説明

ガス化システム

【課題】燃料合成時において、窒素を有効に活用しながら、褐炭を効率良く乾燥させることが可能なガス化システムを提供する。
【解決手段】流動層乾燥装置12と、空気分離装置142と、石炭ガス化炉14と、発電設備22と、燃料合成装置21と、を備え、発電設備22による発電運転時において、発電設備22には、燃料ガス(ガス化ガス)が供給され、流動層乾燥装置12には、流動化ガスとして蒸気が供給される一方で、流動化ガスとして空気分離装置142から窒素が供給されず、伝熱管38の内部には、高温流体が流通し、燃料合成装置21による燃料合成時において、燃料合成装置21には、燃料ガスが供給され、流動層乾燥装置12には、流動化ガスとして蒸気が供給されると共に、流動化ガスとして空気分離装置142から窒素が供給され、伝熱管38の内部には、高温流体に比して低温となる低温流体が流通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褐炭等の湿潤燃料を乾燥させて乾燥燃料とし、乾燥燃料をガス化して燃料ガスとするガス化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなガス化システムとして、石炭を粉砕・乾燥して微粉燃料とし、微粉燃料をガス化炉に供給してガス化し、石炭ガスをガスタービンに供給して発電を行い、ガスタービンの排ガスを排熱回収ボイラに導入して蒸気を発生し、発生蒸気を蒸気タービンに供給して発電を行う石炭焚複合発電設備が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−279621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の石炭焚複合発電設備のようなガス化システムにおいて、ガスタービンによる発電を行わない場合、ガス化炉を有効活用すべく、ガス化炉でガス化した石炭ガスからメタノールやジメチルエーテル等の液体燃料を合成する燃料合成装置を併設している。燃料合成装置を用いて燃料合成を行う場合、空気分離装置において分離された酸素は、ガス化炉への供給量が多くなる。このため、空気分離装置において分離された窒素が余ってしまい、窒素を有効に活用することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、燃料合成時において、窒素を有効に活用しながら、湿潤燃料を効率良く乾燥させることが可能なガス化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス化システムは、流動化ガスによって流動する湿潤燃料を、内部に設けた伝熱管により加熱することで乾燥燃料とする流動層乾燥装置と、空気を窒素と酸素とに分離可能な空気分離装置と、空気分離装置から供給される酸素を用いて、乾燥燃料をガス化してガス化ガスとするガス化炉と、ガス化炉でガス化されたガス化ガスを燃焼させることにより発電可能な発電装置と、ガス化炉でガス化されたガス化ガスを用いて、液体燃料を合成可能な燃料合成装置と、を備え、発電装置による発電運転時において、発電装置には、ガス化ガスが供給され、流動層乾燥装置には、流動化ガスとして蒸気が供給される一方で、流動化ガスとして空気分離装置から窒素が供給されず、伝熱管の内部には、高温流体が流通し、燃料合成装置による燃料合成時において、燃料合成装置には、ガス化ガスが供給され、流動層乾燥装置には、流動化ガスとして蒸気が供給されると共に、流動化ガスとして空気分離装置から窒素が供給され、伝熱管の内部には、高温流体に比して低温となる低温流体が流通することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、燃料合成装置により液体燃料を合成する場合、空気分離装置で分離される酸素の使用量が多くなり、分離された余剰の窒素は、流動化ガスとして流動層乾燥装置に供給することができる。このため、燃料合成時において余剰となる窒素を有効に活用することができる。このとき、窒素は非凝縮性ガスであるため、窒素を流動化ガスとして用いると、凝縮性ガスである蒸気を流動化ガスとして用いる場合に比して、低温で湿潤燃料を乾燥することができる。これにより、伝熱管に供給する流体を低温流体とすることができ、湿潤燃料の乾燥の効率化を図ることができる。なお、低温流体は、ガス化炉の発電運転時の蒸気による流動化の際に、伝熱管に流通する高温流体に較べて低温である。
【0008】
この場合、発電装置において燃焼するガス化ガスの排熱を回収する排熱回収装置をさらに備え、流動化ガスとして供給される蒸気は、排熱回収装置によって回収された排熱によって発生する蒸気であることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、ガス化ガスの排熱によって発生する蒸気を利用することができるため、湿潤燃料をさらに効率良く乾燥させることができる。
【0010】
