ガス吹き込みランス
【課題】耐久性および長寿命化を更に図り得るガス吹き込みランスを提供する。
【解決手段】ガス吹き込みランスは、長手方向に延びる芯体2と、芯体2に被覆され金属溶湯Mに浸漬または接近する耐火物層3とをもつ。芯体2の内壁面には、第1ガス通路4の径内方向に突出する突出部8が設けられている。突出部8は、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りに巡らされたリング体80で形成されている。
【解決手段】ガス吹き込みランスは、長手方向に延びる芯体2と、芯体2に被覆され金属溶湯Mに浸漬または接近する耐火物層3とをもつ。芯体2の内壁面には、第1ガス通路4の径内方向に突出する突出部8が設けられている。突出部8は、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りに巡らされたリング体80で形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶鋼等の金属溶湯に酸素ガスやアルゴンガス等のガスを吹き込むガス吹き込みランスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス吹き込みランスは、長手方向に延びる芯体と、芯体に被覆され金属溶湯に浸漬または接近する耐火物層と、芯体および耐火物層のうちの少なくとも一方に設けられ酸素ガスやアルゴンガス等のガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路とを有する(特許文献1,2)。一般的には、耐火物層は芯体を被覆するキャスタブル層で形成されている。上記したランスによれば、ランスの耐久性を更に向上させることが要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121072号公報
【特許文献2】特開2008−101244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したランスによれば、曲成部を有するものが提供されている。このものでは、曲成部の内壁面が損傷し易い傾向があった。特に、溶鋼等の金属溶湯を処理する脱硫剤、脱燐剤、脱酸剤等の調整剤等の粉状、粒状、プロック状等の物体が第1ガスと共に金属溶湯に吹き込まれることがある。この場合、曲成部の内壁面が摩耗等により損傷するおそれが高くなる。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、曲成部における耐久性および寿命を更に高め得るガス吹き込みランスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
様相1の本発明に係るガス吹き込みランスは、第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路を有すると共に第1ガス通路の一部を形成する曲成部を有する芯体と、芯体の外周部に被覆された耐火物層とを具備するランスにおいて、芯体は、第1ガス通路の径内方向に突出する突出部を有しており、突出部は、第1ガス通路の中心軸線の回りに巡らされたリング体で形成されている。
【0006】
様相2の本発明に係るガス吹き込みランスは、第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路を有すると共に第1ガス通路の一部を形成する曲成部を有する芯体と、芯体の外周部に被覆された耐火物層とを具備するランスにおいて、芯体の曲成部は、第1ガス通路の径内方向に突出する突出部を有しており、突出部は、第1ガス通路の中心軸線の回りに巡らされたリング体で形成されている。
【0007】
ランスの使用時には、ランスの先端部は金属溶湯に浸漬または接近された状態で、第1ガス吹出口から第1ガスが金属溶湯に吹き出される。この場合、第1ガスに含有されている粉状、粒状、プロック状等の物体が芯体の内壁面に衝突すると、芯体の内壁面が損傷するおそれがある。特に、物体が芯体の曲成部の内壁面に衝突すると、芯体の曲成部の内壁面が損傷するおそれがある。この点本発明によれば、第1ガス通路を流れる第1ガスとリング体との接触性が向上し、芯体の熱がリング体を介して第1ガスに奪われ、芯体の内壁面の過熱抑制に貢献できる。ひいては過熱に起因する芯体の内壁面の耐摩耗性の低下が抑制され、芯体の内壁面の破れが抑制される。
【0008】
更に本発明によれば、溶鋼等の金属溶湯を処理する脱硫剤、脱燐剤、脱酸剤、金属粉(例えば鉄粉等の金属粉)等の調整剤等の物体(粉状または粒状の廃棄物も含む)が第1ガスと共に金属溶湯に吹き込まれるとき、第1ガスに含まれる物体の含有濃度が高いときには、第1ガス通路を流れる第1ガスとリング体との接触による冷却性はやや低下するものの、突出部により調整剤等の粉状、粒状、プロック状等の物体が芯体の内壁面に保護層として堆積されることが期待される。特に、芯体の曲成部の内壁面に堆積される。この結果、芯体の内壁面を構成する母材が摩耗することが抑制されることが期待される。調整剤等の物体が硬質であっても、芯体の内壁面を構成する母材が摩耗することが抑制される。特に、芯体の曲成部の内壁面を構成する母材が摩耗することが抑制される。ひいては、芯体の長寿命化および耐久性の向上を図り得る。特に芯体の曲成部の長寿命化および耐久性の向上を図り得る。
【発明の効果】
【0009】
様相1に係る本発明によれば、芯体の内壁面における耐久性および寿命を更に高め得るガス吹き込みランスを提供することができる。様相2に係る本発明によれば、芯体の曲成部における耐久性および寿命を更に高め得るガス吹き込みランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係り、ランスの先端部を金属溶湯に挿入しつつ第1ガスを金属溶湯に吹き込んでいる状態を示す断面図である。
【図2】実施形態1に係り、ランスの先端部の軸線に対して直交する方向に沿って切断した横断面図である。
【図3】実施形態1に係り、ランスの先端部の軸線方向に沿って切断した縦断面図である。
【図4】実施形態1に係り、リング体付近の要部を示す横断面図である。
【図5】実施形態1に係り、リング体付近の要部を示す縦断面図である。
【図6】実施形態2に係り、リング体の各形態を示す図である。
【図7】実施形態3に係り、ランスの先端部を金属溶湯に挿入しつつ第1ガスおよび第2ガスを金属溶湯に吹き込んでいる状態を示す断面図である。
【図8】実施形態3に係り、ランスの先端部の軸線に対して直交する方向に沿って切断した横断面図である。
【図9】実施形態3に係り、ランスの先端部の軸線方向に沿って切断した縦断面図である。
【図10】実施形態4に係り、ランスを示す断面図である。
【図11】実施形態5に係り、ランスを示す断面図である。
【図12】実施形態6に係り、第1ガス吹込口の各形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましくは、リング体は、第1ガス通路の中心軸線の回りを1周するOリング形状、第1ガス通路の中心軸線の回りを1/2周以上するCリング形状、第1ガス通路の中心軸線の回りを螺旋状に巻回された螺旋リング形状のうちのいずれかをなしている。好ましくは、芯体は、第1ガス通路を形成する内パイプと、冷却用ガスを通過させる第2ガス通路を介して内パイプの外周側を覆う外パイプとを有する。一形態によれば、リング体は、リング体から径内方向に突出する単数または複数の副突起部を有することができる。
【0012】
(実施形態1)
図1〜図5は、本発明を適用した実施形態1の概念を示す。ガス吹き込みランス1は、溶鋼等の金属溶湯Mに酸素ガスまたはアルゴンガス等の第1ガスを吹き込むものである。ランス1は、長手方向に沿って延びる軸線P1を持つランス本体11と、軸線P2をもつ先端部12とをもつ。軸線P1,P2は芯体2の中心軸線P3を形成する。ランス1は、長手方向に延びる金属(例えば鋼)製の芯体2と、芯体2の外周壁面側に被覆され少なくとも先端部が金属溶湯Mに浸漬される耐火物層3と、芯体2および耐火物層3のうちの少なくとも一方に設けられ第1ガスを金属溶湯Mに向けて吹き出す第1ガス吹出口41をもつ第1ガス通路4とを有する。
【0013】
芯体2は、エルボで形成された曲成部200と、曲成部200の一端200f側に溶接または取付具で連接された第1直管210と、曲成部200の他端200s側に溶接または取付具で連接された第2直管220とを有する。曲成部200は、曲げ内周200iと曲げ外周200pとを有する。曲成部200、第1直管210、第2直管220は同じ金属または同種の金属で形成しても良い。あるいは、曲成部200および第2直管220は金属溶湯に近くなるので、曲成部200および/または第1直管210よりも耐熱性が良い金属で形成することができる。曲成部200の内壁面は摩耗しやすいため、第1直管210および/または第2直管220よりも耐摩耗性が良い材料で形成することもできる。
