3〜5では支持膜として親水性の精密ろ過膜(ミクロフィルター)を用いており、空孔へ架橋ポリビニルアルコールのゲル膜を充填、形成しているために機械的強度と高いガス透過性と分離選択性を両立している。しかしながら、本発明者らが検討した結果、ポリビニルアルコールを素材として用いているために乾燥状態では硬質であるため衝撃や曲げに脆く、割れてしまったり欠けてしまったりする場合があった。また、多孔質支持膜の空孔へのゲル膜素材の充填が不十分な場合はピンホールのある膜となってしまい、所望の分離選択性が発現しない場合があるなど、製膜に注意を要しさらなる改善が必要であることが分かった。ガス分離膜はオングストロームオーダーの分子を分離する膜であり、ピンホールの発生は性能を大きく左右する因子である。
【0007】
ピンホールの発生を抑制するために、表層に更にピンホール抑制層又は保護層なる緻密層を付与することは行われてこなかった。例えば、ガス分離膜や逆浸透膜のようなオングストローム〜ナノメートルオーダーの分子を分離する場合、分離活性層の更に表層に緻密層を積極的に設けるようなことは従来検討されることはほとんどなかった。なぜなら、総膜厚が厚くなってしまうため、対象とする分子の透過性が著しく低下することが自明だからである。
【0008】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、分離活性層の表層を更に被覆するように保護層のキャスト液を流延しても、下部の分離活性層がすでに緻密に形成されているためか、下部の分離活性層に過度に浸透することがなく、薄膜形成可能であることを見出した。また、該表面被覆するキャスト液の濃度と粘度を調整することで、透過性低下を最低限度の範囲に抑え、ガス分離膜として十分な透過性を持った薄膜形成が可能であり、その結果としてピンホールの発生を抑制し、製膜成功率を大幅に改善する効果が得られることを見出した。
更に当初予期しなかったことに、上記表面被覆用のキャスト液が分離活性層に部分的に浸透し、その成分が可塑剤としての効果を示すためか、例えば分離活性層が室温では硬質であるポリビニルアルコール架橋構造で形成された分離活性膜であっても、柔軟性が付与され、結果として引張弾性率や破断伸度などの機械的物性が優れるようになるだけでなく、耐圧性にも改善が見られることを見出した。
本発明は、上記のように問題点を解決し、更にはガス透過性及び分離選択性、機械的物性に優れたガス分離膜を提供する。更には、ガス分離膜の製造方法、ガス混合物の分離方法、及びガス分離膜を用いたモジュール、分離装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は以下の手段により達成された。すなわち、
(1)
ガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを分離するためのガス分離膜であって、
多孔質の第一層と、
前記酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物を含有する分離活性層である第二層と、
ガス透過性の高い第三層と、をこの順に有することを特徴とするガス分離膜。
(2)
前記第三層が架橋ポリマーを含有することを特徴とする(1)に記載のガス分離膜。
(3)
前記第二層が、少なくとも1種の親水性の架橋ポリマーを含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載のガス分離膜。
(4)
前記第二層の親水性の架橋ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセーテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミンから選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することを特徴とする(3)に記載のガス分離膜。
(5)
前記第三層の架橋ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリシロキサン、及びポリオレフィンから選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載のガス分離膜。
(6)
前記第二層の親水性の架橋ポリマーが、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーであることを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載のガス分離膜。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(I)中Lはx価の連結基であり、xは2以上の整数を表す。)
(7)
前記第三層の架橋ポリマーが、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする(2)〜(6)のいずれかに記載のガス分離膜。
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(II)中、Rは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の正の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Rはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表す。複数存在するR、J、W、R、及びRaは同一でも異なっていてもよい。)
(8)
前記第三層の架橋ポリマーが、少なくとも1種の下記一般式(III)で表される繰り返し単位と、少なくとも1種の前記一般式(II)で表される繰り返し単位とを含むポリマーであることを特徴とする(7)に記載のガス分離膜。
【0014】
【化3】

【0015】
(一般式(III)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Rはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。複数存在するJ、W、R、R、R、及びRは同一でも異なっていてもよい。)
(9)
前記第三層の架橋ポリマーが、主鎖構造に下記一般式(IV)、一般式(V)、一般式(VI)、及び下記一般式(VII)から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリマーであることを特徴とする(5)に記載のガス分離膜。
【0016】
【化4】

