説明

ガス圧縮プラントのエネルギー回収システム

【課題】プラントの1つ以上のコンプレッサがガス再循環状態で動作する時に発生するエネルギーの損失を有効な仕事へと少なくとも部分的に変換可能なガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムを構築すること。
【解決手段】或る一定の入口圧で吸引管14からガスを吸引可能、且つ、入口圧を上回る或る一定の出口圧で輸送管16を通してガスを輸送可能な少なくとも1つの遠心コンプレッサ10とを含むガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムにおいて、コンプレッサ10に入るガス流量が或る一定の限界値を下回る場合に、コンプレッサ10より下流に配置されるプラントの部分内に、少なくとも1つのターボエキスパンダ36と少なくとも1つの弁24が並列に設置されて、ターボエキスパンダと弁は互いに協働し、且つ、電子装置35によって制御されることによって、コンプレッサ10を保護し同時に有用なエネルギーを再循環モード中に生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムに関する。特に、ガス又は炭化水素類の輸送用パイプライン上での運転を意図されるシステムに関するが、これに限定はされない。
【0002】
周知のように、コンプレッサは圧縮性流体(ガス)の圧力を機械エネルギーの使用によって上昇させる機械である。産業分野の処理プラントに用いられる種々のコンプレッサの中で、いわゆる遠心コンプレッサがある。遠心コンプレッサにおいて、遠心インペラ又はホイールと呼ばれる部材の回転による遠心加速度の形態でエネルギーがガスに供給される。回転は、一般的にドライバ(電気モータ又は蒸気タービン)によって制御される。
【0003】
遠心コンプレッサは、いわゆる単段式においては1つのインペラを備え、又、いわゆる多段コンプレッサにおいては連続して設置された多数のインペラを備える。より正確には、遠心コンプレッサの各段は、圧縮前のガス用の吸引管と、運動エネルギーをガスに供給するインペラと、インペラの出口内のガスの運動エネルギーを圧縮エネルギーに変換するディフューザから成ることが一般的である。
【0004】
一方、別のタイプのコンプレッサにおいては、流体は1つ以上のピストンで圧縮される(ピストンは交互に動作しながら各自のシリンダ内を動く)。圧縮前の流体は1つ以上の吸引管を通ってシリンダ内に吸引され、圧縮された流体はシリンダから1つ以上の輸送管に向けて輸送される。通常、交互式コンプレッサの、1つ又は複数のピストンは電気モータ又は内燃エンジンによって、且つ、運動を伝達するクランクシャフトと既存のロッドクランク機構を経由して駆動される。
【0005】
遠心コンプレッサ又は軸流コンプレッサを1つ以上備えるガス圧縮プラントにおいて、いわゆるアンチサージシステムがしばしば存在する。アンチサージシステムは適切に設計及び寸法決めされて、ガス流量が非常に少ない場合でもコンプレッサを動作させる。実際、周知のようにコンプレッサへのガス流量は或る一定の限界値を下回ってはならない、もし下回る場合、コンプレッサはサージ状態で動作することとなる。
【0006】
サージとは、圧縮流量曲線がフラットになる点にコンプレッサが達した時に発生するガス流における不安定現象である。かかる動作状態から流量が更に減少する場合、下流の抵抗に対抗するのに十分な圧力をコンプレッサは創出出来ない。より正確には、コンプレッサの輸送圧が、コンプレッサより下流のプラント内の圧力よりも低い。この状態はガス流のコンプレッサ内の逆流を引き起こす可能性がある。流量の逆転によって誘発される振動と力のために、この状態は機械の機械的完全性に対して特に危険である。このため、アンチサージシステムは十分に高いガス流量の再循環を可能にすることによって、機械がサージ状態で動作することを防止する。
【0007】
アンチサージシステムには、コンプレッサより下流のプラントの部分内に設置されたリリーフ弁に加えて、両方とも閉じられたループ状の再循環パイプ、関連するアンチサージ弁も設けることも可能である。閉じられたループ状の再循環パイプを有する圧縮プラント内で、ガス流量が、サージ現象を引き起こす臨界値を下回って低下する場合、適切な弁がガスを再循環パイプへ通して輸送管から吸引管へ送り返す。コンプレッサによってガスに付与される働きはこのように再循環パイプの内部で消散されるが、主にアンチサージ弁によって消散される。また、生じた熱は通常冷却装置を用いて除去される。すなわち、コンプレッサが再循環状態で動作している場合、コンプレッサがガスに付与可能なヘッド(つまり圧力上昇)は再循環パイプ内で消散されるに違いない。通常、このことは、アンチサージ弁を開いてガス圧を低下させること、つまり、専門用語では「ガスを層化させる(“laminate” the gas)」ことによって起きる。