【0014】
第1ガスを吹き出す第1ガス吹出口41は、ランス1の先端部12の端面12fにおいて開口する。芯体2の内壁面は、第1ガスが流れる第1ガス通路4を形成する。第1ガスは酸素ガスまたはアルゴンガスを採用できる。第1ガスが酸素ガスである場合には、溶鋼等の金属溶湯Mに含まれる合金成分(例えばシリコン、炭素、マンガン、アルミニウム、リン、硫黄等)が酸化して酸化物が生成され、金属溶湯の組成が調整される。第1ガスがアルゴンガスである場合には、金属溶湯Mがアルゴンガスにより攪拌される。第1ガス通路4の他端部側には、第1ガスを第1ガス通路4に供給する第1ガス供給口43が形成されている。第1ガス供給口43は第1ガス供給源400に繋がる。
【0015】
耐火物層3は、芯体2の外周側を被覆するキャスタブル層32を有する。キャスタブル層32の材質は特に限定されるものではない。キャスタブル層32は、流動性をもつスラリー状の耐火物を芯体3の外周壁面に被覆した状態で乾燥固化させたものである。キャスタブル層32は、芯体2の長手方向において先端部12以外の部位において芯体2の外周壁面に被覆された本キャスタブル層320と、本キャスタブル層320の先端側の先端キャスタブル層322とを有する。芯体2に溶接などで固定された係合部材14は先端キャスタブル層322に係合し、これの脱落を抑制させる。本キャスタブル層320の外周面320pは軸線P1の回りを包囲する。先端キャスタブル層322の外周面322pは軸線P2の回りを包囲する。本キャスタブル層320は例えばアルミナ系、アルミナ−シリカ系で形成されているが、これに限定されるものではない。先端キャスタブル層322は、本キャスタブル層320よりも高い耐溶損性をもつことが好ましい。耐溶損性の確保を考慮すると、先端キャスタブル層322は、例えば、アルミナ−クロム系、アルミナ−カーボン系、マグネシア−カーボン系で形成されていることが好ましい。但しこれに限定されるものではない。アルミナ−カーボン系、マグネシア−カーボン系等のようにカーボンが含有されていると、カーボンが金属溶湯に対して濡れ性が低いため、高い耐溶損性を発揮でき、耐久性および寿命を向上できる。更に、カーボンは高い伝熱性を有するため、キャスタブル層32の均熱化に貢献でき、耐溶損性を高めるのに有利である。
【0016】
ここで、図2は芯体2の先端部12の軸線P2に対して直角方向に沿って切断された横断面を示す。芯体2の先端部12の横断面は、芯体2の先端部12以外の部分に対して異なる異形状をなす異形状部22を有する。異形状部22は、芯体2の横断面において、偏平化された長円形状をなしており、長径DLおよび短径DSをもつ。浸漬時において、短径DSは金属溶湯Mの深さ方向に沿っており、長径DLは金属溶湯Mの湯面M1にほぼ沿うことが好ましい。このため湯面M1から芯体2の先端部2fまでの距離Hxができるだけ確保され、湯面M1の過剰揺動が抑制される。場合によっては、浸漬時において、長径DLは金属溶湯Mの深さ方向に沿っており、短径DSは金属溶湯Mは湯面M1に沿うことにしても良い。更に本実施形態によれば、第1ガス吹出口41の断面形状が真円である場合に比較して、第1ガス吹出口41の開口断面も長円や楕円などの異形状となり、第1ガス吹出口41の開口断面積も調整できるため、第1ガス吹出口41から吹き出す第1ガスの吹込速度の調整も期待される。
【0017】
図3(中心軸線P3に沿った縦断面図)から理解できるように、芯体2の先端部2fは、ランス1の先端部12の端面12fから離れるにつれて拡径方向に傾斜する傾斜部2rをもつ。図3に示す縦断面図において、傾斜部2rは、第1ガス通路4の第1ガス吹出口41に向かうにつれて中心軸線P3に近づくように傾斜する。傾斜部2rが形成されているため、第1ガスが第1ガス通路4を流れるとき、第1ガスが芯体2の傾斜部2rに衝突したり接触したりする頻度が増加する。よって第1ガスによる冷却作用を芯体2に伝熱でき、長寿命化に貢献できる利点が挙げられる。但し場合によっては、傾斜部2rを設けずとも良い。
【0018】
本実施形態によれば、ランス1の使用時には、図1に示すように、ランス1の先端部12が金属溶湯Mの内部に浸漬される。この状態で、酸素ガスまたはアルゴンガスからなる第1ガスが第1ガス通路4に供給される。第1ガスは、ランス1の先端部12の端面12fの第1ガス吹出口41から、先端部12の軸線P2に沿って金属溶湯Mに向けて吹き出される。前述したように第1ガスは酸素ガスまたはアルゴンガスが好ましい。第1ガスが酸素ガスである場合には、金属溶湯Mに含まれる合金成分(例えばシリコン、炭素、マンガン、アルミニウム、リン、硫黄等)が酸化して酸化物が生成され、金属溶湯の組成が調整される。第1ガスがアルゴンガスである場合には、金属溶湯Mがアルゴンガスにより攪拌される。酸化熱により反応部分が昇温され易い。
【0019】
上記したようにランスの使用時には、ランスの先端部は金属溶湯Mに浸漬または接近された状態で、第1ガス吹出口41から第1ガスが金属溶湯Mに吹き出される。この場合、第1ガスに含有されている物体が芯体2の曲成部200の内壁面に衝突すると、芯体2の曲成部200の内壁面が損傷するおそれがある。特に、溶鋼等の金属溶湯を処理する脱硫剤、脱燐剤、脱酸剤等の粉末状または固形状の調整剤(産業廃棄物も含む)等の物体が第1ガスと共に第1該通路4を流れて第1ガス吹出口41から金属溶湯Mに吹き込まれるとき、第1ガスに含まれている調整剤等の物体が芯体2の曲成部200の内壁面に衝突摩擦し、芯体2の曲成部200の内壁面が部分的に摩滅するおそれがある。
【0020】
そこで本実施形態によれば、図1、図4、図5に示すように、芯体2の曲成部200の内壁面には、複数の突出部8が溶接または取付具等により固定されて設けられている。突出部8は、第1ガス通路4を流れる第1ガスの流れ方向において直列に配置されている。ここで、各突出部8は、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを1周するOリング形状のリング体80でそれぞれ形成されている。リング体80は、中心軸線P3に沿って所定の間隔を隔てて直列に並設されている。この場合、第1ガス通路4を流れる第1ガスとリング体80との接触を期待でき、リング体80を介して芯体2の曲成部200の冷却を期待できる。殊に、第1ガスが曲成部200の内壁面に接触する頻度が高くなる。リング体80は周方向に巡らされているため、リング体80の表面積も増加し、第1ガスとリング体80とが接触する接触面積(熱交換面積)も増加する。この場合、第1ガスとの接触により曲成部200の熱は奪熱されるため、曲成部200の過熱が抑制され、過熱に起因する曲成部200の内壁面の耐摩耗性の低下が抑制され、曲成部200の長寿命化に貢献できる。
【0021】
更に本実施形態によれば、第1ガスに含まれている調整剤の配合割合が多いときには、第1ガス通路4を流れる第1ガスとリング体80との接触性はやや低下するものの、突出部8であるリング体80により調整剤等の物体が曲成部200の内壁面に堆積され易くなる効果も期待できる。この結果、第1ガスに含まれている調整剤等の物体が芯体2の曲成部200の内壁面の母材に直接的に衝突することが抑制される効果も期待できる。よって、芯体2の曲成部200の内壁面が摩耗することが抑制される。調整剤等の物体が硬質であっても、曲成部200の内壁面の母材が摩耗することが抑制される。ひいては、曲成部200の長寿命化および耐久性の向上を図り得る。
【0022】
図1に示す使用形態では、曲成部200のうち第1ガス通路4を形成する内壁面については、曲げ内周200iよりも曲げ外周200p側が摩耗し易い傾向がある。この点本実施形態によれば、ランス1の使用時において、曲成部200の曲げ内周200iよりも、曲げ外周200pは重力方向の下方に位置する。このため、重力等の関係で、調整剤等の物体は、曲成部200の曲げ内周200i側よりも、曲げ外周200p側に堆積され易くなる。よって、曲成部200の曲げ外周200p側の内壁面における長寿命化および耐久性の向上を図り得る。
【0023】
なお、曲成部200の内径DR(図5参照)を相対表示で100とするとき、芯体2の曲成部200の内壁面に対する突出部8の突出量HR(半径としての突出量,図5参照)は、内径DRの大きさにもよるが、0.5〜30の範囲、0〜25の範囲、1〜20の範囲、2〜10の範囲とすることができる。但しこれらに限定されるものではない。リング体80は溶接等による取付性を考慮すると、金属製が好ましい。場合によっては、ランス1の使用時において、曲成部200の曲げ内周200iよりも、曲げ外周200pは上方に位置する状態でランス1が使用されるときには、重力等の関係で、調整剤等の物体は曲成部200の曲げ外周200p側よりも、曲げ内周200i側に堆積され易くなる。よって、曲成部200の曲げ内周200i側における長寿命化および耐久性の向上を図り得る。場合によっては、第1ガス通路4において、芯体2のうち曲成部200よりも上流側に複数個のリング体80を間隔を隔てて配置させても良い。更に、芯体2のうち曲成部200よりも下流側に複数個のリング体80を間隔を隔てて配置させても良い。
