説明

ガス化装置表面を腐食から保護するシステム

【課題】ガス化装置表面を腐食から保護すること。
【解決手段】種々の実施形態によれば、システムは、内部のガス化領域に曝される第1の材料から作られたシェル(156)を含むガス化装置(106)と、ガス化装置(106)内部でシェル(156)に結合されるパターン形成されたアノード層(169)と、を備える。パターン形成されたアノード層(169)は、第2の材料から作られ、該パターン形成されたアノード層(169)が、ガス化領域において高温ガスを凝縮することによってシェル(156)を腐食から保護するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、ガス化装置に関し、より詳細にはガス化装置表面を腐食から保護することに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス化装置は、炭素質材料を一酸化炭素と水素の混合気に変換し、合成ガス又はシンガスと呼ばれる。例えば、統合型ガス化複合サイクル(IGCC)発電プラントは、1つ又はそれ以上のガス化装置を含み、高温の原材料を酸素及び/又は蒸気と反応させてシンガスを生成し、これは、燃料として使用される前に処理することができる。ガス化装置において生成された高温ガスは、腐食性成分を含有する場合がある。ガス化装置の通常の作動状態の間、腐食成分が高温ガスと接触してガス化装置の表面を腐食する可能性がある。腐食した部分は補修又は交換される場合がある。高温ガスと接触するガス化装置の表面は、腐食を低減するために耐食性合金で作ることができる。しかしながら、これらの合金は、高価で、及び/又は低耐食性のシェルへの金属被覆が困難な場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】MTO Investigates New Cathodic Protection Systems Revolutionising Bridge Rehabilitation; Ontario's Transportation Technology Transfer Digest - February 2004 - Vol. 10, Issue 1; Ministry of Transportation Road Talk; http://www.mto. gov.on.ca/english/transtek/roadtalk/rtlO-1/; page 1 and 2
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明の幾つかの実施形態について要約する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の可能な形態を簡単にまとめたものである。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様のものだけでなく、異なる様々な実施形態を包含する。
【0005】
一実施形態では、システムは、内部のガス化領域に曝される第1の材料から作られたシェルを含むガス化装置と、ガス化装置内部でシェルに結合されるパターン形成されたアノード層と、を含む。パターン形成されたアノード層は、第2の材料から作られ、該パターン形成されたアノード層が、ガス化領域において高温ガスを凝縮することによってシェルを腐食から保護するよう構成されている。
【0006】
第2の実施形態では、システムは、凝縮腐食ガスの流れに曝される第1の材料を有するガス化部品と、第1の材料に結合される第2の材料を含むアノード層とを備える。アノード層は、凝縮腐食性ガスにより腐食から第1の材料を保護するよう構成される。
【0007】
第3の実施形態では、システムは、ガス化生成ガスにより腐食からガス化部品の表面を保護するよう構成された活性アノード層と、ガス化生成ガスと接触する参照電極と、参照電極からのフィードバックに応答して活性アノード層への電流を調整するよう構成されたコントローラとを備える。
【0008】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。図面を通して、同様の部材には同様の符号を付した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態によるガス化装置を導入したIGCC発電プラントのブロック図。
【図2】アノード層を含む、図1のガス化装置の一実施形態の側断面図。
【図3】ガス化装置に結合されるグリッドとしてパターン形成されたアノード層の一実施形態の概略図。
【図4】ガス化装置に結合される非垂直クロスメンバーを備えたグリッドとしてパターン形成されたアノード層の一実施形態の概略図。
【図5】ガス化装置に結合される山形部を備えたグリッドとしてパターン形成されたアノード層の一実施形態の概略図。
【図6】ガス化装置に結合される三角部を備えたグリッドとしてパターン形成されたアノード層の一実施形態の概略図。
【図7】ガス化装置に結合される金属リボンの織物としてパターン形成されたアノード層の一実施形態の概略図。
【図8】ガス化装置に結合される円形にパターン形成された小孔薄片アノード層の一実施形態の概略図。
【図9】ガス化装置に結合される山形にパターン形成された小孔薄片アノード層の一実施形態の概略図。
【図10】ガス化装置内に配置されるパターン形成されたアノード層に対する電流を制御するシステムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。
【0011】
本発明の様々な実施形態の部品について紹介する際、単数形で記載したものは、その部品が1以上存在することを意味する。「含む」、「備える」及び「有する」という用語は内包的なものであり、記載した部品以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。
【0012】
腐食とは、酸素などの酸化剤と反応する金属の電気化学的酸化を指すことができる。金属酸化物は元の金属と特性が同じではない可能性があるので、腐食した金属部品は交換又は補修を行う場合がある。IGCC発電プラントのガス化装置又はガス処理ユニットのような、ガス化部品のガス化領域の状態は、少なくとも1つのタイプの腐食の一因となる可能性がある。水溶性の電気化学的腐食は、水媒体中に電気的に接続された2つの異なる金属の電位差に伴う電気化学的反応によって生じることができる。2つの異なる金属は、活性金属と貴金属と呼ぶことができる。貴金属のイオンは、活性金属のイオンよりも表面に強く結合している。加えて、貴金属及び活性金属は、互いに物理的に接触させることによって電気的に接続することができる。更に、一般に電解質とも呼ばれる水媒体の実施例は、限定ではないが、酸、塩基、又は塩の水溶液、高温の特定のガス、溶融塩、或いはこれらの組合せを含むことができる。具体的には、ガス化部品のガス化領域における高温ガスは、凝縮してガス化部品の壁又は他の設備上に液体を形成することができる。