この場合、ガス化炉でガス化されたガス化ガスの不純物を除去するガス精製装置をさらに備え、低温流体は、ガス精製装置から得られる熱媒であることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ガス精製装置から得られる熱媒を利用することができるため、湿潤燃料をさらに効率良く乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス化システムによれば、燃料合成時において、余剰となる窒素を流動化ガスとして流動層乾燥装置に供給することができるため、窒素を有効に活用することができ、また、伝熱管に供給する流体を低温流体とすることができるため、湿潤燃料の乾燥の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施例に係る石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係るガス化システムについて説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0015】
図1は、本実施例に係る石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。本実施例のガス化システムは、いわゆる、石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)10である。石炭ガス化複合発電設備10は、空気を酸化剤としてガス化炉で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、ガス精製装置16で精製した後の石炭ガスをガス化ガスとしてガスタービン設備17に供給して発電を行っている。すなわち、本実施例の石炭ガス化複合発電設備10は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備である。この場合、ガス化炉に供給する湿潤原料として褐炭を使用している。
【0016】
なお、本実施例では、湿潤原料として褐炭を適用したが、水分含量の高いものであれば、亜瀝青炭等を含む低品位炭や、スラッジ等の泥炭を適用してもよく、また、高品位炭であっても適用可能である。また、湿潤原料として、褐炭等の石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
【0017】
本実施例において、図1に示すように、石炭ガス化複合発電設備10は、給炭装置11、流動層乾燥装置12、微粉炭機(ミル)13、石炭ガス化炉14、チャー回収装置15、ガス精製装置16、ガスタービン設備17と蒸気タービン設備18と発電機19とからなる発電設備(発電装置)22、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20、燃料合成装置21、これらを制御する制御装置23を有している。
【0018】
給炭装置11は、原炭バンカ121と、石炭供給機122と、クラッシャ123とを有している。原炭バンカ121は、褐炭を貯留可能であって、所定量の褐炭を石炭供給機122に投下する。石炭供給機122は、原炭バンカ121から投下された褐炭をコンベアなどにより搬送し、クラッシャ123に投下する。このクラッシャ123は、投下された褐炭を細かく破砕して細粒化する。
【0019】
流動層乾燥装置12は、給炭装置11により投入された褐炭を、流動化ガスにより流動させながら、加熱乾燥させるものである。流動層乾燥装置12は、内部に褐炭が供給される乾燥炉30と、乾燥炉30の内部に設けられたガス分散板31と、を備えている。乾燥炉30は、長方体の箱状に形成されている。ガス分散板31は、乾燥炉30内部の空間を、鉛直方向下方側(図示下側)に位置するチャンバ室35と、鉛直方向上方側(図示上側)に位置する乾燥室36とに区分けしている。ガス分散板31には、多数の貫通孔が形成され、チャンバ室35には、蒸気や窒素等の流動化ガスが導入される。これにより、乾燥炉30に供給された褐炭は、流動化ガスにより流動することで、乾燥炉30内に流動層25を形成する。また、流動層乾燥装置12は、流動層25内に設けられた伝熱管38を有している。この伝熱管38の内部には、流体流入ライン39を介して乾燥用蒸気(高温流体)が流入する。この流体流入ライン39には、伝熱管用第1開閉弁40が介設されており、伝熱管用第1開閉弁40が開弁して乾燥用蒸気が流入すると、伝熱管38は、流体の潜熱を利用して、乾燥室36内の褐炭を乾燥させる。
【0020】
この流動層乾燥装置12には、下部から取り出された乾燥済の褐炭(乾燥炭)を冷却する冷却器131が接続され、乾燥冷却済の乾燥炭は、冷却器131に接続された乾燥炭バンカ132に貯留される。また、流動層乾燥装置12は、上部から排出された排出ガスから乾燥炭の粒子を分離する乾燥炭サイクロン133と乾燥炭電気集塵機134とが順に接続され、排出ガスから分離された乾燥炭の粒子が乾燥炭バンカ132に貯留される。なお、乾燥炭電気集塵機134で乾燥炭が分離された排出ガスは、低圧タービンを用いた発電により潜熱回収される。
【0021】
