説明

ガス成分分析装置

【課題】分離手段および半導体ガスセンサが設けられた測定流路にキャリアガスを流通させ、測定流路に試料ガスを供給して半導体ガスセンサで各成分を検知する際、試料ガスの供給時に検出流路におけるガス流量の変動を抑制して半導体ガスセンサの検知出力のベースラインに乱れが生じることを抑制し、正確な測定を行うガス成分分析装置を提供する。
【解決手段】分離手段および半導体ガスセンサを有すると共に始端側からキャリアガスが供給される測定流路と、測定流路に試料ガスを供給する供給手段と、供給手段による測定流路への試料ガスの供給を阻止する供給停止状態および前記供給手段による測定流路への試料ガスの供給を許容する供給状態とを切り替える切替手段とを備え、測定流路に、半導体ガスセンサ出力を安定化させる所定量のキャリアガスを貯留するバッファ手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ガスを分離手段に通過させて含有成分ごとに分離した後、半導体ガスセンサ等からなる検出器で各成分を検知するガス成分分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例えば変圧器、リアクトル、コンデンサ等の電気機器に使用される絶縁油の劣化測定を行うにあたっては、図6に示すようなガス成分分析装置を用いることで、絶縁油中に溶存しているガスの成分を測定し分析することが行われている。
【0003】
図6に示すガス成分分析装置では、抽出流路101と、採取流路102と、キャリアガス流路103aおよび検出流路103bからなる測定流路103とが設けられており、抽出流路101、採取流路102、キャリアガス流路103aおよび検出流路103bは、一つの六方弁127を介して接続されている。抽出流路101には採取された絶縁油を貯留する抽出容器109およびエアポンプ126が設けられている。また、採取流路102には検量管104が設けられている。また、検出流路103bには、分離カラムからなる分離手段105とガス検出器106とが順次設けられている。
【0004】
このガス成分分析装置では、まず抽出流路101と採取流路102とが連通すると共にキャリアガス流路103aと検出流路103bとが連通するように六方弁127を制御する。この状態でエアポンプ126を作動させると、絶縁油に溶存しているガスが抽出容器109内でエアバブリングにより試料ガスとして抽出され、この試料ガスが検量管104に流入する。一方、検出流路103bにはキャリアガス流路103aからエア等のキャリアガスを供給する。
【0005】
検量管104内に試料ガスが充分に採取されたら、六方弁127を制御して、キャリアガス流路103a、採取流路102、検出流路103bを順次連通する。このとき検量管104内の試料ガスはキャリアガスと混合され検出流路103bに送られる。この試料ガスは分離カラム等からなる分離手段105を通過することにより流動遅延を生じ、試料ガス中の各成分がそのリテンションタイムに応じて分離され、各成分が分離手段105からガス検出器106に順次送られる。そして、ガス検出器106で各成分を検知することで、試料ガスの成分分析を行うことができる。
【0006】
このようなガス成分分析装置において、ガス検出器106としては熱伝導度検出器(TCD)や水素炎イオン化検出器(FID)等が用いられてきたが、近年、ガス検出器106の小型化、低コスト化等の観点から、半導体ガスセンサが主に用いられるようになってきている(特許文献1)。このような半導体ガスセンサを用いる場合、検出流路103bに試料ガスを供給する前にこの検出流路103bにキャリアガスを一定流量で充分な時間供給して検出器の検知出力のベースラインを安定させ、この状態で検出流路103bに試料ガスを供給することにより正確な検知を行うことができる。
【0007】
【特許文献1】特開平6−331515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のようなガス成分分析装置では、六方弁127等を用いてガスの流路を切り替えることにより、試料ガスを一旦検量管104に採取した後、測定流路103に供給して成分分析を行っている。しかし、このような試料ガスを測定流路103に供給するための流路の切り替えには、流路の遮断と再連通とを伴うため、流量の切り替え時に各流路におけるガス流量に一時的な変動が生じやすい。
【0009】
また、高価で複雑な機構を有する六方弁127に代えて、開閉弁や三方弁等を複数組み合わせたものを用いて流路の切り替えを行う場合には、新たに複数の三方弁等の間を接続する流路が加わり、流路の切り替えに伴うガス流量の一時的な変動が更に生じやすくなる。
【0010】
このようなガス流量の変動が生じると、半導体ガスセンサ等からなる検出器106に供給されるガス流量が変化して検知出力のベースラインに乱れが生じ、ガス成分の正確な測定と分析を行うことができなくなる。
【0011】