【0013】
水溶性腐食の電気化学的反応の間、活性金属からイオンが放出され、水媒体を通って流れて貴金属と結びつく。同時に、電子は、活性金属すなわちアノードから電気的接続を介して貴金属すなわちカソードに流れる。活性金属は、イオンを放出することにより、完全に使い果たされるまで腐食を継続することができる。対照的に、貴金属は影響を受けないか、又は活性金属よりも緩慢に腐食することができる。貴金属の実施例には、限定ではないが、銀、プラチナ、及び金が挙げられる。更に、活性金属又は卑金属の実施例には、限定ではないが、鉄、ニッケル、鉛、及び亜鉛が挙げられる。
【0014】
特定のガス化装置において、水溶性腐食は、水の存在下での塩化アンモニウム(NHCl)のように、塩の存在下で2つの異なる金属が互いに接触している場合に生じる可能性がある。NHClは、ガス化装置における副生成物として生成することができ、水は、ガス化装置に蒸気を注入することによって導入することができる。他のガス化装置では、2つの異なる金属が存在しない場合があるが、以下に示すプロセスによっても水溶性腐食が生じる可能性がある。ガス化装置の特定の金属表面はパッシベートすることができ、これは、金属に固有の状態下で更なる腐食に対する障壁層としての役割を果たす金属酸化物の薄層の形成を指す。パッシベーションを受けることができる金属の実施例には、限定ではないが、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、又はこれらの組合せが挙げられる。水の存在下でNHClのような塩堆積物が不活性膜の破断した金属領域に形成されたときに、活性−不活性セルが生成される。貴金属又はカソードとして働く不活性膜の大きな領域と、アノードとして働く非パッシベート活性金属の小さな領域との間に電位が生じる。従って、単一の金属から作られたガス化装置であっても、水溶性腐食を受ける可能性がある。
【0015】
以下で検討する特定の実施形態では、アノードは、水溶性腐食又は場合によってはガス化部品において発生する可能性がある他のタイプの腐食の低減を助けるのに用いることができる。例えば、犠牲アノード層は、腐食から保護すべき金属表面と電気的に接触して配置することができる。具体的には、犠牲アノード層は、ガス化装置のシェルの金属表面よりも電気化学的により活性な金属から作られる。ガルバニ列と呼ばれる金属の序列は、特定の金属がアノード金属よりも電気化学的に活性が高いか又は低いかを判定するのに用いることができる。より貴金属であるほど、ガルバニ列の一方端近くに存在することができ、より活性金属であるほど、ガルバニ列の他方端近くに存在することができる。2つの金属は、電解質に浸漬され且つ電気的に接続されて、ガルバニ列の金属の順序が判定される。あまり貴でない金属はガルバニック腐食を生じる。更に、金属が貴であることの差違は、ガルバニック腐食の速度に影響し、これは電圧電位の差として測定することができる。従って、電圧電位の差が大きい2つの金属は、ガルバニ列において離れた位置に存在することができる。加えて、ガルバニック腐食の速度は、電解質により影響を受ける可能性がある。従って、ガルバニ列における金属の順序は、電解質に応じて異なる可能性がある。
【0016】
犠牲アノード層の1つ又はそれ以上の異なる金属は、ガス化装置の状態に基づいた適切なガルバニ列を用いて、ガス化シェルに使用されている金属よりも電気化学的に活性の金属から選択される。従って、犠牲アノード層は、ガス化装置シェルの金属よりも優先的に腐食する。犠牲アノード層に1つよりも多い金属を用いることにより、ガス化装置は、第1の電気化学的に活性の金属が使い果たされた後でも、例えば第2の金属によって依然として保護することができる。或いは、ガス化装置の腐食の影響をより受けやすい領域に、電気化学的活性の高い金属を配置してもよい。犠牲アノード層に用いることができる金属の実施例には、限定ではないが、炭素鋼、アルミニウム、混合金属酸化物、又はこれらの組合せが挙げられる。混合金属酸化物は、チタン製基材を覆う白金族金属の混合物から作られた表面を有する犠牲アノード層と呼ぶことができる。白金族金属の混合物は導電性があり、チタンを活性化するので、犠牲アノード層として機能を果たす。加えて、優先的に腐食される犠牲アノード層に十分な推進力を提供するために、2つの金属間の電圧電位の差は、約0.1から1.5ボルト、0.2から1.0ボルト、又は0.3から0.5ボルトの間とすることができる。換言すると、犠牲アノード層の金属は、ガス化装置シェルの金属よりも電気化学的に約10%、50%、500%、又は1,500%活性とすることができる。適切に選択されると、イオン及び電子は、犠牲アノード層が完全に使い果たされるまで、腐食条件下で十分な速度で犠牲アノード層からカソードとして働くガス化装置シェルの金属へと流れる。この時点で、新しい犠牲アノード層が導入され、引き続きガス化装置シェルを腐食から保護する。
【0017】
他の実施形態では、印加電流システムを用いて、金属を腐食から能動的に保護することができる。上記で検討した犠牲アノード層とは対照的に、印加電流システムのアノード層は使い果たされることがなく、或いは、ガス化装置シェルの保護中は極めて緩慢に消費される。その代わりに、アノード層は、外部電源及び変圧整流器に接続され、アノード層と保護構造体との間に電位差をもたらす。電位差は、アノード層の表面における化学的酸化/還元反応によって水媒体からの電子をガス化装置シェルの表面に印加又は移動させる。このため、適切に構成されたシステムではアノード層が使い果たされることはない。印加電流システムのアノード層が使い果たされることはないことから、該アノード層は、犠牲アノード層よりも小さくすることができる。アノード層からガス化装置シェルに電子又は電流を付加すると、ガス化装置シェルの金属が電子を放出して腐食されるのを防ぐことにより水溶性腐食を低減することができる。しかしながら、アノード層からの電子の流れが不十分である場合、ガス化装置シェルの腐食が依然として生じる可能性がある。或いは、電子の流れが多すぎる場合、ガス化装置シェルは、水素脆化により損傷を受ける可能性がある。一定の条件下では、電解質中に存在する水素イオンは、カソードにおいて水素原子に還元することができる。水素原子は、高張力鋼などの特定金属の粒状構造に浸透し、水素脆化を引き起こす可能性がある。従って、アノード層から電子の適正な流れが移動していることを判定する1つの方法は、ガス化装置内に参照電極を導入することである。参照電極を用いて、ガス化装置シェル及び参照電極にわたる電位を監視し、信号をコントローラに送信して、参照電極及びガス化装置シェルにわたる電位を許容範囲内に維持することができる。参照電極はまた、犠牲アノード層と共に用いて、該犠牲アノード層を交換するタイミングを示すことができる。
【0018】