【0017】
(10)
前記酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、有機アミン、イオン液体、及び金属錯体から選択される少なくとも1種の酸性ガスキャリアであることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載のガス分離膜。
(11)
引張弾性率が500MPa以上であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のガス分離膜。
(12)
引張強度が15N/mm以上であり、破断伸度が10%以上であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載のガス分離膜。
(13)
100℃以上の耐熱性を有することを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載のガス分離膜。
(14)
少なくとも1種の酸性ガスと少なくとも1種の非酸性ガスを含むガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを、(1)〜(13)のいずれかに記載のガス分離膜により分離する、ガス混合物の分離方法であって、
前記酸性ガスが、二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SOx)、及び窒素酸化物(NOx)から選択される少なくとも1種であり、
前記非酸性ガスが水素、メタン、窒素、及び一酸化炭素から選択される少なくとも1種であることを特徴とするガス混合物の分離方法。
(15)
前記酸性ガスが二酸化炭素又は硫化水素であることを特徴とする(14)に記載のガス混合物の分離方法。
(16)
前記ガス混合物の主成分が、二酸化炭素及びメタン又は二酸化炭素及び水素であることを特徴とする(15)に記載のガス混合物の分離方法。
(17)
(2)〜(13)のいずれかに記載のガス分離膜の製造方法であって、
前記第三層を、前記架橋ポリマーのモノマーを含む組成物に活性放射線を照射すること又は前記架橋ポリマーのモノマーを含む組成物を熱硬化することにより形成することを特徴とするガス分離膜の製造方法。
(18)
前記架橋ポリマーのモノマーを含む組成物が、固形分濃度が10〜99質量%で、粘度が50〜5000mPa・sのキャリア液であり、
該キャリア液を前記第二層上に流延し、活性放射線又は加熱により硬化させることで形成することを特徴とする(17)に記載のガス分離膜の製造方法。
(19)
(1)〜(13)のいずれかに記載のガス分離膜を含むガス分離膜モジュール。
(20)
(19)に記載のガス分離膜モジュールを少なくとも1種を含む気体分離装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、CO/H分離選択性などガス分離選択性に優れ、折り曲げ試験にも耐え得る可撓性が付与されて機械強度に優れ、ピンホールの少ない良好なガス分離膜を提供することができる。本発明のガス分離膜により、優れた気体分離方法、ガス分離膜モジュール、ガス分離膜モジュールを含むガス分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るガス分離膜の一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係るガス分離膜の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明について詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0021】
本発明のガス分離膜は、混合ガスから少なくとも1種の酸性ガスを分離するためのガス分離膜であって、多孔質の第一層と、前記酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物を含有する分離活性層である第二層と、ガス透過性の高い第三層と、をこの順に含む積層構造を有する。
【0022】
[第一層(多孔質層)]
本発明の多孔質の第一層は、機械的強度及び高気体透過性の付与に合致する目的のものであれば、特に限定されるものではなく有機、無機どちらの素材からなる多孔質膜であって構わないが、好ましくは有機高分子の多孔質膜である。
多孔質膜の厚さは、好ましくは1〜3000μmであり、より好ましくは5〜500μmであり、更に好ましくは5〜150μmである。
この多孔質膜の細孔構造は、通常、平均細孔直径として、10μm以下、好ましくは0.01μm以上5μm以下、より好ましくは0.1μm以上0.5μm以下であり、空孔率は好ましくは20〜90%であり、より好ましくは30〜80%である。また、その気体透過率は、二酸化炭素透過速度で7.5×10−11/ms Pa以上であることが好ましい。
多孔質膜の素材としては、従来公知の高分子、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂を挙げることができる。
多孔質膜の形状としては、平板状、スパイラル状、管状、中空糸状などいずれの形状をとることができる。
【0023】
第一層は、親水性の多孔質膜と疎水性の多孔質膜を積層させて形成させてもよい。この場合、各多孔質膜それぞれについて、その厚さ、細孔構造、空孔率、気体透過率、素材、形状等は前述した範囲が好ましい。積層状態の厚みについては、好ましくは2〜6000μmであり、より好ましくは10〜1000μmであり、更に好ましくは10〜300μmである。また、親水性の多孔質膜と疎水性の多孔質膜を積層させる場合、第二層は親水性の多孔質膜上に形成することが好ましい。第二層形成用の組成物(キャスト液)を親水性の多孔質膜上に塗布することで、多孔質膜の空孔にハジキなどが発生するのを抑えて密にキャスト液が充填されてゲル化するために、緻密なピンホールの発生の少ないガス分離膜が得ることができる。親水性の多孔質膜の下層(第二層と反対側)に疎水性の多孔質膜を設けることにより、ハジキの効果等によりキャスト液が最下部まで浸透してしまうのを抑制でき、更にガス分離膜が内蔵する酸性ガスキャリアの溶出を抑制することができる。
【0024】
[第二層(分離活性層)]
本発明において、第二層は、酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物を含有する分離活性層である。
ここで、該化合物と酸性ガスとが相互作用とは対象とする酸性ガスの性質に起因する作用あるいは反応を意味し、例えば、双極子相互作用、酸塩基相互作用、クーロン相互作用、サイズ相互作用などを表す。相互作用により対象とする酸性ガスとの吸着性、相溶性あるいは反応性が向上することになり、より膜中に吸収、透過、拡散が促進され、非酸性ガスとの透過性差を大きくする、という効果が達成し得ることを意味する。
酸性ガスとしては、二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SOx)、及び窒素酸化物(NOx)、塩化水素等のハロゲン化水素が挙げられ、好ましくは、二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SOx)、及び窒素酸化物(NOx)から選択される少なくとも1種であり、更に好ましくは二酸化炭素、硫化水素あるいは硫黄酸化物(SOx)であり、より好ましくは二酸化炭素である。
【0025】
<酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物(キャリア)>
酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物は、酸性ガスキャリアであることが好ましい。このようなキャリアを有する膜は一般に促進輸送膜と呼ばれるもので、“Material Science of Membranes for Gas and Vapor Separation”(編集:Yu. Yampolskii、I. Pinnau、B.D. Freeman)の 第17章(411−435ページ)に詳しく記載されている。
【0026】
酸性ガスキャリアとしては、特に限定されるものではないが、分子量が150,000以下の、酸性ガスに対して親和性を有する化合物であることが好ましく、例えば、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム)、アルカリ金属のアルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなど)、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、有機アミン(例えば、アルカノールアミン、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、n-ブチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、n-ブチルエタノールアミン、ジ-n-ブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、PAMAMデンドリマーや、例えば特開2007−54710に記載の水酸基変性されたデンドリマー、ポリアリルアミン又はポリエチレンイミン等が挙げられる。)、第四級アンモニウムヒドロキシド(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等)、グアニジン類(例えば、グアニジン、テトラメチルグアニジン等)、ヘテロ環塩基(例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,8−ジアザビシクロ[4,3,0]−7−ノネン等)、アミノ酸類(例えば、グリシン、ジメチルアミノグリシン、2,3-ジアミノプロピオン酸等)、金属錯体(例えば、特開平6-142466号に記載のロジウム金属錯体や特開平6-142467号に記載のモリブデン錯体等)、イオン液体(例えば、下記のカチオン、アニオンの組合せよりなる化合物から選択される化学物質が利用できる。
(i)カチオン:1,3位に以下の置換基を有するイミダゾリウムで、置換基としてアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基、アリール基を有するもの、ピロリジニウムカチオンで置換基として、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基、アリール基を有するもの、ピリジニウムカチオンで置換基として、アルキル基、アリール基、ホスホニウムカチオンで置換基としてアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基、アリール基を有するもの、又は、第4級アンモニウムカチオンで、置換基としてアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基、アリール基を有するもの。
(ii)アニオン:塩化物イオン、臭化物イオン、四フッ化ホウ素イオン、硝酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロブチルメタンスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、又は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンなど。また、当該イオン液体の具体例として、1‐アリル‐3‐エチルイミダゾリウムブロミド、1‐エチル‐3-メチルイミダゾリウムブロミド、1‐(2‐ヒドロキシエチル)‐3‐メチルイミダゾリウムブロミド、1‐(2‐メトキシエチル)‐3‐メチルイミダゾリウムブロミド、1‐オクチル‐3‐メチルイミダゾリウムクロリド、N,N‐ジエチル‐N‐メチル‐N‐(2‐メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボラート、エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホン酸、エチルメチルイミダゾリウムジシアナミド、及び、塩化トリヘキシルテトラデシルホスホニウム等が利用でき、好ましくはイミダゾリウム塩、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩であり、より好ましくはイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩であり、更に好ましくはピリジニウム塩あるいはホスホニウム塩である。また、添加剤として、イオン液体以外に、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸の中から選択される化学物質が利用できる。)等の従来公知のものを挙げることができる。また、前記したアルカリ金属の炭酸塩や重炭酸塩の場合、補助添加成分として、アルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子や、亜砒酸ナトリウム、炭酸アンヒドラーゼ、ホウ酸等を併用することができる。
【0027】
アルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子としては、従来公知のもの、例えば:12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ベンゾ-12-クラウン-4、ベンゾ-15-クラウン-5、ベンゾ-18-クラウン-6、ジベンゾ-12-クラウン-4、ジベンゾ-15-クラウン-5、ジベンゾ-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-12-クラウン-4、ジシクロヘキシル-15-クラウン-5、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、n-オクチル-12-クラウン-4、n-オクチル-15-クラウン-5、n-オクチル-18-クラウン-6等の環状ポリエーテル;クリプタンド〔2.1〕、クリプタンド〔2.2〕等の環状ポリエーテルアミン;クリプタンド〔2.1.1〕、クリプタンド〔2.2.2〕、等の双環式ポリエーテルアミンの他、ポルフィリン、フタロシアニン、ポリエチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸等を用いることができる。
酸性ガスキャリアは、前記したものに限られるものではなく、酸性ガスと親和性を有し、かつ水溶性を示すものであればよく、有機酸のアルカリ金属塩等各種のものを用いることができる。
酸性ガスキャリアの化学的安定性及び蒸気圧が低く、膜中から失われる可能性が低いことから、分離性能の長期耐久性が期待できる、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、有機アミン、イオン液体、及び金属錯体が好ましく、有機アミンやアルカリ金属炭酸塩やアルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩がより好ましく、更に好ましくは有機アミン、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属リン酸塩である。
【0028】
また二酸化硫黄キャリアとして知られている、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の水溶性の亜硫酸塩、酸素や一酸化炭素キャリアとして、ヘモグロビン、一酸化炭素キャリアとして知られている、Cu(NH2+、Cu(Cl2−等の銅錯イオンを生成する水溶性銅化合物等を挙げることができる。また、これらキャリアの混合物の使用も可能である。
【0029】
酸性ガスキャリアの分子量は好ましくは50〜150,000であり、より好ましくは100〜100,000であり、更に好ましくは100〜5,000であり、特に好ましくは100〜3,000である。分子内にできるだけ多くの酸性ガスと相互作用する部位を有していることが好ましい。
【0030】
酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物の第二層における含有量は、第二層を形成する組成物中の全固形分に対して、5〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましい。
【0031】
<親水性の架橋ポリマー>
本発明において、分離活性層である第二層は、機械強度及び酸性ガスの膜吸収時における可塑化を抑制するうえで架橋ポリマーを含有することが好ましく、酸性ガスキャリアが十分に作用するために膜に対して十分な水蒸気透過性と保水性を有する観点から、少なくとも1種の親水性の架橋ポリマーを含有することが好ましい。
親水性の架橋ポリマーとしては特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセーテート、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンから選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましい。
上記繰り返し単位のうち、親水性及び製膜性の観点から、好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンであり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンがより好ましく、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0032】
第二層の架橋ポリマーにおける上記繰り返し単位の含有量は、架橋ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して、好ましく5〜95モル%、より好ましくは10〜90モル%、特に好ましくは10〜80モル%である。この範囲であれば、製膜性、ガス透過性、機械強度に優れる。
架橋ポリマー中、上記繰り返し単位は1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上組み合わせて用いられていてもよい。2種類上組み合わせて用いる場合には、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリアリルアミン、ポリビニルアルコールとポリアリルアミンの組合せが好ましく、ポリビニルアルコールとポリアリルアミンの組合せがより好ましい。
【0033】
第二層の架橋ポリマーの数平均分子量は、三次元架橋構造であるため、分子量としては特に規定できるものではないが、架橋構造部分を除く主鎖あるいは側鎖としての重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜100,000であり、より好ましくは1,000〜50,000であり、更に好ましくは2,000〜15,000である。
同様にして、架橋ポリマーの分散度は、全体としては特に規定できるものではないが、主鎖あるいは側鎖としては、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2であることが更に好ましい。この範囲であれば、より優れた製膜性、機械強度を達成することが可能となる。
第二層における架橋ポリマーの含有量は、第二層を形成する組成物中の全固形分を基準として、1〜90質量%であることが好ましく、1〜80質量%であることがより好ましく、5〜70質量%であることが特に好ましい架橋ポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
第二層の架橋ポリマーとしてより好ましくは、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含むポリマーである。下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含むポリマーは架橋されたポリビニルアルコールを含むポリマーである。
【0035】
【化5】