本発明は上記の従来例の欠点を解決するためになされたものであり、分離手段および半導体ガスセンサからなる検出手段が設けられた測定流路にキャリアガスを流通させた状態でこの測定流路に試料ガスを供給することにより、検出器で各成分を検知する際、試料ガスの供給時に検出流路におけるガス流量の変動を抑制して半導体ガスセンサの検知出力のベースラインに乱れが生じることを抑制し、正確な測定を行うことができるガス成分分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、試料ガスをキャリアガスと混合した状態で分離手段を通過させて含有成分ごとに分離した後、半導体ガスセンサで各成分を検知するガス成分分析装置において、分離手段および半導体ガスセンサを備えると共に始端側からキャリアガスが供給される測定流路と、測定流路に試料ガスを供給する供給手段と、供給手段による測定流路への試料ガスの供給を阻止する供給停止状態と、供給手段による測定流路への試料ガスの供給を許容する供給状態とを切り替える切替手段とを備え、測定流路に一定量のキャリアガスを貯留可能なバッファ手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、バッファ手段は一定量のキャリアガスを貯留する機能を有し、バッファ手段の容量は切替手段内のガス容量に対して5倍以上とすることを特徴とする。
【0014】
また、供給手段は、試料ガスが流通するガス供給流路とガス導出流路とからなる抽出流路と、検量管を備える採取流路で構成され、測定流路は、キャリアガスが流通するキャリアガス流路、および分離手段と検出器を備える検出流路で構成され、切替手段は、供給停止状態ではガス供給流路、採取流路およびガス導出流路が順次連通すると共にこれらの流路とキャリアガス流路および検出流路とが連通せず、且つキャリアガス流路と検出流路とが連通する状態とし、供給状態ではキャリアガス流路、採取流路および検出流路が順次連通すると共にこれらの流路がガス供給流路およびガス導出流路と連通しない状態とするものであることを特徴とする。
【0015】
また、切替手段は、第一の三方弁、第二の三方弁、第三の三方弁、および第一の接続流路、第二の接続流路および第三の接続流路から構成され、第一の三方弁は採取流路の始端、ガス供給流路の終端、および第一の接続流路の終端に接続され、第二の三方弁は採取流路の終端、ガス導出流路の始端、および第二の接続流路の始端に接続され、第三の三方弁はキャリアガス流路の終端、第三の接続流路の始端、および第一の接続流路の始端に接続され、前記第二の接続流路および第三の接続流路の各終端が合流して上記検出流路の始端に接続されており、供給停止状態では、第一の三方弁は採取流路の始端とガス供給流路の終端との間のみを連通し、第二の三方弁は採取流路の終端とガス導出流路の始端との間のみを連通し、第三の三方弁はキャリアガス流路の終端と第三の接続流路の始端との間のみを連通し、供給状態では、第一の三方弁は採取流路の始端と第一の接続流路の終端との間のみを連通し、第二の三方弁は採取流路の終端と第二の接続流路の始端との間のみを連通し、第三の三方弁はキャリアガス流路の終端と第一の接続流路の始端との間のみを連通するものであることを特徴とする。
【0016】
さらに、流量調整器をキャリアガス流路に設けた場合、バッファ手段は切り替え手段の上流側、且つ、流量調整器の下流側に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、切替手段を供給停止状態とすると共に、測定流路にキャリアガスを流通させて半導体ガスセンサによる検知出力のベースラインを安定化させ、次いで切替手段を供給状態に切り替えて測定流路に試料ガスを供給し、この試料ガスをキャリアガスと混合した状態で分離手段に供給して、分離手段で分離された試料ガスの含有ガス成分を半導体ガスセンサで順次検知してガス測定を行う。
【0018】
このとき、切替手段を供給停止状態から供給状態に切り替える際に、切替手段の前後におけるガス流量に乱れが生じても、バッファ手段に貯留されている一定量のキャリアガスにより前記ガス流量の乱れを緩和することができ、検出器を流通するガス流量の変化を小さくして半導体ガスセンサの検知出力のベースラインに乱れが生じることを抑制し、検知誤差を抑制して正確なガス測定と成分分析を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の実施例1を示す構成図である。実施例1のガス成分分析装置は、試料ガスを検量管4内に採取し、この検量管4内の試料ガスをエアからなるキャリアガスと混合した状態で分離手段5を通過させて含有成分ごとに分離した後、半導体ガスセンサ6からなる検出器で各成分を検知するために用いられる。
【0021】
試料ガスの例としては、変圧器、リアクトル、コンデンサ等の電気機器に使用される絶縁油の溶存ガスを挙げることができ、このような溶存ガスを当該ガス成分分析装置で測定することで、絶縁油の劣化分析を行うことができる。また、これ以外にも種々のガス成分の測定と分析に利用することができる。
〔ガス成分分析装置〕
図1のガス成分分析装置は、試料ガスが流通するガス供給流路1aとガス導出流路1bとからなる抽出流路1、検量管4を備える採取流路2、分離手段5および半導体ガスセンサ6を備える測定流路3、および切替手段7を具備する。このとき、抽出流路1と採取流路2とにより測定流路3に試料ガスを供給する供給手段が構成されている。
【0022】
ガス供給流路1aの始端は抽出容器9に接続され、その終端は切替手段7に接続されている。また、ガス導出流路1bの始端は切替手段7に接続され、その終端は抽出容器9に接続されている。これにより、ガス供給流路1aは接続手段を介してガス導出流路1bに接続されている。
【0023】
上記抽出容器9は試料ガスをガス供給流路1aに供給する機能を有する。本実施例における抽出容器9は、絶縁油等の試料液中に溶存する溶存ガスをバブリング方式で抽出し、試料ガスとしてガス供給流路1aに供給する。抽出容器9中には前記試料液が貯留される。ガス導出流路1bの終端は抽出容器9内において試料液内で開口しており、このガス導出流路1bから抽出容器9にエアが供給されバブリングを行う。また、ガス供給流路1aの始端は抽出容器9内において試料液の液面の上方で開口し、バブリングにより抽出された試料ガスがガス供給流路1aに供給される。
