説明

ガス器具用清掃具

【課題】作業性が高くて作業者の怪我の発生も抑止し得るガス器具用清掃具を提供する。
【解決手段】ブラシ毛2群又はスポンジを有する清掃部3が柄部1の前端側に備えられ、且つ、ガス器具の炎口に挿通可能な炎口清掃用凸部4が柄部1の後端側に備えられているガス器具用清掃具であって、柄部1の前端側よりも横断面寸法の大きな把持部6を柄部1の後端側に形成するように、柄部1の前後長さ方向X及び柄部1の左右幅方向Yに交差する軸心P周りで回転可能な回転台座7が、把持部6の外面を形成する状態で柄部1の後端側に備えられ、炎口清掃用凸部4が、それの先端が回転台座7の回転軸芯P方向に沿う方向視で回転台座7の外縁部よりも外方に位置する状態で回転台座7に備えられ、回転台座7の回転操作によって、炎口清掃用凸部4が後方を向き、且つ、炎口清掃用凸部4の先端が柄部1の後端よりも後方に位置する使用姿勢を現出可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭の台所や飲食店のキッチン等に設置されたガスコンロ等のガス器具を清掃する場合等に使用されるガス器具用清掃具に関し、特に、ブラシ毛群又はスポンジを有する清掃部が柄部の前端側に備えられ、且つ、ガス器具の炎口に挿通可能な炎口清掃用凸部が柄部の後端側に備えられているガス器具用清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガス器具用清掃具としては、柄部の下面部の略全長に亘って柄部の長手方向に沿う凹溝を形成するとともに、針状体からなるキリ部(炎口形成用凸部の一例)を先端側に有する炎口清掃用部材の基端部を凹溝内の前後中間部に横軸芯周りで揺動自在に枢着することによって、その炎口清掃用部材の揺動操作でもって、炎口清掃用部材を前方側に向けた姿勢で凹溝内に収納した不使用姿勢から、炎口清掃用部材を後方側に向けて先端側のキリ部のみを柄部の後端から突出させた使用姿勢を現出可能にしたものがある(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭53−152455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のガス器具用清掃具では、前記使用姿勢において炎口清掃用部材のうちのキリ部を除く他部が柄部の凹溝内に固定等されることなく単に配置させているだけであるため、炎口を清掃する作業でキリ部に生じる押圧力等の外力で炎口清掃用部材の姿勢が変化し易く、また、キリ部に生じる外力が柄部を介して間接的に作業者の手指に伝わるために清掃状態を敏感には感じ難く、これらのことから、作業性の面であまり良くない問題があった。更に、キリ部を柄部の凹溝内に収納する等の操作に、キリ部を直接に触れる必要があるため、その操作の際に作業者が怪我し易い問題もあった。
【0005】
本発明は、上述の如き実情に鑑みてなされたものであって、その主たる課題は、合理的な改良により、作業性が高くて作業者の怪我の発生も抑止し得るガス器具用清掃具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、ガス器具用清掃具に係り、その特徴は、
ブラシ毛群又はスポンジを有する清掃部が柄部の前端側に備えられ、且つ、ガス器具の炎口に挿通可能な炎口清掃用凸部が柄部の後端側に備えられているガス器具用清掃具であって、
柄部の前端側よりも横断面寸法の大きな把持部を柄部の後端側に形成するように、柄部の前後長さ方向及び柄部の左右幅方向に交差する軸心周りで回転可能な回転台座が、把持部の外面を形成する状態で柄部の後端側に備えられ、
前記炎口清掃用凸部が、それの先端が前記回転台座の回転軸芯方向に沿う方向視で回転台座の外縁部よりも外方に位置する状態で回転台座に備えられ、
前記回転台座の回転操作によって、前記炎口清掃用凸部が後方を向き、且つ、炎口清掃用凸部の先端が前記柄部の後端よりも後方に位置する使用姿勢を現出可能に構成されている点にある。
【0007】
上記構成によれば、炎口清掃用凸部を備えた回転台座が把持部の外面を形成する状態で柄部の後端側に備えられているから、その回転台座の構造を利用する形態で把持部を効率的に形成することができながら、作業者が作業する際の把持部への把持力(グリップ力)を利用する形態で前記炎口清掃用凸部が後方を向き、且つ、炎口清掃用凸部の先端が前記柄部の後端よりも後方に位置する使用姿勢の保持力を高めることができるとともに、炎口清掃用凸部に生じる外力をより直接的に作業者の手指に伝達させることができる。
【0008】
