説明

ガス制御システム及びガス制御方法

【課題】可燃性ガスの発熱量を簡易かつ的確に測定し、可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を適切に制御可能なガス制御システムを提供する。
【解決手段】発熱素子が複数の発熱温度で発熱したときの可燃性ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を計測する計測機構と、複数の発熱温度に対する放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、発熱量算出式の複数の発熱温度に対する放熱係数又は熱伝導率の独立変数に、複数の発熱温度に対する可燃性ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を代入し、可燃性ガスの発熱量の値を算出する発熱量算出部と、を含む発熱量算出システム21Aを備えるガス制御システムを提供する。ガス制御システムは、可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を制御する制御装置150をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス技術に係り、ガス制御システム及びガス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧米、アジアではガス田からパイプラインを用いて天然ガスを供給することが一般的である。天然ガスは、主成分のメタン等のアルカン以外に、不純物としてノンカロリー成分である窒素及び炭酸ガス等を含む。そのため、単位時間当たりの供給熱量が大きく変動する場合がある。可燃性ガスを燃焼させる場合、不完全燃焼をさけるため、完全燃焼に必要な理論空気量から余裕を見た空気量、いわゆる過剰空気量が可燃性ガスに混合されている。特に、天然ガスの場合、熱量が大きく変動することを見越して、より過剰な空気量が混合される傾向にある。しかし、過剰空気量が可燃性ガスに混合されると、余剰空気が熱を奪い、熱交換で得られる熱量を低下させる。
【0003】
そのため、可燃性ガスを効率よく燃焼させるために、空気と混合する前の可燃性ガスの組成をガスクロマトグラフィ装置で分析し、可燃性ガスの熱量を計測することが提案されている。また、空気等の支燃性ガスと、可燃性ガスと、の空燃比を理論空燃比に近づけるために、燃焼排気ガス中の酸素濃度を酸素センサで測定し、測定された酸素濃度に基づいて空燃比を制御するシステムも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−55952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ガスクロマトグラフィ装置は高価であり、また分析に要する時間が長い。そのため、ガスクロマトグラフィ装置は、可燃性ガスの組成の変動をリアルタイムに監視するには適していない。酸素センサについても、酸素濃度の検出に時間がかかる場合がある。そこで、本発明は、可燃性ガスの発熱量を簡易かつ的確に測定し、可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を適切に制御可能なガス制御システム及びガス制御方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、(a)発熱素子が複数の発熱温度で発熱したときの可燃性ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を計測する計測機構と、(b)複数の発熱温度に対する放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、(c)発熱量算出式の複数の発熱温度に対する放熱係数又は熱伝導率の独立変数に、複数の発熱温度に対する可燃性ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を代入し、可燃性ガスの発熱量の値を算出する発熱量算出部と、(d)可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を制御する制御装置と、を備えるガス制御システムが提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、(a)発熱素子が複数の発熱温度で発熱したときの可燃性ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を計測することと、(b)複数の発熱温度に対する放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、(c)発熱量算出式の複数の発熱温度に対する放熱係数又は熱伝導率の独立変数に、複数の発熱温度に対する可燃性ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を代入し、可燃性ガスの発熱量の値を算出することと、(d)可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を制御することと、を含むガス制御方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、(a)可燃性ガスが流される流路と、(b)流路に配置された測温素子と、(c)流路に配置された、複数の発熱温度で発熱する発熱素子と、(d)可燃性ガスの温度に依存する測温素子からの電気信号の値と、複数の発熱温度のそれぞれにおける発熱素子からの電気信号の値と、を計測する計測モジュールと、(e)測温素子からの電気信号及び複数の発熱温度における発熱素子からの電気信号を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、(f)発熱量算出式の測温素子からの電気信号の独立変数、及び発熱素子からの電気信号の独立変数に、測温素子からの電気信号の値、及び発熱素子からの電気信号の値を代入し、可燃性ガスの発熱量の値を算出する発熱量算出部と、(g)可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を制御する制御装置と、を備えるガス制御システムが提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、(a)可燃性ガスの温度に依存する測温素子からの電気信号の値を得ることと、(b)可燃性ガスに接する発熱素子を複数の発熱温度で発熱させることと、(c)複数の発熱温度のそれぞれにおける発熱素子からの電気信号の値を得ることと、(d)測温素子からの電気信号及び複数の発熱温度における発熱素子からの電気信号を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、(e)発熱量算出式の測温素子からの電気信号の独立変数、及び発熱素子からの電気信号の独立変数に、測温素子からの電気信号の値、及び発熱素子からの電気信号の値を代入し、可燃性ガスの発熱量の値を算出することと、(f)可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を制御することと、を含むガス制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可燃性ガスの発熱量を簡易かつ的確に測定し、可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を適切に制御可能なガス制御システム及びガス制御方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロチップの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロチップの図1のII−II方向から見た断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る発熱素子に関する回路図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る測温素子に関する回路図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る発熱素子の発熱温度と、ガスの放熱係数の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る発熱量算出式作成システムの第1の模式図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る発熱量算出式作成システムの第2の模式図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る発熱量算出システムの模式図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る発熱量の測定方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第1の実施の形態の実施例に係るサンプル混合ガスの組成と、発熱量と、の関係を示す表である。
【図12】本発明の第1の実施の形態の実施例に係るサンプル混合ガスの算出された発熱量と、真の発熱量と、を示すグラフである。
【図13】本発明の第1の実施の形態の実施例に係るサンプル混合ガスの真の発熱量と、算出された発熱量と、の関係を示すグラフである。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係るガス制御システムの模式図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係る発熱量算出式作成システムの模式図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る発熱量算出システムの模式図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係るガス制御システムの模式図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る熱伝導率と放熱係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
(第1の実施の形態)
[発熱量算出式作成システム及び発熱量算出式の作成方法]
まず、本発明の第1の実施の形態に係るガス制御システムが用いる発熱量算出式を作成可能な発熱量算出式作成システム及び発熱量算出式の作成方法について説明する。発熱量算出式作成システムは、斜視図である図1、及びII−II方向から見た断面図である図2に示す、マイクロチップ8を備える。マイクロチップ8は、キャビティ66が設けられた基板60、及び基板60上にキャビティ66を覆うように配置された絶縁膜65を備える。基板60の厚みは、例えば0.5mmである。また、基板60の縦横の寸法は、例えばそれぞれ1.5mm程度である。絶縁膜65のキャビティ66を覆う部分は、断熱性のダイアフラムをなしている。さらにマイクロチップ8は、絶縁膜65のダイアフラムの部分に設けられた発熱素子61と、発熱素子61を挟むように絶縁膜65のダイアフラムの部分に設けられた第1の測温素子62及び第2の測温素子63と、基板60上に設けられた保温素子64と、を備える。
【0014】
発熱素子61は、キャビティ66を覆う絶縁膜65のダイアフラムの部分の中心に配置されている。発熱素子61は、例えば抵抗器であり、電力を与えられて発熱し、発熱素子61に接する雰囲気ガスを加熱する。第1の測温素子62及び第2の測温素子63のそれぞれは、例えば抵抗器であり、発熱素子61が発熱する前の雰囲気ガスのガス温度を検出する。なお、第1の測温素子62及び第2の測温素子63のいずれかのみを用いてガス温度を検出してもよい。あるいは、第1の測温素子62が検出したガス温度と、第2の測温素子63が検出したガス温度と、の平均値を、ガス温度として採用してもよい。以下においては、第1の測温素子62及び第2の測温素子63が検出したガス温度の平均値をガス温度として採用する例を説明するが、これに限定されない。