【0024】
抽出流路1には、エアポンプ12、および流量調整器15が設けられている。
【0025】
エアポンプ12は抽出流路1内のガスを循環させるための駆動力を提供し、ガス導出流路1bに設けられている。
【0026】
流量調整器15は、抽出流路1を流通するガス流量を調整する機能を有し、ニードルバルブ等で構成される。流量調整器15を制御することで、抽出流路1におけるガス流量を所定の値に制御することができる。流量調整器15はガス導出流路1bに設けられている。
【0027】
採取流路2には、供給された試料ガスを採取するための検量管4が設けられ、採取流路2の両端は切替手段7に接続されている。
【0028】
測定流路3は、キャリアガス流路3aと検出流路3bとから構成される。キャリアガス流路3aの終端は切替手段7に接続されており、検出流路3bの始端は切替手段7に接続されている。すなわち、キャリアガス流路3aと検出流路3bとは上記切替手段7を介して接続されている。
【0029】
キャリアガス流路3aでは適宜の手段によりキャリアガスを流通させる。図1ではキャリアガス流路3aにエアポンプ16が設けられ、キャリアガスとしてエアが流通する。
【0030】
検出流路3bには、始端側から順に分離手段5と半導体ガスセンサ6が設けられている。分離手段5は固定相を充填或いは塗布した管、例えばガスクロマトグラフィーの分離カラムで構成することができる。半導体ガスセンサ6は酸化スズや酸化タングステン等の金属酸化物半導体を主体とした感ガス体を備え、この感ガス体に酸化性ガスや還元性ガス分子が吸着した場合に生じる感ガス体の電気抵抗値変化を、検知出力として出力する。なお、検出流路3bの構成はこのようなものに限られず、この検出流路3bに分離手段5と半導体ガスセンサ6とがガスの流通方向に沿って順次設けられていれば良い。
【0031】
また、測定流路3には、分離手段5よりも上流側に定圧弁22および流量調整器23が設けられている。図1では、キャリアガス流路3aにおけるエアポンプ16の下流側に定圧弁22、流量調整器23が設けられている。定圧弁22はエアポンプ16から測定流路3に供給されるキャリアガス(エア)を一定圧力に調整する機能を有する。また、流量調整器23は、測定流路3に流通するキャリアガスの流量を制御する機能を有し、例えばマスフローコントローラにて構成される。この流量調整器23により、測定流路3を流通するキャリアガスの流量を所定の値に制御することができる。
【0032】
バッファ手段8は、一定量のキャリアガスを貯留する機能を有する。このバッファ手段8は、例えば一定容量を有する容器で形成することができる。このバッファ手段8の容量は、圧力変動を抑制するため、切替手段7内のガスの容量に対して充分に大きいことが好ましい。好ましくは、バッファ手段8の容量は、切替手段7内のガスの容量(第一〜第三の接続流路11a〜11cの容量の合計)に対して5倍以上がよい。また、接続流路としては0.5ml前後の容量のものを使用でき、本実施例では3個の接続流路を使用しているため、バッファ手段8の容量は7.5ml以上とする。このバッファ手段8は切替手段7よりも上流側のキャリアガス流路3aに設けることが好ましく、特に図示の例のようにキャリアガス流路3aにおける流量調整器23と切替手段7との間に設けることが好ましい。
【0033】
切替手段7は、抽出流路1と採取流路2からなる上記供給手段による測定流路3への試料ガスの供給を阻止する供給停止状態と、測定流路3へ試料ガスの供給を許容する供給状態とを切り替える機能を有する。図1では、供給停止状態では、切替手段7はガス供給流路1a、採取流路2およびガス導出流路1bが順次連通する一方、これら前記各流路とキャリアガス流路3aおよび検出流路3bとは連通せず、且つキャリアガス流路3aと検出流路3bとが連通した状態となる。また、供給状態では、切替手段7はキャリアガス流路3a、採取流路2および検出流路3bが順次連通する一方、これら前記各流路はガス供給流路1aおよびガス導出流路1bと連通しない状態となる。
【0034】
切替手段7は六方弁で構成することができるが、複数の弁や流路を組み合わせて構成しても良い。実施例1では切替手段7は、第一の三方弁10a、第二の三方弁10b、第三の三方弁10c、第一の接続流路11a、第二の接続流路11b、および第三の接続流路11cから構成されている。
【0035】
第一の三方弁10aは採取流路2の始端、ガス供給流路1aの終端、および第一の接続流路11aの終端に接続されている。第二の三方弁10bは採取流路2の終端、ガス導出流路1bの始端、および第三の接続流路11cの始端に接続されている。第三の三方弁10cはキャリアガス流路3aの終端、第二の接続流路11bの始端、および第一の接続流路11aの始端に接続されている。
【0036】
また、第二の接続流路11bと第三の接続流路11cの各終端は合流して検出流路3bの始端に接続されている。
【0037】
このような各三方弁10a〜10cを制御することで、切替手段7を供給停止状態と供給状態に切り替えることができる。すなわち、供給停止状態では第一の三方弁10aで採取流路2の始端とガス供給流路1aの終端との間のみを連通するようにし、第二の三方弁10bで採取流路2の終端とガス導出流路1bの始端との間のみを連通するようにし、第三の三方弁10cでキャリアガス流路3aの終端と第二の接続流路11bの始端との間のみを連通するようにする。
【0038】
また、供給状態では、第一の三方弁10aで採取流路2の始端と第一の接続流路11aの終端との間のみを連通するようにし、第二の三方弁10bで採取流路2の終端と第三の接続流路11cの始端との間のみを連通するようにし、第三の三方弁10cでキャリアガス流路3aの終端と第一の接続流路11aの始端との間のみを連通するようにする。
