説明

ガス拡散層用インク組成物

【課題】製造工程を単純化でき、かつ、環境負荷を軽減し、ガス拡散性が阻害されにくく、電池の設定された負荷環境にも対応可能なガス拡散用インク組成物の提供。
【解決手段】高分子電解質膜の両面に触媒層が設けられ、触媒層の他の面側にはガス拡散層が設けられた固体高分子形燃料電池において、ガス拡散層はガス拡散能及び導電性を有する導電性多孔質基材と導電性粒子を有する被覆層からなり、前記導電性粒子として、導電性多孔質基材の平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子と、前記第1の炭素粒子の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子との混合比率M1/M2が95/5〜70/30となるように混合してなるガス拡散層用インクを導電性多孔質基材上に塗布したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気または酸素の酸化剤を反応ガスとして用いる固体高分子形燃料電池に関するもので、特に、固体高分子形燃料電池に用いるガス拡散層のガス拡散層用インク組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1において、固体高分子形燃料電池は、一般に、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜1、その両面に接合配設した白金族金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層2A、2K、触媒層2A、2Kの外面側には、ガス透過性と導電性を有するガス拡散層3Aとガス拡散層3Kが密着して配設されている。この触媒層3A、3Kとガス拡散層3A、3Kによりアノード(−)電極4Aとカソード(+)電極4Kが構成されている。更に、ガス拡散層3A、3Kは、ガス拡散能及び導電性を有する導電性多孔質基材10A、10Kと導電性粒子を有する被覆層11A、11Kから構成される。なお、図中、アノード側をA、カソード側をKとする。
【0003】
また、アノード電極4A側には燃料ガスを供給するガス流路7A、カソード電極4K側には酸化剤となるガスを供給するガス流路7Kを設けている。ガス流路7A及びガス流路7Kは、導電性セパレータ板6の両側に形成され、また、冷却水の流路8を形成する導電性セパレータ板6A、6Kの電極側の一方の面に形成されている。導電性セパレータ板6Aと導電性セパレータ板6Kは反電極側が密着し、シール材5によって導電性セパレータ板6Aと導電性セパレータ板6Kの反電極側間はシールされている。更に、導電性セパレータ板6Aの反電極側の一部とこれに対向する導電性セパレータ板6Kの反電極側の一部とによって冷却水の流路8がされている。ガスケット9A、9Kは水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜1を気密性、水密性に有する固定用のシール材である。
【0004】
この種の固体高分子形燃料電池のアノード(−)電極4A、カソード(+)電極4Kとしてのガス拡散層3A、3Kは、アノード(−)電極4A、カソード(+)電極4K、高分子電解質膜1を張り合わせて一体化してなる基本部品の膜/電極接合体MEGA(Membrane-Electrode-Gas Diffusion Layer Assembly)を燃料ガス、酸化剤ガス等の反応ガスの供給流路が形成された導電性セパレータ板6または導電性セパレータ板6A、6Kで挟持して単セル(single cell)を形成している。そして、ガス拡散層3A、3Kは燃料ガス、酸化剤ガス等の反応ガスの効率のよい供給や、高分子電解質膜1と触媒層2A、2Kを常に最適な湿潤状態に保ち、過剰な反応生成水や結露水は電極触媒層と固体電解質材料の膜を複合化した発電ユニットMEA(Membrane-Electrode-Assembly)の外に排出している。
このようなガス拡散層3A、3Kを得るため、一般的に、ガス拡散能及び導電性を持つ炭素繊維からなるカーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロス等の導電性多孔質基材10A、10Kが基材として用いられている。
【0005】
一方、このようなガス拡散層3A、3Kを用いて固体高分子形燃料電池を得るには、ガス拡散層3A、3Kと高分子電解質膜1との間に触媒層2A、2Kが設けられ、ガス拡散層3A、3Kの導電性多孔質基材10A、10Kの不均一性を緩和し、更に、集電性及び撥水性を持たせるために、特許文献1においては、ガス拡散層3A、3Kを形成する導電性多孔質基材10A、10Kの上にカーボン及びフッ素樹脂ディスパージョンまたはフッ素樹脂エマルジョンを主成分とする被覆層(撥水カーボン層)11A、11Kを設けている。
【0006】