【0008】
もしアンチサージシステムがコンプレッサを通過するガスの全流量を再循環させると、関連する駆動モータによってコンプレッサに付与される全ての機械エネルギーは熱に変換されて、熱の除去はプラント内に存在する冷却装置によって助けられる。コンプレッサがサージ状態で動作するために必要なエネルギーはこのように失われるが、再利用される流量の割合に比例して失われる、これは再循環パイプ内のガスによって放出される熱は通常回収が困難なためである。
【0009】
実際、今日まで、コンプレッサが再循環状態で作動する時にエネルギー損失を部分的に低減させる唯一の方法は、アンチサージアルゴリズムに基づいて行動することによって再利用されるガスの量を最小限に抑えること、すなわち、再循環パイプ及び関連するアンチサージ弁の寸法を修正することによって、又は、コンプレッサの動作特性を、速度、可動ブレード等を変化させるためのシステムのような調節システムによって修正することによって再利用されるガスの量を最小限に抑えることである。いずれの場合でも、これらのシステムは、ガス又は炭化水素類を輸送するプラントに適用される時に、有効な最小流量を思い通りに減少させられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このため、本発明の一般的な目的は、先行技術の上述の問題を克服可能なガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムを構築することである。
【0011】
特に、本発明の目的は、プラントの1つ以上のコンプレッサがガス再循環状態で動作する時に発生するエネルギーの損失を有効な仕事へと少なくとも部分的に変換可能なガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムを構築することである。
【0012】
本発明の他の目的は、プラント自体の全体的な性能を改善可能であり、同時に燃料消費量及び熱排出量を低く抑えることが可能である(これらは全て温室効果の低減のためになる)ガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムを構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これら及び他の本発明の目的は、請求項1で概説されるようなガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムを構築することによって達成される。
【0014】
本発明の更なる特徴は従属請求項において強調されており、これらは本明細書の不可欠な部分である。
【0015】
本発明に係るガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムの特徴及び利点は以下の記述から(以下の記述は例として与えられるものであり限定する目的ではない)、そして添付の概略図を参照してより明らかとなるであろう。
【0016】
なお、各図面において、同じ番号は前の及び/又は後の図面の同じシステム又は構成要素に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】先行技術によって構築されるガス圧縮プラントの全くの概略図である。
【図2】本発明によるエネルギー回収システムの第1実施形態を備えるガス圧縮プラントの全くの概略図である。
【図3】本発明によるエネルギー回収システムの第2実施形態を備えるガス圧縮プラントの全くの概略図である。
【図4】本発明によるエネルギー回収システムの構成要素の縦断面における概略図である。
【図5】本発明によるエネルギー回収システムを備えるガス圧縮プラント内に設置可能な一般的な遠心コンプレッサの性能曲線を示す図である。
【図6】本発明によるエネルギー回収システムの第3実施形態を備えるガス圧縮プラントの全くの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、先行技術による一般的なガス圧縮プラントを概略的に示す。このプラントは特に、ガス又は炭化水素類を輸送するパイプライン用で、且つ、ガス再循環モードで頻繁に動作するように設計されたタイプのものである。
【0019】
図1のプラントは少なくとも1つのコンプレッサ10を備える。コンプレッサ10は一般的に遠心式で、適宜のモータ又はドライバ12で制御される。これにより、コンプレッサ10は或る一定の入口圧で吸引管14からガスを吸引可能、且つ、入口圧を上回る或る一定の出口圧で輸送管16を通してガスを輸送可能である。輸送管16に沿って冷却装置30が有ることが予測されるが、冷却装置30の機能は必要な場合に出口内のガス温度を低下させることである。