【0015】
保温素子64は、例えば抵抗器であり、電力を与えられて発熱し、基板60の温度を一定に保つ。基板60の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜65の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。キャビティ66は、異方性エッチング等により形成される。また発熱素子61、第1の測温素子62、第2の測温素子63、及び保温素子64のそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。
【0016】
図3に示すように、発熱素子61の一端には、例えば、オペアンプ170の+入力端子が電気的に接続され、他端は接地される。また、オペアンプ170の+入力端子及び出力端子と並列に、抵抗素子161が接続される。オペアンプ170の−入力端子は、直列に接続された抵抗素子162と抵抗素子163との間、直列に接続された抵抗素子163と抵抗素子164との間、直列に接続された抵抗素子164と抵抗素子165との間、又は抵抗素子165の接地端子に電気的に接続される。各抵抗素子162−165の抵抗値を適当に定めることにより、例えば5.0Vの電圧Vinを抵抗素子162の一端に印加すると、抵抗素子163と抵抗素子162との間には、例えば2.4Vの電圧VL3が生じる。また、抵抗素子164と抵抗素子163との間には、例えば1.9Vの電圧VL2が生じ、抵抗素子165と抵抗素子164との間には、例えば1.4Vの電圧VL1が生じる。
【0017】
抵抗素子162及び抵抗素子163の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW1が設けられており、抵抗素子163及び抵抗素子164の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW2が設けられている。また、抵抗素子164及び抵抗素子165の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW3が設けられており、抵抗素子165の接地端子と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW4が設けられている。
【0018】
オペアンプ170の−入力端子に2.4Vの電圧VL3を印加する場合、スイッチSW1のみが通電され、スイッチSW2,SW3,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に1.9Vの電圧VL2を印加する場合、スイッチSW2のみが通電され、スイッチSW1,SW3,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に1.4Vの電圧VL1を印加する場合、スイッチSW3のみが通電され、スイッチSW1,SW2,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に0Vの電圧VL0を印加する場合、スイッチSW4のみが通電され、スイッチSW1,SW2,SW3は切断される。したがって、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉によって、オペアンプ170の−入力端子に0V又は3段階の電圧のいずれかを印加可能である。そのため、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉によって、発熱素子61の発熱温度を定める印加電圧を3段階に設定可能である。
【0019】
図1及び図2に示す発熱素子61は、温度によって抵抗値が変化する。発熱素子61の発熱温度THと、発熱素子61の抵抗値RHの関係は、下記(1)式で与えられる。
RH = RSTD×[1+α(TH-TSTD) + β(TH-TSTD)2] ・・・(1)
ここで、TSTDは標準温度を表し、例えば20℃である。RSTDは標準温度TSTDにおける予め計測された抵抗値を表す。αは1次の抵抗温度係数、βは2次の抵抗温度係数を表す。また、発熱素子61の抵抗値RHは、発熱素子61の駆動電力PHと、発熱素子61の通電電流IHから、下記(2)式で与えられる。
RH = PH / IH2 ・・・(2)
あるいは発熱素子61の抵抗値RHは、発熱素子61にかかる電圧VHと、発熱素子61の通電電流IHから、下記(3)式で与えられる。
RH = VH / IH ・・・(3)
【0020】
ここで、発熱素子61の発熱温度THは、発熱素子61と雰囲気ガスの間が熱的に平衡になったときに安定する。なお、熱的に平衡な状態とは、発熱素子61の発熱と、発熱素子61から雰囲気ガスへの放熱とが釣り合っている状態をいう。下記(4)式に示すように、平衡状態における発熱素子61の駆動電力PHを、発熱素子61の発熱温度THと雰囲気ガスの温度TOとの差で割ることにより、雰囲気ガスの放熱係数MOが得られる。なお、放熱係数MOの単位は、例えばW/℃である。
MO = PH / (TH - TO) ・・・(4)
【0021】
発熱素子61の通電電流IHと、駆動電力PH又は電圧VHは計測可能であるため、上記(1)乃至(3)式から発熱素子61の発熱温度THが算出可能である。また、雰囲気ガスの温度TOは、図1に示す第1の測温素子62及び第2の測温素子63で測定可能である。したがって、図1及び図2に示すマイクロチップ8を用いて、雰囲気ガスの放熱係数MOが算出可能である。
【0022】
マイクロチップ8は、マイクロチップ8の底面に配置された断熱部材18を介して、雰囲気ガスが充填されるチャンバ等に固定される。断熱部材18を介してマイクロチップ8をチャンバ等に固定することにより、マイクロチップ8の温度が、チャンバ等の内壁の温度変動の影響を受けにくくなる。断熱部材18はガラス等からなり、熱伝導率は、例えば1.0W/(m・K)以下である。
【0023】
図4に示すように、第1の測温素子62の一端には、例えば、オペアンプ270の−入力端子が電気的に接続され、他端は接地される。また、オペアンプ270の−入力端子及び出力端子と並列に、抵抗素子261が接続される。オペアンプ270の+入力端子は、直列に接続された抵抗素子264と抵抗素子265との間に電気的に接続される。これにより、第1の測温素子62には、0.3V程度の弱い電圧が加えられる。
【0024】
なお、保温素子64で基板60の温度を一定に保つことにより、発熱素子61が発熱する前のマイクロチップ8の近傍の雰囲気ガスの温度が、基板60の一定の温度と近似する。そのため、発熱素子61が発熱する前の雰囲気ガスの温度の変動が抑制される。温度変動が一度抑制された雰囲気ガスを発熱素子61でさらに加熱することにより、より高い精度で放熱係数MIを算出することが可能となる。
【0025】
ここで、雰囲気ガスが混合ガスであり、混合ガスが、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDの4種類のガス成分からなっていると仮定する。ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDの総和は、下記(5)式で与えられるように、1である。
VA+VB+VC+VD=1 ・・・(5)
【0026】
また、ガスAの単位体積当たりの発熱量をKA、ガスBの単位体積当たりの発熱量をKB、ガスCの単位体積当たりの発熱量をKC、ガスDの単位体積当たりの発熱量をKDとすると、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の単位体積当たりの発熱量を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(6)式で与えられる。なお、単位体積当たりの発熱量の単位は、例えばMJ/m3である。
Q = KA×VA+ KB×VB+ KC×VC+KD×VD ・・・(6)
【0027】
また、ガスAの放熱係数をMA、ガスBの放熱係数をMB、ガスCの放熱係数をMC、ガスDの放熱係数をMDとすると、混合ガスの放熱係数MIは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の放熱係数を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの放熱係数MIは、下記(7)式で与えられる。
MI = MA×VA+ MB×VB+ MC×VC+MD×VD ・・・(7)
【0028】
さらに、ガスの放熱係数は発熱素子61の発熱温度THに依存するので、混合ガスの放熱係数MIは、発熱素子61の発熱温度THの関数として、下記(8)式で与えられる。
MI (TH)= MA(TH)×VA+ MB(TH)×VB+ MC(TH)×VC+MD(TH)×VD ・・・(8)
【0029】
したがって、発熱素子61の発熱温度がTH1のときの混合ガスの放熱係数MI(TH1)は下記(9)式で与えられる。また、発熱素子61の発熱温度がTH2のときの混合ガスの放熱係数MI(TH2)は下記(10)式で与えられ、発熱素子61の発熱温度がTH3のときの混合ガスの放熱係数MI(TH3)は下記(11)式で与えられる。なお、発熱温度TH1、発熱温度TH2、発熱温度TH3は異なる温度である。
MI (TH1)= MA(TH1)×VA+ MB(TH1)×VB+ MC(TH1)×VC+MD(TH1)×VD ・・・(9)
MI (TH2)= MA(TH2)×VA+ MB(TH2)×VB+ MC(TH2)×VC+MD(TH2)×VD ・・・(10)
MI (TH3)= MA(TH3)×VA+ MB(TH3)×VB+ MC(TH3)×VC+MD(TH3)×VD ・・・(11)
【0030】
ここで、発熱素子61の発熱温度THに対して各ガス成分の放熱係数MA(TH),MB(TH),MC(TH),MD(TH)が非線形性を有する場合、上記(9)乃至(11)式は、線形独立な関係を有する。また、発熱素子61の発熱温度THに対して各ガス成分の放熱係数MA(TH),MB(TH),MC(TH),MD(TH)が線形性を有する場合でも、発熱素子61の発熱温度THに対する各ガス成分の放熱係数MA(TH),MB(TH),MC(TH),MD(TH)の変化率が異なる場合は、上記(9)乃至(11)式は、線形独立な関係を有する。さらに、(9)乃至(11)式が線形独立な関係を有する場合、(5)式及び(9)乃至(11)式は線形独立な関係を有する。
【0031】
図5は、天然ガスに含まれるメタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の放熱係数と発熱素子61の発熱温度の関係を示すグラフである。発熱素子61の発熱温度に対して、メタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のそれぞれのガス成分の放熱係数は線形性を有する。しかし、発熱素子61の発熱温度に対する放熱係数の変化率は、メタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のそれぞれで異なる。したがって、混合ガスを構成するガス成分がメタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)であるである場合、上記(9)乃至(11)式は、線形独立な関係を有する。
【0032】
(9)乃至(11)式中の各ガス成分の放熱係数MA(TH1),MB(TH1),MC(TH1),MD(TH1),MA(TH2),MB(TH2),MC(TH2),MD(TH2),MA(TH3),MB(TH3),MC(TH3),MD(TH3)の値は、計測等により予め得ることが可能である。したがって、(5)式及び(9)乃至(11)式の連立方程式を解くと、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDのそれぞれが、下記(12)乃至(15)式に示すように、混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)の関数として与えられる。なお、下記(12)乃至(15)式において、nを自然数としてfnは、関数を表す記号である。