【0024】
(実施形態2)
図6は実施形態2を示す。図6(A)は真円形状またはそれに酷似する円形状をなすセラミックスまたは金属製のリング体80Aを示す。リング体80Aの内周部には、リング体80Aの内周部から、第1ガス通路4の中心軸線P3に向けて、つまり径内方向(放射方向)に向けて突出する複数の副突起部890が形成されている。副突起部890と第1ガスとの接触面積(熱交換面積)が増加し、芯体2を冷却させる冷却能を増加できる。更に、粉または粒状等の調整剤が副突起部890に堆積する作用も期待でき、リング体80Aの摩耗抑制、ひいては芯体2のうちリング体80Aが設けられている領域(例えば曲成部200等)の摩耗抑制にも貢献できる。必要に応じて副突起部890を廃止しても良い。
【0025】
図6(B)に示すリング体80Bによれば、リング体80Bの内径および外径は、互いに偏芯している。リング体80Bの曲げ外周200p側における突出量HR1(芯体2の内壁面からリング体80Bの内周面801iにかけての突出量)は、リング体80Bの曲げ内周200i側における突出量HR2(芯体2の内壁面に対する突出量)よりも大きくされている。この場合、第1ガスに含まれている調整剤等の物体は、曲成部200の曲げ外周200p側に堆積され易くなる。よって、曲成部200の曲げ外周200p側の内壁面における長寿命化および耐久性の向上を更に高め得る。もちろん、曲成部200の曲げ内周200i側の内壁面における長寿命化および耐久性の向上をも高め得る。HR1を相対表示で100とすると、HR2は10〜90が例示される。なお、第1ガス通路4のうちリング体80Bが設けられている通路部分の内径DR1を100として相対表示すると、HR1は、1〜50の範囲、1〜30の範囲、1〜20の範囲、1〜10の範囲、1〜5の範囲が例示される。但しこれらに限定されるものではない。
【0026】
図6(C)に示すリング体80Cによれば、リング体80Cの内径および外径は互いに偏芯しており、リング体80Cの曲げ外周200p側における突出量HR1(芯体2の内壁面に対する突出量)は、大きくされている。ここで、リング体80Cは、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを2/3周(1/2周)以上するCリング形状とされている。図6(D)に示すリング体80Dによれば、リング体80Dの内径および外径は互いに偏芯しており、リング体80Dの曲げ外周200p側における突出量HR1(半径としての突出量)は大きくされている。図6(D)に示すリング体80Dは、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを1/2周以上するCリング形状とされている。
【0027】
図6(E)に示すリング体80Eは円リング形状であり、リング体80Eを構成する線材の断面形状は四角形状とされている。なお、リング体80Eを構成する線材の断面形状としては、四角形状に限らず、円形状としても良い。図6(F)に示すリング体80Fによれば、リング体80Fを構成する線材の断面形状については、曲げ内周200i側よりも耐摩耗性が要請される曲げ外周200p側の断面積が相対的に大きく、曲げ内周200i側の断面積が相対的に小さくされている。図6(G)に示すリング体80Gは、中心軸線P3の回りの周方向に沿って内周に断続的に形成された複数の溝800を有する。第1ガスの通過性を確保しつつ、第1ガスとの接触面積を増加でき、更に、調整剤等の物体を堆積させ得る。
【0028】
図6(H)に示すリング体80Hは、芯体2の第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを螺旋状に巻回する螺旋リング形状をなす。リング体80Hを第1ガス通路4の中心軸線P3に沿って矢印XA方向に引っ張れば、リング体80Hが縮径するため、曲成部200の空間に挿入され易くなる利点が得られる。更に、その引張力を解除させれば、リング体80Hが拡径するため、曲成部200の内壁面に装着されて仮保持され易くなる。このように螺旋リング形状のリング体80Hを曲成部200の内壁面に仮保持した状態で、溶接等によりリング体80Hを曲成部200の内壁面に溶接させればよい。
【0029】
(実施形態3)
図7〜図9は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。図7〜図9に示すように、芯体2は、内パイプ51と、外パイプ61と、内パイプ51と外パイプ61との間に形成された第2ガス通路6とを有する。図7から理解できるように、内パイプ51は、エルボで形成された曲成部510と、曲成部510の一端510f側に溶接または取付具で連接された第1直管520と、曲成部510の他端510s側に溶接または取付具で連接された第2直管530とを有する。曲成部510は、曲げ内周510iと曲げ外周510pとを有する。外パイプ61は、エルボで形成された曲成部610と、曲成部610の一端610f側に溶接または取付具で連接された第1直管620と、曲成部610の他端610s側に溶接または取付具で連接された第2直管630とを有する。曲成部610は、曲げ内周610iと曲げ外周610pとを有する。なお、内パイプ51の曲成部510、第1直管520、第2直管530は、同じ金属または同種の金属で形成しても良い。場合によっては、曲成部510および第2直管530は高温の金属溶湯に近くなるので、第1直管520よりも耐熱性が良い金属で形成することができる。曲げ外周510pをもつ曲成部510の内壁面は調整剤等の物体により摩耗しやすいため、第1直管520および/または第2直管530よりも耐摩耗性が良い材料(合金鋼等)で形成することもできる。各突出部8は、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを1周するOリング形状またはCリング形状のリング体80で形成されている。リング体80は、中心軸線P3に沿って所定の間隔を隔てて内パイプ51の曲成部510の内壁面において直列に複数個並設されている。リング体80により第1ガスとの接触面積が増加し、曲成部510の冷却性、ひいては内パイプ51の冷却性を向上でき、曲成部510の内壁面の摩滅が抑制される。
【0030】
更に、第1ガスに含まれている調整剤等の物体の割合が多いときには、調整剤等の物体が内パイプ51の曲成部510の内壁面に堆積され易くなる作用を期待できる。堆積された調整剤等の物体は、内パイプ51の内壁面を保護する保護層を形成する作用を期待できる。この結果、第1ガスに含まれている調整剤等の物体が内パイプ51の曲成部510の内壁面の母材に直接的に衝突することが抑制される。よって、芯体2の内パイプ51の曲成部510の内壁面が摩耗することが抑制される。調整剤等の物体が硬質であっても、曲成部510の内壁面の母材が摩耗することが抑制される。ひいては、内パイプ51ひいては外パイプ61の長寿命化および耐久性の向上を図り得る。
【0031】
一般的には、曲成部510の曲げ内周510iの内壁面よりも、曲げ外周510pの内壁面は摩耗する傾向がある。そこで本実施形態によれば、図7に示すように、ランス1の使用時において、曲成部510の曲げ内周510iよりも、曲げ外周510pは重力方向の下方に位置する。このため、第1ガス通路4を流れる第1ガスは、曲げ外周510pに接触してこれを冷却させる機能が高くなる。更に、重力等の関係で、調整剤等の物体は、曲成部510の曲げ内周510i側よりも、曲げ外周510p側に堆積され易くなる。よって、曲成部510の曲げ外周510p側の内壁面における長寿命化および耐久性の向上を図り得る。なお、内パイプ51の曲成部510の内径DR2を相対表示で100とするとき、内径DR2の大きさによっても相違するものの、曲成部510の内壁面に対する突出部8の半径方向の突出量HR2(半径としての突出量)は、0.01〜30の範囲、0.1〜30の範囲、1〜20の範囲、1〜10の範囲、2〜5の範囲が例示される。ただしこれらに限定されるものではない。リング体80は溶接等による取付性を考慮すると、金属製が好ましい。
【0032】
図7に示すように、外パイプ61の外周側には定形れんが部31が位置K1として装備されている。定形れんが部31は加圧工程および焼成工程を経ているため、先端キャスタブル層322よりも高い強度および高い耐熱性をもち、ランス先端側における保持性を高め得る。第2ガス通路6の第2ガス吹出口61は、横長のリング形状をなしており、ランス1の先端部12の端面12fにおいて開口する。第2ガス通路6のうち金属溶湯Mと反対側の他端部側には、第2ガスを第2ガス通路6に供給する第2ガス供給口が形成されている。第2ガス供給口は第2ガス供給源600に繋がる。