犠牲アノード層又は印加電流システムの何れの場合においても、腐食保護システムの仕様を決定するための複数のステップを実施することができる。最初に、作動中にガス化装置シェルに使用される金属の好適な防食電位が決定される。ポテンシオスタットを用いた実験室試験は、実際の作動中に測定できない場合に所要防食電位を予測するのに用いることができる。次に、ガス化装置シェルの防食電流が決定される。防食電流は、保護すべき構造体の表面積、電解質流量、作動温度範囲、及び保護構造体の幾何形状の関数である。加えて、好適なアノードカバレッジ方式及び構成は、保護構造体の幾何形状及びアノードスローイングパワーに基づいて決定され、アノードスローイングパワーとは、構造体の凹部又は死角を保護するアノードの能力を指すことができる。次いで、防食電流よりも大きなアノード電流を得るのに好適なアノード表面積が決定される。アノード電流は、アノードの表面積及びアノードとして選択された材料の関数である。最後に、アノード材料の質量は、防食電流及び好適な供用時間の関数として決定される。この最後のステップは、通常はアノードが消費されないので、印加電流システムには適用されなくてもよい。これらの仕様が既知となると、腐食保護システムは、ガス化装置シェルの腐食の低減を助けるよう構成することができる。
【0019】
上述の両方のシステムは、別個に説明されたが、ガス化装置の特定の実施形態では同時に用いることもできる。例えば、印加電流システムにおいて電流が利用可能でない場合、犠牲アノード層が引き続きガス化装置シェルの表面を保護することができる。或いは、犠牲アノード層が完全に使い果たされた場合、印加電流システムが引き続き腐食の低減を助けることができる。他の実施形態では、犠牲アノード層又は印加電流システムを個別に導入し、複雑さ及び/又はコストを低減することができる。当初は、参照電極、電源、変圧整流器、及び/又はコントローラを使用しないので、犠牲アノード層を用いると、印加電流システムよりも安価で簡素にすることができる。しかしながら、犠牲アノード層は消費されるので、定期的に交換され、結果として継続的に交換コスト及び保守停止時間が生じる。
【0020】
犠牲アノード層及び印加電流システムの両方は、他の腐食保護方法よりも優れた幾つかの利点をもたらす。例えば、これらのシステムは、高価な耐腐食性合金を用いるよりも安価にすることができる。加えて、これらのシステムは、より効率的になる高圧高温でガス化装置を作動させることができる。低圧低温は腐食が低減されるが、効率も低下する可能性がある。最後に、これらのシステムは、ガス化装置において低品質及び/又は安価な燃料を燃焼可能にすることができる。高品質の燃料は、腐食性ガスの含有が少ない可能性があるが、低品質燃料よりも高価である場合が多い。
【0021】
ここで図面に移ると、図1は、シンガスを生成し燃焼できるIGCCシステム100の一実施形態の図である。IGCCシステム100は、腐食を生じやすい表面を有し、該表面が犠牲アノード層及び/又は印加電流システムによって保護される、ガス化部品の一実施形態を含むことができる。加えて、他のガス処理又はガス清浄化部品、炭素捕捉部品、又は腐食の影響を受けやすいIGCCシステム100の他の何れかの部品は、犠牲アノード層及び/又は印加電流システムの実施形態によって保護することができる。IGCCシステム100の他の要素は、固体又は液体とすることができる燃料源102を含むことができ、これはIGCCシステムのエネルギー源として利用できる。燃料源102は、石炭、石油コークス、オイル、バイオマス、木質系材料、農業廃棄物、タール、コークス炉ガス及びアスファルト、又は他の炭素含有物を含むことができる。
【0022】
燃料源102の燃料は、原材料調製ユニット104に送ることができる。原材料調製ユニット104は、例えば、燃料源102を細断、ミル加工、破砕、微粉砕、ブリケット、又はパレタイジングして原材料を生成することにより、該燃料源102のサイズ変更及び形状変更をすることができる。加えて、水又は他の好適な液体を原材料調製ユニット104において燃料源102に添加し、スラリー状原材料を生成することができる。他の実施形態では、燃料源に液体が添加されず、すなわち乾燥原材料を生じさせる。別の実施形態では、燃料源102が液体である場合には、原材料調製ユニット104を省くことができる。
【0023】
原材料は、原材料調製ユニット104からガス化装置106に送ることができる。以下で説明するような、高温凝縮ガス又は凝縮しているガス化生成ガスと接触するガス化装置106のシェルの表面は、腐食を生じやすく、従って、犠牲アノード層及び/又は印加電流システムにより保護することができる。ガス化装置106は、原材料をシンガス、例えば一酸化炭素(CO)と水素の組合せに転化することができる。この転化は、利用するガス化装置106のタイプに応じて、高圧(例えば、約20バールから85バール)及び高温(例えば、約700℃から1600℃)で蒸気及び酸素の制御された量に原材料を曝すことにより達成することができる。ガス化プロセスは、原材料が熱分解プロセスを受けることを含むことができ、これにより加熱される。ガス化装置106の内部温度は、原材料を生成するのに利用される燃料源102に応じて、熱分解プロセス中に約150℃から700℃の範囲にわたることができる。熱分解プロセス中の原材料の加熱は、固体物(例えば、チャー)と、残留ガス(例えば、CO、水素、及び窒素)とを生成することができる。熱分解プロセスによる原材料からの残留チャーは、元の原材料の重量の最大約30%の重さしかない可能性がある。
【0024】
熱分解プロセス中に生成される揮発性物質は液化としても知られ、ガス化装置106に酸素を導入することによって部分的に燃焼することができる。揮発性物質は、酸素と反応し、後続のガス化反応に熱を提供する燃焼反応においてCO及びCOを形成することができる。燃焼反応により発生する温度は、約700℃から1600℃の範囲に及ぶ場合がある。次に、ガス化ステップ中に蒸気をガス化装置106に導入することができる。チャーは、CO及び蒸気と反応し、約800℃から1100℃の範囲の温度でCOと水素を生成することができる。本質的に、ガス化装置は蒸気と酸素を利用して、原材料の一部を「燃焼」してCOを生成し、エネルギーを放出することができ、該エネルギーにより、原材料を水素と追加のCOとに更に転化させる第2の反応を開始させる。
【0025】