被覆層11A、11Kの形成には、まず、例えば、水を溶媒としてカーボンブラック等の炭素粉末で構成されるインクを作製し、スプレー法または印刷法、バーコーター、ドクターブレード等を用いて、このインクを導電性多孔質基材10A、10K上に塗布し、その塗布した一部が導電性多孔質基材10A、10Kに含浸され、そして、導電性多孔質基材10A、10Kに侵入した被覆層11A、11Kを形成している。更に、被覆層11A、11K自体から水分や界面活性剤等を除くために、塗布後の焼成処理によって除去している。
【0007】
高分子電解質膜1は、水分を含んだ状態で水素イオンを抽出し、輸送する電解質であるから、燃料ガスや酸化剤ガスを加湿して供給してやる必要がある。また、高分子電解質膜1の含水率は、高くなればなるほど、水素イオン伝導度が増加し、電池内部の抵抗を低減させ、かつ、劣化を抑制することができる。
【0008】
ガス拡散層3A、3Kを形成する多孔質の導電性多孔質基材10A、10Kは、反応ガスや過剰な水が内部を通過しやすいから、導電性粒子を有する撥水カーボン層である被覆層11A、11Kに被覆層塗布用インクを塗布すると、被覆層塗布用インクが基材内部に染み込み、浸み込んだインクの量が多いと、導電性多孔質基材10A、10K中の細孔が塞がり、反応に必要な燃料ガスや酸化剤ガスを触媒層に供給する能力や、過剰な水を排出する能力が低下し、発電性能を低下させる。また、導電性多孔質基材10A、10Kに浸み込む被覆層塗布用インクの量が多いと、基材表面に十分な量の被覆層11A、11Kを形成することができなくなり、基材の繊維ほつれ(毛羽立ち)を抑制できなくなり、繊維ほつれが高分子膜に突き刺さりやすくなり、高分子膜を劣化させ、発電性能を低下させる。
【0009】
また、ガス拡散層3A、3Kを形成する導電性多孔質基材10A、10Kに浸み込む被覆層塗布用インクの量が多いと、被覆層11A、11K表面に凹凸が発生しやすくなる。これは、炭素繊維が密に重なった部分と比較的疎な部分とが表面上に存在するカーボンクロスで、より顕著に生じやすくなる。被覆層11A、11Kの表面が凹凸形状を有すると、触媒層との接触面積が低下し、接触抵抗が増加する。また、触媒層と被覆層11A、11Kの接合界面に加湿ガスや反応によって生じた過剰な水が溜まりやすくなり、フラッディング(Flooding)が生ずる。
【0010】
このような被覆層塗布用インクが導電性多孔質基材10A、10Kにしみ込む(浸透)のを防止するために、特許文献2では導電性多孔質基材10A、10Kをフッ素樹脂などで撥水処理し、乾燥後、被覆層11A、11Kを形成している。しかし、撥水処理を行って得られるガス拡散層は、導電性多孔質基材10A、10Kの細孔にフッ素樹脂などが残留し、透気性や導電性を低下させることになる。また、基材表面の繊維ほつれにもフッ素樹脂が添加されて、繊維ほつれの剛性が増し、高分子膜への突き刺しが起こりやすくなる。
【0011】
また、特許文献3では、被覆層塗布用インクの基材への浸透を防止するために、被覆層塗布用インクに、非水溶性溶媒を加え、インクの粘性を増大させる方法が提案されている。しかし、インクの粘性が高いと、被覆層塗布時にムラが生じやすく、均一に塗布することが困難である。
【0012】
ガス拡散層表面の凹凸を低減させる方法として、特許文献4に示す被覆層11A、11Kを形成した後、ホットプレスを施すものもある。しかし、特許文献4の方法では、導電性多孔質基材10A、10Kが多孔質であるため、プレスすると被覆層11A、11Kの一部が基材内部に侵入してしまい、結果として被覆層11A、11Kが基材中にしみ込む場合と同じ状態になってしまう。また、プレスだけでは基材の凹凸を完全に平坦化することはできず、基材表面の形状に沿って、被覆層11A、11Kの表面もある程度の凹凸が残るという問題があった。
【0013】
更に、特許文献5では、導電性多孔質基材10A、10Kに消失性物質を充填する工程と、前記導電性多孔質基材10A、10Kに導電性粒子を含む被覆層11A、11Kを形成する工程と、前記消失性物質を除去する工程とを順に含む燃料電池用ガス拡散層の製造方法を開示している。即ち、特許文献5では、導電性多孔質基材10A、10K内の細孔に予めパラフィン、ナフタレン等の消失性物質を充填しておき、被覆層塗布用インクが染み込むのを防いでいる。そして、導電性多孔質基材10A、10Kの形成後に、この消失性充填物質を消失させ、導電性多孔質基材10A、10Kの多孔性を生かすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−56851号公報
【特許文献2】特開平10−261421号公報
【特許文献3】特開2002−367617号公報
【特許文献4】特開2001−85019号公報
【特許文献5】特開2005−38695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特に、特許文献5は、導電性多孔質基材10A、10Kに対する消失性物質の充填工程、消失性物質を除去工程等の工程が必要となり、更には、充填物質を消失させるときの環境負荷も大きいという問題がある。