【0033】
第1ガスが金属溶湯に吹き込まれるとき、冷却作用を発揮させる第2ガスが第2ガス通路6に供給され、第2ガスは第2ガス通路6の第2ガス吹出口61から金属溶湯Mに向けて吹き出される。冷却作用をもつ第2ガスが第2ガス通路6を流れるため、先端キャスタブル層322付近、殊に、第2ガス通路6の第2ガス吹出口61付近における保護性を確保できる。更に、第2ガスの冷却作用により金属製の内パイプ51および外パイプ61は冷却される。ひいては外パイプ61からの伝熱により定形れんが部31の内周側も冷却されるため、先端キャスタブル層322ばかりか、定形れんが部31の全体の冷却が促進される。これにより定形れんが部31の耐久性が一層向上され、定形れんが部31の長寿命化を図り得る。芯体2の長手方向において、第2ガス通路6は定形れんが部31の設置位置K1を通過する。なお、定形れんが部31が設けられていない場合でも良い。場合によっては、第1ガス通路4において、芯体2のうち内パイプ51の曲成部510よりも上流側に複数個のリング体80を間隔を隔てて並設させても良い。更に、芯体2のうち内パイプ51の曲成部510よりも下流側に複数個のリング体80を間隔を隔てて並設させても良い。内パイプ51の全長にわたり、複数個のリング体80を間隔を隔てて並設させても良い。殊に、内パイプ51のうち金属溶湯Mに浸漬される部分にの全長にわたり、複数個のリング体80を間隔を隔てて並設させても良い。
【0034】
(実施形態4)
図10は実施形態4を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。芯体2の曲成部200の内壁面には、螺旋リング形状をなすリング体80Hが突出部8として溶接または取付具により固定されている。第1ガス通路4のうちリング体80Hが保持されている通路部分の内径をDR1とすると、リング体80Hを構成する線材が内壁面から突出している突出量をHR3(図10参照)とすると、突出量HR3を大きめにできる。その理由として、リング体80Hは螺旋形状であるため、第1ガス通路4のガスを螺旋状に流し得る作用を有するためである。DR1を相対表示で100とすると、突出量HR3としては0.5〜30の範囲、1〜25の範囲、1〜20の範囲、1〜10の範囲、1〜5の範囲が例示される。但しこれらに限定されるものではない。芯体2は内パイプと外パイプとの二重パイプ構造としても良い。螺旋リング形状をなすリング体80Hは、第1ガスとの接触面積も増加できる。
【0035】
(実施形態5)
図11は実施形態5を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。第1ガスに含まれている調整剤の物体の比重、種類などによっては、遠心力などの作用により内パイプ51の曲げ外周510p側に沿って流れるおそれがある。そこで本実施形態によれば、図11に示すように、内パイプ51の内壁面のうち曲成部510において複数個のリング体80が第1ガス通路4に対面するように第1ガスの流れ方向に沿って直列に固定されている。更に、内パイプ51の内壁面のうち曲成部510において曲げ外周510pよりも下流の領域において(すなわち、第1ガスの流れ方向において内パイプ51の曲成部510と第1ガス吹出口41との間の領域)、複数個のリング体80が第1ガス通路4に対面するように第1ガスと接触できるように、第1ガスの流れ方向に沿って直列に固定されている。この場合、内パイプ51の内壁面のうち曲成部510において曲げ外周510pよりも下流の領域における耐久性を高めるのに貢献できる。
【0036】
(実施形態6)
図12は実施形態6を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。図12(A)では、芯体2に形成されている第1ガス吹出口41は、水平方向に延びる横長形状とされている。耐火物層3を構成するキャスタブル層32の上部32uの肉厚をWuとし、下部32dの肉厚をWdとすると、WdはWuよりも大きくされている(Wd>Wu)。耐火物層3のうち熱損傷を受けやすい下部32dの耐久性および長寿命化に貢献できる。図12(B)では、芯体2に形成されている第1ガス吹出口41は、耐火物層3を構成するキャスタブル層32の外輪郭は、水平方向に延びる横長形状とされている。耐火物層3を構成するキャスタブル層32の上部32uの肉厚をWuとし、下部32dの肉厚をWdとし、側部32sの肉厚をWsとすると、Wd,WsはWuよりも大きくされている(Wd>Wu,Ws>Wu)。耐火物層3のうち熱損傷を受け易い下部32dおよび側部32sの耐久性および長寿命化に貢献できる。図12(C)では、耐火物層3を構成するキャスタブル層32の外輪郭は、横断面において、重力方向にのびる縦長の形状をなす。耐火物層3を構成するキャスタブル層32の上部32uの肉厚をWuとし、下部32dの肉厚をWdとすると、WdはWuよりも大きくされている(Wd>Wu)。図12(D)では、耐火物層3を構成するキャスタブル層32の外輪郭は、横断面において縦長の形状をなす。耐火物層3を構成するキャスタブル層32の上部32uの肉厚をWuとし、下部32dの肉厚をWdとすると、WdはWuよりも大きくされている(Wd>Wu)。図12(D)では、芯体2に形成されている第1ガス吹出口41は、水平方向に延びる横長なほぼ四角形状をなす。なお、芯体2は内パイプと外パイプとの二重パイプ構造としても良い。
【0037】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば、芯体2は、曲成部200と第1直管210と第2直管220とを連結して形成されているが、これ限らず、一体成形品であっても良い。芯体2の異形状部22は偏平化構造とされているが、これに限らず、異形状部22を有しておらず、断面で真円形状またはこれに近い形状をなす円筒パイプ構造でも良い。芯体2の曲成部200の内壁面は曲げ外周200pおよび曲げ内周200iを有するため、摩耗し易い。このため、曲成部200の内壁面については、第1直管210および/または第2直管220よりも耐摩耗性が良い材料で形成することもできる。耐摩耗性が良い材料としては、炭化物、窒化物などの硬質相を母材に分散させた炭素鋼、合金鋼(ステンレス鋼を含む)、焼入鋼等の金属材料、セラミックスで形成しても良い。キャスタブル層32は、先端部12以外の部位において芯体2の外周壁面に被覆された本キャスタブル層320と、本キャスタブル層320の先端側の先端キャスタブル層322とで形成されているが、全体を同一材質のキャスタブル層で形成されていても良い。更には、耐火物層3としては、キャスタブル層に代えてレンガを組み付けたレンガ層で形成しても良い。なお、芯体は1重管構造として図示されている実施形態において、内パイプと外パイプと両者の間に第2ガス通路とを有する2重管構造としても良い。
【符号の説明】
【0038】
1はランス、11はランス本体、12は先端部、2は芯体、22は異形状部、200は曲成部、210は第1直管部、220は第2直管部、3は耐火物層、31は定形れんが部、32はキャスタブル層、4は第1ガス通路、41は第1ガス吹出口、51は内パイプ、52は外パイプ、6は第2ガス通路、61は第2ガス吹出口、8は突出部、80はリング体を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は溶鋼等の金属溶湯に酸素ガスやアルゴンガス等のガスを吹き込むガス吹き込みランスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス吹き込みランスは、長手方向に延びる芯体と、芯体に被覆され金属溶湯に浸漬または接近する耐火物層と、芯体および耐火物層のうちの少なくとも一方に設けられ酸素ガスやアルゴンガス等のガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路とを有する(特許文献1,2)。一般的には、耐火物層は芯体を被覆するキャスタブル層で形成されている。上記したランスによれば、ランスの耐久性を更に向上させることが要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121072号公報
【特許文献2】特開2008−101244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したランスによれば、曲成部を有するものが提供されている。このものでは、曲成部の内壁面が損傷し易い傾向があった。特に、溶鋼等の金属溶湯を処理する脱硫剤、脱燐剤、脱酸剤等の調整剤等の粉状、粒状、プロック状等の物体が第1ガスと共に金属溶湯に吹き込まれることがある。この場合、曲成部の内壁面が摩耗等により損傷するおそれが高くなる。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、曲成部における耐久性および寿命を更に高め得るガス吹き込みランスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