このようにして、ガス化装置106は結果として得られるガスを製造する。この結果として得られるガスは、等分で約85%のCO及び水素、並びにCH、HCl、HF、COS、NH、HCN、及びHS(原材料の硫黄含量に基づく)を含むことができる。この結果として得られるガスは、例えば、HSを含むので、未処理シンガスと呼ぶことができる。ガス化装置106はまた、湿潤灰物質とすることができる、スラグ108などの廃物を生成する場合がある。このスラグ108は、ガス化装置106から取り除かれ、例えば、道路基盤材料又は他の建築材料として処分することができる。未処理シンガスを清浄化するために、ガス清浄器110を利用することができる。一実施形態では、ガス清浄器110は、水性ガスシフト反応器とすることができる。ガス清浄器110は、未処理シンガスをスクラビング処理して、該未処理シンガスからHCl、HF、COS、HCN、及びHSを除去することができ、これは、硫黄処理装置112における硫黄111の分離を含むことができる。更に、ガス清浄器110は、水処理ユニット114により未処理シンガスから塩113を分離することができ、該水処理ユニット114は、浄水技術を利用して未処理シンガスから利用可能な塩113を生成することができる。続いて、ガス清浄器110からのガスは、処理済みシンガス(例えば、シンガスから硫黄111が除去された)と、微量の他の化学物質(例えば、NH(アンモニア)及びCH(メタン))を含むことができる。
【0026】
一部の実施形態では、ガス処理装置を利用して、アンモニア及びメタンなどの追加の残留ガス成分、並びに処理済みシンガスからメタノール又は何らかの残留化学物質を除去することができる。しかしながら、処理済みシンガスは、残留ガス成分(例えば、排ガス)を含む場合でも燃料として利用できるので、処理済みシンガスからの残留ガス成分の除去は任意選択である。現時点では、処理済みシンガスは、約3%のCO、約55%のH、及び約40%のCOを含むことができ、実質的にHSが取り去られている。
【0027】
一部の実施形態では、炭素捕捉システム116は、シンガスに含まれる炭素含有ガス(例えば、約80〜100又は90〜100容量%ピュアの二酸化炭素)を除去し処理することができる。炭素捕捉システム116はまた、圧縮機、清浄器、隔離又は増進回収用にCOを供給するパイプライン、CO貯蔵タンク、或いはこれらの何れかの組合せを含むことができる。捕捉された二酸化炭素は、二酸化炭素膨張器に移送することができ、該膨張器が二酸化炭素の温度を低下させ(例えば、約5〜100℃、又は約20〜30℃)、その結果、二酸化炭素がシステムに好適な冷却剤として使用可能になる。冷却された二酸化炭素(例えば、約20〜40℃、又は約30℃)は、その冷却要件に適合するようシステムを通って循環され、或いは、後続の段を通って膨張されて更に低温にすることができる。次に、硫黄含有成分と二酸化炭素の大部分とが除去された処理済みシンガスは、ガスタービンエンジン118の燃焼器120(例えば、燃焼室)に可燃性燃料として送ることができる。
【0028】
IGCCシステム100は更に、空気分離ユニット(ASU)122を含むことができる。ASU122は、例えば、蒸留技術によって空気を成分ガスに分離するよう動作することができる。ASU122は、補助空気圧縮機123により供給される空気から酸素を分離することができ、分離した酸素をガス化装置106に移送することができる。加えて、ASU122は、分離した窒素を希釈窒素(DGAN)圧縮機124に送ることができる。
【0029】
DGAN圧縮機124は、ASU122から受け取った窒素を少なくとも燃焼器120内の圧力に等しい圧力レベルにまで圧縮し、シンガスの適正燃焼を妨げないようにすることができる。従って、DGAN圧縮機124が適正レベルまで窒素を十分に圧縮すると、該DGAN圧縮機124は、圧縮窒素をガスタービンエンジン118の燃焼器120に送ることができる。窒素は、例えば、エミッション制御を向上させるための希釈剤として用いることができる。
【0030】
上述のように、圧縮窒素は、DGAN圧縮機124からガスタービンエンジン118の燃焼器120に送ることができる。ガスタービンエンジン118は、タービン130、駆動シャフト131、及び圧縮機132、並びに燃焼器120を含むことができる。燃焼器120は、シンガスなど、燃料ノズルから圧力を受けて注入することができる燃料を受け取ることができる。この燃料は、圧縮空気並びにDGAN圧縮機124からの圧縮窒素と混合されて、燃焼器120内で燃焼することができる。この燃焼は、高温の加圧された排気ガスを生成することができる。
【0031】
燃焼器120は、排気ガスをタービン130の排気出口に向けて配向することができる。燃焼器120からの排気ガスがタービン130を通過すると、該排気ガスによって、タービン130のタービンブレードがガスタービンエンジン118の軸線に沿って駆動シャフト131を回転させる。図示のように、駆動シャフト131は、圧縮機132を含む、ガスタービンエンジン118の種々の部品に接続される。
【0032】
駆動シャフト131は、タービン130を圧縮機132に接続し、ロータを形成することができる。圧縮機132は、駆動シャフト131に結合されたブレードを含むことができる。従って、タービン130のタービンブレードが回転することにより、タービン130を圧縮機132に接続する駆動シャフト131が圧縮機132内でブレードを回転させることができる。圧縮機132におけるこのブレードの回転によって、圧縮機132は、該圧縮機132内の吸気口を介して受け取る空気を圧縮する。次いで、圧縮空気は、燃焼器120に送給されて燃料及び圧縮窒素と混合され、高効率の燃焼を可能にすることができる。駆動シャフト131はまた、負荷134に接続することができ、該負荷は、例えば、発電プラントにおいて電力を生成する発電機のような定置負荷とすることができる。実際に、負荷134は、ガスタービンエンジン118の回転出力により動力が供給される何れかの好適な装置とすることができる。
【0033】
IGCCシステム100はまた、蒸気タービンエンジン136及び排熱回収ボイラ(HRSG)システム138を含むことができる。蒸気タービンエンジン136は、第2の負荷140を駆動することができる。第2の負荷140はまた、電力を発生する発電機とすることができる。しかしながら、第1の負荷130及び第2の負荷140は共に、ガスタービンエンジン118及び蒸気タービンエンジン136によって駆動できる他のタイプの負荷であってもよい。加えて、ガスタービンエンジン118及び蒸気タービンエンジン136は、図示の実施形態で示すように、個別の負荷134及び140を駆動することができ、縦一列の形態で利用して単一のシャフトにより単一負荷を駆動することもできる。蒸気タービンエンジン136並びにガスタービンエンジン118の特定の構成は、実装時固有とすることができ、任意の組合せのセクションを含むことができる。
【0034】
本システム100はまた、HRSG138を含むことができる。ガスタービンエンジン118からの加熱した排気ガスは、HRSG138に運ばれ、水を加熱するのに使用され、更に蒸気タービンエンジン136を駆動するのに用いる蒸気を発生することができる。例えば、蒸気タービンエンジン136の低圧セクションからの排気は、凝縮器142内に配向することができる。凝縮器142は、冷却塔128を利用して加熱水を冷却水に換えることができる。冷却塔128は、凝縮器142に低温水を供給して、蒸気タービンエンジン136から凝縮器142に送られた蒸気の凝縮を助ける働きをする。凝縮器142からの凝縮液は次に、HRSG138内に配向することができる。この場合も同様に、ガスタービンエンジン118からの排気もまたHRSG138内に配向され、凝縮器142からの水を加熱して蒸気を発生させることができる。
