説明

ガス弁装置

【課題】バルブケーシング1内に直列に配置した電磁安全弁2及び開閉弁3と、バルブケーシングに挿入される操作ロッド4とを備え、操作ロッドの往動方向への移動で電磁安全弁を押圧開弁するガス弁装置において、操作ロッドが電磁安全弁を押圧開弁する往動位置にロックしたときのフェールセーフを図ることができるようにする。
【解決手段】操作ロッド4の往動方向への移動で電磁安全弁2を押圧開弁する際は、開閉弁3が閉弁状態に保持され、往動位置から操作ロッド4を復動方向に移動させる際に、開閉弁3が開弁されるようにする。また、電磁安全弁2の閉弁を妨げない位置まで操作ロッド4が復動方向に移動したところで開閉弁3が開弁され始めるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ等のガス器具で使用するガス弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガス弁装置として、バルブケーシング内に直列に配置した電磁安全弁及び開閉弁と、バルブケーシングに挿入される操作ロッドとを備え、操作ロッドの軸方向一方を往動方向、他方を復動方向として、操作ロッドの往動方向への移動で電磁安全弁を押圧開弁するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
尚、電磁安全弁は、弁座と、弁座に着座可能な弁体と、電磁石とを備えており、弁体には、電磁石に対向する吸着片が連結されている。そして、弁体を吸着片が電磁石に当接するまで開き側に押動させた状態で電磁石に通電することにより、電磁安全弁が開弁状態に保持され、バーナ失火時に電磁石への通電を停止することにより電磁安全弁が閉弁して、ガスの流出が防止される。上記「電磁安全弁を押圧開弁する」とは、弁体を開き側に押動させることを意味する。
【0004】
ところで、上記従来例のものにおいて、開閉弁は、バルブケーシングに対し固定の弁座と、操作ロッドに固定され、弁座の往動方向側の端面に着座可能な弁体とを備えている。そして、操作ロッドを往動方向に移動させたとき、開閉弁の弁座から弁体が往動方向に離れて、開閉弁が開弁する。そのため、上記従来例のものでは、以下の不具合を生ずる。即ち、操作ロッドがゴミ噛み等により電磁安全弁を押圧開弁する往動位置にロックした場合、電磁安全弁が電磁石への通電を停止しても開弁状態のままになる。そして、操作ロッドの往動位置では開閉弁が開弁しているため、バーナ失火時にガスの流出を防止できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−44825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、操作ロッドが往動位置にロックしたときのフェールセーフを図ることができるようにしたガス弁装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バルブケーシング内に直列に配置した電磁安全弁及び開閉弁と、バルブケーシングに挿入される操作ロッドとを備え、操作ロッドの軸方向一方を往動方向、他方を復動方向として、操作ロッドの往動方向への移動で電磁安全弁を押圧開弁するガス弁装置において、操作ロッドの往動方向への移動で電磁安全弁を押圧開弁する際は、開閉弁が閉弁状態に保持され、電磁安全弁を押圧開弁する往動位置から操作ロッドを復動方向に移動させる際に、開閉弁が開弁されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、操作ロッドが往動位置にロックしても、開閉弁は開弁されていないため、ガスは流出しない。従って、操作ロッドが往動位置にロックしたときのフェールセーフを図ることができる。
【0009】
また、本発明においては、電磁安全弁の閉弁を妨げない位置まで操作ロッドが復動方向に移動したところで開閉弁が開弁され始めるようにすることが望ましい。これによれば、開閉弁の開弁を生ずる復動位置で操作ロッドがロックしても、電磁安全弁への通電停止することにより、電磁安全弁が操作ロッドで妨げられることなく閉弁し、ガスの流出を防止できる。
【0010】
尚、操作ロッドを往動位置から復動方向に移動させる際に開閉弁を開弁させる具体的な構造例としては以下のものが挙げられる。即ち、開閉弁が、バルブケーシングに対し固定の弁座と、この弁座の復動方向側の端面に着座可能な弁体とを備え、操作ロッドは、開閉弁の弁体に対し往動方向に相対移動自在であって、操作ロッドに、開閉弁の弁体の往動方向側の端面に当接可能な当接部が設けられ、操作ロッドを往動位置から復動方向に移動させる際に、開閉弁の弁体が当接部に押されて復動方向に移動し、開閉弁が開弁されるようにすることである。