【0020】
もし輸送管16内のガス圧が、コンプレッサ10に入るガス自体の著しく低い流量により、輸送管16より下流のプラント内の圧力よりも低い場合、プラント内に少なくとも1つのガス再循環システムが有るだろう、ガス再循環システムは、コンプレッサ10のすぐ下流に設置される輸送管16から吸引管14へガスの方向を変更可能であることによって(恐らくはプラント自体のガス出口が閉じられた後に方向が変更される)、いわゆるサージング不安定現象の発生が防止される。
【0021】
より正確には、図1に示されるように、第1ガス再循環システムAは第1再循環パイプ18によって図式化される。第1再循環パイプ18は、冷却装置30より下流の輸送管16上に配置された入口点20を有する。これにより、第1再循環パイプ18はコンプレッサ10の出口内の低圧ガスを吸引管14へ、モータ12より上流に配置される出口点22を通して再導入する。
【0022】
第1再循環パイプ18上に、ガスの層流化が可能な、つまり、パイプ18を通過中のガスの圧力を更に低下させることが可能な少なくとも1つのアンチサージ弁24が有る。再循環システムAは、プラントのガス出口を閉じるために適した第1ブロウオフ弁21もまた備える。
【0023】
図1のプラント内に、第2再循環パイプ26から成る第2ガス再循環システムB(破線で図示)も有る。第2再循環パイプ26は、冷却装置30より上流の輸送管16上に配置された入口点28を有する。これにより、第2再循環パイプ26はコンプレッサ10の出口内の低圧ガスを吸引管14へ、第1再循環パイプ18の出口点22より下流に設置された出口点32を通して再導入する。更に、第2再循環パイプ26は、ガスの層流化が可能な、つまり、このパイプ26を通過中のガスの圧力を更に低下させることが可能な少なくとも1つのアンチサージ弁34を備える。
【0024】
なお、第1ガス再循環システムAは、第2ガス再循環システムBを必要としないプラント内に有ることも予測されうる。
【0025】
図2の本発明の実施形態によると、コンプレッサ10より下流に配置されるプラントの部分内に、より正確には再循環システムA内にターボエキスパンダ36がアンチサージ弁24と並列に設置される。ターボエキスパンダ36は専用の吸引管40と専用の輸送管42を備える。ターボエキスパンダ36とアンチサージ弁24は協働し、電子装置35によって制御される。電子装置35は、ガス流量とコンプレッサ10の動作状態に従って、ターボエキスパンダ36とアンチサージ弁24を駆動するのに適している。ターボエキスパンダ36は、特定の構造要件又は使用要件に従って、別の再循環システム、例えばシステムB内に、上述の方法と完全に同様の方法で設置されることも可能であろう。
【0026】
このため、上述のような場合、プラントが正常に運転している間は、弁24が閉じており再循環回路Aは休止している。回収ステップの間、プラントより下流にある第1ブロウオフ弁21が出口内の流れを閉じる一方、弁24が再循環システムAを開く。再循環が安定するとすぐに、弁24が徐々に閉じて流量をターボエキスパンダ36に移す(この詳細については後述する)。このため、この場合、冷却装置30によってガスが予防的に冷却された時点で、ターボエキスパンダ36はガスによって作動される。
【0027】
具体的には、電子装置35は、(弁24を開くとともに弁21を閉じることによって)再循環システムAを、適切なセンサS1、S2、S3によって測定された流体流量変動に従って作動させることに適している。センサS1、S2、S3は、コンプレッサ10の吸引管14及び輸送管16上の適切な位置にそれぞれ設置される。このように、再循環システムAを作動させることが、コンプレッサ10の動作状態が限界に近付く時に可能である。
【0028】
再循環モードの初期ステップの間、センサS1、S2、S3により得られた圧力値及び流量値に基づいて、弁24は必要時間の間、開いたままとなり、コンプレッサ10の動作に基づくガスの再循環を安定させる。再循環が安定するとすぐに、弁24が徐々に閉じてターボエキスパンダ36にヘッドを移す。
【0029】
それと同時に、電子装置35は調節可能な入口案内翼50(ターボエキスパンダ46内に取り付けられている)の傾きを徐々に修正して、ターボエキスパンダ46内へのガス流量を最適化する(図4に関連した後述の説明も参照のこと)。「入口案内翼(inlet guide vanes)」50、つまり、IGVは電子装置35によって制御可能であり、制御には図2において参照符号50Aで全体的に示されるハイドロニューマチック回路が用いられる。
【0030】
再循環モード動作時に、コンプレッサ10によってガスに付与される機械的圧力エネルギーは、これにより熱として完全に放散される代わりに少なくとも部分的に回収されるが、これは機械力を生み出すことが可能なターボエキスパンダ36内でガス自体が膨張させられるためである。