微粉炭機13は、流動層乾燥装置12により乾燥された褐炭(乾燥炭)を細かい粒子状に粉砕して微粉炭を製造するものである。すなわち、微粉炭機13は、乾燥炭バンカ132に貯留された乾燥炭が石炭供給機136により投下されると、この乾燥炭を所定粒径以下の微粉炭とする。そして、微粉炭機13で粉砕後の微粉炭は、微粉炭バグフィルタ137a,137bにより搬送用ガスから分離され、微粉炭供給ホッパ138a,138bに貯留される。
【0022】
石炭ガス化炉14は、微粉炭機13で処理された微粉炭が供給されると共に、チャー回収装置15で回収されたチャー(石炭の未燃分)が供給される。
【0023】
石炭ガス化炉14は、ガスタービン設備17(圧縮機161)から圧縮空気供給ライン141が接続されており、このガスタービン設備17で圧縮された圧縮空気が供給可能となっている。空気分離装置142は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン143が石炭ガス化炉14に接続され、この第1窒素供給ライン143に微粉炭供給ホッパ138a,138bからの給炭ライン144a,144bが接続されている。また、第2窒素供給ライン145も石炭ガス化炉14に接続され、この第2窒素供給ライン145にチャー回収装置15からのチャー戻しライン146が接続されている。加えて、第3窒素供給ライン150は後述する蒸気排出ライン175に接続され、第3窒素供給ライン150には、流動化用第1開閉弁80が介設されている。更に、酸素供給ライン147は、圧縮空気供給ライン141に接続されている。この場合、窒素は、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用され、酸素は、酸化剤として利用される。
【0024】
石炭ガス化炉14は、例えば、噴流床形式のガス化炉であって、内部に供給された石炭、チャー、空気(酸素)、またはガス化剤としての水蒸気を燃焼・ガス化する。これにより、石炭ガス化炉14では、二酸化炭素を主成分とする燃料ガス(生成ガス、石炭ガス、ガス化ガス)が発生し、この燃料ガスをガス化剤としてガス化反応が起こる。なお、石炭ガス化炉14は、微粉炭の混入した異物を除去する異物除去装置148が設けられている。この場合、石炭ガス化炉14は噴流床ガス化炉に限らず、流動床ガス化炉や固定床ガス化炉としてもよい。そして、この石炭ガス化炉14は、チャー回収装置15に向けて可燃性ガスを供給するガス生成ライン149が設けられており、チャーを含む可燃性ガスが排出可能となっている。この場合、ガス生成ライン149にガス冷却器を設けることで、燃料ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収装置15に供給するとよい。
【0025】
チャー回収装置15は、集塵装置151と供給ホッパ152とを有している。この場合、集塵装置151は、1つまたは複数のバグフィルタやサイクロンにより構成され、石炭ガス化炉14で生成された燃料ガス(ガス化ガス)に含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された燃料ガスは、ガス排出ライン153を通してガス精製装置16に送られる。供給ホッパ152は、集塵装置151で可燃性ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵装置151と供給ホッパ152との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ152を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ152からのチャー戻しライン146が第2窒素供給ライン145に接続されている。
【0026】
ガス精製装置16は、チャー回収装置15によりチャーが分離された燃料ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。ガス精製装置16は、吸収塔41と再生塔42とを有しており、吸収塔41は、燃料ガスと不純物吸収液とを接触させて燃料ガス中の不純物を除去し、再生塔42は、吸収塔41で不純物を吸収した不純物吸収液中の不純物を除去して再生している。このとき、流動層乾燥装置12の伝熱菅38の内部には、再生塔42から抽気された蒸気や温水等の低温流体(熱媒)が、抽気ライン155を介して供給可能となっている。この低温流体は、流体流入ライン39を通って供給される乾燥用蒸気よりも低温となっている。つまり、抽気ライン155は、流体流入ライン39に接続されており、この抽気ライン155には、伝熱管用第2開閉弁156が介設されている。
【0027】
そして、ガス精製装置16は、燃料ガスを精製し、精製後の燃料ガスをガスタービン設備17および燃料合成装置21に供給する。ここで、ガス精製装置16は、発電設備22による発電の運転状況に応じて、燃料ガスをガスタービン設備17および燃料合成装置21に適宜供給している。つまり、電力需要が多い場合、ガス精製装置16は、精製した燃料ガスを発電設備22へ向けて供給する一方で、電力需要が少ない場合、ガス精製装置16は、精製した燃料ガスを燃料合成装置21へ向けて供給する。なお、このガス精製装置16では、チャーが分離された燃料ガス中にはまだ硫黄分(HS)が含まれているため、アミン吸収液によって除去することで、硫黄分を最終的には石膏として回収し、有効利用する。