【0035】
IGCCシステム100のような複合サイクルシステムでは、高温排気は、ガスタービンエンジン118からHRSG138に流れることができ、HRSG138において、高温排気を使用して高圧高温蒸気を発生させることができる。HRSG138によって発生した蒸気は次に、電力発生のために蒸気タービンエンジン136を通すことができる。加えて、発生した蒸気はまた、ガス化装置106のような蒸気を使用することができる他の何れかのプロセスに供給することができる。ガスタービンエンジン118の発電サイクルは、「トッピングサイクル」と呼ばれることが多く、他方、蒸気タービンエンジン136の発電サイクルは、「ボトミングサイクル」と呼ばれることが多い。これら2つのサイクルを図1に示すように組合せることによって、IGCCシステム100は両サイクルにおいてより大きな効率をもたらすことができる。具体的には、トッピングサイクルからの排熱を捕捉して、ボトミングサイクルにおいて使用するための蒸気を発生させるのに使用することができる。
【0036】
図2は、アノード層169を備えた、図1のIGCCシステム100と共に用いるためのガス化装置106の一実施形態の側断面図である。ガス化装置106は、軸方向の軸線又は方向150、半径軸線又は方向152、及び円周軸線又は方向154を有することができる。ガス化装置106は、シェルと呼ばれることもあるエンクロージャ156を含み、該エンクロージャ156は、ガス化装置106のハウジング又は外側ケーシングとしての機能を果たす。エンクロージャ156は、第1の末端部分158と第2の末端部分160とを含む。中間部分162は、エンクロージャ156のセクションにより定められ、第1の末端部分158と第2の末端部分160との間で軸方向に位置する。第1の末端部分158及び第2の末端部分160は、ドーム型頂壁164と、三角形(例えば、円錐形)の底壁166とをそれぞれ含む。軸線150に平行な側壁168(例えば、環状側壁)は、頂壁164と底壁166との間の中間部分162に配置される。頂壁164、底壁166、及び側壁168は全て凝縮高温ガスと接触する可能性があるので、これらの壁の表面は、犠牲アノード層及び/又は印加電流システムにより保護することができる。
【0037】
図示の実施形態では、アノード層169は、エンクロージャ156に結合される。上述のように、アノード層169は、犠牲アノード層、印加電流システム用のアノード層、又はこれらの組合せを含むことができる。加えて、アノード層169は、エンクロージャ156とは異なる金属から作られる。更に、エンクロージャ156の内面を覆う薄層として電解質が存在し得るので、アノード層169は、個々のアノードブロックではなく1つの層として構成することができる。電解質の薄層は、イオン輸送を妨げ、すなわち、アノードのスローイングパワーを妨げる可能性がある。アノード層169を1つの層として構成することは、均一で大きな区域にわたってスローイングパワーを分布させ、電解質層を通るイオン輸送の妨げを克服する助けとすることができる。加えて、アノード層169は、ガス化装置106のエンクロージャ156の内面全体又は一部に取り付けることができる。例えば、アノード層169は、腐食の影響を最も受けやすいエンクロージャ156の内面にのみ導入することができる。加えて、アノード層169として選択された厚み及び/又は材料は、エンクロージャ156内の位置に基づいて変わる可能性がある。更に、1つ又はそれ以上の層169は、互いの上部に結合され、アノード構造に強度及び/又は耐久性を付加することができる。
【0038】
アノード層169の特定の実施形態は、以下で詳細に検討される。エンクロージャ156へのアノード層169の取り付け方法は、アノード層169の特定の構成に応じて変わる可能性がある。しかしながら、全ての方法において、アノード層169は、エンクロージャ156の金属と電気的に接触している。例えば、アノード層169は、金属メッシュ、グリッド、又は薄片として構成することができ、限定ではないが、溶接、ボルト締め、又は2つの金属構造を機械的に付着させる他の好適な技術などの方法によって、エンクロージャ156に取り付けることができる。或いは、アノード層169は複合材料であってもよい。例えば、限定ではないが、グラウト、セラミック又はシリケートマトリックス、或いはこれらの組合せなどの断熱マトリックスの層をエンクロージャ156の表面に施工することができる。アノード層169は、グラウトに押し込むことによりエンクロージャ156に結合される。グラウトの層の厚みは、アノード層169の厚みと同じか又はそれ未満であり、アノード層169をエンクロージャ156に接触させ、腐食性ガスに曝すことができる。別の実施例において、アノード層169は、パターンコーティングをエンクロージャ156に連続的に接着させることにより形成することができる。コーティング法の実施例には、限定ではないが、プリンティング、スプレーコーティング、ブラッシング、電気化学的堆積、浸漬、フォトエッチング、スパッタリング、又はこれらの組合せが挙げられる。従って、上述のような方法を用いることにより、アノード層169のスローイングパワーは、エンクロージャ156の保護表面にわたって均一に分布させることができる。
【0039】
図示の実施形態はまた、エンクロージャ156の内部に同心状に配置された熱障壁170を含む。熱障壁170、アノード層169、及びエンクロージャ156は、ガス化装置106の内部176からガス化装置106の外部を分離する壁組立体172を形成する。従って、アノード層169は、ガス化装置106のシェルと熱障壁170との間に配置される。内部176はガス化チャンバ178を含み、ここにおいて、図1に関して上記で説明したように、熱分解、燃焼、ガス化、又はこれらの組合せを行うことができる。壁組立体172は、ガス化中に内部176から外部174への熱伝達及びガス成分の漏出を阻止するよう構成される。加えて、熱障壁170は、エンクロージャ156の表面温度を所望の温度範囲内に維持するよう構成することができる。従って、熱障壁170は、受動的シールド、能動的冷却、又はこれらの組合せを含むことができる。例えば、熱障壁170が受動的熱シールドである実施形態では、該熱障壁170は、最大で約500℃、1000℃、1500℃、又は200℃もしくはそれ以上の温度に耐え得る様々な耐火性材料(例えば、煉瓦)で作ることができる。すなわち、熱障壁170又は耐火性断熱ライニングは、このような高温に曝されたときに所定の物理的及び化学的特性を維持する何れかの材料から作ることができる。熱障壁170として使用するのに好適な耐火性材料は、セラミック(例えば、粘土又は鉱物)、金属(例えば、チタン、タングステン)、サーメット(すなわち、セラミックと金属の複合材料)、又は他の耐火性材料(例えば、シリカ、酸化アルミニウム)を含むことができる。耐火性材料は、例えば、耐火性グラウトを用いてアノード層169に取り付けることができる。別の実施例では、特定の実施形態は、熱障壁170の部品として能動的熱冷却システムを利用することができる。このような実施形態では、冷却管は、温度低減目的に用いることができる。すなわち、冷却剤(例えば、冷却水)を1つ又はそれ以上の管体を通して循環させ、エンクロージャ156の表面温度を下げることができる。冷却管はまた、腐食の影響を受けやすい可能性があり、従って、アノード層169を延長することにより、及び/又は別個のアノード層を用いることにより保護することができる。