【0031】
ターボエキスパンダ36は発電機38と機械的に結合可能であり、これによってターボエキスパンダ36自体によって生み出される機械エネルギーは電気エネルギーに変換される。このような電気エネルギーは、例えば圧縮プラントに接続された機械類の駆動に用いられたり、直接に送電系統へ供給されたりする。
【0032】
図3は、本発明によるシステムの変更形態を備える図2のプラントを示す。プラントはターボエキスパンダ46と第2ブロウオフ弁33を特に備え、ターボエキスパンダ46と第2ブロウオフ弁33は互いに協働し、互いに並列に設置されて、冷却装置30より上流のコンプレッサ10の輸送管16に接続される。詳細には、ターボエキスパンダ46は吸引管46Aと輸送管46Bを有し、第2ブロウオフ弁33は吸引管33Aと輸送管33Bを有する。吸引管46Aと33Aはコンプレッサ10より下流に設置され、輸送管46Bと33Bは冷却装置30より上流に設置されている。
【0033】
なお、この場合、第2ブロウオフ弁33は輸送管16を開閉するために作動するが、プロセスガスを層流化するために作動しない。このため、プラントの通常運転の間は、プロセス流体は管33Aと33Bを通過するが、これは第2ブロウオフ弁33が通常開いているためである。逆に、回収モードの間は、第1ブロウオフ弁21が閉じて、そして、再循環が安定された時に、第2ブロウオフ弁33が徐々に閉じて、図2のプラントを参照しつつ上述された方法と完全に同様な方法で、流量をターボエキスパンダ46に移す。
【0034】
ターボエキスパンダ36又は46のいずれも、周知の構造に基づいて単段式であっても多段式であっても良い。図4は、純粋に例として示される単段式のターボエキスパンダ36(又は46)の断面図を示す。ターボエキスパンダ36はステータケーシング44で構成される。ケーシング44上に少なくとも1つの分配配管44Aが形成されており、ケーシング44は吸引管40(又は46A)から入るガスをインペラ48に向けて輸送するために適している。
【0035】
「調節可能な入口案内翼(adjustable inlet guide vanes)」50、専門用語ではこのように知られるが、つまりIGVは分配配管44A内のインペラ48に向けて輸送されるガスの流量を調節するために適しており、1つ以上の調節可能な入口案内翼50をステータケーシング44に固定的に取り付けることが予測されうる。本発明の特に有利な実施形態として、調節可能な入口案内翼50は、適切な電子制御手段35によって、層化弁24又は第2ブロウオフ弁33と協働的に制御される。インペラ48は、発電機38に接続するシャフト54を、トランスミッション群52を経由して回転させる。このようにしてインペラ48の出口内のガスが分岐管56を通って輸送される。
【0036】
別の実施態様によると、本発明は、本発明のエネルギー回収システムを備えるガス圧縮プラントに関する。
【0037】
また別の実施態様によると、本発明は、ガス圧縮プラント内の、再循環モード時におけるエネルギー回収方法に関する。この方法は、コンプレッサ10より下流で並列に接続される、ターボエキスパンダ36又は46と、層化弁24又は第2ブロウオフ弁33を少なくとも設置するステップと;ガス流量とコンプレッサ10の動作状態に従って、層化弁24又は第2ブロウオフ弁33と、ターボエキスパンダ36又は46を作動させるステップが少なくとも含む。
【0038】
更に、再循環モード時には、プラントの出口はブロウオフ弁21によって閉じられる。
【0039】
有利には、第1ブロウオフ弁21と、層化弁24又は第2ブロウオフ弁33とを作動させることによって、予め設定可能なパラメータに従ってコンプレッサ10の動作状態P1(図5)が限界動作状態P2に達することを防ぐ。これについては後に詳述する。
【0040】
本発明の有利な実施形態において、弁24又は33を作動させるステップは第1サブステップを提供する、第1サブステップ内において、弁24又は33は徐々に閉じられて、ターボエキスパンダ36又は46にヘッドを移す。この第1サブステップの間、ターボエキスパンダ36又は46の入口案内翼50の傾きを徐々に修正することが出来ることによってガス流量を制御する。
【0041】
有利には上述の作動ステップは初期サブステップを提供する、初期サブステップにおいて層化弁24が完全に開かれることによって、ガスが通過させられ、且つ、再循環システムを安定させる。
【0042】
この代わりに、初期ステップにおいて、第2ブロウオフ弁33が通常開かれることも可能であり、これによってプラントの通常運転の間ガスを通過させる。
【0043】
図5は一般的な遠心コンプレッサの「性能マップ(performance map)」を概略的に示す。図において、流量QをX軸に、圧縮比P/PをY軸にとり、これらより、流体の任意の状態に対して一定の回転数を有する、特性曲線V1、V2、V3、並びに、サージ限界線SLLとサージ制御線SCLが求められる。
