説明

ガス化複合発電プラントおよびこの起動方法

【課題】コスト削減が可能なガス化複合発電プラントおよびこの起動方法を提供することを目的とする。
【解決手段】石炭をガス化して燃料ガスにするガス化炉3と、燃料ガスが燃焼した燃焼ガスにより駆動されるガスタービン4と、ガスタービン4と同軸8上に設けられて、蒸気により回転駆動される蒸気タービン9と、軸8に接続されて発電を行う発電機16と、蒸気を発生するボイラ30と、空気から酸素と窒素とを分離して、石炭をガス化炉3に搬送する搬送ガスである窒素を生成する空気分離装置20と、空気分離装置20に供給する空気を圧縮する空気分離装置用圧縮機22と、空気分離装置用圧縮機22を駆動する圧縮機用蒸気タービン23と、を備え、ボイラ30が発生する蒸気の一部を圧縮機用蒸気タービン23へと供給して圧縮機用蒸気タービン23を駆動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化複合発電プラントおよびこの起動方法に関し、特に、ガス化複合発電プラントの起動に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭ガス化複合発電プラントの起動の際には、石炭ガス化炉においてガス化された生成ガスを脱硫した燃焼ガスをガスタービンの燃料として用いてガスタービンを起動している(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、近年は、石炭ガス化複合発電プラントにおける熱効率を高めるため、ガスタービンには、高温の燃焼ガスが供給されている。このように高温の燃焼ガスが供給されるガスタービンには、例えば、特許文献2に記載のように空気分離装置において副生した窒素や、冷却用の蒸気を導いて翼の冷却が行われている。
【0004】
また、ガスタービンが起動される際には、石炭ガス化複合発電プラントに設けられる蒸気タービンに蒸気が導かれることなく蒸気タービンが駆動されることとなる。そのため、蒸気タービンの翼が空力加熱される恐れがあるため、冷却用の蒸気を蒸気タービンに導いて冷却する必要がある。
【0005】
そこで、石炭ガス化複合発電プラントの起動の際に蒸気タービンやガスタービンへと冷却用の蒸気を供給するために、特許文献3には、工場内に設置されている補助ボイラが発生する蒸気を用いることが開示されている。
【0006】
また、工場内に設置されている補助ボイラの替わりに、石炭ガス化複合発電プラント内に補助ボイラを設けて、この補助ボイラからガスタービンおよび蒸気タービンを冷却する冷却用蒸気を供給することも考えられている。
【0007】
図2には、補助ボイラ30を備えている石炭ガス化複合発電プラント100の起動の際の概略構成図が示されている。
石炭ガス化複合発電プラント100の起動の際には、電動機21によって駆動される空気分離装置用圧縮機22により加圧された圧縮空気が空気分離装置20において窒素と酸素とに分離される。空気分離装置20において分離された窒素は、石炭供給設備10から導かれた微粉炭を一定流量ずつ石炭ガス化炉3へと搬送する搬送ガスとして用いられる。
【0008】
また、石炭ガス化複合発電プラント100の起動の際には、石炭ガス化複合発電プラント100内に設けられている補助ボイラ30において蒸気を発生させて、この蒸気をコンバインドシステムの蒸気タービン9およびガスタービン4の冷却に用いる。このように蒸気によって冷却される蒸気タービン9およびガスタービン4は、蒸気タービン9およびガスタービン4と同軸8上に設けられている電動発電機16を起動用のサイリスタ17により制御することによって起動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−10226号公報
【特許文献2】特開2003−83003号公報
【特許文献3】特開平8−14062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2および特許文献3に記載の発明や図2の場合には、多量の電力を消費する空気分離装置20を駆動する必要がある。そのため、石炭ガス化複合発電プラント100外から大電力を長時間受電する必要があり経済性が悪化するという問題があった。また、ガスタービン4を起動するために、電動発電機16や起動用のサイリスタ17等の起動用設備が必要となり、設置場所の確保や設備費が嵩むという問題があった。
【0011】