【0036】
(一般式(I)中、Lはx価の連結基であり、xは2以上の整数を表す。)
【0037】
一般式(I)について詳しく説明する。
一般式(I)中、Lはx価の連結基を表し、その具体的な例としては下記の(L−1)〜(L−35)で表される構造単位又はこれらを組み合わせて構成される連結基を挙げることができる。一般式(I)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、Lにより一般式(I)の繰り返し単位同士が連結されることで、架橋構造を有する。
【0038】
【化6】

【0039】
前記(L−1)〜(L−35)より選択される基より構成されるLはアルキレン基、アルキレンオキシ基又はアリーレン基が好ましく、アルキレン基、又はアルキレンオキシ基であることがより好ましく、分子内にエーテル結合を有していることが更に好ましい。
xは2以上の正の整数を表す。好ましくは、xは2〜6であり、より好ましくは2〜4である。
このような架橋構造はホルムアルデヒドやグルタルアルデヒド、多官能イソシアネート、多官能エポキシド、多官能カルボジイミドといった架橋剤を用いることが好ましい。
【0040】
一般式(I)の繰り返し単位中、下記一般式(Ia)で表される繰り返し単位のモル%をa、下記一般式(Ib)で表される繰り返し単位のモル%をbとしたときに、
【0041】
【化7】

【0042】
一般式(Ia)中、Lは一般式(I)と同義であり、好ましい範囲も同じである。
好ましくは、aは0.1%以上30%以下、bは70%以上99.9%以下であり、より好ましくは、aは0.1%以上20%以下、bは80%以上99.9%以下であり、更に好ましくは、aは0.5%以上20%以下、bは80%以上99.5%以下である。
上記一般式(I)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、上記一般式(I)以外の繰り返し単位を含んでいてもよく、そのような繰り返し単位としては、ポリアリルアミン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
上記一般式(I)で表される繰り返し単位を含むポリマーにおける該一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して、好ましく30〜99.9モル%、より好ましくは30〜99モル%、特に好ましくは30〜95モル%である。この範囲であれば、親水性、製膜性に優れる。
【0043】
[第三層(ガス透過性の高い層)]
本発明において、第三層は、ガス透過性の高い層である。第三層のガス透過性は、前述の第二層より高いことが好ましい。第三層単独での二酸化炭素の透過係数が7.5×10−18・m/m s Pa以上であることが好ましく、7.5×10−17・m/ms Pa以上、7.5×10−12・m/m s Pa以下であることがより好ましく、7.5×10−16・m/m s Pa以上、7.5×10−15・m/m s Pa以下であることが特に好ましい。
【0044】
ガス透過性低下を抑制し、分離選択性、製膜性、柔軟性及び機械的強度付与の観点から、第三層は架橋ポリマーを含有することが好ましく、該架橋ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリシロキサン、及びポリオレフィンから選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましい。上記繰り返し単位のうち、ガス透過性、製膜性及び柔軟性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリシロキサンが好ましく、ポリエチレングリコール又はポリシロキサンがより好ましい。
上記繰り返し単位の数平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値で、好ましくは300〜1,000,000であり、より好ましくは300〜500,000であり、更に好ましくは1,000〜200,000である。
第三層の架橋ポリマーにおける上記繰り返し単位の含有量は、架橋ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して、好ましく30〜99.9モル%、より好ましくは30〜99.8モル%、特に好ましくは30〜95モル%である。
架橋ポリマー中、上記繰り返し単位は1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上組み合わせて用いられていてもよい。
【0045】
第三層の架橋ポリマーは、三次元架橋構造であるため、分子量としては特に規定できるものではないが、架橋構造部分を除く主鎖あるいは側鎖としての重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜100,000であり、より好ましくは1,000〜50,000であり、更に好ましくは2,000〜15,000である。
同様にして、架橋ポリマーの分散度は、全体としては特に規定できるものではないが、主鎖あるいは側鎖としては、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2であることが更に好ましい。この範囲であれば、より優れた製膜性を達成することが可能となる。
第三層における架橋ポリマーの含有量は、第三層を形成する組成物中の全固形分を基準として、0.1〜99質量%であることが好ましく、1〜99質量%であることがより好ましく、5〜98質量%であることが特に好ましい。この範囲であれば、高ガス透過性、製膜性及び柔軟性を付与する観点で好ましい。架橋ポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
第三層の架橋ポリマーのガラス転移点は、ガス分離膜に柔軟性を付与し、機械的強度を向上させる観点から、60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることが更に好ましい。下限としては−180℃以上であることが好ましく、−160℃以上であることがより好ましい。
【0047】
前記第三層形成用の組成物(キャリア液)は、固形分濃度としては10〜99質量%であることが好ましく、10〜90質量%であることがより好ましい。その溶媒としては、前記架橋ポリマーのモノマーを可溶とするものであれば、特に制限はなく、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、クロロホルム、塩化メチレン、アセトン、ジオキサン、酢酸メチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの水溶性溶媒又は有機溶媒から選ばれる1種又は2種以上を混合液として用いても良い。
【0048】
前記第三層はガス透過性の低下を抑制するために、できるだけ薄層で形成されることが望ましく、そのために前記第三層形成用のキャリア液は適切に粘度が調整されることが望ましい。前記第三層形成用のキャリア液は、好ましくは粘度が50〜5000mPa・s、更に好ましくは100〜1000mPa・s、より好ましくは、50〜500mPa・sである。前記第三層形成用のキャリア液は前記第二層上に流延し、活性放射線又は加熱により硬化させることで形成させることが好ましく、両方法を組み合わせて硬化させるのも好ましい。
【0049】
第三層の架橋ポリマーとしては、好ましくは下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーである。
【0050】
【化8】

【0051】
(一般式(II)中、Rは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の正の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Raはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表す。複数存在するR、J、W、R、及びRaは同一でも異なっていてもよい。)
【0052】
一般式(II)について説明する。
一般式(II)中、R1は各々独立に水素原子又は置換基を表す。その置換基としては下記に示される置換基群Zより選ばれるいずれか1つを用いることができる。
【0053】
置換基群Z:
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、Iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10のアミノ基であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環オキシ基であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0054】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
【0055】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0056】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環チオ基であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0057】
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子が挙げられる)、
【0058】
シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリル基であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリルオキシ基であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は、更に上記置換基群Zより選択されるいずれか1つ以上の置換基により置換されてもよい。
【0059】
は水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0060】
は−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基が好ましく、その好ましい範囲は置換基Zで説明したアルキル基、アリール基の好ましい範囲と同義である。これらのうち、Jとしては−CO−、−COO−又は−OCO−が好ましく、−COO−が特に好ましい。
【0061】
は単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレン、デシレンなどが挙げられる。)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキレンオキシ基であり、例えばメチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、ブチレンオキシ、ペンチレンオキシ、へキシレンオキシ、オクチレンオキシ、デシレンオキシなどが挙げられる。)、アラルキレン基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基であり、例えばベンジリデン、シンナミリデンなどが挙げられる。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン、クメニレン、メシチレン、トリレン、キシリレンなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。また、分子内にエーテル結合を有していることが好ましい。
【0062】
は、単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基が好ましく、単結合であることが好ましい。
【0063】
はアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表す。アルキレングリコール残基であることが好ましい。アルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基の分子量は、好ましくは500〜1,000,000であり、より好ましくは500〜500,000であり、更に好ましくは1,000〜300,000である。
【0064】
はn価の連結基を表す。nは2以上の正の整数を表す。L2は前記Lでの説明と同様に(L−1)〜(L−35)で表される構造単位又はこれらを組み合わせて構成される連結基を挙げることができ、好ましいものも前記Lと同じである。
【0065】
複数存在するJ、W、R、及びRaは同一でも異なっていてもよい。
【0066】
nは2以上の正の整数を表し、2〜100が好ましく、2〜50がより好ましい。
【0067】
一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーは下記の一般式(IIa)で表される化合物を重合させて形成されることが好ましい。
【0068】
【化9】

【0069】
(一般式(IIa)中、Rは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の正の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Rはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表す。複数存在するJ、W、R、及びRaは同一でも異なっていてもよい。)
【0070】
一般式(IIa)中、R、J、W、Ra、L及びnは、前記一般式(II)におけるR、J、W、Ra、L及びnと同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0071】
上記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーにおける該一般式(II)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して、好ましく0.1〜99モル%、より好ましくは0.5〜90モル%、特に好ましくは1〜80モル%である。
【0072】
前記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、前記一般式(II)で表される繰り返し単位と、下記一般式(III)で表される繰り返し単位とを含むポリマーであることが好ましい。
【0073】
【化10】