【0044】
なお、限界線SLLを超えると(図5の左側)、コンプレッサはサージ状態で動作する。これにより、コンプレッサ10の動作状態P1は、制御線SCL上に配置される動作状態P2まで安全に変動することが出来るが、制御線SCLを超えると(図5の左側)、コンプレッサ10はもはや安全に動作しない。更に、限界線SLLを超えると(点P3)、コンプレッサ10はサージ状態で動作しており損傷の可能性がある。
【0045】
有利には、電子装置35が流体の動作状態P1を連続的に検出し、且つ、本発明による回収システムを作動させて、もしそのような状態が制御線SCL(点P2)に近付く場合、動作状態を安全値の範囲内に戻し、それによって、コンプレッサ10を保護し同時に有益なエネルギーを生成する。
【0046】
最後に、図6は本発明の更なる実施形態を示す。この図において、コンプレッサ10より下流且つ冷却装置30より上流に配置されるプラントの部分に、ターボエキスパンダ136が設置され、ターボエキスパンダ136はアンチサージ弁24に対して並列である。
【0047】
具体的には、ターボエキスパンダ136は入口管136Aと出口管136Bを有する。入口管136Aは、コンプレッサ10と冷却装置30の間の輸送管16と流体連通し、出口管136Bは、弁24より下流で再循環パイプ18と流体連通している。出口管136B内で、追加的な冷却装置130によって流体を冷却することが予測出来る。この場合でも、ターボエキスパンダ136と弁24はお互いに協働し、電子装置35によって制御される。電子装置35は、ガス流量とコンプレッサ10の動作状態に従って、ターボエキスパンダ136と弁24を駆動するために用いられる。
【0048】
プラントの通常運転の間、弁24が閉じられて、再循環回路Aは作動しない。回収ステップの間、プラント下流の第1ブロウオフ弁21が出口のガス流を閉じる一方、弁24が再循環システムAを開く。再循環が安定するとすぐに、弁24が徐々に閉じてガス流量をエキスパンダ136に移す。このため、この場合、ターボエキスパンダ136は冷却装置30によって冷却される前のガスによって作動される。
【0049】
具体的に、この場合でも、電子装置35が再循環システムAを作動させるために用いられ、作動は弁24を開いて弁21を閉じることによって、且つ、センサS1、S2、S3によって測定された流体の流量変動に従って行われる。センサS1、S2、S3はコンプレッサ10の吸引管14と輸送管16上の適切な位置に設置される。
【0050】
再循環モードの初期ステップの間、弁24は所要時間(一般的に、上述のセンサS1、S2、S3で検出した圧力と流量の変動を調べることによる)開いたままであり、これによってコンプレッサ10の動作に従ってガスの再循環を安定させる。再循環が安定するとすぐに、弁24は徐々に閉じて負荷をターボエキスパンダ136に移す。同時に電子装置35はターボエキスパンダ136の調節可能な入口案内翼150の傾きを、ハイドロニューマチック回路50Aを用いて徐々に修正させることによって、この機器内のガス流量を最適化させる。
【0051】
本発明による回収システムによって、他の方法では圧縮プラントのガス再循環システム内で失われたであろうエネルギーを70%まで回収出来る。このようなエネルギー(コンプレッサ10によってガスが受けるエンタルピーから成る)は、最初にターボエキスパンダ36、46、又は、136によって機械エネルギーに変換された後、発電機38によって有益な電気エネルギーに変換される。
【0052】
従って、本発明によるガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムは、前述において強調された目的を達成し、ガス再循環モードでしばしば動作するコンプレッサと連結される時に特に効果的であることが分る。
【0053】
以上のように着想された本発明のガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムは多数の修正及び変形を受けることが可能であるが、そのいかなる場合においても、その全ては同じ発明概念に含まれる。更に、全ての細部は技術的に等価の構成要素によって交換可能である。実施において、形状と寸法と同様に採用される材料もまた技術的要求に従って任意である。
【0054】
従って、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る一定の入口圧で吸引管(14)からガスを吸引可能、且つ、前記入口圧を上回る或る一定の出口圧で輸送管(16)を通してガスを輸送可能な少なくとも1つのコンプレッサ(10)と、