従って、炎口を清掃する作業で炎口清掃用凸部に生じる押圧力等の外力で前記使用姿勢から姿勢変化が生じるのを効果的且つ効率的に抑止することができるとともに、清掃状態を敏感に感じ易くすることができ、清掃作業の作業性を効果的且つ効率的に高めることができる。
【0009】
また、前記回転台座を回転操作することによって炎口清掃用凸部に触れない状態で使用姿勢からの姿勢変化をすることがきるから、姿勢変更時に炎口清掃用凸部に手指が触れることによる作業者の怪我の発生も抑止することができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記把持部の前方側には、前記回転台座の回転操作によって前記炎口形成用凸部が前方に向く不使用姿勢で且つ回転台座が外部に露出する状態で炎口形成用凸部を収納可能な凹部が形成されている点にある。
【0011】
上記構成によれば、前記回転台座の回転操作による安全で高い操作性を維持しながら、前記炎口清掃用凸部が前記凹部に収納された安全性の高い前記不使用姿勢と前記使用姿勢との切り換えを可能にすることができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記柄部の後端側には、支持体側に備えられたフック部が挿通状態で係合可能な被支持用挿通部が形成されているとともに、
前記回転台座には、前記炎口形成用凸部が前方を向く不使用姿勢において前記被支持用挿通部に重なる回転規制用挿通部が形成され、前記不使用姿勢で両挿通部に挿通されたフック部と回転規制用挿通部の周縁部との接当によりフック部との係合状態で回転台座の回転を規制するように構成されている点にある。
【0013】
上記構成によれば、支持体側のフック部と係合させた保管状態の態様を利用する形態で、その保管状態で不測に前記不使用姿勢から前記使用姿勢になる等の不具合を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)炎口清掃用凸部を不使用姿勢とした状態の清掃具の側面図、(b)炎口清掃用凸部を不使用姿勢とした状態の清掃具の底面図
【図2】(a)炎口清掃用凸部を使用姿勢とした状態の清掃具の側面図、(b)炎口清掃用凸部を使用姿勢とした状態の清掃具の底面図
【図3】(a)清掃具の分解側面図、(b)清掃具の分解底面図
【図4】(a)炎口清掃用凸部を使用姿勢とした状態の把持部の縦断図、(b)(a)のIVb−IVb線断面図、(c)(a)のIVc−IVc線断面図
【図5】炎口清掃用凸部を不使用姿勢とした状態の把持部の縦断図
【図6】(a)炎口清掃用凸部を不使用姿勢としたときの使用状態を示す説明図、(b)炎口清掃用凸部を使用姿勢としたときの使用状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図5は、家庭や厨房等に設置されたガスコンロ等のガス器具を清掃する場合に使用される清掃具を示し、合成樹脂等からなるやや細長い柄部1の前端側には、金属製のブラシ毛2群を有する清掃部3が備えられているとともに、柄部1の後端側には、ガス器具の炎口に挿通可能な炎口清掃用凸部4が柄部1の後端から後方に突出可能な状態(図2を参照)で備えられ、更に、柄部1の後端部には、スクレーパーとして使用されるヘラ部5が備えられている。
【0016】
また、柄部1の後端側には、柄部1の前端側よりも横断面寸法の大きな把持部6が備えられている。当該把持部6は、清掃作業時に作業者の指腹が接する底側(図中下方側)を膨出させる形態で前端側よりも横断面寸法を大きくして構成されている(図6を参照)。
【0017】
そして、把持部6の下方側には、柄部1の長手方向Xに交差する軸心周り(本例では、柄部1の長手方向(前後長さ方向)X及び柄部1の左右幅方向Yに直交する軸芯P周り)で回転可能な回転台座7が把持部6の外面(すなわち、作業者の手指が接する面)を形成する状態で備えられている。
【0018】
また、当該回転台座7の回転軸芯P方向に沿う方向視の外方側には、前記炎口清掃用凸部4がそれの先端が回転台座7の回転軸芯P方向に沿う方向視で回転台座7の外縁部よりも外方に位置する状態(すなわち、炎口清掃用凸部4の先端が回転台座7の外縁部から外方に突出する状態)で設けられており、回転台座7の回転操作によって、炎口清掃用凸部4が後方を向き、且つ、炎口清掃用凸部4の先端が柄部1の後端よりも後方に位置する使用姿勢を現出可能に構成されている。なお、回転台座7は、側面視において下方窄まりの台形状をなし、且つ、底面視で略長方形状をなす態様に構成されている。
【0019】