VA=f1[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(12)
VB=f2[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(13)
VC=f3[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(14)
VD=f4[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(15)
【0033】
ここで、上記(6)式に(16)乃至(19)式を代入することにより、下記(16)式が得られる。
Q = KA×VA+ KB×VB+ KC×VC+KD×VD
= KA×f1[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)]
+ KB×f2[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)]
+ KC×f3[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)]
+ KD×f4[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(16)
【0034】
上記(16)式から明らかなように、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)を変数とする方程式で与えられる。したがって、混合ガスの発熱量Qは、gを関数を表す記号として、下記(17)式で与えられる。
Q = g[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3)] ・・・(17)
【0035】
よって、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDからなる混合ガスについて、予め上記(17)式を得れば、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDが未知の検査対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを容易に算出可能であることを、発明者らは見出した。具体的には、発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の検査対象混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)を計測し、(17)式に代入することにより、検査対象混合ガスの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
【0036】
なお、混合ガスのガス成分は、4種類に限定されることはない。例えば、混合ガスがn種類のガス成分からなる場合、まず、下記(18)式で与えられる、発熱素子61の少なくともn−1種類の発熱温度TH1,TH2,TH3,・・・,THn-1に対する混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3),・・・,MI(THn-1)を変数とする方程式を予め取得する。そして、発熱素子61のn−1種類の発熱温度TH1,TH2,TH3,・・・,THn-1に対する、n種類のガス成分のそれぞれの体積率が未知の検査対象混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3),・・・,MI(THn-1)を計測し、(18)式に代入することにより、検査対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
Q = g[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3), ・・・, MI (THn-1) ] ・・・(18)
【0037】
ただし、混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)、プロパン(C38)に加えて、jを自然数として、メタン(CH4)とプロパン(C38)以外のアルカン(Cj2j+2)を含む場合、メタン(CH4)とプロパン(C38)以外のアルカン(Cj2j+2)を、メタン(CH4)とプロパン(C38)の混合物とみなしても、(18)式の算出には影響しない。例えば、エタン(C26)、ブタン(C410)、ペンタン(C512)、ヘキサン(C614)を、下記(19)乃至(22)式に示すように、それぞれ所定の係数を掛けられたメタン(CH4)とプロパン(C38)の混合物とみなして(18)式を算出してもかまわない。
C2H6 = 0.5 CH4 + 0.5 C3H8 ・・・(19)
C4H10 = -0.5 CH4 + 1.5 C3H8 ・・・(20)
C5H12 = -1.0 CH4 + 2.0 C3H8 ・・・(21)
C6H14 = -1.5 CH4 + 2.5 C3H8 ・・・(22)
【0038】
したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなる混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)、プロパン(C38)に加えて、メタン(CH4)とプロパン(C38)以外のz種類のアルカン(Cj2j+2)を含む場合、少なくともn−z−1種類の発熱温度における混合ガスの放熱係数MIを変数とする方程式を求めてもよい。
【0039】
なお、(18)式の算出に用いられた混合ガスのガス成分の種類と、単位体積当たりの発熱量Qが未知の検査対象混合ガスのガス成分の種類が同じ場合に、検査対象混合ガスの発熱量Qの算出に(18)式を利用可能であることはもちろんである。さらに、検査対象混合ガスがn種類より少ない種類のガス成分からなり、かつ、n種類より少ない種類のガス成分が、(18)式の算出に用いられた混合ガスに含まれている場合も、(18)式を利用可能である。例えば、(18)式の算出に用いられた混合ガスが、メタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の4種類のガス成分を含む場合、検査対象混合ガスが、窒素(N2)を含まず、メタン(CH4)、プロパン(C38)、及び二酸化炭素(CO2)の3種類のガス成分のみを含む場合も、検査対象混合ガスの発熱量Qの算出に(18)式を利用可能である。
【0040】
さらに、(18)式の算出に用いられた混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)とプロパン(C38)を含む場合、検査対象混合ガスが、(18)式の算出に用いられた混合ガスに含まれていないアルカン(Cj2j+2)を含んでいても、(18)式を利用可能である。これは、上述したように、メタン(CH4)とプロパン(C38)以外のアルカン(Cj2j+2)を、メタン(CH4)とプロパン(C38)の混合物とみなしても、(18)式を用いた単位体積当たりの発熱量Qの算出に影響しないためである。
【0041】
ここで、図6に示す発熱量算出式作成システム20Aは、発熱量Qの値が既知のサンプル混合ガスが充填されるチャンバ101と、図1及び図2に示す発熱素子61、第1の測温素子62及び第2の測温素子63を用いて、サンプル混合ガスの複数の放熱係数MIの値を計測する図6に示す計測機構10と、を備える。さらに、発熱量算出式作成システム20Aは、サンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、及びサンプル混合ガスの複数の放熱係数MIの値に基づいて、発熱素子61の複数の発熱温度に対するガスの放熱係数MIを独立変数とし、ガスの発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を作成する式作成モジュール302を備える。なお、サンプル混合ガスは、複数種類のガス成分を含む。
【0042】
計測機構10は、サンプル混合ガスが注入されるチャンバ101内に配置された、図1及び図2を用いて説明したマイクロチップ8を備える。マイクロチップ8は、断熱部材18を介してチャンバ101内に配置されている。チャンバ101には、サンプル混合ガスをチャンバ101に送るための流路102と、サンプル混合ガスをチャンバ101から外部に排出するための流路103と、が接続されている。
【0043】
それぞれ発熱量Qが異なる4種類のサンプル混合ガスが使用される場合、図7に示すように、第1のサンプル混合ガスを貯蔵する第1のガスボンベ50A、第2のサンプル混合ガスを貯蔵する第2のガスボンベ50B、第3のサンプル混合ガスを貯蔵する第3のガスボンベ50C、及び第4のサンプル混合ガスを貯蔵する第4のガスボンベ50Dが用意される。第1のガスボンベ50Aには、流路91Aを介して、第1のガスボンベ50Aから例えば0.2MPa等の低圧に調節された第1のサンプル混合ガスを得るための第1のガス圧調節器31Aが接続されている。また、第1のガス圧調節器31Aには、流路92Aを介して、第1の流量制御装置32Aが接続されている。第1の流量制御装置32Aは、流路92A及び流路102を介して発熱量算出式作成システム20Aに送られる第1のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0044】
第2のガスボンベ50Bには、流路91Bを介して、第2のガス圧調節器31Bが接続されている。また、第2のガス圧調節器31Bには、流路92Bを介して、第2の流量制御装置32Bが接続されている。第2の流量制御装置32Bは、流路92B,93,102を介して発熱量算出式作成システム20Aに送られる第2のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0045】
第3のガスボンベ50Cには、流路91Cを介して、第3のガス圧調節器31Cが接続されている。また、第3のガス圧調節器31Cには、流路92Cを介して、第3の流量制御装置32Cが接続されている。第3の流量制御装置32Cは、流路92C,93,102を介して発熱量算出式作成システム20Aに送られる第3のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0046】
第4のガスボンベ50Dには、流路91Dを介して、第4のガス圧調節器31Dが接続されている。また、第4のガス圧調節器31Dには、流路92Dを介して、第4の流量制御装置32Dが接続されている。第4の流量制御装置32Dは、流路92D,93,102を介して発熱量算出式作成システム20Aに送られる第4のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0047】
第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えば発熱量Qが既知の天然ガスである。第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えばメタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の4種類のガス成分を含む。
【0048】
第1のサンプル混合ガスがチャンバ101に充填された後、マイクロチップ8の図1及び図2に示す第1の測温素子62及び第2の測温素子63は、発熱素子61が発熱する前の第1のサンプル混合ガスの温度TIを検出する。その後、発熱素子61は、図6に示す駆動回路303から駆動電力PHを与えられる。駆動電力PHを与えられることにより、図1及び図2に示す発熱素子61は、例えば、100℃、150℃、及び200℃で発熱する。
【0049】