【0039】
バッファ手段8は一定量のキャリアガスを貯留する機能を有し、例えば一定容量を有する容器で形成することができる。バッファ手段8の容量は、切替手段7内のガスの容量に対して充分に大きいことが必要である。バッファ手段8の容量は、好ましくは切替手段7内のガスの容量(接続流路11a〜11cの容量の合計)に対して5倍以上、または7.5ml以上とする。このバッファ手段8は切替手段7よりも上流側のキャリアガス流路3aに設けることが好ましく、特に図1のようにキャリアガス流路3aにおける流量調整器23と切替手段7との間に設けることが好適である。
〔ガス測定方法〕
次に、実施例1のガス成分分析装置を用いた試料ガスの測定方法について説明する。
【0040】
まず切替手段7を、試料ガスを測定流路3に供給しない供給停止状態とする。このとき採取流路2の両端がそれぞれ切替手段7を介してガス供給流路1aとガス導出流路1bに接続されることによって採取流路2が切替手段7を介して抽出流路1をバイパスするように接続され、また検出流路3bは抽出流路1および採取流路2と連通することなく、切替手段7を介してキャリアガス流路3aと検出流路3bとが接続された状態となる。
【0041】
この状態で、抽出流路1のエアポンプ12を作動させると、抽出流路1および採取流路2をキャリアガス(エア)が循環する。このとき、抽出容器9ではバブリング方式により試料液から試料ガスである溶存ガスが抽出されて前記キャリアガスに混入され、抽出流路1および採取流路2を循環するキャリアガス中の試料ガスの濃度が増大していく。この試料ガスの濃度は、試料液からの試料ガスの蒸発量とキャリアガスへの試料ガスの溶出量とが一致する平衡状態となるまで増大する。平衡状態での試料ガスの濃度は、試料液の組成、並びに流量調整器15にて調製されるガス流量に依存する。
【0042】
また、上記動作と同時に、測定流路3のエアポンプ16も作動させる。これにより、キャリアガスが測定流路3を一定流量で流通する。このとき、検出流路3bではキャリアガスが分離手段5を通過した後、半導体ガスセンサ6を流通する。このように半導体ガスセンサ6にキャリアガスを一定流量で流通することにより、半導体ガスセンサ6による検知出力のベースラインを安定化させる。
【0043】
上記動作により採取流路2を流通する試料ガス濃度が平衡状態に達し半導体ガスセンサ6の検知出力のベースラインが安定したら、切替手段7を供給状態に切り替える。このとき、予備実験等に基づいてあらかじめ前記平衡状態および検知出力の安定化に要する時間を導出しておき、その結果に基づいて時間制御により切替手段7を切り替えても良く、或いは抽出流路1を流通する試料ガス濃度および半導体ガスセンサ6からの検知出力をモニターして、これらの値が共に安定化した時点で切替手段7を切り替えるように制御しても良い。
【0044】
切替手段7の切り替えにあたっては、各三方弁10a〜10cを同時且つ瞬時に切り替えることが最も好ましいが、それが困難な場合には第一の三方弁10a、第二の三方弁10b、第三の三方弁10cの順で切り替えることが望ましい。この順に走査すると検量管4に溜めた試料ガスのガス導出流路1bへの漏れ出しを抑制することができる。
【0045】
切替手段7を供給状態に切り替えると、採取流路2の両端がそれぞれ切替手段7を介してキャリアガス流路3aおよび検出流路3bにそれぞれ接続される。このため、採取流路2が切替手段7を介して測定流路3をバイパスするように接続され、且つ抽出流路1は採取流路2、測定流路3のいずれにも接続されない状態となる。
【0046】
上記の状態では、キャリアガスがキャリアガス流路3aから採取流路2へ供給され、検量管4内の試料ガスが検出流路3bに流入する。検出流路3bに流入した試料ガスは、まず分離手段5に流入し、流動遅延により試料ガス中の各成分がそのリテンションタイムに応じて分離し、各成分が分離手段5から順次流出する。分離された各成分は半導体ガスセンサ6に送られ各成分ごとの測定が為される。
【0047】
上記操作において、切替手段7を供給停止状態から供給状態に切り替えると、切替手段7内におけるガスの流路が切り替わるため、切替手段7の前後におけるガス流量に乱れが生じる。特に実施例1のような三方弁の組み合わせによる切替手段7を設ける場合には、測定流路3は供給停止状態では切替手段7における第二の流路11bにのみ接続されていたのに対して、供給状態では第一の流路11aおよび第三の流路11cにも接続され、流路の容積が急激に大きくなる。このため、特に対策を講じなければ切替手段7から検出流路3bに流入するガス流量が急激に変化する。
【0048】
しかしながら、本実施例1では、測定流路3にバッファ手段8が設けられているため、バッファ手段8に貯留されているガスを含めた測定流路3内および採取流路2内に存在するガスの全容積と比べると、切替手段7の切り替えに起因する流路全体の容積の変化は非常に小さくなる。このため、上記流路の切り替えが起こっても、流路を流通するガスの圧力の変化は小さくなり、ガス流量の変化を低減することができる。従って半導体ガスセンサ6を流通するガス流量の変化が小さくなり、半導体ガスセンサ6の検知出力のベースラインに乱れが生じることが抑制され、検知誤差が抑制されてガス成分の正確な測定が可能となる。
【0049】