様相1の本発明に係るガス吹き込みランスは、第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路を有すると共に第1ガス通路の一部を形成する曲成部を有する芯体と、芯体の外周部に被覆された耐火物層とを具備するランスにおいて、芯体は、第1ガス通路の径内方向に突出する突出部を有しており、突出部は、第1ガス通路の中心軸線の回りに巡らされたリング体で形成されている。
【0006】
様相2の本発明に係るガス吹き込みランスは、第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路を有すると共に第1ガス通路の一部を形成する曲成部を有する芯体と、芯体の外周部に被覆された耐火物層とを具備するランスにおいて、芯体の曲成部は、第1ガス通路の径内方向に突出する突出部を有しており、突出部は、第1ガス通路の中心軸線の回りに巡らされたリング体で形成されている。
【0007】
ランスの使用時には、ランスの先端部は金属溶湯に浸漬または接近された状態で、第1ガス吹出口から第1ガスが金属溶湯に吹き出される。この場合、第1ガスに含有されている粉状、粒状、プロック状等の物体が芯体の内壁面に衝突すると、芯体の内壁面が損傷するおそれがある。特に、物体が芯体の曲成部の内壁面に衝突すると、芯体の曲成部の内壁面が損傷するおそれがある。この点本発明によれば、第1ガス通路を流れる第1ガスとリング体との接触性が向上し、芯体の熱がリング体を介して第1ガスに奪われ、芯体の内壁面の過熱抑制に貢献できる。ひいては過熱に起因する芯体の内壁面の耐摩耗性の低下が抑制され、芯体の内壁面の破れが抑制される。
【0008】
更に本発明によれば、溶鋼等の金属溶湯を処理する脱硫剤、脱燐剤、脱酸剤、金属粉(例えば鉄粉等の金属粉)等の調整剤等の物体(粉状または粒状の廃棄物も含む)が第1ガスと共に金属溶湯に吹き込まれるとき、第1ガスに含まれる物体の含有濃度が高いときには、第1ガス通路を流れる第1ガスとリング体との接触による冷却性はやや低下するものの、突出部により調整剤等の粉状、粒状、プロック状等の物体が芯体の内壁面に保護層として堆積されることが期待される。特に、芯体の曲成部の内壁面に堆積される。この結果、芯体の内壁面を構成する母材が摩耗することが抑制されることが期待される。調整剤等の物体が硬質であっても、芯体の内壁面を構成する母材が摩耗することが抑制される。特に、芯体の曲成部の内壁面を構成する母材が摩耗することが抑制される。ひいては、芯体の長寿命化および耐久性の向上を図り得る。特に芯体の曲成部の長寿命化および耐久性の向上を図り得る。
【発明の効果】
【0009】
様相1に係る本発明によれば、芯体の内壁面における耐久性および寿命を更に高め得るガス吹き込みランスを提供することができる。様相2に係る本発明によれば、芯体の曲成部における耐久性および寿命を更に高め得るガス吹き込みランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係り、ランスの先端部を金属溶湯に挿入しつつ第1ガスを金属溶湯に吹き込んでいる状態を示す断面図である。
【図2】実施形態1に係り、ランスの先端部の軸線に対して直交する方向に沿って切断した横断面図である。
【図3】実施形態1に係り、ランスの先端部の軸線方向に沿って切断した縦断面図である。
【図4】実施形態1に係り、リング体付近の要部を示す横断面図である。
【図5】実施形態1に係り、リング体付近の要部を示す縦断面図である。
【図6】実施形態2に係り、リング体の各形態を示す図である。
【図7】実施形態3に係り、ランスの先端部を金属溶湯に挿入しつつ第1ガスおよび第2ガスを金属溶湯に吹き込んでいる状態を示す断面図である。
【図8】実施形態3に係り、ランスの先端部の軸線に対して直交する方向に沿って切断した横断面図である。
【図9】実施形態3に係り、ランスの先端部の軸線方向に沿って切断した縦断面図である。
【図10】実施形態4に係り、ランスを示す断面図である。
【図11】実施形態5に係り、ランスを示す断面図である。
【図12】実施形態6に係り、第1ガス吹込口の各形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましくは、リング体は、第1ガス通路の中心軸線の回りを1周するOリング形状、第1ガス通路の中心軸線の回りを1/2周以上するCリング形状、第1ガス通路の中心軸線の回りを螺旋状に巻回された螺旋リング形状のうちのいずれかをなしている。好ましくは、芯体は、第1ガス通路を形成する内パイプと、冷却用ガスを通過させる第2ガス通路を介して内パイプの外周側を覆う外パイプとを有する。一形態によれば、リング体は、リング体から径内方向に突出する単数または複数の副突起部を有することができる。
【0012】
(実施形態1)
図1〜図5は、本発明を適用した実施形態1の概念を示す。ガス吹き込みランス1は、溶鋼等の金属溶湯Mに酸素ガスまたはアルゴンガス等の第1ガスを吹き込むものである。ランス1は、長手方向に沿って延びる軸線P1を持つランス本体11と、軸線P2をもつ先端部12とをもつ。軸線P1,P2は芯体2の中心軸線P3を形成する。ランス1は、長手方向に延びる金属(例えば鋼)製の芯体2と、芯体2の外周壁面側に被覆され少なくとも先端部が金属溶湯Mに浸漬される耐火物層3と、芯体2および耐火物層3のうちの少なくとも一方に設けられ第1ガスを金属溶湯Mに向けて吹き出す第1ガス吹出口41をもつ第1ガス通路4とを有する。
【0013】
芯体2は、エルボで形成された曲成部200と、曲成部200の一端200f側に溶接または取付具で連接された第1直管210と、曲成部200の他端200s側に溶接または取付具で連接された第2直管220とを有する。曲成部200は、曲げ内周200iと曲げ外周200pとを有する。曲成部200、第1直管210、第2直管220は同じ金属または同種の金属で形成しても良い。あるいは、曲成部200および第2直管220は金属溶湯に近くなるので、曲成部200および/または第1直管210よりも耐熱性が良い金属で形成することができる。曲成部200の内壁面は摩耗しやすいため、第1直管210および/または第2直管220よりも耐摩耗性が良い材料で形成することもできる。
【0014】
第1ガスを吹き出す第1ガス吹出口41は、ランス1の先端部12の端面12fにおいて開口する。芯体2の内壁面は、第1ガスが流れる第1ガス通路4を形成する。第1ガスは酸素ガスまたはアルゴンガスを採用できる。第1ガスが酸素ガスである場合には、溶鋼等の金属溶湯Mに含まれる合金成分(例えばシリコン、炭素、マンガン、アルミニウム、リン、硫黄等)が酸化して酸化物が生成され、金属溶湯の組成が調整される。第1ガスがアルゴンガスである場合には、金属溶湯Mがアルゴンガスにより攪拌される。第1ガス通路4の他端部側には、第1ガスを第1ガス通路4に供給する第1ガス供給口43が形成されている。第1ガス供給口43は第1ガス供給源400に繋がる。
【0015】
耐火物層3は、芯体2の外周側を被覆するキャスタブル層32を有する。キャスタブル層32の材質は特に限定されるものではない。キャスタブル層32は、流動性をもつスラリー状の耐火物を芯体3の外周壁面に被覆した状態で乾燥固化させたものである。キャスタブル層32は、芯体2の長手方向において先端部12以外の部位において芯体2の外周壁面に被覆された本キャスタブル層320と、本キャスタブル層320の先端側の先端キャスタブル層322とを有する。芯体2に溶接などで固定された係合部材14は先端キャスタブル層322に係合し、これの脱落を抑制させる。本キャスタブル層320の外周面320pは軸線P1の回りを包囲する。先端キャスタブル層322の外周面322pは軸線P2の回りを包囲する。本キャスタブル層320は例えばアルミナ系、アルミナ−シリカ系で形成されているが、これに限定されるものではない。先端キャスタブル層322は、本キャスタブル層320よりも高い耐溶損性をもつことが好ましい。耐溶損性の確保を考慮すると、先端キャスタブル層322は、例えば、アルミナ−クロム系、アルミナ−カーボン系、マグネシア−カーボン系で形成されていることが好ましい。但しこれに限定されるものではない。アルミナ−カーボン系、マグネシア−カーボン系等のようにカーボンが含有されていると、カーボンが金属溶湯に対して濡れ性が低いため、高い耐溶損性を発揮でき、耐久性および寿命を向上できる。更に、カーボンは高い伝熱性を有するため、キャスタブル層32の均熱化に貢献でき、耐溶損性を高めるのに有利である。
【0016】