また、一般に、カーボンクロス、カーボンペーパー等の導電性多孔質基材10A、10Kの表面に導電粉末と撥水性樹脂等からなるペースト状混合物を塗布してガス拡散層を形成すると、ペーストが導電性多孔質基材10A、10K内に浸透し、ガス拡散性を阻害し、高負荷時の出力が低下することになる。また、導電性多孔質基材10A、10Kの塗膜にクラックが生じるとガス拡散性が不均一になり、結果、出力が低下する。そして、電池を使用する環境や、電池の運転状態が異なると最適なガス拡散層内のガス拡散性や透過性が変化するにもかかわらず、それらが容易に調整できない。
【0016】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決すべくなされたものであり、製造工程を単純化でき、かつ、環境負荷を軽減し、ガス拡散性が阻害されにくく、負荷環境にも対応可能なガス拡散用インク組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明にかかるガス拡散層用インク組成物は、ガス拡散層用インクに含まれる炭素粒子を多孔質の導電性多孔質基材における平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1と、この第1の炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子C2とを混合比率M1/M2が95/5〜70/30となるように混合したものである。
ここで、導電性多孔質基材における平均細孔径とは、導電性多孔質基材の表面を電子顕微鏡で観察し、その導電性多孔質基材の細孔10個の面積をそれぞれ円相当に換算したときの直径を求め、その細孔10個の直径を平均した平均径である。ここで、平均径の平均とは、相加平均、算術平均といわれる平均を意味する。
また混合比率M1/M2のM1は、炭素粒子C1と炭素粒子C2を混合した時の合計重量に対する炭素粒子C1の重量%を意味し、M2は、炭素粒子C1を炭素粒子C2としたときの重量%を意味する。
また、導電性多孔質基材における平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1と、この炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ炭素粒子C2における中心径とは、炭素粒子を同体積の球体とみなしたときの直径を径としたときのメディアン径(Median Diameter)を意味する。なお、メディアン径とは、積算%の分布曲線において、10%の横軸と交差する点の粒子径を10%径、30%の横軸と交差する点の粒子径を30%径、80%の横軸と交差する点の粒子径を80%径といい、これを「任意%粒子径」と呼び、特に、50%粒子径は、メディアン径(中位径)と呼んでいる。本発明ではこのメディアン径で規定された粒径を中心径と呼び、炭素粒子C1では導電性多孔質基材における平均細孔径の1/10以上の径であり、炭素粒子C2では炭素粒子C1の1/3以下の径としている。
発明者等の実験によれば、ガス拡散層用インクに中心径が導電性多孔質基材における平均細孔径の1/10以上の第1の炭素粒子C1を用いると、ガス拡散層用インクは多孔質の導電性多孔質基材内への浸透が起き難くなる。また、第1の炭素粒子C1の中心径の上限値は、1/1以上であってもよく、導電性多孔質基材における平均細孔径に対しての論理的上限はない。しかし、表面に第1の炭素粒子C1の各粒子が凹凸を形成するサイズまでは前提としていないから、第1の炭素粒子C1の粒径はガス拡散層へ塗布するガス拡散層用インクの塗布膜厚(被覆層の膜厚)の上限までとなる。
また、第2の炭素粒子C2の中心径を1/3以下にすると、その炭素粒子全体の表面積が大きくなるため、炭素粒子同士の接触が多くなることから炭素粒子間がつながり易くなり、電気伝導性が良好になる。電気伝導性は、中心径が小さいほど良好となり、中心径が1/3以上では電気抵抗が大きくなるため好ましくない。
そして、第1の炭素粒子C1/第2の炭素粒子C2の混合比率では、第1の炭素粒子C1が多すぎると電気伝導性が低下するため好ましくない。また、第1の炭素粒子C1が少なすぎると透気度、排水性が低下し好ましくない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明のガス拡散用インク組成物は、ガス拡散層用インクに含まれる炭素粒子を、導電性多孔質基材における平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1と、この第1の炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子C2とを、混合比率M1/M2が95/5〜70/30となるように混合してなるガス拡散層用インクである。このように調整したガス拡散層用インクを導電性多孔質基材上に塗布することで被覆層を形成している。この際、導電性多孔質基材内にガス拡散層用インクが浸透しづらく、かつ、導電性多孔質基材の表面にクラックのない塗膜を形成するものである。第2の炭素粒子C2の中心径と混合比率M1/M2を変更することでガス拡散層内のガス拡散性と透過性を簡単に調整することができる。