【0074】
(一般式(III)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Rはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。複数存在するJ、W、R、R、R、及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【0075】
一般式(III)について説明する。
一般式(III)中、R水素原子又は置換基を表す。その置換基の例としては前記置換基群Zで挙げた基が挙げられる。
は水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0076】
は−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基が好ましく、その好ましい範囲は置換基Zで説明したアルキル基、アリール基の好ましい範囲と同義である。これらのうち、Jとしては−CO−、−COO−又は−OCO−が好ましく、−COO−が特に好ましい。
【0077】
は単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレン、デシレンなどが挙げられる。)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキレンオキシ基であり、例えばメチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、ブチレンオキシ、ペンチレンオキシ、へキシレンオキシ、オクチレンオキシ、デシレンオキシなどが挙げられる。)、アラルキレン基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基であり、例えばベンジリデン、シンナミリデンなどが挙げられる。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン、クメニレン、メシチレン、トリレン、キシリレンなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。更なる置換基としてはヒドロキシ基又はハロゲン原子が好ましく、ヒドロキシ基又はフッ素原子がより好ましく、フッ素原子が特に好ましい。また、分子内にエーテル結合を有していることが好ましい。
【0078】
は、単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基が好ましく、単結合であることが好ましい。
【0079】
はアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表す。アルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基の分子量は、好ましくは500〜1,000,000であり、より好ましくは500〜500,000であり、更に好ましくは1,000〜300,000である。
は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、好ましくはアルキル基である。
【0080】
一般式(III)で表される繰り返し単位を含むポリマーは下記の一般式(IIIa)で表される化合物を重合させて形成されることが好ましい。
【0081】
【化11】

【0082】
(一般式(IIIa)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Rはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。)
【0083】
一般式(IIIa)中、R、R、R、J及びWは、前記一般式(III)におけるR、R、Rb、J及びWと同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0084】
前記一般式(II)で表される繰り返し単位と、前記一般式(III)で表される繰り返し単位とを含むポリマーにおいて、該一般式(II)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して、好ましくは0.1〜99モル%、より好ましくは0.5〜90モル%、特に好ましくは1〜80モル%であり、該一般式(III)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリマーを構成する全繰り返し単位に対して、好ましく1〜99.9モル%、より好ましくは10〜99.5モル%、特に好ましくは20〜99モル%である。
【0085】
前記一般式(II)で表される繰り返し単位は、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0086】
【化12】

【0087】
(一般式(VIII)中、W及びWは単結合又は2価の連結基を表す。R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Rはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表す。x及びzはそれぞれ独立に1以上の正の整数を表す。)
【0088】
一般式(VIII)中、W、R及びRは前記一般式(II)におけるW1、R1及びRと同義である。WはW1と同義であり、その好ましい範囲も同様である。R6はRと同義であり、その好ましい範囲も同様である。x及びzはそれぞれ独立に1以上の正の整数を表す。好ましくはxは10〜1000、zは10〜1000であり、より好ましくはxは50〜1000、zは50〜1000である。
【0089】
前記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を含む化合物は、下記一般式(VIIIa)で表される化合物を重合させて形成されることが好ましい。
【0090】
【化13】

【0091】
(一般式(VIIIa)中、W及びWは単結合又は2価の連結基を表す。R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Rはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表す。)
【0092】
一般式(VIIIa)中、R、R、W、W及びRは、前記一般式(VIII)におけるR1、R、W、W及びRと同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0093】
前記一般式(III)で表される繰り返し単位は。下記一般式(IX)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0094】
【化14】

【0095】
(一般式(IX)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Rはアルキレングリコール残基、プロピレングリコール残基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。複数存在するR、R、Rは同一でも異なっていてもよい。)
【0096】
一般式(IX)中、R、R及びRは、前記一般式(III)におけるR、R4及びRと同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0097】
前記一般式(IX)で表される繰り返し単位を含む化合物は、下記一般式(IXa)で表される化合物を重合させて形成されることが好ましい。
【0098】
【化15】

【0099】
(一般式(IXa)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Rはアルキレングリコール残基、プロピレングリコール残基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0100】
一般式(IXa)中、R、R及びRは、前記一般式(IX)におけるR、R及びRとは同義であり、その好ましい範囲も同様である
【0101】
前記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマー、及び前記一般式(II)で表される繰り返し単位と前記一般式(III)で表される繰り返し単位とを含むポリマーは、それぞれの繰り返し単位に対応するモノマーを重合させることにより得ることができる。それらのモノマーとして好ましい具体例(例示モノマーM−1〜M−30)を以下に挙げるが、本発明はこれらに限るものではない。また具体例におけるp、q及びrは任意の正の整数を表す。
【0102】
【化16】

【0103】
【化17】

【0104】
【化18】

【0105】
本発明のガス分離膜において、第三層は、主鎖構造に下記一般式(IV)で表されるポリエチレングリコール、下記一般式(V)若しくは一般式(VI)で表されるポリプロピレングリコール、又は下記一般式(VII)で表されるポリジメチルシロキサンより選択される繰り返し単位を有するポリマーであることも好ましい。
下記一般式(VII)〜(IX)で表される部分構造が主鎖である場合、架橋ポリマー中の重量比として全体の30〜99%を占めていることが好ましく、より好ましくは40〜99%であり、更に好ましくは50〜99%を占めている場合である。主鎖部位の分子量は、分子鎖の絡み合いによる製膜性を付与する観点である程度の高分子量体であることが望ましく、好ましくは500〜1,000,000であり、より好ましくは500〜500,000であり、更に好ましくは1,000〜300,000である。
【0106】
【化19】