【0011】
また、開閉弁が、バルブケーシングに対し可動であって、操作ロッドと一緒に動く弁座と、この弁座の往動方向側の端面に着座可能な弁体とを備え、この弁体に電磁安全弁用のロッド部が固定され、操作ロッドの往動方向への移動で、開閉弁の弁体が弁座に押されて往動方向に移動して、電磁安全弁がロッド部を介して押圧開弁され、操作ロッドを往動位置から復動方向に移動させる際に、開閉弁の弁座が弁体から復動方向に離れて、開閉弁が開弁されるようにしてもよい。
【0012】
また、以上の構造例において、開閉弁の弁体は、弁座に開設した弁孔を閉塞するように弁座に着座する主弁体部と、弁孔に挿入されるニードル弁状の副弁体部とを備えることが望ましい。これによれば、副弁体部によってガス流量を調節でき有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態のガス弁装置の断面図。
【図2】第1実施形態のガス弁装置の作動説明図。
【図3】本発明の第2実施形態のガス弁装置の断面図。
【図4】第2実施形態のガス弁装置の作動説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、本発明の実施形態のガス弁装置は、前後方向(図1で左右方向)に長手の筒状のバルブケーシング1と、バルブケーシング1内の後部に配置した電磁安全弁2と、バルブケーシング1内の電磁安全弁2の前方部分に、電磁安全弁2と直列に配置した開閉弁3と、バルブケーシング1内に前方から挿入される前後方向に長手の操作ロッド4と、バルブケーシング1の前端に取り付けたボックス11の前面に搭載される電動モータ5とを備えている。
【0015】
電動モータ5の出力軸51にはナット52が固定されており、このナット52に操作ロッド4の前端部に形成した雄ねじ部41を螺入している。そして、電動モータ5の正逆転で操作ロッド4がその軸方向(前後方向)に往復動されるようにしている。以下の説明では、操作ロッド4の軸方向一方(後方)を往動方向、軸方向他方(前方)を復動方向と記す。
【0016】
バルブケーシング1には、電磁安全弁2の上流側に位置するガス流入口1aと、開閉弁3の下流側に位置するガス流出口1bとが開設されている。そして、電磁安全弁2と開閉弁3とが共に開弁したとき、ガス流入口1aからガス流出口1bにガスが流れ、図示省略したコンロ等のガス器具のバーナにガスが供給される。
【0017】
電磁安全弁2は、バルブケーシング1に対し固定の弁座21と、この弁座21の往動方向側端面(後端面)に着座可能な弁体22と、弁体22を弁座21に着座する閉弁位置に付勢する弁ばね23と、弁体22に往動方向にのびる弁軸22aを介して連結した吸着片24と、吸着片24に対向する電磁石25とを備えている。弁座21には、弁体22が着座することによって閉塞される弁孔21aと、操作ロッド4が摺動自在に挿通される花弁状ガイド部21bとが形成されている。操作ロッド4を往動方向に移動させると、操作ロッド4が弁体22に当接して、弁体22が往動方向、即ち、弁座21から離隔する開き側に押動され、電磁安全弁2が押圧開弁される。そして、吸着片24が電磁石25に当接する位置まで弁体22を押動させた状態で電磁石25に通電することにより開弁状態に保持される。バーナに付設する火炎検知素子によりバーナの失火が検知されたときは、電磁石25への通電を停止し、弁体22を弁ばね23により閉弁位置に復帰させて電磁安全弁2を閉弁し、ガスの流出を防止する。
【0018】
開閉弁3は、バルブケーシング1に対し固定の弁座31と、この弁座31の復動方向側の端面(前端面)に着座可能な弁体32と、弁体32を弁座31に着座する閉弁位置に付勢する弁ばね33とを備えている。弁体32は、弁座31に開設した弁孔31aを閉塞するように弁座31に着座する主弁体部32aと、弁孔31aに挿入されるニードル弁状の副弁体部32bとを備える。
【0019】
尚、本実施形態では、電磁安全弁2の弁座21と開閉弁3の弁座31とを一体化しているが、両弁座21,31を分離して設けることも可能である。また、本実施形態では、弁ばね33のばね受部を操作ロッド4に形成しているが、ばね受部はバルブケーシング1に設けてもよい。
【0020】