また、発明者等の実験によれば、第1の炭素粒子C1をその中心径を導電性多孔質基材における平均細孔径の1/10以上にすると、ガス拡散層用インクの多孔質の導電性多孔質基材内への浸透が抑えられる。ここで、第1の炭素粒子C1の中心径の上限値は、ガス拡散層へ塗布するガス拡散用インクの塗布膜厚の上限までであるから、この上限以下の粒径で平均細孔径に対して1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1を含んだガス拡散層用インクは、多孔質の導電性多孔質基材内への浸透が抑えられる。そして、第2の炭素粒子C2の中心径を第1の炭素粒子C1の中心径の1/3以下にすると、第2の炭素粒子C2の比表面積は第1の炭素粒子C1の比表面積に比べて大きいことから炭素粒子全体の表面積が大きくなるために、炭素粒子同士の接触が多くなって粒子間がつながり易くなり電気伝導性が良好になる。ここで電気伝導性は中心径が小さいほど良好となるが、第2の炭素粒子C2の中心径が第1の炭素粒子C1の1/3を超えると、電気抵抗が大きくなるため好ましくない。
また、第2の炭素粒子C2の中心径を第1の炭素粒子C1の1/3以下にすると、炭素粒子C2は炭素粒子C1より細かく第1の炭素粒子C1の間隙に第2の炭素粒子C2が入り込みやすくなる。したがって、ガス拡散用インクからなる塗膜(被覆層)が緻密な構造になり、補強効果を発揮する。
更に、第1の炭素粒子C1/第2の炭素粒子C2の混合比率では、第1の炭素粒子C1が多すぎると電気伝導性は好ましくないが、逆に、第1の炭素粒子C1が少なすぎると透気度、排水性が悪くなるため、混合比率M1/M2は95/5〜70/30が好適である。
即ち、導電性多孔質基材の平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1と、この第1の炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2が、95/5〜70/30となるように混合してなるガス拡散層用インクを導電性多孔質基材上に塗布することで、前記導電性多孔質基材内にインクの浸透が抑制され導電性多孔質基材の細孔を生かしたままで、その表面にクラックのない塗膜(被覆層)を形成することができる。塗膜にクラックが無いことから均一なガス供給を行うことができ、固体高分子形燃料電池の性能が安定する。
また、第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2という2種類の大きく異なる粒径を持つ炭素粒子の混合比率を調整することで、固体高分子形燃料電池の運転条件、仕様に合わせたガス拡散特性に容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は従来例及び本発明の実施の形態のガス拡散層用インク組成物を使用した固体高分子形燃料電池の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
【0021】
図1において、固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜1、その両面に接合配設した触媒層2A、2K、触媒層2A、2Kの外面側にガス拡散層3Aとガス拡散層3Kが密着して配設されている。この触媒層2A、2Kとガス拡散層3A、3Kによりアノード(−)電極4Aとカソード(+)電極4Kが構成されている。更に、ガス拡散層3A、3Kは、ガス拡散能及び導電性を有する導電性多孔質基材10A、10Kと導電性粒子を有する被覆層11A、11Kから構成される。
【0022】
また、アノード電極4A側には燃料ガスを供給するガス流路7A、カソード電極4K側には酸化剤となるガスを供給するガス流路7Kを設けている。ガス流路7A及びガス流路7Kは、導電性セパレータ板6の両側に形成され、また、冷却水の流路8を形成する導電性セパレータ板6A、6Kの電極側の一方の面に形成されている。導電性セパレータ板6Aと導電性セパレータ板6Kは反電極側が密着し、シール材5によって導電性セパレータ板6Aと導電性セパレータ板6Kの反電極側間はシールされている。更に、導電性セパレータ板6Aの反電極側の一部とこれに対向する導電性セパレータ板6Kの反電極側の一部とによって冷却水の流路8がされている。ガスケット9A、9Kは高分子電解質膜1を気密性、水密性にシールしている。
【0023】