さらに、図2のように、石炭ガス化複合発電プラント100内に補助ボイラ30を設けた場合には、大容量の電気設備および起動用設備の設置に加えて補助ボイラ30の設置により、更に石炭ガス化複合発電プラント100の設置費用が嵩むこととなる。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、コスト削減が可能なガス化複合発電プラントおよびこの起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のガス化複合発電プラントおよびこの起動方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るガス化複合発電プラントによれば、石炭をガス化して燃料ガスにするガス化炉と、前記燃料ガスが燃焼した燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、該ガスタービンと同軸上に設けられて、蒸気により回転駆動される蒸気タービンと、前記軸に接続されて発電を行う発電機と、蒸気を発生するボイラと、空気から酸素と窒素とを分離して、前記石炭を前記ガス化炉に搬送する搬送ガスである前記窒素を生成する空気分離装置と、該空気分離装置に供給する空気を圧縮する空気分離装置用圧縮機と、該空気分離装置用圧縮機を駆動する圧縮機用蒸気タービンと、を備え、前記ボイラが発生する前記蒸気の一部を前記圧縮機用蒸気タービンへと供給して該圧縮機用蒸気タービンを駆動することを特徴とする。
【0014】
従来、例えば、ガス化複合発電プラント起動の際には、多量の電力を電動機に長時間供給して空気分離装置用圧縮機を駆動して空気分離装置へと空気を送っている。そのため、ガス化複合発電プラントの経済性が悪化するという問題があった。
【0015】
しかし、本発明のガス化複合発電プラントは、空気分離装置用圧縮機に圧縮機用蒸気タービンを接続して、ボイラからの蒸気を圧縮機用蒸気タービンへと導くこととした。これにより、空気分離装置用圧縮機は、圧縮機用蒸気タービンによって駆動されることとなる。そのため、ガス化複合発電プラント外から供給される受電量を減少させることができる。したがって、ガス化複合発電プラントの経済性を向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明に係るガス化複合発電プラントによれば、前記ボイラが発生する前記蒸気の一部を前記蒸気タービンへと供給して該蒸気タービンを起動することを特徴とする。
【0017】
本発明のガス化複合発電プラントは、さらに、ボイラから蒸気の一部を蒸気タービンに供給して蒸気タービンを起動することとした。これにより、ボイラは大容量化するが、蒸気タービンと同軸上に設けられるガスタービンも起動させることができる。そのため、従来必要であったガスタービン起動用の制御器等が不要となり、ガスタービン起動用の制御器等の起動用設備の設備費や設置場所の低減を図ることができる。したがって、ボイラ設置費用と、ガスタービン起動用設備費および空気分離装置用圧縮機の受電量の削減費用とが相殺されて、ガス化複合発電プラントの経済性を向上させることができる。
【0018】
また、蒸気タービンを起動することによって、同軸上に設けられるガスタービンを起動することができる。そのため、ガスタービンを起動してガスタービンと同軸上に設けられる蒸気タービンを回転駆動する従来の場合と異なり、蒸気タービンの翼が空力過熱されることがない。したがって、ガスタービンの起動に伴う蒸気タービンの冷却が不要となる。
なお、蒸気タービンに供給される蒸気の一部とは、蒸気タービンを駆動するのに十分な蒸気量をいう。
【0019】
さらに、本発明に係るガス化複合発電プラントは、前記蒸気タービンに供給される前記蒸気の一部を前記ガスタービンに冷却媒体として供給することを特徴とする。
【0020】
蒸気タービンに供給する蒸気の一部を冷却媒体としてガスタービンに供給することとした。そのため、ガスタービンを冷却してガスタービンが損傷することを防止することができる。
【0021】
さらに、本発明に係るガス化複合発電プラントの起動方法によれば、石炭をガス化して燃料ガスにするガス化炉と、前記燃料ガスが燃焼した燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、該ガスタービンと同軸上に設けられて、蒸気により回転駆動される蒸気タービンと、前記軸に接続されて発電を行う発電機と、蒸気を発生するボイラと、空気から酸素と窒素とを分離して、前記石炭を前記ガス化炉に搬送する搬送ガスである前記窒素を生成する空気分離装置と、該空気分離装置内に設けられて空気を圧縮する空気分離装置用圧縮機と、該空気分離装置用圧縮機を駆動する圧縮機用蒸気タービンと、を備えるガス化複合発電プラントの起動方法であって、前記ボイラが発生する前記蒸気の一部を前記圧縮機用蒸気タービンへと供給することによって該圧縮機用蒸気タービンを駆動して起動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上述した発明によれば、空気分離装置用圧縮機に圧縮機用蒸気タービンを接続して、ボイラからの蒸気を圧縮機用蒸気タービンへと導くこととした。これにより、空気分離装置用圧縮機は、圧縮機用蒸気タービンによって駆動されることとなる。そのため、ガス化複合発電プラント外から供給される受電量を減少させることができる。したがって、ガス化複合発電プラントの経済性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図である。