図6に示すチャンバ101から第1のサンプル混合ガスが除去された後、第2乃至第4のサンプル混合ガスがチャンバ101に順次充填される。第2乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれがチャンバ101に充填された後、マイクロチップ8は、第2乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの温度TIを検出する。また、図1及び図2に示す発熱素子61は、駆動電力PHを与えられ、100℃、150℃、及び200℃で発熱する。
【0050】
なお、それぞれのサンプル混合ガスがn種類のガス成分を含む場合、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱素子61は、少なくともn−1種類の異なる発熱温度で発熱させられる。ただし、上述したように、メタン(CH4)及びプロパン(C38)以外のアルカン(Cj2j+2)は、メタン(CH4)及びプロパン(C38)の混合物とみなしうる。したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなるサンプル混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)及びプロパン(C38)に加えてz種類のアルカン(Cj2j+2)を含む場合は、発熱素子61は、少なくともn−z−1種類の異なる発熱温度で発熱させられる。
【0051】
図6に示す計測機構10は、マイクロチップ8に接続された放熱係数算出モジュール301をさらに備える。放熱係数算出モジュール301は、上記(4)式に示すように、図1及び図2に示すマイクロチップ8の発熱素子61の第1の駆動電力PH1を、発熱素子61の第1の発熱温度TH(ここでは100℃)と、第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの温度TIと、の差で割る。これにより、発熱温度が100℃の発熱素子61と熱的に平衡な第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの放熱係数MIの値が算出される。
【0052】
また、図6に示す放熱係数算出モジュール301は、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱素子61の第2の駆動電力PH2を、発熱素子61の第2の発熱温度TH(ここでは150℃)と、第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの温度TIと、の差で割る。これにより、発熱温度が150℃の発熱素子61と熱的に平衡な第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの放熱係数MIの値が算出される。
【0053】
さらに、図6に示す放熱係数算出モジュール301は、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱素子61の第3の駆動電力PH3を、発熱素子61の第3の発熱温度TH(ここでは200℃)と、第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの温度TIと、の差で割る。これにより、発熱温度が200℃の発熱素子61と熱的に平衡な第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの放熱係数MIの値が算出される。
【0054】
図6に示す発熱量算出式作成システム20Aは、CPU300に接続された放熱係数記憶装置401をさらに備える。放熱係数算出モジュール301は、算出した放熱係数MIの値を放熱係数記憶装置401に保存する。
【0055】
式作成モジュール302は、例えば第1乃至第4のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値と、発熱素子61の発熱温度が100℃の場合の第1乃至第4のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値と、発熱素子61の発熱温度が150℃の場合の第1乃至第4のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値と、発熱素子61の発熱温度が200℃の場合の第1乃至第4のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値と、を収集する。さらに式作成モジュール302は、収集した発熱量Q及び放熱係数MIの複数の値に基づいて、多変量解析により、発熱素子61の発熱温度が100℃の場合の放熱係数MI、発熱素子61の発熱温度が150℃の場合の放熱係数MI、及び発熱素子61の発熱温度が200℃の場合の放熱係数MIを独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を算出する。
【0056】
なお、「多変量解析」とは、A. J Smola及びB. Scholkopf著の「A Tutorial on Support Vector Regression」(NeuroCOLT Technical Report (NC−TR−98−030)、1998年)に開示されているサポートベクトル回帰、重回帰分析、及び特開平5−141999号公報に開示されているファジィ数量化理論II類等を含む。また、放熱係数算出モジュール301及び式作成モジュール302は、中央演算処理装置(CPU)300に含まれている。
【0057】
発熱量算出式作成システム20Aは、CPU300に接続された式記憶装置402をさらに備える。式記憶装置402は、式作成モジュール302が作成した発熱量算出式を保存する。さらにCPU300には、入力装置312及び出力装置313が接続される。入力装置312としては、例えばキーボード、及びマウス等のポインティングデバイス等が使用可能である。出力装置313には液晶ディスプレイ、モニタ等の画像表示装置、及びプリンタ等が使用可能である。
【0058】
次に、図8に示すフローチャートを用いて発熱量算出式の作成方法について説明する。なお、以下の例では、第1乃至第4のサンプル混合ガスを準備し、図6に示すマイクロチップ8の発熱素子61を、100℃、150℃、及び200℃に発熱させる場合を説明する。
【0059】
(a)ステップS100で、図7に示す第2乃至第4の流量制御装置32B−32Dの弁を閉じたまま、第1の流量制御装置32Aの弁を開き、図6に示すチャンバ101内に第1のサンプル混合ガスを導入する。ステップS101で、図1及び図2に示す第1の測温素子62及び第2の測温素子63は、第1のサンプル混合ガスの温度TIを検出する。その後、図6に示す駆動回路303は、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱素子61に第1の駆動電力PH1を与え、発熱素子61を100℃で発熱させる。さらに、図6に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱素子61の発熱温度が100℃の場合の第1のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値を算出する。その後、放熱係数算出モジュール301は、発熱素子61の発熱温度が100℃の場合の放熱係数MIの値を放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱素子61に対する第1の駆動電力PH1の提供を停止する。
【0060】
(b)ステップS102で、駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度150℃及び発熱温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS101に戻り、図6に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61を150℃で発熱させる。図6に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱素子61の発熱温度が150℃の場合の第1のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値を算出し、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱素子61に対する駆動電力の供給を停止する。
【0061】
(c)再びステップS102で、図1及び図2に示す発熱素子61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS101に戻り、図6に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61を200℃で発熱させる。図6に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱素子61の発熱温度が200℃の場合の第1のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値を算出し、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱素子61に対する駆動電力の供給を停止する。
【0062】
(d)発熱素子61の発熱温度の切り替えが完了した場合には、ステップS102からステップS103に進む。ステップS103で、サンプル混合ガスの切り替えが完了したか否かを判定する。第2乃至第4のサンプル混合ガスへの切り替えが完了していない場合には、ステップS100に戻る。ステップS100で、図7に示す第1の流量制御装置32Aを閉じ、第3乃至第4の流量制御装置32C−32Dの弁を閉じたまま第2の流量制御装置32Bの弁を開き、図6に示すチャンバ101内に第2のサンプル混合ガスを導入する。
【0063】
(e)第1のサンプル混合ガスと同様に、ステップS101乃至ステップS102のループが繰り返される。まず、第2のサンプル混合ガスの温度TIの値が測定される。また、放熱係数算出モジュール301が、発熱素子61の発熱温度が100℃の場合の第2のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値、発熱素子61の発熱温度が150℃の場合の第2のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値、及び発熱素子61の発熱温度が200℃の場合の第2のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値を算出する。さらに放熱係数算出モジュール301は、算出した放熱係数MIの値を放熱係数記憶装置401に保存する。
【0064】
(f)その後、ステップS100乃至ステップS103のループが繰り返される。これにより、発熱素子61の発熱温度が100℃、150℃、200℃のそれぞれの場合の第3のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値と、発熱素子61の発熱温度が100℃、150℃、200℃のそれぞれの場合の第4のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値とが、放熱係数記憶装置401に保存される。ステップS104で、入力装置312から式作成モジュール302に、第1のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、第2のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、第3のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、及び第4のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値を入力する。また、式作成モジュール302は、放熱係数記憶装置401から、発熱素子61の発熱温度が100℃、150℃、200℃のそれぞれの場合の第1乃至第4のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値を読み出す。
【0065】