【0028】
燃料合成装置21は、ガス精製装置16から供給された燃料ガスを用いて、メチルアルコールやエチルアルコール等の液体燃料を合成するものである。なお、詳細は後述するが、燃料合成装置21において燃料合成を行う場合、空気分離装置142から石炭ガス化炉14へ供給される酸素の割合は、燃料合成を行わない場合に比して多くなる。このため、燃料合成を行う場合、空気分離装置142により分離される窒素は余る。
【0029】
ガスタービン設備17は、圧縮機161、燃焼器162、タービン163を有しており、圧縮機161とタービン163は、回転軸164により連結されている。燃焼器162は、圧縮機161から圧縮空気供給ライン165が接続されると共に、ガス精製装置16から燃料ガス供給ライン166が接続され、タービン163に燃焼ガス供給ライン167が接続されている。また、ガスタービン設備17は、圧縮機161から石炭ガス化炉14に延びる圧縮空気供給ライン141が設けられており、圧縮空気供給ライン141に昇圧機168が介設されている。従って、燃焼器162では、圧縮機161から供給された圧縮空気とガス精製装置16から供給された燃料ガスとを混合して燃焼し、タービン163にて、発生した燃焼ガスにより回転軸164を回転することで発電機19を駆動することができる。
【0030】
蒸気タービン設備18は、ガスタービン設備17における回転軸164に連結されるタービン169を有しており、発電機19は、この回転軸164の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン設備17(タービン163)からの排ガスライン170に設けられており、空気と高温の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そのため、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン設備18のタービン169との間に蒸気供給ライン171が設けられると共に、蒸気回収ライン172が設けられ、蒸気回収ライン172に復水器173が設けられている。従って、蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン169が駆動し、回転軸164を回転することで発電機19を駆動することができる。
【0031】
また、排熱回収ボイラ20には、排熱によって加熱された蒸気を排出する蒸気排出ライン175が接続されており、蒸気排出ライン175は、流動層乾燥装置12のチャンバ室35に接続されている。蒸気排出ライン175には、流動化用第2開閉弁176が介設されると共に、上記の第3窒素供給ライン150が接続されている。そして、排熱回収ボイラ20で熱が回収された排ガスは、ガス浄化装置174により有害物質を除去され、浄化された排ガスは、煙突178から大気へ放出される。
【0032】
制御装置25は、給炭装置11、流動層乾燥装置12、微粉炭機13、石炭ガス化炉14、チャー回収装置15、ガス精製装置16、発電設備22、排熱回収ボイラ20、燃料合成装置21を制御している。この制御装置25には、上記の伝熱管用第1開閉弁40と、伝熱管用第2開閉弁156と、流動化用第1開閉弁80と、流動化用第2開閉弁176とが接続されており、各開閉弁40,80,156,176の開閉を制御している。制御装置25は、発電設備22により発電運転が行われると、伝熱管用第2開閉弁156および流動化用第1開閉弁80を閉弁する一方で、伝熱管用第1開閉弁40および流動化用第2開閉弁176を開弁する。一方で、制御装置25は、発電設備22により発電運転が行われず、燃料合成装置21により燃料合成が行われると、伝熱管用第1開閉弁40および流動化用第2開閉弁176を閉弁する一方で、伝熱管用第2開閉弁156および流動化用第1開閉弁80を開弁する。
【0033】
ここで、発電設備22による発電運転時における石炭ガス化複合発電設備10の作動と、燃料合成装置21による燃料合成時における石炭ガス化複合発電設備10の作動とについてそれぞれ説明する。まず、発電設備22による発電運転時における石炭ガス化複合発電設備10の作動について説明する。
【0034】
本実施例の石炭ガス化複合発電設備10において、発電設備22による発電運転を行う場合、給炭装置11にて、原炭バンカ121に貯留された褐炭が石炭供給機122によりクラッシャ123に投下され、ここで所定の大きさに破砕される。そして、破砕された褐炭は、流動層乾燥装置12により加熱乾燥される。このとき、制御装置25は、伝熱管用第2開閉弁156および流動化用第1開閉弁80を閉弁する一方で、伝熱管用第1開閉弁40および流動化用第2開閉弁176を開弁している。このため、流動層乾燥装置12に供給される流動化ガスは、排熱回収ボイラ20から蒸気排出ライン175を通って供給される蒸気となっており、流動層乾燥装置12の伝熱管38に供給される流体は、流体流入ライン39を通って供給される乾燥用蒸気となっている。
【0035】