ここで、図2は芯体2の先端部12の軸線P2に対して直角方向に沿って切断された横断面を示す。芯体2の先端部12の横断面は、芯体2の先端部12以外の部分に対して異なる異形状をなす異形状部22を有する。異形状部22は、芯体2の横断面において、偏平化された長円形状をなしており、長径DLおよび短径DSをもつ。浸漬時において、短径DSは金属溶湯Mの深さ方向に沿っており、長径DLは金属溶湯Mの湯面M1にほぼ沿うことが好ましい。このため湯面M1から芯体2の先端部2fまでの距離Hxができるだけ確保され、湯面M1の過剰揺動が抑制される。場合によっては、浸漬時において、長径DLは金属溶湯Mの深さ方向に沿っており、短径DSは金属溶湯Mは湯面M1に沿うことにしても良い。更に本実施形態によれば、第1ガス吹出口41の断面形状が真円である場合に比較して、第1ガス吹出口41の開口断面も長円や楕円などの異形状となり、第1ガス吹出口41の開口断面積も調整できるため、第1ガス吹出口41から吹き出す第1ガスの吹込速度の調整も期待される。
【0017】
図3(中心軸線P3に沿った縦断面図)から理解できるように、芯体2の先端部2fは、ランス1の先端部12の端面12fから離れるにつれて拡径方向に傾斜する傾斜部2rをもつ。図3に示す縦断面図において、傾斜部2rは、第1ガス通路4の第1ガス吹出口41に向かうにつれて中心軸線P3に近づくように傾斜する。傾斜部2rが形成されているため、第1ガスが第1ガス通路4を流れるとき、第1ガスが芯体2の傾斜部2rに衝突したり接触したりする頻度が増加する。よって第1ガスによる冷却作用を芯体2に伝熱でき、長寿命化に貢献できる利点が挙げられる。但し場合によっては、傾斜部2rを設けずとも良い。
【0018】
本実施形態によれば、ランス1の使用時には、図1に示すように、ランス1の先端部12が金属溶湯Mの内部に浸漬される。この状態で、酸素ガスまたはアルゴンガスからなる第1ガスが第1ガス通路4に供給される。第1ガスは、ランス1の先端部12の端面12fの第1ガス吹出口41から、先端部12の軸線P2に沿って金属溶湯Mに向けて吹き出される。前述したように第1ガスは酸素ガスまたはアルゴンガスが好ましい。第1ガスが酸素ガスである場合には、金属溶湯Mに含まれる合金成分(例えばシリコン、炭素、マンガン、アルミニウム、リン、硫黄等)が酸化して酸化物が生成され、金属溶湯の組成が調整される。第1ガスがアルゴンガスである場合には、金属溶湯Mがアルゴンガスにより攪拌される。酸化熱により反応部分が昇温され易い。
【0019】
上記したようにランスの使用時には、ランスの先端部は金属溶湯Mに浸漬または接近された状態で、第1ガス吹出口41から第1ガスが金属溶湯Mに吹き出される。この場合、第1ガスに含有されている物体が芯体2の曲成部200の内壁面に衝突すると、芯体2の曲成部200の内壁面が損傷するおそれがある。特に、溶鋼等の金属溶湯を処理する脱硫剤、脱燐剤、脱酸剤等の粉末状または固形状の調整剤(産業廃棄物も含む)等の物体が第1ガスと共に第1該通路4を流れて第1ガス吹出口41から金属溶湯Mに吹き込まれるとき、第1ガスに含まれている調整剤等の物体が芯体2の曲成部200の内壁面に衝突摩擦し、芯体2の曲成部200の内壁面が部分的に摩滅するおそれがある。
【0020】
そこで本実施形態によれば、図1、図4、図5に示すように、芯体2の曲成部200の内壁面には、複数の突出部8が溶接または取付具等により固定されて設けられている。突出部8は、第1ガス通路4を流れる第1ガスの流れ方向において直列に配置されている。ここで、各突出部8は、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを1周するOリング形状のリング体80でそれぞれ形成されている。リング体80は、中心軸線P3に沿って所定の間隔を隔てて直列に並設されている。この場合、第1ガス通路4を流れる第1ガスとリング体80との接触を期待でき、リング体80を介して芯体2の曲成部200の冷却を期待できる。殊に、第1ガスが曲成部200の内壁面に接触する頻度が高くなる。リング体80は周方向に巡らされているため、リング体80の表面積も増加し、第1ガスとリング体80とが接触する接触面積(熱交換面積)も増加する。この場合、第1ガスとの接触により曲成部200の熱は奪熱されるため、曲成部200の過熱が抑制され、過熱に起因する曲成部200の内壁面の耐摩耗性の低下が抑制され、曲成部200の長寿命化に貢献できる。
【0021】
更に本実施形態によれば、第1ガスに含まれている調整剤の配合割合が多いときには、第1ガス通路4を流れる第1ガスとリング体80との接触性はやや低下するものの、突出部8であるリング体80により調整剤等の物体が曲成部200の内壁面に堆積され易くなる効果も期待できる。この結果、第1ガスに含まれている調整剤等の物体が芯体2の曲成部200の内壁面の母材に直接的に衝突することが抑制される効果も期待できる。よって、芯体2の曲成部200の内壁面が摩耗することが抑制される。調整剤等の物体が硬質であっても、曲成部200の内壁面の母材が摩耗することが抑制される。ひいては、曲成部200の長寿命化および耐久性の向上を図り得る。
【0022】
図1に示す使用形態では、曲成部200のうち第1ガス通路4を形成する内壁面については、曲げ内周200iよりも曲げ外周200p側が摩耗し易い傾向がある。この点本実施形態によれば、ランス1の使用時において、曲成部200の曲げ内周200iよりも、曲げ外周200pは重力方向の下方に位置する。このため、重力等の関係で、調整剤等の物体は、曲成部200の曲げ内周200i側よりも、曲げ外周200p側に堆積され易くなる。よって、曲成部200の曲げ外周200p側の内壁面における長寿命化および耐久性の向上を図り得る。
【0023】
なお、曲成部200の内径DR(図5参照)を相対表示で100とするとき、芯体2の曲成部200の内壁面に対する突出部8の突出量HR(半径としての突出量,図5参照)は、内径DRの大きさにもよるが、0.5〜30の範囲、0〜25の範囲、1〜20の範囲、2〜10の範囲とすることができる。但しこれらに限定されるものではない。リング体80は溶接等による取付性を考慮すると、金属製が好ましい。場合によっては、ランス1の使用時において、曲成部200の曲げ内周200iよりも、曲げ外周200pは上方に位置する状態でランス1が使用されるときには、重力等の関係で、調整剤等の物体は曲成部200の曲げ外周200p側よりも、曲げ内周200i側に堆積され易くなる。よって、曲成部200の曲げ内周200i側における長寿命化および耐久性の向上を図り得る。場合によっては、第1ガス通路4において、芯体2のうち曲成部200よりも上流側に複数個のリング体80を間隔を隔てて配置させても良い。更に、芯体2のうち曲成部200よりも下流側に複数個のリング体80を間隔を隔てて配置させても良い。
【0024】
(実施形態2)
図6は実施形態2を示す。図6(A)は真円形状またはそれに酷似する円形状をなすセラミックスまたは金属製のリング体80Aを示す。リング体80Aの内周部には、リング体80Aの内周部から、第1ガス通路4の中心軸線P3に向けて、つまり径内方向(放射方向)に向けて突出する複数の副突起部890が形成されている。副突起部890と第1ガスとの接触面積(熱交換面積)が増加し、芯体2を冷却させる冷却能を増加できる。更に、粉または粒状等の調整剤が副突起部890に堆積する作用も期待でき、リング体80Aの摩耗抑制、ひいては芯体2のうちリング体80Aが設けられている領域(例えば曲成部200等)の摩耗抑制にも貢献できる。必要に応じて副突起部890を廃止しても良い。
【0025】
図6(B)に示すリング体80Bによれば、リング体80Bの内径および外径は、互いに偏芯している。リング体80Bの曲げ外周200p側における突出量HR1(芯体2の内壁面からリング体80Bの内周面801iにかけての突出量)は、リング体80Bの曲げ内周200i側における突出量HR2(芯体2の内壁面に対する突出量)よりも大きくされている。この場合、第1ガスに含まれている調整剤等の物体は、曲成部200の曲げ外周200p側に堆積され易くなる。よって、曲成部200の曲げ外周200p側の内壁面における長寿命化および耐久性の向上を更に高め得る。もちろん、曲成部200の曲げ内周200i側の内壁面における長寿命化および耐久性の向上をも高め得る。HR1を相対表示で100とすると、HR2は10〜90が例示される。なお、第1ガス通路4のうちリング体80Bが設けられている通路部分の内径DR1を100として相対表示すると、HR1は、1〜50の範囲、1〜30の範囲、1〜20の範囲、1〜10の範囲、1〜5の範囲が例示される。但しこれらに限定されるものではない。
【0026】
図6(C)に示すリング体80Cによれば、リング体80Cの内径および外径は互いに偏芯しており、リング体80Cの曲げ外周200p側における突出量HR1(芯体2の内壁面に対する突出量)は、大きくされている。ここで、リング体80Cは、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを2/3周(1/2周)以上するCリング形状とされている。図6(D)に示すリング体80Dによれば、リング体80Dの内径および外径は互いに偏芯しており、リング体80Dの曲げ外周200p側における突出量HR1(半径としての突出量)は大きくされている。図6(D)に示すリング体80Dは、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを1/2周以上するCリング形状とされている。