【図2】従来の石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、本発明の一実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図が示されている。
図1に示されているように、石炭を燃料とする石炭ガス化複合発電プラント(ガス化複合発電プラント)1は、主として、微粉炭(石炭)をガス化して燃料ガスにする石炭ガス化炉(ガス化炉)3と、石炭ガス化炉3によってガス化された燃料ガスを燃焼して駆動されるガスタービン4と、ガスタービン4と同軸8上に設けられて、蒸気により回転駆動される蒸気タービン9と、タービン軸8に接続されて発電を行う発電機16と、蒸気を発生する補助ボイラ(ボイラ)30と、空気から酸素と窒素とを分離して、微粉炭を石炭ガス化炉3に搬送する搬送ガスである窒素を生成する空気分離装置20と、空気分離装置20に供給する空気を圧縮する空気分離装置用圧縮機22と、空気分離装置用圧縮機22を駆動する圧縮機用蒸気タービン23とを備えている。
【0025】
石炭ガス化炉3の上流側には、石炭供給設備10が設けられており、石炭ガス化炉3へと微粉炭を供給する。石炭供給設備10は、原料炭を微粉砕する微粉炭機(図示せず)と、微粉炭機によって粉砕された微粉炭を貯留する微粉炭ホッパ(図示せず)とを備えている。
【0026】
微粉炭機へと導かれた原料炭は、微粉炭機によって数μm〜数百μmの微粉炭に粉砕される。微粉炭機が粉砕した微粉炭は、微粉炭を一時的に蓄えるじょうご形状の微粉炭ホッパへと導かれる。
【0027】
微粉炭ホッパ内の微粉炭は、空気分離装置20によって分離された窒素によって一定流量ずつ石炭ガス化炉3へと搬送される。ここで、窒素は、微粉炭を石炭ガス化炉3へと搬送する搬送ガスとして用いられる。
【0028】
空気分離装置20は、吸着器(図示せず)と、凝縮器(図示せず)とを備えている。吸着器は、空気分離装置20に取り込まれる空気中の湿分を除去するものである。凝縮器は、供給された空気から酸素と窒素とを分離するものである。
【0029】
空気分離装置用圧縮機22は、空気分離装置20の吸着器に導かれる空気を圧縮するものである。空気分離装置用圧縮機22に接続されている圧縮機用蒸気タービン23に補助ボイラ30から蒸気が供給されて圧縮機用蒸気タービン23が駆動することによって、空気分離装置用圧縮機22が駆動する。
【0030】
空気分離装置用圧縮機22が駆動することによって取り込まれた大気からの空気は、空気分離装置用圧縮機22によって圧縮される。空気分離装置用圧縮機22によって圧縮された空気は、吸着器において空気中の湿分が吸着除去される。吸着器に吸着された湿分は、凝縮器によって分離された窒素ガスの一部を吸着器に通過させることによって除去される。吸着器に窒素ガスを通過させることによって吸着器は、乾燥されて再生される。
【0031】
空気中の湿分が吸着除去された乾燥空気は、低温の製品酸素及び窒素との熱交換により温度を低減した後、凝縮器に導かれ、沸点差を利用して窒素と酸素とに分離される。凝縮器によって空気から分離された窒素の一部は、吸着器へと導かれ前述したように吸着器を再生し、残りは空気分離装置20から導出される。空気分離装置20から導出された窒素は、窒素用昇圧機24により昇圧されて搬送ガスとして石炭ガス化炉3へと送られる。
【0032】
空気分離装置20から導出された酸素は、酸素用昇圧機25により昇圧されて、後述する昇圧機(図示せず)によって加圧された再加圧空気とともにガス化剤として石炭ガス化炉3へと導かれる。
【0033】
例えば、石炭ガス化炉3は、下方から上方へとガスが流されるように形成された石炭ガス化部(図示せず)と、石炭ガス化部の下流側に接続されて上方から下方へとガスが流されるように形成された熱交換部(図示せず)とを備えていてもよい。
【0034】
石炭ガス化炉3内には、コンバスタ(図示せず)及びリダクタ(図示せず)が設けられている。コンバスタは、微粉炭及びチャーの一部分を燃焼させ、残りは熱分解により揮発分(一酸化炭素、水素、低級炭化水素)として放出させる部分である。コンバスタには、噴流床が採用されている。しかし、流動床式や固定床式であっても構わない。