すなわち、当該清掃具は、炎口清掃用凸部4を柄部1の後端から後方に突出させた図2、図6(b)示す使用姿勢と、炎口清掃用凸部4を柄部1に重合する状態に前方に向けた図1、図6(a)に示す不使用姿勢(炎口清掃用凸部4を柄部1の後端から後方に突出させない姿勢の一例)とを回転台座7の回転操作によって切り換え可能に構成されているとともに、その両姿勢において作業者の把持力を姿勢保持力に利用可能に構成されている。
【0020】
前記回転台座7の長手方向の一端部7Aには、前記炎口清掃用凸部4を構成する金属製の針状体からなるキリ部材9がそれの基端部を埋め込んだ状態で備えられている。また、回転台座7の他端部7Bには、柄部1を構成する柄部材10の後端側に壁掛けフック等の支持体側のフック部用の係合用挿通穴11(被支持用挿通部の一例)が形成されていることに対して、その挿通穴11の長手方向Xの前半領域に対して前記不使用姿勢において重合する切り欠き8(回転規制用挿通部の一例)が形成されている。
【0021】
つまり、当該清掃具は、前記不使用姿勢で柄部材10の係合用挿通穴11及び回転台座の切り欠き8に挿通されたフック部とその切り欠きの周縁部(回転規制片部の一例)との接当によりフック部との係合状態で回転台座7の回転を規制するように構成されている。なお、前記回転台座7の長手方向の両端部7A、7Bの各々は、外方ほど上方に位置する傾斜面部に形成されている。
【0022】
前記回転台座7の上面部と柄部材10の後端側の下面部との対向面間には、回転台座7と柄部材10とを回転軸芯P方向で相対回転自在な状態で連結する連結手段12が設けられている。当該連結手段12は、柄部材10の後端側の下面部に突出形成された略円筒状の嵌合凸部13と、前記回転台座7の上面部に形成された略円筒状の被嵌合凹部14とから構成されている。
【0023】
前記嵌合凸部13は、連結操作及び離脱操作時の弾性変形を可能にする隙間Sを空けた状態で配置された一対の半円筒状部13A、13Aから構成されているとともに、嵌合凸部13の外周面の高さ方向の中間部分には、嵌合凹部14の深さ方向の中間部分に形成されたリング状の凸条14a(凸部の一例)が入り込むリング状の凹条13a(凹部の一例)が形成されている。前記凸条14aと前記凹条13aは、柄部材10と回転台座7の離脱を抑止する抜け止め手段を構成する。
【0024】
また、回転台座7の上面部と柄部材10の後端側の下面部との対向面間には、回転台座7の回転範囲を規制する回転範囲規制手段15が設けられている。当該回転範囲規制手段15は、回転台座7の上面部の横幅方向Yの略半領域で回転軸芯P(被嵌合凹部14の中心)を中心とする円弧に沿う一端側16b、17bが開口された部分円弧状の一対の凹溝16、17と、柄部材10の後端側の下面部における嵌合凸部13よりも前側位置の幅方向略中央位置において柄部材10と回転台座7との連結状態で前記凹溝16、17に入り込むように形成された凸部18とから構成されている。
【0025】
つまり、当該清掃具は、前記不使用姿勢から前記使用姿勢にするときには、使用姿勢になったときに前記凸部18の外面と前記凹溝17の他端部17aが接当してそれ以上の相対回転を規制し、且つ、前記使用姿勢から前記不使用姿勢にするときには、不使用姿勢になったときに前記凸部18の外面と前記凹溝16の他端部16aが接当してそれ以上の相対回転を規制する。
【0026】
更に、回転台座7の上面部と柄部材10の後端側の下面部との対向面間には、柄部材10に対する回転台座の姿勢が所定姿勢(詳しくは、前記不使用姿勢と前記使用姿勢の各々)になったときに係合して柄部材10に対する回転台座7の姿勢を保持する姿勢保持手段19が設けられている。
【0027】
当該姿勢保持手段19を構成するのに、回転台座7の上面部における被嵌合凹部14の周縁部(軸芯Pを中心とする径方向で被嵌合凹部14と回動範囲規制用の凸部18との間に位置する部位の一例)に略半円弧状の凹溝20(凹部の一例)を形成するとともに、この凹溝20の両端部の底部の各々に径方向に沿う1本の凸条21(凸部の一例)を形成し、更に、柄部材10の下面部における嵌合凸部13の周縁部の前端部には、柄部材10と回転台座7との連結状態で回転台座7を前記使用姿勢及び前記不使用姿勢にしたときに前記凸条21が乗り越えて入り込む凹溝(凹部の一例)を対向面間に形成する一対の凸条22(凸部の一例)が形成されている。
【0028】
また、前記把持部6の前半領域には、回転台座7を前記不使用姿勢にしたときに炎口清掃用凸部4が側方から入り込む側面開口の凹部23を有する収納部24が前記把持部6の外面を形成する状態で備えられている。当該収納部24の下面部は、回転台座7の下面部と同じ又は略同じ高さ位置となるように構成されており、作業者の使用時において作業者の手に違和感が生じないようになっている。