(g)ステップS105で、第1乃至第4のサンプル混合ガスの発熱量Qの値と、発熱素子61の発熱温度が100℃、150℃、200℃のそれぞれの場合の第1乃至第4のサンプル混合ガスの放熱係数MIの値と、に基づいて、式作成モジュール302は、重回帰分析を行う。重回帰分析により、式作成モジュール302は、発熱素子61の発熱温度が100℃の場合の放熱係数MI、発熱素子61の発熱温度が150℃の場合の放熱係数MI、及び発熱素子61の発熱温度が200℃の場合の放熱係数MIを独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を算出する。その後、ステップS106で、式作成モジュール302は作成した発熱量算出式を式記憶装置402に保存し、発熱量算出式の作成を終了する。
【0066】
計測対象混合ガスの発熱量Qの値を一意に算出可能な発熱量算出式は、以上説明したようにして作成される。
【0067】
[発熱量算出システム及び発熱量算出方法]
次に、本発明の第1の実施の形態に係るガス制御システムが備える発熱量算出システム及び当該システムを用いる発熱量算出方法について説明する。図9に示すように、発熱量算出システム21Aは、発熱量Qの値が未知の計測対象混合ガスである可燃性ガスが充填されるチャンバ101と、図1及び図2に示す発熱素子61、第1の測温素子62及び第2の測温素子63を用いて、可燃性ガスの複数の放熱係数MIの値を計測する図9に示す計測機構10と、を備える。さらに、発熱量算出システム21Aは、発熱素子61の複数の発熱温度に対するガスの放熱係数MIを独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置402と、発熱量算出式に含まれる発熱素子61の複数の発熱温度に対するガスの放熱係数MIの独立変数に、発熱素子61の複数の発熱温度に対する可燃性ガスの放熱係数MIの値を代入し、可燃性ガスの発熱量Qの値を算出する発熱量算出モジュール305と、を備える。
【0068】
式記憶装置402は、例えば図8に示す方法で作成された、発熱素子61の発熱温度が100℃の場合のガスの放熱係数MIと、発熱素子61の発熱温度が150℃の場合のガスの放熱係数MIと、発熱素子61の発熱温度が200℃の場合のガスの放熱係数MIと、を独立変数とする発熱量算出式を保存する。
【0069】
図9に示すチャンバ101には、例えば、未知の体積率でメタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)を含む、発熱量Qが未知の天然ガスが、可燃性ガスとして導入される。図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62及び第2の測温素子63は、発熱素子61が発熱する前の可燃性ガスの温度TIを検出する。その後、発熱素子61は、図9に示す駆動回路303から駆動電力PHを与えられる。駆動電力PHを与えられることにより、図1及び図2に示す発熱素子61は、100℃、150℃、及び200℃で発熱する。
【0070】
図9に示す放熱係数算出モジュール301は、上記(1)乃至(4)式で説明した方法に従って、発熱温度100℃で発熱する発熱素子61と熱的に平衡な可燃性ガスの放熱係数MIの値を算出する。また、放熱係数算出モジュール301は、発熱温度150℃で発熱する発熱素子61と熱的に平衡な可燃性ガスの放熱係数MIの値、及び発熱温度200℃で発熱する発熱素子61と熱的に平衡な可燃性ガスの放熱係数MIの値を算出する。放熱係数算出モジュール301は、算出した放熱係数MIの値を放熱係数記憶装置401に保存する。
【0071】
発熱量算出モジュール305は、発熱量算出式のガスの放熱係数MIの独立変数に、可燃性ガスの放熱係数MIの値を代入し、可燃性ガスの発熱量Qの値を算出する。CPU300には、発熱量記憶装置403がさらに接続されている。発熱量記憶装置403は、発熱量算出モジュール305が算出した可燃性ガスの発熱量Qの値を保存する。発熱量算出システム21Aのその他の構成要件は、図6で説明した発熱量算出式作成システム20Aと同様であるので、説明は省略する。
【0072】
次に、図10に示すフローチャートを用いて、発熱量の測定方法について説明する。なお、以下の例では、図9に示すマイクロチップ8の発熱素子61を、100℃、150℃、及び200℃に発熱させる場合を説明する。
【0073】
(a)ステップS200で、図9に示すチャンバ101内に可燃性ガスを導入する。次に、ステップS201で、図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62及び第2の測温素子63は、発熱素子61が発熱する前の可燃性ガスの温度TIを検出する。その後、図9に示す駆動回路303は、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱素子61に第1の駆動電力PH1を与え、発熱素子61を100℃で発熱させる。図9に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱温度100℃における可燃性ガスの放熱係数MIの値を算出する。さらに、放熱係数算出モジュール301は、発熱素子61の発熱温度が100℃の場合の可燃性ガスの放熱係数MIの値を放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱素子61に対する第1の駆動電力PH1の提供を停止する。
【0074】
(b)ステップS202で、図9に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度150℃及び発熱温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS201に戻り、図9に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61を150℃に発熱させる。図9に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱素子61の発熱温度が150℃の場合の可燃性ガスの放熱係数MIの値を算出し、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱素子61に対する駆動電力の供給を停止する。
【0075】
(c)再びステップS202で、図1及び図2に示す発熱素子61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS201に戻り、図9に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61を200℃に発熱させる。図9に示す放熱係数算出モジュール301は、発熱素子61の発熱温度が200℃の場合の可燃性ガスの放熱係数MIの値を算出し、放熱係数記憶装置401に保存する。その後、駆動回路303は、発熱素子61に対する駆動電力の供給を停止する。
【0076】
(d)発熱素子61の発熱温度の切り替えが完了した場合には、ステップS202からステップS203に進む。ステップS203で、図9に示す発熱量算出モジュール305は、式記憶装置402から、発熱素子61の発熱温度が100℃、150℃、及び200℃の場合のガスの放熱係数MIを独立変数とする発熱量算出式を読み出す。また、発熱量算出モジュール305は、放熱係数記憶装置401から、発熱素子61の発熱温度が100℃、150℃、及び200℃の場合の可燃性ガスの放熱係数MIの値を読み出す。ステップS204で、発熱量算出モジュール305は、発熱量算出式の放熱係数MIの独立変数に可燃性ガスの放熱係数MIの値を代入して、可燃性ガスの発熱量Qの値を算出する。その後、発熱量算出モジュール305は、算出した発熱量Qの値を出力装置313に出力し、発熱量記憶装置403に保存する。
【0077】
以上説明したように、高価なガスクロマトグラフィ装置を用いることなく、可燃性ガスの放熱係数MIの測定値から、可燃性ガスの混合ガスの発熱量Qの値が測定可能である。
【0078】
[発熱量算出の実施例]
次に、本発明の第1の実施の形態に係るガス制御システムが用いる発熱量算出方法の実施例について説明する。まず、図11に示すように発熱量Qの値が既知の28種類のサンプル混合ガスを用意した。28種類のサンプル混合ガスのそれぞれは、ガス成分としてメタン(CH4)、エタン(C26)、プロパン(C38)、ブタン(C410)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のいずれか又は全部を含んでいた。例えば、No.7のサンプル混合ガスは、90vol%のメタン、3vol%のエタン、1vol%のプロパン、1vol%のブタン、4vol%の窒素、及び1vol%の二酸化炭素を含んでいた。また、No.8のサンプル混合ガスは、85vol%のメタン、10vol%のエタン、3vol%のプロパン、及び2vol%のブタンを含み、窒素及び二酸化炭素を含んでいなかった。また、No.9のサンプル混合ガスは、85vol%のメタン、8vol%のエタン、2vol%のプロパン、1vol%のブタン、2vol%の窒素、及び2vol%の二酸化炭素を含んでいた。
【0079】
次に、28種類のサンプル混合ガスのそれぞれの放熱係数MIの値を、発熱素子の発熱温度を100℃、150℃、及び200℃に設定して計測した。なお、例えばNo.7のサンプル混合ガスは6種類のガス成分を含んでいるが、上述したように、エタン(C26)とブタン(C410)は、メタン(CH4)とプロパン(C38)の混合物とみなしうるので、放熱係数MIの値を3種類の発熱温度で計測しても問題ない。その後、28種類のサンプル混合ガスの発熱量Qの値と、計測された放熱係数MIの値に基づいて、サポートベクトル回帰により、放熱係数MIを独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする、発熱量Qを算出するための1次方程式、2次方程式、及び3次方程式を作成した。
【0080】
発熱量Qを算出するための1次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、3乃至5個を目安に、適宜決定できる。作成された1次方程式は下記(23)式で与えられた。28種類のサンプル混合ガスの発熱量Qを(23)式で算出し、真の発熱量Qと比較したところ、最大誤差は2.1%であった。
Q = 39.91 - 20.59×MI (100℃) - 0.89×MI (150℃) + 19.73×MI (200℃) ・・・(23)
【0081】
発熱量Qを算出するための2次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、8乃至9個を目安に、適宜決定できる。28種類のサンプル混合ガスの発熱量Qを作成された2次方程式で算出し、真の発熱量Qと比較したところ、最大誤差は1.2乃至1.4%であった。
【0082】
発熱量Qを算出するための3次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、10乃至14個を目安に、適宜決定できる。28種類のサンプル混合ガスの発熱量Qを作成された3次方程式で算出し、真の発熱量Qと比較したところ、最大誤差は1.2%未満であった。図12及び図13に示すように、10個のキャリブレーション・ポイントを取って作成された3次方程式で算出された発熱量Qは、真の発熱量Qに良好に近似し、誤差はわずかであった。
【0083】
[ガス制御システム]
ここで、本発明の第1の実施の形態に係るガス制御システムについて説明する。図14に示すように、ガス制御システムは、支燃性ガスである酸素及び空気と可燃性ガスとを混合した混合ガスを外部に噴出する火口部110と、支燃性ガスを火口部110側に供給する支燃性ガス配管系120と、可燃性ガスを火口部110側に供給する可燃性ガス配管系130と、混合ガスを火口部110に供給する混合ガス配管系140と、を備える。
【0084】
支燃性ガス配管系120は、支燃性ガスを火口部110側に供給するための支燃性ガス流路121を有する。支燃性ガス流路121には、酸素を供給するための酸素流路121aと、空気を供給するための空気流路121bとが含まれる。