【0035】
コンバスタ及びリダクタには、それぞれ、コンバスタバーナー(図示せず)及びリダクタバーナー(図示せず)が設けられている。これらのバーナーに対して微粉炭ホッパから微粉炭が供給される。
【0036】
コンバスタバーナーには、後述するガスタービン4の圧縮機6、前述した昇圧機によって加圧された再加圧空気および酸素用昇圧機25により昇圧された酸素が供給されるようになっている。ここで、ガスタービン4の圧縮機6から供給される空気は、ガス化剤として用いられる。
【0037】
リダクタでは、コンバスタからの高温ガスによって微粉炭がガス化される。これにより、微粉炭から一酸化炭素や水素等の可燃性の生成ガスが生成される。石炭ガス化反応は、微粉炭及びチャー中の炭素が高温ガス中の二酸化炭素及び水分と反応して一酸化炭素や水素を生成する吸熱反応である。
【0038】
石炭ガス化炉3のリダクタにおいて生成された生成ガスは、ポーラスフィルタ14へと導かれる。ポーラスフィルタ14は、生成ガスが通過することによって生成ガス中に混在するチャーを捕捉する。ポーラスフィルタ14によって捕捉されたチャーは、空気分離装置20によって分離された窒素と共に石炭ガス化炉3のコンバスタバーナーへと返送されてリサイクルされる。
【0039】
ポーラスフィルタ14を通過した生成ガスには、硫化水素や硫化カルボニルといった硫黄化合物が含まれている。そのため、ポーラスフィルタ14からガス精製装置15へと生成ガスを導いて生成ガス中の硫黄化合物を除去する。
【0040】
ガス精製装置15から導出された硫黄化合物が除去された生成ガス(以下、「燃料ガス」という。)は、ガスタービン4へと導かれる。ガスタービン4は、燃焼器5と、燃焼器5から排出された燃焼ガスによって駆動されるタービン7と、燃焼器5へと高圧の圧縮空気を送り出す圧縮機6とを備えている。
【0041】
このガスタービン4には、石炭ガス化複合発電プラント1の熱効率を高めるために、蒸気を冷却媒体として使用してガスタービン4の動翼(図示せず)や静翼(図示せず)といった高温部を冷却する蒸気冷却方式が用いられている。このガスタービン4の高温部には、補助ボイラ30において発生した補助蒸気(蒸気)が導かれる。
【0042】
ガスタービン4に導かれた燃料ガスは、ガスタービン4の燃焼器5へと送られる。燃焼器5では、導かれた燃料ガスと、後述する圧縮空気とが燃焼されて燃焼ガスが排出される。燃焼器5から排出された燃焼ガスは、タービン7へと導かれる。タービン7に導かれた燃焼ガスは、タービン7を回転駆動する。タービン7が燃焼ガスによって駆動されることによって、タービン7に接続されている回転軸8が回転駆動される。
【0043】
回転軸8が回転駆動されることによって、回転軸8上に設けられている圧縮機6が回転駆動されて空気を吸引する。圧縮機6に吸引された空気は、圧縮機6によって圧縮される。圧縮機6によって圧縮された空気(以下「圧縮空気」という。)の一部は、圧縮機6から燃焼器5へと導かれる。燃焼器5に導かれた圧縮空気は、燃料ガスと共に燃焼される。なお、残りの圧縮空気は、後述する昇圧機用熱交換器(図示せず)へと導かれる。
【0044】
圧縮機6およびタービン7が設けられている回転軸8には、発電機16が接続されている。そのため、タービン7の回転駆動に伴い回転軸8が回転駆動することによって、発電機16が駆動される。発電機16が駆動されることによって発電機16は、電気を発生する。
【0045】
タービン7を回転駆動させた燃焼ガスは、排熱回収ボイラ18へと導かれる。排熱回収ボイラ18は、タービン7から導かれた燃焼ガスの熱によって蒸気を発生するものである。排熱回収ボイラ18に導かれた水に熱を与えて蒸気を発生させた燃焼ガスは、図示しない煙突から石炭ガス化複合発電プラント1外へと排出される。
【0046】
排熱回収ボイラ18においてタービン7から導かれた高温の燃焼ガスによって発生した蒸気は、蒸気タービン9へと供給される。蒸気タービン9は、ガスタービン4と同じ回転軸8に接続されており、いわゆる一軸式のコンバインドシステムとなっている。タービン7によって回転駆動されている回転軸8は、蒸気タービン9によって駆動力が増加する。そのため、回転軸8に接続されている発電機16の発電量が増加する。
蒸気タービン9を回転駆動した蒸気は、図示しない復水器へと導かれて、冷却されることにより水に戻される。復水器により戻された水は、排熱回収ボイラ18へと導かれる。
【0047】