【0107】
前記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマー、前記一般式(II)で表される繰り返し単位と前記一般式(III)で表される繰り返し単位とを含むポリマー、及び主鎖構造に下記一般式(IV)〜(VII)のいずれかで表される繰り返し単位を有するポリマーを合成するための前記各化合物は、市販されているものを使ってもよく、また容易に合成することもできる。
本発明にかかるポリマーは、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
モノマーの合成法としては、例えば丸善株式会社 日本化学会編の「第5版 実験科学講座16 有機化合物の合成(IV)」におけるエステル合成の項目や「第5版 実験科学講座26 高分子化学」におけるモノマーの取り扱い、精製の項目などを参考とすることができる。
【0108】
〔ガス分離膜の製造方法〕
本発明のガス分離膜において、実質的に分離に寄与する活性分離層(第二層)を形成する手段として、多孔質性の支持体の少なくとも表面に塗布により膜を形成することが好ましい。塗布の方法としては、とくに制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスピンコート法、バー塗布、ダイコート塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビアコート、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、コンマロール法、キスコート法、スクリーン印刷、インクジェット印刷、等が挙げられる。溶媒としては分離活性層材料を可溶とするものであれば、特に制限はなく、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、クロロホルム、塩化メチレン、アセトン、ジオキサン、酢酸メチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの水溶性溶媒あるいは有機溶媒から選ばれる1種あるいは2種以上を混合液として用いても良い。溶媒の使用量は、第二層を形成する組成物中の全固形分に対して0.1〜50質量倍が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量倍であり、特に1〜15質量倍が好ましい。
【0109】
本発明のガス分離膜の製造方法において、前記第三層は、前記一般式(II)〜(III)で表される繰り返し単位に対応するモノマーを含む第三層形成用の組成物を前記第二層上に流延し、活性放射線を照射又は加熱により硬化させることにより形成することが可能である。また、活性放射線の照射と加熱とを組み合わせて第三層形成用の組成物を硬化させることもできる。前記一般式(IIa)〜(IXa)で表される化合物を含む組成物に活性放射線を照射することにより前記一般式(II)〜(IX)で表される繰り返し単位を含むポリマーを形成し、第三層を形成することが好ましい。
【0110】
好ましくは後述する重合開始剤を含有し、活性放射線の照射により硬化することにより形成されるガス分離膜である。ここで活性放射線とは、その照射により膜組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。なかでも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。
【0111】
熱硬化の場合、40℃〜250℃で加熱することが好ましく、40℃〜200℃で加熱することがより好ましい。加熱時間は使用する膜素材、濃度、開始剤あるいは架橋剤の添加量によって影響を及ぼされるため、一概に決められるものではなく膜を形成するのに十分な温度と時間により決まるものであるが一般的に10分間〜24時間が好ましく、1時間〜12時間がより好ましい。加熱は各種オーブン、ホットプレート、送風機等により行うことができる。
また、第二層及び第三層の架橋ポリマーにおいて残存する未反応活性点を失活させるあるいは完全に重合及び膜硬化を進行させる観点で、活性放射線照射後に、更に加熱してもよい。この場合、40℃〜250℃で加熱することが好ましく、40℃〜200℃で加熱することがより好ましい。加熱時間は10分間〜12時間が好ましく、10分間〜6時間がより好ましい。
【0112】
本発明において、紫外線を使用する場合には、後述の光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は、重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。電子線加速器としてはスキャニング方式、ダブルスキャニング方式又はカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が30〜1000kV、好ましくは50〜300kVである。吸収線量として好ましくは5〜200kGy(0.5〜20Mrad)、より好ましくは20〜100kGy(2〜10Mrad)である。加速電圧及び吸収線量が上記範囲内であると、十分な量のエネルギーが透過し、エネルギー効率がよい。電子線を照射する雰囲気は窒素雰囲気により酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましく、この範囲内では表面近傍の架橋、硬化反応が良好に進む。
【0113】
紫外線光源としては、水銀灯が用いられる。水銀灯は20〜240W/cmのランプを用い、速度0.3〜20m/分で使用される。膜と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。卓上型紫外線硬化装置を用いる場合は、1秒〜10分程度、素材、環境により光量、光源の配置を適宜調整したうえで硬化させるのが望ましい。
【0114】
放射線硬化装置、条件などについては、「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000年、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。硬化時に加熱工程を併用してもよい。
【0115】
〔重合開始剤〕
本発明のガス分離膜を形成する工程において、ラジカル重合開始剤を添加することが好ましく、光重合開始剤を添加することが特に好ましい。
本発明における光重合開始剤は光の作用、又は、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物である。
光重合開始剤は、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0116】
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。更には、F.D.Saeva,Topics in Current
Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的若しくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0117】
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
【0118】
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0119】
(b)芳香族オニウム塩としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号明細書、同233567号明細書、同297443号明細書、同297442号明細書、同279210号明細書、及び同422570号各明細書、米国特許3902144号明細書、同4933377号明細書、同4760013号明細書、同4734444号明細書、及び同2833827号明細書各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、及び特公昭46−42363号公報の各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、更には特公昭52−147277号公報、同52−14278号公報、及び同52−14279号公報の各公報記載の化合物が好適に使用される。これらは活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0120】
(c)「有機過酸化物」としては分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0121】
(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0122】
(e)ケトオキシムエステルとしては3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0123】
本発明に用いることができる光重合開始剤の他の例である(f)ボレート塩の例としては米国特許3,567,453号明細書、同4,343,891号明細書、ヨーロッパ特許109,772号明細書、同109,773号明細書に記載されている化合物が挙げられる。
光重合開始剤の他の例である(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、特開昭63−143537号公報並びに特公昭46−42363号公報に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0124】
光重合開始剤の他の例である(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報に記載のチタノセン化合物並びに、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報に記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0125】
(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号明細書、同046083号明細書、同156153号明細書、同271851号明細書、及び同0388343号明細書の各明細書、米国特許3901710号明細書、及び同4181531号各明細書、特開昭60−198538号公報、及び特開昭53−133022号公報の各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号明細書、同84515号明細書、同199672号明細書、同044115号明細書、及び同0101122号明細書の各明細書、米国特許4618564号明細書、同4371605号明細書、及び同4431774号明細書の各明細書、特開昭64−18143号公報、特開平2−245756号公報、及び特開平4−365048号公報の各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号公報、特公昭63−14340号公報、及び特開昭59−174831号公報の各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0126】
(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0127】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号明細書に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号明細書に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号明細書に記載の化合物群、又はドイツ特許第3021599号明細書に記載の化合物群、等を挙げることができる。
【0128】
重合開始剤の使用量は好ましくは、重合性化合物の量の0.01質量%〜10質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜5質量%である。
【0129】
〔共増感剤〕
更に本発明のガス分離膜の作製プロセスにおいて、感度を一層向上させる、又は酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として、更に、加えてもよい。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号に記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0130】
別の例としてはチオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報に記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報に記載の水素供与体、特開平6−308727号公報に記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報に記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号明細書記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0131】
〔物性〕
本発明のガス分離膜は、柔軟性の付与及び酸性ガス(具体的には二酸化炭素)/水素の逆の分離選択性を付与するために、気体の拡散係数の大きい柔軟な膜質を達成するという点で、ガラス転移点が50℃未満であることが好ましい。
本発明のガス分離膜には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することもできる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
【0132】
(引張弾性率)
単位断面積当りの引張り応力と応力方向に生じる伸びとの比で表され、引っ張り応力に対する歪をグラフ上にプロットしたときの歪の変化率すなわちグラフの直線部分の傾きが引張弾性率であり、値が小さいほど柔軟性を有し可撓性に有利であることが分かる。
本発明のガス分離膜の引張弾性率は500MPa以上が好ましく、より好ましくは600MPa以上であり、更に好ましくは700MPa以上である。上限値は、1000MPaが好ましく、900MPaがより好ましい。
【0133】
(引張強度)
引張強度は、引張時に材料が耐えうる最大の応力を意味し、本発明のガス分離膜は引張強度が15N/mm以上であり、破断伸度が10%以上であることが好ましく、引張強度が15以上500N/mm以下であり、破断伸度が10以上100%以下であることがより好ましく、引張強度が15以上100N/mm以下であり、破断伸度が10以上50%以下であることが更に好ましい。破断伸度が大きいほど、柔軟性を有して好ましい。
【0134】
(耐熱性)
本発明のガス分離膜は、分離膜をなるべく高温で使用できるようにすることにより分離エネルギーコストを低減する観点から、100℃以上の耐熱性を有することが好ましく、150℃以上の耐熱性がより好ましい。具体的には、100℃以上における高温条件でCO/H分離選択性が100以上であることが好ましい。
【0135】
(ガス分離選択性)
本発明において、第一のガスと第二ガスとの分離選択性とは、ある温度における第一のガスと第二のガスのガス透過率の除算により求めた値をいい、下記式より求めることができる。分離選択性の値が大きいことがガス分離選択性に優れることを意味する。
第一のガス/第二のガス分離選択性=(第一のガス透過率)/(第二のガス透過率)
【0136】
本発明においては、下記式により求められる25℃におけるCOとHとの分離選択性の値が100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。100℃におけるCOとHとの分離選択性の値が100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましい。上限値については、その値が大きければ大きいほど膜の分離性能が優れるため特に制限はないが、25℃及び100℃とも、5,000、好ましくは1,000以下を目安とすることができるが、ガス透過性との兼ね合いで適切な分離選択性を発揮することが好ましい。
CO/H分離選択性=(COガス透過率)/(Hガス透過率)
【0137】
〔可塑剤〕
本発明のガス分離膜は前記柔軟性の付与の観点で可塑剤を含有していてもよい。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、メチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等がある。また、可塑剤として、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、イオン液体(例えば、四級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩など)がある。
【0138】
可塑剤は、膜を柔軟化する作用を有するものであり、第二層及び/又は第三層を構成するポリマーに対して相溶性のよいものである必要がある。一般に、ポリマーに対しては、親水性の高い化合物が相溶性が良好である。親水性の高い化合物の中でも、例えば、直鎖にヘテロ原子を含むエーテル化合物や2級アミンなどの親水性基と疎水性基が交互に続く構造をとるものが好ましく用いられる。-O-や-NH-のような親水性基の存在がPVA及びその誘導体との相溶性を発現し、それ以外の疎水性基がPVA及びその誘導体の分子間力を弱めて柔軟化に働くためである。
【0139】
また、可塑剤としては、ポリビニルアルコール及びその誘導体との間に水素結合を形成しうる水酸基の少ない化合物も好ましく用いられる。このような化合物に該当するのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの二量体、三量体、及び四量体以上の単独多量体や共多量体、ジエタノールアミン、ジメチロールアミンのような2級アミン類である。これらの中でも、立体障害が小さく相溶性にすぐれ、毒性が低いエチレングリコール類(単量体、二量体、三量体、多量体)が可塑剤として特に好ましく用いられる。
【0140】
エチレングリコール類は、その分子量により3種類に大別される。第一に単量体であるエチレングリコール、第二に二量体であるジエチレングリコールと三量体であるトリエチレングリコール、第三に四量体以上のポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、分子量200〜700の液状ポリエチレングリコールと分子量1000以上の固体ポリエチレングリコールに大別され、語尾に平均分子量をつけた名称で市販されているものを用いてもよい。
【0141】
可塑剤の分子量が低分子であるほど、樹脂を柔軟化する効果が高いことから、可塑剤のとして特に好ましく用いられるのは、第一のグループであるエチレングリコール、第二のグループであるジエチレングリコール及びトリエチレングリコール、第三のグループに含まれるテトラエチレングリコール(四量体)であるが、中でも、毒性が低く、樹脂組成物中からの抽出がなく取り扱い性に優れる点で、より好ましく用いられる可塑剤は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールである。また、これらの2種以上の混合物も好ましく用いられる。
【0142】
〔界面活性剤〕
本発明においては、液物性調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる。
界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級アルキルスルホンアミドのアルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、また、この他にもアルキルベタインやアミドベタインなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などを含めて、従来公知である界面活性剤及びその誘導体から適宜選ぶことができる。