【0040】
図2に示す実施形態では、インジェクタ180は、エンクロージャ156の第1の末端部分の頂壁164に配置される。インジェクタ180は、出口187から距離188だけ長手方向にオフセットされ、該インジェクタ180から生じる流れの全体の方向を決定する噴射軸190を含む。インジェクタ180は、燃料、酸素(例えば、空気)、又は燃料と酸素の混合気をガス化チャンバ178に噴射するよう構成することができる。例えば、インジェクタ180は、石炭、石油、又はバイオマスなどの炭素質材料の形態で燃料を噴射することができる。実際には、インジェクタ180は、ガス化によりシンガスを生成するのに好適な任意の材料(例えば、木くず、又はプラスチック廃棄物などの有機材料)を噴射することができる。別の実施例において、インジェクタ180は、酸素及び/又は蒸気の制御された量を単独で又は好適な燃料と組合せて噴射することができる。
【0041】
図示の実施形態では、噴射軸190は、ガス化装置106の軸線150に平行で、且つ半径方向軸線152に垂直である。換言すると、噴射軸190は、長手方向軸線186に平行である。このような特徴は、インジェクタ180から出る流体流を使用中のガス化チャンバ178を通って矢印194で示すほぼ下向き方向(例えば、下流方向)に配向する作用がある。特定の実施形態では、噴射軸190は、長手方向軸線186から約0から45度、0から30度、0から20度、又は0から10度の間の角度で離れて配向することができる。更に、インジェクタ180の特定の実施形態は、発散スプレーを提供することができ、例えば、インジェクタ180から生じる流体流は、参照符号196で示すように、ほぼ下向き方向(例えば、下流方向)で、壁168に向かって外向きに発散させることができる。
【0042】
ガス化装置106の図示の実施形態では、結果として得られるシンガスは、ガス化装置106から出口187を介して出口軸線204によりほぼ定められる経路に沿って出てくる。すなわち、シンガスは、ガス化装置106の底壁166内の位置によりガス化装置106から出る。しかしながら、本明細書で開示されるガス化装置設計は、出口が底壁に配置されていない様々な他のガス化装置システムと共に用いることができる点に留意されたい。例えば、開示される実施形態は、噴流床ガス化装置と併せて用いることができる。このような実施形態では、ガス化チャンバ178を通る流れの方向は、ガス化装置106を通って上向き、すなわち矢印194とは反対方向とすることができる。これらのシステムにおいて、結果として得られるシンガスは、ガス化装置106の頂壁164又はその近傍に位置する出口から出ることができ、溶融スラグは、底壁166から出ることができる。別の実施例において、開示される実施形態は、流動床ガス化装置で利用することができる。同様に、このような装置における出口は、流れの方向がほぼ上向きであるので、ガス化装置106の頂壁164近傍に配置することができる。
【0043】
ここでアノード層の種々のパターンに移ると、図3は、グリッド221としてパターン形成されたアノードシステム220の一実施形態の概略図を示し、該アノードシステム220は、水平部材222と垂直部材224とを垂直配置で含む。水平部材222及び垂直部材224は、限定ではないが、金属ワイヤ、ロッド、バー、ビレット、バンド、ストリップ、又は幅よりも長さの方が長い他の何れかの金属部品を含むことができる。図3では直線的に示されているが、他の実施形態では、水平部材222及び垂直部材224は、例えば、曲線状、湾曲、捻れ、屈曲、コイル状、又は他の形状で構成することができる。加えて、水平部材222及び垂直部材224は、システム220全体の電気的導通を提供する点230において相互接続される。相互接続点230の作製方法は、限定ではないが、溶接、ボルト締め、又は2つの金属構造を機械的に付着させる他の好適な技術を含む。垂直部材224は、第1の距離226だけ離間して配置され、水平部材222は、第2の距離228だけ離間して配置される。種々の実施形態では、距離226及び228は、同じであっても又は異なっていてもよい。加えて、規則的な水平及び垂直スペースで図示されているが、別の実施形態では、水平部材222及び垂直部材224は、異なる間隔又は不規則な間隔で離間してもよい。グリッド221としてのアノードシステム220の構成は、アノード層169に均一なスローイングパワーを提供することができる。
【0044】
特定の実施形態では、アノードシステム220は、犠牲アノード層として構成することができ、上述のようにガス化装置106の作動中に使い果たされる可能性がある。このことは、アノード層169に使用される金属が、ガス化装置106に使用される金属よりも電気化学的により活性であることに起因して生じる。従って、アノード層169は、優先的に腐食してガス化装置106を保護する。他の実施形態では、印加電流システムを用いることができ、アノード層169は、水媒体との酸化/還元反応により該水媒体から電子を提供し、使い果たされることなくガス化装置106の腐食の低減を助ける。加えて、上述のように、アノード層169の一部は、点230において電気的に接続され、単一の変圧整流器がアノード層169の全ての接続部分に電流を加えることを可能にすることができる。例えば、変圧整流器314の陰極は、システム220のグリッド21の少なくとも一部に接続することができる。印加電流システムにおける変圧整流器の正極は、ガス化装置106のエンクロージャ156の表面に接続することができる。従って、電子は、アノード層169の表面において水媒体から電解質を通ってガス化装置106に流れることができる。
【0045】
図4は、非垂直クロスメンバーを備えたグリッド241としてパターン形成されたアノードシステム240の一実施形態の図である。図3に示す要素と共通する図4の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、非垂直クロスメンバー242は、垂直部材224を相互接続し且つ支持する異なる方法を提供する。具体的には、角度付きクロスメンバー242は、図3の水平部材222と同様であるが、垂直部材224に対して垂直ではない。換言すると、クロスメンバー242と垂直部材224との間の角度244は、約90度よりも大きいか又は小さい。