【0027】
図6(E)に示すリング体80Eは円リング形状であり、リング体80Eを構成する線材の断面形状は四角形状とされている。なお、リング体80Eを構成する線材の断面形状としては、四角形状に限らず、円形状としても良い。図6(F)に示すリング体80Fによれば、リング体80Fを構成する線材の断面形状については、曲げ内周200i側よりも耐摩耗性が要請される曲げ外周200p側の断面積が相対的に大きく、曲げ内周200i側の断面積が相対的に小さくされている。図6(G)に示すリング体80Gは、中心軸線P3の回りの周方向に沿って内周に断続的に形成された複数の溝800を有する。第1ガスの通過性を確保しつつ、第1ガスとの接触面積を増加でき、更に、調整剤等の物体を堆積させ得る。
【0028】
図6(H)に示すリング体80Hは、芯体2の第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを螺旋状に巻回する螺旋リング形状をなす。リング体80Hを第1ガス通路4の中心軸線P3に沿って矢印XA方向に引っ張れば、リング体80Hが縮径するため、曲成部200の空間に挿入され易くなる利点が得られる。更に、その引張力を解除させれば、リング体80Hが拡径するため、曲成部200の内壁面に装着されて仮保持され易くなる。このように螺旋リング形状のリング体80Hを曲成部200の内壁面に仮保持した状態で、溶接等によりリング体80Hを曲成部200の内壁面に溶接させればよい。
【0029】
(実施形態3)
図7〜図9は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。図7〜図9に示すように、芯体2は、内パイプ51と、外パイプ61と、内パイプ51と外パイプ61との間に形成された第2ガス通路6とを有する。図7から理解できるように、内パイプ51は、エルボで形成された曲成部510と、曲成部510の一端510f側に溶接または取付具で連接された第1直管520と、曲成部510の他端510s側に溶接または取付具で連接された第2直管530とを有する。曲成部510は、曲げ内周510iと曲げ外周510pとを有する。外パイプ61は、エルボで形成された曲成部610と、曲成部610の一端610f側に溶接または取付具で連接された第1直管620と、曲成部610の他端610s側に溶接または取付具で連接された第2直管630とを有する。曲成部610は、曲げ内周610iと曲げ外周610pとを有する。なお、内パイプ51の曲成部510、第1直管520、第2直管530は、同じ金属または同種の金属で形成しても良い。場合によっては、曲成部510および第2直管530は高温の金属溶湯に近くなるので、第1直管520よりも耐熱性が良い金属で形成することができる。曲げ外周510pをもつ曲成部510の内壁面は調整剤等の物体により摩耗しやすいため、第1直管520および/または第2直管530よりも耐摩耗性が良い材料(合金鋼等)で形成することもできる。各突出部8は、第1ガス通路4の中心軸線P3の回りを1周するOリング形状またはCリング形状のリング体80で形成されている。リング体80は、中心軸線P3に沿って所定の間隔を隔てて内パイプ51の曲成部510の内壁面において直列に複数個並設されている。リング体80により第1ガスとの接触面積が増加し、曲成部510の冷却性、ひいては内パイプ51の冷却性を向上でき、曲成部510の内壁面の摩滅が抑制される。
【0030】
更に、第1ガスに含まれている調整剤等の物体の割合が多いときには、調整剤等の物体が内パイプ51の曲成部510の内壁面に堆積され易くなる作用を期待できる。堆積された調整剤等の物体は、内パイプ51の内壁面を保護する保護層を形成する作用を期待できる。この結果、第1ガスに含まれている調整剤等の物体が内パイプ51の曲成部510の内壁面の母材に直接的に衝突することが抑制される。よって、芯体2の内パイプ51の曲成部510の内壁面が摩耗することが抑制される。調整剤等の物体が硬質であっても、曲成部510の内壁面の母材が摩耗することが抑制される。ひいては、内パイプ51ひいては外パイプ61の長寿命化および耐久性の向上を図り得る。
【0031】
一般的には、曲成部510の曲げ内周510iの内壁面よりも、曲げ外周510pの内壁面は摩耗する傾向がある。そこで本実施形態によれば、図7に示すように、ランス1の使用時において、曲成部510の曲げ内周510iよりも、曲げ外周510pは重力方向の下方に位置する。このため、第1ガス通路4を流れる第1ガスは、曲げ外周510pに接触してこれを冷却させる機能が高くなる。更に、重力等の関係で、調整剤等の物体は、曲成部510の曲げ内周510i側よりも、曲げ外周510p側に堆積され易くなる。よって、曲成部510の曲げ外周510p側の内壁面における長寿命化および耐久性の向上を図り得る。なお、内パイプ51の曲成部510の内径DR2を相対表示で100とするとき、内径DR2の大きさによっても相違するものの、曲成部510の内壁面に対する突出部8の半径方向の突出量HR2(半径としての突出量)は、0.01〜30の範囲、0.1〜30の範囲、1〜20の範囲、1〜10の範囲、2〜5の範囲が例示される。ただしこれらに限定されるものではない。リング体80は溶接等による取付性を考慮すると、金属製が好ましい。
【0032】
図7に示すように、外パイプ61の外周側には定形れんが部31が位置K1として装備されている。定形れんが部31は加圧工程および焼成工程を経ているため、先端キャスタブル層322よりも高い強度および高い耐熱性をもち、ランス先端側における保持性を高め得る。第2ガス通路6の第2ガス吹出口61は、横長のリング形状をなしており、ランス1の先端部12の端面12fにおいて開口する。第2ガス通路6のうち金属溶湯Mと反対側の他端部側には、第2ガスを第2ガス通路6に供給する第2ガス供給口が形成されている。第2ガス供給口は第2ガス供給源600に繋がる。
【0033】
第1ガスが金属溶湯に吹き込まれるとき、冷却作用を発揮させる第2ガスが第2ガス通路6に供給され、第2ガスは第2ガス通路6の第2ガス吹出口61から金属溶湯Mに向けて吹き出される。冷却作用をもつ第2ガスが第2ガス通路6を流れるため、先端キャスタブル層322付近、殊に、第2ガス通路6の第2ガス吹出口61付近における保護性を確保できる。更に、第2ガスの冷却作用により金属製の内パイプ51および外パイプ61は冷却される。ひいては外パイプ61からの伝熱により定形れんが部31の内周側も冷却されるため、先端キャスタブル層322ばかりか、定形れんが部31の全体の冷却が促進される。これにより定形れんが部31の耐久性が一層向上され、定形れんが部31の長寿命化を図り得る。芯体2の長手方向において、第2ガス通路6は定形れんが部31の設置位置K1を通過する。なお、定形れんが部31が設けられていない場合でも良い。場合によっては、第1ガス通路4において、芯体2のうち内パイプ51の曲成部510よりも上流側に複数個のリング体80を間隔を隔てて並設させても良い。更に、芯体2のうち内パイプ51の曲成部510よりも下流側に複数個のリング体80を間隔を隔てて並設させても良い。内パイプ51の全長にわたり、複数個のリング体80を間隔を隔てて並設させても良い。殊に、内パイプ51のうち金属溶湯Mに浸漬される部分にの全長にわたり、複数個のリング体80を間隔を隔てて並設させても良い。
【0034】
(実施形態4)
図10は実施形態4を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。芯体2の曲成部200の内壁面には、螺旋リング形状をなすリング体80Hが突出部8として溶接または取付具により固定されている。第1ガス通路4のうちリング体80Hが保持されている通路部分の内径をDR1とすると、リング体80Hを構成する線材が内壁面から突出している突出量をHR3(図10参照)とすると、突出量HR3を大きめにできる。その理由として、リング体80Hは螺旋形状であるため、第1ガス通路4のガスを螺旋状に流し得る作用を有するためである。DR1を相対表示で100とすると、突出量HR3としては0.5〜30の範囲、1〜25の範囲、1〜20の範囲、1〜10の範囲、1〜5の範囲が例示される。但しこれらに限定されるものではない。芯体2は内パイプと外パイプとの二重パイプ構造としても良い。螺旋リング形状をなすリング体80Hは、第1ガスとの接触面積も増加できる。
【0035】
(実施形態5)