【0143】
〔高分子分散剤〕
高分子分散剤として、具体的にはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等が挙げられ、中でもポリビニルピロリドンを用いることも好ましい。
【0144】
前記一般式(I)〜(III)で表される繰り返し単位に対応するモノマーとしては、オリゴマー、プレポリマーとしたものを用いてもよい。高分子化合物を得る上での重合体については、ブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体などのいずれの形態を有する共重合体でも良いが、特にブロック共重合体やグラフト共重合体を用いる場合には、粘度、相溶性の観点で好ましい。
【0145】
前記第一層(多孔質膜)、分離選択層である第二層及び第三の層の膜厚は、特に限定されるものではないが、ガス透過性を考慮すると第二層及び第三層は透過性、分離選択性を発現する限りにおいてできる限り薄いことが望ましい。
第二層及び第三層の合計膜厚は、第一層の膜厚に対して、0.01〜50%が好ましく、更に好ましくは0.01〜10%であり、より好ましくは0.1〜1%である。
第二層と第三層との膜厚比は、特に限定されるものではないが、第二層は分離性を、第三層は表面保護及びピンホール抑制が主たる役割を担うため、第三層は第二層よりも薄く、かつできる限り薄層であることが望ましく、好ましくは第三層は第二層の1/2程度の膜厚であり、より好ましくは1/3程度の膜厚であり、更に好ましくは1/5程度の膜厚である。
【0146】
第三層において、一般式(II)又は一般式(III)のような架橋構造を複数有する繰り返し単位の組成比が増加するに従い、分子構造の影響は多大にあるものの概して膜の強度、分離選択性は向上するが気体の透過性は低下する傾向があるため、それぞれ組成比として1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲を目安として用いることが好ましいが、この範囲に限定されることなく、ガス分離の目的(回収率、純度など)に応じて組成比を変えることによりガス透過性と分離選択性を調整されるものである。また本発明のガス分離膜の分離に実質的に寄与する緻密層は第二層であるが、第三層単独においても分離選択性が発現することを何ら否定するものではない。
【0147】
本発明のガス分離膜を形成する条件に特に制限はないが、温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜80℃がより好ましく、5〜50℃が特に好ましい。
【0148】
本発明においては、膜を形成時に空気や酸素などの気体を共存させてもよいが、不活性ガス雰囲気下であることが望ましい。
【0149】
また、本発明のガス分離膜を作製する際に、媒体として有機溶剤を添加することができる。具体的に使用できる有機溶剤としては特に限定されるものではないが、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等の脂肪族ケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ジブチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0150】
本発明のガス分離膜において、分離活性層(第二層)の膜厚は0.01〜200μmであることが好ましく、0.1〜150μmであることがより好ましく、更に好ましくは0.1〜130μmである。第二層よりもガス透過性の高い第三層の膜厚は好ましくは0.005〜100μmであり、より好ましくは0.05〜60μmであり、更に好ましくは0.1〜30μmである。
【0151】
〔複合膜〕
本発明のガス分離膜は、多孔質膜である第一層の少なくとも表面に、分離活性層である第二層を形成することが好ましい。第一層の少なくとも表面に、分離活性層形成用の組成物を、塗布又は浸漬し、活性放射線を照射することにより形成することがより好ましい。
分離活性層(第二層)は、多孔質膜(第一層)の表面及び内面に形成してもよく、少なくとも表面に形成して複合膜とすることができる。多孔質膜(第一層)の少なくとも表面に、分離活性層(第二層)を形成することで、高分離選択性と高ガス透過性、更には機械的強度を兼ね備えるという利点を有する複合膜とすることができる。分離活性層の膜厚としては機械的強度、分離選択性を維持しつつ高ガス透過性を付与する条件において可能な限り薄膜であることが好ましい。
図1及び図2に、本発明のガス分離膜が複合膜である場合の一態様を例示する。図1及び図2に示すガス分離膜は、多孔質の第一層1と、分離活性層である第二層2と、第三層3とをこの順に有する。第一層1は、疎水性の多孔質層11と親水性の多孔質層12の積層体であり、第二層2は部分的に親水性の多孔質層12に浸透し、第一層ともに複合膜を形成している。なお、第三層3と第二層2との相溶性によっては第三層3と第二層2に明確な境界が生じない場合や、第三層3の浸透性が著しい場合は図2のような膜構成になることもある。
【0152】
〔好ましい範囲の構成〕
本発明のガス分離膜の好ましい範囲の構成について説明する。本発明のガス分離膜は、好ましくは、分子量が100〜100,000の有機アミン、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ金属リン酸塩と、少なくとも1種の一般式(I)で表される繰り返し単位を含む共重合体とから、膜厚0.01〜200μmの分離活性層が形成されており、更にその分離活性層の少なくとも表面にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリシロキサン及びポリオレフィンより選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含む架橋ポリマーから膜厚0.005〜100μmで形成されている層を含むガス分離膜であり、
【0153】
より好ましくは、分子量が100〜5,000の有機アミン、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ金属リン酸塩と、少なくとも1種の一般式(I)で表される繰り返し単位を含む共重合体とから、膜厚0.01〜150μmの分離活性層が形成されており、更にその分離活性層の少なくとも表面にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリシロキサンより選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含む架橋ポリマーから膜厚0.05〜60μmで形成されている層を含むガス分離膜であり、
【0154】
更に好ましくは、分子量が100〜3,000の有機アミン又はアルカリ金属リン酸塩と、少なくとも1種の一般式(I)で表される繰り返し単位を含む共重合体とから、膜厚0.01〜130μmの分離活性層が形成されており、更にその分離活性層の少なくとも表面に一般式(II)で表される繰り返し単位と一般式(III)で表される繰り返し単位とを含む架橋ポリマーから膜厚0.1〜30μm形成されている層を含むガス分離膜である。
【0155】
〔ガス混合物の分離方法〕
本発明のガス混合物の分離方法は、少なくとも1種の酸性ガスと少なくとも1種の非酸性ガスを含むガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを気体分離膜によって分離する方法において、本発明のガス分離膜を用いる。
酸性ガスとしては、二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SOx)、及び窒素酸化物(NOx)などが挙げられ、非酸性ガスとしては、水素、メタン、窒素、及び一酸化炭素などが挙げられる。
酸性ガスが二酸化炭素又は硫化水素であることが好ましい。
【0156】
本発明のガス分離膜を用いる気体の分離方法において、原料の気体混合物の成分は特に規定されるものではないが、ガス混合物の主成分が二酸化炭素及びメタン又は二酸化炭素及び水素であることが好ましい。ガス混合物が二酸化炭素や硫化水素のような酸性ガス共存下で特に優れた性能を発揮し、好ましくは二酸化炭素とメタン等の炭化水素、二酸化炭素と窒素、二酸化炭素と水素の分離において優れた性能を発揮する。
【0157】
〔ガス分離膜モジュール・気体分離装置〕
本発明のガス分離膜はガス分離膜モジュールとすることができる。また、本発明のガス分離膜又はガス分離膜モジュールを用いて、ガスを分離回収又は分離精製させるための手段を有する装置とすることができる。
本発明のガス分離膜はモジュール化して好適に用いることができる。モジュールの例としては、スパイラル型、中空糸型、プリーツ型、管状型、プレート&フレーム型などが挙げられる。また本発明の高分子膜は、例えば、特開2007−297605号に記載のような吸収液と併用した膜・吸収ハイブリッド法としての気体分離回収装置に適用してもよい。
【0158】
上記の優れた特性を有する本発明のガス分離膜は、ガス分離回収法、ガス分離精製法として好適に用いることができる。
【実施例】
【0159】
以下に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に示さない限り質量基準とする。
【0160】
(実施例1)
ポリビニルアルコール(以下、PVA)/ポリアクリル酸(以下、PAA)共重合体(住友精化製、吸水性樹脂SSゲル)1gに水20gを加えた後、室温で攪拌してゲルを溶解させる。次に、これにグルタルアルデヒド(25%水溶液)を0.136g加えた後、95℃の温度条件下で15時間攪拌する。そして、これに炭酸セシウム(酸性ガスキャリア)を2.33g加えて更に室温で攪拌することでキャスト溶液(I)を得た。10cm×10cmの平滑かつ清浄なガラス板上に疎水性PVDF膜(ミリポア製、疎水性デュラポア、孔径:0.22μm、膜の直径47mm)と更にその上に親水性PVDF(ミリポア製、親水性デュラポア孔径:0.1μm、膜の直径:47mm)を重ねて静置したのち(第一層)、前記のキャスト溶液(I)を流延、アプリケータで塗布して、一晩自然乾燥させて、PVA/PAAゲル膜(第二層:分離活性層)を形成した(第一層の膜厚:240μm、第二層の膜厚120μm)。
次に、30ml褐色バイアル瓶に、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(和光純薬製、M−18)を2.8g、ポリエチレングリコールジメタクリレート(アルドリッチ社製、製品番号:43,746−8、Mn=875、M−3)を1.2gを混合して30分攪拌したのち、更に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(アルドリッチ社製、製品番号:40,561−2)を0.04g加えて、更に30分攪拌してキャスト液(II)とした。(粘度:130mPa・s、固形分濃度99質量%)
一晩自然乾燥させた上記PVDF膜(第一層)とPVA/PAAゲル膜(第二層)からなる積層体を静かに置き、前記のキャスト液(II)を前記のPVA/PAAゲル膜に流延したあと、更にキャストナイフで余分なキャスト液を切り取り、HOYA社製UV照射装置(EXECURE3000)を用いて、60mWにて60秒間露光させ、第三層を形成した。その後、ガラス板から膜を剥離したのち、更に120℃で2時間、加熱した。得られた膜の膜厚をエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製、K−402B)により測定した。(第一層の膜厚:240μm、第二層の膜厚120μm、第三層の膜厚:5μm)
【0161】
(実施例2)
前記実施例1の炭酸セシウムの代わりに、酸性ガスキャリアとして、2,3-ジアミノプロピオン酸一塩酸塩を0.25g、水酸化セシウムを0.54g(3,3-ジアミノプロピオン酸に対して2当量)に変えた以外は同様にしてガス分離膜を作製した。(第一層の膜厚:250μm、第二層の膜厚140μm、第三層の膜厚:15μm)
【0162】
(実施例3)
前記実施例1の炭酸セシウムの代わりに、酸性ガスキャリアとして、PAMAMデンドリマー(アルドリッチ社製、品番:412368、分子量516.68、有機アミン)0.5gに変えた以外は同様にしてガス分離膜を作製した。(第一層の膜厚:250μm、第二層の膜厚140μm、第三層の膜厚:22μm)
【0163】
(実施例4)
前記実施例1のポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(M−18)2.8gを、ポリエチレングリコールジメタクリレート(M−3)1.2gをそれぞれ、モノマー(M−15)2.0g、モノマー(M−6)2.0gに変えた以外は同様にしてガス分離膜を作製した。(キャスト液(II)の粘度:250mPa・s、固形分濃度99質量%)((第一層の膜厚:250μm、第二層の膜厚130μm、第三層の膜厚:13μm)
【0164】
(実施例5)
前記実施例1のポリエチレンメチルエーテルメタクリレート(M−18)2.8gを、ポリエチレングリコールジメタクリレート(M−3)1.2gを、モノマー(M−27)4.0gに変えた以外は同様にしてガス分離膜を作製した。(第一層の膜厚:250μm、第二層の膜厚125μm、第三層の膜厚:10μm)
【0165】
(実施例6)
前記実施例1のPVA/PAA共重合体を、PVA(Mw=88,000、関東化学社製)に変えた以外は同様にしてガス分離膜を作製した。(第一層の膜厚:240μm、第二層の膜厚130μm、第三層の膜厚:8μm)
【0166】
(実施例7)
α−ジメチルビニルシリル−ω−ジメチルビニルシロキシ−ポリジメチルシロキサンであるGelest社製のDMS−V41(商品名)5.8gとα−ヒドロジメチルシリル−ω−ヒドロジメチルシロキシ−ポリジメチルシロキサンであるGelest社製のDMS−H41(商品名)6.3gとトルエン50gを混合し、ここに白金触媒としてユミコアプレシャスメタルズ社製PT−VTSC−3.0X(商品名)を14mg添加し窒素雰囲気下80℃で4時間加熱した。得られたポリマーはMp=180,000であった。このポリマーをトルエンに溶解して1重量%の溶液とした。(粘度:350mPa・s) 実施例1のキャスト液(II)の代わりにこのジメチルシロキサン溶液を用いて同様にしてガス分離膜を作製した。(第一層の膜厚:240μm、第二層の膜厚120μm、第三層の膜厚:5μm)
【0167】
(実施例8)
前記実施例1において、キャスト液(II)を5度以上重ね塗りした以外は同様にして総膜厚が305μm(第一層の膜厚:250μm、第二層の膜厚125μm、第三層の膜厚:55μm))のガス分離膜を作製した。
【0168】
(実施例9)
前記実施例1において、キャスト液(II)の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(アルドリッチ社製、製品番号:40,561−2)0.04gを、2,2‘−アゾイソブチロニトリル(和光純薬社製、製品番号:019−04932)0.04gに、
60mWにて60秒間露光させた工程を、窒素雰囲気下80℃で3時間加熱に変更した以外は同様にして総膜厚が375μm(第一層の膜厚:250μm、第二層の膜厚120μm、第三層の膜厚:5μm)のガス分離膜を作製した。
【0169】
(比較例1)
特開2009-195000号を参考とし、PVA/PAA共重合体(住友精化製、吸水性樹脂SSゲル)1gに水を加えた後、室温で攪拌してゲルを溶解させる。次に炭酸セシウムを2.33g、次にグルタルアルデヒド(25%水溶液)0.136gを30mlのバイアル瓶の秤量し、これに水20gを加えて室温で一昼夜攪拌して溶解させてキャスト液を得る。次にこのキャスト液の気泡を除去するために遠心分離(回転数5000rpmで30分間)を行い、このキャスト液を親水性PVDF多孔膜(ミリポア製、親水性デュラポアVVLP、孔径:0.1μm、膜の直径47mm)と疎水性PVDF多孔膜(ミリポア製、疎水性デュラポアGVHP、膜厚125μm、細孔径0.22μm)を2枚重ねた層状多孔膜の親水性PVDF多孔膜側の面上に、アプリケータでキャストし、キャスト後の親水性PVDF多孔膜を室温で半日自然乾燥させる。自然乾燥させたPTFE多孔膜を更に、120℃程度の温度で、2時間程度熱架橋し、ガス分離膜とする。(第一層の膜厚:240μm、第二層の膜厚120μm)
【0170】
(比較例2)
特開2008-36463号を参考とし、詳細にはPVA/PAA共重合体(例えば、住友精化製の仮称SSゲル)を1g、2,3-ジアミノプロピオン酸一塩酸塩を0.25g、水酸化セシウムを0.54g(2,3-ジアミノプロピオン酸に対して2当量)、添加剤(イオン液体AEB等)0.2gを30mlのバイアル瓶の秤量し、これに水20gを加えて室温で一昼夜攪拌して溶解させてキャスト液を得る。キャスト溶液中に添加剤を加えた点以外は、比較例1の作製方法と同様にしてガス分離膜とする。(第一層の膜厚:245μm、第二層の膜厚130μm)
【0171】
(比較例3)
WO2006/50531を参考として、200mlのナスフラスコにPVA(Mw=88,000、関東化学製)を13.15g、水を88.54g添加して80℃で加熱攪拌し、完全に溶解させたところに37%HCHOを3.19g、水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム:2.01g、水:8.72g)、ポリエチレンイミン7.38g、水44.9g、更にN,N−ジメチルグリシン2.77g、水酸化リチウム9.1gをゆっくりと添加し、80−85℃で30分間攪拌した。このキャスト液を用いた以外は比較例1の作製方法と同様にしてガス分離膜とする。(第一層の膜厚:240μm、第二層の膜厚120μm)
【0172】
(比較例4)
比較例1のキャスト液(I)を親水性PVDF多孔質膜上に5度以上重ね塗りした以外は同様にして総膜厚300μm((第一層の膜厚:250μm、第二層の膜厚175μm)のガス分離膜を作製した。
【0173】
(Hガス透過性、COガス透過性)
ガス透過率測定装置(GTRテック社製GTR−10XF)にて、水素(H)及び二酸化炭素(CO)のガス透過率を、それぞれCO/H=5/95の混合ガスを用いて、25℃相対湿度90%の条件と100℃相対湿度90%の条件にて測定した。
【0174】
(CO/H分離選択性)
ガス透過率測定装置(GTRテック社製GTR−10XF)にて水素(H)、二酸化炭素(CO)のガス透過率を、それぞれCO/H=5/95の混合ガスを用いて、室温(25℃)相対湿度90%の条件と100℃相対湿度90%の条件にて測定し、その透過率の値を除算すること(下記式)により分離選択性を求めた。
CO/H分離選択性=(COガス透過率)/(Hガス透過率)
【0175】
(第三層/第二層ガス透過性比)
第二層を形成する架橋ポリマー膜と第三層を形成する架橋ポリマー膜のガス透過性を比較するために酸性ガスキャリアを除いたキャスト液(I)及びキャスト液(II)をそれぞれ親水性PVDF(ミリポア製、親水性デュラポア孔径:0.1μm、膜の直径:47mm)に均一に流延し、実施例1と同様にそれぞれ乾燥及び光照射により硬化膜を作製した。(膜厚:120μm) 二酸化炭素(CO)のガス透過率を前記と同様に測定して(25℃相対湿度90%の条件)、第三層と第二層とのガス透過性の比を求めた。
【0176】
(サンプルエラー率)
前記実施例1〜9及び比較例1〜4に記載のガス分離膜を各々50サンプル作製し、それぞれの水素の透過率を測定し、ガス透過率値が1×106ml/m・24h・atmを越えたサンプルをピンホール有りの膜として判断し、作製サンプル数からその数を除した値をサンプルエラー率として算出した。
【0177】
前記の実施例1〜9及び比較例1〜4に記載のガス分離膜の、総膜厚、COガス透過性(25℃、100℃)、CO/H分離選択性(25℃、100℃)、第三層/第二層ガス透過性比、及びサンプルエラー率の結果を以下の表1に示す。
【0178】
【表1】