ここで、バッファ手段8を切替手段7の下流側の検出流路3bに設ける場合には、試料ガスがバッファ手段8に流入する際に試料ガスの濃度が変化して正確な検知が行えなくなるおそれがある。このため、半導体ガスセンサ6による正確なガス検知のためには、図1のようにバッファ手段8は切替手段7上流側のキャリアガス流路3aに設けることが好ましい。また、流量調整器23を設ける場合には、流量調整器23の上流側にバッファ手段8を設けると、流量調整器23の前後におけるガス流量が規制されるため前記緩衝作用を充分に得られなくなる。このため、切替手段7の切り替えの前後で半導体ガスセンサ6でのガス流量の変化を効果的に抑制するには、図1のようにバッファ手段8を流量調整器23の下流側に設けることが好ましい。
〔バッファ手段の効果〕
図2は、図1に示す構成のガス成分分析装置において、バッファ手段8を設けた場合と、バッファ手段8を設けない場合での、半導体ガスセンサ6からの検知出力を対比したものである。ここでは、試料ガスとしてH2とCOとを含むものを用い、分離手段5からH2とCOとが順次流出し、この分離したH2およびCOを同一の半導体ガスセンサ6にて順次検知する場合を、例として挙げている。
【0050】
バッファ手段8を設けない場合には、切替手段7の供給停止状態から供給状態への切り替えにより生じるガス流量の乱れの発生と、分離手段5から半導体ガスセンサ6への試料ガスの流出とがほぼ同時期に生じるため、図2(b)に示すように、半導体ガスセンサ6によるベースラインの乱れと、検知出力6による試料ガスの検知による検知出力の変化とが重なる。このため、ガス検知時の検知出力のピーク値が前記ベースラインの乱れの影響を受け、正確な測定ができなくなっている。
【0051】
実施例1ではベースラインの乱れによる検知出力の変化とガス検知による検知出力の変化とが同位相への変化として生じているが、逆位相への変化が生じる場合もあり、この場合も同様にガス検知時の検知出力のピーク値がベースラインの乱れの影響を受ける。
【0052】
一方、バッファ手段8を設けることにより、切替手段7の切り替え時でのガス流量の乱れを抑制すると、図2(a)に示すようにガス検知時にベースラインの乱れが生じなくなり、正確なガス検知を行うことができるようになる。
【0053】
このようにして試料ガスの測定を行った後は、切替手段7を供給停止状態に切り替えて、次回のガス測定の準備をする。この供給状態から供給停止状態への切り替えにあたっては、各三方弁10a〜10cを同時且つ瞬時に切り替えることが最も好ましいが、それが困難な場合には、第三の三方弁10c、第二の三方弁10b、第一の三方弁10aの順で切り替えることが望ましい。
【0054】
実施例1によれば、切替手段を供給停止状態とすると、試料ガスを検量管内に採取すると共に、測定流路にキャリアガスを流通させて半導体ガスセンサによる検知出力のベースラインを安定化させることができ、次いで切替手段を供給状態に切り替えると、検量管内の試料ガスをキャリアガスと混合して分離手段、半導体ガスセンサに順次供給し、分離手段で分離された試料ガスの含有ガス成分を半導体ガスセンサで順次検知してガス測定を行うことができる。
【0055】
また、ガス成分分析装置による試料ガスの測定により、絶縁性油の劣化測定を行うことができる。
【0056】
更に、高コストの六方弁を用いることなく、三つの三方弁とこれらの三方弁を接続する接続流路にて切替手段を構成することができ、また、このような切替手段を供給停止状態から供給状態に切り替える際に、切替手段の前後におけるガス流量に乱れが生じても、ガス流量の乱れを緩和することができる。
【実施例2】
【0057】
図3は本発明の実施例2を示す構成図である。実施例2では、検出流路3bはさらに一次検出流路13aと二次検出流路13bとで構成されており、また半導体ガスセンサとしては、第一の半導体ガスセンサ6aと第二の半導体ガスセンサ6bとが設けられている。
【0058】
一次検出流路13aは切替手段7に直接接続された流路であり、始端側から分離手段5と第一の半導体ガスセンサ6aとが順次設けられている。また、二次検出流路13bは前記一次検出流路13aの終端に接続された環状の流路である。一次検出流路13aと二次検出流路13bとは、一次三方弁17を介して接続されている。この二次検出流路13bには、第一排出流路18、第二の半導体ガスセンサ6b、保持手段14、第二排出流路19が、順次設けられている。
【0059】
第一排出流路18は二次検出流路13bから分岐して設けられており、且つこの第一排出流路18は二次三方弁20を介して二次検出流路13bに接続されている。
【0060】
保持手段14は二次検出流路13bの所定箇所において一定量のガスを保持する機能を有する。この保持手段14は、例えば二次検出流路13bにおける第二の検出器6bから第二排出流路19までの部分の流路にて形成することができる。この場合、保持手段14の流路長は後述する通り適宜設定されるが、保持手段の流路長が短すぎると、切替時に二次検出器にHガスが到達し、流入する。また、保持手段の流路長が長すぎると、切替時に内部のガスの排出に時間がかかり、またガスの温度のコントロールがしにくくなる。例えば二次検出流路13b全体の流路長に対して保持手段14の流路長が占める割合が50%〜95%の範囲となるようにすることができる。第二排出流路19は二次検出流路13bから分岐して設けられている。この二次検出流路13bには、ガスの流通を開閉する開閉弁21が設けられている。他の構成は実施例1と同様である。
〔ガス測定方法〕
実施例2でも、実施例1と同様に、切替手段7を供給停止状態から供給状態に切り替えることで、試料ガス成分の測定を行うことができる。
【0061】