この種の固体高分子形燃料電池のアノード(−)電極4A、カソード(+)電極4Kとしてのガス拡散層3A、3Kは、アノード(−)電極4A、カソード(+)電極4K、高分子電解質膜1を張り合わせて一体化してなる基本部品の膜/電極接合体MEGA(Membrane-Electrode-Gas Diffusion Layer Assembly)を燃料ガス、酸化剤ガス等の反応ガスの供給流路が形成された導電性セパレータ板6または導電性セパレータ板6A、6Kで挟持して単セル(single cell)を形成している。そして、ガス拡散層3A、3Kは燃料ガス、酸化剤ガス等の反応ガスの効率のよい供給や、高分子電解質膜1と触媒層2A、2Kを常に最適な湿潤状態に保ち、過剰な反応生成水や結露水は電極触媒層と固体電解質材料の膜を複合化した発電ユニットMEA(Membrane-Electrode-Assembly)の外に排出している。
このようなガス拡散層3A、3Kを得るため、一般的に、ガス拡散能及び導電性を持つ炭素繊維からなるカーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロス等の導電性多孔質基材10A、10Kが基材として用いられている。
【0024】
このように構成された固体高分子形燃料電池は、ガス拡散層3A、3Kと高分子電解質膜1との間に触媒層2A、2Kが設けられ、ガス拡散層3A、3Kの導電性多孔質基材10A、10Kの不均一性を緩和し、更に、集電性及び撥水性を、ガス拡散層3A、3Kを形成する導電性多孔質基材10A、10Kの上に導電性粒子及びフッ素樹脂(PTFE)ディスパージョンを主成分とする被覆層11A、11Kを設けている。
【0025】
被覆層11A、11Kには、水を溶媒としてカーボンブラック等の炭素粒子とフッ素樹脂エマルジョンで構成されるガス拡散層用インクを混合調整し、スプレー法または印刷法、バーコーター、ドクターブレード等を用いて、ガス拡散層用インクを導電性多孔質基材10A、10Kに塗布し、その塗布した一部が導電性多孔質基材10A、10Kに含浸され、そして、導電性多孔質基材10A、10Kに侵入した被覆層11A、11Kを形成している。更に、被覆層11A、11K自体から水分や界面活性剤等を除くために、塗布後の焼成処理をしている。
【0026】
高分子電解質膜1は、水分を含んだ状態で水素イオンを抽出し、輸送する電解質であるから、燃料ガスや酸化剤ガスを加湿して供給してやる必要がある。また、高分子電解質膜1の含水率は、高くなればなるほど、水素イオン伝導度が増加し、電池内部の抵抗を低減させ、かつ、劣化を抑制することができる。そこで、供給する燃料ガスや酸化剤ガスは、高加湿にして運転している。
このように、図1に示す固体高分子形燃料電池は、基本的に本願発明の実施の形態のものと相違するものではないが、次に本実施の形態の相違点を説明する。
【0027】
図1の高分子電解質膜1の両面に触媒層2A、2Kが設けられ、触媒層2A、2Kの他の面側にはガス拡散層3A、3Kが設けられた固体高分子形燃料電池を構成している。このガス拡散層3A、3Kは、ガス拡散能及び導電性を有する導電性多孔質基材10A、10Kと導電性を有する被覆層11A、11Kからなっている。そして、導電性を発現させるために配される炭素粒子が、導電性多孔質基材10A、10Kにおける平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ粗粒の第1の炭素粒子C1と、炭素粒子C1より細粒の前記第1の炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子C2との2種類の混合材とし、このときの混合比率M1/M2が95/5〜70/30となるように混合してなるガス拡散層用インクを調整し、それを導電性多孔質基材10A、10Kに塗布した。
【0028】
本実施の形態のガス拡散用インク組成物は、導電性多孔質基材10A、10Kの平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1と、この第1の炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2を95/5〜70/30となるように混合して、媒体としての水に分散させ、更に、フッ素樹脂エマルジョンを配合することで、ガス拡散層用インクを調整した。そのガス拡散層用インクを導電性多孔質基材10A、10K上に塗布したところ、導電性多孔質基材10A、10K内にガス拡散層用インクの浸透が抑えられ、かつ、導電性多孔質基材10A、10Kの表面にクラックのない塗膜を形成することができた。
このとき、第2の炭素粒子C2の中心径と混合比率M1/M2を変更することでガス拡散層内のガス拡散性と透過性を簡単に任意の値に調整できる。
なお、本発明の実施の形態では炭素粒子を粗粒の炭素粒子C1と細粒の炭素粒子C2の2種類を使用しているが、粗粒の炭素粒子C1を粒径の異なる2種類以上とすることや、細粒の炭素粒子C2を粒径の異なる2種類以上とすることもあり得る。