【0179】
本発明のガス分離膜は常温(25℃)及び高温(100℃)でCO/H分離選択性に優れ、かつピンホールの少ない良好なガス分離膜を作製する方法を提供することが可能となっている。また本発明のガス分離膜は比較例と同程度の膜厚であってもガス透過性が高いことが分かる(実施例8と比較例4との比較)。
【0180】
(折り曲げ試験)
このようにして得られたガス分離膜を室温、乾燥条件において180度折り曲げては戻す操作を50回実施したときの膜形状において目視評価において割れ・クラックの状態を3段階で評価を実施した。
◎:膜に割れ・クラックが全く発生しない。
○:膜の割れ・クラックの発生が2枚以下
△:膜の割れ・クラックの発生が5枚以下
×:膜の割れ・クラックの発生が50%以上
【0181】
(耐圧力試験)
前記実施例及び比較例において得られた複合膜を直径47mmの円形状に切り抜き、セルに挟み込んだのちオートクレーブにて表3の加圧条件にしたのち、セルから膜を取り出し、目視評価において割れ・クラックの状態を4段階で評価を実施し耐圧力試験とした。折り曲げ試験の結果と合わせて以下の表2に示す。
◎:膜に割れ・クラックが全く発生しない。
○:膜の割れ・クラックの発生が2枚以下
△:膜の割れ・クラックの発生が5枚以下
×:膜の割れ・クラックの発生が50%以上
【0182】
【表2】