【0046】
図5は、山形部252又はV字形部材を備えたグリッド251としてパターン形成されたアノードシステム250の一実施形態の概略図である。図3に示す要素と共通する図5の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、山形部252は、垂直部材224を相互接続し且つ支持する。システム250のこのような構成は、何らかの凝縮液体をエンクロージャ156の壁から離して、図2に示すガス化装置106の出口187に向けて配向するのを助けることができる。凝縮液体への曝露が低減されることにより、エンクロージャ156の壁の腐食量の削減を助けることができる。
【0047】
図6は、三角部262を備えたグリッド261としてパターン形成されたアノードシステム260の一実施形態の概略図である。図3に示す要素と共通する図6の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、三角部262は、交互する角度付きクロスメンバー242から形成される。上述のシステムと同様に、グリッド261は、システム260に対してより均等に分散されたスローイングパワーを提供することができる。システム260の他の態様は、上述のシステムと同様である。
【0048】
図7は、金属リボンの織物としてパターン形成されたアノードシステム270の一実施形態の概略図であり、水平リボン272と垂直リボン274とを垂直配列で含む。或いは、リボン272及び274は、互いに対して非垂直とすることができる。図3に示す要素と共通する図7の要素は、同じ参照符号で表記されている。水平及び垂直リボン272及び274は、限定ではないが、金属ストリップ、バンド、ベルト、ストラップ、スワス、又は薄い金属の他の何れかの細長い要素を含むことができる。図7では直線状に示されているが、他の実施形態では、水平リボン272及び垂直リボン274は、曲線状、湾曲、捻れ、屈曲、コイル状、又は他の形状で構成することができる。加えて、水平リボン272及び垂直リボン274は、システム270全体の電気的導通を提供する点にて相互接続される。相互接続点230の作製方法は、限定ではないが、溶接、ボルト締め、又は2つの金属構造を機械的に付着させる他の好適な技術を含む。垂直リボン274は、距離226だけ離間して配置され、水平リボン272は、距離228だけ離間して配置される。種々の実施形態では、距離226及び228は、同じであっても又は異なっていてもよい。加えて、規則的な水平及び垂直スペースで図示されているが、別の実施形態では、水平リボン272及び垂直リボン274は、異なる間隔又は不規則な間隔で離間してもよい。リボンの織物としてのアノードシステム270の構成は、アノード層169に均一なスローイングパワーを提供することができる。
【0049】
図8は、円形小孔284を備えてパターン形成された薄片282を有するアノードシステム280の一実施形態の概略図を示し、該小孔は薄片282を完全に突き抜けている。薄片282は、上述のグリッドよりも取り扱い又は導入がより容易であり、アノード層169に対して均一なスローイングパワーを提供することができる。加えて、円形小孔284を設けることにより、エンクロージャ156の表面を覆うのに使用される薄片282の量を削減することができる。限定ではないが、楕円、三角形、四角形、矩形、菱形、多角形、及び不規則な形など、円形以外の形状の小孔284を用いることもできる。列及び行をなして示されているが、円形小孔284は、別の実施形態では他のパターン又は不規則なパターンで配置することができる。例えば、円形小孔284は、円形パターンで配列することもできる。加えて、水平距離286及び垂直距離288は、円形小孔284を分離することができる。水平距離286及び垂直距離288は、同じであっても、又は異なっていてもよく、均一又は不均一でもよい。更に、薄片282は、厚み290を有し、約0.01から5mm、0.03から1mm、又は0.05から0.5mmの間とすることができる。特定用途で選択された指定厚み290は、上述の方法を用いて決定されるアノード材料の質量に応じて決まることができる。
【0050】
図9は、山形小孔302を備えたパターン形成された薄片282を有するアノードシステム300の一実施形態の概略図を示し、該小孔は薄片282を完全に突き抜けている。図8に示す要素と共通する図9の要素は、同じ参照符号で表記されている。山形小孔302のこのような構成は、何らかの凝縮液体をエンクロージャ156の壁から離して、図2に示すガス化装置106の出口187に向けて配向するのを助けることができる。凝縮液体への曝露の低減により、エンクロージャ156の壁の腐食量の削減に役立つことができる。システム300の他の態様は、図8に示すシステム280と同様である。
【0051】
図10は、アノード層169への電流を調整するコントローラを含む、システム310の一実施形態の概略図を示す。印加電流システムの図示の実施形態では、電源312は、変圧整流器314に交流電流(AC)のような比較的一定の電流源を提供する。例えば、電源312は、変圧整流器314に高電圧3相ACを提供することができ、電圧をより低い電圧まで「漸減」し、ACを直流(DC)に変換することができる。変圧整流器314の正端子を第1の接続部316においてアノード層169に接続し、第2の接続部318においてガス化装置106の壁168に負端子を接続することによって、変圧整流器314は、アノード層169及びガス化装置106にわたって電位差を提供する。水媒体中の電気的接触及びイオン接触によるガス化装置106及びアノード層169の接続により電気化学的回路が完成する。従って、電子が、アノード層169表面において水媒体から電解質を通ってガス化装置106に流れる。しかしながら、電気化学的電流は、慣習により反対方向に流れるとされている。
【0052】
加えて、参照電極320は、システム310の変圧整流器314に接続することができる。参照電極320は、固定電位を表すことができ、該電位に対してガス化装置106の測定した電位を比較することができる。加えて、変圧整流器314は、参照電極320及びガス化装置106にわたる適正な防食電位を維持するためのコントローラとして機能することができる。防食電位は、上述のような実験室試験又は実際の作動測定値に基づいて決定することができる。例えば、特定の実施形態では、参照電極320は、変圧整流器314へのフィードバックによって、参照電極320及びガス化装置106にわたる測定電位が適正な防食電位よりも低いことを示すことができる。次いで、変圧整流器314は、アノード層169とガス化装置106との間の電位差を増大させることができ、アノード層169からガス化装置106への電流が増大するようにする。従って、参照電極320及び変圧整流器314を用いることにより、システム310は、変化する状態に応答して連続的に調整し、ガス化装置106の腐食低減を助けることができる。加えて、システム310は、印加電流システムを提示するが、犠牲アノードがガス化装置106に結合され、上述のような腐食保護のバックアップ方法として機能を果たすことができる。