乾燥された褐炭は、冷却器131により冷却され、乾燥炭バンカ132に貯留される。また、流動層乾燥装置1の上部から排出された排出ガスは、乾燥炭サイクロン133および乾燥炭電気集塵機134により乾燥炭の粒子が分離される。蒸気から分離された乾燥炭の粒子は、乾燥炭バンカ132に貯留される。
【0036】
乾燥炭バンカ132に貯留される乾燥炭は、石炭供給機136により微粉炭機13に投入され、ここで、細かい粒子状に粉砕されて微粉炭が製造され、微粉炭バグフィルタ137a,137bを介して微粉炭供給ホッパ138a,138bに貯留される。この微粉炭供給ホッパ138a,138bに貯留される微粉炭は、空気分離装置142から供給される窒素により第1窒素供給ライン143を通して石炭ガス化炉14に供給される。また、後述するチャー回収装置15で回収されたチャーが、空気分離装置142から供給される窒素により第2窒素供給ライン145を通して石炭ガス化炉14に供給される。更に、後述するガスタービン設備17から抽気された圧縮空気が昇圧機168で昇圧された後、空気分離装置142から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン141を通して石炭ガス化炉14に供給される。
【0037】
石炭ガス化炉14では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、二酸化炭素を主成分とする燃料ガス(石炭ガス)を生成することができる。そして、この燃料ガスは、石炭ガス化炉14からガス生成ライン149を通して排出され、チャー回収装置15に送られる。
【0038】
このチャー回収装置15にて、燃料ガスは、まず、集塵装置151に供給され、集塵装置151は、燃料ガスに含まれるチャーを分離する。そして、チャーが分離された燃料ガスは、ガス排出ライン153を通してガス精製装置16に送られる。一方、燃料ガスから分離した微粒チャーは、ホッパ152に堆積され、チャー戻しライン146を通して石炭ガス化炉14に戻されてリサイクルされる。
【0039】
チャー回収装置15によりチャーが分離された燃料ガスは、ガス精製装置16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれて精製される。ガス精製装置16で精製された燃料ガスは、ガスタービン設備17へ向けて供給される一方で、燃料合成装置21へ向けて供給されない。そして、ガスタービン設備17では、圧縮機161が圧縮空気を生成して燃焼器162に供給すると、この燃焼器162は、圧縮機161から供給される圧縮空気と、ガス精製装置16から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスによりタービン163を駆動することで、回転軸164を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。
【0040】
そして、ガスタービン設備17におけるタービン163から排出された排気ガスは、排熱回収ボイラ20にて、空気と熱交換を行うことで蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン設備18に供給する。蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン169を駆動することで、回転軸164を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。また、排熱回収ボイラ20は、生成した蒸気を流動化ガスとして、蒸気排出ライン175を通って、流動層乾燥装置12のチャンバ室35へ供給する。
【0041】
その後、ガス浄化装置174では、排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排ガスが煙突178から大気へ放出される。
【0042】
次に、燃料合成装置21による燃料合成時における石炭ガス化複合発電設備10の作動について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。本実施例の石炭ガス化複合発電設備10において、燃料合成装置21による燃料合成を行う場合、給炭装置11から流動層乾燥装置12へ供給された褐炭は、流動層乾燥装置12により加熱乾燥される。このとき、制御装置23は、伝熱管用第1開閉弁40および流動化用第2開閉弁176を閉弁する一方で、伝熱管用第2開閉弁156および流動化用第1開閉弁80を開弁している。このため、流動層乾燥装置12に供給される流動化ガスは、空気分離装置142から第3窒素供給ライン150を通って供給される窒素となっており、流動層乾燥装置12の伝熱管38に供給される流体は、ガス精製装置16の再生塔42から抽気ライン155を通って供給される蒸気や温水等の低温流体となっている。
【0043】
乾燥された褐炭は、冷却器131や乾燥炭バンカ132等の装置を通過して、石炭ガス化炉14に供給される。このとき、空気分離装置142は、発電設備22が発電運転を行う場合に比して、石炭ガス化炉14へ供給する酸素の割合が増大する。このため、空気分離装置142で分離される窒素は余るが、上記したように余剰の窒素は、第3窒素供給ライン150を通って流動層乾燥装置12のチャンバ室35へ供給される。