【0029】
前記収納部24の後端部と柄部材10の後端部の各々には、回転台座7の長手方向の両端部7A、7Bの傾斜面に沿う又は略沿う傾斜面を備えた抜け止め片25、26(抜け止め手段の一例)が突出形成されている。なお、27は炎口清掃用凸部に脱着自在な合成樹脂製等の保護キャップである。
【0030】
[その他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、前記清掃部3が金属製のブラシ毛群から構成されている場合を例に示したが、樹脂製のブラシ毛群やスポンジ等から構成されていてもよい。
【0031】
(2)前述の実施形態では、炎口清掃用凸部4が、金属製の針状体から構成されている場合を例に示したが、樹脂製の突起等から構成されていてもよい。
【0032】
(3)前述の実施形態では、前記回転台座7の回転規制用挿通部が両側に回動規制片部を形成する略U字状の切り欠き8から構成されている場合を例に示したが、一側に回動規制片部を形成する切り欠きや貫通穴等から構成されていてもよい。
【0033】
(4)前述の実施形態では、前記連結手段12は、柄部材10の後端側の下面部に突出形成された略円筒状の嵌合凸部13と、前記回転台座7の上面部に形成された略円筒状の被嵌合凹部14とから構成されている場合を例に示したが、例えば、これとは逆に、柄部材10に形成された被嵌合凹部と、回転台座に形成された嵌合凸部から構成されている等であってもよい。
【0034】
(5)回転範囲規制手段15、姿勢保持手段19、抜け止め手段の具体的構成は、前述の実施形態で示した構造に限らず、種々の構成変更が可能である。例えば、回転範囲規制手段15を構成するのに、炎口清掃用凸部4を収納する凹部23の深さを浅くすることによって炎口清掃用凸部4と収納用の凹部23の底部との接当により回転を規制するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 柄部
2 ブラシ毛
3 清掃部
4 炎口清掃用凸部
6 把持部
7 回転台座
8 回転規制用挿通部
11 被支持用挿通部
23 凹部
P 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ毛群又はスポンジを有する清掃部が柄部の前端側に備えられ、且つ、ガス器具の炎口に挿通可能な炎口清掃用凸部が柄部の後端側に備えられているガス器具用清掃具であって、
柄部の前端側よりも横断面寸法の大きな把持部を柄部の後端側に形成するように、柄部の前後長さ方向及び柄部の左右幅方向に交差する軸心周りで回転可能な回転台座が、把持部の外面を形成する状態で柄部の後端側に備えられ、
前記炎口清掃用凸部が、それの先端が前記回転台座の回転軸芯方向に沿う方向視で回転台座の外縁部よりも外方に位置する状態で回転台座に備えられ、
前記回転台座の回転操作によって、前記炎口清掃用凸部が後方を向き、且つ、炎口清掃用凸部の先端が前記柄部の後端よりも後方に位置する使用姿勢を現出可能に構成されているガス器具用清掃具。
【請求項2】
前記把持部の前方側には、前記回転台座の回転操作によって前記炎口形成用凸部が前方に向く不使用姿勢で且つ回転台座が外部に露出する状態で炎口形成用凸部を収納可能な凹部が形成されている請求項1記載のガス器具用清掃具。
【請求項3】
前記柄部の後端側には、支持体側に備えられたフック部が挿通状態で係合可能な被支持用挿通部が形成されているとともに、
前記回転台座には、前記炎口形成用凸部が前方を向く不使用姿勢において前記被支持用挿通部に重なる回転規制用挿通部が形成され、前記不使用姿勢で両挿通部に挿通されたフック部と回転規制用挿通部の周縁部との接当によりフック部との係合状態で回転台座の回転を規制するように構成されている請求項1又は2記載のガス器具用清掃具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−10953(P2011−10953A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159190(P2009−159190)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000100850)アイセン工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】