図11は実施形態5を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。第1ガスに含まれている調整剤の物体の比重、種類などによっては、遠心力などの作用により内パイプ51の曲げ外周510p側に沿って流れるおそれがある。そこで本実施形態によれば、図11に示すように、内パイプ51の内壁面のうち曲成部510において複数個のリング体80が第1ガス通路4に対面するように第1ガスの流れ方向に沿って直列に固定されている。更に、内パイプ51の内壁面のうち曲成部510において曲げ外周510pよりも下流の領域において(すなわち、第1ガスの流れ方向において内パイプ51の曲成部510と第1ガス吹出口41との間の領域)、複数個のリング体80が第1ガス通路4に対面するように第1ガスと接触できるように、第1ガスの流れ方向に沿って直列に固定されている。この場合、内パイプ51の内壁面のうち曲成部510において曲げ外周510pよりも下流の領域における耐久性を高めるのに貢献できる。
【0036】
(実施形態6)
図12は実施形態6を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。図12(A)では、芯体2に形成されている第1ガス吹出口41は、水平方向に延びる横長形状とされている。耐火物層3を構成するキャスタブル層32の上部32uの肉厚をWuとし、下部32dの肉厚をWdとすると、WdはWuよりも大きくされている(Wd>Wu)。耐火物層3のうち熱損傷を受けやすい下部32dの耐久性および長寿命化に貢献できる。図12(B)では、芯体2に形成されている第1ガス吹出口41は、耐火物層3を構成するキャスタブル層32の外輪郭は、水平方向に延びる横長形状とされている。耐火物層3を構成するキャスタブル層32の上部32uの肉厚をWuとし、下部32dの肉厚をWdとし、側部32sの肉厚をWsとすると、Wd,WsはWuよりも大きくされている(Wd>Wu,Ws>Wu)。耐火物層3のうち熱損傷を受け易い下部32dおよび側部32sの耐久性および長寿命化に貢献できる。図12(C)では、耐火物層3を構成するキャスタブル層32の外輪郭は、横断面において、重力方向にのびる縦長の形状をなす。耐火物層3を構成するキャスタブル層32の上部32uの肉厚をWuとし、下部32dの肉厚をWdとすると、WdはWuよりも大きくされている(Wd>Wu)。図12(D)では、耐火物層3を構成するキャスタブル層32の外輪郭は、横断面において縦長の形状をなす。耐火物層3を構成するキャスタブル層32の上部32uの肉厚をWuとし、下部32dの肉厚をWdとすると、WdはWuよりも大きくされている(Wd>Wu)。図12(D)では、芯体2に形成されている第1ガス吹出口41は、水平方向に延びる横長なほぼ四角形状をなす。なお、芯体2は内パイプと外パイプとの二重パイプ構造としても良い。
【0037】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば、芯体2は、曲成部200と第1直管210と第2直管220とを連結して形成されているが、これ限らず、一体成形品であっても良い。芯体2の異形状部22は偏平化構造とされているが、これに限らず、異形状部22を有しておらず、断面で真円形状またはこれに近い形状をなす円筒パイプ構造でも良い。芯体2の曲成部200の内壁面は曲げ外周200pおよび曲げ内周200iを有するため、摩耗し易い。このため、曲成部200の内壁面については、第1直管210および/または第2直管220よりも耐摩耗性が良い材料で形成することもできる。耐摩耗性が良い材料としては、炭化物、窒化物などの硬質相を母材に分散させた炭素鋼、合金鋼(ステンレス鋼を含む)、焼入鋼等の金属材料、セラミックスで形成しても良い。キャスタブル層32は、先端部12以外の部位において芯体2の外周壁面に被覆された本キャスタブル層320と、本キャスタブル層320の先端側の先端キャスタブル層322とで形成されているが、全体を同一材質のキャスタブル層で形成されていても良い。更には、耐火物層3としては、キャスタブル層に代えてレンガを組み付けたレンガ層で形成しても良い。なお、芯体は1重管構造として図示されている実施形態において、内パイプと外パイプと両者の間に第2ガス通路とを有する2重管構造としても良い。
【符号の説明】
【0038】
1はランス、11はランス本体、12は先端部、2は芯体、22は異形状部、200は曲成部、210は第1直管部、220は第2直管部、3は耐火物層、31は定形れんが部、32はキャスタブル層、4は第1ガス通路、41は第1ガス吹出口、51は内パイプ、52は外パイプ、6は第2ガス通路、61は第2ガス吹出口、8は突出部、80はリング体を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路を有すると共に前記第1ガス通路の一部を形成する曲成部を有する芯体と、前記芯体の外周部に被覆された耐火物層とを具備するランスにおいて、前記芯体は、前記第1ガス通路の径内方向に突出する突出部を有しており、前記突出部は、前記第1ガス通路の中心軸線の回りに巡らされたリング体で形成されているガス吹き込みランス。
【請求項2】
第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路を有すると共に前記第1ガス通路の一部を形成する曲成部を有する芯体と、前記芯体の外周部に被覆された耐火物層とを具備するランスにおいて、
前記芯体の曲成部は、前記第1ガス通路の径内方向に突出する突出部を有しており、前記突出部は、前記第1ガス通路の中心軸線の回りに巡らされたリング体で形成されているガス吹き込みランス。
【請求項3】
請求項1または2において、前記リング体は、前記第1ガス通路の前記中心軸線の回りを1周するOリング形状、前記第1ガス通路の前記中心軸線の回りを1/2周以上するCリング形状、前記第1ガス通路の前記中心軸線の回りを螺旋状に巻回された螺旋リング形状のうちのいずれかをなしていることを特徴とするガス吹き込みランス。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記リング体は、前記リング体から径内方向に突出する単数または複数の副突起部を有するガス吹き込みランス。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記芯体は、前記第1ガス通路を形成する内パイプと、冷却用の第2ガスを通過させる第2ガス通路を介して前記内パイプの外周側を覆う外パイプとを有するガス吹き込みランス。
【請求項1】
第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路を有すると共に前記第1ガス通路の一部を形成する曲成部を有する芯体と、前記芯体の外周部に被覆された耐火物層とを具備するランスにおいて、前記芯体は、前記第1ガス通路の径内方向に突出する突出部を有しており、前記突出部は、前記第1ガス通路の中心軸線の回りに巡らされたリング体で形成されているガス吹き込みランス。
【請求項2】
第1ガスを金属溶湯に向けて吹き出す第1ガス吹出口をもつ第1ガス通路を有すると共に前記第1ガス通路の一部を形成する曲成部を有する芯体と、前記芯体の外周部に被覆された耐火物層とを具備するランスにおいて、
前記芯体の曲成部は、前記第1ガス通路の径内方向に突出する突出部を有しており、前記突出部は、前記第1ガス通路の中心軸線の回りに巡らされたリング体で形成されているガス吹き込みランス。
【請求項3】
請求項1または2において、前記リング体は、前記第1ガス通路の前記中心軸線の回りを1周するOリング形状、前記第1ガス通路の前記中心軸線の回りを1/2周以上するCリング形状、前記第1ガス通路の前記中心軸線の回りを螺旋状に巻回された螺旋リング形状のうちのいずれかをなしていることを特徴とするガス吹き込みランス。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記リング体は、前記リング体から径内方向に突出する単数または複数の副突起部を有するガス吹き込みランス。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記芯体は、前記第1ガス通路を形成する内パイプと、冷却用の第2ガスを通過させる第2ガス通路を介して前記内パイプの外周側を覆う外パイプとを有するガス吹き込みランス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−241443(P2011−241443A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114361(P2010−114361)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【Fターム(参考)】
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