前記コンプレッサ(10)に入るガス流量が或る一定の限界値を下回る場合に、前記輸送管(16)から前記吸引管(14)へガスの方向の変更が可能な少なくとも1つのガス再循環システム(A、B)を有する、ガス圧縮プラント内のエネルギー回収システムであって、
前記コンプレッサ(10)より下流に配置されるプラントの部分内に、少なくとも1つのターボエキスパンダ(36、46、136)と少なくとも1つの弁(24、33)が並列に設置されて、前記ターボエキスパンダと前記弁は互いに協働し、且つ、電子装置(35)によって制御されることによって、前記コンプレッサ(10)を保護し同時に有用なエネルギーを再循環モード中に生成することを特徴とする、ガス圧縮プラント内のエネルギー回収システム。
【請求項2】
前記弁(24、33)は前記再循環システム(A、B)のアンチサージ弁(24)であるか、又は、前記コンプレッサ(10)より下流に配置される前記プラントの前記部分内のガス流を調整するために適切なブロウオフ弁(33)であることを特徴とする、請求項1に記載の回収システム。
【請求項3】
前記弁(24、33)は、再循環が安定するとすぐに、負荷を前記ターボエキスパンダ(36、46、136)に徐々に移すために適していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の回収システム。
【請求項4】
前記ターボエキスパンダ(36、46、136)は調節可能な入口案内翼(50、150)を有し、前記入口案内翼の傾きは、前記弁(24、33)によって行われる負荷移転に従って修正出来ることを特徴とする、請求項1に記載の回収システム。
【請求項5】
前記ブロウオフ弁(33)と前記ターボエキスパンダ(46)が前記コンプレッサ(10)の前記輸送管(16)と流体連通するように、前記輸送管(16)に沿って設置される冷却装置(30)より上流に設置されることを特徴とする、請求項2に記載の回収システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の前記エネルギー回収システムを少なくとも1つ有することを特徴とするガス圧縮プラント。
【請求項7】
並列に接続された少なくとも1つのターボエキスパンダ(36、46、136)と少なくとも1つの弁(24、33)を、少なくとも1つのコンプレッサ(10)より下流に配置されるプラントの部分内に設置するステップと、
前記弁(24、33)と前記ターボエキスパンダ(36、46、136)を、ガス流量と前記少なくとも1つのコンプレッサ(10)の動作状態に従って作動させるステップを少なくとも含む、ガス圧縮プラント内の再循環モード中のエネルギー回収方法。
【請求項8】
前記弁(24)が作動されて再循環システム(A、B)を開くことによって、前記少なくとも1つのコンプレッサ(10)の動作状態(P1、P2、P3)が限界動作状態(P2)に達することを防止することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記弁(24、33)を作動させる前記ステップが第1サブステップを提供し、前記第1サブステップにおいて、前記弁(24、33)が徐々に閉じられることによって、負荷を前記ターボエキスパンダ(36、46、136)に向けて徐々に移すことを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記弁(24、33)と前記ターボエキスパンダ(36、46、136)を作動させる前記ステップがサブステップを提供し、前記サブステップは前記ターボエキスパンダ(36、46、136)の入口案内翼(50、150)の傾きを徐々に修正することによって、前記弁(24、33)によって前記ターボエキスパンダ(36、46、136)内で徐々に輸送されるガス流量を制御することを特徴とする、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記弁(24、33)と前記ターボエキスパンダ(36、46、136)を作動させる前記ステップが初期サブステップを提供し、前記初期サブステップにおいて、層化弁(24)が開かれることによって、ガスが前記再循環システム(A、B)内を通過させられることを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−281314(P2010−281314A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−97456(P2010−97456)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(505347503)ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ (112)
【Fターム(参考)】