昇圧機用熱交換器に導かれた圧縮空気を、昇圧機(図示せず)へと導く構成を用いてもよい。昇圧機に導かれた圧縮空気は、昇圧機によって昇圧されて再加圧空気とされる。再加圧空気は、昇圧機用熱交換器へと導かれる。昇圧機用熱交換器に導かれた再加圧空気は、圧縮機6から導出された圧縮空気と熱交換して温度が上昇する。
昇圧機用熱交換器を通過して温度が上昇した再加圧空気を、石炭ガス化炉3へと供給してもよい。
【0048】
次に、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラント1の起動方法について説明する。
石炭ガス化複合発電プラント1の起動直前に、補助ボイラ30において蒸気を発生させる(以下、「補助蒸気」という)。石炭ガス化複合発電プラント1起動の際には、補助ボイラ30において発生した補助蒸気を圧縮機用蒸気タービン23へと供給する。また、補助ボイラ30が発生した補助蒸気の一部を蒸気タービン9へと供給する。さらには、蒸気タービン9に供給される補助蒸気の一部をガスタービン4へと供給する。
【0049】
補助ボイラ30から圧縮機用蒸気タービン23へと供給された補助蒸気は、圧縮機用蒸気タービン23を駆動する。圧縮機用蒸気タービン23には、空気分離装置用圧縮機22が接続されている。そのため、圧縮機用蒸気タービン23が駆動することによって空気分離装置用圧縮機22が空気を圧縮する。
【0050】
空気分離装置用圧縮機22によって圧縮された空気は、前述したように空気分離装置20へと送られて吸着器において空気中の湿分が除去される。空気中の湿分が吸着除去された乾燥空気は、凝縮器に導かれて窒素と酸素とに分離される。このように空気から分離された窒素は、搬送ガスとして石炭ガス化炉3へと送られて、酸素は、昇圧機によって加圧された再加圧空気とともに石炭ガス化炉3へと導かれる。
【0051】
補助ボイラ30から蒸気タービン9へは、例えば、50t/hの蒸気量の補助蒸気が供給される。このように補助ボイラ30から供給された補助蒸気は、蒸気タービン9を起動させるのに十分の蒸気量とされている。そのため、蒸気タービン9が起動して回転駆動する。
【0052】
補助蒸気により回転駆動し始めた蒸気タービン9に接続されている回転軸8上には、ガスタービン4が設けられている。そのため、補助ボイラ30から供給された補助蒸気によって蒸気タービン9が回転駆動することによって、ガスタービン4も起動を開始する。
【0053】
また、石炭ガス化複合発電プラント1起動の際には、補助ボイラ30から蒸気タービン9に供給される補助蒸気の一部がガスタービン4へと供給される。ガスタービン4に供給された補助空気は、タービン7に導かれて動翼および静翼等の高温部を蒸気冷却する。
【0054】
ここで、補助ボイラ30は、圧縮機用蒸気タービン23を駆動するための蒸気量、蒸気タービン9を起動するための蒸気量およびガスタービン4の冷却媒体として使用される蒸気量を十分に供給できる大容量とされている。
【0055】
本実施形態の場合には、このように大容量の補助ボイラ30が設置されている。しかし、従来の石炭ガス化複合発電プラント100(図2参照)に設けられていた空気分離装置用圧縮機22を起動する電動機21(図2参照)、発電機16を起動するためのサイリスタ17(図2参照)の設置が不要になり、かつ、空気分離装置用圧縮機22を起動するために電動機21に受電していた電力が不要となる。そのため、大容量の補助ボイラ30の設置費用と、従来設けられていた電動機21(図2参照)、サイリスタ17(図2参照)の設置費用および受電電力費用とが相殺されることとなる。
【0056】
以上の通り、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラント1およびこの起動方法によれば、以下の作用効果を奏する。
空気分離装置用圧縮機22に圧縮機用蒸気タービン23を接続して、石炭ガス化複合発電プラント(ガス化複合発電プラント)1の起動の際に、補助ボイラ(ボイラ)30からの補助蒸気(蒸気)を圧縮機用蒸気タービン23へと導くこととした。これにより、圧縮機用蒸気タービン23が駆動されることによって空気分離装置用圧縮機22が駆動されることとなる。そのため、石炭ガス化複合発電プラント1の外から供給される受電量を減少させることができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント1の経済性を向上させることができる。
【0057】
石炭ガス化複合発電プラント1の起動の際には、さらに、補助ボイラ30から補助蒸気の一部を蒸気タービン4に供給して蒸気タービン4を起動することとした。これにより、補助ボイラ30は大容量化するが、蒸気タービン4と同軸8上に設けられているガスタービン4も起動させることができる。そのため、従来必要であったガスタービン4の起動用のサイリスタ17(図2参照)等の制御器等が不要となり、ガスタービン4の起動用設備の設備費や設置場所の低減を図ることができる。したがって、補助ボイラ30の設置費用と、ガスタービン4の起動用設備費および空気分離装置用圧縮機22を駆動するための受電量の削減費用とが相殺されて、石炭ガス化複合発電プラント1の経済性を向上させることができる。