【0085】
酸素流路121aには、レギュレータ122aと、フローコントローラ123aと、遮断弁124aと、逆止弁125aとが設けられている。フローコントローラ123aは、酸素流路121aを流れる酸素の流量を検出する酸素流量計と、酸素流路121aを流れる酸素の流量が目標流量になるよう制御する酸素制御弁と、を含む。
【0086】
空気流路121bには、レギュレータ122bと、フローコントローラ123bと、遮断弁124bと、逆止弁125bとが設けられている。フローコントローラ123bは、空気流路121bを流れる空気の流量を検出する空気流量計と、空気流路121bを流れる空気の流量が目標流量になるように制御する空気制御弁と、を含む。
【0087】
酸素流路121aと空気流路121bとの合流箇所には、酸素流路121aから供給される酸素と空気流路121bから供給される空気とを混合するミキサー126が設けられている。
【0088】
可燃性ガス配管系130は、可燃性ガスを火口部110側に供給するための可燃性ガス流路131を有する。この可燃性ガス流路131には、レギュレータ132と、フローコントローラ133と、遮断弁134と、逆止弁135とが設けられている。フローコントローラ133は、可燃性ガス流路131を流れる可燃性ガスの流量を検出する可燃性ガス流量計と、可燃性ガス流路131を流れる可燃性ガスの流量が目標流量になるように制御する可燃性ガス制御弁と、を含む。可燃性ガス流路131には、さらに、図9に示す発熱量算出システム21Aが配置されている。発熱量算出システム21Aは、可燃性ガス流路131を流れる可燃性ガスの発熱量を算出する。
【0089】
図14に示す支燃性ガス配管系120と可燃性ガス配管系130との合流箇所には、支燃性ガス流路121から供給される支燃性ガスと可燃性ガス流路131から供給される可燃性ガスとを混合するミキサー142が設けられている。混合ガス配管系140は、ミキサー142と、ミキサー142から供給される混合ガスを火口部110に供給するための混合ガス流路141とを有する。
【0090】
フローコントローラ123a,123b,133と、発熱量算出システム21Aとには、制御装置150が接続されている。例えば、制御装置150は、可燃性ガスの発熱量と、可燃性ガスの発熱量に対応する支燃性ガスの最適流量と、の関係を示すテーブルを保存する。制御装置150は、発熱量算出システム21Aが算出した可燃性ガスの発熱量と、テーブルと、に基づいて、フローコントローラ123a,123b,133の少なくとも一つを用いて、可燃性ガスの流量と、支燃性ガスの流量と、を制御する。これにより、ミキサー142において、可燃性ガスと、支燃性ガスとが、燃焼に適した流量比又は体積比で混合される。
【0091】
天然ガスは、産出ガス田によって炭化水素の成分比率が異なる。また、天然ガスには、炭化水素の他に、ノンカロリー成分である窒素(N2)や炭酸ガス(CO2)等が含まれる。そのため、産出ガス田によって、天然ガスに含まれるガス成分の体積率は異なり、ガス成分の種類が既知であっても、天然ガスの発熱量Qは未知であることが多い。また、同一のガス田由来の天然ガスであっても、発熱量Qが常に一定であるとは限らず、採取時期によって変化することもある。
【0092】
これに対し、第1の実施の形態に係るガス制御システムによれば、天然ガス等の可燃性ガスの正確な発熱量Qを容易かつ正確に検出することが可能となる。そのため、可燃性ガスを燃焼させる場合に必要な支燃性ガスの流量を適切に設定することが可能となる。そのため、無駄な二酸化炭素(CO2)の排出量を削減することも可能となる。
【0093】
また、第1の実施の形態に係るガス制御システムは、可燃性ガス及び支燃性ガスの混合ガスを火口部110で燃焼させた際の燃焼ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度センサをさらに備えていてもよい。この場合、制御装置150は、燃焼ガスの酸素濃度が最小となるよう、フローコントローラ123a,123b,133の少なくとも一つを用いて、可燃性ガスの流量と、支燃性ガスの流量と、を制御する。また、燃焼ガスの酸素濃度が閾値以上になった場合は、ガス制御システムに異常が生じたとして、制御装置150は警告を発してもよい。
【0094】
(第1の実施の形態の変形例)
上記(12)乃至(15)式で、混合ガスのガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDのそれぞれが、混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)の関数として与えられることを示した。ここで、ボイルシャルルの法則により、ガスの体積はガスそのものの温度に比例する。そこで、例えば、発熱素子61を発熱させる前の混合ガスの温度をTIとすると、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDのそれぞれは、下記(24)乃至(27)式に示すように、混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)及び混合ガスの温度TIの関数としても与えられる。
VA=f1[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3), TI ] ・・・(24)
VB=f2[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3), TI ] ・・・(25)
VC=f3[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3), TI ] ・・・(26)
VD=f4[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3), TI ] ・・・(27)
【0095】
ここで、上記(6)式に(24)乃至(27)式を代入することにより、下記(28)式が得られる。
Q = KA×VA+ KB×VB+ KC×VC+KD×VD
= KA×f1[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3) , TI ]
+ KB×f2[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3) , TI ]
+ KC×f3[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3) , TI ]
+ KD×f4[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3) , TI ] ・・・(28)
【0096】
上記(28)式から明らかなように、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)と、混合ガスの温度TIと、を変数とする方程式でも与えられる。したがって、混合ガスの発熱量Qは、gを関数を表す記号として、下記(29)式で与えられることもできる。
Q = g[MI (TH1), MI (TH2), MI (TH3) , TI ] ・・・(29)
【0097】
よって、発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の可燃性ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)と、例えば発熱素子61が発熱する前の可燃性ガスの温度TIと、を計測し、(29)式に代入することによっても、可燃性ガスの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。また、混合ガスの温度TIを発熱量算出式の独立変数に加えることにより、混合ガスの発熱量Qの算出精度がより向上する。
【0098】
(第2の実施の形態)
[発熱量算出式作成システム及び発熱量算出式の作成方法]
まず、本発明の第2の実施の形態に係るガス制御システムが使用する発熱量算出式を作成可能な発熱量算出式作成システム及び発熱量算出式の作成方法について説明する。ここで、上記(1)式より、図1及び図2に示す発熱素子61の温度THは下記(30)式で与えられる。
TH = (1 / 2β)×[-α+ [α2 - 4β (1 - RH / RH_STD)]1/2] + TH_STD ・・・(30)
したがって、発熱素子61の温度THと雰囲気ガスの温度TIとの差ΔTHは、下記(31)式で与えられる。
ΔTH = (1 / 2β)×[-α+ [α2 - 4β (1 - RH / RH_STD)]1/2] + TH_STD - TI ・・・(31)
【0099】
雰囲気ガスの温度TIは、自己発熱しない程度の電力を与えられる第1の測温素子62の温度TIに近似する。第1の測温素子62の温度TIと、第1の測温素子62の抵抗値RIの関係は、下記(32)式で与えられる。
RI = RI_STD×[1+α(TI-TI_STD) + β(TI-TI_STD)2] ・・・(32)
I_STDは第1の測温素子62の標準温度を表し、例えば20℃である。RI_STDは標準温度TI_STDにおける予め計測された第1の測温素子62の抵抗値を表す。上記(32)式より、第1の測温素子62の温度TIは下記(33)式で与えられる。
TI = (1 / 2β)×[-α+ [α2 - 4βI (1 - RI / RI_STD)]1/2] + TI_STD ・・・(33)
【0100】
よって、雰囲気ガスの放熱係数MIは、下記(34)式でも与えられる。
MI = PH /ΔTH
=PH/[(1/2β)[-α+[α2-4β(1-RH/RH_STD)]1/2]+TH_STD-(1/2β)[-α+[α2-4β(1-RI/RI_STD)]1/2]-TI_STD] ・・・(34)
発熱素子61の通電電流IHと、駆動電力PH又は電圧VHは計測可能であるため、上記(2)式又は(3)式から発熱素子61の抵抗値RHを算出可能である。同様に、第1の測温素子62の抵抗値RIも算出可能である。
【0101】
上記(17)式で示したように、4種類のガス成分からなる混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の混合ガスの放熱係数MI(TH1),MI(TH2),MI(TH3)を変数とする方程式で与えられる。また、混合ガスの放熱係数MIは、上記(34)式に示すように、発熱素子61の抵抗値RHと、第1の測温素子62の抵抗値RIと、に依存する。そこで、本発明者らは、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(35)式に示すように、発熱素子61の温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61の抵抗値RH1(TH1),RH2(TH2),RH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62の抵抗値RIと、を変数とする方程式でも与えられることをも見出した。
Q = g[RH1 (TH1), RH2 (TH2), RH3 (TH3), RI] ・・・(35)
【0102】
よって、可燃性ガスに接する発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61の抵抗値RH1(TH1),RH2(TH2),RH3(TH3)と、例えば発熱素子61が発熱する前の可燃性ガスに接する第1の測温素子62の抵抗値RIを計測し、(35)式に代入することによっても、可燃性ガスの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
【0103】
また、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(36)式に示すように、発熱素子61の温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61の通電電流IH1(TH1),IH2(TH2),IH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62の通電電流IIと、を変数とする方程式でも与えられる。