ここで、実施例2では、切替手段7を供給停止状態として検量管4に試料ガスを採取すると共に、測定流路3にキャリアガスを流通させる際に、二次検出流路13bにおける一次三方弁17を一次検出流路13bから第一排出流路18側への流通のみを許容する状態とし、二次三方弁20をこの二次三方弁20を介した二次検出流路13bの流通のみを許容する状態とし、開閉弁21を開状態とする(以下、この状態を二次検知状態という)。
【0062】
このとき、検出流路3bでは一次検出流路13aにてキャリアガスが分離手段5を通過した後、第一の半導体ガスセンサ6aを流通する。そして、更にこのキャリアガスは二次検出流路13bに流入し、第二の半導体ガスセンサ6b、保持手段14を順次通過した後、第二排出流路19から排出される。このようにして各半導体ガスセンサ6a、6bにキャリアガスを一定流量で流通することにより、各半導体ガスセンサ6a、6bによる検知出力のベースラインを安定化させる。
【0063】
また、採取流路2を流通する試料ガスの濃度が平衡状態に達すると共に、半導体ガスセンサ6の検知出力のベースラインが安定し、切替手段7を供給状態に切り替える際には、二次検出流路13bの一次三方弁17、二次三方弁20および開閉弁21を切り替えて、一次三方弁17を二次検出流路13bから二次三方弁20側への流通のみを許容する状態とし、二次三方弁20を二次検出流路13bの第二の半導体ガスセンサ6b側から第一排出流路18への流通のみを許容する状態とし、開閉弁21を閉状態とする(以下、この状態を一次検知状態という)。
【0064】
この一次検知状態では、二次検出流路13bにおけるガスの流通方向が逆方向となり、二次検出流路13b内のガスは一次三方弁17から保持手段14、第二の半導体ガスセンサ6b、二次三方弁20を順次通過した後、第一排出流路18から排出される方向に流通する。
【0065】
二次検知状態から一次検知状態への切替にあたっては、一次三方弁17、二次三方弁20および開閉弁21を同時且つ瞬時に切り替えることが最も望ましいが、それが困難な場合には、一次三方弁17、二次三方弁20、開閉弁21の順で弁の切り替えを行うことが好ましい。
【0066】
一次検知状態では、第一の半導体ガスセンサ6aを通過した後、二次検出流路13bに流入した試料ガスは、保持手段14側に流入するが、保持手段14は上述の通り一定量のガスを保持する機能を有するため、この試料ガスが第二の半導体ガスセンサ6bまで到達するまでには一定の猶予がある。この間、第二の半導体ガスセンサ6bには供給停止状態の場合と同じ流量のキャリアガスが流通し、この第二の半導体ガスセンサ6bの検知出力のベースラインの安定化が図られている。
【0067】
試料ガスが保持手段14から第二の半導体ガスセンサ6bに到達しないまま、一次検知状態を一定時間維持したら、一次三方弁17、二次三方弁20および開閉弁21を二次検知状態に切り替える。
【0068】
この一次検知状態から二次検知状態への切替も、一次三方弁17、二次三方弁20および開閉弁21を同時且つ瞬時に切り替えることが最も望ましいが、それが困難な場合には、開閉弁21、二次三方弁20、一次三方弁17の順で弁の切り替えを行うことが好ましい。
【0069】
二次検知状態では、二次検出流路13b内のガスは、第二の半導体ガスセンサ6b、保持手段14を順次通過した後、第二排出流路19から排出される方向に流通する。そうすると、一次検知状態において第一の半導体ガスセンサ6aを通過した後に保持手段14に流入した試料ガスは、第二の半導体ガスセンサ6bに到達することなく、第二排出流路19から排出される。
【0070】
一方、二次検知状態に移行した後に第二検知流路13bに流入した試料ガスは、第二の半導体ガスセンサ6bに到達し、この第二の半導体ガスセンサ6bを通過した後、保持手段14、開閉弁21を通過して、第二排出流路19から排出される。
〔検知状態の切り替え〕
このような一次検知状態と二次検知状態との切り替えは、分離手段5から順次流出する複数のガス成分を、第一の半導体ガスセンサ6aによる検知対象と、第二の検知器6bによる検知対象とに、所望のタイミングで振り分けることを目的として行うことができる。
【0071】
すなわち、まず一次検知状態では、試料ガスのガス成分は第一の半導体ガスセンサ6aのみを通過し、第二の半導体ガスセンサ6bは通過しないため、前記第一の半導体ガスセンサ6aの検出出力に基づいて、ガス成分の測定を行うことができる。
【0072】
そして、二次検知状態になってから第二検出流路19に流入した試料ガスのガス成分は、第二の半導体ガスセンサ6bによる検知対象となり、このガス成分は第一の半導体ガスセンサ6aを通過した後、第二の半導体ガスセンサ6bを通過する。
【0073】
このような第一の半導体ガスセンサ6aによる検知対象と、第二の半導体ガスセンサ6bによる検知対象との振り分けは、次のような理由により必要となる場合がある。
【0074】
検出器として半導体ガスセンサを用いる場合、導体ガスセンサには感ガス体に含まれる酸化スズ、酸化タングステン、酸化インジウム等の金属酸化物半導体やその他の添加物等の組成を調整することにより、多種類のガスに対する感度を付与し得る。しかし、検知対象となるガスの全てに対して感度を有する半導体ガスセンサを用いる場合、試料ガス中の各成分の含有量の相違やガスの種類によって、各ガス成分ごとに検知出力に大きな相違が生じることがある。このような場合、各ガス成分ごとの検知精度が大きく異なってしまう。
【0075】
また、リテンションタイムが近似するガス成分が分離手段5から順次流出する場合、このガス成分が同じ半導体ガスセンサ6を順次通過すると、始めのガス成分を検知したことにより変動した検知出力がベースライン近くまで充分に戻る前に、次のガス成分を検知することになり、次のガス成分についての検知出力が始めのガス成分についての検知出力の影響を受けて、正確な測定ができない場合がある。この傾向は、上記のように半導体ガスセンサ6による検知出力値が大きいガス成分と、この値が小さいガス成分とが順次流出する場合に、特に著しくなる。