【0053】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言上の差のない部品を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な部品を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0054】
100:統合型ガス化複合サイクル(IGCC)システム
102:燃料源
104:原材料調製ユニット
106:ガス化装置
108:スラグ
110:ガス清浄器
111:硫黄
112:硫黄処理装置
113:塩
114:水処理ユニット
116:炭素捕捉システム
118:ガスタービンエンジン
120:燃焼器
122:空気分離ユニット(ASU)
123:補助空気圧縮機
124:希釈窒素(DGAN)圧縮機
128:冷却塔
130:タービン
131:駆動シャフト
132:圧縮機
134:負荷
136:蒸気タービンエンジン
138:排熱回収ボイラ(HRSG)システム
140:第2の負荷
142:凝縮器
150:軸方向の軸線又は方向
152:半径軸線又は方向
154:円周軸線又は方向
156:エンクロージャ
158:第1の末端部分
160:第2の末端部分
162:中間部分
164:頂壁
166:底壁
168:側壁
169:アノード層
170:熱障壁
172:壁組立体
174:外部
176:内部
178:ガス化チャンバ
180:インジェクタ
186:長手方向軸線
187:出口
188:距離
190:噴射軸
194:矢印
196:参照符号
204:出口軸線
220:グリッドとしてパターン形成されたアノードシステム
221:グリッド
222:水平部材
224:垂直部材
230:道後接続点
226:第1の距離
228:第2の距離
240:非垂直クロスメンバーを備えたグリッドとしてパターン形成されたアノードシステム
241:非垂直クロスメンバーを備えたグリッド
242:角度付きクロスメンバー
244:角度
250:山形部を備えたグリッドとしてパターン形成されたアノードシステム
251:山形部を備えたグリッド
252:山形部
260:三角部を備えたグリッドとしてパターン形成されたアノードシステム
261:三角部を備えたグリッド
262:三角部
270:金属リボンの織物としてパターン形成されたアノードシステム
272:水平リボン
274:垂直リボン
280:円形小孔を備えてパターン形成された薄片を有するアノードシステム
282:薄片
284:円形小孔
286:水平距離
288:垂直距離
290:厚み
300:山形小孔を備えたパターン形成された薄片を有するアノードシステム
302:山形小孔
310:アノード層への電流を調整するコントローラを含むシステム
312:電源
314:変圧整流器
316:第1の接続部
318:第2の接続部
320:参照電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部のガス化領域に曝される第1の材料から作られたシェル(156)を含むガス化装置(106)と、
前記ガス化装置(106)内部で前記シェル(156)に結合されるパターン形成されたアノード層(169)と
を備えるシステムであって、前記パターン形成されたアノード層(169)が第2の材料から作られ、前記パターン形成されたアノード層(169)が、前記ガス化領域において高温ガスを凝縮することによって前記シェル(156)を腐食から保護するよう構成されている、システム。
【請求項2】
前記パターン形成されたアノード層(169)が、水溶性の電気化学的腐食から前記シェル(156)を保護するよう構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記シェル(156)内部に配置された耐火性断熱ライニング(170)を更に備え、前記パターン形成されたアノード層(169)が、前記シェル(156)と前記耐火性断熱ライニング(170)との間に配置される、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記パターン形成されたアノード層(169)が、断熱マトリックス内に配置された金属アノードパターンを有する複合材料を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記パターン形成されたアノード層(169)が、前記シェル(156)に結合された金属ワイヤメッシュを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記パターン形成されたアノード層(169)が、前記シェル(156)に連続的に接着されたパターン形成コーティングを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記パターン形成されたアノード層(169)に結合される変圧整流器(314)に電力を供給する電源(312)を更に備え、前記変圧整流器(314)が、前記パターン形成されたアノード層(169)に電流を印加して、凝縮高温ガスによる腐食から前記第1の材料を能動的に保護するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
参照電極(320)と、該参照電極(320)からのフィードバックに応答して前記パターン形成されたアノード層(169)への電流を調整するよう構成されたコントローラ(314)とを更に備える、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の材料が前記第1の材料よりも電気化学的により活性であり、前記第2の材料は優先的に腐食して、高温ガスを凝縮することによって腐食から前記第1の材料を保護するよう構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記パターン形成されたアノード層(169)が、前記第1の材料及び 前記第2の材料よりも電気化学的により活性な第3の材料を含む、請求項1記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−246707(P2011−246707A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110891(P2011−110891)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】