【0183】
本発明のガス分離膜は折り曲げ試験及び加圧条件にも耐え得る可撓性、耐圧性が付与されている。
【0184】
(引張弾性率の測定)
各サンプルから、1.0cm×5.0cmのサイズのサンプル片を切り出し、25℃、相対湿度60%で一晩放置後、引張速度3mm/分の条件下、テンシロン(東洋ボールドウィン(株)製、テンシロンRTM−25)を用いて引張弾性率を測定した。(チャック間距離3cm)。測定は3サンプルに対して行い、それらの測定結果の平均値を以って引張弾性率とした。
【0185】
(引張強度の測定)
各サンプルをチャック間25mm、速度50mm/分で引っ張っときの破断強さを、引っ張り前の見かけの断面積で除した値を引張強度とした。
【0186】
(破断伸度の測定)
破断伸度は,引張試験で破断に到るまでの変位を初期チャック間距離で除した値とし,百分率で記した。
【0187】
【表3】

【0188】
表3中、「×」は評価初期に膜破壊が生じたため有効なデータとして取得できなかったことを意味する。
【0189】
上記の結果から本発明のガス分離膜は、折り曲げ試験の結果と各種引張弾性率、引張強度、破断伸度10%以上と柔軟性が付与されたことにより可撓性、機械強度、圧縮強さにも優れ、耐圧試験の結果から加圧条件にも十分な耐久性が付与されていることが分かる。
【0190】
上記の結果より、本発明のガス分離膜は二酸化炭素/水素分離選択性に優れ、折り曲げ試験にも耐え得る可撓性が付与されており、ピンホールの少ない良好なガス分離膜を作製する方法を提供することを可能とした。また本発明のガス分離膜は機械強度に優れる。本発明のガス分離膜により、優れた気体分離方法、ガス分離膜モジュール、ガス分離膜モジュールを含むガス分離、ガス精製装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0191】
1 第一層
2 第二層(分離活性層)
3 第三層
11 疎水性多孔質層
12 親水性多孔質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを分離するためのガス分離膜であって、
多孔質の第一層と、
前記酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物を含有する分離活性層である第二層と、
ガス透過性の高い第三層と、をこの順に有することを特徴とするガス分離膜。
【請求項2】
前記第三層が架橋ポリマーを含有することを特徴とする請求項1に記載のガス分離膜。
【請求項3】
前記第二層が、少なくとも1種の親水性の架橋ポリマーを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス分離膜。
【請求項4】
前記第二層の親水性の架橋ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセーテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミンから選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することを特徴とする請求項3に記載のガス分離膜。
【請求項5】
前記第三層の架橋ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリシロキサン、及びポリオレフィンから選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のガス分離膜。
【請求項6】
前記第二層の親水性の架橋ポリマーが、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のガス分離膜。
【化1】

(一般式(I)中Lはx価の連結基であり、xは2以上の整数を表す。)
【請求項7】
前記第三層の架橋ポリマーが、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項にガス分離膜。
【化2】

(一般式(II)中、Rは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の正の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Rはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表す。複数存在するR、J、W、R、及びRaは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項8】
前記第三層の架橋ポリマーが、少なくとも1種の下記一般式(III)で表される繰り返し単位と、少なくとも1種の前記一般式(II)で表される繰り返し単位とを含むポリマーであることを特徴とする請求項7に記載のガス分離膜。
【化3】

(一般式(III)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Rはアルキレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。複数存在するJ、W、R、R、R、及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記第三層の架橋ポリマーが、主鎖構造に下記一般式(IV)、一般式(V)、一般式(VI)、及び下記一般式(VII)から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリマーであることを特徴とする請求項5に記載のガス分離膜。
【化4】

【請求項10】
前記酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、有機アミン、イオン液体、及び金属錯体から選択される少なくとも1種の酸性ガスキャリアであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のガス分離膜。
【請求項11】
引張弾性率が500MPa以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のガス分離膜。
【請求項12】
引張強度が15N/mm以上であり、破断伸度が10%以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに1項に記載のガス分離膜。
【請求項13】
100℃以上の耐熱性を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のガス分離膜。
【請求項14】
少なくとも1種の酸性ガスと少なくとも1種の非酸性ガスを含むガス混合物から少なくとも1種の酸性ガスを、請求項1〜13のいずれか1項に記載のガス分離膜により分離する、ガス混合物の分離方法であって、
前記酸性ガスが、二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SOx)、及び窒素酸化物(NOx)から選択される少なくとも1種であり、
前記非酸性ガスが水素、メタン、窒素、及び一酸化炭素から選択される少なくとも1種であることを特徴とするガス混合物の分離方法。
【請求項15】
前記酸性ガスが二酸化炭素又は硫化水素であることを特徴とする請求項14に記載のガス混合物の分離方法。
【請求項16】
前記ガス混合物の主成分が、二酸化炭素及びメタン又は二酸化炭素及び水素であることを特徴とする請求項15に記載のガス混合物の分離方法。
【請求項17】
請求項2〜13のいずれか1項に記載のガス分離膜の製造方法であって、
前記第三層を、前記架橋ポリマーのモノマーを含む組成物に活性放射線を照射することまたは前記架橋ポリマーのモノマーを含む組成物を熱硬化することにより形成することを特徴とするガス分離膜の製造方法。
【請求項18】
前記架橋ポリマーのモノマーを含む組成物が、固形分濃度が10〜99質量%で、粘度が50〜5000mPa・sのキャリア液であり、
該キャリア液を前記第二層上に流延し、活性放射線又は加熱により硬化させることで形成することを特徴とする請求項17に記載のガス分離膜の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のガス分離膜を含むガス分離膜モジュール。
【請求項20】
請求項19に記載のガス分離膜モジュールを少なくとも1種を含む気体分離装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−183379(P2011−183379A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27908(P2011−27908)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】