【0029】
発明者等の実験によれば、第1の炭素粒子C1の中心径を導電性多孔質基材10A、10Kにおける平均細孔径の1/10以上にすると、ガス拡散層用インクが導電性多孔質基材10A、10K内の細孔への浸透が見られなくなり、また、第1の炭素粒子C1の中心径の上限値は、ガス拡散層へ塗布するガス拡散用インクの塗布膜厚の上限まで可能で、この範囲内の第1の炭素粒子C1を用いて作製されたガス拡散層用インクは導電性多孔質基材10A、10K内に浸透して導電性多孔質基材10A、10K内の細孔を目詰まりさせることはない。そして、第2の炭素粒子C2の中心径が第1の炭素粒子C1の中心径の1/3以下であると、第2の炭素粒子C2による比表面積の増加による炭素粒子全体の表面積の増大および第1の炭素粒子C1の間隙内への第2の炭素粒子C2の充填効果によって炭素粒子同士の接触が多くなることにより粒子間が通電し易くなり電気伝導性が良好になる。また、電気伝導性は中心径が小さいほど良好となる。
更に、第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2の混合比率では、第1の炭素粒子C1が多すぎると炭素粒子間の接触面積が少なくなり電気伝導性が低下して好ましくない。逆に、第1の炭素粒子C1が少なすぎると炭素粒子間の空隙が減少し透気度、排水性が低下するため好ましくない。したがって、混合比率M1/M2は95/5〜70/30が好適である。
【0030】
本実施の形態のガス拡散層用インク組成物は、ガス拡散層用インク組成物に含まれて導電性付与に係わる炭素粒子を、導電性多孔質基材10A、10Kの導電性多孔質基材における平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1と、この第1の炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2が、95/5〜70/30となるように混合してなるガス拡散層用インクを導電性多孔質基材10A、10K上に塗布することで、粒子が粗い(大きい)第1の炭素粒子C1が導電性多孔質基材への浸透を抑制し、粒子が細かい(小さい)第2の炭素粒子C2が電気伝導性を良好にする働きをしている。このことから、本実施の形態のガス拡散層用インク組成物は導電性多孔質基材中へのしみ込み(浸透)による導電性多孔質基材中の細孔の詰まりを抑えて均一なガス供給および反応生成水の良好な排出を行うことができるだけでなく、所望の電気伝導性を確保し良好な電気特性を発揮する事ができることから固体高分子形燃料電池の性能が安定する。
また、第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2という粒径が大きく異なる2種類の炭素粒子の混合比率を調整することで、導電性多孔質基材への被覆層の空隙度合いを自由に制御し、固体高分子形燃料電池の運転条件、仕様に合わせたガス拡散特性に容易に設定できる。
【0031】
実施例1
炭素粒子C1として中心径の直径15μm(導電性多孔質基材における平均細孔径150μm)の黒鉛粉末13.1重量部、炭素粒子C2として分散後の中心径0.3μmのカーボンブラック0.7重量部、水70重量部、分散剤(トリトンX100)0.3重量部を特殊機化製ホモミクサーで混合分散した。なお、ここで中心径とは、炭素粒子のメディアン径を意味し、レーザー光散乱方式(シスメックス製:マスターサイザー2000)で測定した。
この分散液にポリマー濃度61%のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)エマルジョン15.1重量部、有効成分30%のアルカリ増粘剤0.4重量部、10%AMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)水溶液0.4重量部を加え特殊機化製ハイビスミックスで混合した後、減圧脱泡を行ってガス拡散層用インクを作製した。
このガス拡散層用インクをダイコーターで導電性多孔質基材における平均細孔径150μmのカーボン繊維で構成された導電性多孔質基材10A、10K上に塗布し、焼成しガス拡散層3A、3Kを作製した。作製したガス拡散層3A、3Kの塗膜表面にクラックは見られず、ガス拡散層3A、3Kの断面観察を行い導電性多孔質基材10A、10K内へのガス拡散層用インクの浸透を調べたところ、浸透は確認されなかった。
ガス透気性はPMI社製パームポロメーター(型番CFP−1200A)により測定し、69L/分(120KPa φ20mm)と良好なガス透気性を示した。接触抵抗についても8mΩ/cM2(1MPa)と良好であった。
このときの第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2が、95/5であった。
【0032】
実施例2