Q = g[IH1 (TH1), IH2 (TH2), IH3 (TH3), II] ・・・(36)
【0104】
あるいは混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(37)式に示すように、発熱素子61の温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61にかかる電圧VH1(TH1),VH2(TH2),VH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62にかかる電圧VIと、を変数とする方程式でも与えられる。
Q = g[VH1 (TH1), VH2 (TH2), VH3 (TH3), VI] ・・・(37)
【0105】
またあるいは混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(38)式に示すように、発熱素子61の温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61に接続されたアナログ−デジタル変換回路(以下において「A/D変換回路」という。)の出力信号ADH1(TH1),ADH2(TH2),ADH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62に接続されたA/D変換回路の出力信号ADIと、を変数とする方程式でも与えられる。
Q = g[ADH1 (TH1), ADH2 (TH2), ADH3 (TH3), ADI] ・・・(38)
【0106】
したがって、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(39)式に示すように、発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIと、を変数とする方程式で与えられる。
Q = g[SH1 (TH1), SH2 (TH2), SH3 (TH3), SI] ・・・(39)
【0107】
ここで、図15に示す発熱量算出式作成システム20Bは、複数のサンプル混合ガスのそれぞれの温度TIに依存する図1及び図2に示す第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、複数の発熱温度THのそれぞれにおける発熱素子61からの電気信号SHの値と、を計測する図15に示す計測モジュール321と、複数のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、第1の測温素子62からの電気信号SIの値、及び複数の発熱温度における発熱素子61からの電気信号の値に基づいて、第1の測温素子62からの電気信号SI及び複数の発熱温度THにおける発熱素子61からの電気信号SHを独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を作成する式作成モジュールと、を備える。
【0108】
チャンバ101に第1のサンプル混合ガスが充填された後、図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第1のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、発熱素子61は、図15に示す駆動回路303から駆動電力PH1,PH2,PH3を与えられる。駆動電力PH1,PH2,PH3を与えられた場合、第1のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、例えば、100℃の温度TH1、150℃の温度TH2、及び200℃の温度TH3で発熱し、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0109】
チャンバ101から第1のサンプル混合ガスが除去された後、第2乃至第4のサンプル混合ガスがチャンバ101に順次充填される。第2のサンプル混合ガスがチャンバ101に充填された後、図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第2のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、第2のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0110】
第3のサンプル混合ガスが図15に示すチャンバ101に充填された後、図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第3のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、第3のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0111】
第4のサンプル混合ガスが図15に示すチャンバ101に充填された後、図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第4のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、第4のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0112】
なお、それぞれのサンプル混合ガスがn種類のガス成分を含む場合、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱素子61は、少なくともn−1種類の異なる温度で発熱させられる。ただし、上述したように、メタン(CH4)及びプロパン(C38)以外のアルカン(Cj2j+2)は、メタン(CH4)及びプロパン(C38)の混合物とみなしうる。したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなるサンプル混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)及びプロパン(C38)に加えてz種類のアルカン(Cj2j+2)を含む場合は、発熱素子61は、少なくともn−z−1種類の異なる温度で発熱させられる。
【0113】
図15に示すように、マイクロチップ8は、計測モジュール321を含む中央演算処理装置(CPU)300に接続されている。CPU300には、電気信号記憶装置421が接続されている。計測モジュール321は、第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、発熱素子61からの発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)の値と、を計測し、計測値を電気信号記憶装置421に保存する。
【0114】
なお、第1の測温素子62からの電気信号SIとは、第1の測温素子62の抵抗値RI、第1の測温素子62の通電電流II、第1の測温素子62にかかる電圧VI、及び第1の測温素子62に接続されたA/D変換回路304の出力信号ADIのいずれであってもよい。同様に、発熱素子61からの電気信号SHとは、発熱素子61の抵抗値RH、発熱素子61の通電電流IH、発熱素子61にかかる電圧VH、及び発熱素子61に接続されたA/D変換回路304の出力信号ADHのいずれであってもよい。
【0115】
CPU300に含まれる式作成モジュール302は、例えば第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの既知の発熱量Qの値と、第1の測温素子62からの電気信号SIの複数の計測値と、発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の複数の計測値と、を収集する。さらに式作成モジュール302は、収集した発熱量Q、電気信号SI、及び電気信号SHの値に基づいて、多変量解析により、第1の測温素子62からの電気信号SI及び発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を算出する。図15に示す発熱量算出式作成システム20Bのその他の構成要素は、図6に示す発熱量算出式作成システム20Aと同様であるので、説明は省略する。
【0116】
[発熱量算出システム]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るガス制御システムが備える発熱量算出システムについて説明する。図16に示すように、発熱量算出システム21Bは、可燃性ガスの温度TIに依存する第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、複数の発熱温度THのそれぞれにおける発熱素子61からの電気信号SHの値と、を計測する計測モジュール321と、第1の測温素子62からの電気信号SI及び複数の発熱温度THにおける発熱素子61からの電気信号SHを独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置402と、発熱量算出式の第1の測温素子62からの電気信号SIの独立変数、及び発熱素子61からの電気信号SHの独立変数に、第1の測温素子62からの電気信号SIの計測値、及び発熱素子61からの電気信号SHの計測値を代入し、可燃性ガスの発熱量Qの値を算出する発熱量算出モジュールと、を備える。
【0117】
発熱量算出式は、例えば、第1の測温素子62からの電気信号SIと、発熱温度TH1が100℃の発熱素子61からの電気信号SH1(TH1)と、発熱温度TH2が150℃の発熱素子61からの電気信号SH2(TH2)と、発熱温度TH3が200℃の発熱素子61からの電気信号SH3(TH3)と、を独立変数として含んでいる。
【0118】
図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、可燃性ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、発熱素子61は、図15に示す駆動回路303から駆動電力PH1,PH2,PH3を与えられる。駆動電力PH1,PH2,PH3を与えられた場合、可燃性ガスに接する発熱素子61は、例えば、100℃の温度TH1、150℃の温度TH2、及び200℃の温度TH3で発熱し、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0119】
図16に示す計測モジュール321は、可燃性ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、可燃性ガスに接する発熱素子61からの発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)の値と、を計測し、計測値を電気信号記憶装置421に保存する。
【0120】
発熱量算出モジュール305は、式記憶装置402に保存されている発熱量算出式の第1の測温素子62からの電気信号SIの独立変数及び発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の独立変数に、計測値をそれぞれ代入し、可燃性ガスの発熱量Qの値を算出する。図16に示す発熱量算出システム21Bのその他の構成要素は、図9に示す発熱量算出システム21Aと同様であるので、説明は省略する。
【0121】
[ガス制御システム]
第2の実施の形態に係るガス制御システムは、図17に示すように、上述した発熱量算出システム21Bが可燃性ガス流路131に配置されている。第2の実施の形態に係るガス制御システムのその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。第2の実施の形態に係るガス制御システムによれば、放熱係数の算出を省略可能であるので、可燃性ガスの発熱量Qをより高速に算出することが可能となる。