【0044】
石炭ガス化炉14では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、二酸化炭素を主成分とする燃料ガス(石炭ガス)を生成することができる。生成された燃料ガスは、チャー回収装置15を通過して、ガス精製装置16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれて精製される。
【0045】
ガス精製装置16で精製された燃料ガスは、燃料合成装置21へ向けて供給される一方で、ガスタービン設備17へ向けて供給されない。そして、燃料合成装置21では、燃料ガスが供給されることで、液体燃料を合成できる。
【0046】
以上のように、本実施例の構成によれば、燃料合成装置21により液体燃料を合成する場合、空気分離装置142で分離される酸素の使用量が多くなり、分離された余剰の窒素は、流動化ガスとして流動層乾燥装置12に供給することができる。このため、燃料合成時において余剰となる窒素を有効に活用することができる。このとき、窒素は非凝縮性ガスであるため、窒素を流動化ガスとして用いると、凝縮性ガスである蒸気を流動化ガスとして用いる場合に比して、低温で褐炭を乾燥することができる。これにより、伝熱管38に供給する流体を低温流体とすることができ、褐炭の乾燥の効率化を図ることができる。
【0047】
また、本実施例の構成によれば、流動層乾燥装置12の流動化ガスとして、排熱回収ボイラ20によって回収された排熱によって発生する蒸気を利用することができるため、褐炭をさらに効率良く乾燥させることができる。なお、本実施例では、流動層乾燥装置12へ供給する高温流体となる蒸気を、排熱回収ボイラ20から得たが、この構成に限らず、石炭ガス化複合発電設備10における他の部分において抽気してもよい。
【0048】
また、本実施例の構成によれば、伝熱管38の低温流体として、ガス精製装置16から得られる熱媒を利用することができるため、褐炭をさらに効率良く乾燥させることができる。なお、本実施例では、低温流体として、ガス精製装置16の再生塔42から抽気された蒸気や温水であったが、この構成に限らず、石炭ガス化複合発電設備10における他の部分において抽気してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 石炭ガス化複合発電設備
11 給炭装置
12 流動層乾燥装置
13 微粉炭機
14 石炭ガス化炉
15 チャー回収装置
16 ガス精製装置
17 ガスタービン設備
18 蒸気タービン設備
19 発電機
20 排熱回収ボイラ
21 燃料合成装置
22 発電設備
23 制御装置
35 チャンバ室
38 伝熱管
39 流体流入ライン
40 伝熱管用第1開閉弁
41 吸収塔
42 再生塔
80 流動化用第1開閉弁
142 空気分離装置
150 第3窒素供給ライン
155 抽気ライン
156 伝熱管用第2開閉弁
175 蒸気排出ライン
176 流動化用第2開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動化ガスによって流動する湿潤燃料を、内部に設けた伝熱管により加熱することで乾燥燃料とする流動層乾燥装置と、
空気を窒素と酸素とに分離可能な空気分離装置と、
前記空気分離装置から供給される前記酸素を用いて、前記乾燥燃料をガス化してガス化ガスとするガス化炉と、
前記ガス化炉でガス化された前記ガス化ガスを燃焼させることにより発電可能な発電装置と、
前記ガス化炉でガス化された前記ガス化ガスを用いて、液体燃料を合成可能な燃料合成装置と、を備え、
前記発電装置による発電運転時において、前記発電装置には、前記ガス化ガスが供給され、前記流動層乾燥装置には、前記流動化ガスとして蒸気が供給される一方で、前記流動化ガスとして前記空気分離装置から前記窒素が供給されず、前記伝熱管の内部には、高温流体が流通し、
前記燃料合成装置による燃料合成時において、前記燃料合成装置には、前記ガス化ガスが供給され、前記流動層乾燥装置には、前記流動化ガスとして蒸気が供給されると共に、前記流動化ガスとして前記空気分離装置から前記窒素が供給され、前記伝熱管の内部には、前記高温流体に比して低温となる低温流体が流通することを特徴とするガス化システム。
【請求項2】
前記発電装置において燃焼する前記ガス化ガスの排熱を回収する排熱回収装置をさらに備え、
前記流動化ガスとして供給される前記蒸気は、前記排熱回収装置によって回収された排熱によって発生する蒸気であることを特徴とする請求項1に記載のガス化システム。
【請求項3】
前記ガス化炉でガス化された前記ガス化ガスの不純物を除去するガス精製装置をさらに備え、
前記低温流体は、前記ガス精製装置から得られる熱媒であることを特徴とする請求項1または2に記載のガス化システム。

【図1】
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