【0076】
このような場合、第一の半導体ガスセンサ6aとして始めに流出するガス成分に対して充分な感度を有するように感ガス体の組成を調整したものを用い、第二の半導体ガスセンサ6bとして次に流出するガス成分に対して充分な感度を有するように感ガス体の組成を調整したものを用いて、上記のような第一の半導体ガスセンサ6aによる検知対象と、第二の半導体ガスセンサ6bによる検知対象との振り分けを行うと、各成分ごとに充分な感度で測定を行うことができると共に、第二の半導体ガスセンサ6bの検知出力から第一の半導体ガスセンサ6aによる検知対象となった成分による影響が排除されて、正確な測定を行うことができるものである。
【0077】
また、このような一次検知状態と二次検知状態との間の切り替えの前後では、第二の半導体ガスセンサ6bには、流通方向は異なるものの、同じ流量のガスが流通する。このため、第二の半導体ガスセンサ6bの検知出力は一次検知状態と二次検知状態との間の切り替えの前後で安定し、ベースラインの乱れが抑制され、正確なガス検知を行うことができる。
【0078】
尚、第一の半導体ガスセンサ6aによる検知対象と、第二の半導体ガスセンサ6bによる検知対象とを振り分けるにあたっては、第一の半導体ガスセンサ6aによる検知対象を第一の半導体ガスセンサ6aに流通させると共にこのとき第二の半導体ガスセンサ6bにキャリアガスを流通させて検知出力のベースラインを安定化させ、且つ第一の半導体ガスセンサ6aによる検出対象は第二の半導体ガスセンサ6bに流通させないような構成のものであれば、本実施例に限らず、適宜の構成を採用し得る。
〔ガス検知出力〕
ここで、図4は、図3に示す構成のガス成分分析装置において、試料ガスの測定を行った場合の、第一の半導体ガスセンサ6aおよび第二の半導体ガスセンサ6bからの検知出力の例を示す。ここでは、試料ガスとしてH2、COおよびCH4を含むものを用い、分離手段5からH2、CO、CH4がこの順に流出し、このうちH2およびCOを第一の半導体ガスセンサ6aによる検知対象とし、CH4を第二の半導体ガスセンサ6bによる検知対象としている。そして、第一の半導体ガスセンサ6aの感ガス体は、試料ガス中のH2およびCOに対して充分な感度を有すると共に、CH4に対しての検知感度が小さく或いはCH4に対して感応しないように調製されたものであり、且つ、第二の半導体ガスセンサ6bの感ガス体は、試料ガス中のCH4に対して充分な感度を有するように調製されたことで、H2およびCOに対しての感度が更に高くなっているものとする。
【0079】
この場合、試料ガスの各ガス成分を、第一の半導体ガスセンサ6aによる検知対象と、第二の半導体ガスセンサ6bによる検知対象とに振り分けることで、図示のように第一の半導体ガスセンサ6aでは、その検知対象となったH2およびCOについての充分な検知出力が検知され、H2およびCOの測定を行うことができる。一方、CH4については検知出力が検知されない。また、第二の半導体ガスセンサ6bではCH4についての充分な検知出力が検知され、CH4の測定を行うことができる。一方、H2およびCOは第二の半導体ガスセンサ6bを流通しないため、H2およびCOによる検知出力がCH4についての検知出力に影響を与えることがなく、正確な測定を行うことができる。更に、一次検知状態と二次検知状態との間の切り替えの前後で、第二の半導体ガスセンサ6bに同じ流量のガスが流通しているため、第二の半導体ガスセンサ6bの検知出力のベースラインの乱れが抑制され、更に正確なガス検知が行われている。
【実施例3】
【0080】
また、第2の実施例のより簡便な構成としては、実施例3に挙げるように、図3における第二排出流路19に、開閉弁21に代えて二次検出流路13bよりも流路抵抗が大きい負荷(図示せず)を設けることができる。このような負荷を設けるにあたっては、例えば流路径を絞った流路を設けることなどが挙げられる。開閉弁21に代えて負荷を設けることにより、第二の半導体ガスセンサ6bにガスを流入させることが可能である。一方、負荷の流路抵抗を大きくしすぎると、逆流させる際の負荷が大きくなり、機器の大型化につながる。従ってこのような負荷における流路抵抗は、第二検出流路13bにおける流路抵抗の1.1〜10倍の範囲であることが好ましい。このような負荷を設けると、二次検知状態では、開閉弁21を設けている場合と同様に、二次検出流路13b内のガスは、第二の半導体ガスセンサ6b、保持手段14を順次通過した後、第二排出流路19から排出される方向に流通する。
【0081】
一方、一次検知状態では、二次検出流路13b内のガスは一次三方弁17から保持手段14、第二の半導体ガスセンサ6b、二次三方弁20を順次通過した後、第一排出流路18から排出される方向に流通するが、開閉弁21を設けている場合とは異なり、第二排出流路19が閉じていないため、第二排出流路19からもガスが排出される。
【0082】
このため、一次検知状態では、二次検知状態の場合と比べて、第二排出流路19から排出されるガスの分だけ、第二の半導体ガスセンサ6bに流通するガス流量が低減する。しかし、上記のように負荷が設けられているため、第二排出流路19からのガスの流出量は抑制され、前記流量の低減量は小さくなる。このため、第二半導体ガスセンサ6bの検知出力に生じるベースラインの乱れが抑制され、第二の半導体ガスセンサ6bでの測定誤差が抑制されることとなる。
【0083】