炭素粒子C2として実施例1の中心径0.3μmのカーボンブラック0.7重量部に代えて、中心径5μm(第1の炭素粒子C1の1/3に相当)の黒鉛粉末0.7重量部とした。他は実施例1と同じである。
ガス拡散層3A、3Kの塗膜表面にクラックは見られず、導電性多孔質基材10A、10K内へのガス拡散層用インクの浸透も確認されず、ガス透気性98L/分、接触抵抗11mΩと良好だった。
このときの第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2が、95/5であった。
【0033】
実施例3
実施例1の炭素粒子C1の黒鉛粉末13.1重量部、炭素粒子C2のカーボンブラック0.7重量部に代えて、中心径15μmの黒鉛粉末11重量部を炭素粒子C1として、中心径0.3μmのカーボンブラック2.8重量部を炭素粒子C2とした。他は実施例1と同じである。
ガス拡散層3A、3Kの塗膜表面にクラックは見られず、導電性多孔質基材10A、10K内へのガス拡散層用インクの浸透も確認されず、ガス透気性46L/分、接触抵抗7.2mΩと良好だった。
このときの第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2が、80/20であった。
【0034】
実施例4
実施例1の炭素粒子C1の黒鉛粉末13.1重量部、炭素粒子C2のカーボンブラック0.7重量部に代えて、中心径15μmの黒鉛粉末9.7重量部を炭素粒子C1として、分散後の中心径0.3μmのカーボンブラック4.1重量部を炭素粒子C2とした。他は実施例1と同じである。
ガス拡散層3A、3Kの塗膜表面にクラックは見られず、導電性多孔質基材10A、10K内へのガス拡散層用インクの浸透も確認されず、ガス透気性21L/分、接触抵抗6.5mΩと良好だった。
このときの第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2が、70/30であった。
【0035】
比較例1
炭素粒子C1として中心径15μmの黒鉛粉末8.3重量部、炭素粒子C2として分散後の中心径0.3μmのカーボンブラック5.6重量部とした。他は実施例1と同じである。
ガス拡散層3A、3Kの塗膜表面にクラックは見られず、導電性多孔質基材10A、10K内へのガス拡散層用インクの浸透も確認されなかったが、ガス透気性4L/分で十分なガス透過性が得られなかった。接触抵抗は、6.4mΩと良好であった。
このときの第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2が、60/40であった。固体高分子形燃料電池としては不適である。
【0036】
比較例2
炭素粒子を実施例1の第1の炭素粒子C1(中心径15μm)の黒鉛粉末のみ13.8重量部とした。他は実施例1と同じである。
ガス拡散層3A、3Kの塗膜表面にクラックは見られず、導電性多孔質基材10A、10K内へのガス拡散層用インクの浸透も確認されなかったが、ガス透気性116L/分、接触抵抗33mΩとなり十分な電気伝導性が得られなかった。
このときの第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2が、100/0であった。固体高分子形燃料電池としては不適である。
【0037】
比較例3
炭素粒子C2の中心径0.3μmのカーボンブラックを中心径7.5μm(第1の炭素粒子C1の1/2)の黒鉛粉末にした。他は実施例1と同じ。
ガス拡散層3A、3Kの塗膜表面にクラックは見られず、導電性多孔質基材10A、10K内へのガス拡散層用インクの浸透も確認されなかったが、ガス透気性108L/分、接触抵抗27mΩとなり十分な電気伝導性が得られなかった。固体高分子形燃料電池としては不適である。
【0038】
比較例4
炭素粒子C1の中心径15μmの黒鉛粉末を中心径7.5μm(導電性多孔質基材における平均細孔径150μm)の黒鉛粉末にした。他は実施例1と同じである。
導電性多孔質基材10A、10K内へのガス拡散層用インクの浸透が確認された。固体高分子形燃料電池としては不適である。
【0039】
以上のように、上記実施の形態のガス拡散層用インク組成物は、ガス拡散層用インク組成物の構成材料である炭素粒子を、導電性多孔質基材10A、10Kの平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1と、この第1の炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2を、95/5〜70/30となるように混合した。このように混合した炭素粒子を有するガス拡散層用インクを導電性多孔質基材10A、10K上に塗布することで、導電性多孔質基材10A、10Kにガス拡散層用インクが浸透して導電性多孔質基材10A、10K内の反応ガスや反応生成水の流路となる細孔内で目詰まり発生させることを防止でき、かつ、導電性多孔質基材10A、10Kの表面にクラックのない塗膜(被覆層)を形成することができる。