ここで、操作ロッド4は、開閉弁3の弁体32に摺動自在に挿通されて、弁体32に対し往動方向に相対移動自在である。また、操作ロッド4には、弁体32の往動方向側の端面(副弁体部32bの後端面)に当接可能なスナップリングから成る当接部42が設けられている。当接部42の設置位置は、操作ロッド4が電磁安全弁2の閉弁を妨げない位置(電磁安全弁2の弁座21の往動方向側端面から操作ロッド4の端部が突出しない位置)まで復動方向に移動したところで、当接部42が弁体32に当接するように設定されている。
【0021】
以上の構成によれば、操作ロッド4の往動方向への移動で電磁安全弁2を押圧開弁する際は、図2(a)に示す如く、開閉弁3が閉弁状態に保持される。そして、電磁安全弁2を押圧開弁する往動位置から操作ロッド4を復動方向に移動させる際に、図2(b)に示す如く、開閉弁3の弁体32に当接部42が当接して、以後、弁体32が当接部42に押されて復動方向に移動し、弁体32の主弁体部32aが弁座31から離れて、開閉弁3が開弁される。更に、電動モータ5により操作ロッド4の位置を調節することで、副弁体部32bによるガス流量の調節が行われる。
【0022】
ここで、本実施形態では、操作ロッド4が電動モータ5の故障やゴミ噛み等で往動位置にロックしても、往動位置では開閉弁3が開弁されていないため、ガスは流出しない。従って、操作ロッド4が往動位置にロックしたときのフェールセーフを図ることができる。また、本実施形態では、操作ロッド4が電磁安全弁2の閉弁を妨げない位置まで復動方向に移動したところで、当接部42が弁体32に当接して、開閉弁3が開弁され始めるようにしている。従って、操作ロッド4が開閉弁3の開弁を生ずる位置でロックしても、電磁安全弁2の電磁石25への通電を停止することにより、電磁安全弁2の弁体22が弁座21に着座する閉弁位置に操作ロッド4で邪魔されることなく復帰し、ガスの流出を防止できる。
【0023】
次に、図3に示す第2実施形態について説明する。第2実施形態のガス弁装置は、開閉弁3を除いて、上記第1実施形態のものと同様の構造であり、第1実施形態と同様の部材、部位に上記と同一の符号を付している。
【0024】
第2実施形態において、開閉弁3は、バルブケーシング1に対し可動の弁座31と、この弁座31の往動方向側の端面(後端面)に着座可能な弁体32と、弁体32を弁座31に着座する閉弁位置に付勢する弁ばね33と、弁体32に固定された往動方向にのびる電磁安全弁2用のロッド部34とを備える。弁座31は、ばね35で復動方向に付勢され、弁座31の復動方向側端部(前端部)に突設した筒状連結部31bにおいて操作ロッド4の往動方向側の先端に当接している。従って、弁座31は、操作ロッド4と一緒に往動方向及び復動方向に動く。尚、筒状連結部31bの周面には、ガスが流れる開口31cが開設されている。
【0025】
ロッド部34は、電磁安全弁2の弁座21から復動方向に突出する、コーン状のガイド26に挿入されている。また、ロッド部34の外周には、ガイド21aの復動方向側端部(前端部)の内径よりも大径のストッパ34aが設けられている。そして、ロッド部34が電磁安全弁2の閉弁を妨げない位置(電磁安全弁2の弁座21の往動方向側端面からロッド部34の端部が突出しない位置)まで復動方向に移動したところで、ストッパ34aがガイド26の端部に当接して、弁体32の復動方向への移動が規制されるようにしている。
【0026】
尚、ガイド26の周面には、ガスが流れる開口26aが開設されている。また、開閉弁3の弁体32は、上記第1実施形態と同様に、弁座31に開設した弁孔31aを閉塞するように弁座31に着座する主弁体部32aと、弁孔31aに挿入されるニードル弁状の副弁体部32bとを備える。
【0027】
第2実施形態によれば、操作ロッド4を往動方向に移動させると、図4(a)に示す如く、開閉弁3の弁体32が弁座31に押されて往動方向に移動して、電磁安全弁2がロッド部34を介して押圧開弁される。そして、上記第1実施形態と同様に、電磁安全弁2を押圧開弁する操作ロッド4の往動位置では開閉弁3が開弁されないため、操作ロッド4が往動位置にロックしたときのフェールセーフを図ることができる。
【0028】
次に、操作ロッド4を往動位置から復動方向に移動させると、開閉弁3の弁体32は、ストッパ34aで規制される所定位置まで弁座31に着座したまま復動方向に移動するが、その後は、図4(b)に示す如く、弁座31が弁体32の主弁体部32aから復動方向に離れて、開閉弁3が開弁される。以後、電動モータ5により操作ロッド4の位置を調節することで、副弁体部32bによるガス流量の調節が行われる。
【0029】