【0122】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、例えば、図18は、発熱抵抗体に2mA、2.5mA、及び3mAの電流を流した際の、混合ガスの放熱係数と、熱伝導率と、の関係を示す。図18に示すように、混合ガスの放熱係数と、熱伝導率とは、一般に比例関係にある。したがって、上述した例では、発熱量算出式を作成する際に、発熱抵抗体の複数の発熱温度における混合ガスの放熱係数の値を用いたが、代わりに、発熱抵抗体の複数の発熱温度における混合ガスの熱伝導率の値を用いてもよい。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0123】
8 マイクロチップ
10 計測機構
18 断熱部材
20A,20B 発熱量算出式作成システム
21A,21B 発熱量算出システム
31A,31B,31C,31D ガス圧調節器
32A,32B,32C,32D 流量制御装置
50A,50B,50C,50D ガスボンベ
60 基板
61 発熱素子
62 第1の測温素子
63 第2の測温素子
64 保温素子
65 絶縁膜
66 キャビティ
91A,91B,91C,91D,92A,92B,92C,92D,93,102,103 流路
101 チャンバ
110 火口部
120 支燃性ガス配管系
121 支燃性ガス流路
121a 酸素流路
121b 空気流路
122a,122b レギュレータ
123a,123b,133 フローコントローラ
124a,124b 遮断弁
125a,125b 逆止弁
126 ミキサー
130 可燃性ガス配管系
131 可燃性ガス流路
132 レギュレータ
134 遮断弁
135 逆止弁
140 混合ガス配管系
141 混合ガス流路
142 ミキサー
150 制御装置
161,162,163,164,165,181,182,183 抵抗素子
170,171 オペアンプ
301 放熱係数算出モジュール
302 式作成モジュール
303 駆動回路
304 A/D変換回路
305 発熱量算出モジュール
312 入力装置
313 出力装置
321 計測モジュール
401 放熱係数記憶装置
402 式記憶装置
403 発熱量記憶装置
421 電気信号記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子が複数の発熱温度で発熱したときの可燃性ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を計測する計測機構と、
前記複数の発熱温度に対する前記放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、
前記発熱量算出式の前記複数の発熱温度に対する前記放熱係数又は熱伝導率の独立変数に、前記複数の発熱温度に対する前記可燃性ガスの前記放熱係数又は熱伝導率の値を代入し、前記可燃性ガスの発熱量の値を算出する発熱量算出部と、
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を制御する制御装置と、
を備える、ガス制御システム。
【請求項2】
前記可燃性ガスの流量を検出する可燃性ガス流量計と、
前記支燃性ガスの流量を検出する支燃性ガス流量計と、
を更に備える、請求項1に記載のガス制御システム。
【請求項3】
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記支燃性ガスの流量を制御する支燃性ガス制御弁を更に備える、請求項2に記載のガス制御システム。
【請求項4】
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記可燃性ガスの流量を制御する可燃性ガス制御弁を更に備える、請求項2又は3に記載のガス制御システム。
【請求項5】
前記可燃性ガス及び前記支燃性ガスの混合ガスを燃焼させた際の燃焼ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度センサを更に備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガス制御システム。
【請求項6】
前記複数の温度の数が、少なくとも、前記可燃性ガスに含まれる複数種類のガス成分の数から1を引いた数である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガス制御システム。
【請求項7】
前記可燃性ガスが天然ガスである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス制御システム。
【請求項8】
前記可燃性ガスが、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のガス制御システム。
【請求項9】
発熱素子が複数の発熱温度で発熱したときの可燃性ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を計測することと、
前記複数の発熱温度に対する前記放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、
前記発熱量算出式の前記複数の発熱温度に対する前記放熱係数又は熱伝導率の独立変数に、前記複数の発熱温度に対する前記可燃性ガスの前記放熱係数又は熱伝導率の値を代入し、前記可燃性ガスの発熱量の値を算出することと、
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を制御することと、
を含む、ガス制御方法。
【請求項10】
前記可燃性ガスの流量を検出することと、
前記支燃性ガスの流量を検出することと、
を更に含む、請求項9に記載のガス制御方法。
【請求項11】
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記支燃性ガスの流量を制御することを更に含む、請求項10に記載のガス制御方法。
【請求項12】
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記可燃性ガスの流量を制御することを更に含む、請求項10又は11に記載のガス制御方法。
【請求項13】
前記可燃性ガス及び前記支燃性ガスの混合ガスを燃焼させた際の燃焼ガスの酸素濃度を検出することを更に含む、請求項9乃至12のいずれか1項に記載のガス制御方法。
【請求項14】
前記複数の温度の数が、少なくとも、前記可燃性ガスに含まれる複数種類のガス成分の数から1を引いた数である、請求項9乃至13のいずれか1項に記載のガス制御方法。
【請求項15】
前記可燃性ガスが天然ガスである、請求項9乃至14のいずれか1項に記載のガス制御方法。
【請求項16】
前記可燃性ガスが、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項9乃至15のいずれか1項に記載のガス制御方法。
【請求項17】
可燃性ガスが流される流路と、
前記流路に配置された測温素子と、
前記流路に配置された、複数の発熱温度で発熱する発熱素子と、
前記可燃性ガスの温度に依存する前記測温素子からの電気信号の値と、前記複数の発熱温度のそれぞれにおける前記発熱素子からの電気信号の値と、を計測する計測モジュールと、
前記測温素子からの電気信号及び前記複数の発熱温度における前記発熱素子からの電気信号を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、
前記発熱量算出式の前記測温素子からの電気信号の独立変数、及び前記発熱素子からの電気信号の独立変数に、前記測温素子からの電気信号の値、及び前記前記発熱素子からの電気信号の値を代入し、前記可燃性ガスの発熱量の値を算出する発熱量算出部と、
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を制御する制御装置と、
を備える、ガス制御システム。
【請求項18】
前記可燃性ガスの流量を検出する可燃性ガス流量計と、
前記支燃性ガスの流量を検出する支燃性ガス流量計と、
を更に備える、請求項17に記載のガス制御システム。
【請求項19】
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記支燃性ガスの流量を制御する支燃性ガス制御弁を更に備える、請求項18に記載のガス制御システム。
【請求項20】
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記可燃性ガスの流量を制御する可燃性ガス制御弁を更に備える、請求項18又は19に記載のガス制御システム。
【請求項21】
前記可燃性ガス及び前記支燃性ガスの混合ガスを燃焼させた際の燃焼ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度センサを更に備える、請求項17乃至20のいずれか1項に記載のガス制御システム。
【請求項22】
前記複数の温度の数が、少なくとも、前記可燃性ガスに含まれる複数種類のガス成分の数から1を引いた数である、請求項17乃至21のいずれか1項に記載のガス制御システム。
【請求項23】
前記可燃性ガスが天然ガスである、請求項17乃至22のいずれか1項に記載のガス制御システム。
【請求項24】
前記可燃性ガスが、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項17乃至23のいずれか1項に記載のガス制御システム。
【請求項25】
可燃性ガスの温度に依存する測温素子からの電気信号の値を得ることと、
前記可燃性ガスに接する発熱素子を複数の発熱温度で発熱させることと、
前記複数の発熱温度のそれぞれにおける前記発熱素子からの電気信号の値を得ることと、
前記測温素子からの電気信号及び前記複数の発熱温度における前記発熱素子からの電気信号を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、
前記発熱量算出式の前記測温素子からの電気信号の独立変数、及び前記発熱素子からの電気信号の独立変数に、前記測温素子からの電気信号の値、及び前記発熱素子からの電気信号の値を代入し、前記可燃性ガスの発熱量の値を算出することと、
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記可燃性ガスと、支燃性ガスと、の混合を制御することと、
を含む、ガス制御方法。
【請求項26】
前記可燃性ガスの流量を検出することと、
前記支燃性ガスの流量を検出することと、
を更に含む、請求項25に記載のガス制御方法。
【請求項27】
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記支燃性ガスの流量を制御することを更に含む、請求項26に記載のガス制御方法。
【請求項28】
前記可燃性ガスの発熱量の算出値に基づいて、前記可燃性ガスの流量を制御することを更に含む、請求項26又は27に記載のガス制御方法。
【請求項29】
前記可燃性ガス及び前記支燃性ガスの混合ガスを燃焼させた際の燃焼ガスの酸素濃度を検出することを更に含む、請求項25乃至28のいずれか1項に記載のガス制御方法。
【請求項30】
前記複数の温度の数が、少なくとも、前記可燃性ガスに含まれる複数種類のガス成分の数から1を引いた数である、請求項25乃至29のいずれか1項に記載のガス制御方法。
【請求項31】
前記可燃性ガスが天然ガスである、請求項25乃至30のいずれか1項に記載のガス制御方法。
【請求項32】
前記可燃性ガスが、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項25乃至31のいずれか1項に記載のガス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−203217(P2011−203217A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73442(P2010−73442)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】