このとき、第2の炭素粒子C2の中心径のサイズと混合比率M1/M2を変更することでガス拡散層内のガス拡散性と透過性を簡単に任意の値に設定できる。
【0040】
殊に、第1の炭素粒子C1を、その中心径が導電性多孔質基材10A、10Kの平均細孔径の1/10以上の粒径を持つ炭素粒子を使用してガス拡散層用インクを作製すると、第1の炭素粒子C1同士が影響し合って導電性多孔質基材10A、10Kの細孔内へ流入しにくくなることから、ガス拡散層用インクの多孔質の導電性多孔質基材10A、10K内への浸透が抑えられる。また、第1の炭素粒子C1の中心径の上限値は、ガス拡散層3A、3Kへ塗布するガス拡散層用インクの塗布膜厚の上限までであるから、第1の炭素粒子C1の粒径は、その中心径が導電性多孔質基材10A、10Kの平均細孔径の1/10の粒径から最大の粒径は被覆層の膜厚となる塗布膜厚に収まる粒径までとなる。この範囲内の粒径を持つ第1の炭素粒子C1を用いて作製されたガス拡散層用インクであれば多孔質の導電性多孔質基材10A、10Kへの浸透が抑えられる。
【0041】
そして、第2の炭素粒子C2の中心径を1/3以下にすると、第1の炭素粒子C1の間隙に第2の炭素粒子C2が入り込むため、ガス拡散用インクからなる塗膜(被覆層)が緻密な構造になり、補強効果を発揮する。
更に、第1の炭素粒子C1/第2の炭素粒子C2の混合比率では、第1の炭素粒子C1が多すぎると電気伝導性が低下し好ましくないが、逆に、第1の炭素粒子C1が少なすぎると透気度、排水性が悪くなり好ましくなくなるため、混合比率M1/M2は95/5〜70/30が好適である。
【0042】
即ち、導電性多孔質基材10A、10Kの平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1と、この第1の炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子C2との混合比率M1/M2が、95/5〜70/30となるように混合した混合炭素粒子を導電性粒子として含有するガス拡散層用インクを作製し、このガス拡散層用インクを導電性多孔質基材10A、10K上に塗布して被覆層を形成する。ガス拡散層用インクに上述した混合炭素粒子を用いることで導電性多孔質基材10A、10K内にガス拡散層用インクが浸透することを防ぎ、導電性多孔質基材10A、10Kの細孔を生かしたままで、その表面にクラックのない塗膜(被覆層)を形成することができる。塗膜にクラックが無いことから均一なガス供給を行うことができ、固体高分子形燃料電池の性能が安定する。
また、第1の炭素粒子C1と第2の炭素粒子C2という2種類の炭素粒子の混合比率を調整することで、固体高分子形燃料電池の運転条件、仕様に合わせたガス拡散特性に容易に変更できる。
【0043】
このように本願発明のガス拡散層用インクは、導電性多孔質基材10A、10K内にガス拡散層用インクが浸透することによって導電性多孔質基材10A、10K内の反応ガスや反応生成水の流路となる細孔が閉塞することが無く導電性多孔質基材10A、10K内のガス拡散性を阻害せず高負荷時の特性に優れる。また、導電性多孔質基材10A、10Kのガス拡散層3A、3Kにクラックが無いから、ガス拡散層3A、3Kの面内で均一な発電を行うことができ、出力が向上し、耐久性に優れる。
更に、ガス拡散層3A、3Kの排水性とガス拡散性を簡単に調整でき、目的に特化した固体高分子形燃料電池が容易に製造できる。
【符号の説明】
【0044】
1 高分子電解質膜
2A、2K 触媒層
3A、3K ガス拡散層
4A アノード電極
4K カソード電極
10A、10K 導電性多孔質基材
11A、11K 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜の両面に触媒層が設けられ、触媒層の他の面側にはガス拡散層が設けられた固体高分子形燃料電池において、
前記ガス拡散層は、ガス拡散能及び導電性を有する導電性多孔質基材と、
前記導電性多孔質基材に炭素粒子を含有するガス拡散層用インクを塗布することにより形成された被覆層とからなり、
前記炭素粒子として、前記導電性多孔質基材における平均細孔径に対して、1/10以上の中心径を持つ第1の炭素粒子C1と、
前記第1の炭素粒子C1の1/3以下の中心径を持つ第2の炭素粒子C2とを
混合比率M1/M2が、95/5〜70/30となるように混合してなることを特徴とするガス拡散層用インク組成物。



【図1】
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【公開番号】特開2012−195190(P2012−195190A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58869(P2011−58869)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】