【0058】
また、蒸気タービン9を起動することによって、同軸8上に設けられているガスタービン4を起動することができる。そのため、図2に示すように、ガスタービン4を起動してガスタービン4と同軸8上に設けられている蒸気タービン9を回転駆動する従来の石炭ガス化複合発電プラント100の場合と異なり、蒸気タービン9の翼(図示せず)が空力過熱されることがない。したがって、ガスタービン4の起動に伴う蒸気タービン9の冷却が不要となる。
【0059】
蒸気タービン9に供給する補助蒸気の一部を冷却媒体としてガスタービン4に供給することとした。そのため、ガスタービン4を冷却してタービン7が損傷することを防止することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、蒸気タービン4に供給される補助蒸気量を50t/hとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、蒸気タービン4を起動するのに十分な蒸気量であれば良い。
【0061】
また、圧縮機用蒸気タービン23は、その回転数を容易に変化させることができる。そのため、圧縮機用蒸気タービン23の回転数制御を行うことによって、空気分離装置用圧縮機22の部分負荷における性能を容易に改善することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 ガス化複合発電プラント(石炭ガス化複合発電プラント)
3 ガス化炉(石炭ガス化炉)
4 ガスタービン
8 回転軸(軸)
9 蒸気タービン
16 発電機
20 空気分離装置
22 空気分離装置用圧縮機
23 圧縮機用蒸気タービン
30 ボイラ(補助ボイラ)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をガス化して燃料ガスにするガス化炉と、
前記燃料ガスが燃焼した燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、
該ガスタービンと同軸上に設けられて、蒸気により回転駆動される蒸気タービンと、
前記軸に接続されて発電を行う発電機と、
蒸気を発生するボイラと、
空気から酸素と窒素とを分離して、前記石炭を前記ガス化炉に搬送する搬送ガスである前記窒素を生成する空気分離装置と、
該空気分離装置に供給する空気を圧縮する空気分離装置用圧縮機と、
該空気分離装置用圧縮機を駆動する圧縮機用蒸気タービンと、を備え、
前記ボイラが発生する前記蒸気の一部を前記圧縮機用蒸気タービンへと供給して該圧縮機用蒸気タービンを駆動することを特徴とするガス化複合発電プラント。
【請求項2】
前記ボイラが発生する前記蒸気の一部を前記蒸気タービンへと供給して該蒸気タービンを起動することを特徴とする請求項1に記載のガス化複合発電プラント。
【請求項3】
前記蒸気タービンに供給される前記蒸気の一部を前記ガスタービンに冷却媒体として供給することを特徴とする請求項2に記載のガス化複合発電プラント。
【請求項4】
石炭をガス化して燃料ガスにするガス化炉と、
前記燃料ガスが燃焼した燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、
該ガスタービンと同軸上に設けられて、蒸気により回転駆動される蒸気タービンと、
前記軸に接続されて発電を行う発電機と、
蒸気を発生するボイラと、
空気から酸素と窒素とを分離して、前記石炭を前記ガス化炉に搬送する搬送ガスである前記窒素を生成する空気分離装置と、
該空気分離装置内に設けられて空気を圧縮する空気分離装置用圧縮機と、
該空気分離装置用圧縮機を駆動する圧縮機用蒸気タービンと、を備えるガス化複合発電プラントの起動方法であって、
前記ボイラが発生する前記蒸気の一部を前記圧縮機用蒸気タービンへと供給することによって該圧縮機用蒸気タービンを駆動して起動することを特徴とするガス化複合発電プラントの起動方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−167615(P2012−167615A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29952(P2011−29952)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】