また、開閉弁3の弁体32の復動方向への移動がストッパ34aで規制される所定位置では、ロッド部34が電磁安全弁2の閉弁を妨げない位置まで移動している。そのため、第2実施形態においても、電磁安全弁2の閉弁を妨げない位置まで操作ロッド4が復動方向に移動したところで開閉弁3が開弁され始めることになる。従って、操作ロッド4が開閉弁3の開弁を生ずる位置でロックしても、電磁安全弁2の電磁石25への通電を停止することにより、電磁安全弁2の弁体22が弁座21に着座する閉弁位置にロッド部34で邪魔されることなく復帰し、ガスの流出を防止できる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、操作ロッド4を電動モータ5により往動方向及び復動方向に移動させるようにしたが、操作ロッド4を手動操作で移動させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、開閉弁3の弁体32に主弁体部32aと副弁体部32bとを設けて、開閉弁3に開閉機能と流量調節機能とを持たせたが、弁体32の副弁体部32bを省略して、開閉機能のみを有する開閉弁とすることも可能である。
【0031】
更に、上記実施形態では、電磁安全弁2を開閉弁3と同一軸線上に配置したが、バルブケーシングをL字形又はU字形の屈曲形状に形成して、電磁安全弁2を開閉弁3の軸線に直交又は平行な軸線上に配置することも可能である。この場合、操作ロッド4やロッド部34の往動方向側の端部に対向する一端部と、電磁安全弁に対向する他端部とを有し、中間部で揺動自在に軸支される揺動部材を設け、この揺動部材を介して電磁安全弁が押圧開弁されるようにする。
【符号の説明】
【0032】
1…バルブケーシング、2…電磁安全弁、3…開閉弁、31…弁座、31a…弁孔、32…弁体、32a…主弁体部、32b…副弁体部、34…ロッド部、4…操作ロッド、42…当接部。



































【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブケーシング内に直列に配置した電磁安全弁及び開閉弁と、バルブケーシングに挿入される操作ロッドとを備え、操作ロッドの軸方向一方を往動方向、他方を復動方向として、操作ロッドの往動方向への移動で電磁安全弁を押圧開弁するガス弁装置において、
操作ロッドの往動方向への移動で電磁安全弁を押圧開弁する際は、開閉弁が閉弁状態に保持され、電磁安全弁を押圧開弁する往動位置から操作ロッドを復動方向に移動させる際に、開閉弁が開弁されることを特徴とするガス弁装置。
【請求項2】
前記電磁安全弁の閉弁を妨げない位置まで前記操作ロッドが復動方向に移動したところで前記開閉弁が開弁され始めることを特徴とする請求項1記載のガス弁装置。
【請求項3】
前記開閉弁は、前記バルブケーシングに対し固定の弁座と、この弁座の復動方向側の端面に着座可能な弁体とを備え、
前記操作ロッドは、開閉弁の弁体に対し往動方向に相対移動自在であって、操作ロッドに、開閉弁の弁体の往動方向側の端面に当接可能な当接部が設けられ、操作ロッドを前記往動位置から復動方向に移動させる際に、開閉弁の弁体が当接部に押されて復動方向に移動し、開閉弁が開弁されることを特徴とする請求項1又は2記載のガス弁装置。
【請求項4】
前記開閉弁は、前記バルブケーシングに対し可動であって、前記操作ロッドと一緒に動く弁座と、この弁座の往動方向側の端面に着座可能な弁体とを備え、この弁体に前記電磁安全弁用のロッド部が固定され、
操作ロッドの往動方向への移動で、開閉弁の弁体が弁座に押されて往動方向に移動して、電磁安全弁がロッド部を介して押圧開弁され、操作ロッドを前記往動位置から復動方向に移動させる際に、開閉弁の弁座が弁体から復動方向に離れて、開閉弁が開弁されることを特徴とする請求項1又は2記載のガス弁装置。
【請求項5】
前記弁体は、前記弁座に開設した弁孔を閉塞するように弁座に着座する主弁体部と、弁孔に挿入されるニードル弁状の副弁体部とを備えることを特徴とする請求項3又は4記載のガス弁装置。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68355(P2013−68355A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206951(P2011−206951)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】