図5は、上記のような負荷を設けた場合の、第一の半導体ガスセンサ6aおよび第二の半導体ガスセンサ6bからの検知出力の例を示す。図示のように、一次検知状態と二次検知状態との間の切り替えの前後では、第二の半導体ガスセンサ6bを流通するガス流量に変化が生じるが、その変化量は小さいため、第二の半導体ガスセンサ6bの検知出力のベースラインの乱れは小さく、充分に正確なガス検知が行われている。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例1のガス成分分析装置を示す構成図である。
【図2】(a)は本発明の実施例1の試料ガスの測定結果を示すグラフ、(b)は バッファ手段を設けない場合の試料ガスの測定結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例2のガス成分分析装置を示す構成図である。
【図4】本発明の実施例2の試料ガスの測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例3の試料ガスの測定結果を示すグラフである。
【図6】従来技術のガス成分分析装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0085】
1 抽出流路
1a ガス供給流路
1b ガス導出流路
2 採取流路
3 測定流路
3a キャリアガス流路
3b 検出流路
4 検量管
5 分離手段
6a、6b 半導体ガスセンサ
7 切替手段
8 バッファ手段
9 抽出容器
10a 第一の三方弁
10b 第二の三方弁
10c 第三の三方弁
11a 第一の接続流路
11b 第二の接続流路
11c 第三の接続流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスをキャリアガスと混合した状態で含有成分ごとに分離した後、各成分を検知するガス成分分析装置であって、
分離手段および半導体ガスセンサを備えると共に始端側からキャリアガスが供給される測定流路と、前記測定流路に試料ガスを供給する供給手段と、前記供給手段による測定流路への試料ガスの供給を阻止する供給停止状態と、前記供給手段による測定流路への試料ガスの供給を許容する供給状態とを切り替える切替手段とを備え、前記測定流路に、一定量のキャリアガスを貯留可能なバッファ手段を設けたことを特徴とするガス成分分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス成分分析装置において、前記バッファ手段は一定量のキャリアガスを貯留する機能を有し、バッファ手段の容量は前記切替手段内のガス容量に対して5倍以上とすることを特徴とするガス成分分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス成分分析装置において、前記供給手段は、試料ガスが流通するガス供給流路とガス導出流路とからなる抽出流路と、検量管を備える採取流路で構成され、
前記測定流路は、キャリアガスが流通するキャリアガス流路、および分離手段と半導体ガスセンサを備える検出流路で構成され、
前記切替手段は、供給停止状態ではガス供給流路、採取流路およびガス導出流路が順次連通すると共にこれらの流路とキャリアガス流路および検出流路とが連通せず、且つキャリアガス流路と検出流路とが連通する状態とし、供給状態ではキャリアガス流路、採取流路および検出流路が順次連通すると共にこれらの流路がガス供給流路およびガス導出流路と連通しない状態とするものであることを特徴とするガス成分分析装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス成分分析装置において、前記切替手段は、第一の三方弁、第二の三方弁、第三の三方弁、および第一の接続流路、第二の接続流路および第三の接続流路から構成され、
第一の三方弁は採取流路の始端、ガス供給流路の終端、および第一の接続流路の終端に接続され、第二の三方弁は採取流路の終端、ガス導出流路の始端、および第二の接続流路の始端に接続され、第三の三方弁はキャリアガス流路の終端、第三の接続流路の始端、および第一の接続流路の始端に接続され、
前記第二の接続流路および第三の接続流路の各終端が合流して前記検出流路の始端に接続されており、
供給停止状態では、第一の三方弁は採取流路の始端とガス供給流路の終端との間のみを連通し、第二の三方弁は採取流路の終端とガス導出流路の始端との間のみを連通し、第三の三方弁はキャリアガス流路の終端と第三の接続流路の始端との間のみを連通し、
供給状態では、第一の三方弁は採取流路の始端と第一の接続流路の終端との間のみを連通し、第二の三方弁は採取流路の終端と第二の接続流路の始端との間のみを連通し、第三の三方弁はキャリアガス流路の終端と第一の接続流路の始端との間のみを連通するものであることを特徴とするガス成分分析装置。
【請求項5】
請求項3及至4のいずれか1項に記載のガス成分分析装置は、キャリアガス流路に流量調整器を具備したものであって、バッファ手段を切り替え手段の上流側、且つ、流量調整器の下流側に設けたことを特徴とするガス成分分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−139421(P2010−139421A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317053(P2008−317053)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【出願人】(593210961)エフアイエス株式会社 (39)
【Fターム(参考)】